(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127267
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】キャリヤ、及び、キャリヤ用クーリングモジュール
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B60K11/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030949
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 直也
(72)【発明者】
【氏名】古田 雅也
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA07
3D038AA10
3D038AB09
3D038AC02
3D038AC11
3D038AC14
3D038AC15
3D038AC20
3D038AC26
(57)【要約】
【課題】複数のクーリングデバイスに空気を通過させて冷却するキャリヤにおいて、クーリングデバイスの冷却効率を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】キャリヤ1は、車外の空気を取り込む気流を生成するファン(11)の前に、空気と熱交換して冷却されるインタークーラ(21)とオイルクーラ(22)とラジエータ(23)とを並列に配置される。キャリヤ1は、インタークーラ(21)とオイルクーラ(22)とラジエータ(23)との間の第1の隙間(S1)と第2の隙間(S2)に車外の空気を誘導する整風部材41を有する。第1の隙間(S1)と第2の隙間(S2)は、一対の取付ブラケット(28)と整風部材(41)の上部側板(425,426)、中間側板(427,428)、下部材(424)と、シール部材(26)により、整風部材(41)の外部から空気が流入することを抑制されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の空気を取り込む気流を生成するファンと、前記ファンにより取り込まれた前記空気と熱交換して冷却される複数のクーリングデバイスと、を備えるキャリヤにおいて、
前記複数のクーリングデバイスは、前記ファンの前に並列に配置され、隣設するクーリングデバイスの間に隙間を備えており、
前記車外の空気を前記隙間に誘導する整風部材と、
前記整風部材の外部から前記隙間に空気が流入することを抑制する抑制部と、
を有すること、
を特徴とするキャリヤ。
【請求項2】
請求項1に記載するキャリヤにおいて、
前記隣設するクーリングデバイスは、ファン側に位置するクーリングデバイスの上端部が前記ファンと反対側に位置するクーリングデバイスの上端部より上方に突き出しており、
前記整風部材は、
前記気流の上流側に向かって開口する開口部と、
前記複数のクーリングデバイスの上端部位置に対応して傾斜し、前記開口部に流入した空気を前記隙間に誘導する誘導路を、前記複数のクーリングデバイスとの間に形成する傾斜部と、
を有すること、
を特徴とするキャリヤ。
【請求項3】
請求項2に記載するキャリヤにおいて、
前記隙間は、第1クーリングデバイスと第2クーリングデバイスとの間に設けられた第1の隙間と、前記第2クーリングデバイスと第3クーリングデバイスとの間に設けられた第2の隙間と、を有し、
前記抑制部は、前記第1の隙間と前記第2の隙間の周縁部のうち、上縁部分を前記誘導路に連通するように開放し、残部を整風部材またはシール部材により塞ぐこと、
を特徴とするキャリヤ。
【請求項4】
キャリヤに搭載されるキャリヤ用クーリングモジュールであって、
空気と熱交換して冷却されるクーリングデバイスが隙間を空けて並列に配置され、
前記キャリヤの車外から取り込まれた空気を前記隙間に誘導する整風部材と、
前記整風部材の外部から前記隙間に空気が流入することを抑制する抑制部と、を有すること、
を特徴とするキャリヤ用クーリングモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを用いて複数のクーリングデバイスに空気を通過させて冷却するキャリヤ、及び、キャリヤ用クーリングモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所や造船所や集荷場では、キャリヤを用いて重量物を搬送している。キャリヤは、エンジンが発生した駆動力により車輪を回転駆動させると共に、作動油の油圧を調整して車輪を操舵駆動させることにより、走行する。燃費効率や部品の耐久性を向上させるため、キャリヤは、車外から空気を取り込む気流を生成するファンの前に、エンジンを循環する冷却水を冷却するラジエータや、作動油を冷却するオイルクーラや、エンジンの吸気を冷却するインタークーラなどのクーリングデバイスを複数配置し、走行時にこれらに空気を通過させて冷却している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンの前に複数のクーリングデバイスを並列に配置する場合、クーリングデバイスの間に隙間が形成される。ファンが駆動して気流を形成すると、最前方のクーリングデバイスから順に空気が通過する。並列配置されたクーリングデバイスは、前側のクーリングデバイスと後ろ側のクーリングデバイスとの間に隙間がある。そのため、前方のクーリングデバイスと熱交換して暖められた空気が、後方のクーリングデバイスに回り込んで隙間に停滞していた。隙間に空気が停滞することで、クーリングデバイスを冷却する空気の流量が少なくなり、また、クーリングデバイスを通過する空気の温度が高くなる。よって、従来のキャリヤは、クーリングデバイスの冷却効率が悪かった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数のクーリングデバイスに空気を通過させて冷却するキャリヤにおいて、各クーリングデバイスを効率良く冷却することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、(1)車外の空気を取り込む気流を生成するファンと、前記ファンにより取り込まれた前記空気と熱交換して冷却される複数のクーリングデバイスと、を備えるキャリヤにおいて、前記複数のクーリングデバイスは、前記ファンの前に並列に配置され、隣設するクーリングデバイスの間に隙間を備えており、前記車外の空気を前記隙間に誘導する整風部材と、前記整風部材の外部から前記隙間に空気が流入することを抑制する抑制部と、を有すること、を特徴とする。
【0007】
上記構成のキャリヤは、ファンが車外の空気を取り込む気流を生成すると、その空気が、当該ファンの前に並列に配置された複数のクーリングデバイスを通過し、これらを冷却する。このとき整風部材が、複数のクーリングデバイスの間に設けられた隙間に、ファンから取り込まれた空気の一部を前方のクーリングデバイスを通過させることなく誘導する。隙間は、抑制部により、整風部材の外部から空気が流入することを抑制される。そのため、ファンから取り込まれた空気が隙間に停留せずにクーリングデバイスを通過しやすくなる。また、整風部材により隙間に誘導された空気は、上記の通り前方のクーリングデバイスを通過していないため、クーリングデバイスを通過した空気より低温である。すなわち、クーリングデバイスを通過した空気は、隙間で冷却されてから、次のクーリングデバイスを通過する。よって、上記構成のキャリヤによれば、空気が各クーリングデバイスを通過することを促進し、クーリングデバイスの周囲温度の上昇を抑制するので、各クーリングデバイスを効率良く冷却することができる。
【0008】
(2)(1)に記載するキャリヤにおいて前記隣設するクーリングデバイスは、ファン側に位置するクーリングデバイスの上端部が前記ファンと反対側に位置するクーリングデバイスの上端部より上方に突き出しており、前記整風部材は、前記気流の上流側に向かって開口する開口部と、前記複数のクーリングデバイスの上端部位置に対応して傾斜し、前記開口部に流入した空気を前記隙間に誘導する誘導路を、前記複数のクーリングデバイスとの間に形成する傾斜部と、を有すること、が好ましい。
【0009】
上記構成のキャリヤは、傾斜部が複数のクーリングデバイスの上端部位置に対応して傾斜することで、誘導路の流路の断面積がクーリングデバイスと傾斜部との間で狭くなるので、誘導路を流れる空気の流速低下を抑制し、開口部に流入した車外の空気をファンに隣設するクーリングデバイスまで誘導できる。
【0010】
(3)(2)に記載するキャリヤにおいて、前記隙間は、第1クーリングデバイスと第2クーリングデバイスとの間に設けられた第1の隙間と、前記第2クーリングデバイスと第3クーリングデバイスとの間に設けられた第2の隙間と、を有し、前記抑制部は、前記第1の隙間と前記第2の隙間の周縁部のうち、上縁部分を前記誘導路に連通するように開放し、残部を整風部材またはシール部材により塞ぐこと、が好ましい。
【0011】
上記構成のキャリヤは、第1の隙間も第2の隙間も周縁部のうち上縁部分を、それらの上方に設けられた誘導路に連通させ、周縁部の残部を整風部材またはシール部材により塞がれているので、抑制部の構成を簡単かつコンパクトにすることができる。
【0012】
本発明の別態様は、(4)キャリヤに搭載されるキャリヤ用クーリングモジュールであって、空気と熱交換して冷却されるクーリングデバイスが隙間を空けて並列に配置され、前記キャリヤの車外から取り込まれた空気を前記隙間に誘導する整風部材と、前記整風部材の外部から前記隙間に空気が流入することを抑制する抑制部と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明によれば、複数のクーリングデバイスに空気を通過させて冷却するキャリヤにおいて、各クーリングデバイスを効率良く冷却することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るキャリヤの側面図である。
【
図6】キャリヤ用クーリングモジュールの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係るキャリヤ及びキャリヤ用クーリングモジュールついて図面を参照して説明する。本形態では、例えば製鉄所や造船所や集荷場などで重量物を搬送するキャリヤであって、ファンの前に空冷式のクーリングデバイスを並列配置したキャリヤについて開示する。
【0016】
<キャリヤ1の概略構成>
図1は、キャリヤ1の側面図である。キャリヤ1は、荷台2の長手方向前端部に運転席3が設けられている。荷台2の下方には、複数の車輪を有する走行装置6が複数設けられている。走行装置6には、車輪に回転駆動力を付与する油圧モータ7が設けられ、あるいは車輪を制動する空圧ブレーキ8が設けられている。各走行装置6には図示しない操舵シリンダが設けられている。キャリヤ1は、走行装置6が独立して操舵駆動され、斜行や横行などを行うことができる。油圧モータ7と図示しない操舵シリンダは、図示しない油圧装置により油圧を調整された作動油により作動する。荷台2の長手方向後端部には、エンジン4を収容するエンジンルーム5が設けられている。
【0017】
図2は、エンジンルーム5の拡大図(正面図)である。
図3は、
図2の左側面図である。
図4は、
図2の上面図である。
図5は、
図2のA-A断面図である。なお、
図1~
図5では、図面を見やすくするために、ファン11とモジュール20と整風部材41を実線で記載し、それ以外の荷台2やエンジンルーム5を適宜簡略化して二点鎖線で記載している。また、
図5は、図面を見やすくするために、各クーリングデバイスを簡略化し、さらに部材のハッチングを省略している。
【0018】
エンジンルーム5は、通気口5aが車両側方に開口している。エンジンルーム5は、エンジン4と通気口5aとの間に、ファン11と、キャリヤ用クーリングモジュール20(以下「モジュール20」とする)と、整風部材41が配設されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、ファン11は、通気口5aと対向するように配置され、エンジン4に連結されている。ファン11は、エンジン4により回転駆動され、通気口5aを介して車外の空気を取り込む気流を生成する。
【0020】
図2、
図3及び
図4に示すように、モジュール20は、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23を並列に配置して一体的に結合したものである。モジュール20は、ファン11とラジエータ23を対向させた状態(通気口5aから流入した空気がインタークーラ21・オイルクーラ22・ラジエータ23の順に通過する状態)で、一対の脚部30,30を介してエンジンルーム5の底部5bに取り付けられている。
図3及び
図4に示すように、モジュール20は、ラジエータ23に設けられたファン収容部29にファン11が回転可能に収容される。
【0021】
インタークーラ21は、空気と熱交換してエンジン4の吸気を冷却する空冷式のクーリングデバイスである。オイルクーラ22は、空気と熱交換して作動油を冷却する空冷式のクーリングデバイスである。ラジエータ23は、空気と熱交換して、エンジンの冷却水を冷却する空冷式のクーリングデバイスである。
【0022】
図5に示すように、モジュール20は、インタークーラ21とオイルクーラ22との間に第1の隙間S1を備え、オイルクーラ22とラジエータ23との間に第2の隙間S2を備えている。モジュール20の詳細は後述する。
【0023】
なお、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は「複数のクーリングデバイス」の一例である。また、インタークーラ21は「第1クーリングデバイス」の一例であり、オイルクーラ22は「第2クーリングデバイス」の一例であり、ラジエータ23は「第3クーリングデバイス」の一例である。また、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は「隣設するクーリングデバイス」の一例である。
【0024】
図3~
図5に示すように、整風部材41は、ファン11により車外から取り込まれた空気を第1の隙間S1と第2の隙間S2に誘導するように、モジュール20に取り付けられている。整風部材41の詳細は後述する。
【0025】
また、
図3~
図5に示すように、第1の隙間S1の周縁部は、後述する一対の取付ブラケット28,28と整風部材41により左右の縁部と下縁部を塞がれ、整風部材41の外部から空気が流入することを抑制されている。また、
図3及び
図5に示すように、第2の隙間S2の周縁部は、後述するシール部材26により左右の縁部と下縁部を塞がれ、整風部材41の外部から空気が流入することを抑制されている。なお、一対の取付ブラケット28,28と整風部材41とシール部材26は「抑制部」の一例である。
【0026】
<モジュール20の構成>
図6は、モジュール20の外観斜視図である。
図7は、
図6の断面斜視図である。なお、
図6及び
図7では、図面を見やすくするために、適宜部材を省略したり、部材の形状を簡略化したりしている。
【0027】
図6に示すように、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は、薄い直方体形状をなす部分を備える。インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は、それぞれ、冷却対象(吸気、作動油、冷却水)が流れる図示しない流路と、空気と熱交換する図示しない放熱フィンと、を備えている。インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は、それぞれ、図示しない放熱フィンに沿って前面21a,22a,23aから背面21b,22b,23bへ通過する空気と熱交換することで、冷却対象が冷却される。
【0028】
オイルクーラ22とラジエータ23は、横幅(左右方向の長さ)がほぼ同じに設定されている。インタークーラ21はオイルクーラ22より横幅が小さく設定されている。インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23は、この順に、全高が高くなるように設定されている。
【0029】
図6及び
図7に示すように、オイルクーラ22は、背面22bをラジエータ23の前面23aに対向させ、下端部の位置をラジエータ23の下端部の位置に概ね揃えた状態で、上端部が金具24を用いてラジエータ23の前面23aに固定されている。これと同様にして、オイルクーラ22の下端部が図示しない金具を用いてラジエータ23の前面23aに固定されている。よって、ラジエータ23の上端部はオイルクーラ22の上端部より上方に突き出している。
【0030】
オイルクーラ22とラジエータ23との間には、第2の隙間S2が略矩形状に設けられている。第2の隙間S2の周縁部のうち左右の縁部と下縁部は、シール部材26a,26b,26cによりそれぞれシールされている。一方、第2の隙間S2の上縁部分は、シールされていない。
【0031】
ラジエータ23の前面23aには、案内板27が固定されている。案内板27は、ラジエータ23の横幅とほぼ同じ長さを有し、長さ方向に対して直交する方向で切断した断面の形状が円弧状をなす。案内板27は、空気を第2の隙間S2へ誘導するように、第2の隙間S2の上縁部分に沿って配設されている。
【0032】
インタークーラ21は、背面(ファン11側に配置される面)21bをオイルクーラ22の前面(ファン11と反対側に配置される面)22aに対向させ、下端部の位置をオイルクーラ22の下端部の位置に概ね揃えた状態で、一対の取付ブラケット28,28を用いて、左右両端部がオイルクーラ22とラジエータ23に固定されている。よって、オイルクーラ22の上端部はインタークーラ21の上端部より上方に突き出している。インタークーラ21とオイルクーラ22との間には、第1の隙間S1が略矩形状に設けられている。
【0033】
<整風部材41の構成>
図8は、整風部材41の外観斜視図である。整風部材41は、第1カバー部42と第2カバー部43とを備える。
【0034】
第1カバー部42は、上板部材423と、下部材424と、上部側板425,426と、中間側板427,428と、下部側板429,430を箱状に組み立てたものであり、インタークーラ21と対向する部分に開口部42aが四角形状に設けられている。下部材424は、断面コの字形に形成され、インタークーラ21の下端部が非接触で配置される。上板部材423と下部材424は、エンジンルーム5を形成するフレーム側にボルト止めで固定されている。中間側板427の上端部及び上部側板425は重ね合わされてボルトVにより固定されている。中間側板427の下端部及び下部側板429は重ね合わされて下部材424に対してボルトVにより固定されている。これと同様にして、上部側板426と中間側板428と下部側板430も固定されている。
【0035】
第2カバー部43は、上カバー板432の前縁部に前板431が接合され、上カバー板432の左右側縁部に側カバー板433,434が接合されている。前板431は、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23の上端部位置に対応して傾斜している。前板431は「傾斜部」の一例である。側カバー板433,434は、ラジエータ23とオイルクーラ22とインタークーラ21の上部側面を覆うように、台形形状に形成されている。第2カバー部43は、上カバー板432の後縁部と側カバー板433,434の後縁部に沿って、防塵ゴム45が接着されている。
【0036】
図9は、空気の流れを示す概念図である。整風部材41は、下部材424にインタークーラ21の下端部が非接触で配置され、開口部42aに流入した空気がインタークーラ21の前面21a全体に当たるように配設されている。インタークーラ21は、開口部42aより後方にずれて配置されるため、開口部42aとインタークーラ21の前面21aとの間にはクリアランス54が設けられている。
【0037】
上板部材423は、インタークーラ21の上方にクリアランス52を空けて配置されるように、上部側板425,426に固定されている。開口部42a(
図8参照)は、インタークーラ21の前面21aの上端より上方にまで延設されている。
【0038】
第1の隙間S1は、周縁部のうち左右の縁部が整風部材41の上部側板425,426と中間側板427,428と下部側板429,430に塞がれ、下縁部が整風部材41の下部材424に塞がれており、整風部材41の外部から第1の隙間S1に空気が流入することを抑制されている。一方、第1の隙間S1は、上縁部分がクリアランス54に開放され、開口部42aから空気が流入する。
【0039】
図3及び
図4に示すように、第2カバー部43は、防塵ゴム45(45a,45b,45c)をラジエータ23の前面23aに当接させた状態で、一対の取付板44,44を用いてラジエータ23にボルトVで固定されている。
【0040】
図9に示すように、第2カバー部43は、前板431の下縁部が第1カバー部42の上板部材423に近接している。前板431は、オイルクーラ22とラジエータ23との間にクリアランス51が設けられ、開口部42aからクリアランス52に誘導された空気を、ラジエータ23の上部に誘導する。
【0041】
クリアランス51,52は、開口部42aに流入した空気の一部を第1の隙間S1と第2の隙間S2に誘導する誘導路50を構成する。前板431が傾斜しているため、誘導路50は、前板431とオイルクーラ22との間で流路の断面積が狭くなっており、流速を加速させることができる。
【0042】
(冷却動作の説明)
続いて、キャリヤ1の冷却動作について説明する。キャリヤ1は、エンジン4を駆動して走行する場合、ファン11がエンジン4により回転駆動され、車外から通気口5aを介して空気を取り込む気流を生成する。キャリヤ1は、例えば時速10km程度でゆっくり走行する。そのため、通気口5aがキャリヤ1の側方に開口していても、ファン11の回転駆動だけで、車外から空気を取り込む気流を生成できる。
【0043】
図9に示すように、ファン11が回転駆動すると、図中矢印X1に示すように、車外の空気が整風部材41の開口部42aに流入する。開口部42aに流入した空気は、図中矢印X2,X3,X4に示すように、インタークーラ21からオイルクーラ22、ラジエータ23へと通過する。インタークーラ21、オイルクーラ22、ラジエータ23は、開口部42aから流入した空気と熱交換し、冷却される。
【0044】
また、図中X11に示すように、開口部42aに流入した空気は、クリアランス52にも供給される。この空気は、図中矢印X12,X13に示すように、オイルクーラ22の前面22aにぶつかって、第1の隙間S1とクリアランス51に分流される。
【0045】
第1の隙間S1は、誘導路50に連通する上縁部分以外、すなわち側縁および下縁が一対の取付ブラケット28,28および整風部材41により塞がれているので、インタークーラ21を通過して暖められた空気が外部に漏れにくい。同時に、第1の隙間S1の側縁及び下縁から外部の空気が流入し難い構造でもあるため、インタークーラ21を通過した空気は、第1の隙間S1に停留せずに、図中矢印X3に示すように、オイルクーラ22を通過して第2の隙間S2へスムーズに流れる。
【0046】
また、図中矢印X2に示すようにインタークーラ21を通過して第1の隙間S1に供給された暖かい空気は、図中矢印X12に示すようにクリアランス52から第1の隙間に流入した空気と合流して冷却される。これにより、第1の隙間S1内の温度上昇が抑制される。
【0047】
よって、オイルクーラ22は、整風部材41がない場合より、オイルクーラ22を冷却する空気の流量が多く、オイルクーラ22を冷却する空気の温度が抑制されるため、効率良く冷却される。
【0048】
図中矢印X13に示すように、クリアランス51には、クリアランス52から空気が供給される。その空気は、図中矢印X14に示すように、一部が案内板27に案内されて第2の隙間S2に誘導される。そして、図中X15に示すように、残部が第2カバー部43の前板431によりラジエータ23の上部に誘導され、図中矢印X16に示すようにラジエータ23を通過する。
【0049】
なお、開口部42aに流入する空気は、その一部が第1の隙間S1や第2の隙間S2に誘導されるため、クリアランス51に供給される空気は、その分減少する。しかし、前板431が傾斜していることから、誘導路50は、オイルクーラ22と前板431との間で流路の断面積が狭くなる。そのため、クリアランス51に供給される空気は、当該誘導路50の流路狭小部分にて流速を加速されてラジエータ23の上部に誘導され、ラジエータ23の上部を冷却することができる。
【0050】
第2の隙間S2は、左右の縁部と下縁部がシール部材26により塞がれており、整風部材41の外部から空気が流入しない。同時に、第2の隙間S2の左右の縁部と下縁部から外部の空気が流入しない構造でもあるため、オイルクーラ22から第2の隙間S2に供給された空気は、第2の隙間S2に停留せずに、図中矢印X4に示すように、ラジエータ23を通過してモジュール20の外に排出される。
【0051】
また図中矢印X3に示すようにオイルクーラ22を通過して第2の隙間S2に供給された暖かい空気は、図中矢印X14に示すようにクリアランス51から第2の隙間S2に流入した空気と合流して冷却される。これにより、第2の隙間S2内の温度(すなわち、ラジエータ23を冷却する空気の温度)の上昇が抑制される。
【0052】
よって、ラジエータ23は、整風部材41とシール部材26がない場合より、ラジエータ23を冷却する空気の量が多く、ラジエータ23を冷却する空気の温度が抑制されるため、効率良く冷却される。
【0053】
(まとめ)
以上説明したように、本形態のキャリヤ1は、ファン11が車外の空気を取り込む気流を生成すると、その空気が、当該ファン11の前に並列に配置されたインタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23を通過し、これらを冷却する。このとき整風部材41が、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23の間に設けられた第1の隙間S1と第2の隙間S2に、ファン11から取り込まれた空気の一部をインタークーラ21やオイルクーラ22を通過させることなく誘導する。第1の隙間S1と第2の隙間S2は、一対の取付ブラケット28や整風部材41の上部側板425,426、中間側板427,428、下部側板429,430、下部材424やシール部材26により、整風部材41の外部から空気が流入することを抑制されている。そのため、ファン11から取り込まれた空気が第1の隙間S1や第2の隙間S2に停留せずにインタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23を通過しやすくなる。また、整風部材41により第1の隙間S1と第2の隙間S2に誘導された空気は、上記の通りインタークーラ21やオイルクーラ22を通過していないため、インタークーラ21とオイルクーラ22を通過した空気より低温である。すなわち、インタークーラ21とオイルクーラ22を通過した空気は、第1の隙間S1および第2の隙間S2で冷却されてから、次のオイルクーラ22とラジエータ23を通過する。よって、本形態のキャリヤ1によれば、空気がインタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23を通過することを促進し、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23の周囲温度の上昇を抑制するので、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23を効率良く冷却することができる。
【0054】
また、本形態のキャリヤ1は、前板431がインタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23の上端部位置に対応して傾斜することで、誘導路50の流路の断面積がオイルクーラ22と前板431との間で狭くなるので、誘導路50を流れる空気の流速低下を抑制し、開口部42aに流入した車外の空気をファン11に隣設するラジエータ23まで誘導できる。
【0055】
また、本形態のキャリヤ1は、第1の隙間S1も第2の隙間S2も周縁部のうち上縁部分を、それらの上方に設けられた誘導路50に連通させ、周縁部の左右の縁部や下縁部を一対の取付ブラケット28や整風部材41の上部側板425,426、中間側板427,428、下部材424やシール部材26により塞がれているので、抑制部の構成を簡単かつコンパクトにすることができる。
【0056】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、キャリヤ1は、荷台2の前後に運転席を備えるものでもよい。また、キャリヤ1の用途は上記実施形態と異なってもよい。 整風部材41は、モジュール20に取り付けず、エンジンルーム5の底部5bに取り付けてもよい。
【0057】
モジュール20を構成するクーリングデバイスの数、種類は上記実施形態に限定されない。例えば、油圧回路を備えなければ、オイルクーラ22がなくてもよい。また例えば、蓄電池を備える場合、蓄電池のコンデンサをクーリングデバイスとしてモジュール20にさらに組み込んでもよい。また例えば、モジュール20を構成する複数のクーリングデバイスは、同種類でもよい。
【0058】
クーリングデバイスの形状、および、複数のクーリングデバイス間の隙間の形状は、上記実施形態と異なってもよい。クーリングデバイスは、並列配置されていれば、後方のクーリングデバイスの上端部が前方のクーリングデバイスの上端部より上方に突き出していなくてもよい。
【0059】
整風部材41は、複数の部品で構成せず、一部品で構成してもよい。開口部42aは、上記形態と異なってもよい。ただし、開口部42aがインタークーラ21の前面21aの形状と同様の形状とすることにより、車外の空気を前面21a全体に供給し、冷却効率を上げることができる。誘導路50は、クーリングデバイスの上方でなく、側方など別の場所に設けてもよい。
【0060】
前板431は、インタークーラ21とオイルクーラ22とラジエータ23の上端部位置に応じて傾斜してなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 キャリヤ
11 ファン
21 インタークーラ
21 オイルクーラ
23 ラジエータ
26 シール部材
28 取付ブラケット
41 整風部材
424 下部材
425,426 上部側板
427,428 中間側板
429,423 下部側板
S1 第1の隙間
S2 第2の隙間