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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127244
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B23K9/29 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030909
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 夏芽
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LD07
4E001LH02
4E001LH06
4E001NA08
(57)【要約】
【課題】ヒュームの熱によりトーチ本体が高温になることを抑制しつつ、溶接中または溶接直後においてもヒュームの吸引量を調整する。
【解決手段】溶接トーチは、トーチ本体100と、吸引機構110とを備える。トーチ本体100は、シールドガスを吐出する吐出ノズル101、および、吐出ノズル101にシールドガスを供給するガス供給経路102を含む。吸引機構110は、吐出ノズル101に対して着脱可能に接続された吸引ノズル120、および、吸引ノズル120からヒュームを吸引する吸引経路130を含む。吸引経路130に、吸引ノズル120からのヒュームの吸引量を調整可能な調整部150が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドガスを吐出する吐出ノズル、および、該吐出ノズルに前記シールドガスを供給するガス供給経路を含むトーチ本体と、
前記吐出ノズルに対して着脱可能に接続された吸引ノズル、および、該吸引ノズルからヒュームを吸引する吸引経路を含む吸引機構とを備え、
前記吸引経路に、前記吸引ノズルからの前記ヒュームの吸引量を調整可能な調整部が設けられている、溶接トーチ。
【請求項2】
前記調整部は、
前記吸引経路の一部を構成しつつ周面に開口が設けられたパイプ部材と、
前記パイプ部材の前記周面と摺動し、かつ、前記開口の開口面積を変更可能な可動部材とを有する、請求項1に記載の溶接トーチ。
【請求項3】
前記パイプ部材は、前記可動部材の摺動方向に沿って延在する溝部が形成されており、
前記可動部材の内面に、前記溝部と係合しつつ前記摺動方向に移動可能な凸部が形成されており、
前記パイプ部材は、前記溝部の底面に、前記摺動方向に互いに間隔をあけて複数の凹部が形成されており、
前記凸部は、前記複数の凹部の各々と着脱可能に嵌合し、
前記可動部材は、前記凸部が前記複数の凹部のいずれか1つと嵌合することによって前記摺動方向において位置決めされる、請求項2に記載の溶接トーチ。
【請求項4】
前記トーチ本体は、ハンドルを含み、
前記吐出ノズルの先端から前記吸引機構に沿って前記調整部に達するまでの最短距離は、前記吐出ノズルの前記先端から前記トーチ本体に沿って前記ハンドルに達するまでの最短距離より長い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接トーチ。
【請求項5】
前記吸引経路が前記トーチ本体に沿うように配置されていることにより、前記調整部は、前記ハンドルの周囲に位置している、請求項4に記載の溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接トーチを開示した先行技術文献として、米国特許第7544914号明細書(特許文献1)がある。特許文献1に記載された溶接トーチは、ノズルと、ハンドルと、導管と、ヒューム抽出ダクトとを備える。ノズルおよびハンドルは、導管により接続されている。導管には、シールドガスおよび溶接ワイヤが供給される。ヒューム抽出ダクトは、ノズルからハンドルを通じて延びている。導管およびヒューム抽出ダクトは、外側ケーシングに囲まれている。ハンドルには、スイッチが設けられている。スイッチは、ヒュームの吸引を調整する調整システムに接続されて、吸引量を調整することが可能である。
【0003】
煙捕集装置を備えた溶接装置を開示した先行技術文献として、特開昭50-147451号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された煙捕集装置を備えた溶接装置は、ノズルと、吸引カバー筒とを備える。ノズルは、溶接個所にシールドガスを供給する。ノズルの外周には、鍔が設けられている。吸引カバー筒は、ノズルの外周に吸引室を形成するように配置されている。鍔と吸引カバー筒の先端との間には、互いの間隔を調整可能に設けられ、溶接時に発生する煙を捕集する吸引口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7544914号明細書
【特許文献2】特開昭50-147451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、ノズルおよびハンドルを含むトーチ本体に、シールドガスのガス供給経路になる導管とヒュームの吸引経路になるヒューム抽出ダクトとが一体に配置されているため、吸引されたヒュームの熱によってトーチ本体が高温になる可能性がある。
【0006】
特許文献2においては、ヒュームの吸引量を調整する吸引口がノズルに近いため、吸引口が溶接時の熱によって高温になる。この場合、高温の吸引口に触れることが難しいため、溶接中または溶接直後にヒュームの吸引量を調整することができない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ヒュームの熱によりトーチ本体が高温になることを抑制しつつ、溶接中または溶接直後においてもヒュームの吸引量を調整することができる、溶接トーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく溶接トーチは、トーチ本体と、吸引機構とを備える。トーチ本体は、シールドガスを吐出する吐出ノズル、および、吐出ノズルにシールドガスを供給するガス供給経路を含む。吸引機構は、吐出ノズルに対して着脱可能に接続された吸引ノズル、および、吸引ノズルからヒュームを吸引する吸引経路を含む。吸引経路に、吸引ノズルからのヒュームの吸引量を調整可能な調整部が設けられている。
【0009】
この場合、ヒュームの熱によりトーチ本体が高温になることを抑制しつつ、溶接中または溶接直後においてもヒュームの吸引量を調整することができる。
【0010】
本発明の一形態における調整部は、パイプ部材と、可動部材とを有する。パイプ部材は、吸引経路の一部を構成しつつ周面に開口が設けられている。可動部材は、パイプ部材の周面と摺動し、かつ、開口の開口面積を変更可能である。
【0011】
これにより、ヒュームの吸引量を容易に調整することができる。
【0012】
本発明の一形態においては、パイプ部材は、可動部材の摺動方向に沿って延在する溝部が形成されている。可動部材の内面に、溝部と係合しつつ摺動方向に移動可能な凸部が形成されている。パイプ部材は、溝部の底面に、摺動方向に互いに間隔をあけて複数の凹部が形成されている。凸部は、複数の凹部の各々と着脱可能に嵌合する。可動部材は、凸部が複数の凹部のいずれか1つと嵌合することによって摺動方向において位置決めされる。
【0013】
この場合、開口面積を変更しつつ簡易な構成によりパイプ部材に対して可動部材を位置決めすることができる。
【0014】
本発明の一形態においては、トーチ本体は、ハンドルを含む。吐出ノズルの先端から吸引機構に沿って調整部に達するまでの最短距離は、吐出ノズルの先端からトーチ本体に沿ってハンドルに達するまでの最短距離より長い。
【0015】
この場合、ヒュームの熱により調整部が高温になることを抑制することができる。
【0016】
本発明の一形態においては、吸引経路がトーチ本体に沿うように配置されていることにより、調整部は、ハンドルの周囲に位置している。
【0017】
これにより、溶接中に調整部を容易に操作することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒュームの熱によりトーチ本体が高温になることを抑制しつつ、溶接中または溶接直後においてもヒュームの吸引量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る溶接装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ周辺の構成を示す斜視図である。
図3図2の溶接トーチをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部の構成を示す上面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部の開口の一部が可動部材によって塞がれる途中の状態を示す上面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部のパイプ部材に可動部材が取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施の形態の変形例に係る溶接トーチが備える調整部の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチについて図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
なお、以下の説明においては、吐出ノズルのシールドガスが吐出される側を先端側とし、シールドガスが供給される供給源側を後端側と称する場合がある。
【0022】
まず、本発明の一実施の形態に係る溶接装置の構造について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る溶接装置の構成を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る溶接装置1は、溶接トーチ10と、ワイヤ供給部20と、電源部30と、ガスボンベ4と、トーチケーブル11と、電力伝送線21と、信号線22と、ガス配管23とを備える。
【0024】
溶接トーチ10は、アークを発生させて被加工物2を溶接する部分である。溶接トーチ10は、溶接装置1の一端に配置されている。溶接トーチ10は、溶接トーチ10の先端から突出する図示しないワイヤの先端と被加工物2との間にアークを発生させる。溶接トーチ10は、シールドガスを吐出しつつ、ワイヤおよび被加工物2をアークの熱によって溶融させることにより溶接する。溶接箇所から、高温のヒュームが発生する。
【0025】
シールドガスは、ガスボンベ4から供給される。具体的には、ガスボンベ4のシールドガスは、ガスボンベ4、電源部30およびワイヤ供給部20の間に設けられているガス配管23からトーチケーブル11内を通じて溶接トーチ10の先端に供給される。
【0026】
ワイヤ供給部20は、溶接トーチ10に図示しないワイヤを供給する。ワイヤ供給部20から溶接トーチ10にワイヤが供給されることによって、溶接トーチ10の先端に配置されている図示しないチップ部からワイヤが突出する。
【0027】
トーチケーブル11は、溶接トーチ10とワイヤ供給部20とを接続するケーブルである。トーチケーブル11は、ワイヤを供給するための配管、シールドガスを供給するための配管、溶接トーチ10への給電配線および電源部30と信号を送受信するための信号配線を含んでいる。本実施の形態におけるトーチケーブル11の電気系統は、上記の給電配線および信号配線を含んでいる。
【0028】
電源部30は、溶接時の溶接装置1の出力、シールドガスの流量またはワイヤの送り速度などを制御する。電源部30は、溶接するための電力をワイヤ供給部20を介して溶接トーチ10に供給する。電源部30は、電源ケーブルによって1次側電源3に接続され、溶接トーチ10に給電可能である。
【0029】
電源部30の電力を供給する出力端子は、電力伝送線21によりワイヤ供給部20および被加工物2に接続されている。具体的には、電源部30の一方の出力端子は、電力伝送線21aを介してワイヤ供給部20に接続されている。電源部30の他方の出力端子は、電力伝送線21bを介して被加工物2に接続されている。信号線22は、ワイヤ供給部20と電源部30とを接続して電気信号を送受信するために設けられている。
【0030】
次に、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチの詳細な構成について説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ周辺の構成を示す斜視図である。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態に係る溶接トーチ10は、トーチ本体100と、吸引機構110とを含む。
【0032】
トーチ本体100は、吐出ノズル101と、ガス供給経路102と、トーチボディ103と、ハンドル104とを有する。
【0033】
吐出ノズル101は、先端からワイヤが突出し、ワイヤ周囲にシールドガスを吐出する。シールドガスは、たとえば、アルゴンガスである。なお、シールドガスは、アルゴンガスに限定されず、炭酸ガスまたはヘリウムガスなどの他の不活性ガスであってもよい。
【0034】
ガス供給経路102は、吐出ノズル101にシールドガスを供給する。ガス供給経路102は、トーチボディ103、ハンドル104およびトーチケーブル11の内部を挿通している。
【0035】
トーチボディ103は、吐出ノズル101に接続されている。トーチボディ103は、吐出ノズル101に対してワイヤおよびシールドガスを供給する経路を構成している。
【0036】
ハンドル104は、溶接作業において溶接トーチ10を操作するための部分である。ハンドル104は、トーチボディ103を介して、吐出ノズル101の後端側に配置されている。ハンドル104は、把持部105と、ボタン106とを有する。
【0037】
把持部105は、溶接トーチ10を操作するために把持される部分である。ボタン106は、把持部105の先端側に位置している。ボタン106が押下されることにより、吐出ノズル101からシールドガスが噴射され、ワイヤ供給部20から吐出ノズル101へ給電されつつワイヤが供給される。
【0038】
図3は、図2の溶接トーチをIII-III線矢印方向から見た断面図である。なお、図3においては、発明の理解を容易にするため、溶接トーチ10における吸引ノズルのみを断面視している。
【0039】
図1図3に示すように、吸引機構110は、吸引ノズル120と、吸引経路130と、吸引パイプ140と、第1ホース141と、第2ホース142と、調整部150と、吸引部160とを有する。
【0040】
吸引機構110は、溶接時に発生するヒュームを吸引する。吸引ノズル120は、吐出ノズル101の外周面を被覆しつつ、吐出ノズル101の外周面に接続されている。図3に示すように、吸引ノズル120は、先端部121と、本体部122と、キャップ部123とを有する。
【0041】
先端部121は、ヒュームを吸引する吸引口を構成している。ヒュームは、先端部121から吸引ノズル120の内部に吸引される。
【0042】
本体部122は、吐出ノズル101の外周面との間に、吸引口と連通した吸引室を構成する。本体部122は、先端側接続部124において先端部121と螺合することにより、先端部121と着脱可能に接続されている。本体部122のキャップ部123側の端に、端に行くにしたがって外径が縮径しているテーパー部126が設けられている。テーパー部126は、本体部122の周方向に間隔をあけて不連続に複数設けられている。
【0043】
キャップ部123は、吸引ノズル120を吐出ノズル101に固定する固定具である。キャップ部123は、後端側接続部125において本体部122と螺合することにより、本体部122と着脱可能に接続されている。キャップ部123には、端に行くにしたがって内径が縮径し、テーパー部126がくさび状に挿入される内周部127が設けられている。
【0044】
吸引ノズル120の内側に吐出ノズル101を挿通させた後、後端側接続部125において、キャップ部123と本体部122とを螺合させて接続することによって、吸引ノズル120は吐出ノズル101に固定される。
【0045】
具体的には、後端側接続部125において、キャップ部123と本体部122とを螺合させて接続すると、テーパー部126が内周部127内にくさび状に挿入される。その結果、本体部122のテーパー部126が、吐出ノズル101の外周面を締め付けることにより、吸引ノズル120が吐出ノズル101に固定される。本実施の形態におけるテーパー部126は、本体部122の周方向に連続して設けられている場合と比較して、本体部122の周方向に間隔をあけて不連続に複数設けられていることによって、本体部122の径方向に弾性変形しやすいため、吐出ノズル101に対して吸引ノズル120をより強固に固定することができる。
【0046】
上述したように、吸引ノズル120は、吐出ノズル101に対して着脱可能に接続されている。本実施の形態においては、吐出ノズル101に吸引ノズル120を取り付けるための構成を別途設ける必要がないため、トーチ本体100に吸引機構110を容易に着脱可能に接続することができる。吸引機構110は、吸引機構110を有していない既存の溶接トーチに対しても吸引機構110を取り付け可能に構成されている。
【0047】
吸引ノズル120から吸引されたヒュームは、吸引経路130を通流する。図2に示すように、吸引経路130は、吸引パイプ140、第1ホース141、調整部150および第2ホース142の内部を挿通している。
【0048】
吸引パイプ140は、本体部122の外周に接続されている。吸引パイプ140は、吐出ノズル101に対する本体部122の周方向の角度を変更することによって、上記周方向のいずれの角度でも吐出ノズル101に対して固定することができる。これにより、ハンドル104を持つ手が右手または左手のどちらの場合においても、吸引パイプ140の上記周方向の位置を調整することにより、ハンドル104を持つ手に吸引機構110が干渉することを抑制することができる。
【0049】
第1ホース141は、吸引パイプ140に接続されている。第1ホース141は、たとえば、樹脂製である。第2ホース142は、調整部150を介して第1ホース141と接続されている。第2ホース142は、たとえば、樹脂製である。第1ホース141および第2ホース142の各々の内側を、吸引されたヒュームが通流する。
【0050】
調整部150は、吸引ノズル120からのヒュームの吸引量を調整可能に、吸引経路130に設けられている。本実施の形態においては、調整部150は、吸引経路130がトーチ本体100に沿うように配置されていることにより、ハンドル104の周囲に位置している。
【0051】
吐出ノズル101の先端から吸引機構110に沿って調整部150に達するまでの最短距離は、吐出ノズル101の先端からトーチ本体100に沿ってハンドル104に達するまでの最短距離より長い。調整部150は、たとえば、吐出ノズル101の先端から吸引機構110に沿って20cm以上の離れた位置に配置されている。
【0052】
図1に示す吸引部160は、ヒュームを吸引するための負圧を発生させる。吸引部160は、第2ホース142に接続されている。吸引部160は、たとえば、ロータリー式の真空ポンプである。吸引部160は、ロータリー式の真空ポンプに限定されない。なお、吸引部160には、ヒュームを吸着するフィルタが設けられていることが望ましい。また、吸引部160は、その内部に吸引量を調整する機構を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0053】
図4は、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部の構成を示す上面図である。図5は、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部の開口の一部が可動部材によって塞がれる途中の状態を示す上面図である。図6は、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチが備える調整部のパイプ部材に可動部材が取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
【0054】
図4図6に示すように、調整部150は、パイプ部材151と、可動部材155とを有している。
【0055】
パイプ部材151は、吸引経路130の一部を構成しつつ周面に開口152が設けられている。開口152は、パイプ部材151の内側と外側とを繋ぐようにパイプ部材151を貫通している。図6に示すように、パイプ部材151は、溝部153が形成されている。溝部153は、可動部材155の摺動方向に沿って延在している。本実施の形態における可動部材155の摺動方向は、パイプ部材151の軸方向と一致している。
【0056】
パイプ部材151は、溝部153の底面に、可動部材155の摺動方向に互いに間隔をあけて複数の凹部154が形成されている。
【0057】
可動部材155は、パイプ部材151の周面の一部を覆う半円筒形状を有する。可動部材155は、パイプ部材151の周面と摺動する。可動部材155の内面には、凸部156が形成されている。凸部156は、溝部153と係合しつつ可動部材155の摺動方向に移動可能に形成されている。凸部156は、複数の凹部154の各々と着脱可能に嵌合している。
【0058】
可動部材155は、凸部156がパイプ部材151の複数の凹部154のいずれか1つと嵌合することによって可動部材155の摺動方向において位置決めされる。可動部材155が上記摺動方向に移動しつつ、凸部156が複数の凹部154のいずれか1つと嵌合することによって、開口152の開口面積を変更可能である。
【0059】
開口152の開口面積を変更することによって、吸引機構110によるヒュームの吸引量を調整することができる。具体的には、図5に示すように、ヒュームの吸引量を増加させるためには、開口152の可動部材155により塞がれる範囲を増やすことによって、開口152の開口面積を小さくする。これにより、開口152から吸引される外気を減らし、吸引ノズル120からのヒュームの吸引量を増加させることができる。
【0060】
一方、図4に示すように、ヒュームの吸引量を減少させるためには、開口152の可動部材155により塞がれる範囲を減らすことによって、開口152の開口面積を大きくする。これにより、開口152から吸引される外気を増やし、吸引ノズル120からのヒュームの吸引量を減少させることができる。このように、可動部材155によって、開口152の開口面積を連続的に変更しつつ、ヒュームの吸引量を微調整することができる。
【0061】
吸引機構110においては、開口152から外気を吸引しつつヒュームを吸引することによって、調整部150が外気によって冷却されるため、ヒュームの熱により調整部150が高温になることを抑制することができる。
【0062】
なお、本実施の形態における可動部材155は、半円筒形状であるが、この形状に限定されない。可動部材は、環状形状を有し、パイプ部材を摺動してもよい。この場合には、パイプ部材には溝部は設けられていなくてもよい。パイプ部材に溝部が設けられていない場合には、たとえば、可動部材の可動領域の両端に、フランジなどの当て止めを配置することによって、可動部材が開口を開閉可能にパイプ部材の軸方向に摺動することができる。
【0063】
本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10においては、トーチ本体100に対してヒュームの吸引経路130を別体で設け、かつ、吸引経路130に調整部150を設けることによって、トーチ本体100と吸引経路130とが一体で構成される場合と比較して、ヒュームの熱によりトーチ本体100が高温になることを抑制しつつ、溶接中または溶接直後においてもヒュームの吸引量を調整することができる。
【0064】
本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10においては、ヒュームの吸引を調整する調整部150がパイプ部材151および可動部材155により構成されることによって、パイプ部材151に設けられた開口152の開口面積を可動部材155により変更することができるため、ヒュームの吸引量を容易に調整することができる。
【0065】
本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10においては、パイプ部材151の溝部153の底面に可動部材155の摺動方向に沿って複数の凹部154が並んで形成され、可動部材155の内面に、摺動方向に沿って溝部153と係合しつつ複数の凹部154のいずれか1つと着脱可能に嵌合する凸部156が形成されていることによって、開口面積を変更しつつ、簡易な構成によりパイプ部材151に対して可動部材155を位置決めすることができる。
【0066】
本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10においては、吐出ノズル101の先端から吸引機構110に沿って調整部150に達するまでの最短距離が、吐出ノズル101の先端からトーチ本体100に沿ってハンドル104に達するまでの最短距離より長いため、ヒュームの熱により調整部150が高温になることを抑制することができる。
【0067】
本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10においては、吸引経路130がトーチ本体100に沿うように配置されていることにより、調整部150がハンドル104の周囲に位置しているため、溶接中に調整部150を容易に操作することができる。
【0068】
以下、本発明の一実施の形態の変形例に係る溶接トーチについて説明する。本発明の一実施の形態の変形例に係る溶接トーチは、吸引機構における調整部の構成が本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10と異なるため、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチ10と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0069】
図7は、本発明の一実施の形態の変形例に係る溶接トーチが備える調整部の構成を示す上面図である。
【0070】
図7に示すように、本変形例の吸引機構110Aに係る調整部150Aは、パイプ部材151Aと、可動部材155Aとを有している。パイプ部材151Aは、周面に雄ねじ部157が形成されている。
【0071】
可動部材155Aは、パイプ部材151Aの周面と摺動する。可動部材155Aは、たとえば、ナットである。可動部材155Aの内面には、雄ねじ部157と螺合する雌ねじ部158が形成されている。本変形例における可動部材155Aは、パイプ部材151Aの雄ねじ部157に雌ねじ部158を螺合させつつ可動部材155Aをパイプ部材151Aの軸方向に沿って移動させることによって、開口152の開口面積を変更可能である。
【0072】
本変形例に係る溶接トーチにおいては、パイプ部材151Aの周面に雄ねじ部157が形成され、可動部材155Aの内面に、雄ねじ部157と螺合する雌ねじ部158が形成されていることによって、開口152の開口面積を連続的に変更しつつヒュームの吸引量を微調整することができる。
【0073】
なお、本発明の一実施の形態に係る溶接トーチおよび溶接装置においては、MIG(Metal Inert Gas)溶接について例示したが、本発明の適用はMIG溶接用の溶接装置に限定されない。本発明は、MAG(Metal Active Gas)溶接またはTIG(Tungsten Inert Gas)溶接などの他のアーク溶接においても適用することができる。
【0074】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 溶接トーチ、100 トーチ本体、101 吐出ノズル、102 ガス供給経路、104 ハンドル、110,110A 吸引機構、120 吸引ノズル、130 吸引経路、150,150A 調整部、151,151A パイプ部材、152 開口、153 溝部、154 凹部、155,155A 可動部材、156 凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7