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特開2023-127337レーザ溶接制御システム、レーザ溶接装置及び機械学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127337
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】レーザ溶接制御システム、レーザ溶接装置及び機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230906BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230906BHJP
   G06N 20/20 20190101ALI20230906BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 N
B23K26/21 F
B23K26/21 G
G06N20/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031061
(22)【出願日】2022-03-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】509052300
【氏名又は名称】株式会社タマリ工業
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100174757
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 俊文
(72)【発明者】
【氏名】下玉利 淳也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 眞生
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168CA06
4E168CA11
4E168CB02
4E168CB04
4E168DA13
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168DA36
4E168DA38
4E168DA39
4E168EA15
4E168EA17
4E168FA00
4E168FB03
(57)【要約】
【課題】リアルタイムで精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるレーザ溶接制御システム、レーザ溶接装置及び機械学習装置を提供すること。
【解決手段】ワーク2に照射されるレーザ光の照射位置を含んで少なくともワーク2に設定された所定領域2aからの輻射熱に伴う発光のうち、ワーク2の温度を計測するための波長λ1の光を通過させるバンドパスフィルタ13と、バンドパスフィルタ13を通過した光を撮像するカメラ11と、そのカメラ11による撮像により得られた画像に基づいて、所定領域2aにおける温度分布画像を取得する温度分布画像取得手段15と、その温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習する学習手段16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ溶接装置による溶接対象物のレーザ溶接を制御するレーザ溶接制御システムであって、
溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで少なくとも前記溶接対象物上に設定された所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための波長の光を通過させる光学フィルタ手段と、
少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記光学フィルタ手段を通過した光を撮像する撮像手段と、
その撮像手段による撮像により得られた画像に基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得する温度分布画像取得手段と、
その温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習する学習手段と、
その学習手段により判定された前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件に基づいて、前記レーザ溶接装置におけるレーザ溶接を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするレーザ溶接制御システム。
【請求項2】
前記光学フィルタ手段は、
少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための第1の波長の光を通過させる第1光学フィルタ手段と、
少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための第2の波長の光を通過させる第2光学フィルタ手段と、を備え、
前記撮像手段は、
少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記第1光学フィルタ手段を通過した光を撮像する第1撮像手段と、
少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記第2光学フィルタ手段を通過した光を撮像する第2撮像手段と、を備え、
前記温度分布画像取得手段は、前記第1撮像手段による撮像により得られた画像と前記第2撮像手段による撮像により得られた画像とに基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項3】
前記光学フィルタ手段は、前記溶接対象物の温度を計測するために用いる波長の光として、1つの波長の光を通過させるものであり、
前記温度分布画像取得手段は、前記光学フィルタ手段を通過した1つの波長の光が前記撮像手段により撮像されることによって得られた画像に基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得するものであることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項4】
前記学習手段は、前記温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、少なくともレーザ溶接の状態を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態を判定することを学習するものであり、
前記制御手段は、前記学習手段により判定された前記レーザ溶接の状態に基づいて、そのレーザ溶接の状態が目標の状態となるように前記レーザ溶接装置におけるレーザ溶接の溶接条件を調整するフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項5】
前記溶接条件は、光源から出力されるレーザ光の出力強度、前記溶接対象物に照射されるレーザ光の強度及び/又は径、前記レーザ光の走査速度、前記レーザ光の走査パターン、前記レーザ光が照射される位置周辺に供給するアシストガスの流量の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項6】
前記レーザ溶接制御システムは、複数の光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成されたレーザ光を前記溶接対象物に照射してレーザ溶接を行うレーザ溶接装置を制御するものであり、
前記溶接条件は、各光源から出力されるレーザ光の出力バランスを少なくとも含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項7】
前記溶接条件は、前記出力バランスの時間的な変化のパターンを少なくとも含むことを特徴とする請求項6記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項8】
前記学習手段は、ディープラーニングによって学習を行うものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項9】
前記学習手段は、複数の学習モデルを使用するアンサンブル学習によって学習を行うものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接制御システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムによって溶接対象物のレーザ溶接が制御されるレーザ溶接装置。
【請求項11】
レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を学習する機械学習装置であって、
溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで前記溶接対象物に対して設定された所定領域の温度分布画像を取得する温度分布画像取得手段と、
その温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習する学習手段と、を備えることを特徴とする機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接制御システム、レーザ溶接装置及び機械学習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を照射して、溶接対象物の溶接を行うレーザ溶接装置がある。近年、溶接品質を良好な状態に保つために、人工知能(AI)を利用してレーザ溶接を制御する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたレーザ溶接制御システムは、レーザビームが照射された加工部位をレーザ溶接中に撮像しながら、その撮像画像を機械学習により得られた溶接状態毎の教示画像と比較し、加工部位の溶接状態と教示画像の溶接状態との一致度を演算する。そして、その演算された一致度と、目標とする溶接状態に基づく目標一致度とに基づいて、照射するレーザビームの出力をフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6810973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来のレーザ溶接制御システムでは、機械学習にレーザビームが照射された加工部位を撮像した撮像画像を用いている。この撮像画像には、レーザビームの照射に伴って発生するプラズマ発光や、照射したレーザビームの散乱光など、ノイズとなる成分を多く含む。よって、従来のレーザ溶接制御システムでは、精度の高いフィードバック制御を行うことが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、リアルタイムで精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるレーザ溶接制御システム、レーザ溶接装置及び機械学習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載のレーザ溶接制御システムは、レーザ溶接装置による溶接対象物のレーザ溶接を制御するものであって、溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで少なくとも前記溶接対象物上に設定された所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための波長の光を通過させる光学フィルタ手段と、少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記光学フィルタ手段を通過した光を撮像する撮像手段と、その撮像手段による撮像により得られた画像に基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得する温度分布画像取得手段と、その温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習する学習手段と、その学習手段により判定された前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件に基づいて、前記レーザ溶接装置におけるレーザ溶接を制御する制御手段と、を備える。
【0008】
請求項2記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記光学フィルタ手段は、少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための第1の波長の光を通過させる第1光学フィルタ手段と、少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記溶接対象物の温度を計測するための第2の波長の光を通過させる第2光学フィルタ手段と、を備え、前記撮像手段は、少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記第1光学フィルタ手段を通過した光を撮像する第1撮像手段と、少なくとも前記所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、前記第2光学フィルタ手段を通過した光を撮像する第2撮像手段と、を備え、前記温度分布画像取得手段は、前記第1撮像手段による撮像により得られた画像と前記第2撮像手段による撮像により得られた画像とに基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得する。
【0009】
請求項3記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記光学フィルタ手段は、前記溶接対象物の温度を計測するために用いる波長の光として、1つの波長の光を通過させるものであり、前記温度分布画像取得手段は、前記光学フィルタ手段を通過した1つの波長の光が前記撮像手段により撮像されることによって得られた画像に基づいて、前記所定領域における温度分布画像を取得するものである。
【0010】
請求項4記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記学習手段は、前記温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、少なくともレーザ溶接の状態を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態を判定することを学習するものであり、前記制御手段は、前記学習手段により判定された前記レーザ溶接の状態に基づいて、そのレーザ溶接の状態が目標の状態となるように前記レーザ溶接装置におけるレーザ溶接の溶接条件を調整するフィードバック制御を行う。
【0011】
請求項5記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記溶接条件は、光源から出力されるレーザ光の出力強度、前記溶接対象物に照射されるレーザ光の強度及び/又は径、前記レーザ光の走査速度、前記レーザ光の走査パターン、前記レーザ光が照射される位置周辺に供給するアシストガスの流量の少なくともいずれかを含む。
【0012】
請求項6記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記レーザ溶接制御システムは、複数の光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成されたレーザ光を前記溶接対象物に照射してレーザ溶接を行うレーザ溶接装置を制御するものであり、前記溶接条件は、各光源から出力されるレーザ光の出力バランスを少なくとも含む。
【0013】
請求項7記載のレーザ溶接制御システムは、請求項6記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記溶接条件は、前記出力バランスの時間的な変化のパターンを少なくとも含む。
【0014】
請求項8記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記学習手段は、ディープラーニングによって学習を行うものである。
【0015】
請求項9記載のレーザ溶接制御システムは、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムにおいて、前記学習手段は、複数の学習モデルを使用するアンサンブル学習によって学習を行うものである。
【0016】
請求項10記載のレーザ溶接装置は、請求項1から9のいずれかに記載のレーザ溶接装置によって溶接対象物のレーザ溶接が制御される。
【0017】
請求項11記載の機械学習装置は、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を学習するものであって、溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで前記溶接対象物に対して設定された所定領域の温度分布画像を取得する温度分布画像取得手段と、その温度分布画像取得手段により取得された前記温度分布画像に基づいて、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、前記レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習する学習手段と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のレーザ溶接制御システムによれば、レーザ溶接装置による溶接対象物のレーザ溶接を制御するものであり、溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで少なくとも溶接対象物上に設定された所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、溶接対象物の温度を計測するための波長の光が光学フィルタ手段を通過する。そして、少なくとも所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、光学フィルタ手段を通過した光が、撮像手段により撮像される。その撮像手段による撮像により得られた画像に基づいて、所定領域における温度分布画像が温度分布画像取得手段により取得される。その温度分布画像取得手段により取得された温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを、学習手段によって学習される。そして、その学習手段により判定されたレーザ溶接の状態及び/又は溶接条件に基づいて、レーザ溶接装置におけるレーザ溶接が制御手段により制御される。このように、学習手段の入力に用いるデータは、リアルタイムに撮像された溶接対象物の所定領域からの輻射に伴う発光に基づいて得られる温度分布画像である。温度分布画像を用いることで、他の要因、例えば、レーザ光の照射に伴って発生するプラズマ発光、照射したレーザ光の散乱光、溶接対象物に差し込んだ太陽光・室内灯・溶接工場内のアーク放電の光といった、種々のノイズの影響を受けることなく、学習手段による学習と、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件の判定を行うことができる。よって、リアルタイムで精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【0019】
請求項2記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで少なくとも溶接対象物上に設定された所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、溶接対象物の温度を計測するための第1の波長の光が第1光学フィルタ手段を通過する。そして、少なくともその所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、第1光学フィルタ手段を通過した光が、第1撮像手段により撮像される。また、少なくともその所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、溶接対象物の温度を計測するための第2の波長の光が第2光学フィルタ手段を通過する。そして、少なくともその所定領域からの輻射熱に伴う発光のうち、第2光学フィルタ手段を通過した光が、第2撮像手段により撮像される。その第1撮像手段による撮像により得られた画像と第2撮像手段による撮像により得られた画像とに基づいて、所定領域における温度分布画像が温度分布画像取得手段により取得される。このように、溶接対象物上の所定領域から輻射熱に伴って発光された光のうち、2つの波長の光を使用して所定領域における温度分布画像が取得されるので、温度分布画像により示される所定領域内の温度の信頼性を高めることができる。よって、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【0020】
請求項3記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、溶接対象物の温度を計測するために用いる波長の光として、1つの波長の光が、光学フィルタ手段により通過される。そして、光学フィルタ手段を通過した1つの波長の光が撮像手段により撮像されることによって得られた画像に基づいて、所定領域における温度分布画像が温度分布画像取得手段によって取得される。このように、1つの波長の光を使用して所定領域における温度分布画像が取得されるので、温度分布画像により示される所定領域内の温度を低コストにて求めることができるという効果がある。
【0021】
請求項4記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、温度分布画像取得手段により取得された温度分布画像に基づいて、少なくともレーザ溶接の状態を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の状態を判定することが学習手段によって学習される。そして、その学習手段により判定されたレーザ溶接の状態に基づいて、そのレーザ溶接の状態が目標の状態となるようにレーザ溶接装置におけるレーザ溶接の溶接条件を調整するフィードバック制御が、制御手段により行われる。これにより、リアルタイムで精度高く、レーザ溶接の状態が目標の状態となるようにレーザ溶接が実現できるという効果がある。
【0022】
請求項5記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、溶接条件は、光源から出力されるレーザ光の出力強度、溶接対象物に照射されるレーザ光の強度及び/又は径、レーザ光の走査速度、レーザ光の走査パターン、レーザ光が照射される位置周辺に供給するアシストガスの流量の少なくともいずれかを含む。よって、溶接条件に含まれているパラメータをリアルタイムで精度高く、フォードバック制御できるので、より安定した品質のレーザ溶接を実現できるという効果がある。
【0023】
請求項6記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、レーザ溶接制御システムにより制御されるレーザ溶接装置は、複数の光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成されたレーザ光を溶接対象物に照射してレーザ溶接を行うものであり、溶接条件として、各光源から出力されるレーザ光の出力バランスが少なくとも含まれる。これにより、複数の光源から出力される各レーザ光の出力バランスが、学習手段による温度分布画像を用いた判定に基づいて、目標のレーザ溶接品質となるように各レーザ光の出力バランスがフィードバック制御されながら、レーザ溶接が行われる。よって、より安定した品質のレーザ溶接を実現できるという効果がある。
【0024】
請求項7記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項6記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、溶接条件として、複数の光源から出力される各レーザ光の出力バランスの時間的な変化のパターンが少なくとも含まれる。これにより、学習手段による温度分布画像を用いた判定に基づいて、目標のレーザ溶接品質となるように各レーザ光の出力バランスの時間的な変化がフォードバック制御されながら、レーザ溶接が行われる。よって、より安定した品質のレーザ溶接を実現できるという効果がある。
【0025】
請求項8記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、ディープラーニングによって学習手段による学習が行われるので、学習手段による判定の精度を高めることができる。これにより、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【0026】
請求項9記載のレーザ溶接制御システムによれば、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、複数の学習モデルを使用するアンサンブル学習によって学習手段による学習が行われるので、学習手段による判定の精度を高めることができる。これにより、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【0027】
請求項10記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から9のいずれかに記載のレーザ溶接制御システムによって溶接対象物のレーザ溶接が制御されるので、対応するレーザ溶接制御システムが奏する効果を享受できるという効果がある。
【0028】
請求項11記載の機械学習装置によれば、溶接対象物に照射されるレーザ光の照射位置を含んで溶接対象物に対して設定された所定領域の温度分布画像が、温度分布画像取得手段により取得される。その温度分布画像取得手段により取得された温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを、学習手段によって学習される。このように、学習手段の入力に用いるデータは、溶接対象物の所定領域の温度分布画像である。温度分布画像を用いることで、他の要因、例えば、レーザ光の照射に伴って発生するプラズマ発光、照射したレーザ光の散乱光、溶接対象物に差し込んだ太陽光・室内灯・溶接工場内のアーク放電の光といった、種々のノイズの影響を受けることなく、学習手段による学習と、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件の判定を行うことができる。よって、この機械学習装置を用いることで、リアルタイムで精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は、本発明の一実施形態である機械学習装置、その機械学習装置を備えてレーザ溶接装置を制御するレーザ溶接制御システム、及び、そのレーザ溶接制御システムにより制御されるレーザ溶接装置の概略構成を示す概略構成図であり、(b)は、レーザ溶接装置においてワークに照射されるレーザ光の強度分布を示した図である。
図2】黒体輻射強度の波長及び温度依存性を示した図である。
図3】同機械学習装置の学習手段の構成の一例を概略的に示した概略図である。
図4】(a)は、同機械学習装置の学習手段の学習に用いられる学習データの一例を模式的に示した図であり、(b)は、同レーザ溶接制御システムの撮像手段においてリアルタイムに撮像した画像データから、温度分布画像取得手段によって取得された所定領域の温度分布画像を学習手段へ入力した場合の学習手段からの出力の一例を模式的に示した図である。
図5】本発明のレーザ溶接制御システムの変形例を概略的に示した概略図である。
図6】(a)は、本発明のレーザ溶接装置の変形例として、2つの光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成したレーザ光の強度分布の一例を示した図であり、(b)は、(a)に示したレーザ光における主レーザ光の強度Aと径B、主レーザ光に対して副レーザ光が形成される位置を示す半径C、副レーザ光の強度Dと径Eを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0031】
図1(a)は、本発明の一実施形態である機械学習装置18、その機械学習装置18を備えてレーザ溶接装置1を制御するレーザ溶接制御システム10、及び、そのレーザ溶接制御システム10により制御されるレーザ溶接装置1の概略構成を示す概略構成図である。また、図1(b)は、レーザ溶接装置1において溶接対象物(以下、単に「ワーク」と称す)2に照射されるレーザ光3の強度分布を示した図である。
【0032】
レーザ溶接装置1は、例えば突き合わせ又は重ね合わせた状態で台座50に固定された2枚の板材であるワーク2に対して、レーザ光3を走査しながら照射することで、ワーク2の突き合わせ又は重ね合わせ部分を溶接するものである。レーザ溶接装置1は、図1(a)に示す通り、少なくとも、光源20、伝送路30、溶接ノズル40、レーザ溶接制御システム10を有している。
【0033】
光源20は、レーザ光3を発振させて出力するレーザ発振器であり、溶接に使用するレーザの種類に応じて、CO2レーザ発振器、YAGレーザ発振器、半導体レーザ発振器、ディスクレーザ発振器、ファイバーレーザ発振器等が用いられる。本実施形態では、光源20は1つであり、溶接ノズル40を介して1つのレーザ光3をワーク2に照射する。
【0034】
伝送路30は、光源20から出力されたレーザ光3を溶接ノズル40へ伝送するもので、光源20から出力されるレーザがCO2レーザの場合、ミラーやレンズによって構成される。また、光源20から出力されるレーザが、YAGレーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ又はファイバーレーザである場合は、ミラーやレンズに加えて、又は、ミラーやレンズに代えて、光ファイバが用いられてもよい。
【0035】
溶接ノズル40は、台座50に固定されたワーク2に向けて、レーザ光3を走査しながら照射する部材である。溶接ノズル40には、光源20から出力され、伝送路30にて伝送されたレーザ光3が入力される。溶接ノズル40の内部には、コリメートレンズ41、ダイクロイックミラー42、ガルバノスキャナ43、集光レンズ44といったレーザ光3を整形するための光学部材が配設されている。これらの光学部材によって整形されたレーザ光3が、溶接ノズル40よりワーク2に向けて照射される。
【0036】
伝送路30から溶接ノズル40へ入力されたレーザ光3は、まずコリメートレンズ41を通過する。コリメートレンズ41は、溶接ノズル40へ入力されたレーザ光3を平行光とするためのレンズである。
【0037】
コリメートレンズ41にて平行光とされたレーザ光3は、次いでダイクロイックミラー42に入射される。ダイクロイックミラー42は、特定の波長の光を反射し、それ以外の光を透過するミラーである。本実施形態では、少なくともレーザ光3を透過するダイクロイックミラー42が用いられる。また、詳細については後述するが、このダイクロイックミラー42は、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を反射する。
【0038】
なお、本実施形態では、ダイクロイックミラー42にて、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を反射し、レーザ光3を透過する場合を例示する。しかしながら、ダイクロイックミラー42の役割は、レーザ光3の照射されたワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうち、ワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を、レーザ光3の光路から分離することにある。従って、ダイクロイックミラー42は、レーザ光3を反射させてワーク2にレーザ光3を向けつつ、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を透過させることで、当該光をレーザ光3の光路から分離させてもよい。
【0039】
ダイクロイックミラー42を透過したレーザ光3は、ガルバノスキャナ43に入射される。ガルバノスキャナ43は、ワーク2に向けてレーザ光3を照射する場合に、その照射位置を調整するものであり、図示しない少なくとも2つの反射ミラー(ガルバノミラー)によって構成される。
【0040】
2つの反射ミラーのうち、一方の反射ミラーはX軸変位モータ(図示せず)に接続されている。このX軸変位モータを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワーク2に対するレーザ光3の照射位置が、ワーク2平面上に設定されるX軸方向に変位可能とされる。
【0041】
また、2つの反射ミラーのうち、他方の反射ミラーはY軸変位モータ(図示せず)に接続されている。このY軸変位モータを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワーク2に対するレーザ光3の照射位置が、ワーク2平面上に設定されるX軸と直行するY軸方向に変位可能とされる。
【0042】
よって、X軸変位モータ及びY軸変位モータを駆動することで、ガルバノスキャナ43により、ワーク2の平面上の所望の位置に、レーザ光3を照射することができる。例えば、ガルバノスキャナ43を用いることで、ワーク2に対するレーザ光3の照射位置を直線状に走査することができる。また、ガルバノスキャナ43を用いることで、ある点を中心にしてその周辺を回転(公転)させながらレーザ光3を照射することも可能である。
【0043】
なお、ガルバノスキャナ43は省略することも可能である。この場合、ワーク2に対するレーザ光3の走査は、ガルバノスキャナ43を用いるのではなく、台座50に対して溶接ノズル40を相対的に移動させることにより行うことも可能である。例えば、固定された台座50に対して溶接ノズル40を移動させることで、レーザ光3の走査が行われてもよいし、固定された溶接ノズル40に対して台座50を移動させることで、レーザ光3の走査が行われてもよい。
【0044】
また、台座50と溶接ノズル40との位置を相対的に直線状に移動させつつ、ガルバノスキャナ43にてある点を中心にレーザ光3を回転(公転)させることで、レーザ光3の照射位置を回転させながら直進させる走査を行うことができる。また、台座50と溶接ノズル40との位置を例えば相対的にX軸方向へ直線状に移動させつつ、ガルバノスキャナ43にてY軸方向にレーザ光の照射位置を移動させることで、レーザ光3の照射位置をジグザグ状に移動させながら走査を行うこともできる。
【0045】
ガルバノスキャナ43を通過したレーザ光3は、集光レンズ44に入力される。集光レンズ44は、平行光を所望の位置に集光させるためのレンズであり、ガルバノスキャナ43を通過したレーザ光3は、この集光レンズ44によってワーク2の照射位置に集光される。
【0046】
この集光レンズ44は、種々の光学部品と協働して絞りや焦点距離が変更可能に構成されている。レーザ溶接装置1は、後述の機械学習装置18の学習に基づき、ワーク2のレーザ溶接の状態に応じてリアルタイムに集光レンズ44の絞りや焦点距離を制御することで、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度分布、具体的には、図1(b)に示す、レーザ光3の強度Aと径Bを変化させることができる。
【0047】
溶接ノズル40は、ワーク2に対するレーザ光3の照射に加え、レーザ溶接時にワーク2が酸化することを抑制するために、レーザ光3の照射位置付近の酸素濃度を下げることを目的として、アシストガスとして窒素ガス等の不活性ガスを吹き付けできる構成となっている。
【0048】
具体的には、溶接ノズル40には、溶接ノズル40の側面と、溶接ノズル40のワーク2と対向する面(以下「底面」と称する)とを導通する、ガス供給路45が設けられている。溶接ノズル40の側面に設けられたガス供給路45の開口には、ガス供給弁61を介して不活性ガスが貯蔵されたガスボンベ60が接続される。
【0049】
ガス供給弁61は、ガスボンベ60から供給される不活性ガスの通路を電気的な信号により開閉し、また、その開口度を調整することで、不活性ガスの吐出量(流量)を調整するためのバルブである。
【0050】
ガス供給弁61が開口されると、その開口度に応じた吐出量でガスボンベ60から不活性ガスがガス供給路45に供給され、溶接ノズル40の底面に設けられたガス供給路45の開口から、不活性ガスが吐出される。そして、その吐出された不活性ガスが、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置付近に吹き付けられる。
【0051】
なお、本実施形態では、溶接ノズル40から不活性ガス(アシストガス)をワーク2へ吹き付ける構成としているが、溶接ノズル40とは別の部分に、ガス供給弁61を介してガスボンベ60と接続された吐出口を設け、当該吐出口から不活性ガスをワーク2におけるレーザ光3の照射位置付近に吹き付ける構成としてもよい。
【0052】
レーザ溶接制御システム10は、レーザ溶接装置1によるワーク2のレーザ溶接を制御するためのシステムである。このレーザ溶接制御システム10は、少なくとも反射ミラー14、バンドパスフィルタ13、カメラ11、コンピュータ12により構成されている。
【0053】
なお、本実施形態において、レーザ溶接制御システム10は、レーザ溶接装置1の構成要素の1つとして説明するが、レーザ溶接制御システム10は、レーザ溶接装置1と別に設けられたものであってもよい。また、レーザ溶接制御システム10は、1つの装置として構成されてもよいし、別個に設けられた複数の部品及び/又は装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0054】
また、本実施形態において、レーザ溶接制御システム10は、レーザ溶接装置1に隣接して設けられ、配線等を介して信号を送受信することで、レーザ溶接制御システム10がレーザ溶接装置1を制御するものとして説明するが、必ずしもそれに限定されるものではない。例えば、レーザ溶接制御システム10は、ネットワークを介してレーザ溶接装置1と信号を送受信することにより、遠隔でレーザ溶接装置1を制御するものであってもよい。
【0055】
また、レーザ溶接制御システム10は、構成する部品/装置の一部が、レーザ溶接装置1に設けられ、残りの部品/装置がレーザ溶接装置1とは別に設けられた形で構成されてもよい。例えば、反射ミラー14、バンドパスフィルタ13、カメラ11がレーザ溶接装置1に設けられ、コンピュータ12がレーザ溶接装置1とは別に設けられてもよい。この場合、コンピュータ12とレーザ溶接装置1との信号の送受信は、ネットワークを介して行われてもよい。
【0056】
反射ミラー14は、溶接ノズル40より出力されたワーク2からの輻射熱に伴う発光を、カメラ11に向けて反射させるためのミラーである。ワーク2にレーザ光3が照射されると、そのレーザ光3の照射位置を中心にワーク2が高温となり、輻射熱に伴う発光が生じる。そのワーク2に照射されるレーザ光3の照射位置を含んで少なくともワーク2上に設定された所定領域2aからの輻射熱に伴う発光は、溶接ノズル40に入射され、集光レンズ44、ガルバノスキャナ43を介して、ダイクロイックミラー42に入射される。
【0057】
ダイクロイックミラー42は、上述の通り、レーザ光3を透過する一方で、ワーク2より輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を反射する。このダイクロイックミラー42にて反射された光が、溶接ノズル40の内部から外部へ出力される。なお、ダイクロイックミラー42が、レーザ光3を反射し、ワーク2より輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる波長λ1の光を透過するものであった場合は、このダイクロイックミラー42にて透過された光が、溶接ノズル40の内部から外部へ出力される。
【0058】
反射ミラー14は、この溶接ノズル40の内部から外部へ出力された光をカメラ11に向けて反射する。
【0059】
バンドパスフィルタ13は、本発明の光学フィルタ手段に相当し、所定の波長の光のみを通過させるフィルタである。このバンドパスフィルタ13は、反射ミラー14とカメラ11との間に設けられている。また、バンドパスフィルタ13は、所定の波長として、コンピュータ12により実現される後述の温度分布画像取得手段15において、ワーク2より輻射熱に伴って発光された光から、所定領域2aにおけるワーク2の温度を計測するために用いられる光の波長λ1が設定される。
【0060】
即ち、このバンドパスフィルタ13によって、少なくともワーク2に設定された所定領域2aを含む領域において、輻射熱に伴って発光され、ダイクロイックミラー42及び反射ミラー14を反射した光のうち、波長λ1の光のみが通過してカメラ11に入射される。ここで、ダイクロイックミラー42では、上述した通り波長λ1の光を反射(又は透過)するものであるが、実際にはダイクロイックミラー42の特性によって波長λ1以外の波長の光も含んでいる。バンドパスフィルタ13は、波長λ1の光のみカメラ11に入射させることを目的として設けられたものである。
【0061】
カメラ11は、本発明の撮像手段に相当し、このバンドパスフィルタ13を通過した波長λ1の光を撮像する。カメラ11を構成するCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の撮像素子(図示せず)の中心は、レーザ光3と同軸に配置されている。これにより、カメラ11にて撮像される画角の中心に、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される。そして、カメラ11は、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置を中心として常に同じ領域を撮像するように構成される。そして、その撮像される領域には、所定領域2aが含まれる。
【0062】
なお、カメラ11により撮像される領域の中心に、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される必要は必ずしもなく、所定領域2aがカメラ11により撮像される領域の中に含まれ、且つ、レーザ光3の照射位置がカメラ11により撮像される領域の任意の位置から動くことなく固定されていればよい。
【0063】
ただし、レーザ光3の照射位置が、カメラ11により撮像される領域の中心とすることで、レーザ光3の照射位置をカメラ11による撮像される領域内の位置に固定しやすくなる。特に、ガルバノスキャナ43を駆動してワーク2に対するレーザ光3の照射位置を変更する場合は、撮像素子の中心をレーザ光3と同軸に配置することで、レーザ光3の照射位置をカメラ11による撮像される領域内の位置に固定することが、極めて容易となる。
【0064】
このカメラ11による撮像により得られた画像は、カメラ11を構成する撮像素子の各画素に入射された波長λ1の光の強度が、画素毎に光電変換により電気信号に変換されたものである。
【0065】
カメラ11は、レーザ溶接装置1によるレーザ溶接が行われている間、その撮像を所定時間(例えば1秒)間隔毎に行い、撮像された画像データをコンピュータ12へ出力する。つまり、カメラ11は、レーザ溶接中のワーク2の状態をリアルタイムに撮像する。
【0066】
コンピュータ12は、主に処理装置と、記憶装置とにより構成され、記憶装置に記憶されたプログラムに基づいて処理装置が処理を実行することにより、各種機能を実現する。レーザ溶接制御システム10において、コンピュータ12は、各種機能として、機械学習装置18としての機能と、制御手段17としての機能を実現している。
【0067】
機械学習装置18は、レーザ溶接装置1において行われるレーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を学習するものであり、温度分布画像取得手段15と、学習手段16とを少なくとも有している。
【0068】
温度分布画像取得手段15は、カメラ11による撮像が行われる毎に、その撮像により得られた画像に基づいて、ワーク2に設定された所定領域2aにおける温度分布画像を取得する。上述した通り、カメラ11により撮像された画像データは、少なくともワーク2に設定された所定領域2aを含む領域において、輻射熱に伴って発光された光のうち、バンドパスフィルタ13を通過した波長λ1の光の強度を、画素毎に電気信号に変換したものである。
【0069】
温度分布画像取得手段15は、黒体が放出する熱輻射、即ち、黒体輻射の温度特性を利用する。ここで、図2を参照しながら、温度分布画像取得手段15による温度分布画像の取得方法について説明する。図2は、黒体輻射強度の波長及び温度依存性を示した図である。
【0070】
図2は、縦軸を黒体輻射の強度、横軸を黒体から輻射される光の波長とし、黒体の温度1000K、2000K、2500K、3000K毎に、黒体から放出される波長の光に対して、その波長の光の黒体輻射強度が示してある。図2に示す通り、例えば波長λ1の光は、黒体の温度に応じて黒体輻射強度が一意に決定される。
【0071】
黒体輻射における光の波長λと温度Tと強度Iとの関係は、次の数1に示すプランクの放射式によって表されることが知られている。ここで、εは放射率、hはプランク定数、cは光速、kはボルツマン定数である。
【0072】
【数1】
ここで、hc>>λkTの条件が成り立つ場合、プランクの放射式は、次の数2に示すウィーンの近似式で表すことができる。
【0073】
【数2】
温度分布画像取得手段15は、このウィーンの近似式に基づいて、カメラ11による撮像により得られた画像データを用いて、その画像データを構成する各画素の強度I(波長λ1の光の強度)から、各々の画素における温度Tを求めることで、所定領域2aにおける温度分布を示した温度分布画像を取得する。
【0074】
なお、波長λ1の光の強度から温度Tの導出は、数2に基づいて算出することも可能であるが、強度Iの値に対する温度Tを示したルックアップテーブル等を用いて導出してもよい。
【0075】
図1に戻り、学習手段16は、温度分布画像取得手段15により取得された所定領域2aの温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定する関係(例えば計算モデル又は関数)を更新することによって、レーザ溶接の状態及び/又は溶接条件を判定することを学習するものである。
【0076】
ここで、図3を参照して、学習手段16の構成について説明する。図3は、学習手段16の構成の一例を概略的に示した概略図である。図3に示す学習手段16は、温度分布画像取得手段15により取得された100×100画素の温度分布画像が入力される。また、学習手段16は、入力された温度分布画像に基づいて、その温度分布に適した溶接条件として判定された、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度(光源レーザ光出力強度)、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A(照射レーザ光強度A、図1(b)参照)及び径B(照射レーザ光径B、図1(b)参照)、レーザ光3のワーク2に対する走査速度、レーザ光3のワーク2に対する走査パターン、レーザ光3が照射される位置周辺に供給するアシストガス(不活性ガス)の流量(アシストガス流量)を出力する。
【0077】
レーザ光3のワーク2に対する走査パターンとしては、「直線」、「回転」、「ジグザグ」等が出力される。「直線」は、ガルバノスキャナ43を駆動することなく、台座50に対して溶接ノズル40を相対的に直線状に移動させることで、レーザ光3の照射位置を一定方向に直線状に移動させる走査パターンである。
【0078】
「回転」は、ガルバノスキャナ43にてある点を中心にレーザ光3を回転(公転)させながら、台座50に対して溶接ノズル40を相対的に直線状に移動させることで、レーザ光3の照射位置を回転させながら直線状に移動させる走査パターンである。
【0079】
「ジグザグ」は、ガルバノスキャナ43にて、所定方向に所定範囲を直線状に往復移動させながら、台座50に対して溶接ノズル40を相対的に前記所定方向と垂直な方向に直線状に移動させることで、レーザ光3の照射位置をジグザグ状に移動させる走査パターンである。
【0080】
また、本発明において、アシストガスの流量は、アシストガスの流速を含む概念であり、学習手段16からは実際のアシストガスの流量ではなく、アシストガスの流速であってもよい。
【0081】
この学習手段16は、3層以上の多層ニューラルネットワーク16aにより構成されている。また、学習手段16は、多層ニューラルネットワーク16aの入力側に、前処理手段16bを有している。
【0082】
学習手段16は、温度分布画像取得手段15により取得された所定領域2aの温度分布画像をそのまま多層ニューラルネットワーク16aへ入力して学習するのではなく、温度分布画像を前処理して、温度分布画像の大まかな特性を抽出し、データ量を低減させる等、多層ニューラルネットワーク16aにおける学習に適した形に変換する。前処理手段16bは、その前処理を実行するもので、畳み込み層16b1、活性化層16b2、プーリング層16b3を備えている。
【0083】
畳み込み層16b1は、入力された100×100画素の温度分布画像に対して例えば3×3画素のフィルタを1画素ずつずらしながら演算を繰り返し行って、畳み込み処理を行う層である。この畳み込み処理により、温度分布画像の大まかな特性が抽出される。畳み込み層16b1により畳み込み処理が行われた画像は、98×98画素である。
【0084】
活性化層16b2は、畳み込み層16b1の出力に対して、学習に適した形に変換する層であり、ルックアップテーブルにて構成される。プーリング層16b3は、活性化層16b2から出力されたデータを間引き処理することで、データ量を削減する層である。図3に示す例では、プーリング層16b3の間引き処理された画像は、49×49画素である。この画像S3が、多層ニューラルネットワーク16aに入力される。
【0085】
多層ニューラルネットワーク16aは、入力層16a1と、1層以上の隠れ層16a2と、出力層16a3とを備える。入力層16a1は、入力された画像(温度分布画像S1に対して前処理手段16bにて前処理された後の画像)における各画素の値を表した層である。入力層16a1には、入力された画像の画素数(49×49画素=2401画素)分のユニットX1~X2041が設けられており、各々のユニットに、対応する画素の値が入力される。また、入力層16a1には、入力された画像の各画素の値とは別に、バイアス値が格納されたユニットであるバイアスXも設けられている。
【0086】
隠れ層16a2は、入力層16a1と出力層16a3との間に介在する中間層である。図3に示す例では、隠れ層16a2は1層であり、入力層16a1の各ユニットから重み付けされた値が加算されて入力される512個のユニットH1~H512と、バイアス値が格納されたユニットであるバイアスHとが設けられている。
【0087】
隠れ層16a2の各ユニット(バイアスHを除く)Hn(n=1~512の自然数)の値は、次の式で表される。なお、次の式において、w(m,n)は、入力層16a1のユニットXm(m=1~2401の自然数)における隠れ層16a2のユニットHnに対する重み付け係数である。また、w(b1,n)は、入力層16a1のバイアス値(オフセット値)が格納されたユニット(バイアスX)における隠れ層16a2のユニットHnに対する重み付け係数である。
【0088】
Hn=w(1,n)×X1+w(2,n)×X2+…+w(2401,n)×X2401+w(b1,n)×バイアスX
出力層16a3は、レーザ溶接の溶接条件を出力する6個のユニットA1~A6が用意されている。具体的には、ユニットA1は、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度(光源レーザ光出力強度)を出力する。ユニットA2は、レーザ光3が照射される位置周辺に供給するアシストガス(不活性ガス)の流量(アシストガス流量)を出力する。
【0089】
ユニットA3は、レーザ光3のワーク2に対する走査速度を出力する。ユニットA4は、レーザ光3のワーク2に対する走査パターンを出力する。ユニットA5は、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A(照射レーザ光強度A、図1(b)参照)を出力する。ユニットA6は、ワーク2に照射されるレーザ光3の径B(照射レーザ光径B、図1(b)参照)を出力する。
【0090】
ユニットA1~A6から出力される値は、いずれも各々の出力が符号化されたものであり、後述の制御手段17にて各ユニットA1~A6からの出力(値)に対してレーザ溶接条件が解釈されて、レーザ溶接の制御が行われる。
【0091】
この出力層16a3の各ユニットAo(o=1~6の自然数)の値は、次の式で表される。なお、次の式において、w(o,m)は、隠れ層16a2のユニットHnにおける出力層16a3のユニットAoに対する重み付け係数である。また、また、w(b2,o)は、隠れ層16a2のバイアス値(オフセット値)が格納されたユニット(バイアスH)における出力層16a3のユニットAoに対する重み付け係数である。
【0092】
Ao=w(1,o)×H1+w(2,o)×H2+…+w(512,o)×H512+w(b2,o)×バイアスH
ここで、図4を参照しながら、学習手段16の動作について説明する。図4(a)は、学習手段16の学習に用いられる学習データ(教示データ)の一例を模式的に示した図である。図4(b)は、カメラ11においてリアルタイムに撮像した画像データから、温度分布画像取得手段15によって取得された所定領域2aの温度分布画像を学習手段16へ入力した場合の学習手段16からの出力の一例を模式的に示した図である。
【0093】
学習手段16では、図4(a)に示すような学習データを用いて、予め学習が行われる。学習データは、ワーク2の所定領域2aの温度分布画像のパターンと、ワーク2の所定領域2aの温度分布画像がそのパターンである場合に適したレーザ溶接の溶接条件とを対応付けて規定したものである。
【0094】
学習データに規定されるレーザ溶接の溶接条件は、学習手段16の出力でもある、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度(光源レーザ光出力強度)、レーザ光3が照射される位置周辺に供給するアシストガス(不活性ガス)の流量、レーザ光3のワーク2に対する走査速度、レーザ光3のワーク2に対する走査パターン、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A(照射レーザ光強度A、図1(b)参照)、ワーク2に照射されるレーザ光3の径B(照射レーザ光径B、図1(b)参照)である。
【0095】
そのような学習データが、温度分布画像のパターンを変えて複数用意されており、用意された複数の学習データを用いて、学習手段16の学習が行われる。即ち、学習手段16は、まず、学習モデルで使用される各種パラメータに予め定められた初期値を設定する。
【0096】
そのうえで、データで示される温度分布画像を学習手段16に入力した場合に、その学習データに対応付けられたレーザ溶接の溶接条件がそれぞれ学習手段16より出力されるように、多層ニューラルネットワーク16a内の重み付け係数w(m,n)、w(b1、n)、w(n,o)、w(b2,o)やバイアスX、バイアスHの値等、学習手段16の学習モデルに使用される各種パラメータを調整する。
【0097】
重み付け係数の調整は、例えば、出力値から入力値が正しいか否かを検算するバックプロパゲーションによって行われ、勾配降下法等で自動最適化する。学習手段16の学習は、この学習データの数が多いほど、入力に対する出力の精度が高まる。
【0098】
レーザ溶接制御システム10は、レーザ溶接装置1にてレーザ溶接を行っている最中に、このようにして学習が行われた学習手段16を用いて、その時のワーク2の所定領域2aの温度分布に最適なレーザ溶接の溶接条件をリアルタイムに判定する。
【0099】
即ち、カメラ11によって所定時間(例えば、1秒)間隔毎に少なくとも所定領域2aを含んで撮像された画像(輻射熱に伴う発光のうち、バンドパスフィルタ13を通過した波長λ1の光の強度を画素毎に示した画像)に基づいて、ワーク2の所定領域2aにおける温度分布画像が温度分布所定手段により得られる。その温度分布画像を学習が行われた学習手段16に入力することで、図4(b)に示すように、その温度分布画像に適したレーザ溶接の溶接条件をユニットA1~A6(図3参照)から出力する。
【0100】
この、カメラ11による撮像から学習手段16によるレーザ溶接の溶接条件の出力の流れは、レーザ溶接が行われている間、上記の所定時間間隔毎に繰り返し行われる。つまり、リアルタイムで、ワーク2の所定領域2aの温度分布に適したレーザ溶接の溶接条件の判定が行われることになる。この判定結果を示す学習手段16のユニットA1~A6は、制御手段17に入力される。
【0101】
図1に戻り、説明を続ける。制御手段17は、学習手段16により判定されたレーザ溶接の溶接条件に基づいて、レーザ溶接装置1におけるレーザ溶接をフィードバック制御する。
【0102】
具体的には、制御手段17は、学習手段16の符号化されたユニットA1~A6の値から、現在のレーザ溶接の状態に基づいたレーザ溶接の溶接条件を解釈する。そして、制御手段17は、その他のレーザ溶接の環境(それまでのレーザ溶接の溶接条件、室温、溶接位置のずれ等)に応じて、学習手段16にて判定されたレーザ溶接の各溶接条件に補正値を加算する。制御手段17は、補正値が加算されたレーザ溶接の溶接条件でレーザ溶接が行われるように、光源20、溶接ノズル40、ガス供給弁61等のレーザ溶接装置1の各部位をリアルタイムにフィードバック制御する。
【0103】
例えば、制御手段17は、学習手段16の判定に基づいて得られた、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度(光源レーザ光出力強度)となるように、光源20をフィードバック制御する。制御手段17は、学習手段16の判定に基づいて得られた、レーザ光3が照射される位置周辺に供給するアシストガス(不活性ガス)の流量となるように、ガス供給弁61をフィードバック制御する。
【0104】
制御手段17は、学習手段16の判定に基づいて得られた、レーザ光3のワーク2に対する走査速度となるように、溶接ノズル40及び/又は台座50をフィードバック制御する。制御手段17は、学習手段16の判定に基づいて得られた、レーザ光3のワーク2に対する走査パターンとなるように、溶接ノズル40及び/又は台座50とガルバノスキャナ43とをフィードバック制御する。
【0105】
制御手段17は、学習手段16の判定に基づいて得られた、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A(照射レーザ光強度A、図1(b)参照)及び径B(照射レーザ光径B、図1(b)参照)となるように、集光レンズ44等をフィードバック制御する。
【0106】
以上説明した通り、本実施形態における機械学習装置18、レーザ溶接制御システム10、レーザ溶接装置1によれば、次の作用効果を奏する。
【0107】
(ア)レーザ溶接制御システム10は、ワーク2に照射されるレーザ光3の照射位置を含んで少なくともワーク2上に設定された所定領域2aからの輻射熱に伴う発光のうち、ワーク2の温度を計測するための波長λ1の光がバンドパスフィルタ13を通過する。そして、少なくとも所定領域2aからの輻射熱に伴う発光のうち、バンドパスフィルタ13を通過した光が、カメラ11により撮像される。そのカメラ11による撮像により得られた画像は、機械学習装置18に入力される。
【0108】
機械学習装置18では、所定領域2aにおける温度分布画像が温度分布画像取得手段15により取得され、その温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の溶接条件を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の溶接条件を判定することを、学習手段16によって学習する。そして、その学習手段16により判定されたレーザ溶接の溶接条件に基づいて、レーザ溶接装置1におけるレーザ溶接が制御手段17により制御される。
【0109】
このように、学習手段16の入力に用いるデータは、リアルタイムに撮像されたワーク2の所定領域2aからの輻射に伴う発光に基づいて得られる温度分布画像である。温度分布画像を用いることで、他の要因、例えば、レーザ光3の照射に伴って発生するプラズマ発光、照射したレーザ光3の散乱光、ワーク2に差し込んだ太陽光・室内灯・溶接工場内のアーク放電の光といった、種々のノイズの影響を受けることなく、学習手段16による学習と、レーザ溶接の溶接条件の判定を行うことができる。よって、リアルタイムで精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できるという効果がある。
【0110】
(イ)学習手段16の学習に基づいて制御される溶接条件は、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A及び径B、レーザ光3の走査速度、レーザ光3の走査パターン、レーザ光3が照射される位置周辺に供給する不活性ガス(アシストガス)の流量である。よって、溶接条件に含まれているこれらのパラメータをリアルタイムで精度高く、フォードバック制御できるので、より安定した品質のレーザ溶接を実現できる。
【0111】
(ウ)レーザ溶接制御システム10では、温度分布画像取得手段15において、ワーク2の温度を取得するために用いる波長の光として、1つの波長λ1の光を用いている。これにより、その波長λ1の光を通過させる光学フィルタ手段として少なくとも1つのバンドパスフィルタ13と、少なくとも所定領域2aからの輻射熱に伴う発光のうち、バンドパスフィルタ13を通過した波長λ1の光を撮像する撮像手段として、少なくとも1つのカメラ11と、を用意すればよく、ワーク2の温度を取得するために必要な部品を少なくできる。よって、温度分布画像により示される所定領域内の温度を低コストにて求めることができる。
【0112】
(エ)レーザ溶接装置1は、レーザ溶接制御システム10によってワーク2のレーザ溶接が制御されるので、レーザ溶接制御システム10が奏する効果を享受できる。
【0113】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0114】
例えば、上記実施形態では、温度分布画像取得手段15が所定領域2aの温度分布を取得するときに、その所定領域2aから輻射熱に伴って発光された光のうち、1つの波長λ1の光の強度から温度を取得する場合について説明した。これに対して、温度分布画像取得手段15は、所定領域2aから輻射熱に伴って発光された光のうち、第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度の比から温度を取得してもよい。
【0115】
即ち、図2に示す通り、黒体から輻射される光において、異なる波長である第1の波長λ1と、第2の波長λ2それぞれの光の強度の比は、黒体の温度によって異なる。第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度の比と温度との関係は、次の数3によって表すことができる。ここで、I1は、第1の波長λ1の光の強度、I2は第2の波長λ2の光の強度である。
【0116】
【数3】
温度分布画像取得手段15は、第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度I1、I2の比から、数3に示す式に基づいて温度を取得する。
【0117】
ここで、図5を参照して、温度分布画像取得手段15に対して、第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度I1、I2を入力する構成について説明する。図5は、レーザ溶接制御システム10の変形例を概略的に示した概略図である。なお、図5において、上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、以下において説明を省略、又は、簡略化して説明する。
【0118】
この変形例に係るレーザ溶接制御システム10は、上記実施形態に係るレーザ溶接制御システム10の反射ミラー14、バンドパスフィルタ13、カメラ11に代えて、ビームスプリッタ14a、反射ミラー14b、第1バンドパスフィルタ13a、第2バンドパスフィルタ13b、第1カメラ11a、第2カメラ11bを有している。
【0119】
この変形例では、溶接ノズル40のダイクロイックミラー42が、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光とを反射(又は透過)し、その第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光とが溶接ノズル40の内部から外部へ出力される。溶接ノズル40の外部へ出力された光は、ビームスプリッタ14aに入射される。ビームスプリッタ14aは、溶接ノズル40から外部へ出力された光を2つの光に分割するものである。なお、ビームスプリッタ14aに代えて、ダイクロイックミラーを用いて、第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光とを分割してもよい。
【0120】
ビームスプリッタ14aにて分割された一方の光は、第1バンドパスフィルタ13aに入射される。第1バンドパスフィルタ13aは、本発明の第1光学フィルタ手段に相当し、第1の波長λ1の光のみを通過させるフィルタである。この第1バンドパスフィルタ13aは、ビームスプリッタ14aと第1カメラ11aとの間に設けられている。この第1バンドパスフィルタ13aによって、少なくともワーク2に設定された所定領域2aを含む領域において、輻射熱に伴って発光され、ビームスプリッタ14aを反射した光のうち、第1の波長λ1の光のみが通過して第1カメラ11aに入射される。
【0121】
第1カメラ11aは、本発明の第1撮像手段に相当し、第1バンドパスフィルタ13aを通過した第1の波長λ1の光を撮像する。第1カメラ11aは、上記実施形態のカメラ11と同様に、第1カメラ11aにて撮像される画角の中心に、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される。そして、第1カメラ11aは、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置を中心として常に同じ領域を撮像するように構成される。そして、その撮像される領域には、所定領域2aが含まれている。
【0122】
なお、第1カメラ11aにより撮像される領域の中心に、ワーク2におけるレーザ光3の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される必要は必ずしもなく、所定領域2aが画角に含まれていれば、レーザ光3の照射位置が第1カメラ11aにより撮像される領域の任意の位置に固定されていればよい。
【0123】
第1カメラ11aによる撮像により得られた画像は、第1カメラ11aを構成する撮像素子の各画素に入射された第1の波長λ1の光の強度が、画素毎に光電変換により電気信号に変換されたものである。
【0124】
第1カメラ11aは、レーザ溶接装置1によるレーザ溶接が行われている間、その撮像を所定時間(例えば1秒)間隔毎に行い、撮像された画像データをコンピュータ12へ出力する。つまり、第1カメラ11aは、レーザ溶接中のワーク2の状態をリアルタイムに撮像し、ワーク2の所定領域2aを含む領域において輻射熱に伴って発光された光のうち第1の波長λ1の光の強度を温度分布画像取得手段15へ出力する。
【0125】
一方、ビームスプリッタ14aにて分割された他方の光は、反射ミラー14にて反射され、本発明の第2光学フィルタ手段に相当する第2バンドパスフィルタ13bを介して、本発明の第2撮像手段に相当する第2カメラ11bへ入射される。第2バンドパスフィルタ13b及び第2カメラ11bの構成は、第1バンドパスフィルタ13a及び第1カメラ11aと同様のものである。
【0126】
ただし、第2バンドパスフィルタ13bは、通過する光の波長が第1バンドパスフィルタ13aと異なっており、第2の波長λ2の光を通過させる。そして、第2カメラ11bは、第1カメラ11aにおける撮像タイミングと同期しながら、レーザ溶接中のワーク2の状態をリアルタイムに撮像し、ワーク2の所定領域2aを含む領域において輻射熱に伴って発光された光のうち第2の波長λ2の光の強度を温度分布画像取得手段15へ出力する。
【0127】
温度分布画像取得手段15は、第1カメラ11aから入力された第1の波長λ1の光の強度と、第2カメラ11bから入力された第2の波長λ2の光の強度とを用いて、上述した方法によって所定領域2aの温度分布を取得する。
【0128】
このように、ワーク2上の所定領域2aから輻射熱に伴って発光された光のうち、2つの波長λ1、λ2の光を使用して所定領域2aにおける温度分布画像が取得されるので、温度分布画像により示される所定領域2a内の温度の信頼性を高めることができる。よって、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できる。
【0129】
上記実施形態及び上記変形例では、機械学習装置18の学習手段16が、温度分布画像取得手段15により取得された温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の溶接条件を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の溶接条件を判定するものであった。これに代えて、又はこれに加えて、機械学習装置18の学習手段16が、温度分布画像取得手段15により取得された温度分布画像に基づいて、レーザ溶接の状態を判定する関係を更新することによって、レーザ溶接の状態を判定するものであってもよい。
【0130】
レーザ溶接の状態としては、例えば、ワーク2として突き合わされた板材又は重ね合わされた板材が、レーザ光3の照射によって溶融した領域が貫通しているのか、非貫通であるのかといった状態であってもよいし、溶接のビート幅を示すものであってもよいし、溶接の欠陥が生じ得る可能性の度合いを示すものや、現在生じている可能性のある欠陥の内容を示すものであってもよい。また、それぞれの欠陥の内容ごとに、その欠陥が生じ得る可能性の度合いを示すものであってもよい。欠陥の内容としては、例えば、アンダーフィル、アンダーカット、スパッタの状態等が挙げられる。
【0131】
制御手段17は、リアルタイムで学習手段16により判定されたレーザ溶接の状態に基づいて、レーザ溶接の状態が目標の状態となるようにレーザ溶接装置1におけるレーザ溶接の溶接条件を調整するフィードバック制御を行う。これにより、リアルタイムで精度高く、レーザ溶接の状態が目標の状態となるようにレーザ溶接が実現できる。
【0132】
上記実施形態及び上記変形例では、レーザ溶接装置1にて1個の光源20を使用して、図1(a)に示す強度分布を持ったレーザ光3をワーク2に照射し、レーザ溶接制御システム10は、このレーザ光3の強度A及び径Bを機械学習装置18による機械学習を介してフィードバック制御する場合について説明した。これに対し、光源を複数設け、ワーク2に照射するレーザ光3を、複数の光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成して、レーザ溶接を行うものであってもよい。
【0133】
ここで、図6を参照して、2つの光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成されるレーザ光3の一例を説明する。図6(a)は、2つの光源から出力されるレーザ光を組み合わせて形成したレーザ光3の強度分布の一例を示した図である。図6(b)は、図6(a)に示したレーザ光3における主レーザ光の強度Aと径B、主レーザ光に対して副レーザ光が形成される位置を示す半径C、副レーザ光の強度Dと径Eを示した図である。図6(a)に示すレーザ光3は、一方の光源で、レーザ光3の中心にガウシアンビーム状の主レーザ光を形成し、他方の光源で、主レーザ光の周囲を囲むリングビーム状の副レーザ光を形成したマルチビームである。
【0134】
レーザ溶接制御システム10は、これら各光源から出力されるレーザ光の出力バランスの判定を学習手段16に学習させ、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。また、温度分布画像に基づいてリアルタイムに学習手段16により判定されたレーザ溶接の状態に基づいて、制御手段17が、各光源から出力されるレーザ光の出力バランスをフィードバック制御してもよい。
【0135】
例えば、図6(a)を例として、具体的に説明すると、主レーザ光を形成する光源の出力強度と、副レーザ光を形成する光源の出力強度との判定を学習手段16に学習させ、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。また、温度分布画像に基づいてリアルタイムに学習手段16により判定されたレーザ溶接の状態に基づいて、制御手段17が、主レーザ光を形成する光源の出力強度と、副レーザ光を形成する光源の出力強度とをフィードバック制御してもよい。
【0136】
また、レーザ溶接制御システム10は、図6(b)に示す、主レーザ光の強度Aと径B、主レーザ光に対して副レーザ光が形成される位置を示す半径C、副レーザ光の強度Dと径Eの判定を学習手段16に学習させ、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。また、温度分布画像に基づいてリアルタイムに学習手段16により判定されたレーザ溶接の状態に基づいて、制御手段17が、主レーザ光の強度Aと径B、主レーザ光に対して副レーザ光が形成される位置を示す半径C、副レーザ光の強度Dと径Eをフィードバック制御してもよい。
【0137】
なお、複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンとして、上記のマルチビームに代えて、又は、上記のマルチビームに加えて、一方の光源で、レーザ光3の中心にトップハットビーム状の主レーザ光を形成し、他方の光源で、主レーザ光の周囲を囲むリングビーム状の副レーザ光を形成したマルチビームが用いられてもよい。この場合も、トップハットビーム状の主レーザ光の強度Aと径Bとが、学習手段16によって学習され、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。
【0138】
また、複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンとして、上記のマルチビームに代えて、又は、上記のマルチビームに加えて、複数の光源それぞれで形成されるシングルビームが組み合わされたパターンを含んでもよい。この場合、各々のシングルビームがガウシアンビーム又はトップハットビームのいずれかに固定されていてもよいし、ガウシアンビームとトップハットビームとが組み合わされたパターンであってもよい。そして、各々のシングルビームの形状(ガウシアンビームであるのか、トップハットビームであるのか)、強度及び径の少なくともいずれかが、学習手段16によって学習され、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。
【0139】
また、複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンとして、ガウシアンビーム状の主レーザ光のみで形成されるガウシアンシングルビーム、トップハットビーム状の主レーザ光のみで形成されるトップハットシングルビーム、リングビーム状の副レーザ光のみで形成されるリングビームの少なくともいずれかを含んでもよい。この場合、副レーザ光を形成する光源の出力強度をゼロに設定する、又は、副レーザ光の強度Dをゼロに設定するで、ガウシアンシングルビーム又はトップハットシングルビームを形成してもよい。また、主レーザ光を形成する光源の出力強度をゼロに設定する、又は、主レーザ光の強度Aをゼロに設定するで、リングビームを形成してもよい。
【0140】
また、複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンを学習手段16によって学習し、温度分布画像に基づいてリアルタイムにこれらの判定を行うようにしてもよい。
【0141】
このように、複数の光源から出力される各レーザ光の出力バランス及び/又は複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンが、学習手段16による温度分布画像を用いた判定に基づいて、目標のレーザ溶接品質となるように各レーザ光の出力バランス及び/又は複数の光源を組み合わせて形成されるレーザ光3のパターンがフィードバック制御されながら、レーザ溶接が行われる。よって、より安定した品質のレーザ溶接を実現できる。
【0142】
また、溶接条件として、複数の光源から出力される各レーザ光の出力バランスの時間的な変化のパターンを少なくとも含めてもよい。各レーザ光の出力バランスは、レーザ溶接の状態に応じて、その状態に適した時間的な変化のさせ方がある。学習手段16による温度分布画像を用いた判定に基づいて、目標のレーザ溶接品質となるように各レーザ光の出力バランスの時間的な変化をフォードバック制御することで、レーザ光3が照射される所定領域2aの温度分布に基づいて、その時々に適したパターンで、各レーザ光の出力バランスをゆっくり変化させたり、瞬間的に変化させたりしながら、レーザ溶接を行うことができる。よって、より安定した品質のレーザ溶接を実現できる。
【0143】
上記実施形態及び上記変形例では、学習手段16の学習によって判定されるレーザ溶接の溶接条件、又は、学習手段16の判定に基づいて制御手段17によりフィードバック制御されるレーザ溶接の溶接条件として、光源20から出力されるレーザ光3の出力強度(光源レーザ光出力強度)、レーザ光3が照射される位置周辺に供給するアシストガス(不活性ガス)の流量、レーザ光3のワーク2に対する走査速度、レーザ光3のワーク2に対する走査パターン、ワーク2に照射されるレーザ光3の強度A(照射レーザ光強度A、図1(b)参照)、ワーク2に照射されるレーザ光3の径B(照射レーザ光径B、図1(b)参照)を含むことについて説明したが、必ずしもこれらすべてを備える必要はなく、少なくともいずれか1つを含むものであってよい。また、これら以外のレーザ溶接の溶接条件を少なくとも1つ含むものであってもよい。レーザ溶接制御システム10は、溶接条件に含まれているパラメータをリアルタイムで精度高くフォードバック制御できるので、より安定した品質のレーザ溶接を実現できる。
【0144】
上記実施形態及び変形例において、学習手段16の構成として図3に示す学習手段16を例示したが、これはあくまでも一例であり、本発明の主な特徴は、その学習手段16への入力を温度分布画像としたことにある。つまり、学習手段16は、入力を温度分布画像とすることで、図3に示したものの他、公知のものを使用可能である。例えば、多層ニューラルネットワーク16aにおいて、隠れ層16a2を2層以上としたディープラーニングによって学習手段16による学習が行われてもよい。これにより、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できる。
【0145】
また、学習手段16は、独立した複数の学習モデルを含み、各々で学習を行って、それらの判定結果に基づいて、最終的な判定を行うアンサンブル学習を行うものであってもよい。これによっても、より精度高くレーザ溶接の溶接条件をフィードバック制御できる。
【符号の説明】
【0146】
1 レーザ溶接装置
2 ワーク(溶接対象物)
2a 所定領域
3 レーザ光
10 レーザ溶接制御システム
13 バンドパスフィルタ(光学フィルタ手段)
13a 第1バンドパスフィルタ(第1光学フィルタ手段)
13b 第2バンドパスフィルタ(第2光学フィルタ手段)
11 カメラ(撮像手段)
11a 第1カメラ(第1撮像手段)
11b 第2カメラ(第2撮像手段)
15 温度分布画像取得手段
16 学習手段
17 制御手段
18 機械学習装置
20 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6