(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012728
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116369
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 範光
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB29
2C056EC07
2C056EC28
2C056EC72
(57)【要約】
【課題】使用期間の短いインクを優先的に使用することで消費期限切れとなるインクを削減できる印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について計算するインク消費量計算部41と、インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について生成する優先使用インク特定部42と、インク特定情報に基づいて、上流印刷装置10又は下流印刷装置30のどちらに使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置にインク消費量の大きい印刷面に対応する画像データを転送し、選択されなかった印刷装置にインク消費量の小さい印刷面に対応する画像データを転送する画像データ転送部43とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の一方の面を印刷する上流印刷装置と前記印刷媒体の他方の面を印刷する下流印刷装置が連結される印刷システムにおいて、
前記印刷媒体に印刷する画像データから、前記印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、前記印刷媒体の頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について計算するインク消費量計算部と、
前記インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、前記頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について生成する優先使用インク特定部と、
前記インク特定情報に基づいて、前記上流印刷装置又は前記下流印刷装置のどちらに前記使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置に前記インク消費量の大きい印刷面に対応する前記画像データを転送し、選択されなかった印刷装置に前記インク消費量の小さい印刷面に対応する前記画像データを転送する画像データ転送部と
を備える印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムは、複数の印刷装置が縦続に接続されて構成される場合がある。その印刷システムは、複数の印刷装置のそれぞれが印刷媒体に画像を印刷する。印刷装置が印刷するインクは、通常、各印刷装置に装着されたインクカートリッジから供給される。
【0003】
インクカートリッジのインクは、印刷することで消費され、インクが無くなればカートリッジごと交換される。また、インクカートリッジは、一定の消費期限を迎えればインクが残っていても交換される。
【0004】
一般的な印刷装置(シングル機)において、消費期限の近いインクから優先的に使用することで、印刷中のカートリッジ交換を減らす技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、シングル機用であり、そのまま上記の印刷システムに適用することができない。印刷システムでは、上流印刷装置と下流印刷装置のそれぞれにインクカートリッジが存在し、例えば、上流印刷装置で印刷媒体の表面が印刷され、下流印刷装置で裏面が印刷される。
【0007】
上流印刷装置のインク消費量よりも下流印刷装置のインク消費量が大きい場合は、下流印刷装置のインクカートリッジの交換時期は早くなる。一方、インク消費量の小さいインクは、消費されずに消費期限を迎えてしまいカートリッジごと廃棄されてしまう場合がある。
【0008】
このように、従来の印刷システムは、消費期限切れとなるインクを生じさせ易いという課題がある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、使用期間の短いインクを優先的に使用することで消費期限切れとなるインクを削減できる印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の実施形態に係る印刷システムは、印刷媒体の一方の面を印刷する上流印刷装置と前記印刷媒体の他方の面を印刷する下流印刷装置が連結される印刷システムにおいて、前記印刷媒体に印刷する画像データから、前記印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、前記印刷媒体の頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について計算するインク消費量計算部と、前記インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、前記頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について生成する優先使用インク特定部と、前記インク特定情報に基づいて、前記上流印刷装置又は前記下流印刷装置のどちらに前記使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置に前記インク消費量の大きい印刷面に対応する前記画像データを転送し、選択されなかった印刷装置に前記インク消費量の小さい印刷面に対応する前記画像データを転送する画像データ転送部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用期間の短いインクから優先的に使用でき、消費期限切れとなるインクを削減できる印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る印刷システムの機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す印刷システムの動作手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示すフローチャートに接続されるフローチャートである。
【
図4】
図1に示す印刷システムの動作例を比較例と対比させて模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0014】
(印刷システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る印刷システムの機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す印刷システム100は、上流印刷装置10、用紙搬送部20、下流印刷装置30、及び制御装置40を備える。
【0015】
上流印刷装置10は、上流インク供給部11と上流用紙反転部12を備える。上流印刷装置10は、印刷媒体の一方の面を印刷する。
【0016】
上流印刷装置10は、一般的な印刷装置が備える印刷媒体供給部、印刷部、搬送部、操作部、及び制御部等の機能構成部を備えるが、本実施形態の説明に必要な機能構成部のみを示す。この点については下流印刷装置30も同様である。
【0017】
上流インク供給部11は、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、及びグレー(G)のそれぞれの色のインクを印刷部(図示せず)に供給する。印刷部に供給されるインクの色は、この5色に限られない。例えばグレー(G)を除く4色でも構わない。
【0018】
各色のインクは、上流印刷装置10と下流印刷装置30のそれぞれに装着されるインクカートリッジ(図示せず)によって供給される。各色のインクカートリッジには、製造年月日、消費期限等のインク情報が記憶された不揮発性メモリ(図示せず)が添付されている。インクカートリッジ内のインク残量は、例えばインクカートリッジの重さを計測することで管理される。又は、インクの使用量に基づいて管理される。
【0019】
上流用紙反転部12は、上流印刷装置10の印刷部で一方の面が印刷された印刷媒体の表裏を反転させる。上流用紙反転部12は、印刷されていない面が表面になるように印刷媒体を反転させる。
【0020】
用紙搬送部20は、上流用紙反転部12で表裏が反転された印刷媒体を、下流印刷装置30の印刷部(図示せず)に搬送する。なお、用紙搬送部20は、上流印刷装置10の搬送部(図示せず)又は下流印刷装置30の搬送部(図示せず)のどちらかに含めてもよい。用紙搬送部20は、必須の機能構成部ではない。
【0021】
下流印刷装置30は、下流インク供給部31と下流用紙反転部32を備える。下流インク供給部31は、上流インク供給部11と同じである。
【0022】
下流用紙反転部32は、上流印刷装置10に印刷媒体の裏面に対応する画像データが転送された場合に印刷媒体を反転させる。つまり、下流印刷装置30の印刷部(図示せず)で印刷された印刷媒体の表裏を反転させる。詳しくは後述する。
【0023】
制御装置40は、インク消費量計算部41、優先使用インク特定部42、及び画像データ転送部43を備える。これらの機能構成部は、例えばROM、RAM、CPU等からなるコンピュータで実現される。その場合、その処理内容はプログラムによって記述される。
【0024】
よって、これらの機能構成部は、上流印刷装置10及び下流印刷装置のそれぞれのコンピュータで実現される制御部(図示せず)に含めてもよい。制御装置40は必須の構成ではない。
【0025】
インク消費量計算部41は、印刷媒体に印刷する画像データから、印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、印刷媒体の頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について計算する。画像データは、例えばページ記述言語(PDL:Page Description Language)で表される。
【0026】
ページ記述言語は、上流印刷装置10と下流印刷装置30で印刷すべき内容を伝えるために用いるコンピュータ言語であり、画像情報、印刷枚数、片面/両面、及び解像度等の印刷ジョブの全てを指定することができる。よって、画像データから、上流印刷装置10と下流印刷装置30のそれぞれにおいて、消費するインク消費量を計算することができる。
【0027】
優先使用インク特定部42は、インク消費量計算部41で計算されたインク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、印刷媒体の頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について生成する。
【0028】
使用期間は、例えば、インクカートリッジに添付された不揮発性メモリに記憶されたインク情報の消費期限と、現在(年月)との差分である。又は、インク消費量計算部41で計算されたインク消費量からインクが無くなる時期を想定し、その時期と現在(年月)との差分でもよい。又は、インク情報の消費期限と、インクの消費量の両方に基づいて求めてもよい。
【0029】
画像データ転送部43は、優先使用インク特定部42で生成されたインク特定情報に基づいて、上流印刷装置10又は下流印刷装置30のどちらに使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置にインク消費量の大きい印刷面に対応する画像データを転送する。ここで印刷面は、印刷媒体の一方の面(例えば表面)と、その他方の面(例えば裏面)のことである。印刷媒体の一方の面と他方の面のどちらのインク消費量が大きいかは、インク消費量計算部41で計算することができる。
【0030】
(印刷システムの作用)
図2と
図3は、印刷システム100の動作手順を示すフローチャートである。
図2と
図3は、結合子(1)と(2)で接続される。
図2と
図3において、結合子は丸内の数字で表記する。
【0031】
印刷システム100が動作を開始すると、制御装置40は画像データを受信する(ステップS1)。画像データは、上流印刷装置10又は下流印刷装置30が備えるスキャナで原稿の画像を読み取って生成してもよい。又は、ネットワーク(図示せず)を介してパーソナルコンピュータ(図示せず)から送信されて来る画像データを受信してもよい。
【0032】
次に、制御装置40は、印刷する印刷媒体の枚数を表す変数nをn=1に初期化する(ステップS2)。上記の様に、制御装置40は独立した装置である必要はないので、その作用は例えば上流印刷装置10の制御部(図示せず)が行うようにしてもよい。
【0033】
次に、インク消費量計算部41は、ステップS1で受信した画像データから、印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、印刷媒体の頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について計算する(ステップS3)。インク消費量は、ページ記述言語で表された画像データから容易に計算することができる。
【0034】
次に、優先使用インク特定部42は、インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について生成する(ステップS4)。上流印刷装置10のインク特定情報は例えば「ブラック(K)」のインクの色情報を含む、下流印刷装置のインク特定情報は例えば「マゼンダ(M)」のインクの色情報を含む。このようにインク特定情報は、印刷装置を識別する情報、インクの色情報、及びインクの使用期間を表す情報を含む。
【0035】
次に、画像データ転送部43は、使用期間の最も短いインクが装着された印刷装置を選択する(ステップS5)。例えば、上流印刷装置10のインク特定情報(インクの色情報)が「ブラック(K)」で且つ使用期間が1週間、下流印刷装置30のインク特定情報(インクの色情報)が「マゼンダ(M)」で且つ使用期間が一か月と仮定した場合、画像データ転送部43は使用期間の短いインクが装着された上流印刷装置10を選択する(ステップS5の上流印刷装置)。
【0036】
次に、画像データ転送部43は、1枚目の印刷媒体(n=1)の該当するインクのインク消費量が、印刷媒体(n=1)の表裏でどちらが大きいかを判定する(ステップS6)。この例では、
上流印刷装置10で印刷される印刷媒体(n=1)の表裏のどちらが該当するインク(ここではブラック(K))のインク消費量が大きいかを判定する。
【0037】
ステップS6で、おもて面のブラック(K)のインク使用量が大きいと判定される(ステップS6の表)と、画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)のおもて面(表面)の画像データを上流印刷装置10に転送し、上流印刷装置10の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の一方の面にブラック(K)のインク使用量の大きいおもて面の画像データを印刷させる(ステップS7)。そして画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)の裏面の画像データを下流印刷装置30に転送し、下流印刷装置30の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の他方の面にブラック(K)のインク使用量の小さい裏面の画像データを印刷させる(ステップS8)。
【0038】
ステップS6で、裏面のブラック(K)の使用量が大きいと判定される(ステップS6の裏)と、画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)の裏面の画像データを上流印刷装置10に転送し、上流印刷装置10の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の一方の面にブラック(K)のインク使用量の大きい裏面の画像データを印刷させる(ステップS9)。そして画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)のおもて面(表面)の画像データを下流印刷装置30に転送し、下流印刷装置30の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の他方の面にブラック(K)のインク使用量の小さいおもて面の画像データを印刷させる(ステップS10)。
【0039】
このように、使用期間の最も短い色のインクが優先して消費されることになる。ここでは、上流印刷装置10のブラック(K)のインクが優先して消費される。
【0040】
画像データ転送部43は、下流印刷装置30のインク特定情報に含まれる使用期間が最も短い場合に下流印刷装置30を選択する(ステップS5の下流印刷装置)。
【0041】
次に、下流印刷装置30で印刷される印刷媒体(n=1)の表裏のどちらが該当するインク(ここではマゼンダ(M))のインク消費量が大きいか判定する(ステップS11)。おもて面に印刷されるマゼンダ(M)のインク使用量が大きいと判定される(ステップS11の表)と、画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)の裏面の画像データを上流印刷装置10に転送し、上流印刷装置10の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の一方の面にマゼンダ(M)のインク使用量の小さい裏面の画像データを印刷させる(ステップS12)。そして画像データ転送部43は、印刷媒体(n=1)のおもて面(表面)の画像データを下流印刷装置30に転送し、下流印刷装置30の印刷部(図示せず)で印刷媒体(n=1)の他方の面にマゼンダ(M)のインク使用量の大きいおもて面の画像データを印刷させる(ステップS13)。
【0042】
ステップS11で、下流印刷装置30で印刷される印刷媒体(n=1)の裏面のマゼンダ(M)のインク使用量が大きいと判定される(ステップS11の裏)と、印刷媒体(n=1)のおもて面の画像データが上流印刷装置10で印刷される(ステップS14)。そして、印刷媒体(n=1)のマゼンダ(M)のインク使用量の大きい裏面の画像データが下流印刷装置30で印刷される(ステップS15)。
【0043】
このように、使用期間の最も短い色のインクが優先して消費されることになる。ここでは、下流印刷装置30のマゼンダ(M)のインクが優先して消費される。
【0044】
次に、画像データ転送部43は、上流印刷装置10に裏面に対応する画像データを転送したか否かを判定する(ステップS16)。上流印刷装置10に裏面に対応する画像データを転送した場合(ステップS16のYES)。上記のステップS9とS12の処理を実行した場合である。
【0045】
この場合、画像データ転送部43は、下流印刷装置30の下流用紙反転部31に下流印刷装置30の印刷部(図示せず)で印刷された印刷媒体の表裏を反転させる用紙反転指令を生成する(ステップS17)。これにより、印刷システム100が印刷した印刷媒体の頁順を、番号順にすることができる。
【0046】
つまり、上流印刷装置10でおもて面を印刷し、上流用紙反転部12で裏面がおもて面にされた後に、下流印刷装置30で裏面が印刷され、用紙トレイに印刷媒体が排出される。この場合、頁番号が小さい方を下にして印刷媒体が重ねられる。
【0047】
しかし、上流印刷装置10で裏面を印刷した場合は、頁番号が小さい方を上にして印刷媒体が重ねられるので、用紙トレイに排出される印刷媒体の頁順が順番通りにならない。用紙反転指令は、頁番号が小さい方を下にして印刷媒体の頁順が順番通りに重なるようにする。
【0048】
そして、画像データ転送部43は、印刷媒体の枚数を表す変数nをインクリメントする(ステップS18)。
【0049】
画像データ転送部43は、全ての枚数の印刷媒体が印刷されたか否かを判定する(ステップS19)。全ての枚数の印刷媒体が印刷された場合は動作を終了する(ステップS19のYES)。全ての枚数の印刷媒体が印刷されていない場合は、ステップS2~S19の処理を繰り返す。
【0050】
なお、優先使用インク特定部42は、各インク色のそれぞれについて、カートリッジ置換情報を生成するようにしてもよい。カートリッジ置換情報は、上流印刷装置10又は下流印刷装置30にインク消費量の大きいインクカートリッジを交換装着するように利用者に促す情報である。カートリッジ置換情報は、例えば、上流印刷装置10の操作部の表示パネル(図示せず)に表示させてもよい。
【0051】
カートリッジ置換情報を確認した利用者は、インク消費量の大きい方の上流印刷装置10又は下流印刷装置30にインク消費量の大きいインクカートリッジを交換装着するので、インク消費量の大きいインクカートリッジのインクを優先的に消費することができる。
【0052】
(具体的な動作例)
図4は、印刷システム100の動作例を比較例と対比させて示す図である。
図4において左側の比較例は、上流印刷装置10で印刷媒体のおもて面、下流印刷装置30で印刷媒体の裏面をそれぞれ頁順に印刷する場合を模式的に示す。
【0053】
比較例の左から1列目は印刷枚数(上記のn)、2列目は上流印刷装置で印刷する頁(一方の面)、3列目は下流印刷装置で印刷する頁(他方の面)、4列目は下流用紙反転部32の用紙(印刷媒体)の反転の有無、5列目は各印刷枚数の仕上がりの状況を示す。
図4に細かいハッチングは、該当する頁のインク特定情報が例えばブラック(K)であることを表す。また、粗いハッチングは、該当する頁のインク特定情報が例えばマゼンダ(M)であることを表す。
【0054】
例えば、比較例の1行目の印刷を終了した時点で、最も使用期間の短いインクが装着された印刷装置が上流印刷装置10であり、インク特定情報がブラック(K)であると仮定する。その仮定でも、比較例における上流印刷装置10は、マゼンダ(M)のインク消費量の大きい2枚目のおもて面の画像(3)を印刷する。
【0055】
この場合、使用期間の短いインクを優先的に使用する観点では、上流印刷装置10はインク残量の少ないブラック(K)のインク消費量の大きい2枚目の裏面の画像(4)を印刷するのが好ましい。
【0056】
本実施形態では、上記の仮定において、上流印刷装置10はブラック(K)のインク消費量の大きい2枚目の裏面(4)を印刷する(太線で囲んだ部分)。このように、本実施形態によればインク残量の少ない例えばブラック(K)を優先的に使用することができる。
【0057】
上流印刷装置10において印刷媒体の裏面の画像を印刷した場合、下流用紙反転部32は、下流印刷装置30でおもて面を印刷した印刷媒体を反転させる。これにより、本実施形態の仕上がりの列に示すように頁順を番号順に戻すことができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷システム100は、印刷媒体の一方の面を印刷する上流印刷装置10と印刷媒体の他方の面を印刷する下流印刷装置30が連結される印刷システムにおいて、印刷媒体に印刷する画像データから、印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、印刷媒体の頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について計算するインク消費量計算部41と、インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、頁ごとに上流印刷装置10と下流印刷装置30について生成する優先使用インク特定部42と、インク特定情報に基づいて、上流印刷装置10又は下流印刷装置30のどちらに使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置にインク消費量の大きい印刷面に対応する画像データを転送し、選択されなかった印刷装置にインク消費量の小さい印刷面に対応する画像データを転送する画像データ転送部43とを備える。これにより、使用期間の短いインクから優先的に使用でき、消費期限切れとなるインクを削減できる印刷システムを提供することができる。
【0059】
つまり、複数の印刷装置に装着された複数のインクカートリッジの内、使用期間の短いインクから優先的に使用することで、消費期限切れになるインクカートリッジを削減することができる。
【0060】
また、印刷システム100を構成する下流印刷装置30は、上流印刷装置10に印刷媒体の裏面に対応する画像データが転送された場合に、印刷媒体を反転させる下流用紙反転部32を備えるようにしてもよい。これにより、印刷システム100が印刷した印刷媒体の頁順を番号順にすることができる。
【0061】
なお、上記の実施形態では、上流印刷装置10と下流印刷装置30の2つの印刷装置で構成される印刷システムの例を示したが、本発明はこの例に限定されない。3つ以上の印刷装置で構成される印刷システムに対しても本発明の技術思想はそのまま適用することができる。
【0062】
また、制御装置40は、独立した装置の例で説明したが、その機能構成部は上流印刷装置10又は下流印刷装置30のどちらかに含めてもよい。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0064】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0065】
(付記1)
印刷媒体の一方の面を印刷する上流印刷装置と前記印刷媒体の他方の面を印刷する下流印刷装置が連結される印刷システムにおいて、
前記印刷媒体に印刷する画像データから、前記印刷媒体の一方の面と他方の面のそれぞれで消費するインク消費量を、前記印刷媒体の頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について計算するインク消費量計算部と、
前記インク消費量に対応させて、使用期間の短いインクを特定するインク特定情報を、前記頁ごとに前記上流印刷装置と前記下流印刷装置について生成する優先使用インク特定部と、
前記インク特定情報に基づいて、前記上流印刷装置又は前記下流印刷装置のどちらに前記使用期間の短いインクが装着されているかを選択し、選択された印刷装置に前記インク消費量の大きい印刷面に対応する前記画像データを転送し、選択されなかった印刷装置に前記インク消費量の小さい印刷面に対応する前記画像データを転送する画像データ転送部と
を備える印刷システム。
【0066】
(付記2)
前記下流印刷装置は、
前記上流印刷装置に前記印刷媒体の裏面に対応する前記画像データが転送された場合に、前記印刷媒体を反転させる下流用紙反転部
を備える付記1に記載の印刷システム。
【0067】
(付記3)
前記優先使用インク特定部は、
各インク色のそれぞれについて、前記インク消費量の大きい方の前記上流印刷装置又は前記下流印刷装置に前記インク消費量の大きいインクカートリッジを装着するように利用者に促すカートリッジ置換情報を生成する
付記1又は2に記載の印刷システム。
【符号の説明】
【0068】
10 上流印刷装置
11 上流インク供給部
12 上流用紙反転部
20 用紙搬送部
30 下流用紙反転部
31 下流インク供給部
32 下流用紙反転部
40 制御装置
41 インク消費量計算部
42 優先使用インク特定部
43 画像データ転送部
100 印刷システム