IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127226
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】付着砂清掃方法及び付着砂清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 23/00 20060101AFI20230906BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B22C23/00 D
B22C9/08 B
B22C9/08 E
B22C23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030879
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
(72)【発明者】
【氏名】平山 達徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩司
(72)【発明者】
【氏名】水野 賢一郎
【テーマコード(参考)】
4E093
4E094
【Fターム(参考)】
4E093PA05
4E094EE05
4E094EE11
(57)【要約】
【課題】生砂鋳型に湯口カップ(トップランナー)、揚り穴などからなる貫通穴を形成した後に、手作業により付着砂を払い落とす作業を不要とした付着砂清掃方法及び付着砂清掃装置を提供する。
【解決手段】生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後に、鋳型の平面内で移動可能な走行ヘッド100に搭載された昇降機構に支持させた砂清掃具で貫通穴に付着した付着砂を清掃する付着砂清掃方法である。貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴の何れか一つを含み、砂清掃具は、付着砂をエアブローするエアブローノズル22、または付着砂を吸引する吸引ノズルであり、砂清掃具を昇降して貫通穴の全長に挿入して付着砂を清掃する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後に、前記鋳型の平面内で移動可能な走行ヘッドに搭載された昇降機構に支持させた砂清掃具で前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する付着砂清掃方法であって、
前記貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴の何れか一つを含み、前記砂清掃具は、前記付着砂をエアブローするエアブローノズル、または前記付着砂を吸引する吸引ノズルであり、前記砂清掃具を前記高さ方向に昇降して前記貫通穴の全長に挿入して前記付着砂を清掃する付着砂清掃方法。
【請求項2】
前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されており、前記エアブローノズルを前記貫通穴内で回転させながら昇降して清掃する請求項1記載の付着砂清掃方法。
【請求項3】
前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されており、前記エアブローノズルを前記貫通穴内で、前記貫通穴の壁面に沿って旋回させながら昇降して清掃する、あるいは前記貫通穴の壁面に沿って旋回させるとともに、前記エアブロー穴を前記貫通穴の壁面に向け回転させながら昇降して清掃する請求項1記載の付着砂清掃方法。
【請求項4】
生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後の工程で前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する付着砂清掃装置であって、
前記鋳型の平面内で移動可能な走行ヘッドと、前記走行ヘッドに搭載された昇降機構と、前記昇降機構に支持されて前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する砂清掃具とを備え、
前記貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴の何れか一つを含み、前記砂清掃具は、前記付着砂をエアブローするエアブローノズル、または前記付着砂を吸引する吸引ノズルであり、前記砂清掃具は前記高さ方向に昇降され前記貫通穴の全長に挿入されて前記付着砂を清掃する付着砂清掃装置。
【請求項5】
前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸方向、または軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されている請求項4に記載の付着砂清掃装置。
【請求項6】
前記昇降機構が前記砂清掃具の回転機構を備え、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されている請求項4に記載の付着砂清掃装置。
【請求項7】
前記砂清掃具がエアブローノズルであり、前記生砂鋳型の前記エアブローノズルが挿入される面の反対面から付着砂を吸引する集塵ダクトが設けられている請求項4に記載の付着砂清掃装置。
【請求項8】
前記走行ヘッドは、前記貫通穴の切削の制御データに基づいて前記貫通穴の位置まで走行する請求項4~7の何れかに記載の付着砂清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生砂鋳型に貫通穴を後掘りする際に発生して貫通穴の内面に付着する付着砂を除去するために用いられる、付着砂清掃方法及び付着砂清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生砂鋳型に湯口カップ、トップランナー、揚り穴などをドリル等を用いて後掘りして貫通穴を形成する場合、切削された砂が貫通穴の内面に付着することが避けられない。この付着砂はそのまま放置すると溶湯に巻き込まれて生砂鋳型のキャビティ面に移動し、砂噛みの原因となる。このため切削後に手作業によるエアブローで付着砂を払い落としており、鋳造工程を自動化するうえでの障害となっていた。そこでこのような付着砂の清掃を目的として、従来から幾つかの提案がなされている。
【0003】
特許文献1と特許文献2には、生砂鋳型下側の反キャビティ面からのドリルでの穴明けと同時に、上側のキャビティ面からエアブローを行うことによるスワール効果(渦流効果)により、切削した貫通穴の内面の付着砂を清掃する装置が記載されている。
【0004】
特許文献1は、生砂鋳型の任意の位置に湯口、揚り穴などを後掘りするために、XY方向に任意に移動できる昇降テーブルにエアブローを取り付けた構造であり、特許文献2は、生砂鋳型の任意の位置に湯口、揚り穴などを後掘りする昇降ドリルユニットの穴明け位置に合わせ、エアブローを手動で移動できる構造である。しかしこれらは何れもキャビティ面の上面から貫通穴に向かってエアブローする構造である。このため、貫通穴の内部までエアブローした空気の流れが十分に届かず、付着砂を清掃しきれないため、鋳物素材への砂噛みの不具合が生じる場合があった。このため、手作業によるエアブローをなくすことはできなかった。
【0005】
特許文献3には、昇降手段によりブローカップを鋳型に向けて降下させて湯口の周囲に密着させ、ブローカップに設けたノズルから圧縮空気をエアブローして湯口の内面を清掃する装置が記載されている。また特許文献4には、湯口の上方からエアブローすることにより湯口の内面を清掃する装置が記載されている。しかし、これらは生砂鋳型に対するエアブロー用のノズルの高さが固定されているため、湯口カップ等の形状により、エアブロー空気流の吹き溜まりに砂残りが発生するという問題があった。
【0006】
特許文献5には、湯口カップの形状に合わせた通路形成部材を湯口カップの内部に挿入し、その下端の吸引ノズルから吸引して付着砂を除去する装置が記載されている。しかし湯口カップの形状に合わせた通路形成部材を製作しなければならないので汎用性がなく、揚り穴などには使用できないうえ、吸引ノズルの位置が固定されているため、吸引漏れが発生するおそれがある。このように先行文献に記載された従来技術では貫通穴の内面の付着砂を完全に除去することは容易ではなく、手作業によるエアブロー工程をなくすことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-30066号公報
【特許文献2】特開2008-30067号公報
【特許文献3】特許第3097975号公報
【特許文献4】特開平9-225588号公報
【特許文献5】特許第5376251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決し、生砂鋳型に湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴などからなる貫通穴を形成した後に、手作業により付着砂を払い落とす作業を不要とした付着砂清掃方法及び付着砂清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明の付着砂清掃方法は、生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後に、前記鋳型の平面内で移動可能な走行ヘッドに搭載された昇降機構に支持させた砂清掃具で前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する付着砂清掃方法であって、前記貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴の何れか一つを含み、前記砂清掃具は、前記付着砂をエアブローするエアブローノズル、または前記付着砂を吸引する吸引ノズルであり、前記砂清掃具を前記高さ方向に昇降して前記貫通穴の全長に挿入して前記付着砂を清掃することを特徴とするものである。
【0010】
なお、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されており、前記エアブローノズルを前記貫通穴内で回転させながら昇降して清掃する方法を取ることができる。あるいは、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されており、前記エアブローノズルを前記貫通穴内で、前記貫通穴の壁面に沿って旋回させながら昇降して清掃する、あるいは前記貫通穴の壁面に沿って旋回させるとともに、前記エアブロー穴を前記貫通穴の壁面に向け回転させながら昇降して清掃する方法を取ることができる。
【0011】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の付着砂清掃装置は、生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後の工程で前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する付着砂清掃装置であって、前記鋳型の平面内で移動可能な走行ヘッドと、前記走行ヘッドに搭載された昇降機構と、前記昇降機構に支持されて前記貫通穴に付着した付着砂を清掃する砂清掃具とを備え、前記貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー、揚り穴、模型側迎え棒穴の何れか一つを含み、前記砂清掃具は、前記付着砂をエアブローするエアブローノズル、または前記付着砂を吸引する吸引ノズルであり、前記砂清掃具は前記高さ方向に昇降され前記貫通穴の全長に挿入されて前記付着砂を清掃することを特徴とするものである。
【0012】
なお、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸方向、または軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されている構造とすることができる。また、前記昇降機構が前記砂清掃具の回転機構を備え、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、その先端に軸に対して直角方向のエアブロー穴が形成されている構造とすることができる。また、前記砂清掃具がエアブローノズルであり、前記生砂鋳型の前記エアブローノズルが挿入される面の反対面から付着砂を吸引する集塵ダクトが設けられている構造とすることができる。さらに、前記走行ヘッドは、前記貫通穴の切削の制御データに基づいて前記貫通穴の位置まで走行することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴を切削加工した後、走行ヘッドを貫通穴の位置まで走行させたうえ、昇降機構に支持させた砂清掃具を前記貫通穴の内部に挿入し、その内部で全長にわたり昇降させることにより、貫通穴内面の付着砂を清掃する。このため、貫通穴の上方、あるいは貫通穴に対して固定された位置からエアブローを行う従来技術とは異なり、付着砂を十分に清掃することができる。従って手作業により付着砂を払い落とす作業が不要となり、鋳物生産ラインの省人化や作業スペースの削減による省スペース化ができ、生産性を向上させることができる。また鋳物素材への砂噛み不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】本発明の付着砂清掃装置を備えた上枠ラインの正面図である。
図1b】本発明の付着砂清掃装置を備えた上枠ラインの平面図である。
図2a】回転機構を持たない付着砂清掃装置の正面図である。
図2b】回転機構を持つ付着砂清掃装置の正面図である。
図3a】軸方向にエアブロー穴を設けたエアブローノズルの先端の詳細図である。
図3b】軸と直角方向にエアブロー穴を設けたエアブローノズルの先端の詳細図である。
図4a】トップランナー掘り工程の説明図(トップランナー掘り前)である。
図4b】トップランナー掘り工程の説明図(トップランナー掘り中)である。
図4c】トップランナー掘り工程の説明図(トップランナー掘り後)である。
図4d】湯口面取り工程の説明図(湯口面取り前)である。
図4e】湯口面取り工程の説明図(湯口面取り中)である。
図4f】湯口面取り工程の説明図(湯口面取り後)である。
図5a】揚り掘り工程の説明図(揚り掘り前)である。
図5b】揚り掘り工程の説明図(揚り掘り中)である。
図5c】揚り掘り工程の説明図(揚り掘り後)である。
図6a】トップランナーとエアブローノズルとの取合いを示す断面図である。
図6b】揚り穴とエアブローノズルとの取合いを示す断面図である。
図7】他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(全体構成)
図1aは本発明の付着砂清掃装置を備えた上枠ライン6の正面図、図1bはその平面図である。図示しない造型機で金枠2内に生砂鋳型を造型した上鋳型4が、キャビティ面3を上面として、トラバーサ5により上枠ライン6に搬入される。7は上枠ライン6の入側に配置されたプッシャであり、8は上枠ライン6の出側に配置されたクッションである。上鋳型4はこれらのプッシャ7とクッション8とに挟まれた状態で、一枠ずつ上枠ライン6上を矢印方向に搬送される。
【0016】
上枠ライン6の下側には、トップランナー掘り装置9、湯口面取り装置10、揚り掘り装置11が配置され、上鋳型4の生砂鋳型に対してキャビティ面3の反対側から湯口カップ(あるいはトップランナー)12、揚り穴13等をドリルで切削して後掘りする。14は反転機であり、上鋳型4をキャビティ面3が下向きとなるように反転させる。その後、ガス穴明け装置15にて上側の反キャビティ面からガス穴を明けて貫通穴を形成する。図4c、図5cに示されるように、貫通穴は、少なくとも湯口カップ、トップランナー12、揚り穴13、模型側迎え棒穴23の何れか一つを含むものである。前述したとおり、この後掘り加工の際に切削砂が貫通穴の内面に付着砂として付着する。
【0017】
本発明の付着砂清掃装置1は、生砂鋳型に鋳型の高さ方向の貫通穴が切削で形成された後の工程に配置されており、貫通穴の内面をその全長にわたり清掃する。付着砂清掃装置1の構造については後述する。付着砂清掃装置1により清掃された上鋳型4はその下流に設置された枠合わせ装置16に送られ、トラバーサ17から上枠ライン6の下の枠合わせライン18に搬入された下鋳型19に枠合わせされ、トラバーサ20にて後工程に搬出される。
【0018】
なお、図1a、図1bは上鋳型4と下鋳型19をそれぞれ専用ラインで搬送するレイアウトであるが、上下枠が交互に搬送されてくるレイアウトであっても、生砂鋳型を後掘りする工程の後工程であれば、本発明の付着砂清掃装置1を配置することができる。
【0019】
また、生産設備のタイムサイクルに余裕があり、同じタイムサイクル内で湯口カップ(トップランナー12)、揚り穴13等を後掘りした後に切削穴内部を清掃する時間を確保できる場合には、これらを後掘りする最後尾の装置と同一位置に、本発明の付着砂清掃装置1を配置することも可能である。
【0020】
(付着砂清掃装置)
図2aに、実施形態の付着砂清掃装置の構造を示す。100は鋳型の平面内(水平面内)で、すなわち水平なX-Y平面内で可能な走行ヘッドである。走行ヘッド100はサーボモータ102とラック105とによりX軸方向に移動可能であり、サーボモータ103とラック106によりY軸方向に移動可能である。生砂鋳型を造型した上鋳型4は水平に支持されており、走行ヘッド100は上鋳型4の任意の位置に走行可能である。この走行ヘッド100には昇降機構が搭載されている。昇降機構はLMガイド109に支持された昇降テーブル108と、昇降テーブル108を昇降させるサーボモータ104とラック107を備えている。昇降テーブル108にはエア配管兼用のガイドピン110を固定し、その下端に砂清掃具であるエアブローノズル22が固定されている。ガイドピン110の下端の振れ防止のため、走行ヘッド100の固定側フレーム111にガイドホルダ112が設けられている。ガイドピン110の上端の配管継手113から圧縮空気が供給される。この図2aに示す付着砂清掃装置は、貫通穴の切削の制御データに基づいて貫通穴の位置まで走行したうえ、砂清掃具であるエアブローノズル22を鋳型の高さ方向、すなわちZ軸方向に昇降させる機能を備えている。
【0021】
図2bに、砂清掃具であるエアブローノズル22の回転機構を備えた付着砂清掃装置の構造を示す。この実施形態では昇降テーブル208にエア配管兼用のロータリーボールスプライン軸210をベアリング211を介して固定し、その下端に砂清掃具であるエアブローノズル22を固定する。固定側フレーム212の上下にボールスプラインナット213を設け、エアブローノズル22の回転はタイミングベルト214を介して回転用のサーボモータ215にて行う。エア配管兼用のロータリーボールスプライン軸210が回転できるように、上端のスイベルジョイント216から圧縮空気を供給する。その他の構造は図2aと同様であり、202、203、204はサーボモータ、205、206、207はラック、212は固定側フレーム、209はLMガイドである。
【0022】
図3aと図3bにエアブローノズル22の先端形状を示す。図3aは先端部に軸方向にエアブロー穴24を設けてあり、図3bは軸と直角方向に複数個のエアブロー穴24を設けてある。図3bのエアブローノズル22は、図2bの回転機構を備えた付着砂清掃装置と組み合わせて使用することが好ましい。貫通穴が小さい場合には、軸と直角方向のエアブロー穴24を設けたエアブローノズル22を回転させながら貫通穴の内部を昇降させることにより、貫通穴の全長にわたり付着砂を清掃することができる。貫通穴が大きい場合には、軸と直角方向のエアブロー穴24を設けたエアブローノズル22を貫通穴内でその壁面に沿って旋回させながら昇降して清掃する、あるいは貫通穴の壁面に沿って旋回させるとともに、エアブロー穴24を貫通穴の壁面に向け回転させながら昇降させ、清掃することができる。ここで壁面に沿って旋回とは、壁面からの距離をほぼ一定に保ちながら旋回移動させることを意味する。なお、図3bではエアブロー穴24を3個で記載してあるが、1個でもその他複数個であってもよい。
【0023】
(貫通穴の形状及び清掃)
図4図5に、貫通穴の形成工程を示す。図4aは模型側に設けた迎え棒にて生砂鋳型に模型側迎え棒穴23が造型された状態を示している。図4bはトップランナー掘り装置9のドリルが上昇及び横移動して、湯口カップまたはトップランナー(長円湯口カップ)12を切削する状態を示す。図4cは切削された湯口カップ(トップランナー)12の形状を示している。トップランナー掘りの場合にはドリルを横移動して長円形状に切削するため、模型側迎え棒穴23の切削面は角が立った形状となり、このまま注湯すると湯呑みが悪く、鋳型の角が崩れて砂噛みの原因となる。このため以下のように面取りを行う。
【0024】
図4dは湯口面取り前の状態であり、図4eはドリルが上昇、横移動して模型側迎え棒穴23を面取りしている状態を示し、図4fは面取りされた湯口カップ(トップランナー)12の形状を示している。
【0025】
同様に、図5aは模型側に設けた迎え棒にて生砂鋳型に模型側迎え棒穴23が造型された状態を示し、図5bはドリルが上昇、横移動して揚り穴13を切削した状態を示し、図5cは切削された揚り穴13の形状を示している。
【0026】
このように、図4fに示される湯口カップ(トップランナー)12の形状や、図5cに示す揚り穴13の形状はキャビティ面3側から見ると、模型側迎え棒穴23よりも後掘りされた切削穴の方が大きい。このため特許文献1、2の装置によりキャビティ面3側からエアブローを行うと、模型側迎え棒穴23が障害となって切削穴の内面の付着砂を十分に払い落とすことができなくなる。
【0027】
これに対して本発明の付着砂清掃装置1及びこれを用いた付着砂清掃方法は、図6a、図6bに示すように、反転機14により反転されて上面側となった湯口カップ(トップランナー)12や揚り穴13に、上方からエアブローノズル22を降下させ、貫通穴の全長にわたりエアブローすることにより、十分な付着砂の払い落とし効果を得ることができる。なお前記したように、穴掘り装置の切削の制御データに基づいて走行ヘッド100を鋳型の平面内であるXY面内で走行させ、付着砂清掃装置1の位置を制御することが好ましい。
【0028】
なお、エアブローにより飛散した付着砂を回収するため、また周囲への砂の飛散を防止するため、図7に示すようにエアブローノズル22を挿入する面の反対側の鋳型面に受け皿301を設け、集塵ダクト302で反対面から吸引し、図示を略した集塵機で回収することもできる。
【0029】
(他の実施形態)
以上に説明した実施形態では、砂清掃具としてエアブローノズル22を採用した。しかしエアブローノズル22の代わりに付着砂を吸引する類似構造の吸引ノズルを設け、高圧集塵機に接続することにより、発生する負圧を利用して付着砂を吸引してもよい。この場合にはエアブローを行うよりも大きいエネルギが必要となるが、付着砂が飛散して貫通穴の内面に再付着することを防止できる利点がある。このため付着砂を完全に除去したい場合には、エアブローノズル22に代えて吸引ノズルを用いることが好ましい。
【0030】
以上に説明したように、本発明によれば貫通穴内面の付着砂を十分に清掃できるので、手作業により付着砂を払い落とす作業が不要となり、鋳物生産ラインの省人化や作業スペースの削減による省スペース化ができ、生産性を向上させることができる。また鋳物素材への砂噛み不良を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 付着砂清掃装置
2 金枠
3 キャビティ面
4 上鋳型
5 トラバーサ
6 上枠ライン
7 プッシャ
8 クッション
9 トップランナー掘り装置
10 湯口面取り装置
11 揚り掘り装置
12 湯口カップ(トップランナー)
13 揚り穴
14 反転機
15 ガス穴明け装置
16 枠合わせ装置
17 トラバーサ
18 枠合わせライン
19 下鋳型
20 トラバーサ
22 エアブローノズル
23 迎え棒穴
24 エアブロー穴
100 走行ヘッド
102 サーボモータ
103 サーボモータ
104 サーボモータ
105 ラック
106 ラック
107 ラック
108 昇降テーブル
109 LMガイド
110 ガイドピン
111 固定側フレーム
112 ガイドホルダ
113 配管接手
202 サーボモータ
203 サーボモータ
204 サーボモータ
205 ラック
206 ラック
207 ラック
208 昇降テーブル
209 LMガイド
210 ロータリーボールスプライン軸
211 ベアリング
212 固定側フレーム
213 ボールスプラインナット
214 タイミングベルト
215 サーボモータ
216 スイベルジョイント
301 受け皿
302 集塵ダクト
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7