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特開2023-127309手押し車の駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127309
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】手押し車の駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20230906BHJP
   B62B 7/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B62B3/00 B
B62B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031022
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】安田 寿彦
(72)【発明者】
【氏名】大平 康喜
(72)【発明者】
【氏名】西岡 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】山野 光裕
【テーマコード(参考)】
3D050
3D051
【Fターム(参考)】
3D050EE15
3D051AA02
(57)【要約】
【課題】駆動装置の有無の切り替えが簡単にできる手押し車の駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車を提供する。
【解決手段】駆動切替装置10は、取り付け部22、第1回転軸24、第2回転軸26、第1リンク部材28、第2リンク部材30、駆動装置32および駆動輪34を備える。第1リンク部材28は板体で構成されている。第1リンク部材28は第1回転軸24に回転可能に取り付けられている。図5に示す第2リンク部材30は板体で構成されている。第2リンク部材30は第2回転軸26に回転可能に取り付けられている。凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50に同時に嵌った時、第1リンク部材28と第2リンク部材30が相対的に固定され、それぞれのリンク部材28、30の回転が停止される。第1リンク部材28と第2リンク部材30が相対的に固定されることで、駆動輪34の位置が固定できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し車のフレームに取り付けられ、または設けられた取り付け部と、
前記取り付け部に取り付けられた第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として回転可能な第1リンク部材と、
前記第1リンク部材に形成された凸部および凹部のうちから少なくともいずれかを1つと、
前記取り付け部に取り付けられた第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として回転する第2リンク部材と、
前記第2リンク部材に形成されており、第1リンク部材の凹部にはめ込まれることが可能な凸部および第1リンク部材の凸部がはめ込まれることが可能な凹部のうちから少なくともいずれかを1つと、
を備えた手押し車の駆動切替装置。
【請求項2】
前記第1リンク部材が凸部と凹部を備えており、該第1リンク部材の凸部と凹部は、第1凸部、第1凹部、第2凸部および第2凹部の順番に並んでおり、
前記第2リンク部材が凸部と凹部を備えており、該第2リンク部材の凸部と凹部は、第3凹部、第3凸部、第4凹部および第4凸部の順番に並んでおり、
前記第1凸部が第3凹部に嵌り、第2凸部が第4凹部に嵌り、第3凸部が第1凹部に嵌り、第4凸部が第2凹部に嵌る請求項1の手押し車の駆動切替装置。
【請求項3】
前記第1凸部の先端が円弧状または半円形になっており、
前記第2リンク部材の縁部において、第3凹部に対する第3凸部の反対側の縁部が円弧状になっており、
前記第1リンク部材と第2リンク部材が相対的に回転したとき、第1凸部の先端が第3凹部に対する第3凸部の反対側の縁部に接し、前記第3凸部の先端が第2凸部の先端に接する請求項2の手押し車の駆動切替装置。
【請求項4】
前記第3凹部に対する第3凸部の反対側の縁部と第3凸部の先端は第2回転軸中心とした円弧になっており、
前記第3凹部に対する第3凸部の反対側の縁部を形成する半径が第3凸部の先端を形成する半径よりも大きく、
前記第1凸部の先端が第3凹部に対する第3凸部の反対側の縁部に接するタイミングと前記第3凸部の先端が第2凸部の先端に接するタイミングが異なる請求項3の手押し車の駆動切替装置。
【請求項5】
2つの前記第1リンク部材に取り付けられた第1棒状体と、
2つの前記第2リンク部材に取り付けられた第2棒状体と、
を備えた請求項1から4のいずれかの手押し車の駆動切替装置。
【請求項6】
前記第1棒状体、第2棒状体またはその両方に設けられた第1磁石と、
前記手押し車のフレームに取り付けられた第2磁石と、
を備え、
前記第1磁石と第2磁石が互いに引きつけあう請求項5の手押し車の駆動切替装置。
【請求項7】
前記第2リンク部材に取り付けられた駆動装置と、
前記駆動装置によって駆動される駆動輪と、
前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備えた請求項1から6のいずれかの手押し車の駆動切替装置。
【請求項8】
前記手押し車の前輪の回転軸、後輪の回転軸および前記駆動装置の少なくとも1つに備えられたトルクセンサ、手押し車のハンドル部分に備えられた力センサ、または該トルクセンサと力センサの両方を備え、
前記トルクセンサと力センサのいずれかまたはその両方の信号が制御装置に入力され、入力された信号に応じて前記駆動装置を制御する請求項7の手押し車の駆動切替装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの手押し車の駆動切替装置を備えた手押し車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベビーカーを含む手押し車に取り付けて動力の有無を切り替える駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のベビーカーを含む手押し車が開発および販売されている。たとえば下記の特許文献1は、車輪に回転軸が接し、回転軸が電動で回転することで車輪を回転させる構成が開示されている。クラッチによって車輪と回転軸を切り離すことができ、電動の有無を切り替えることが特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には電動の有無の切り替え方法について詳細に記載されていないが、その切り替えが簡単にできることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3127472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は駆動装置の有無の切り替えが簡単にできる手押し車の駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動切替装置は、手押し車のフレームに取り付けられ、または設けられた取り付け部と、前記取り付け部に取り付けられた第1回転軸と、前記第1回転軸を中心として回転可能な第1リンク部材と、前記第1リンク部材に形成された凸部および凹部のうちから少なくともいずれかを1つと、前記取り付け部に取り付けられた第2回転軸と、前記第2回転軸を中心として回転する第2リンク部材と、前記第2リンク部材に形成されており、第1リンク部材の凹部にはめ込まれることが可能な凸部および第1リンク部材の凸部がはめ込まれることが可能な凹部のうちから少なくともいずれかを1つと、を備える。さらに本発明の手押し車は上記駆動切替装置を備えて構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、2つのリンク部材が回転することで凸部と凹部がはめ合わされたり外されたりし、駆動装置の有無を簡単に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】手押し車に取り付けられた駆動切替装置を示す図である。
図2図1の手押し車の駆動切替装置を拡大した図である。
図3】手押し車の駆動切替装置を図1の左側方から見た図である。
図4】第1リンク部材を拡大した図である。
図5】第2リンク部材を拡大した図である。
図6】第2リンク部材の第1縁部に第1リンク部材の第1凸部が接している様子を示す図である。
図7】第1リンク部材の第2凸部と第2リンク部材の第3凸部が接している様子を示す図である。
図8】第1磁石と第2磁石が引っ付いている様子を示す図である。
図9図8の左側方から見た図である。
図10】第2リンク部材の第3凸部および第4凸部が第1リンク部材の第1凹部および第2凹部にはめ合わされていない様子を示す図である。
図11】第1リンク部材の第1凸部を上方に上げた様子を示す図である。
図12】第1リンク部材と第2リンク部材に備えられた1組の凸部と凹部の組み合わせを示す図である。
図13】第1凸部と第3凹部を台形にした第1リンク部材と第2リンク部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の手押し車の駆動切替装置およびその駆動切替装置を備えた手押し車について図面を用いて説明する。複数の実施形態を説明するが、一の実施形態と他の実施形態で重複する構成は、一の実施形態で説明し、他の実施形態で説明を省略する場合がある。
【0010】
[実施形態1]
手押し車は複数の車輪を備え、人力によって押したり引いたりして移動させるものである。手押し車の例としては、ベビーカー、バギー、乳母車および台車などを含む。以下、手押し車として、前輪と後輪を備えており、後輪は少なくとも2輪を備えたベビーカーを用いて説明する。
【0011】
手押し車12は複数のフレーム14が備えられており、そのフレーム14にシート16などが取り付けられている(図1)。一部のフレーム14の先端に車輪18、20が回転可能に取り付けられている。その車輪の中に前輪18および後輪20が含まれる。本発明の手押し車12は説明する駆動切替装置10を備えたものである。
【0012】
駆動切替装置10は、後輪20が取り付けられたフレーム14に取り付けられる(図1図2図3)。駆動切替装置10は、取り付け部22、第1回転軸24、第2回転軸26、第1リンク部材28、第2リンク部材30、駆動装置32および駆動輪34を備える。
【0013】
取り付け部22は手押し車12のフレーム14に取り付けられて固定されている。取り付け部22が取り付けられる手押し車12のフレーム14は後輪20を取り付けている2本のフレーム14である。その2本のフレーム14は同形状であり、平行になっている。その2本のフレーム14のそれぞれに1つの取り付け部22が取り付けられている。各取り付け部22は各フレーム14の同じ位置に取り付けられている。手押し車12を進行方向の前方または後方から見た場合、取り付け部22は左右対称な位置に配置されている(図3)。取り付け部22はフレーム14に取り付けられて固定されればその形状および固定方法は限定されない。また、取り付け部22はフレーム14に付け外しできるのではなく、フレーム14と一体になって設けられてもよい。
【0014】
第1回転軸24および第2回転軸26が各取り付け部22に取り付けられている(図1図2)。第1回転軸24は第1リンク部材28が回転したときの回転中心になるものであり、第2回転軸26は第2リンク部材30が回転したときの回転中心になるものである。2本の第1回転軸24の軸方向は重なり、2本の第2回転軸26の軸方向は重なる。第1回転軸24の軸方向と第2回転軸26の軸方向は平行になっている。
【0015】
図4に示す第1リンク部材28は板体で構成されている。第1リンク部材28は第1回転軸24に回転可能に取り付けられている。図5に示す第2リンク部材30は板体で構成されている。第2リンク部材30は第2回転軸26に回転可能に取り付けられている。
【0016】
なお、第1回転軸24と第2回転軸26は取り付け部22に固定されているが、第1回転軸24が第1リンク部材28、第2回転軸26が第2リンク部材30に取り付けられて固定され、第1回転軸24と第2回転軸26が取り付け部22に回転可能に取り付けられてもよい。
【0017】
各リンク部材28、30が各回転軸24、26から外れないように、留め部材36が回転軸24、26に取り付けられている。留め部材36は回転軸24、26に取り付けられた板体である。各リンク部材28、30は留め部材36によって回転軸24、26から外れないようになっている。各リンク部材28、30が回転軸24、26から外れなければ留め部材36の形状は特に限定されない。
【0018】
第1リンク部材28と第2リンク部材30はそれぞれの縁部同士が接するようになっている。各リンク部材28、30の厚み方向は各リンク部材28、30の平面に対して垂直になっており、第1リンク部材28と第2リンク部材30はその厚み方向の部分同士が接する。第1リンク部材28と第2リンク部材30は同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい。
【0019】
図4に示すように、第1リンク部材28の縁部に第1凸部38、第1凹部40、第2凸部42および第2凹部44の順番に並んで形成されている。第1凸部38、第1凹部40、第2凸部42および第2凹部44において、第1凸部38が最も第1回転軸24に対して遠い位置に配置されている。各凸部38、42と凹部40、44は第2リンク部材30に対向できる部分に形成されている(図2)。
【0020】
図5に示すように、第2リンク部材30の縁部に第3凹部46、第3凸部48、第4凹部50および第4凸部52が順番に並んで形成されている。第2リンク部材30の第3凸部48と第4凸部52はそれぞれ第1リンク部材28の第1凹部40と第2凹部44に嵌る。第1リンク部材28の第1凸部38と第2凸部42はそれぞれ第2リンク部材30の第3凹部46と第4凹部50に嵌る。
【0021】
嵌め合わされる凸部38、42、48、52と凹部40、44、46、50は同形状またはほぼ同一の形状になっている。各凸部38、42、48、52が各凹部40、44、46、50に同時に嵌った時、第1リンク部材28と第2リンク部材30が相対的に固定され、それぞれのリンク部材28、30の回転が停止される。それぞれのリンク部材28、30ががたつかず、駆動輪34の位置が固定できる。
【0022】
第1凹部40および第2凹部44を形成する内側に窪んだ部分の側縁54、56、58、60の形状は第1回転軸24を中心とした円弧になっている。第3凸部48および第4凸部52を形成する外側に突出した部分の側縁62、64、66、68の形状は第1凹部40および第2凹部44の側縁54、56、58、60の形状と同一またはほぼ同一になっている。第1リンク部材28が第1回転軸24を中心として回転することで、第1凹部40および第2凹部44に第3凸部48および第4凸部52が抜き差しできるようになっている。
【0023】
第1リンク部材28の第1凸部38の先端形状は外に突出した半円形状または円弧状になっている。第2リンク部材30の縁部において、第3凹部46に対する第3凸部48の反対側は円弧状の縁部70になっている。第1リンク部材28と第2リンク部材30が回転したとき、第1凸部38が円弧状の縁部70に接触する(図6)。その接触は、第1リンク部材28と第2リンク部材30の平面を同時に見た場合に点接触、厚み方向では線接触になっていて、面接触にはなっていない。第1リンク部材28と第2リンク部材30は回転時に接触面積が非常に狭くスムーズに回転できるようになっている。
【0024】
上記円弧状の縁部70、第3凸部48の先端および第4凸部52の先端は第2回転軸26を中心とした円弧となっている。第1リンク部材28の第2凸部42の先端および第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第3凸部48および第4凸部52と同一形状になっている。第2凸部42と第3凸部48が接しているとき、第2凸部42の先端が第2回転軸26を中心とした円弧状になっている。第1リンク部材28の一部と第2リンク部材30の一部が接触して回転することができる。また、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72が第4凸部52の先端に接触した場合も、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第2回転軸26を中心とした円弧状になっている。
【0025】
上記第2回転軸26を中心とした円弧において、第2リンク部材30の上記円弧状の縁部70を形成する半径は第3凸部48の先端および第4凸部52の先端を形成する半径よりも大きい。すなわち、第2回転軸26を中心として、上記円弧状の縁部70が第3凸部48の先端および第4凸部52の先端よりも外側に配置される。
【0026】
第1凸部38の先端が上記円弧状の縁部70に接触し(図6)、第2凸部42の先端が第3凸部48の先端に接触する(図7)。また、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第4凸部52の先端に接触してもよい。
【0027】
第1凸部38の先端が上記円弧状の縁部70に接触しているとき、第2凸部42の先端が第3凸部48の先端に接触しない。そのとき、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第4凸部52の先端に接触しない。
【0028】
また、第2凸部42の先端が第3凸部48の先端に接触しているとき、第1凸部38の先端が上記円弧状の縁部70に接触しない。そのとき、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第4凸部52の先端に接触してもよい。
【0029】
第1凸部38の先端が上記円弧状の縁部70に接触するタイミングと第2凸部42の先端が第3凸部48の先端に接触するタイミングが異なる。第1リンク部材28と第2リンク部材30の回転時の接触抵抗が小さくなり、第1リンク部材28と第2リンク部材30の相対的な回転がスムーズになっている。なお、第2凸部42の先端が第3凸部48の先端に接触しているタイミングで、第2凹部44に対して第2凸部42の反対側の縁部72は第4凸部52の先端に接触してもよい。
【0030】
第1リンク部材28と第2リンク部材30は弾性部材74が取り付けられている。図1図2などに示す弾性部材74は引っ張りバネであるが、第1リンク部材28と第2リンク部材30が互いに引きつけあえるようになれば、ゴムなどの他の弾性部材であってもよい。弾性部材74の一端が第1リンク部材28の第1凸部38または第1凸部38の付近に取り付けられ、弾性部材74の他端が第2リンク部材30の駆動輪34の付近に取り付けられる。弾性部材74の一端と他端を取り付けるための棒状体76、78またはフックなどがそれぞれのリンク部材28、30に設けられてもよい。
【0031】
第1リンク部材28と第2リンク部材30が弾性部材74によって互いに引きつけあう。上述した凸部38、42、48、52と凹部40、44、46、50がはめ合わされているとき、弾性部材74によって凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50から抜けにくくなっている。反対に、凸部38、42、48、52と凹部40、44、46、50がはめ合わされていないとき、弾性部材74によって駆動輪34が第1リンク部材28に近づくように移動し、その状態が保持される。
【0032】
2つの第1リンク部材28に取り付けられた1本の第1棒状体80および2つの第2リンク部材30に取り付けられた1本の第2棒状体82が備えられる(図2図3)。2つの第1リンク部材28の間に第1棒状体80が配置され、2つの第2リンク部材30の間に第2棒状体82が配置される。第1棒状体80によって2つの第1リンク部28材が同時に回転し、第2棒状体82によって2つの第2リンク部材82が同時に回転する。第1棒状体80、第2棒状体82またはその両方を操作することで、第1リンク部材28と第2リンク部材30を相対的に回転させることができる。2つの第1リンク部材28の間に配置される第1棒状体80と、2つの第2リンク部材30の間に配置される第2棒状体82は、それぞれ2本以上あってもよい。2つの第1リンク部材28、2つの第2リンク部材30に取り付けられるのであれば、第1棒状体80と第2棒状体82は直線状になっていなくてもよい。
【0033】
第1棒状体80に第1磁石84が取り付けられている。また、手押し車12を構成するフレーム14の中で第1棒状体80に平行なフレーム14に第2磁石86が取り付けられている。第2磁石86はフレーム14に直接取り付けられてもよいし、他の部材88を介して取り付けられてもよい。両方の磁石84、86は引きつけあうようになっている。第1リンク部材28が回転し、第1棒状体80が移動すると磁石84、86同士が近づいたり接触したりする。磁石84、88の引力で第1棒状体80が停止する(図8図9)。第1棒状体80が取り付けられた第1リンク部材28も停止する。第2リンク部材30の駆動輪34が弾性部材74によって第1リンク部材28に引きつけられて停止し、第2棒状体82も停止する。駆動切替装置10を利用しない場合に、第1リンク部材28などの位置がほぼ固定され、手押し車12を持ち運びやすくなる。また、手押し車12の前輪18を後輪20に近づけて、折り畳むことができる手押し車12においては、折り畳むことが可能となる。
【0034】
各第2リンク部材30に駆動装置32が取り付けられている。駆動装置32として直流モーター、交流モーター、軽量の内燃機関などが挙げられ、駆動輪34が回転させられればその種類は問わない。本発明はこの駆動装置32の動力の有無を切り替え、駆動装置32の動力による手押し車12の駆動の有無を切り替えることができる。第3凹部46、第3凸部48、第4凹部50および第4凸部52と駆動装置32の取り付け位置の間に第2回転軸26が配置される。駆動装置32は第2リンク部材30同士が互いに向かい合う側に取り付けられている。第2リンク部材30に駆動装置32または駆動輪34の回転軸90が通過する穴94が設けられている。その穴94は、凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50にはめ込まれたときに、第2リンク部材30の中で地面に最も近い部分の付近に設けられる。
【0035】
各駆動装置32の回転軸には駆動輪34が取り付けられている。駆動装置32が駆動すると回転軸が回転し、同時に駆動輪34が回転する。駆動輪34を回転させることができれば、駆動装置32の種類は任意である。
【0036】
駆動装置32の駆動を制御するための制御装置(図示省略)が備えられる。制御装置はマイクロコンピュータを含む制御回路およびコントローラを備える。コントローラは手押し車12の搭乗者、あるいは搭乗者以外の者、あるいは搭乗者および搭乗者以外の者が同時に操作する。制御回路はコントローラからの信号に応じて駆動装置32に流す電流を制御する回路である。たとえば、コントローラから手押し車を前進させる信号が入力されれば、制御回路は駆動装置32に電流を流して駆動輪34を回転させる。コントローラから手押し車を停止させる信号が入力されれば、制御回路は駆動装置32に電流が流れないようにして駆動装置32を停止させる。手押し車12の進む方向を左右いずれかの方向に転回させる場合、各駆動装置32に流れる電流を異ならせ、各駆動輪34の回転数、回転の方向またはその両方を変えることで手押し車12を転回させるようにしてもよい。上記の制御装置は、マイクロコンピュータを含まない回路で構成してもよい。
【0037】
駆動装置32および制御装置を駆動させるためのバッテリー(図示省略)を備える。バッテリーは一次電池または二次電池を利用する。制御装置およびバッテリーは手押し車12の任意の位置に取り付けられる。
【0038】
次に、本発明の駆動切替装置10の使用方法について説明する。(1)たとえば、駆動切替装置10が図10のように、凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50にはめ合わされていない状態であるとする。この状態では、駆動輪34は前輪18および後輪20よりも高い位置にあり、地面または床などから浮いている。
【0039】
(2)第2リンク部材30を持って駆動輪34を地面または床などに向けて移動させることで、第2リンク部材30が第2回転軸26を中心として回転される。その際、弾性部材74によって第1リンク部材28が第2リンク部材30の方に引っ張られる。最初に第1凸部38が縁部70に接し(図6)、その次に第3凸部48が第2凸部42に接する(図7)。それらの接触は同時に生じないため、第1リンク部材28と第2リンク部材30は相対的に滑らかに回転する。
【0040】
(3)第1リンク部材28と第2リンク部材30が相対的に回転することで、図2のように凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50に嵌る。第1リンク部材28と第2リンク部材30は相対的に回転できなくなり、それらの位置は固定される。駆動輪34が前輪18と後輪20と同じ高さになり、地面または床などに接するようになる(図1)。あるいは、このとき、駆動輪34の下端が後輪20の下端よりも下方になって、駆動輪34が後輪20を持ち上げてもよい。制御装置を操作して駆動装置32を駆動させることで、駆動輪34が回転し、手押し車12に人力以外の動力を加えることができる。
【0041】
(4)駆動装置32の利用を中止する場合、制御装置を操作して駆動装置32を停止させた後、第1リンク部材28の第1凸部38を上げるように回転させる(図11)。凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50から外れる。
【0042】
(5)弾性部材74によって第2リンク部材30が回転して駆動輪34が持ち上がり、図10の状態に戻すことができる。さらに第1リンク部材28を回転させて、第1棒状体80を下げることで、磁石84、86同士が接したり近くなったりし、第1リンク部材28が停止される(図8図9)。弾性部材74によって第2リンク部材30の駆動輪34が第1リンク部材28に近づけられて停止する。
【0043】
以上のように、本発明は第1リンク部材28と第2リンク部材30の回転のみで駆動装置32による動力の有無を切り替えることができる。第1リンク部材28と第2リンク部材30の回転は容易にでき、手押し車12の駆動装置32による動力化の有無の切り替えが容易である。
【0044】
[実施形態2]
駆動装置32に流れる電流を測定し、制御装置が駆動装置32の負荷を求めてもよい。制御装置は駆動装置32の負荷に応じて駆動装置32に流れる電流を制御してもよい。駆動装置32の消費電力を抑制でき、バッテリーでの走行距離を延ばすことができる。
【0045】
[実施形態3]
前輪18の回転軸、後輪20の回転軸および駆動装置32にトルクセンサを、あるいは手押し車12を手で押すハンドル部分96(図1)に力センサを備えてもよい。駆動装置32に備えるトルクセンサは、駆動装置32の回転軸90に備えてもよいし、駆動装置32がモーターである場合には測定したモーター電流値からトルクを算出する機器であってもよい。トルクセンサと力センサは両方備えてもよい。トルクセンサ、あるいは力センサ、あるいはトルクセンサおよび力センサで検知された信号が制御装置に入力されるようにする。制御装置はトルクセンサ、力センサまたはその両方の値に応じて駆動装置32に電流を流すようにする。上り坂等でトルクセンサ、力センサまたはその両方の値が大きくなれば、駆動装置32に電流を流して走行をアシストする。また、下り坂等でトルクセンサ、力センサまたはその両方の値が小さくなれば、駆動装置32に流す電流を小さくしたりして、走行のアシストを小さくしたり停止したりする。
【0046】
[実施形態4]
駆動切替装置10は後輪20を備えたフレーム14に取り付けられることに限定されない。前輪18を備えたフレーム14に駆動切替装置が取り付けられてもよい。
【0047】
[実施形態5]
第1棒状体80に磁石84が取り付けられたが、手押し車12のフレーム14の構造によっては、第2棒状体82に磁石が取り付けられてもよい。第2リンク部材30が回転し、第2棒状体82が移動し、磁石同士が近接するようにする。第2棒状体82が停止する。また、第1棒状体80と第2棒状体82の両方に磁石が取り付けられてもよい。
【0048】
[実施形態6]
磁石84、86を使用する以外に、第1棒状体80、第2棒状体82またはその両方の停止状態は、プランジャやフックなどで生成してもよい。
【0049】
[実施形態7]
凸部38、42、48、52が凹部40、44、46、50に嵌め込まれたり外れたりして、駆動装置32による動力の利用を切り替える仕組みは、上記実施形態に限定されない。第1リンク部材28に凸部がひとつ第2リンク部材30に凹部がひとつ、あるいは第1リンク部材28に凹部がひとつ第2リンク部材30に凸部がひとつのような、1組の凸部と凹部で生成されてもよい。たとえば図12に示すように、第1リンク部材102が上記第1凸部38のみを備え、第2リンク部材104が上記第3凹部46のみを備えていてもよいし、他の凸部と凹部の組み合わせであってもよい。第1リンク部材28、102に凸部および凹部のうちから少なくともいずれかが設けられ、第2リンク部材30、104には第1リンク部材28、102に設けられた凸部および凹部の少なくとも1つにはめ合わされる凹部または凸部が設けられていれば、その構成は限定されない。
【0050】
[実施形態8]
第1リンク部材28、102および第2リンク部材30、104に形成される上記凸部と凹部の形状は、円弧で形成されていなくても、凸部の先端部が狭く根本が広く、凹部の開口部が広く底部が狭いような台形状の形状でそれぞれ形成され、凸部と凹部が抜き差しすることができて、凹部にはめ込まれる凸部の形状が凹部と同一あるいはほぼ同一で、凸部が凹部にはめこまれたときに第1リンク部材28と第2リンク部材30が相対的に固定されてもよい。たとえば図13に示す第1リンク部材106の第1凸部108は台形になっており、第2リンク部材110の第3凹部112は第1凸部108が嵌る形状になっている。
【0051】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0052】
10:駆動切替装置
12:手押し車
14:フレーム
16:シート
18:前輪
20:後輪
22:取り付け部
24、26:回転軸
28、30、102、104、106、110:リンク部材
32:駆動装置
34:駆動輪
36:留め部材
38、42、48、52、108:凸部
40、44、46、50、112:凹部
54、56、58、60:凹部の側縁
62、64、66、68:凸部の側縁
70、72:縁部
74:弾性部材
76,78:弾性部材を固定する棒状体
80、82:棒状体
84,86:磁石
88:磁石を取り付ける部材
90:回転軸
94:回転軸が通過する穴
96:ハンドル部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13