(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127222
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20230906BHJP
G01S 17/42 20060101ALI20230906BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/42
G01S7/481 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030870
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】末吉 英一
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA01
5J084BA04
5J084BA36
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB20
5J084BB27
5J084BB28
5J084BB37
5J084CA03
5J084CA22
5J084CA25
5J084CA32
5J084CA53
5J084EA04
5J084EA16
5J084EA20
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】レーザレーダ装置による物体の検出精度の更なる向上を図ること。
【解決手段】レーザレーダ装置10は、レーザ光の照射方向を変更可能な回転ブロック41を備えている。回転ブロック41には、当該回転ブロック41と一体的に回転可能となるようにしてエンコーダディスク61が固定されている。エンコーダディスク61には、その外縁に沿って複数のスリットが配列されており、回転ブロック41が回転してフォトインタラプタ71をスリットが順に通過することにより各スリットに対応したパルス列からなるエンコーダ信号が制御部12に出力される。制御部12では、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力されたエンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間におけるパルスの平均周期を把握し、把握した平均周期に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアへレーザ光を照射する照射部と、物体により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部とを備え、前記レーザ光を反射した物体が前記監視エリアに位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況に基づいて判定するレーザレーダ装置であって、
前記照射部は、所定の走査方向へ回転することにより前記レーザ光の照射方向を変更可能な変更部を含み、
前記所定の走査方向へ前記変更部と一体的に回転可能であり、前記所定の走査方向に複数の被検出部が並ぶように形成された回転体と、所定の検出位置に位置する前記被検出部を検出可能な検出部とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダを備え、
前記被検出部は前記所定の走査方向において所定角度毎に形成されており、前記ロータリエンコーダから入力された前記エンコーダ信号に基づいて前記レーザ光の出力制御を行うことにより、前記レーザ光を周期的に照射する構成となっており、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力された前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力された特定の波形の長さを示す情報である診断用情報を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断部を備えているレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記診断部は、異なる複数の前記区間における前記診断用情報を各々把握し、それら把握した診断用情報同士の比較結果に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記診断部は、異なる複数の前記区間における前記診断用情報を各々把握し、前記把握した診断用情報同士を比較し且つそれら診断用情報と予め設定されている基準範囲とを比較し、前記把握した診断用情報同士の差が閾値よりも小さく且つ前記把握した診断用情報が何れも前記基準範囲内である場合には、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていると診断し、前記把握した診断用情報同士の差が前記閾値よりも大きい場合又は前記把握した診断用情報の何れかが前記基準範囲外である場合には、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていないと診断する請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記診断部により、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていないと診断された場合に異常処理を実行する構成となっており、
前記把握した診断用情報同士の差が前記閾値よりも小さ一方、前記把握した診断用情報が何れも前記基準範囲外である場合には、前記異常処理が行われない構成となっている請求項3に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記区間の設定位置を前記回転体の周回が進むことで当該回転体の回転方向又は当該回転方向とは反対の方向にシフトさせる請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型のレーザレーダ装置は、所定角度ごとにレーザ光を順次照射する照射部と、そのレーザ光の反射光を受光する受光部とを有してなり、受光部の受光量等に基づいて監視エリア内に人や車等の物体が位置しているかを判定するように構成されている。この種のレーザレーダ装置には、レーザ光の照射方向を変更する回転式の変更部(例えばミラー)が設けられ、この変更部が定常回転している状況下にてレーザ光が監視エリアへ照射される構成となっているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した回転式の変更部を有するレーザレーダ装置においては、当該変更部が定常回転している場合であっても様々な要因によって変更部の回転速度が変化する可能性がある。ここで、ロータリエンコーダを用いて変更部の回転位置を特定し、特定した回転位置に応じてレーザ光を照射する構成、具体的には上記所定角度毎に被検出部(例えばスリットや磁石)が配列されてなる回転体(例えばエンコーダディスクや磁気ドラム)を変更部と一体的に回転するようにして搭載し、各被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号から変更部の回転位置を特定し、特定した回転位置に応じてレーザ光を照射する構成とすることにより、回転速度の変化の影響によって所定角度毎のレーザ光の照射にばらつきが生じることを抑制し得る。
【0005】
但し、エンコーダ信号(パルス)からレーザ光の照射タイミングを決める構成においては、以下の新たな懸念が生じる。すなわち、回転体の組付け誤差が大きくなった場合や回転体に歪み等の変形が生じている場合には、それらの影響によってエンコーダ信号(具体的にはパルス幅やパルス周期等)にばらつきが生じる可能性がある。また、経年劣化等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合にもエンコーダ信号(具体的にはパルス幅やパルス周期等)に乱れが生じる可能性がある。エンコーダ信号の乱れによってレーザ光の間隔が変化することで、レーザ光の照射方向に偏り、すなわち粗密の差が生じることとなる。
【0006】
レーザ光の粗密の差の影響についてはレーザレーダ装置に比較的近い位置では小さくなるものの、レーザレーダ装置から遠く離れるほど顕著となる。つまり、レーザレーダ装置から遠く離れた位置に監視エリアを設定した場合には、レーザ光の粗密の差が生じることで監視エリアに位置する物体にレーザ光が上手く当たらず当該物体の検出が遅れたり検出漏れが発生したりする可能性が高くなると懸念される。また、レーザレーダ装置に比較的近い位置に監視エリアを設定する場合であっても、検出対象としてサイズの小さい物体を想定した場合には、レーザ光の粗密の差が生じることで検出の遅れや漏れが発生する可能性が高くなると懸念される。
【0007】
このように、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上でレーザレーダ装置に係る構成には未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、レーザレーダ装置による物体の検出精度の更なる向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0010】
第1の手段.監視エリアへレーザ光を照射する照射部と、物体により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部とを備え、前記レーザ光を反射した物体が前記監視エリアに位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況に基づいて判定するレーザレーダ装置であって、
前記照射部は、所定の走査方向へ回転することにより前記レーザ光の照射方向を変更可能な変更部を含み、
前記所定の走査方向へ前記変更部と一体的に回転可能であり、前記所定の走査方向に複数の被検出部が並ぶように形成された回転体と、所定の検出位置に位置する前記被検出部を検出可能な検出部とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダを備え、
前記被検出部は前記所定の走査方向において所定角度毎に形成されており、前記ロータリエンコーダから入力された前記エンコーダ信号に基づいて前記レーザ光の出力制御を行うことにより、前記レーザ光を周期的に照射する構成となっており、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力された前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力された特定の波形の長さを示す情報である診断用情報を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断部を備えている。
【0011】
例えばロータリエンコーダを搭載する際の作業ばらつきによって、回転体(例えばエンコーダディスクや磁気ドラム)の中心と変更部の回転中心とがずれた場合には、1周分のエンコーダ信号を構成しているパルス列の一部にてパルスの出力パターンが基本となるパターンから乖離し得る。この乖離が大きくなった場合には出力されるエンコーダ信号はパルス幅やパルス周期等が想定範囲から外れた異常な信号となる。このような異常な信号については、ベアリングの摩耗等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合や、回転体に歪等の変形が生じている場合にも発生する可能性がある。
【0012】
仮に上述したような異常なエンコーダ信号に基づいてレーザ光が出力される場合には、本来所定角度毎に照射されるはずのレーザ光が想定よりも短い間隔で照射されたり想定よりも長い間隔で照射されたりする。特に、レーザ光が想定よりも長い間隔で照射される場合には、そのような変化がない場合と比較して、レーザ光が物体に上手く当たらず当該物体の検出が遅れたり同物体の検出漏れが発生しやすくなったりすると懸念される。これは、物体の検出精度を低下させる要因になるため好ましくない。このような影響は、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で顕著になる。
【0013】
この点、本特徴に示す構成によれば、パルスに変化が生じることに着目し、以下の対策が講じられている。すなわち、回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下の所定の周回にて出力されるエンコーダ信号から特定の波形の長さを示す診断用情報を把握している。そして、把握した診断用情報に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断している。このようにしてレーザ光を上手く照射できない状況となっていることを見極める構成とすれば、例えば使用者にレーザレーダ装置の点検等を促すといった対応が可能となる。以上の理由から、物体の検出の遅れを抑制し、レーザレーダ装置による物体の検出精度の向上に寄与できる。これは、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態におけるレーザレーダ装置を示す概略図。
【
図4】レーザレーダ装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図5】エンコーダ信号を構成しているパルス列とレーザ光の出力タイミングとの関係を示す概略図。
【
図6】エンコーダディスクの組み付け状態を示す概略図。
【
図8】診断用データ準備処理を示すフローチャート。
【
図12】第2の実施形態における対象区間のシフトの様子を示す概略図。
【
図13】第3の実施形態における平均値と診断結果との関係を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、エリア監視用のレーザレーダ装置として具体化されている。
【0016】
図1に示すレーザレーダ装置10は、所定角度(本実施形態では0.25°)ごとに設定されている照射角度にてパルスレーザ光(以下、レーザ光という)を照射し且つそのレーザ光の反射光を受光する光学機構11と、光学機構11を制御する制御部12(具体的にはFPGA)と、それら光学機構11及び制御部12を収容するハウジング13とを備えており、ハウジング13に形成されたレーザ光の照射口が監視エリアDE側を向くように設置されている。
【0017】
光学機構11は、発光部11a、受光部11b及び光路形成部11cにより構成されている。発光部11aは、制御部12の制御に応じてレーザ光を間欠的に出力するレーザダイオード21と、当該レーザダイオード21から出力されるレーザ光の光路上に配設されたコリメートレンズ22とを有してなり、レーザダイオード21及びコリメートレンズ22は何れも光軸が水平となるようにしてハウジング13の奥壁部に取り付けられている。レーザダイオード21から出力されたレーザ光は、コリメートレンズ22を透過することで平行光に変換された後、ハウジング13の中央に配設された上記光路形成部11cへと向かう。
【0018】
光路形成部11cは、ハウジング13に固定された第1ミラー25と、当該第1ミラー25に対向する第2ミラー42が搭載された回転ブロック41とを有している。第1ミラー25には、発光部11aの光軸に対して斜めに傾く(斜め下方を向く)反射面25aが形成されており、発光部11aから出力されたレーザ光は、当該反射面25aにより第2ミラー42の反射面42aへ導かれる。
【0019】
第2ミラー42の反射面42aは、両ミラー25,42の並設方向(上下方向)に対して斜めに傾いており(斜め上方を向いており)、第1ミラー25により反射されたレーザ光は、第2ミラー42にて再度反射されることでハウジング13の照射口へ導かれる。照射口には透明な窓パネル15が嵌っており、照射口へ導かれたレーザ光は窓パネル15を透過して監視エリアDEへ照射される。
【0020】
ここで、
図2を参照して回転ブロック41について補足説明する。回転ブロック41は、第2ミラー42を支持する円柱状のホルダ43を有している。ホルダ43の下端部には円板状のベース部44が形成されており、当該ベース部44の中心に形成された固定部45にモータ51の出力軸52が固定されている。モータ51は制御部12に接続されており、当該制御部12によってモータ51が駆動されることで回転ブロック41(第2ミラー42)が出力軸52とともに回転(周回)する。
【0021】
回転ブロック41の回転中心となる中心軸線CL1は、上下方向に延びており、その向きは第1ミラー25から第2ミラー42に入射するレーザ光の向きと一致している。そして、第1ミラー25から第2ミラー42へのレーザ光の入射位置P1は、反射面42aにおける中心軸線CL1上の位置となるように規定されている。回転ブロック41が中心軸線CL1を中心に水平に回転して第2ミラー42の向きが変わることによりレーザ光の照射方向を変更可能な構成が実現されている。すなわち、本実施形態においては、レーザレーダ装置10によるレーザ光の走査方向が水平方向、具体的には中心軸線CL1を中心とした回転方向(中心軸線CL1を中心とした円の円周方向)となっている。因みに、本実施形態では、回転ブロック41及びモータ51によって「変更部」に相当する変更ユニット40が構成されており、当該変更ユニット40及び発光部11aが「照射部」に相当する。
【0022】
監視エリアDEに物体OBが位置している状況下にてレーザレーダ装置10から当該監視エリアDEにレーザ光が照射され、物体OBにレーザ光が当たった場合には、当該物体OBにより反射されたレーザ光(反射光)の一部がレーザレーダ装置10へ到達し得る。
図1においては便宜上、レーザレーダ装置10から物体OBに至るレーザ光に符号L1を付し、物体OBにより反射された反射光のうち受光部11bに至るものに符号L2を付している。
【0023】
図1に示すように、受光部11bは、光路形成部11cの上方(ハウジング13の天井部)に配設されており、反射光は第2ミラー42によって当該受光部11bに導かれる構成となっている。具体的には、受光部11bは、ハウジング13の天井部に取り付けられたフォトダイオード31と、当該フォトダイオード31及び上記第2ミラー42の間、詳しくは第1ミラー25の上方に配設された集光レンズ32(集光部)と、当該集光レンズ32及びフォトダイオード31の間に配設されたフィルタ33とを有してなり、第2ミラー42からの反射光が集光レンズ32→フィルタ33を通じてフォトダイオード31に導かれる構成となっている。フィルタ33は、反射光に対応した特定波長の光のみを透過させ、それ以外の光を遮断する波長選択フィルタであり、光路形成部11cからフォトダイオード31に至る光路にて反射光を透過させ且つ反射光以外の光を除去する。
【0024】
本実施形態に示すレーザレーダ装置10には、回転ブロック41の回転位置、すなわち第2ミラー42の向きを特定する回転位置検出手段として光電方式のロータリエンコーダ60が搭載されている。ここで、
図2及び
図3を参照して、ロータリエンコーダ60及びそれに関連する構成について説明する。
【0025】
図2に示すように、ロータリエンコーダ60は、薄い板状のエンコーダディスク61と後述するフォトインタラプタ71とで構成されている。エンコーダディスク61はホルダ43の下側に設けられ、ホルダ43のベース部44に重ね合わせるようにして配置されている。エンコーダディスク61は円形をなしており、その中心軸線CL2が回転ブロック41の中心軸線CL1と一致するようにして取り付けられている(
図3参照)。
【0026】
具体的には、ホルダ43のベース部44においてエンコーダディスク61と重なる部分には複数のネジ孔46が形成されており、エンコーダディスク61には、それらネジ孔46に連通する複数の連通孔66が形成されている。連通孔66に挿通されたネジ69が各ネジ孔46に螺着されることで、エンコーダディスク61とホルダ43とが一体化されている。なお、エンコーダディスク61の中央部分には開口62が形成されており、この開口62によって当該エンコーダディスク61とモータ51との干渉が回避されている。
【0027】
エンコーダディスク61の直径(外径)はホルダ43のベース部44の直径よりも大きくなっており、エンコーダディスク61をベース部44に取り付けた状態では、当該エンコーダディスク61の外縁部MEがベース部44から突出するように構成されている。この外縁部MEには、中心軸線CL2と直交する方向に延びる多数のスリット63(「被検出部」に相当)が形成されている。より詳しくは、多数のスリット63が中心軸線CL2を中心とする円の円周方向に並ぶようにして等間隔(等角度)で配列されることで、中心軸線CL2を中心とした環状の目盛りが形成されている。なお、エンコーダディスク61が適正に取り付けられ中心軸線CL1,CL2が一致している状態では、スリット63は上記走査方向(回転方向)に並んでいるとも言える。
【0028】
フォトインタラプタ71には、エンコーダディスク61の外縁部MEが挿入される凹状の挿入部が形成されており、この挿入部には発光素子72及び受光素子73が上下に相対向するようにして配設されている。外縁部MEに形成された各スリット63は、エンコーダディスク61の回転に伴って発光素子72及び受光素子73の間の検出位置DP(「所定の検出位置」に相当)を順に通過する。
【0029】
検出位置DPに上記スリット63が位置している場合には、発光素子72からの光が当該スリット63を通じて受光素子73に届き、ロータリエンコーダ60から出力されるエンコーダ信号がHIレベルとなる。一方、検出位置DPにスリット63間の肉部64が位置している場合には発光素子72からの光が当該肉部64によって遮られ、ロータリエンコーダ60から出力されるエンコーダ信号がLOWレベルとなる。つまり、エンコーダディスク61の回転にともなって検出位置DPをスリット63が順に通過することにより各スリット63に対応したパルス列からなるエンコーダ信号が出力されることとなる。フォトインタラプタ71は制御部12に接続されており、当該制御部12ではフォトインタラプタ71からのエンコーダ信号に基づいて回転ブロック41の回転位置を把握可能となっている。
【0030】
なお、エンコーダディスク61の外縁部MEには、スリット63が等間隔で形成されている部分と比べて、広くスリット63が形成されていないスリット抜け部分(ブランク部65)が設けられている。制御部12では、エンコーダ信号にてパルス抜けが発生する部分からブランク部65を検出(識別)可能となっており、当該ブランク部65を検出した場合に回転ブロック41の回転位置が原点位置となっていると判定する。また、エンコーダ信号にて上記パルス抜けが発生する周期から回転ブロック41(モータ51)の回転周期を算出可能となっている。
【0031】
次に、
図4を参照して、レーザレーダ装置10の電気的構成について補足説明する。レーザレーダ装置10の制御部12の出力側には、モータ51のモータドライバIC51bと、レーザダイオード21とが接続されており、制御部12の入力側には、フォトダイオード31とロータリエンコーダ60のフォトインタラプタ71とが接続されている。制御部12は、モータ51の駆動制御を行う機能(モータ制御部82)と、レーザダイオード21の発光制御を行う機能(レーザ制御部83)と、物体OBが監視エリアDEに位置しているかを判定する機能(物体判定部84)とを有しており、それらモータ制御部82、レーザ制御部83、物体判定部84によってエリア監視部81が構成されている。
【0032】
モータ制御部82では、ロータリエンコーダ60からのエンコーダ信号に基づいてPID制御によるフィードバックを行い、モータドライバIC51bを介してモータ本体51aの回転数を制御する。この制御により、回転ブロック41の回転速度を予め設定されている回転速度(以下、目標回転速度ともいう)に維持可能となっている。
【0033】
レーザ制御部83では、ロータリエンコーダ60から取得した回転位置の情報、具体的にはエンコーダ信号におけるパルスの立ち上がりを契機としてレーザ光の出力を開始し、出力開始から所定の出力時間を経過したタイミングでレーザ光の出力を停止する(
図5参照)。この発光制御によって、所定角度毎に設定された各照射角度にてレーザレーダ装置10から監視エリアDEへレーザ光が出力されることとなる。なお、この出力時間については、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている場合のパルス幅、すなわちパルスの立ち上がりから立下りまでの時間よりも短くなっている。
【0034】
物体判定部84では、上記回転位置の情報やフォトインタラプタ71における反射光の受光状況に基づいて物体OBが監視エリアDEに位置しているかを判定する。また、制御部12には、スピーカやランプ等からなる報知部が接続されており、例えば監視エリアDE内に位置する物体OBを検知した場合にはその旨を示す報知が当該報知部により実行される。
【0035】
ここで、本実施形態に示すレーザレーダ装置10においては、ホルダ43やエンコーダディスク61の製造誤差に配慮して、エンコーダディスク61に形成された連通孔66の内径がネジ孔46よりも大きくなっている。このような構成とすることで、製造工程等にてホルダ43とエンコーダディスク61との位置合わせ→取り付けを円滑に行うことができ、エンコーダディスク61の無理な取り付けを抑制できる。エンコーダディスク61については上述の如く板厚が薄くなっているため歪み等の変形が生じやすい。故に、無理な取り付けを抑制することは、エンコーダディスク61に歪み等の変形が生じる機会を減らす上で好ましい。
【0036】
しかしながら、このような構成においてはエンコーダ信号に基づいてレーザ光を一定間隔で出力する上で以下の新たな懸念が生じる。以下、
図6及び
図7を参照して、当該懸念について説明する。
図6(a)及び
図7(a)ではエンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられている場合を例示している一方、
図6(b)及び
図7(b)ではエンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられていない場合を例示している。なお、
図6では、一部のスリット63を説明の便宜上、スリットPA~PDとして区別している。
【0037】
図6(a)に示す例では、エンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられており、回転ブロック41の中心軸線CL1とエンコーダディスク61の中心軸線CL2とが一致している。中心軸線CL1を中心としてエンコーダディスク61及び回転ブロック41が一体的に回転した場合には、中心軸線CL1に対して左側に位置する1のスリットPAから隣のスリットPBに移る際の回転角度は所定角度αとなり、中心軸線CL1に対して右側に位置する1のスリットPCから隣のスリットPDに移る際の回転角度についても所定角度αとなる。このようにエンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられた状態では、目標回転速度で定常回転している状況下にて出力されるエンコーダ信号は全区間(上述したパルス抜けを除く)でパルス周期が一定となる(
図7(a1)参照)。そして、当該エンコーダ信号に基づいて照射されるレーザ光群についても等間隔となる(
図7(a2)参照)。なお、このようなパルス周期が一定となるパルス列の出力パターンが「基本となるパターン」に相当する。
【0038】
これに対して
図6(b)に示す例では、エンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられておらず、回転ブロック41の中心軸線CL1とエンコーダディスク61の中心軸線CL2とがずれている。具体的には、エンコーダディスク61が回転ブロック41に対して右側にずれて取り付けられている。中心軸線CL1を中心としてエンコーダディスク61及び回転ブロック41が一体的に回転した場合には、中心軸線CL1に対して左側に位置する1のスリットPAから隣のスリットPBに移る際の回転角度は所定角度αよりも大きい角度α1となり、中心軸線CL1に対して右側に位置する1のスリットPCから隣のスリットPDに移る際の回転角度については所定角度αよりも小さい角度α2となる。
【0039】
このようにエンコーダディスク61が適正な位置に取り付けられていない状態では、目標回転速度で定常回転している状況下にて出力されるエンコーダ信号はパルス周期が一定とならない(
図7(b1)参照)。すなわち、実際の角度が所定角度αよりも大きくなる部分ではパルス周期が長くなってパルスが粗となり、所定角度αよりも小さくなる部分ではパルス周期が短くなってパルスが密となる。言い換えれば、1走査サイクル(1回転)に相当するエンコーダ信号には、パルスが粗となる部分と密となる部分とが発生する。当該エンコーダ信号に基づいて照射されるレーザ光群については等間隔ではなく、粗密の差が生じることとなる(
図7(b2)参照)。
【0040】
特に、レーザ光が想定よりも長い間隔で照射されレーザ光群が粗となっている場合には、そのような変化がない場合と比較して、レーザ光が物体OBに上手く当たらず当該物体OBの検出が遅れたり同物体OBの検出漏れが発生しやすくなったりすると懸念される(例えば
図7(b2)参照)。このような懸念は、レーザレーダ装置10に近い位置よりも遠い位置にて強くなり、物体OBが大きい場合よりも小さい場合に強くなる。つまり、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で妨げになる。
【0041】
因みに、パルス幅やパルス周期等が想定範囲から外れた異常なエンコーダ信号については、エンコーダディスク61が適正な位置からずれて取り付けられた場合だけでなく、モータ本体51aに設けられた出力軸52用のベアリング53(
図3参照)が摩耗して軸のがたつきが大きくなった場合や、エンコーダディスク61に歪等の変形が生じている場合にも発生する可能性がある。
【0042】
ここで、本実施形態に示すレーザレーダ装置10の制御部12においては、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断機能(診断部85:
図4参照)を有していることを特徴の1つとしている。詳しくは、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている状況下にて出力されたエンコーダ信号から特定の波形の長さを示すデータである診断用データを把握(抽出)し、把握した診断用データに基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する構成となっていることを特徴の1つとしている。以下、当該診断に係る構成、具体的には制御部12にて定期処理の一環として実行される診断用データ準備処理及び診断用処理について説明する。
【0043】
図8のフローチャートに示すように、診断用データ準備処理においては先ず、ステップS101にて診断用データの準備条件が成立しているかを判定する。本実施形態では定期的に(例えば日ごとに)診断が実行される構成となっており、(1)物体OBを検出していない状況であること、(2)エンコーダ信号を正常に出力可能な状態ではない旨の報知を行っていない状況であること、(3)診断開始時刻となったことの各種条件が成立した場合に、ステップS101にて肯定判定をしてステップS102に進む。なお、ステップS101にて否定判定をした場合には、そのまま本準備処理を終了する。
【0044】
ステップS102では、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度(本実施形態では1回転=35msecとなる速度)となっているかを判定する。ステップS102にて否定判定をした場合には、そのまま本準備処理を終了する。ステップS102にて肯定判定をした場合には、ステップS103に進み、エンコーダ信号にてパルスが立ち上がったタイミング、すなわちエンコーダ信号がHIレベルとなったタイミングであるかを判定する。ステップS103にて肯定判定をした場合には、上記診断用データの元となるパルス周期のデータを確保する。具体的には、まずステップS104にて過去のパルス周期のデータのシフト処理を実行し、ステップS105にて今回のパルス周期のデータ、例えば先のパルスの立ち上がりから今回のパルスの立ち上がりまでの時間を示すデータを保存する。
【0045】
記憶部86には、
図9に示すように、過去のパルス周期のデータを各々記憶可能な記憶エリアとして第1エリアAD1~第4エリアAD4が設けられている。ステップS104の処理では、第4エリアAD4に記憶されているデータを消去し、第1エリアAD1~第3エリアAD3に記憶されているデータを下位エリア側に順にシフトさせる。そして、ステップS105の処理では今回のパルス周期のデータを、第1エリアAD1に保存する。
【0046】
図8の説明に戻り、データを確保した後、又はステップS103にてパルスの立ち上がりのタイミングではないと判定した場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、パルスの平均周期(以下、平均値ともいう)を算出するタイミングとなったかを判定する。本実施形態においては、1走査サイクル中(1回転中)に、パルス周期の平均値を複数回(本実施形態では3回)算出する構成となっている。初回は原点位置を通過してから所定の待機時間(本実施形態では10msec)が経過したタイミングとなった場合にステップS106にて肯定判定をし、それ以降は先の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングとなった場合にステップS106にて肯定判定をする。算出タイミングではない場合にはステップS106にて否定判定をして、そのまま本準備処理を終了する。
【0047】
ステップS106にて肯定判定をした場合にはステップS107に進む。ステップS107では、第1エリアAD1~第4エリアAD4に記憶されているパルス周期のデータからパルス周期の平均値を算出する。そして、算出した平均値を記憶部86の平均値記憶エリアに保存する。続くステップS108では、平均値の保存数が規定数(本実施形態では3)となったか否かを判定する。規定数となっていない場合には、そのまま本準備処理を終了する。規定数となっている場合には、ステップS109に進み、診断用フラグをセットした後、本準備処理を終了する。
【0048】
次に、
図10のフローチャートを参照して、診断用処理について説明する。診断用処理においては先ず、ステップS201にて診断用フラグがセットされているかを判定する。診断用フラグがセットされていない場合にはそのまま本診断用処理を終了する。診断用フラグがセットされている場合には、ステップS202に進み、算出した平均値が何れも予め設定されている基準範囲内となっているかを判定する。基準範囲内となっている場合には、平均値同士の比較処理を実行する。具体的には、先ずステップS203にて3つの平均値の差(絶対値)を各々算出する。その後は、ステップS204にて平均値の差が基準値(「閾値」に相当)よりも小さくなっているかを判定する。
【0049】
ステップS202及びステップS204の両方にて肯定判定をした場合、すなわち各平均値が何れも基準範囲内であり且つ平均値の差については基準値よりも小さい場合には、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態であると診断して、ステップS205にて診断用の各種データ及びフラグを消去した後、本診断用処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS202及びステップS204の何れかにて否定判定をした場合、すなわち平均値の何れかが基準範囲外である場合や平均値の差の何れかが基準値よりも大きい場合には、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態ではない、すなわちエンコーダ信号が異常であると診断して、ステップS206にて異常時処理を実行する。異常時処理では、上述したスピーカやランプ等の報知部を制御してレーザレーダ装置10の点検を促す報知を開始させる。その後は、ステップS205にて診断用の各種データ及びフラグを消去して、本診断用処理を終了する。
【0051】
なお、本実施形態では、ステップS202やステップS204にて否定判定をした場合に直ちにステップS206の異常時処理を実行する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、診断を複数の走査サイクルに亘って繰り返す構成とした上で、ステップS202やステップS204における否定判定が繰り返され、その繰り返し回数が所定の回数となった場合にステップS206の異常時処理を実行する構成としてもよい。
【0052】
次に、
図11のタイミングチャートを参照して、診断の流れについて説明する。なお、
図11においては回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている状況下にて出力された1走査サイクル(1回転)相当のエンコーダ信号を記載しているが便宜上、当該エンコーダ信号を構成しているパルスの数については実際のパルスの数よりも少なくしている。
【0053】
回転ブロック41の回転位置が原点位置となっているta0のタイミングでは1つ目のパルスの立ち上がりに合わせて新たな走査サイクルへ移り、監視エリアDEへ向けたレーザ光の照射が開始されている。ta0のタイミングから所定の待機時間が経過したta1のタイミングでは本走査サイクルにおけるパルスの平均周期を最初に算出するタイミングとなる。この時点では、記憶部86の第1エリアAD1~第4エリアAD4に直近4回分のパルス周期のデータが記憶されており、これらのデータから平均値AVE1を算出して保存する。
【0054】
ta1のタイミングから所定の待機時間が経過したta3のタイミングでは、本走査サイクルにおけるパルスの平均周期の2回目の算出タイミングとなっている。この時点では、記憶部86の第1エリアAD1~第4エリアAD4に記憶されているデータが直近4回分のパルス周期のデータに更新されており、これらのデータから平均値AVE2を算出して保存する。
【0055】
ここで、本走査サイクルにおけるレーザ光の投光区間についてはta3のタイミングの前のta2のタイミングで終了している。但し、本実施形態に示すエンコーダディスク61にはブランク部65を除く全周にスリット63が配列されており、投光区間及び非投光区間の両方にてエンコーダ信号はHIレベル/LOWレベルの2値に切り替わる構成となっている。すなわち、レーザ光の投光区間を過ぎたのちも走査サイクル終了までパルス列が続く構成となっている。
【0056】
ta3のタイミングから所定の待機時間が経過したta4のタイミングでは、本走査サイクルにおけるパルスの平均周期の3回目の算出タイミングとなる。この時点では、記憶部86の第1エリアAD1~第4エリアAD4に記憶されているデータが直近4回分のパルス周期のデータに更新されており、これらのデータから平均値AVE3を算出して保存する。
【0057】
図11に示す例では、ta0のタイミング~ta1のタイミングにてパルスが粗となっており、それが平均値AVE1に反映されている。つまり、平均値AVE1については、上述した通常のパターンにおける平均値よりも長くなっている。ta3のタイミング~ta4のタイミングにてパルスが密となっており、それが平均値AVE3に反映されている。つまり、平均値AVE3については、上述した通常のパターンにおける平均値よりも短くなっている。なお、ta1のタイミング~ta3のタイミングではパルスの出力パターンが通常のパターンとなっており、それが反映された平均値AVE2と他の平均値AVE1,AVE3との関係は、平均値AVE3 < 平均値AVE2 < 平均値AVE1となっている。
【0058】
ta4のタイミングでは、本走査サイクルに係る診断用データである3つの平均値AVE1~AVE3が揃っており、これら平均値AVE1~AVE3に基づいて診断を行う。
【0059】
平均値AVE2については上述した基準範囲内となっているものの、平均値AVE1,AVE3については基準範囲外となっている。そして、平均値AVE1及び平均値AVE2の差と、平均値AVE2及び平均値AVE3の差とは基準値よりも小さいものの、平均値AVE1及び平均値AVE3の差は基準値を超えている。本走査サイクルにおける診断ではエンコーダ信号を正常に出力できない状態となっていると診断し、異常報知を開始している。
【0060】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0061】
エンコーダディスク61が適正な位置に取りつけられていない場合やエンコーダディスク61に歪み等の変形が生じている場合、更には回転ブロック41の回転軸にがたつきが生じている場合には、出力されるエンコーダ信号の一部に影響が及ぶ可能性が高い。そこで、本実施形態に示したように、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている状況下の所定の周回にて出力されるエンコーダ信号の一部からパルス周期の平均値を把握し、把握した平均値に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、レーザ光を上手く照射できない状況となっていることを速やかに発見できる。早期発見によってパルスに粗密の差が生じる機会を減らすことができるため、物体OBの検出の遅れを抑制し、レーザレーダ装置10による物体OBの検出精度の向上に寄与できる。これは、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で有利である。
【0062】
エンコーダディスク61については製造誤差によってスリット63の大きさや位置等が僅かながらばらつく可能性がある。そのような誤差については寸法公差の範囲内であれば大きな影響はないものの、診断精度の向上を図る上ではこのような誤差の影響についても配慮することが好ましい。この点、本実施形態に示したように、複数のパルス周期から平均値を算出する構成とすれば、一部のパルス周期のデータについて製造誤差の影響が強く現れていたとしてもそれが診断結果に及ぼす影響を緩和することができる。また、レーザレーダ装置10に振動や衝撃等が加わった場合にはエンコーダ信号に瞬間的な乱れが生じる可能性がある。1のパルス周期を診断用データとした場合には、そのような外乱が強く影響して診断結果が左右される可能性が高くなる。この点、本実施形態に示したように、複数のパルス周期の平均値を診断用データとすることは、外乱の影響を抑える上でも好ましい。なお、製造誤差によって1のスリット63と両隣のスリット63の一方との距離が小さくなれば、他方のスリット63との距離は大きくなり得る。そこで、山と谷とが繰り返すパルス列については、診断用データ=パルス周期の平均値とすることで、上述したようなスリット63の位置の偏りの影響を緩和しやすくなる。
【0063】
本実施形態では、異なる複数の区間にてパルス周期の平均値を各々算出して、それら平均値同士を比較している。このような構成とすれば、各平均値については小さな影響が現れているに過ぎない場合であっても、エンコーダディスク61全体では大きな影響となるような場合に、見逃しが生じることを抑制できる。
【0064】
同一の走査サイクルで把握した平均値同士を比較することにより、各平均値を把握する際の状況を揃えやすくなる。状況を揃えて比較対象となる診断用情報を各々把握することは、風や振動等の外力の影響(外乱)を抑えて診断機能の信頼性向上を図る上で有利である。
【0065】
平均値算出の元となるパルスについては1走査サイクルに相当するパルス群の一部となるように対象が絞られており、それ以外のパルスについては対象外となる。平均値算出用のデータの母数が大きくなると、パルスのばらつきの影響が埋没しやすくなるが、本実施形態に示すように、敢えて対象となるパルスと非対象となるパルスとを分けることで、パルスのばらつきの影響が埋没することを抑制し、エンコーダ信号の異常の速やかな発見に寄与できる。
【0066】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態に示した診断機能を更に強化するための工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、
図12を参照して、本実施形態における特徴的な構成を第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても、1走査サイクル中(1回転中)の複数の区間についてパルスの平均周期を算出している点では第1の実施形態と同様である。
【0067】
第1の実施形態では、何れの走査サイクルにおいても平均値を最初に算出する区間(以下、対象区間ともいう)が原点位置を基準として決定される構成、すなわち所定の待機時間については走査サイクルを跨いでカウントされない構成とした。このような構成においては、都度の診断にて同じ区間を対象とて診断が実行されることとなる。
【0068】
これに対して、本実施形態では、連続する複数(具体的には18回)の走査サイクルにて診断が各々実行される構成となっており、その間は走査サイクルを跨いで所定の待機時間がカウントされる構成となっている。つまり、先の走査サイクルにおける最後の平均値の算出タイミングから所定の待機時間のカウントした場合であってそのカウント中に次の走査サイクルに移る場合にも当該カウントが継続される構成となっている。
【0069】
そして、本実施形態に示す所定の待機時間(11msec)については、回転ブロック41の回転速度が目標回転速度となっている場合の1走査サイクルの所要時間(35msec)の非整数倍となっている。このため、走査サイクルが進むごとに平均値算出の対象となる区間が中心軸線CL2を中心とする円の円周方向、具体的には走査方向とは反対の方向に少しずつずれる(シフトする)こととなる。
【0070】
図12に示す例では、診断開始後のN回目の走査サイクル(N回転目)では、対象区間Sa1~Sa3について平均値AVEa1~AVEa3が算出されている。本走査サイクルにおける3回目の算出タイミングから所定の待機時間をカウントしている最中に回転ブロック41が原点位置に戻り次の走査サイクルに移っている。この場合、所定の待機時間(11msec)×算出回数(3回)の積(33msec)と1走査サイクルの所要時間(35msec)の差分(2msec)だけ上述したずれが生じることとなる。
【0071】
具体的には、N+1回目の走査サイクル(N+1回転目)では、N回目の走査サイクルにおける3回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで1回目の算出タイミングとなり、当該算出タイミングから遡って直近M回分のパルス周期を含む対象区間Sb1について平均値AVEb1が算出される。つまり、原点位置に戻ってから1回目の算出タイミングとなるまでの時間についてはN回目の走査サイクルと比べて上記差分だけ短くなる。本走査サイクルにおける1回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで2回目の算出タイミングとなり対象区間Sb2について平均値AVEb2が算出され、2回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで3回目の算出タイミングとなり対象区間Sb3について平均値AVEb3が算出される。
【0072】
本走査サイクルにおける3回目の算出タイミングから所定の待機時間をカウントしている最中に原点位置に戻り次の走査サイクルに移っている。この場合、再び上述したずれが生じることとなる。具体的には、N+2回目の走査サイクル(N+2回転目)では、N+1回目の走査サイクルにおける3回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで1回目の算出タイミングとなり、当該算出タイミングから遡って直近M回分のパルス周期を含む対象区間Sc1について平均値AVEc1が算出される。つまり、原点位置に戻ってから1回目の算出タイミングとなるまでの時間についてはN+1回目の走査サイクルと比べて上記差分だけ短くなる。本走査サイクルにおける1回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで2回目の算出タイミングとなり対象区間Sc2について平均値AVEc2が算出され、2回目の算出タイミングから所定の待機時間が経過したタイミングで3回目の算出タイミングとなり対象区間Sc3について平均値AVEc3が算出される。
【0073】
ここで、タイミングによっては、対象区間の何れかがブランク部65の少なくとも一部を含む可能性がある。ブランク部65についてはエンコーダ信号がLOWレベルとなる時間が肉部64よりも長く、これが診断用情報に紛れることで診断精度が低下し得る。そこで、本実施形態では、ブランク部65を通過する際はパルス周期の計測を無効とし、計測結果が平均値の算出に用いられないようにしている。なお、本実施形態においては各対象区間がブランク部65よりも長くなっており、対象区間にブランク部65全体が含まれる場合であっても当該対象区間について少なくとも複数回分のパルス周期のデータが確保されるように規定されている。
【0074】
また、上述した対象区間のずれ量については、前後の走査サイクルにて対象区間の一部が重複するように、すなわちパルス周期の計測対象となるスリット63が前後の走査サイクルにて一部重複するように規定されている。具体的には、先の走査サイクルにおける1回目の対象区間と次の走査サイクルにおける1回目の対象区間とは一部が重複し、先の走査サイクルにおける2回目の対象区間と次の走査サイクルにおける2回目の対象区間とは一部が重複し、先の走査サイクルにおける3回目の対象区間と次の走査サイクルにおける3回目の対象区間とは一部が重複する。例えば、
図12に示す例では、N回目の走査サイクルにおける1回目の対象区間Sa1についてはN+1回目の走査サイクルにおける1回目の対象区間Sb1と一部が重複し、N+1回目の走査サイクルにおける1回目の対象区間Sb1についてはN+2回目の走査サイクルにおける1回目の対象区間Sc1と一部が重複している。
【0075】
このようにして、走査サイクルが進むごとに対象区間が少しずつずれる構成として対象区間を拡大することにより、上述した異常の見逃しを抑制できる。特に、対象区間をずらす際には一部を敢えて重複させることにより、見逃しを抑制する効果を一層好適に発揮させることができる。
【0076】
本実施形態では、算出タイミングとなる周期と目標回転速度となっている場合の1走査サイクルの所要時間との関係を工夫したことにより、走査サイクルが進むごとに自動的に対象区間がずれる。これにより、対象区間のずれを発生させるための構成を簡易に実現できる。なお、算出タイミングとなる周期の整数倍が目標回転速度となっている場合の1走査サイクルの所要時間とならない構成とすることは、対象区間を少しずつずらしながら走査サイクルの全区間をカバーする上で好ましい。
【0077】
<第3の実施形態>
レーザレーダ装置10については様々な環境下で使用される。このため、振動や衝撃等が加わる可能性を否定できない。本来であればエンコーダ信号を正常に出力可能な状態であるにも関わらず、振動や衝撃等を要因とした外乱の影響がエンコーダ信号に及んだ場合に「異常」が発生しているとの誤診断が発生すると、診断機能ひいてはレーザレーダ装置10に対する信頼性が低下すると懸念される。本実施形態では、診断における外乱耐性の向上を図る工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、第1及び第2の実施形態との相違点を中心に当該工夫について説明する。
【0078】
本実施形態においても、1走査サイクルにおける3つの区間にてパルス周期の平均値AVE1~AVE3を算出し、それら算出した平均値AVE1~AVE3を基準範囲と比較するとともに、平均値AVE1~AVE3同士の差を基準値と比較している。
【0079】
図13には、本実施形態における診断にて、「正常」と診断するパターンと、「異常」と診断するパターンとを記載している。パルス周期の平均値AVE1~AVE3の何れも基準範囲内であり且つそれら平均値AVE1~AVE3の差が何れも基準値よりも小さい場合には、診断結果=「正常」となる。一方、平均値AVE1~AVE3の何れかが基準範囲を外れている場合や、それら平均値AVE1~AVE3の差の何れかが基準値よりも小さい場合には、診断結果=「異常」となる。また、平均値AVE1~AVE3の全てが基準範囲を外れており、それら平均値AVE1~AVE3の差の何れもが基準値よりも小さい場合には、診断結果=「異常」となる。これらのパターンについては、第1の実施形態等と同様である。
【0080】
これに対して、平均値AVE1~AVE3が全て基準範囲を外れている場合であっても、それら平均値AVE1~AVE3の差が何れも基準値よりも小さい場合には、診断結果=「異常」とはせず、「診断結果」=「正常」とする。回転ブロック41(エンコーダディスク61)については高速で回転するため、エンコーダ信号に外乱の影響が及んだ場合には、短期間(例えば同一走査サイクル)で算出した平均値AVE1~AVE3については何れも当該影響が反映される可能性が高い。一方で、エンコーダディスク61の取り付け位置がずれていたり、エンコーダディスク61に歪み等の変形が生じていたり、回転軸のがたが大きくなっていたりする場合には、その影響が全ての平均値AVE1~AVE3におよぶ可能性は低い。特に、上述した対象区間を互いに遠ざけることで当該可能性は更に低くなる。つまり、仮に平均値AVE1~AVE3の全てが基準範囲を外れている場合には外乱を要因としている可能性が高いと想定される。そして、それら平均値AVE1~AVE3の差の何れも基準値より小さい場合には、外乱が要因である可能性が更に高くなる。よって、このような場合には数値上は異常であったとしても「正常」と診断する(「異常」と診断しない)ことで、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態にて偶発的にエンコーダ信号が乱れたとしても、それによって異常報知等が頻発することを抑制できる。これにより、外乱耐性の向上に寄与できる。
【0081】
なお、平均値AVE1~AVE3の差を算出する場合には、それら平均値AVE1~AVE3について個々の組み合わせの差を算出するのではなく、平均値AVE1~AVE3の最大値と最小値との差を算出することで、診断に係る構成を一部簡略化してもよい。このような構成においては、平均値AVE1~AVE3が全て基準範囲を外れている場合であっても、それら平均値AVE1~AVE3の最大値と最小値との差が基準値よりも小さい場合には、診断結果=「異常」とはせず、「診断結果」=「正常」とするとよい。
【0082】
また、本実施形態では、平均値AVE1~AVE3が全て基準範囲を外れている場合であっても、それら平均値AVE1~AVE3の差が何れも基準値よりも小さい場合には「診断結果」=「正常」とする構成としたが、これを以下のように変更してもよい。すなわち、「診断結果」=「異常」とする一方、当該診断結果を契機とした異常時処理(S206)については実行されない構成、すなわち異常報知等が回避される構成としてもよい。
【0083】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。また、上記各実施形態に示した各種構成の全て又は一部を任意に組み合わせることも可能である。この場合、組み合わせの対象となる各構成の技術的意義(発揮される効果)が担保されることが好ましい。
【0084】
・上記各実施形態では、エンコーダ信号のパルス周期(詳しくは平均周期)を把握し、把握したパルス周期に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する構成としたが、1走査サイクル分(回転ブロック41の1周分)のエンコーダ信号の一部を抽出して「診断用情報」とする構成とするのであれば、具体的構成については任意である。例えば、「診断用情報」として1パルスのON時間(パルスの立ち上がりから立ち下がりまでの時間:パルス幅)を把握し、把握したON時間に基づいて上記診断を行う構成としてもよいし、「診断用情報」として1パルスのOFF時間(パルスの立ち下がりから立ち上がりまでの時間)を把握し、把握したOFF時間に基づいて上記診断を行う構成としてもよい。
【0085】
・上記各実施形態では、エンコーダ信号が正常に出力される状態であるかをパルス周期の平均値に基づいて診断する構成としたが、これに代えて、1のパルスのパルス周期に基づいて当該診断を行う構成とすることも可能である。
【0086】
・上記各実施形態では、パルスの平均周期と基準値との比較とそれら平均周期同士の比較との両方を行う構成としたが、これら2種の比較のうち一方のみを行う構成とすることも可能である。
【0087】
・1の対象区間におけるパルス周期のデータの収集を複数の走査サイクルで分けて実行する構成とすることも可能である。例えば、1の対象区間を複数の小区間に分割し、複数の走査サイクルに分けて各小区間におけるパルス周期のデータを収集する構成としてもよい。この場合、各小区間におけるパルス周期のデータ収集が完了した場合にそれらデータから上記1の対象区間におけるパルスの平均周期を算出するとよい。
【0088】
・上記各実施形態では、パルス周期の平均値を算出するタイミングとなった場合にはそれよりも前に記憶されているパルス周期のデータから平均値を算出する構成としたが、これに限定されるものではない。パルス周期の平均値を算出するタイミングとなった場合にはそれ以降に記憶されるパルス周期のデータから平均値を算出する構成としてもよい。
【0089】
・パルス周期の平均値の算出周期については、回転ブロック41の回転速度(モータ51の回転速度)に応じて変動する可変値とすることも可能である。例えば、回転ブロック41の目標回転速度として相対的に遅い第1回転速度と相対的に速い第2回転速度とが設けられている場合には、第1回転速度である場合の算出周期と比べて第2回転速度である場合の算出周期を短くするとよい。より詳しくは、目標回転速度に比例するようにして算出周期を変更するとよい。
【0090】
・上記各実施形態では、レーザ光を監視エリアDEへ投光する投光区間及びレーザ光を監視エリアDEへ投光しない非投光区間の何れについても対象区間となり得る構成としたが、非投光区間については仮にレーザ光群に粗密が発生しても影響が小さい点を考慮すれば、当該非投光区間については対象区間とならない構成としてもよい。
【0091】
・上記第2の実施形態では、前後の走査サイクルで対象区間を一部重複させる構成としたが、前後の走査サイクルで対象区間を重複させない構成とすることも可能である。例えば、
図14に示すように、2回目の走査サイクル(2回転目)では、1回目の走査サイクル(1回転目)の第1の区間Sa1と第2の区間Sa2との間に第1の区間Sb1が位置し、第2の区間Sa2と第3の区間Sa3との間に第2の区間Sb2が位置し、第3の区間Sa3と第1の区間Sa1との間に第3の区間Sb3が位置する構成とし、3回目の走査サイクル(3回転目)では、2回目の走査サイクル(2回転目)の第1の区間Sb1と第2の区間Sb2との間に第1の区間Sc1が位置し、第2の区間Sb2と第3の区間Sb3との間に第2の区間Sc2が位置し、第3の区間Sb3と第1の区間Sb1との間に第3の区間Sc3が位置する構成とするとよい。
【0092】
・上記第2の実施形態では、走査サイクル毎に対象区間をずらす構成としたが、対象区間をずらすための具体的構成については任意に変更してもよい。
【0093】
(1)対象区間の開始タイミングを決める構成とし、原点位置から対象区間となるまでの待機時間を走査サイクルを重ねる毎に延長する又は短縮する構成とするとよい。例えば、
図15に示すように、原点位置となっているtc0のタイミングから時間を計測し、診断開始後の1回転目はtc0のタイミングから第1の待機時間TX1を経過したtc1のタイミングで対象区間(第1の区間Sa1)となり、2回転目はtc0のタイミングから第1の待機時間TX1よりも長い第2の待機時間TX2を経過したtc2のタイミングで対象区間(第1の区間Sb1)となり、3回転目はtc0のタイミングから第2の待機時間TX2よりも長い第3の待機時間TX3を経過したtc3のタイミングで対象区間(第1の区間Sc1)となるように構成するとよい。
【0094】
(2)
図16(a)に示すように1走査サイクルを複数の区間SA~SJに分けた上で、各走査サイクルにて対象区間として設定する区間をそれら複数の区間SA~SJから抽選で決定する構成としてもよい。この場合、先の抽選で設定された区間については後の抽選では設定候補から外すことで、対象区間を走査サイクル毎にずらす構成を実現できる。
【0095】
(3)
図16(a)に示すように1走査サイクルを複数の区間SA~SBに分けた上で、どの順序でそれら複数の区間SA~SJを対象区間として設定するかを定めたマップ(
図16(b)参照)を記憶し、当該マップを参照して対象区間を走査サイクル毎に設定する構成としてもよい。この場合、複数の区間SA~SJが一巡するまで同一区間の再設定が回避されるようにマップを形成するとよい。
【0096】
・上記各実施形態では、対象区間(抽出区間)の間に非対象区間(非抽出区間)を介在させる構成としたが、それら非対象区間を省略し、隣り合う対象区間を連続させる構成とすることも可能である。例えば、
図17に示すように、1走査サイクル(1回転)を複数の連続する対象区間S1~S3に分けて、1走査サイクル中に対象区間S1におけるパルス周期の平均値AVE1と、対象区間S2におけるパルス周期の平均値AVE2と、対象区間S3におけるパルス周期の平均値AVE3とを算出し、それら平均値AVE1~AVE3に基づいて診断を行う構成としてもよい。但し、このような構成ではサンプルとなるパルス周期の数が多くなることで、パルス周期が一部変化したとしても当該変化が埋没しやすくなる。また、サンプル数が多くなることで記憶部86の記憶容量が圧迫されやすくなったり制御負荷が大きくなったりする。故に、第1の実施形態等に示したように、敢えて非対象区間を設けることには技術的意義があり、第2の実施形態に示すように1の走査サイクルにおける非対象区間については他の走査サイクルにてカバーすることにより、実用上好ましい構成を実現できる。
【0097】
・
図6に示したように、エンコーダディスク61については当該エンコーダディスク61の中心軸線CL2が回転ブロック41の中心軸線CL1からずれて取り付けられる可能性がある。この場合、エンコーダディスク61の中心を挟んでパルス周期やパルス幅が短くなる部分と、パルス周期やパルス幅が長くなる部分とが発生し得る。このような事情に鑑みれば、対象区間を中心軸線CL1,CL2を挟んで相対峙するように設定することで平均値を比較した場合の差に上記ずれの影響が顕著に反映されることになる。
【0098】
・上記各実施形態では、レーザレーダ装置10による監視エリアDEの監視中に上記診断が実行される構成としたが、これに代えて又は加えて、監視エリアDEの監視が行われていない状況下にて上記診断を実行する構成とすることも可能である。
【0099】
・上記各実施形態では、レーザレーダ装置10の制御部12にてエンコーダ信号が正常に出力される状態であるかの診断が実行される構成としたが、レーザレーダ装置10やロータリエンコーダ60の製造工程(例えば検査工程)等に設置された検査装置によって当該診断が実行される構成とすることも可能である。なお、ロータリエンコーダ60に当該ロータリエンコーダ60用の制御装置を設け上記診断を当該制御装置にて実行する構成としてもよい。
【0100】
・上記各実施形態に示した光電式のロータリエンコーダ60に代えて磁気式のロータリエンコーダを用いてもよい。
【0101】
・上記各実施形態に示したエンコーダ信号の診断に係る構成をレーザレーダ装置10以外の機器(例えば自動車やロボット)に適用することも可能である。
【0102】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0103】
特徴1.監視エリア(監視エリアDE)へレーザ光を照射する照射部(レーザダイオード21及び変更ユニット40)と、物体(物体ОB)により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部(フォトダイオード31)とを備え、前記レーザ光を反射した物体が前記監視エリアに位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況(受光量等)に基づいて判定するレーザレーダ装置(レーザレーダ装置10)であって、
前記照射部は、所定の走査方向へ回転することにより前記レーザ光の照射方向を変更可能な変更部(回転ブロック41)を含み、
前記所定の走査方向へ前記変更部と一体的に回転可能であり、前記所定の走査方向に複数の被検出部(例えばスリット63)が配列された回転体(エンコーダディスク61)と、所定の検出位置(検出位置DP)に位置する前記被検出部を検出可能な検出部(フォトインタラプタ71)とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダ(ロータリエンコーダ60)を備え、
前記ロータリエンコーダから入力された前記エンコーダ信号の各パルスに基づいて前記レーザ光の出力制御(例えばON/OFF制御)を行うことにより、前記レーザ光を周期的に照射する構成となっており、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力された前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力された特定の波形の長さを示す情報である診断用情報(パルス周期やパルス幅等)を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断部(制御部12における診断部85)を備えているレーザレーダ装置。
【0104】
例えばロータリエンコーダを搭載する際の作業ばらつきによって、回転体(例えばエンコーダディスクや磁気ドラム)の中心と変更部の回転中心とがずれた場合には、1周分のエンコーダ信号を構成しているパルス列の一部にてパルスの出力パターンが基本となるパターンから乖離し得る。この乖離が大きくなった場合には出力されるエンコーダ信号はパルス幅やパルス周期等が想定範囲から外れた異常な信号となる。このような異常な信号については、ベアリングの摩耗等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合や、回転体に歪等の変形が生じている場合にも発生する可能性がある。
【0105】
仮に上述したような異常なエンコーダ信号に基づいてレーザ光が出力される場合には、レーザ光が想定よりも短い間隔で照射されたり、想定よりも長い間隔で照射されたりすることとなる。特に、レーザ光が想定よりも長い間隔で照射される場合には、そのような変化がない場合と比較して、レーザ光が物体に上手く当たらず当該物体の検出が遅れたり同物体の検出漏れが発生しやすくなったりすると懸念される。これは、物体の検出精度を低下させる要因になるため好ましくない。特に、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で妨げになる。
【0106】
この点、本特徴に示す構成によれば、パルスに変化が生じることに着目し、回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下の所定の周回にて出力されるエンコーダ信号から特定の波形の長さを示す診断用情報を把握している。この診断用情報に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、レーザ光を上手く照射できない状況となっていることを速やかに発見できる。これにより、例えば使用者にレーザレーダ装置の点検等を促すといった対応が可能となる。以上の理由から、物体の検出の遅れを抑制し、レーザレーダ装置による物体の検出精度の向上に寄与できる。これは、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で有利である。
【0107】
特徴2.監視エリア(監視エリアDE)へレーザ光を照射する照射部(レーザダイオード21及び変更ユニット40)と、物体(物体ОB)により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部(フォトダイオード31)とを備え、前記レーザ光を反射した物体が前記監視エリアに位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況(受光量等)に基づいて判定するレーザレーダ装置(レーザレーダ装置10)であって、
前記照射部は、所定の走査方向へ回転することにより前記レーザ光の照射方向を変更可能な変更部(回転ブロック41)を含み、
前記所定の走査方向へ前記変更部と一体的に回転可能であり、前記所定の走査方向に複数の被検出部(例えばスリット63)が並ぶように形成された回転体(エンコーダディスク61)と、所定の検出位置(検出位置DP)に位置する前記被検出部を検出可能な検出部(フォトインタラプタ71)とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダ(ロータリエンコーダ60)を備え、
前記被検出部は前記所定の走査方向において所定角度(例えば0.25°)毎に形成されており、前記ロータリエンコーダから入力された前記エンコーダ信号に基づいて前記レーザ光の出力制御(例えばON/OFF制御)を行うことにより、前記レーザ光を周期的に照射する構成となっており、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力された前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力された特定の波形の長さを示す情報である診断用情報(パルス周期やパルス幅等)を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断部(制御部12における診断部85)を備えているレーザレーダ装置。
【0108】
例えばロータリエンコーダを搭載する際の作業ばらつきによって、回転体(例えばエンコーダディスクや磁気ドラム)の中心と変更部の回転中心とがずれた場合には、1周分のエンコーダ信号を構成しているパルス列の一部にてパルスの出力パターンが基本となるパターンから乖離し得る。この乖離が大きくなった場合には出力されるエンコーダ信号はパルス幅やパルス周期等が想定範囲から外れた異常な信号となる。このような異常な信号については、ベアリングの摩耗等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合や、回転体に歪等の変形が生じている場合にも発生する可能性がある。
【0109】
仮に上述したような異常なエンコーダ信号に基づいてレーザ光が出力される場合には、本来所定角度毎に照射されるはずのレーザ光が想定よりも短い間隔で照射されたり想定よりも長い間隔で照射されたりする。特に、レーザ光が想定よりも長い間隔で照射される場合には、そのような変化がない場合と比較して、レーザ光が物体に上手く当たらず当該物体の検出が遅れたり同物体の検出漏れが発生しやすくなったりすると懸念される。これは、物体の検出精度を低下させる要因になるため好ましくない。特に、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で妨げになる。
【0110】
この点、本特徴に示す構成によれば、パルスに変化が生じることに着目し、回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下の所定の周回にて出力されるエンコーダ信号から特定の波形の長さを示す診断用情報を把握している。この診断用情報に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、レーザ光を上手く照射できない状況となっていることを速やかに発見できる。これにより、例えば使用者にレーザレーダ装置の点検等を促すといった対応が可能となる。以上の理由から、物体の検出の遅れを抑制し、レーザレーダ装置による物体の検出精度の向上に寄与できる。これは、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で有利である。
【0111】
なお、特徴1及び特徴2に示す「特定の波形の長さを示す情報(診断用情報)」については、例えばエンコーダ信号の立ち上がりから次の立ち上がりまでの時間やエンコーダ信号の立ち下がりから次の立ち下がりまでの時間、すなわちエンコーダの信号のパルス周期であってもよいし、エンコーダ信号の立ち上がりから立ち下りまでの時間(パルスのON時間又はパルス幅)であってもよいし、エンコーダ信号の立ち下がりから立ち上がりまでの時間(パルスのOFF時間)であってもよい。
【0112】
因みに、特徴1及び特徴2に示す「診断部」に係る構成を「前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力された前記エンコーダ信号において走査サイクル中の所定区間にて出力される特定の波形の長さを示す情報である診断用情報(パルス周期やパルス幅等)を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する」又は「前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下にて出力された1走査サイクルに相当するエンコーダ信号の一部である特定部分の長さを示す診断用情報(パルス周期やパルス幅等)を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する」に変更することも可能である。
【0113】
特徴3.前記区間の長さは、前記特定の波形を複数含む長さとなるように規定されており、
前記診断用情報は、前記区間における複数の前記特定の波形の長さの平均値を示す情報である特徴2に記載のレーザレーダ装置。
【0114】
回転体については製造誤差によって被検出部の大きさや位置等が僅かながらばらつく可能性がある。そのような誤差が寸法公差の範囲内であれば大きな影響はないものの、診断精度の向上を図る上ではこのような誤差の影響を抑えることには技術的意義がある。この点、本特徴に示すように、複数の特定の波形について長さを平均する構成とすれば、そのような誤差が診断結果におよぼす影響を好適に緩和できる。
【0115】
特徴4.前記特定の波形は1パルス周期に相当する波形であり、
前記区間の長さは、前記特定の波形を複数含むように規定されており、
前記診断用情報は、前記所定区間におけるパルス周期の平均値であり、
前記診断部は、前記平均値に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する特徴1に記載のレーザレーダ装置。
【0116】
回転体については製造誤差によって被検出部の大きさや位置等が僅かながらばらつく可能性がある。そのような誤差が寸法公差の範囲内であれば大きな影響はないものの、診断精度の向上を図る上ではこのような誤差の影響を抑えることには技術的意義がある。この点、本特徴に示すように、パルス周期を平均する構成とすれば、そのような誤差が診断結果におよぼす影響を好適に緩和できる。
【0117】
また、製造誤差によって1の被検出部が両隣の被検出部の一方との距離が小さくなれば、他方の被検出部との距離は大きくなり得る。つまり、山と谷とが繰り返すパルス列については、複数の特定の波形から平均値を算出する場合に、当該特定の波形が山と谷とを両方含むものとして診断用情報=パルス周期の平均値とすることで、上述したような被検出部の位置の偏りの影響を緩和しやすくなる。
【0118】
特徴5.前記診断部は、異なる複数の前記区間における前記診断用情報を各々把握し、前記把握した診断用情報同士の比較結果に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する特徴2乃至特徴4のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0119】
照射部が目標回転速度で回転している場合に、異なる複数の上記区間における診断用情報を各々把握し、それら診断用情報同士の比較結果を踏まえて診断を行うことにより、風や振動等の外力の影響(外乱)を抑えて診断機能の信頼性向上に寄与できる。
【0120】
特徴6.前記診断部は、前記回転体が1周する間に入力される前記エンコーダ信号について異なる複数の前記区間における前記診断用情報を各々把握し、前記把握した診断用情報同士の比較結果に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する特徴2乃至特徴4のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0121】
同一周回で把握した診断用情報同士を比較することにより、診断用情報を把握する際の状況を揃えやすくなる。状況を揃えて比較対象となる診断用情報を各々把握することは、特徴5に示した効果を発揮させる上で好ましい。
【0122】
特徴7.前記異なる複数の区間は、前記診断部による把握対象となる対象区間であり、
それら対象区間の間に前記診断部による把握対象とならない非対象区間が介在するように規定されている特徴4又は特徴5に記載のレーザレーダ装置。
【0123】
平均値算出用の情報の母数が大きくなると、パルスのばらつきの影響が埋没しやすくなる。この点、本特徴に示すように、敢えて非対象となる区間を設けることで、パルスのばらつきの影響が埋没することを抑制し、エンコーダ信号の異常の速やかな発見に寄与できる。
【0124】
特徴8.前記異なる複数の区間として、第1区間及び第2区間を含み、
前記第1区間及び前記第2区間は、前記回転体の回転中心を挟んで相対峙するように設定される特徴5乃至特徴7のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0125】
回転体については当該回転体の中心が照射部の回転中心からずれて取り付けられる可能性がある。この場合、回転体の中心を挟んで平均周期やパルス幅が短くなる部分と、平均周期やパルス幅が長くなる部分とが発生し得る。それらの部分が比較対象に含まれる構成とすることにより、差が顕著に表れることとなる。これは、診断精度の向上を図る上で好ましい。
【0126】
特徴9.前記診断部は、前記把握した前記診断用情報と予め設定されている基準範囲とを比較し、その比較結果に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する特徴2乃至特徴4のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0127】
本特徴に示すように、診断用情報と基準範囲とを比較する構成とすれば、エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを簡易に診断できる。
【0128】
特徴10.前記診断部は、異なる複数の前記区間における前記診断用情報を各々把握し、前記把握した診断用情報同士を比較し且つそれら診断用情報と予め設定されている閾値とを比較し、前記把握した診断用情報同士の差が前記閾値よりも小さく且つ前記把握した診断用情報が何れも前記基準範囲内である場合には、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていると診断し、前記把握した診断用情報同士の差が前記閾値よりも大きい場合又は前記把握した診断用情報の何れかが前記基準範囲外である場合には、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていないと診断する特徴1乃至特徴3のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0129】
本特徴に示すように診断用情報を基準範囲と比較するだけでなく、診断用情報同士を比較する構成とすれば、診断精度の更なる向上に寄与できる。
【0130】
特徴11.前記診断部により、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっていないと診断された場合に異常処理を実行する構成となっており、
前記把握した診断用情報同士の差が前記閾値よりも小さ一方、前記把握した診断用情報が何れも前記基準範囲外である場合には、前記異常処理が行われない構成となっている特徴10に記載のレーザレーダ装置。
【0131】
例えば風や振動等の外力の影響を受けて照射部の回転速度が一時的に変化した場合には、診断用情報同士の差が閾値よりも小さ一方、診断用情報が何れも基準範囲外となる可能性がある。このような場合には、異常処理が行われない構成とすることで、異常が生じていない状況下にて異常処理が多発して、レーザレーダ装置に対する信頼性が低下することを好適に抑制できる。
【0132】
特徴12.前記区間の設定位置を前記回転体の周回が進むことで当該回転体の回転方向又は当該回転方向とは反対の方向にシフトさせる特徴2乃至特徴11のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0133】
特徴2に示したパルスのばらつきについては、1周分(1サイクル分)のエンコーダ信号のどの部分においても発生する可能性がある。そこで、本特徴に示すように、区間の設定位置を回転体の周回が進むことで当該回転体の回転方向又は当該回転方向とは反対の方向にシフトさせる構成とすれば、異常が見逃される機会を減らすことができる。
【0134】
また、1の周回でエンコーダ信号全体を診断しようとした場合には、診断に係る制御負荷が局所的に大きくなる。この点、複数の周回で分けて診断を行う構成とすることで、診断に係る局所的な制御負荷の増大を好適に抑制できる。これは、レーザ光の出力制御や照射部の回転制御との共存を図る上で好ましい。
【0135】
なお、特徴5等(相互比較関連)との組み合わせにおいては特に、「前記異なる複数の区間の設定位置を前記回転体の回転に応じて当該回転体の回転方向又は当該回転方向とは反対の方向に各々シフトさせる」構成とするとよい。この場合、シフト時には各区間の位置関係が維持される構成とすることが好ましい。
【0136】
特徴13.前記区間は、前記シフトの前後で重複しないように規定されている特徴12に記載のレーザレーダ装置。
【0137】
シフト前後で上記区間を重複させない構成とすれば、効率よくパルスのばらつきを見極めることができる。
【0138】
特徴14.前記診断部は、前記回転体の回転速度が前記目標回転速度となっている状況下にて、複数の周回について前記診断を繰り返す構成となっており、
前記診断用情報のサンプリング周期を整数倍にした値が目標回転速度で回転している前記回転体の回転周期と不一致となるように規定されている特徴1乃至特徴13のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【0139】
本特徴に示す構成によれば、周回を重ねる毎にサンプリング用の上記区間が徐々にシフトする構成を簡易に実現できる。
【0140】
特徴15.監視エリア(監視エリアDE)へレーザ光を照射する照射部(レーザダイオード21及び変更ユニット40)と、物体(物体OB)により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部(フォトダイオード31)とを備え、前記レーザ光を反射した物体が前記監視エリアに位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況(受光量等)に基づいて判定するレーザレーダ装置(レーザレーダ装置10)であって、
前記照射部は、所定の走査方向に回転することにより前記レーザ光の照射方向を変更可能な変更部(回転ブロック41)を含み、
フォトインタラプタ(フォトインタラプタ71)と、前記変更部とともに前記所定の走査方向に回転可能に設けられ、前記フォトインタラプタの光が通過可能な光通過部(スリット63)と非通過部(肉部64)とが前記所定の走査方向において交互に形成されているエンコーダディスク(エンコーダディスク61)とを有し、前記エンコーダディスクの回転に伴い前記フォトインタラプタの光路(検出位置DP)を前記光通過部及び前記非通過部が順に通過することによりパルス状の波形が連続したエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダ(ロータリエンコーダ60)を備え、
前記光通過部は前記所定の走査方向において所定角度毎に形成されており、前記ロータリエンコーダから入力された前記エンコーダ信号に基づいて前記レーザ光の出力制御(例えばON/OFF制御)を行うことにより、前記エンコーダ信号のパルス周期に合わせてレーザ光を順次照射する構成となっており、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下にて前記エンコーダ信号のパルス周期を把握し、当該把握したパルス周期に基づいて、前記エンコーダ信号が正常に出力される状態となっているかを診断する診断部(制御部12における診断部85)を備えているレーザレーダ装置。
【0141】
例えばロータリエンコーダを搭載する際の作業ばらつきによって、エンコーダディスクの中心と変更部の回転中心とがずれた場合には、1周分のエンコーダ信号を構成しているパルス列の一部にてパルスの出力パターンが基本パターンから変化し得る。具体的には、パルス周期が変化する可能性、すなわち異常な信号となる可能性がある。このような事象については、摩耗等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合や、エンコーダディスクに歪等の変形が生じている場合にも発生する。
【0142】
仮に上述したような正常に出力されていないエンコーダ信号に基づいてレーザ光を出力した場合には、本来所定角度毎に照射されるはずのレーザ光が想定よりも短い間隔で照射されたり想定よりも長い間隔で照射されたりする。特に、レーザ光が想定よりも長い間隔で照射される場合には、そのような変化がない場合と比較して物体の検出が遅れやすくなると懸念される。これは、エンコーダ装置の検出精度を低下させるよう要因になるため好ましくない。特に、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で妨げになる。
【0143】
この点、本特徴に示す構成によれば、パルスに変化が生じることに着目して、エンコーダ信号のパルス周期を把握し、そのパルス周期に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、レーザ光を上手く照射できない状況となっていることを速やかに発見できる。これにより、例えば使用者にレーザレーダ装置の点検等を促すといった対応が可能となる。以上の理由から、物体の検出の遅れを抑制し、レーザレーダ装置による物体の検出精度の向上に寄与できる。これは、遠方の物体を精度よく検出したり小さい物体を精度よく検出したりする上で有利である。
【0144】
なお、特徴3~特徴15に示した各技術的思想を特徴1に適用することも可能である。
【0145】
特徴16.所定方向へ回転する配設対象(回転ブロック41)に配設され、当該配設対象と一体的に回転可能であり、前記所定方向に複数の被検出部(スリット63)が並ぶように形成された回転体(エンコーダディスク61)と、所定の検出位置(検出位置DP)に位置する前記被検出部を検出可能な検出部(フォトインタラプタ71)とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダ(ロータリエンコーダ60)であって、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力される前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力される特定の波形の長さを示す情報である診断用情報を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断部を備えているロータリエンコーダ。
【0146】
例えばロータリエンコーダを搭載する際の作業ばらつきによって、回転体(例えばエンコーダディスクや磁気ドラム)の中心と配設対象の回転中心とがずれた場合には、1周分のエンコーダ信号を構成しているパルス列の一部にてパルスの出力パターンが基本パターンから変化し得る。具体的には、パルス幅やパルス周期等が変化する可能性、すなわち異常な信号となる可能性がある。このような事象については、摩耗等によって変更部の回転軸のがたつきが大きくなった場合や、回転体に歪等の変形が生じている場合にも発生する。仮に上述したような正常に出力されていないエンコーダ信号に基づいて機器を制御しようとした場合には、正常な制御結果を得られない可能性が高くなると懸念される。
【0147】
この点、本特徴に示す構成によれば、パルスに変化が生じることに着目して、所定の周回にて出力されるエンコーダ信号から特定の波形の長さを示す診断用情報を把握している。この診断用情報に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、エンコーダ信号を用いた機器の制御を正常に行うことが難しい状況であることを速やかに発見できる。
【0148】
特徴17.所定方向へ回転する配設対象に配設され、当該配設対象と一体的に回転可能であり、前記所定方向に複数の被検出部(スリット63)が並ぶように形成された回転体(エンコーダディスク61)と、所定の検出位置(検出位置DP)に位置する前記被検出部を検出可能な検出部(フォトインタラプタ71)とを有し、前記回転体の回転にともなって前記所定の検出位置を前記被検出部が順に通過することにより各前記被検出部に対応したパルス列からなるエンコーダ信号を出力するロータリエンコーダ(ロータリエンコーダ60)に適用され、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断システムであって、
前記回転体の回転速度が目標回転速度となっている状況下における所定の周回にて出力される前記エンコーダ信号のうち当該所定の周回の一部の区間にて出力される特定の波形の長さを示す情報である診断用情報を把握し、当該把握した診断用情報に基づいて、前記エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断する診断システム。
【0149】
本特徴に示す構成によれば、所定の周回にて出力されるエンコーダ信号から特定の波形の長さを示す診断用情報を把握している。この診断用情報に基づいて、エンコーダ信号を正常に出力可能な状態となっているかを診断することにより、エンコーダ信号を用いた機器の制御を正常に行うことが難しい状況であることを速やかに発見できる。
【符号の説明】
【0150】
10…レーザレーダ装置、11…光学機構、12…制御部、21…レーザダイオード、31…フォトダイオード、40…変更ユニット、41…回転ブロック、51…モータ、60…ロータリエンコーダ、61…エンコーダディスク、63…スリット、71…フォトインタラプタ、85…診断部、CL1,CL2…中心軸線、DE…監視エリア、DP…検出位置、S1~S3,Sa1~Sa3,Sb1~Sb3,Sc1~Sc3,SA~SJ…対象区間又は区間、ОB…物体。