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特開2023-127320解析システム、解析方法、及び解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127320
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】解析システム、解析方法、及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230906BHJP
   G06F 30/10 20200101ALN20230906BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031035
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】507228172
【氏名又は名称】株式会社JSOL
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】林 信哉
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146DC04
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146DJ08
5B146DJ14
5B146EA01
(57)【要約】
【課題】各部材をビーム要素でモデル化し、互いの部材の接合を接続用ビーム要素によりモデル化できる解析システム、解析方法、及び解析プログラムを提供する。
【解決手段】互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析システムは、前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込み部S1と、前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定部S2と、前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化部S3と、前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定部S4と、前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算部S5とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析システムであって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込み部と、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定部と、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化部と、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定部と、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算部とを有する、
ことを特徴とする解析システム。
【請求項2】
前記ビーム要素は、前記部材の断面の図心を通過するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記接続用ビーム要素設定部は、前記接続用ビーム要素に所定の剛性を設定するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記接続用ビーム要素の前記剛性は、前記部材をビーム要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性が、最適化手法に基づく収束計算により、前記部材をシェル要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性に一致するように自動的に調整されることを特徴とする請求項3に記載の解析システム。
【請求項5】
前記ビーム要素モデル化部は、前記形状データを前記ビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記ビーム要素モデル化部は、前記部材の形状のアスペクト比を指標として自動的に判定することによって、前記形状データを前記ビーム要素又は前記シェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の解析システム。
【請求項7】
互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析方法であって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込みステップと、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定ステップと、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化ステップと、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定ステップと、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算ステップとを有する、
ことを特徴とする解析方法。
【請求項8】
互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析プログラムであって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込みプロセスと、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定プロセスと、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化プロセスと、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定プロセスと、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算プロセスとを有する、
ことを特徴とする解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システム、解析方法、及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車のボデーやシャシーなどのフレーム構造体は、スポット溶接やボルト締結によって複数の部材を接合することによって形成されている。この構造体が、全体として、どのように変形するか、特に塑性変形するかを知ることは、自動車の衝突安全性を向上させるために重要であり、これを、コンピュータを用いて行う試みがなされている。コンピュータを用いて構造体がどのように変形するかを知る方法として、構造体を有限要素法によりモデル化して、有限要素解析によって構造体全体の変形を解析するものが知られている。これを、構造体解析モデルと呼ぶ。
【0003】
例えば特許文献1には、フレームなどの部材を面方向に配置された有限要素法のシェル要素(板要素)としてモデル化すると共に、スポット溶接の溶融凝固部を該シェル要素に連結された有限要素法のソリッド要素(立体要素)としてモデル化することにより、構造体全体の有限要素解析を行うようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200655号公報
【0005】
シェル要素とソリッド要素の構造体解析モデルに基づく有限要素解析は、高い計算精度を持つ優れた手法であるが、構造体に含まれる部材全体の形状データをシェル要素により詳細にモデル化する必要があるため、非常に煩雑であり、作成に多くの時間を必要とする。また、得られたモデルに基づいて有限要素解析を行うために、多くの計算時間が必要となる。さらに、有限要素解析の結果を検討して、部材の形状を変える場合、再び構造体をモデル化するためにさらに多くの時間を必要とする。
【0006】
構造体をモデル化する別の方法として、有限要素法のビーム要素(梁要素)が考えられる。ビーム要素は、一般的に、部材の断面1次モーメントと断面積から計算される図心または部材の重心を通過する線形状の有限要素として構成されていると共に、形状データは断面特性値(断面2次モーメント、断面2次極モーメント)、または応力とひずみを計算する積分点の集合によって設定される。ビーム要素は、シェル要素やソリッド要素より変形自由度が少ないため、大変形に対して計算精度は高くないが、形状データの作成と変更が容易であり、有限要素解析に必要な計算時間も少ないことが利点である。
【0007】
多くの構造体は、複数の部材により構成され、各部材を適切に接合することにより作製されている。この様な構造体に対して、部材をシェル要素でモデル化した場合、各部材の接合は特許文献1で示すようなソリッド要素による接合モデルを使用することができる。一方、部材をビーム要素でモデル化した場合、ソリッド要素による接合モデルを使用することができない。したがって、複数の部材から構成される複雑な構造体をビーム要素でモデル化するには、新しい接合方法を導入しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、各部材をビーム要素でモデル化し、互いの部材の接合を接続用ビーム要素によりモデル化できる解析システム、解析方法、及び解析プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析システムであって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込み部と、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定部と、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化部と、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定部と、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算部とを有する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1の発明において、前記ビーム要素は、前記部材の断面の図心を通過するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、前記接続用ビーム要素設定部は、前記接続用ビーム要素に所定の剛性を設定するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記接続用ビーム要素の前記剛性は、前記部材をビーム要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性が、最適化手法に基づく収束計算により、前記部材をシェル要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性に一致するように自動的に調整されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記ビーム要素モデル化部は、前記形状データを前記ビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5の発明において、前記ビーム要素モデル化部は、前記部材の形状のアスペクト比を指標として自動的に判定することによって、前記形状データを前記ビーム要素又は前記シェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項7に記載の発明は、互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析方法であって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込みステップと、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定ステップと、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化ステップと、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定ステップと、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算ステップとを有する、
ことを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項8に記載の発明は、互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化する解析プログラムであって、
前記部材の形状データを取り込む形状データ取り込みプロセスと、
前記形状データに対して、前記部材が互いに接合される接合位置を設定する接合位置設定プロセスと、
前記形状データをビーム要素としてモデル化するビーム要素モデル化プロセスと、
前記接合位置と前記ビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定プロセスと、
前記ビーム要素と前記接合位置と前記接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって前記部材の変形を計算する変形計算プロセスとを有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0019】
まず、本願の請求項1に記載の発明によれば、解析システムは、接合位置とビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定部を有する。この接続用ビーム要素、及びビーム要素と接合位置に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析が行われて、部材の変形が計算される。したがって、複数の部材の間の接合をビーム要素によりモデル化できる解析システムを提供できる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、ビーム要素は、部材の断面の図心を通過するように構成されている。したがって、図心と接合位置が接続用ビーム要素により接続されることにより、複数の部材が互いに接合されている複雑な構造体を簡易的にモデル化できる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、接続用ビーム要素設定部は、接続用ビーム要素に所定の剛性を設定するように構成されている。したがって、接続用ビーム要素により接続される部材の変形の計算精度が向上する。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記接続用ビーム要素の前記剛性は、前記部材をビーム要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性が、最適化手法に基づく収束計算により、前記部材をシェル要素によりモデル化した場合の構造体解析モデルの剛性に一致するように自動的に調整される。したがって、解析システムには最適化手法に基づく収束計算を行う機能を実装することにより、計算結果を一致させるように剛性が自動的に調整される。または、解析システムには、過去の計算結果を基にした剛性データが登録されており、これを使用することもできる。この場合、剛性の再現精度は少し劣るが、収束計算を行う必要がないため、効率的である。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、ビーム要素モデル化部は、形状データをビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されている。したがって、所定の厚みを有する平坦な板金などの平板部品をシェル要素としてモデル化することを選択すること、及び所定の断面形状を有して所定の中立軸に沿って延びる梁状部品をビーム要素としてモデル化することを選択することによって、平板部品と梁状部品とが互いに組み合わされている複雑な構造体をモデル化できる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明によれば、ビーム要素モデル化部は、部材の形状のアスペクト比を指標として自動的に判定することによって、形状データをビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを選択するように構成されている。したがって、平板部品と梁状部品とが互いに組み合わされている複雑な構造体を自動的にモデル化できる。
【0025】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、解析方法は、接合位置とビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定ステップを有する。この接続用ビーム要素、及びビーム要素と接合位置に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析が行われて、部材の変形が計算される。したがって、複数の部材の間の接合をビーム要素によりモデル化できる解析方法を提供できる。
【0026】
同様に、請求項8に記載の発明によれば、解析プログラムは、接合位置とビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定プロセスを有する。この接続用ビーム要素、及びビーム要素と接合位置に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析が行われて、部材の変形が計算される。したがって、複数の部材の間の接合をビーム要素によりモデル化できる解析プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る解析システムの全体構成を示す図である。
図2図1の記憶装置の構成を示す図である。
図3図2の解析プログラムのフローチャートである。
図4図3の形状データ取り込みプロセスの入力画面を示す図である。
図5図3の形状データ取り込みプロセスにおいて取り込まれる3次元データを示す図である。
図6図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図である。
図7図3の接合位置設定プロセスを説明する図である。
図8図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、接合位置設定プロセスを説明する図である。
図9図3のビーム要素モデル化プロセスを説明する図である。
図10図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、ビーム要素モデル化プロセスを説明する図である。
図11図10のビーム要素モデル化プロセスが実施されるフロアーパネルの3次元データを示す図である。
図12図10のビーム要素モデル化プロセスが実施されるサイドシルアウターの3次元データを示す図である。
図13図3の接続用ビーム要素設定プロセスを説明する図である。
図14図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、接続用ビーム要素設定プロセスを説明する図である。
図15図3の変形計算プロセスによって計算される構造体のねじりモーメントの計算結果について、シェル要素による有限要素解析の計算結果とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る解析システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に解析システムは、コンピュータ10を中心として構成され、コンピュータ10は、中央演算装置11と、形状データの取り込み及び構造体解析モデルの作成に必要なデータなどを入力するためのキーボートやマウスなどの入力装置12と、形状データ及び構造体解析モデルを表示するためのディスプレイなどの表示装置13と、形状データ、構造体解析モデル及び有限要素解析のための解析プログラムなどを記憶するメモリなどの記憶装置14と、計算結果などを出力するディスプレイやプリンタなどの出力装置15とを有する。
【0030】
中央演算装置11は、入力装置12及び表示装置13を制御するとともに、記憶装置14にアクセス可能に構成され、例えば入力装置12を介して外部のシステムから形状データを受け取り、形状データを記憶装置14に保存すると共に、入力装置12を介して入力された情報と記憶装置14に記録されているプログラムやデータを用いて、有限要素解析をするように構成されている。
【0031】
図2は、図1の記憶装置14の構成を示す図である。図2に示すように、記憶装置14は、プログラム記憶部とデータ記憶部を有しており、プログラム記憶部には、互いに接合される複数の部材をビーム要素によりモデル化して、該ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって部材の変形を計算するための解析プログラムが記憶されている。
【0032】
一方、データ記憶部には、複数の部材を接合してなる構造体の形状データが取り込まれる構造体形状データファイルと、接合情報データ(接合位置と接合される部材の組み合わせが記録されているデータ)が記録される接合情報データファイルと、有限要素解析による構造体解析モデルの変形の計算結果が記録される変形計算結果ファイルと、構造体解析モデルが記録される構造体解析モデルファイルとが設けられている。
【0033】
次に、複数の部材を接合してなる構造体解析モデルの変形を有限要素解析によって計算する動作について具体的に説明する。
【0034】
図3は、図2の解析プログラムのフローチャートである。
【0035】
まず、解析プログラムは、形状データ取り込みプロセスS1を動作させる。この形状データ取り込みプロセスS1は、入力装置12を介して、外部のシステムから構造体の形状データを記憶装置14のデータ記憶部、特に構造体形状データファイルに取り込むように構成されている。構造体の形状データとして、有限要素法のシェル要素だけでなく、CADデータなども読み込むことができる。本解析システムでは、選択した部材の形状データ(シェル要素またはCADデータ)からビーム要素を作成して有限要素解析を行うことができる。あるいは、選択した部材をシェル要素でモデル化することも可能であり、その部材は読み込まれたシェル要素またはCADデータからシェル要素を作成して有限要素解析を行う。なお、CADデータについては、有限要素法とは異なる数値シミュレーション手法を使って解析するなどの機能を実装してもよい。
【0036】
図4は、図3の形状データ取り込みプロセスS1の入力画面を示す図である。この入力画面は、表示装置13に表示される。
【0037】
図4に示す入力画面W1には、記憶装置14のデータ記憶部に取り込まれた構造体の形状データを示すように構成されている形状データ描画画面W11が表示されている。この形状データ描画画面W11の下方には、外部のシステムにある構造体の形状データを選択して記憶装置14に取り込むための読込ボタンW12が表示されている。形状データに接合情報データ(接合位置と接合される部材の組み合わせが記録されているデータ)が含まれる場合、各部材の接合はその情報を使用する。外部のシステムに形状データとは別に接合情報データがある場合、そのデータを選択して、読込ボタンW12により記憶装置14のデータ記憶部の接合情報データファイルに取り込ませる。接合情報データが存在しない場合、本解析システム内で接合位置と接合される部材を選択して、接合情報データを作成することもできる。
【0038】
本実施形態において、形状データ描画画面W11には、記憶装置14のデータ記憶部に取り込まれている構造体100の3次元データが表示されている。
【0039】
図4の入力画面W1には、読込ボタンW12に隣接するように実行ボタンW13が表示されている。この実行ボタンW13を押すことにより、形状データ描画画面W11に表示されている構造体100の3次元データに対して、以下の処理が行われる。
【0040】
形状データ取り込みプロセスS1では、入力装置12を介して、構造体100の機械特性(質量密度、ヤング率、ポアソン比、降伏応力など)の材料物性が入力される。
【0041】
図5は、図3の形状データ取り込みプロセスS1において取り込まれる3次元データを示す図である。図5に示す構造体100の3次元データは、自動車のボデーフレームである。以下の説明では、図1における車体前後方向をX方向、車幅方向をY方向、上下方向をZ方向という。
【0042】
構造体100は、自動車のルーフ102を支えるように構成されているルーフサイドレール104、自動車のフロアーとして構成されているフロアーパネル106、フロアーパネル106のY方向左右両端に配設されて、且つX方向に延びる一対のサイドシル108、及びルーフサイドレール104とサイドシル108との間において、Z方向に延びるBピラー110を備える。
【0043】
図6は、図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図である。図6は、特に、サイドシル108をX方向から見た断面図である。
【0044】
本実施形態において、サイドシル108は、Bピラー110のZ方向下方に設けられ、X方向に延びるサイドアウターパネル112と、サイドアウターパネル112のY方向内側において、X方向に延びると共に、サイドアウターパネル112にスポット溶接されているサイドシルアウターレインフォース114と、サイドシルアウターレインフォース114のY方向内側において、X方向に延びると共に、サイドシルアウターレインフォース114にスポット溶接されているサイドシルアウター116と、サイドシルアウター116のY方向内側において、X方向に延びると共に、サイドシルアウター116にスポット溶接されているサイドシルインナー118と、サイドシルインナー118のY方向外側において、X方向に延びると共に、サイドシルインナー118にスポット溶接されているサイドシルインナーレインフォース120とを備える。
【0045】
サイドアウターパネル112は、Y方向外側に突出しているサイドアウターパネル突出部122を有する。サイドシルアウターレインフォース114は、サイドアウターパネル突出部122のY方向内側に沿うように、Y方向外側に突出しているサイドシルアウターレインフォース突出部124を有する。サイドシルアウター116は、サイドシルアウターレインフォース突出部124のY方向内側に沿うように、Y方向外側に突出しているサイドシルアウター突出部126を有する。サイドシルインナー118は、Y方向内側に突出しているサイドシルインナー突出部128を有する。サイドシルインナーレインフォース120は、サイドシルインナー突出部128のY方向内側に沿うように、Y方向内側に突出しているサイドシルインナーレインフォース突出部130を有する。
【0046】
図3に戻り、解析プログラムは、形状データ取り込みプロセスS1を動作させた後、接合位置設定プロセスS2を動作させる。
【0047】
図7は、図3の接合位置設定プロセスS2を説明する図である。この接合位置設定プロセスS2は、表示装置13に表示される入力画面W1において、接合位置設定画面W14が表示されていると共に、図1に示す入力装置12を介して、構造体100の3次元データに対して、接合位置を設定するように構成されている。なお、接合位置、特にスポット溶接点は、形状データに接合情報データが含まれる、または記憶装置14のデータ記憶部に接合情報データファイルがあれば、そのデータから自動的に設定される。接合情報データが存在しない場合、図7に示す形状データ描画画面W11上で接合点と接合する部材をマウスなどの入力装置12で選択することにより設定する。
【0048】
図8は、図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、接合位置設定プロセスS2を説明する図である。
【0049】
本実施形態において、サイドシル108のZ方向上方には、サイドアウターパネル112とサイドシルアウターレインフォース114とサイドシルアウター116とサイドシルインナー118とを重ねてY方向に沿ってスポット溶接する第1スポット溶接点132が第1の接合位置として設定される。サイドシル108のY方向外側には、サイドアウターパネル112のサイドアウターパネル突出部122とサイドシルアウターレインフォース114のサイドシルアウターレインフォース突出部124とサイドシルアウター116のサイドシルアウター突出部126とを重ねてY方向に沿ってスポット溶接する第2スポット溶接点134が第2の接合位置として設定される。サイドシル108のZ方向下方には、サイドシルアウター116とサイドシルインナー118とを重ねてY方向に沿ってスポット溶接する第3スポット溶接点136が第3の接合位置として設定される。サイドシル108のY方向内側の下方には、サイドシルインナー118のサイドシルインナー突出部128とフロアーパネル106とを重ねてY方向に沿ってスポット溶接する第4スポット溶接点138が第4の接合位置として設定される。サイドシル108のY方向内側の上方には、サイドシルインナー118のサイドシルインナー突出部128とサイドシルインナーレインフォース120のサイドシルインナーレインフォース突出部130とを重ねてY方向に沿ってスポット溶接する第5スポット溶接点140が第5の接合位置として設定される。
【0050】
本実施形態において、接合位置設定プロセスS2は、入力装置12を介して、構造体100の3次元データに対して、接合位置を設定するように構成されているが、接合位置が予め3次元データに含まれている場合、3次元データから接合位置を抽出するように構成されていてもよい。
【0051】
図3に戻り、解析プログラムは、接合位置設定プロセスS2を動作させた後、ビーム要素モデル化プロセスS3を動作させる。
【0052】
図9は、図3のビーム要素モデル化プロセスS3を説明する図である。このビーム要素モデル化プロセスS3は、表示装置13に表示される入力画面W1において、ビーム要素モデル化画面W15が表示されていると共に、構造体100の3次元データに対して、各部材をビーム要素としてモデル化するように構成されている。
【0053】
図10は、図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、ビーム要素モデル化プロセスS3を説明する図である。
【0054】
本実施形態において、サイドアウターパネル112は、サイドアウターパネル112のY方向内側において、X方向に延びるサイドアウターパネル112の断面の図心を有しており、該図心を通過するようにX方向に延びるサイドアウターパネルビーム要素142としてモデル化される。サイドアウターパネルビーム要素142は、連結された複数の所定の長さの線形状の有限要素から構成されていると共に、サイドアウターパネル112の断面に沿って配置される積分点(図示せず)によって、サイドアウターパネル112の断面形状が設定されている。
【0055】
サイドシルアウターレインフォース114は、サイドシルアウターレインフォース114のY方向内側において、X方向に延びるサイドシルアウターレインフォース114の断面の図心を有しており、該図心を通過するようにX方向に延びるサイドシルアウターレインフォースビーム要素144としてモデル化される。サイドシルアウターレインフォースビーム要素144は、連結された複数の所定の長さの線形状の有限要素から構成されていると共に、サイドシルアウターレインフォース114の断面に沿って配置される積分点(図示せず)によって、サイドシルアウターレインフォース114の断面形状が設定されている。
【0056】
サイドシルアウター116は、サイドシルアウター116のY方向内側において、X方向に延びるサイドシルアウター116の断面の図心を有しており、該図心を通過するようにX方向に延びるサイドシルアウタービーム要素146としてモデル化される。サイドシルアウタービーム要素146は、連結された複数の所定の長さの線形状の有限要素から構成されていると共に、サイドシルアウター116の断面に沿って配置される積分点(図示せず)によって、サイドシルアウター116の断面形状が設定されている。
【0057】
サイドシルインナー118は、サイドシルインナー118のY方向外側において、X方向に延びるサイドシルインナー118の断面の図心を有しており、該図心を通過するようにX方向に延びるサイドシルインナービーム要素148としてモデル化される。サイドシルインナービーム要素148は、連結された複数の所定の長さの線形状の有限要素から構成されていると共に、サイドシルインナー118の断面に沿って配置される積分点(図示せず)によって、サイドシルインナー118の断面形状が設定されている。
【0058】
サイドシルインナーレインフォース120は、サイドシルインナーレインフォース120のY方向外側において、X方向に延びるサイドシルインナーレインフォース120の断面の図心を有しており、該図心を通過するようにX方向に延びるサイドシルインナーレインフォースビーム要素150としてモデル化される。サイドシルインナーレインフォースビーム要素150は、連結された複数の所定の長さの線形状の有限要素から構成されていると共に、サイドシルインナーレインフォース120の断面に沿って配置される積分点(図示せず)によって、サイドシルインナーレインフォース120の断面形状が設定されている。
【0059】
図9に戻り、ビーム要素モデル化プロセスS3は、サイドアウターパネル112とサイドシルアウターレインフォース114とサイドシルアウター116とサイドシルインナー118とサイドシルインナーレインフォース120とを、ビーム要素としてモデル化する一方、ルーフ102及びフロアーパネル106などの平板部品はシェル要素としてモデル化するように構成されている。
【0060】
本実施形態において、ビーム要素モデル化プロセスS3は、部材をビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかについて、それぞれの部材をマウスなどの入力装置12で選択することにより設定するように構成されている。一方、ビーム要素モデル化プロセスS3は、それぞれの部材の形状の縦方向の長さと横方向の長さの比率、すなわちアスペクト比を指標として、ビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを自動的に判定するように構成されてもよい。
【0061】
図11は、図10のビーム要素モデル化プロセスS3が実施されるフロアーパネル106の3次元データを示す図である。また、図12は、図10のビーム要素モデル化プロセスS3が実施されるサイドシルアウター116の3次元データを示す図である。本実施形態において、フロアーパネル106は、所定の厚みを有する平坦な板金から形成されているため、平板部品である。一方、サイドシルアウター116は、所定の断面形状を有してX方向に沿って延びるため、梁状部品である。
【0062】
上述のように、ビーム要素モデル化プロセスS3が、アスペクト比を指標として、ビーム要素又はシェル要素としてモデル化するかを自動的に判定するように構成されている変形例において、ビーム要素モデル化プロセスS3は、フロアーパネル106やサイドシルアウター116などの部材のX方向、Y方向、及びZ方向に沿った寸法を測定するように構成されている。部材のX方向、Y方向、及びZ方向に沿って測定された寸法は、大きい順に、寸法値L1,L2,L3として識別される。
【0063】
その後、ビーム要素モデル化プロセスS3において、以下の数1に基づいて、部材のアスペクト比が計算される。
【0064】
【数1】
【0065】
その後、ビーム要素モデル化プロセスS3において、上述の部材のアスペクト比に基づいて、それぞれの部材の形状がビーム要素又はシェル要素に分類される。部材のアスペクト比が1以上であり、且つ所定の閾値以下、例えば2以下であるとき、該部材の形状はシェル要素としてモデル化されることが自動的に判定される。一方、部材のアスペクト比が2より大きいとき、該部材の形状はビーム要素としてモデル化されることが自動的に判定される。ビーム要素としてモデル化されることが判定された部材の形状は、寸法値L1として識別された寸法の方向に沿って延びるビーム要素としてモデル化される。
【0066】
本実施形態において、フロアーパネル106は、Y方向の長さの寸法値L1とX方向の長さの寸法値L2に基づいて計算されるアスペクト比が1以上であり、且つ2以下であるため、シェル要素としてモデル化されることが判定される。一方、サイドシルアウター116は、X方向の長さの寸法値L1とZ方向の長さの寸法値L2に基づいて計算されるアスペクト比が2より大きいため、ビーム要素としてモデル化されることが判定される。
【0067】
上述の変形例において、閾値は2として設定されているが、別の値が設定されてもよい。また、ビーム要素としてモデル化されることが判定された部材の形状は、例えばマウスなどの入力装置12で選択された方向に沿って延びるビーム要素としてモデル化されてもよい。
【0068】
図3に戻り、解析プログラムは、ビーム要素モデル化プロセスS3を動作させた後、接続用ビーム要素設定プロセスS4を動作させる。
【0069】
図13は、図3の接続用ビーム要素設定プロセスS4を説明する図である。この接続用ビーム要素設定プロセスS4は、表示装置13に表示される入力画面W1において、接続用ビーム要素設定画面W16が表示されていると共に、モデル化された構造体100のビーム要素に対して、接合位置とビーム要素とを接続する接続用ビーム要素を設定するように構成されている。
【0070】
図14は、図5のVI-VI線に沿った、形状データの断面図に対して、接続用ビーム要素設定プロセスを説明する図である。
【0071】
本実施形態において、サイドアウターパネル112は、第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134において、スポット溶接されている。したがって、サイドアウターパネルビーム要素142と第1スポット溶接点132との間には、サイドアウターパネルビーム要素142と第1スポット溶接点132とを接続する第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素152が設定される。また、サイドアウターパネルビーム要素142と第2スポット溶接点134との間には、サイドアウターパネルビーム要素142と第2スポット溶接点134とを接続する第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素154が設定される。第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素152と第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素154の節点は、それぞれ、サイドアウターパネルビーム要素142の節点に接続される。
【0072】
サイドシルアウターレインフォース114は、第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134において、スポット溶接されている。したがって、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144と第1スポット溶接点132との間には、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144と第1スポット溶接点132とを接続する第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素156が設定される。また、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144と第2スポット溶接点134との間には、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144と第2スポット溶接点134とを接続する第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素158が設定される。第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素156と第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素158の節点は、それぞれ、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144の節点に接続される。
【0073】
サイドシルアウター116は、第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134と第3スポット溶接点136において、スポット溶接されている。したがって、サイドシルアウタービーム要素146と第1スポット溶接点132との間には、サイドシルアウタービーム要素146と第1スポット溶接点132とを接続する第1サイドシルアウター接続用ビーム要素160が設定される。また、サイドシルアウタービーム要素146と第2スポット溶接点134との間には、サイドシルアウタービーム要素146と第2スポット溶接点134とを接続する第2サイドシルアウター接続用ビーム要素162が設定される。さらに、サイドシルアウタービーム要素146と第3スポット溶接点136との間には、サイドシルアウタービーム要素146と第3スポット溶接点136とを接続する第3サイドシルアウター接続用ビーム要素164が設定される。第1サイドシルアウター接続用ビーム要素160と第2サイドシルアウター接続用ビーム要素162と第3サイドシルアウター接続用ビーム要素164の節点は、それぞれ、サイドシルアウタービーム要素146の節点に接続される。
【0074】
サイドシルインナー118は、第1スポット溶接点132と第3スポット溶接点136と第4スポット溶接点138と第5スポット溶接点140において、スポット溶接されている。したがって、サイドシルインナービーム要素148と第1スポット溶接点132との間には、サイドシルインナービーム要素148と第1スポット溶接点132とを接続する第1サイドシルインナー接続用ビーム要素166が設定される。また、サイドシルインナービーム要素148と第3スポット溶接点136との間には、サイドシルインナービーム要素148と第3スポット溶接点136とを接続する第2サイドシルインナー接続用ビーム要素168が設定される。さらに、サイドシルインナービーム要素148と第4スポット溶接点138との間には、サイドシルインナービーム要素148と第4スポット溶接点138とを接続する第3サイドシルインナー接続用ビーム要素170が設定される。同様に、サイドシルインナービーム要素148と第5スポット溶接点140との間には、サイドシルインナービーム要素148と第5スポット溶接点140とを接続する第4サイドシルインナー接続用ビーム要素172が設定される。第1サイドシルインナー接続用ビーム要素166と第2サイドシルインナー接続用ビーム要素168と第3サイドシルインナー接続用ビーム要素170と第4サイドシルインナー接続用ビーム要素172の節点は、それぞれ、サイドシルインナービーム要素148の節点に接続される。
【0075】
サイドシルインナーレインフォース120は、第5スポット溶接点140において、スポット溶接されている。したがって、サイドシルインナーレインフォースビーム要素150と第5スポット溶接点140との間には、サイドシルインナーレインフォースビーム要素150と第5スポット溶接点140とを接続するサイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素174が設定される。サイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素174の節点は、サイドシルインナーレインフォースビーム要素150の節点に接続される。接続用ビーム要素とは、6自由度(並進3成分、回転3成分)の剛性を持つバネ要素である。部材が鋼板などの金属材料の場合、高い剛性を持つ。
【0076】
図3に戻り、解析プログラムは、接続用ビーム要素設定プロセスS4を動作させた後、変形計算プロセスS5を動作させる。この変形計算プロセスS5は、ビーム要素と接合位置と接続用ビーム要素に基づいて、有限要素解析によって構造体100の変形を計算する。
【0077】
上述のように、構造体100は、サイドアウターパネルビーム要素142と第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134とをそれぞれ接続する第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素152と第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素154、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144と第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134とをそれぞれ接続する第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素156と第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素158、サイドシルアウタービーム要素146と第1スポット溶接点132と第2スポット溶接点134と第3スポット溶接点136とをそれぞれ接続する第1サイドシルアウター接続用ビーム要素160と第2サイドシルアウター接続用ビーム要素162と第3サイドシルアウター接続用ビーム要素164、サイドシルインナービーム要素148と第1スポット溶接点132と第3スポット溶接点136と第4スポット溶接点138と第5スポット溶接点140とをそれぞれ接続する第1サイドシルインナー接続用ビーム要素166と第2サイドシルインナー接続用ビーム要素168と第3サイドシルインナー接続用ビーム要素170と第4サイドシルインナー接続用ビーム要素172、及びサイドシルインナーレインフォースビーム要素150と第5スポット溶接点140とを接続するサイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素174を含む複数のビーム要素によってモデル化される。
【0078】
したがって、変形計算プロセスS5は、選択された複数の部材がビーム要素によってモデル化される構造体100の変形を有限要素解析によって計算する。
【0079】
このように、本実施形態に係る解析システムは、第1スポット溶接点132、第2スポット溶接点134、第3スポット溶接点136、第4スポット溶接点138、及び第5スポット溶接点140を含む接合位置と、サイドアウターパネルビーム要素142、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144、サイドシルアウタービーム要素146、サイドシルインナービーム要素148、及びサイドシルインナーレインフォースビーム要素150を含むビーム要素とをそれぞれ接続する、第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素152、第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素154、第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素156、第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素158、第1サイドシルアウター接続用ビーム要素160、第2サイドシルアウター接続用ビーム要素162、第3サイドシルアウター接続用ビーム要素164、第1サイドシルインナー接続用ビーム要素166、第2サイドシルインナー接続用ビーム要素168、第3サイドシルインナー接続用ビーム要素170、第4サイドシルインナー接続用ビーム要素172、及びサイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素174を含む接続用ビーム要素を設定する接続用ビーム要素設定部として構成されている解析プログラムの接続用ビーム要素設定プロセスS4と、ビーム要素と接合位置と接続用ビーム要素に基づいて作成された構造体解析モデルの有限要素解析によって構造体100の変形を計算する変形計算部として構成されている解析プログラムの変形計算プロセスS5とを有する。
【0080】
この接続用ビーム要素、及びビーム要素と接合位置に基づいて、有限要素解析が行われて、構造体100の変形が計算される。したがって、複数の部材の間の接合をビーム要素によりモデル化できる解析システムを提供できる。
【0081】
また、サイドアウターパネルビーム要素142、サイドシルアウターレインフォースビーム要素144、サイドシルアウタービーム要素146、サイドシルインナービーム要素148、サイドシルインナーレインフォースビーム要素150を含むビーム要素は、サイドアウターパネル112、サイドシルアウターレインフォース114、サイドシルアウター116、サイドシルインナー118、サイドシルインナーレインフォース120を含む部材の断面の図心を通過するように構成されている。したがって、図心と接合位置が接続用ビーム要素により接続されることにより、複数の部材が互いに接合されている複雑な構造体100を簡易的にモデル化できる。
【0082】
本実施形態において、第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素152、第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素154、第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素156、第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素158、第1サイドシルアウター接続用ビーム要素160、第2サイドシルアウター接続用ビーム要素162、第3サイドシルアウター接続用ビーム要素164、第1サイドシルインナー接続用ビーム要素166、第2サイドシルインナー接続用ビーム要素168、第3サイドシルインナー接続用ビーム要素170、第4サイドシルインナー接続用ビーム要素172、及びサイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素174を含む接続用ビーム要素は、それぞれ、変形可能な要素としてモデル化され、適切な剛性を持つ。
【0083】
図15は、図3の変形計算プロセスS5によって計算される構造体100のねじりモーメントの計算結果について、シェル要素による有限要素解析の計算結果とを比較する図である。図15に示すグラフの横軸は、部材を変形させるようにねじるときの回転角度を示す。図15に示すグラフの縦軸は、部材を変形させるようにねじるときのねじりモーメントを示す。実線で示す曲線201は、シェル要素による有限要素解析の計算結果を示す。破線で示す曲線202は、本発明の解析システムによる有限要素解析の計算結果を示す。
【0084】
一般的に、シェル要素による有限要素解析は、実際の部材の変形の特性に近い計算結果が得られる。
【0085】
本発明の解析システムには、同様な計算結果を基にした標準的な剛性データが登録されている。この剛性を接続用ビーム要素に設定して、サイドアウターパネル112、サイドシルアウターレインフォース114、サイドシルアウター116、サイドシルインナー118、サイドシルインナーレインフォース120を含む複数の部材が互いに接合されている複雑な構造体100の構造体解析モデルに対してねじり変形を与えた際に発生する曲げモーメントの計算結果を曲線202に示す。シェル要素による構造体解析モデルの有限要素解析の計算結果を示す曲線201と比較すると、曲線202は曲線201に近いことが分かる。なお、結果に違いがある場合、最適化手法に基づく収束計算を行う機能を解析システムに実装することにより、計算結果を一致させるように剛性を自動的に調整することもできる。
【0086】
この剛性が設定された接続用ビーム要素を使って、各部材をモデル化するビーム要素を接合することにより、計算精度をあまり落とすことなく、構造体解析モデルの中の多くの部材をビーム要素でモデル化することが可能になる。ビーム要素の断面形状は、断面特性値、または積分点の集合により設定できるため断面形状の作成や変更が容易であり、有限要素解析の計算時間もシェル要素より少ない利点がある。しかし、大変形においてビーム要素はシェル要素よりも精度は高くない。本技術の適用として、製品設計の初期段階(コンセプト設計)が挙げられる。コンセプト設計では様々な形状を短時間で検討することが求められており、その後の詳細設計で発生する問題を大きく減らすことができる。コンセプト設計に対して有限要素解析の適用が求められているが、シェル要素ではモデル化作業が煩雑であり、計算時間もかかるため、効率化に限界がある。そこで、本発明における複雑な構造体を接合も考慮してビーム要素でモデル化する新技術を適応した場合、計算精度はシェル要素より劣るが、形状データの作成と変更を容易に行うことができ、計算時間も少ないため、コンセプト設計を劇的に効率化することが可能になる。
【符号の説明】
【0087】
112 サイドアウターパネル(部材)
114 サイドシルアウターレインフォース(部材)
116 サイドシルアウター(部材)
118 サイドシルインナー(部材)
120 サイドシルインナーレインフォース(部材)
132 第1スポット溶接点(接合位置)
134 第2スポット溶接点(接合位置)
136 第3スポット溶接点(接合位置)
138 第4スポット溶接点(接合位置)
140 第5スポット溶接点(接合位置)
142 サイドアウターパネルビーム要素
144 サイドシルアウターレインフォースビーム要素
146 サイドシルアウタービーム要素
148 サイドシルインナービーム要素
150 サイドシルインナーレインフォースビーム要素
152 第1サイドアウターパネル接続用ビーム要素
154 第2サイドアウターパネル接続用ビーム要素
156 第1サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素
158 第2サイドシルアウターレインフォース接続用ビーム要素
160 第1サイドシルアウター接続用ビーム要素
162 第2サイドシルアウター接続用ビーム要素
164 第3サイドシルアウター接続用ビーム要素
166 第1サイドシルインナー接続用ビーム要素
168 第2サイドシルインナー接続用ビーム要素
170 第3サイドシルインナー接続用ビーム要素
172 第4サイドシルインナー接続用ビーム要素
174 サイドシルインナーレインフォース接続用ビーム要素
S1 形状データ取り込みプロセス(形状データ取り込み部)
S2 接合位置設定プロセス(接合位置設定部)
S3 ビーム要素モデル化プロセス(ビーム要素モデル化部)
S4 接続用ビーム要素設定プロセス(接続用ビーム要素設定部)
S5 変形計算プロセス(変形計算部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15