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特開2023-127235モータポンプのブラケットおよびモータポンプのブラケットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127235
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】モータポンプのブラケットおよびモータポンプのブラケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20230906BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20230906BHJP
   B22D 25/02 20060101ALI20230906BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
F04D29/42 F
F04D13/06 E
B22D25/02 Z
B22C9/08 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030895
(22)【出願日】2022-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売(納品)日:令和3年9月21日 納品場所:長崎県大村市雄ケ原町1313番地46
(71)【出願人】
【識別番号】000176383
【氏名又は名称】三相電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】木戸 康二
(72)【発明者】
【氏名】舩原 一馬
(72)【発明者】
【氏名】下山 直毅
(72)【発明者】
【氏名】曹 銀春
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB62
3H130AC30
3H130BA97A
3H130BA98A
3H130CA23
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DC01Z
3H130ED01A
(57)【要約】
【課題】ロストワックス製法を用いて製造することができるモータポンプのブラケットおよびモータポンプのブラケットの製造方法を提供する。
【解決手段】ブラケット10は、ブラケット本体20と、回転軸4を軸支する軸受5を保持する軸受ハウジング部材60と、を備える。ブラケット本体20は、筒状の本体周壁部22と、本体周壁部から径方向内方に延びる本体縦壁部24と、を有する。軸受ハウジング部材60は、筒状のハウジング周壁部62と、ハウジング周壁部から径方向内方に延びるハウジング縦壁部64と、を有する。軸受ハウジング部材60は、本体周壁部22内に嵌め入れられるとともに、ブラケット本体にボルト23を用いて取り付けられる。そして、軸受ハウジング部材60が取り付けられたブラケット本体20内には、本体周壁部22と本体縦壁部24とハウジング縦壁部64とに囲まれた空間Sが形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータポンプのモータ部とポンプ部とを互いに連結するモータポンプのブラケットであって、
ブラケット本体と、前記モータポンプの回転軸を軸支する軸受を保持する軸受ハウジング部材と、を備え、
前記ブラケット本体は、軸線方向に延在する筒状の本体周壁部と、前記本体周壁部から径方向内方に延び前記回転軸が挿通可能な貫通孔を有する本体縦壁部と、を有し、
前記軸受ハウジング部材は、軸線方向に延在する筒状のハウジング周壁部と、前記ハウジング周壁部から径方向内方に延び前記回転軸が挿通可能な貫通孔を有するハウジング縦壁部と、を有し、
前記軸受ハウジング部材は、前記ブラケット本体の前記本体周壁部内に嵌め入れられるとともに、前記ブラケット本体にボルトを用いて取り付けられ、
前記軸受ハウジング部材が取り付けられた前記ブラケット本体内には、前記本体周壁部と前記本体縦壁部と前記ハウジング縦壁部とに囲まれた空間が形成される、ことを特徴とするモータポンプのブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のモータポンプのブラケットであって、
前記本体縦壁部は、前記回転軸近傍まで径方向内方に延びており、
前記ハウジング縦壁部は、前記回転軸近傍まで径方向内方に延びている、ことを特徴とするモータポンプのブラケット。
【請求項3】
請求項2に記載のモータポンプのブラケットであって、
前記ハウジング縦壁部の貫通孔の縁部には、シール保持部が形成され、
前記シール保持部には、前記回転軸と前記ハウジング縦壁部との間をシールするシール部材が保持される、ことを特徴とするモータポンプのブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のモータポンプのブラケットであって、
前記ハウジング周壁部には、径方向外方に延びたハウジングフランジが形成されており、
前記本体周壁部には、前記ハウジングフランジが接合されるフランジ接合面が形成されており、
前記ハウジングフランジが前記フランジ接合面に対して軸線方向に面接触した状態で、前記モータ部側から前記ハウジングフランジおよび前記フランジ接合面を軸線方向に挿通するボルトを用いて、前記軸受ハウジング部材が前記ブラケット本体に取り付けられる、ことを特徴とするモータポンプのブラケット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のモータポンプのブラケットであって、
前記ブラケット本体は、前記ポンプ部から圧送された流体を吐出する吐出ポートを有する、ことを特徴とするモータポンプのブラケット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のモータポンプのブラケットの製造方法であって、
前記ブラケット本体のロストワックス鋳型を作製する鋳型作製工程と、
前記ロストワックス鋳型内に注湯して前記ブラケット本体を鋳造する鋳造工程と、
鋳造された前記ブラケット本体に前記軸受ハウジング部材を前記ボルトを用いて取り付ける取付工程と、
を含み、
前記鋳型作製工程は、
前記ブラケット本体のワックス模型を作製するワックス模型作製工程と、
前記ワックス模型にスラリーを塗布する浸漬工程と、
前記スラリーが塗布された前記ワックス模型の表面に耐火粉末を付着させる砂付工程と、
前記耐火粉末を焼成するとともに、前記耐火粉末が付着した前記ワックス模型から脱蝋する焼成脱蝋工程と、
を含む、ことを特徴とするモータポンプのブラケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータポンプのモータ部とポンプ部とを互いに連結するブラケットおよびブラケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からモータポンプには、モータ部とポンプ部とを互いに連結するブラケットが用いられている。例えば、特許文献1の図1に開示されているモータ一体形ポンプは、ポンプ本体(10)と、汎用モータ(24)と、を備えている。ポンプ本体(10)は、ポンプケーシング(11)とポンプブラケット(12)とポンプ軸(15)とを有している。汎用モータ(24)は、図示されていないモータ本体と、モータブラケット(25)と、モータ軸(27)と、を有している。
【0003】
ポンプブラケット(12)とモータブラケット(25)とは、互いのフランジ(23,26)を接合することによって、モータ部とポンプ部とを互いに連結する1つのブラケットとして機能している。
【0004】
また、ポンプブラケット(12)には、ポンプ軸(15)を軸支するコロガリ軸受(16)を保持する軸受ハウジング部(符号なし)が一体に形成されている。
【0005】
ところで、従来のモータポンプにおいて、ポンプブラケットとモータブラケットとを一体に形成して1つの部品にしたいというニーズがある。ポンプブラケットとモータブラケットとを一体に形成することによって、ブラケットを軸線方向に短くすることができるとともに、ブラケットを薄肉軽量化することができるからである。ブラケットが短くなれば、モータポンプの軸線方向の全長も短くなる。
【0006】
さらにポンプの用途上においては、使用する液体に対する耐食性や清潔さを要求される場面が多くある。そのような場面では、ステンレス材をブラケットに使用することが望ましいが、ステンレスのブラケットを一体に形成する上で、ロストワックス製法という鋳造法を用いることが望ましい。ロストワックス製法は、ステンレス鋳造品において複雑な形状の金属製品を薄肉で形成するのに適しているからである。
【0007】
ロストワックス製法とは、特許文献2に示されているように、ワックス模型を作製するワックス模型作製工程(特許文献2の図1参照)と、ワックス模型にスラリーを塗布する浸漬工程と、スラリーが塗布されたワックス模型の表面に耐火粉末を付着させる砂付工程(特許文献2では「付着工程」と称されている。特許文献2の図3参照)と、耐火粉末を焼成するとともに耐火粉末が付着したワックス模型から脱蝋する焼成脱蝋工程と、によってロストワックス鋳型を作製した上で、ロストワックス鋳型内に注湯して金属製品を鋳造する製法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5-17196号公報
【特許文献2】特開平8-174145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願の発明者らは、図7に示すように、ポンプブラケットとモータブラケットとが一体に形成されたモータポンプのブラケット10Aについて研究開発を行っている。このモータポンプのブラケット10Aによれば、特許文献1に開示されているモータポンプ(モータ一体形ポンプ)のブラケットと比較して、ポンプブラケットとモータブラケットとの接合部位(フランジ)を設ける必要がないので、ブラケットを軸線N方向に短くすることができる。
【0010】
図7に示すブラケット10Aは、軸線N方向に延在する筒状の周壁部22Aと、周壁部22Aから径方向内方に延び回転軸が挿通可能な貫通孔24Ahを有する縦壁部24Aと、縦壁部24Aよりモータ部側に形成され周壁部22Aから径方向内方に延び軸受を保持する軸受ハウジング部60Aと、を備える。軸受ハウジング部60Aには、貫通孔64Ahが形成されている。
【0011】
図7に示すように、ブラケット10Aの内部には、周壁部22Aと縦壁部24Aと軸受ハウジング部60Aとに囲まれた空間SAが形成されている。すなわち、ブラケット10Aの内部には、貫通孔24Ahおよび貫通孔64Ahを除いて、閉じられた空間SAが形成されている。
【0012】
ブラケット10Aをロストワックス製法で製造しようとする場合に、ブラケット10Aのワックス模型における形状が複雑かつ奥行きのある空間SA内に耐火粉末を進入させて、当該ワックス模型に耐火粉末を付着させる(砂付する)必要があるが、貫通孔24Ah、貫通孔64Ahおよび開口部22Aоはそれぞれ開口が狭く耐火粉末を空間SA内に十分に進入させることができない。特許文献2の図3のようにワックス模型の上から耐火粉末を振りかけてワックス模型に砂付しようとしても、空間SA内に十分に耐火粉末が入らないことにより、空間SA周りの部位において耐火粉末層の厚みが十分でないロストワックス鋳型が形成されてしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、ロストワックス製法を用いて製造することができるモータポンプのブラケットおよびモータポンプのブラケットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様に係るモータポンプのブラケットは、モータポンプのモータ部とポンプ部とを互いに連結するモータポンプのブラケットであって、ブラケット本体と、前記モータポンプの回転軸を軸支する軸受を保持する軸受ハウジング部材と、を備える。前記ブラケット本体は、軸線方向に延在する筒状の本体周壁部と、前記本体周壁部から径方向内方に延び前記回転軸が挿通可能な貫通孔を有する本体縦壁部と、を有する。前記軸受ハウジング部材は、軸線方向に延在する筒状のハウジング周壁部と、前記ハウジング周壁部から径方向内方に延び前記回転軸が挿通可能な貫通孔を有するハウジング縦壁部と、を有する。前記軸受ハウジング部材は、前記ブラケット本体の前記本体周壁部内に嵌め入れられるとともに、前記ブラケット本体にボルトを用いて取り付けられる。そして、前記軸受ハウジング部材が取り付けられた前記ブラケット本体内には、前記本体周壁部と前記本体縦壁部と前記ハウジング縦壁部とに囲まれた空間が形成される。
【0015】
かかる構成を備えるモータポンプのブラケットによれば、軸受ハウジング部材が取り付けられたブラケット本体内には本体周壁部と本体縦壁部とハウジング縦壁部とに囲まれた空間が形成されるものの、軸受ハウジング部材がブラケット本体とは別体であるので、ブラケットを製造するに当たり、軸受ハウジング部材とブラケット本体とをロストワックス製法を用いて個別に鋳造した上で、前記軸受ハウジング部材を前記ブラケット本体の前記本体周壁部内に嵌め入れ前記ブラケット本体にボルトを用いて取り付けることにより、ブラケットを製造することができる。すなわち、ブラケットをロストワックス製法を用いて製造するに当たって行われる砂付工程において、ブラケット本体のワックス模型と軸受ハウジング部材のワックス模型とに個別に砂付することができる。したがって、上記構成を備えるモータポンプのブラケットによれば、ブラケットのワックス模型における当該空間内に耐火粉末を進入させる困難性が生じることなく、ロストワックス製法を用いて製造することができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係るモータポンプのブラケットは、第1の態様に係るモータポンプのブラケットであって、前記本体縦壁部は、前記回転軸近傍まで径方向内方に延びており、前記ハウジング縦壁部は、前記回転軸近傍まで径方向内方に延びている。
【0017】
本発明の第3の態様に係るモータポンプのブラケットは、第2の態様に係るモータポンプのブラケットであって、前記ハウジング縦壁部の貫通孔の縁部には、シール保持部が形成され、前記シール保持部には、前記回転軸と前記ハウジング縦壁部との間をシールするシール部材が保持される。
【0018】
本発明の第4の態様に係るモータポンプのブラケットは、第1の態様ないし第3の態様のいずれかに係るモータポンプのブラケットであって、前記ハウジング周壁部には、径方向外方に延びたハウジングフランジが形成されており、前記本体周壁部には、前記ハウジングフランジが接合されるフランジ接合面が形成されており、前記ハウジングフランジが前記フランジ接合面に対して軸線方向に面接触した状態で、前記モータ部側から前記ハウジングフランジおよび前記フランジ接合面を軸線方向に挿通するボルトを用いて、前記軸受ハウジング部材が前記ブラケット本体に取り付けられる。
【0019】
本発明の第5の態様に係るモータポンプのモータポンプのブラケットは、第1の態様ないし第4の態様のいずれかに係るブラケットであって、前記ブラケット本体は、前記ポンプ部から圧送された流体を吐出する吐出ポートを有する。
【0020】
本発明に係るモータポンプのブラケットの製造方法は、上記第1の態様ないし第5の態様のいずれかに係るモータポンプのブラケットの製造方法であって、前記ブラケット本体のロストワックス鋳型を作製する鋳型作製工程と、前記ロストワックス鋳型内に注湯して前記ブラケット本体を鋳造する鋳造工程と、鋳造された前記ブラケット本体に前記軸受ハウジング部材をボルトを用いて取り付ける取付工程と、を含み、前記鋳型作製工程は、前記ブラケット本体のワックス模型を作製するワックス模型作製工程と、前記ワックス模型にスラリーを塗布する浸漬工程と、前記スラリーが塗布された前記ワックス模型の表面に耐火粉末を付着させる砂付工程と、前記耐火粉末を焼成するとともに、前記耐火粉末が付着した前記ワックス模型から脱蝋する焼成脱蝋工程と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ロストワックス製法を用いて製造することができるモータポンプのブラケットおよびモータポンプのブラケットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るブラケットを用いたモータポンプを示した断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るブラケットを示した断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るブラケットのブラケット本体を示した断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るブラケットの軸受ハウジング部材を示した断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るブラケットの製造方法の工程を示したフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係るブラケットの製造方法の工程のうちの鋳型作製工程を示したフローチャートである。
図7】本発明の発明者らが開発したブラケットを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るブラケットについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書において、方向を次のように定義する。すなわち、モータポンプ1の回転軸4の軸線Nを基準として、軸線方向、径方向および周方向を定義する。また、以下の説明で用いる図1ないし図4は、回転軸4の軸線N方向に沿った断面図であり、本発明の特徴部分を示すように切断した断面図である。
【0024】
<実施形態>
本実施形態に係るブラケット10は、図1に示すように、モータポンプ1のモータ部2とポンプ部3とを互いに連結する。なお、図1において、モータ部2およびポンプ部3は、それぞれの一部のみ図示されている。
【0025】
モータポンプ1は、モータ部2からポンプ部3へ回転動力を伝える回転軸4を備える。回転軸4は、ブラケット10に保持された軸受5に軸支されている。
【0026】
軸受5は、後述する軸受ハウジング部材60に軸受取付用ボルト6を用いて取り付けられている。軸受取付用ボルト6と軸受ハウジング部材60との間には座金7が挟まれている。座金7は、軸受5の外輪を軸線N方向に押さえる押さえとして機能する。軸受5は、本実施の形態ではベアリングである。
【0027】
ブラケット10は、図1および図2に示すように、ブラケット本体20と、ブラケット本体20に取り付けられる軸受ハウジング部材60と、を備える。
【0028】
ブラケット本体20は、図2および図3に示すように、軸線N方向に延在しており内部に縦壁を有する略円筒状の部材である。ブラケット本体20は、軸線N方向の一方側端にモータ部接続部22cが形成されており、他方側端にポンプ部接続部28cが形成されている。これにより、ブラケット本体20は、モータ部2とポンプ部3とを互いに連結することが可能となっている。
【0029】
ブラケット本体20は、本体周壁部22と本体縦壁部24とポンプ部封止縦壁部26とポンプ部封止周壁部28と封止縦壁部支持部30と吐出管32とを有する。
【0030】
本体周壁部22は、軸線N方向に延在し、ブラケット本体20の略円筒状の形状を形成し、軸線Nを取り囲む。本体周壁部22は、モータ部側からポンプ部側を見たときに円筒形状の径が縮径する縮径部22rを有する。
【0031】
本体周壁部22の縮径部22rには、軸受ハウジング部材60が取り付けられるためのフランジ接合面22iが形成されている。フランジ接合面22iは、縮径部22rのモータ部側面が径方向内方に延びるように形成されている。フランジ接合面22iには、モータ部側からポンプ部側に向かって軸線N方向に穿孔されたボルト孔22vが形成されている。ボルト孔22vには、軸受ハウジング部材60をブラケット本体20に取り付けるためのボルト23が螺入可能となっている。
【0032】
本体周壁部22のポンプ部側端(本体縦壁部24)近傍の部位には、径方向に開口する開口部22оが形成されている。開口部22оは、本体縦壁部24と、ブラケット本体20に取り付けられた軸受ハウジング部材60(具体的には、軸受ハウジング部材60の後述するハウジング縦壁部64)との間に形成されており、後述する空間Sと外部とを互いに連通させる。開口部22оは、本体周壁部22に、軸線Nに対称に2つ形成されているのが好ましいが、1つ形成されていてもよい。
【0033】
本体周壁部22のモータ部側端は、モータ部2のケーシングに接続される。すなわち、本体周壁部22のモータ部側端は、モータ部接続部22cをなしている。
【0034】
本体縦壁部24は、本体周壁部22のポンプ部側端を塞ぐように、本体周壁部22のポンプ部側端から、回転軸4近傍まで径方向内方に延びている。本体縦壁部24の中心には、軸線N方向に穿孔された第1貫通孔24hが形成されている。第1貫通孔24hには、回転軸4が挿通可能となっている。
【0035】
本体縦壁部24の第1貫通孔24hの縁部近傍には、モータ部側方向に突出する第1シール保持部24sが形成されている。第1シール保持部24sは、第1貫通孔24hを挿通する回転軸4と本体縦壁部24との間をシールするシール部材25(図1に図示)を保持する。シール部材25は、本実施の形態ではオイルシールである。
【0036】
本体縦壁部24のポンプ部側方向には、ポンプ部封止縦壁部26が間隔を空けて配置されている。ポンプ部封止縦壁部26は、ポンプ部3の内部を流れる流体がモータ部側に流出することのないように、ポンプ部3のモータ部側を封止する。ポンプ部封止縦壁部26の径方向端部からポンプ部側方向にポンプ部封止周壁部28が延びている。
【0037】
ポンプ部封止縦壁部26の中心には、軸線N方向に穿孔された第2貫通孔26hが形成されている。第2貫通孔26hには、回転軸4が挿通可能となっている。
【0038】
ポンプ部封止縦壁部26の第2貫通孔26hの縁部近傍には、ポンプ部側方向に突出する第2シール保持部26sが形成されている。第2シール保持部26sは、第2貫通孔26hを挿通する回転軸4とポンプ部封止縦壁部26との間をシールするシール部材27(図1に図示)を保持する。シール部材27は、本実施の形態ではメカニカルシールである。
【0039】
ポンプ部封止縦壁部26の径方向端部の一部には、ポンプ部3から圧送される流体の流出口となる開口部26оが形成されている。
【0040】
ポンプ部封止周壁部28は、軸線N方向に延在し、略筒状の形状を形成し、軸線Nを取り囲む。ポンプ部封止周壁部28のポンプ部側端は、ポンプ部3のケーシングに接続される。すなわち、ポンプ部封止周壁部28のポンプ部側端は、ポンプ部接続部28cをなしている。
【0041】
封止縦壁部支持部30は、本体縦壁部24の径方向端部の一部とポンプ部封止縦壁部26の径方向端部の一部とを軸線N方向に互いにつなぎ、ポンプ部封止縦壁部26を本体縦壁部24のポンプ部側方向に間隔を空けて支持する。
【0042】
吐出管32は、ポンプ部3から圧送される流体の流路を形成する管である。吐出管32は、ポンプ部封止縦壁部26に形成された開口部26оにポンプ部側端が接続されている。吐出管32は、当該ポンプ部側端からモータ部側方向に延びつつ、本体縦壁部24および本体周壁部22を貫通するように径方向外方に湾曲しながら延びて、本体周壁部22の径方向外方に他方の端部を開口させている。すなわち、吐出管32の一方の端部はポンプ部3の吐出口(図示しない)に接続されており、吐出管32の他方の端部は吐出ポート33をなしている。これにより、ブラケット本体20は、ポンプ部3から圧送された流体を吐出する吐出ポート33を有している。
【0043】
軸受ハウジング部材60は、モータポンプ1の回転軸4を軸支する軸受5を保持する。軸受ハウジング部材60は、図2および図4に示すように、軸線N方向に延在しており内部に縦壁を有する略円筒状の部材である。軸受ハウジング部材60は、図2に示すように、ブラケット本体20の本体周壁部22内に嵌め入れられるとともに、ブラケット本体20にボルト23を用いて取り付けられる。なお、ボルト23は、本実施の形態では六角穴付ボルトである。
【0044】
軸受ハウジング部材60は、ハウジング周壁部62とハウジング縦壁部64とを有する。
【0045】
ハウジング周壁部62は、軸線N方向に延在し、軸受ハウジング部材60の略円筒状の形状を形成し、軸線Nを取り囲む。ハウジング周壁部62には、軸受5が取り付けられるための軸受被取付部62iが設けられている。軸受被取付部62iは、ハウジング周壁部62の外側面が径方向外方に膨出するように形成されている。軸受被取付部62iには、モータ部側からポンプ部側に向かって軸線N方向に穿孔されたボルト孔62vが形成されている。ボルト孔62vには、軸受5を軸受ハウジング部材60に取り付けるための軸受取付用ボルト6が螺入可能となっている。
【0046】
ハウジング周壁部62には、径方向外方に延びたハウジングフランジ62fが形成されている。ハウジングフランジ62fには、軸線N方向に穿孔され、ボルト23を挿通可能なボルト孔62fvが形成されている。
【0047】
ハウジングフランジ62fの外径は、ブラケット本体20の縮径部22rよりモータ部側に位置する本体周壁部22の内径に一致するように設定されている。これにより、ブラケット本体20のモータ部側の開口から軸受ハウジング部材60がブラケット本体20(本体周壁部22)に圧入することができるとともに、縮径部22rに軸線N方向に重なることができる。
【0048】
さらに、縮径部22rに軸線N方向に重なったハウジングフランジ62fは、図2に示すように、ブラケット本体20のフランジ接合面22iにも軸線N方向に重なることができる。そして、ハウジングフランジ62fのボルト孔62fvとフランジ接合面22iのボルト孔22vとが軸線N方向に連通した状態で、ボルト23がボルト孔62fvおよびボルト孔22vに螺入することで、ハウジングフランジ62fは、フランジ接合面22iに接合される。すなわち、ハウジングフランジ62fがフランジ接合面22iに対して軸線N方向に面接触した状態で、モータ部側からハウジングフランジ62fおよびフランジ接合面22iを軸線N方向に挿通するボルト23を用いて、軸受ハウジング部材60がブラケット本体20に取り付けられる。
【0049】
ハウジング縦壁部64は、ハウジング周壁部62のポンプ部側端を塞ぐように、ハウジング周壁部62のポンプ部側端から、回転軸4近傍まで径方向内方に延びている。ハウジング縦壁部64の中心には、軸線N方向に穿孔されたハウジング貫通孔64hが形成されている。ハウジング貫通孔64hには、回転軸4が挿通可能となっている。
【0050】
ハウジング縦壁部64のハウジング貫通孔64hの縁部には、軸線N方向に延出するハウジング側シール保持部64sが形成されている。ハウジング側シール保持部64sは、ハウジング貫通孔64hを挿通する回転軸4とハウジング縦壁部64との間をシールするシール部材65(図1に図示)を保持する。シール部材65は、本実施の形態ではオイルシールである。
【0051】
ブラケット10の内部には、図1および図2に示すように、空間Sが形成されている。空間Sは、軸受ハウジング部材60が取り付けられたブラケット本体20内に形成された空間である。すなわち、空間Sは、ブラケット本体20に軸受ハウジング部材60が取り付けられた状態において、ブラケット本体20の本体周壁部22と、本体縦壁部24と、軸受ハウジング部材60のハウジング縦壁部64とに囲まれた空間である。空間Sは、本体周壁部22に形成された開口部22о、本体縦壁部24に形成された第1貫通孔24h、および、ハウジング縦壁部64に形成されたハウジング貫通孔64hのみによって外部と連通している。このため、仮に、ブラケット本体20と軸受ハウジング部材60とが一体に形成されており、ブラケット10が1つの部材であるとした場合に、ブラケット10のワックス模型における空間Sは、外部から耐火粉末が進入しづらい空間となっている。
【0052】
<製造方法>
次に、上記の実施形態に係るブラケット10の製造方法を説明する。ブラケット10の製造方法は、図5に示すように、ブラケット本体20および軸受ハウジング部材60のそれぞれのロストワックス鋳型を作製する鋳型作製工程ST1と、それぞれのロストワックス鋳型内に注湯してブラケット本体20と軸受ハウジング部材60とをそれぞれ鋳造する鋳造工程ST2と、鋳造されたブラケット本体20に鋳造された軸受ハウジング部材60をボルト23を用いて取り付ける取付工程ST3と、を含む。
【0053】
鋳型作製工程ST1は、図6に示すように、ブラケット本体20のワックス模型と軸受ハウジング部材60のワックス模型とをそれぞれ作製するワックス模型作製工程ST11と、それぞれのワックス模型にスラリーを塗布する浸漬工程ST12と、スラリーが塗布されたそれぞれのワックス模型の表面に耐火粉末を付着させる砂付工程ST13と、耐火粉末を焼成するとともに、耐火粉末が付着したそれぞれのワックス模型から脱蝋する焼成脱蝋工程ST14と、を含む。なお、上記の製造方法については、ブラケット本体20と軸受ハウジング部材60とをそれぞれロストワックス製法で鋳造することを前提として説明したが、少なくともブラケット本体20がロストワックス製法で鋳造されるものであればよい。
【0054】
<作用効果>
以上に説明した本実施形態に係るモータポンプ1のブラケット10によれば、軸受ハウジング部材60が取り付けられたブラケット本体20内には本体周壁部22と本体縦壁部24とハウジング縦壁部64とに囲まれた空間Sが形成されるものの、軸受ハウジング部材60がブラケット本体20とは別体であるので、ブラケット10を製造するに当たり、軸受ハウジング部材60とブラケット本体20とをロストワックス製法を用いて個別に鋳造した上で、軸受ハウジング部材60をブラケット本体20内の本体周壁部22に嵌め入れブラケット本体20にボルト23を用いて取り付けることにより、ブラケット10を製造することができる。すなわち、ブラケット10をロストワックス製法を用いて製造するに当たって行われる砂付工程において、ブラケット本体20のワックス模型と軸受ハウジング部材60のワックス模型とに個別に砂付することができる。したがって、モータポンプ1のブラケット10によれば、ブラケット10のワックス模型における空間S内に耐火粉末を進入させる困難性が生じることなく、ロストワックス製法を用いて製造することができる。
【0055】
また、ブラケット10によれば、本体縦壁部24は回転軸4近傍まで径方向内方に延びており、ハウジング縦壁部64は回転軸4近傍まで径方向内方に延びているので、第1貫通孔24hおよびハウジング貫通孔64hの径が回転軸4の径程度の大きさしか有しておらず、仮に一体であるとした場合のブラケット10のワックス模型における空間Sに外部から耐火粉末を進入させることは困難であるが、ブラケット本体20と軸受ハウジング部材60とが別体であるので、そのような困難性が生じることなく、ロストワックス製法を用いて製造することができる。
【0056】
また、ブラケット10によれば、ハウジング縦壁部64のハウジング貫通孔64hの縁部にはハウジング側シール保持部64sが形成されているので、ハウジング側シール保持部64sにシール部材25が保持されることにより、モータポンプ1において、ハウジング貫通孔64hを挿通する回転軸4とハウジング縦壁部64との間から軸受5の潤滑油がポンプ部側に漏出することが防止される。
【0057】
また、ブラケット10によれば、軸受ハウジング部材60のハウジングフランジ62fがブラケット本体20のフランジ接合面22iに対して軸線N方向に面接触した状態で、モータ部側からハウジングフランジ62fおよびフランジ接合面22iを軸線N方向に挿通するボルト23を用いて、軸受ハウジング部材60がブラケット本体20に取り付けられるので、軸受ハウジング部材60をブラケット本体20にボルト23を用いて取り付けるに当たって、ボルト23が本体周壁部22またはハウジング周壁部62に干渉することなく、軸線N方向に向いたボルト23を容易にねじ回しすることができる。
【0058】
また、ブラケット10によれば、ブラケット本体20はポンプ部3から圧送された流体を吐出する吐出ポート33を有するので、従来のモータポンプにおいて吐出ポートがポンプ部に設けられていた場合に比べて、モータポンプの軸線N方向の全長を小さくすることができる。
【0059】
また、ブラケット10によれば、本体周壁部22において、本体縦壁部24と、ブラケット本体20に取り付けられた軸受ハウジング部材60のハウジング縦壁部64との間に径方向に開口する開口部22оが形成されており、開口部22оは空間Sと外部とを互いに連通させるので、空間Sを通る回転軸4を冷却して回転軸4を通じてモータ部2からポンプ部3に熱が伝わることを抑制することができる。また、開口部22оからスパナ等の工具を差し入れて、回転軸4の調整を行うことができる。
【0060】
また、ブラケット10の製造方法によれば、鋳型作製工程ST1は、ブラケット本体20のワックス模型と軸受ハウジング部材60のワックス模型とをそれぞれ作製するワックス模型作製工程ST11と、それぞれのワックス模型にスラリーを塗布する浸漬工程ST12と、スラリーが塗布されたそれぞれのワックス模型の表面に耐火粉末を付着させる砂付工程ST13と、耐火粉末を焼成するとともに、耐火粉末が付着したそれぞれのワックス模型から脱蝋する焼成脱蝋工程ST14と、を含むので、ブラケット10をロストワックス製法を用いて製造するに当たって、ブラケット10のワックス模型における空間S内に耐火粉末を進入させる困難性が生じることなく、ブラケット本体20と軸受ハウジング部材60とを個別に鋳造することによって、ブラケット10を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、モータポンプのモータ部とポンプ部とを互いに連結するブラケットおよびブラケットの製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 モータポンプ
2 モータ部
3 ポンプ部
4 回転軸
5 軸受
10 ブラケット
20 ブラケット本体
22 本体周壁部
22i フランジ接合面
23 ボルト
24 本体縦壁部
24h 第1貫通孔
33 吐出ポート
60 軸受ハウジング部材
62 ハウジング周壁部
62f ハウジングフランジ
64 ハウジング縦壁部
64h ハウジング貫通孔
64s ハウジング側シール保持部
65 シール部材
N 軸線
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7