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  • 特開-流体供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127340
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】流体供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230906BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/145 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031068
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】袴田 典孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝平
(72)【発明者】
【氏名】國分 友隆
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF04
4C066HH02
4C066HH03
4C066HH13
4C066QQ24
4C066QQ85
4C066QQ92
4C066QQ95
(57)【要約】
【課題】流体の所望の供給速度を精度良く制御しつつ、構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる流体供給装置を提供する。
【解決手段】流体供給装置10は、ポンプ15と、モータ13と、1つの単電池11と、昇圧回路51と、蓄電デバイス55と、制御部19とを備える。ポンプ15は、シリンジと、シリンジの内部の薬液を吐出口から外部に供給するプランジャとを備える。モータ13はプランジャをシリンジの内部で往復移動させる動力を出力する。昇圧回路51は1つの単電池11からの入力電圧を昇圧して出力する。蓄電デバイス55は昇圧回路51の出力電圧によって充電されるとともに、モータ13に電力を供給する。制御部19は、モータ13の駆動に応じた薬液の投与量の1単位を変化させることによって薬液の投与速度を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給口が形成された筒状部材と、
相対的に前記筒状部材内を移動することによって前記筒状部材の内部の前記流体を前記供給口から外部に供給する柱状部材と、
前記柱状部材の相対移動の動力を出力するアクチュエータと、
1つの電池と、
前記1つの電池からの入力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力電圧によって充電されるとともに、前記アクチュエータに電力を供給する蓄電デバイスと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御部と
を備える
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記アクチュエータの駆動に応じた前記流体の供給量の1単位を変化させることによって前記流体の供給速度を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記昇圧回路の出力側の負荷電流を規制する電流制限回路を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記流体の供給量の1単位に対応する前記アクチュエータの駆動の前後の少なくともいずれかで補助的な励磁を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、シリンジポンプと、ぜんまいばねと、ぜんまいばねの動力をシリンジポンプに伝達する輪列と、輪列の回転周期によってシリンジポンプの流体吐出速度を制御する制御回路とを備える流体吐出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば、シリンジポンプと、電源としての電池と、電池の電力によって駆動されるモータと、モータの動力をシリンジポンプに伝達する歯車機構と、モータを制御する制御部とを備える薬液投与装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-110712号公報
【特許文献2】再公表WO2018/168988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した流体吐出装置のようにぜんまいばねを動力とする場合、シリンジポンプの流体吐出速度を任意に安定的に精度良く制御することができないおそれがある。
また、上記した薬液投与装置のようにモータを動力とする場合、所望の投与速度を確保するための消費電力に応じて電池の電圧(公称電圧等)及び個数を規定する必要が生じるとともに、所望の期間に亘る動作を維持するための電池容量等に応じた電池の個数及び交換タイミングを規定する必要が生じる。例えば、所望の投与速度及び動作寿命を確保するために複数の電池を備えることが必要となる場合、複数の電池を配置するためのスペースが増大するとともに、全ての電池をまとめて交換する必要があることによって、構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
【0005】
本発明は、流体の所望の供給速度を精度良く制御しつつ、構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる流体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る流体供給装置は、流体の供給口が形成された筒状部材と、相対的に前記筒状部材内を移動することによって前記筒状部材の内部の前記流体を前記供給口から外部に供給する柱状部材と、前記柱状部材の相対移動の動力を出力するアクチュエータと、1つの電池と、前記1つの電池からの入力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、前記昇圧回路の出力電圧によって充電されるとともに、前記アクチュエータに電力を供給する蓄電デバイスと、前記アクチュエータの駆動を制御する制御部とを備える。
【0007】
上記によれば、昇圧回路及び蓄電デバイスを備えることによって、複数の電池を必要とせずにアクチュエータを駆動するための所望の電圧及び電流を確保することができる。1つの電池のみを備えることによって、例えば複数の電池を備える場合に比べて、電池を配置するためのスペースを削減し、電池交換時に要する費用が嵩むことを抑制することができる。アクチュエータの定格電圧よりも小さな出力電圧の電池を備える場合であってもアクチュエータを適正に駆動することができ、高価な電池を必要とせずに、装置構成に要する費用を削減することができる。電源として1つの安価な電池のみを備えることによって、装置を小型化することができるとともに、維持費用を削減することができる。
【0008】
上記の流体供給装置では、前記制御部は、前記アクチュエータの駆動に応じた前記流体の供給量の1単位を変化させることによって前記流体の供給速度を変更してもよい。
【0009】
上記によれば、流体の供給量の1単位を変化させることによって流体の供給速度を変更する制御部を備えることによって、流体の所望の供給を容易に維持することができる。例えば供給の時間間隔を変化させることによって供給速度を変更する場合に比べて、蓄電デバイスの充電に要する時間を的確に確保することができる。また、例えばアクチュエータを間欠的に駆動する場合であっても、供給量の1単位を増大させることによって供給速度を増大させることができる。
【0010】
上記の流体供給装置は、前記昇圧回路の出力側の負荷電流を規制する電流制限回路を備えてもよい。
【0011】
上記によれば、アクチュエータに流れる電流(負荷電流)を規制する電流制限回路を備えることによって、負荷電流の増大に伴って電池の出力電圧が低下することを防ぐことができる。
【0012】
上記の流体供給装置では、前記制御部は、前記流体の供給量の1単位に対応する前記アクチュエータの駆動の前後の少なくともいずれかで補助的な励磁を行ってもよい。
【0013】
上記によれば、制御部は、補助的な励磁によってアクチュエータの駆動準備及び位置精度の確保の少なくともいずれかを行うことができる。制御部は、流体の供給量の1単位を増大させることによって供給速度を増大させるので、例えばアクチュエータの駆動回数を増大させることによって供給速度を増大させる場合に比べて、補助的な励磁の実行回数の増大に伴う電力消費の増大を抑制することができる。また、補助的な励磁の実行回数の増大を抑制することにより、流体の供給速度を容易に増大させることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記の流体供給装置によれば、流体の所望の供給速度を精度良く制御しつつ、構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態での流体供給装置の機能構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施形態での流体供給装置の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の流体供給装置について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態の流体供給装置10の機能構成を示すブロック図である。図2は、実施形態での流体供給装置10の構成を示す斜視図である。
実施形態の流体供給装置10は、例えば、流体としての薬液等の液体を間欠的に適宜の容量ずつ吐出する分注装置である。流体供給装置10は、例えば、人体に投与されるインスリン等の薬液を吐出する薬液投与装置である。
【0017】
図1に示すように、流体供給装置10は、1つの単電池11と、モータ13と、ポンプ15と、駆動回路17と、制御部19とを備える。図2に示すように、流体供給装置10は、単電池11、駆動回路17及び制御部19が実装される基板21と、モータ13、ポンプ15及び基板21が配置されるケース23とを備える。
なお、以下では、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば図2に示すように、Z軸方向は、流体供給装置10の厚さ方向に平行であり、Y軸方向は、流体供給装置10の短手方向に平行であり、X軸方向は、流体供給装置10の長手方向に平行である。
【0018】
単電池11は、例えば、ボタン型の一次電池又は二次電池である。単電池11の所定公称電圧は、例えば、1.5V等である。
モータ13は、例えば、ステッピングモータである。モータ13は、単電池11の電力供給に基づいて、ポンプ15を駆動する動力を発生させる。
ポンプ15は、例えば、プランジャポンプ等の容積型のポンプである。ポンプ15は、モータ13から出力される動力に基づく往復運動によって薬液を流動させる。
【0019】
図2に示すように、ポンプ15は、例えば、シリンジ31と、プランジャ33と、動力伝達機構35と、ばね部材37とを備える。
シリンジ31の外形は、例えば、円筒状である。シリンジ31は、例えば、中心軸線に沿った方向(軸方向)での両端のうち基端側が開放された円筒型容器である。シリンジ31は、例えば、軸方向をX軸方向に平行とした状態でケース23に固定されている。シリンジ31の軸方向の両端のうち先端側を覆う先端部には、シリンジ31の内部の薬液を外部に吐出させるための吐出口31aが形成されている。例えば、シリンジ31の先端部には、吐出口31aに通じるとともに穿刺針等を備えるチューブ39が接続されている。シリンジ31の吐出口31aからチューブ39内に吐出される薬液は、チューブ39の先端に設けられる穿刺針等によって人体に投与される。
【0020】
プランジャ33の外形は、例えば、円柱状である。プランジャ33は、例えば、軸方向に沿って順次に設けられるガスケット部33aと、軸部33bと、支持部33cとを備える。
ガスケット部33aは、シリンジ31の軸方向の基端側から先端側に向かってシリンジ31の内部に挿入されている。ガスケット部33aは、シリンジ31との間をシールした状態で軸方向に往復移動する。ガスケット部33aは、シリンジ31の基端側から先端側に向かう移動によってシリンジ31の内部の薬液を吐出させる。
軸部33bは、軸方向の両端でガスケット部33a及び支持部33cに固定されている。支持部33cは、動力伝達機構35及びばね部材37に接続されている。支持部33cは、動力伝達機構35及びばね部材37から伝達される動力によって、軸部33b及びガスケット部33aとともに軸方向に移動する。
【0021】
動力伝達機構35は、モータ13の動力をプランジャ33に伝達する。動力伝達機構35は、例えば、歯車機構41と、送り機構43とを備える。
歯車機構41は、例えば、順次に噛み合う複数の歯車を備える。歯車機構41は、モータ13から出力される回転の動力を送り機構35bに伝達する。
送り機構43は、送りねじ43aと、ナット部材43bとを備える。送りねじ43aは、中心軸線に沿った方向をシリンジ31の軸方向に平行とした状態で歯車機構41に接続されている。送りねじ43aは、歯車機構41から伝達される回転の動力によって中心軸線の周りに回転する。ナット部材43bは、送りねじ43aに噛み合うように装着された状態でプランジャ33の支持部33cに固定されている。ナット部材43bは、支持部33cによって中心軸線の周りの回転が規制されているので、送りねじ43aの回転に伴って送りねじ43aの中心軸線に沿った方向に移動する。送り機構43は、モータ13の出力軸の回転運動をプランジャ33の軸方向での往復運動に変換する。
【0022】
ばね部材37は、例えば、無荷重で渦巻状態になる渦巻ばねである。ばね部材37の外周側端部は、渦巻状態から巻き解かれて引き伸ばされた状態でプランジャ33の支持部33cに固定されている。ばね部材37の渦巻状態の内周部はシリンジ31の軸方向の先端側に配置されている。ばね部材37は、引き伸ばされた外周側端部が渦巻状態に戻ろうとする弾性復元力によって、プランジャ33の支持部33cに軸方向でシリンジ31の先端側に向かう駆動力を作用させる。
【0023】
図1に示すように、駆動回路17は、例えば、昇圧回路51と、電流制限回路53と、蓄電デバイス55と、通電切替回路57とを備える。
昇圧回路51は、例えば、トランジスタ等のスイッチング素子とコイルとを備える。昇圧回路51は、単電池11から入力される電圧(入力電圧)を所定電圧に昇圧して出力する。所定電圧は、モータ13の駆動に必要な電圧を得られるように設定され、例えば、1つの単電池11の出力電圧である1.5Vを3.0Vに昇圧する。
【0024】
電流制限回路53は、例えば、トランジスタ等のスイッチング素子と抵抗等の電流検出素子とを備える。電流制限回路53は、昇圧回路51の出力側又は入力側に接続されている。電流制限回路53は、昇圧回路51の出力側での負荷電流(つまり蓄電デバイス55及びモータ13に流れる電流)を規制する。電流制限回路53は、負荷電流を所定電流以下に規制することによって、昇圧回路51の入力電圧が所定電圧未満に低下することを禁止する。所定電圧は、例えば、入力電圧の低下に応じて作動する昇圧回路51の保護機能に対する閾値電圧である。昇圧回路51の保護機能は、例えば、単電池11及び昇圧回路51を入力電圧が低下することによる過負荷から保護するために昇圧動作を停止する低電圧ロックアウト(Under Voltage Lock out)機能等である。
【0025】
蓄電デバイス55は、例えば、コンデンサ(キャパシタ)である。蓄電デバイス55は、昇圧回路51の出力側に接続されている。蓄電デバイス55は、例えば、モータ13の停止時に昇圧回路51の出力電圧によって充電されるとともに、モータ13の駆動時に放電によってモータ13に電力を供給する。
通電切替回路57は、単電池11及び蓄電デバイス55からの電力供給に基づき、制御部19による制御に応じてモータ13に対する通電を切り換える。例えば、通電切替回路57は、モータ13の複数相に対する通電を順次に切り換えることによってモータ13を回転駆動する。
【0026】
制御部19は、流体供給装置10の動作を統合的に制御する。
制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御部19の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0027】
制御部19は、例えば、通電切替回路57によってモータ13を間欠的に駆動することによって、ポンプ15から薬液を所定容量ずつ間欠的に吐出する。制御部19は、ポンプ15から間欠的に吐出する薬液の所定容量、つまり1回の吐出動作あたりの吐出量である1単位を変化させることによって、薬液の吐出速度を変更する。
例えば、制御部19は、ポンプ15から吐出される薬液の最小単位である所定の最小投与量D0に基づいて、最小投与量D0の所定倍を吐出量の1単位とする。所定の最小投与量D0は、例えば、モータ13の回転角度の最小単位である基本ステップ角度等に対応して規定される固定値である。モータ13の回転角度は、例えば、制御部19から通電切替回路57に入力されるパルス信号の数(パルス数)によって制御される。
【0028】
下記表1は、流体供給装置10に対して設定される投与速度(投与速度設定値)と、モータ13の所定の最小駆動単位である1ステップによるステップ数Sと、薬液の投与量(=S×D0)との対応関係の一例を示す。
下記表1に示すように、複数の投与速度設定値V0,V1(>V0),V2(>V1),V3(>V2),V4(>V3)(mL/h:1時間あたりに投与されるミリリットル量)は、順次に、ステップ数S=1,2,4,8,16に対応付けられている。モータ13の1ステップは最小投与量D0に対応している。最小投与量D0は、例えば、0.5μL(マイクロリットル)である。複数の投与速度設定値V0,V1,V2,V3,V4の各々に対応する投与量(=S×D0)(μL)は、順次に、0.5μL,1.0μL,2.0μL,4.0μL,8.0μLである。
【0029】
【表1】
【0030】
制御部19は、例えば、モータ13の1回の駆動毎(例えば上記表1での適宜のステップ数Sに応じた一連の駆動毎)に直前及び直後で所定の通電による補助的な励磁を行う。駆動直前の励磁である前励磁は、例えば、モータ13の駆動準備及び回転位置のずれの修正等を行う。駆動直後の励磁である後励磁は、例えば、モータ13の回転位置のずれの修正等を行う。制御部19は、例えば、前励磁及び後励磁の各々に要する時間(前励磁時間b及び後励磁時間c)を、モータ13の駆動時間aにかかわらずに一定の所定値に設定している。前励磁時間b及び後励磁時間cの各々は、例えば、10ms(ミリ秒)である。
上記表1では、モータ13のパルス速度は、例えば、100pps(pulse per second:1秒あたりのパルス数)である。つまり、制御部19が出力するパルス信号の1パルスによってモータ13を1ステップだけ駆動するのに要する駆動時間aは、10msである。複数の投与速度設定値V0,V1,V2,V3,V4の各々に対応する駆動時間a(ms)は、ステップ数Sに応じて、順次に、10ms,20ms,40ms,80ms,160msである。
【0031】
制御部19は、モータ13を間欠的に駆動することによって、モータ13の停止時に昇圧回路51の出力電圧により蓄電デバイス55を充電するための充電時間dを設ける。上記表1では、充電時間dは、例えば、モータ13の駆動時間aと、前励磁時間b及び後励磁時間cとの合計に相当する時間に設定されている。これにより、モータ13の1回の駆動毎(例えば上記表1での適宜のステップ数Sに応じた一連の駆動毎)に要する総時間Tは、モータ13の駆動時間aと、前励磁時間b及び後励磁時間cと、充電時間dとを加算して得られる。複数の投与速度設定値V0,V1,V2,V3,V4の各々に対応する総時間T(=a+b+c+d)(ms)は、順次に、60ms,80ms,120ms,200ms,360msである。複数の投与速度設定値V0,V1,V2,V3,V4の各々に対応する投与速度(=S×D0/T)(mL/h)は、順次に、30mL/h,45mL/h,60mL/h,72mL/h,80mL/hである。
つまり、上記表1では、複数の投与速度設定値V0,V1,V2,V3,V4が順次に増大することに伴い、薬液の投与量の1単位に対応するステップ数Sが増大するように設定されることによって、薬液の投与速度(=S×D0/T)が増大する。
【0032】
上述したように、実施形態の流体供給装置10によれば、昇圧回路51及び蓄電デバイス55を備えることによって、複数の電池を必要とせずにモータ13を駆動するための所望の電圧及び電流を確保することができる。1つの単電池11のみを備えることによって、例えば複数の電池を備える場合に比べて、電池を配置するためのスペースを削減し、電池交換時に要する費用が嵩むことを抑制することができる。モータ13の定格電圧よりも小さな出力電圧の単電池11を備える場合であってもモータ13を適正に駆動することができ、高価な電池を必要とせずに、装置構成に要する費用を削減することができる。電源として1つの安価な単電池11のみを備えることによって、装置を小型化することができるとともに、維持費用を削減することができる。
【0033】
流体供給装置10は、薬液の投与量の1単位を変化させることによって薬液の投与速度を変更する制御部19を備えることによって、薬液の所望の投与を容易に維持することができる。例えば投与の時間間隔を変化させることによって投与速度を変更する場合に比べて、蓄電デバイス55の充電に要する時間を的確に確保することができる。また、例えばモータ13を間欠的に駆動する場合であっても、投与量の1単位を増大させることによって投与速度を増大させることができる。
【0034】
流体供給装置10は、モータ13に流れる電流(負荷電流)を規制する電流制限回路53を備えることによって、負荷電流の増大に伴って単電池11の出力電圧が低下することを防ぐことができる。例えば昇圧回路51が入力電圧の低下に応じて作動する保護機能を搭載する場合であっても、負荷電流を所定電流以下に規制することによって、昇圧回路51の入力電圧が所定電圧未満に低下することを禁止することができ、保護機能によって昇圧動作が停止されてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
制御部19は、パルス励磁により駆動するモータ13に前励磁及び後励磁を行うことによってモータ13の駆動準備及び位置精度の確保を行うことができる。制御部19は、薬液の投与量の1単位を増大させることによって投与速度を増大させるので、例えばモータ13の駆動回数を増大させることによって投与速度を増大させる場合に比べて、前励磁及び後励磁の実行回数の増大に伴う電力消費の増大を抑制することができる。また、前励磁及び後励磁の実行回数の増大を抑制することにより、前励磁及び後励磁に要する時間の増大を抑制し、薬液の投与速度を容易に増大させることができる。
【0036】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0037】
上述した実施形態では、制御部19は前励磁及び後励磁を行うとしたが、これに限定されず、前励磁及び後励磁のすくなくともいずれかは省略されてもよい。
上述した実施形態では、制御部19は、モータ13の駆動時間aと、前励磁時間b及び後励磁時間cと、充電時間dとを加算して得られる総時間Tによって薬液の投与速度(=S×D0/T)を規定した。この投与速度(=S×D0/T)は最大の投与速度であるが、これに限定されず、最大の投与速度よりも小さな投与速度が規定されてもよい。制御部19は、適宜に設定される所定の投与間隔で間欠的にモータ13を駆動してもよい。所定の投与間隔は、少なくとも充電時間dよりも長い時間に設定されることによって、総時間Tよりも大きい総時間Ta(>T)によって薬液の投与速度(=S×D0/Ta)が規定されてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、流体供給装置10はステッピングモータであるモータ13を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、モータ13はサーボモータ等の他の回転型の電動機であってもよい。例えば、モータ13は直動型の電磁アクチュエータ等の他のアクチュータであってもよい。
【0039】
上述した実施形態では、動力伝達機構35は、歯車機構41及び送り機構43を備えるとしたが、これに限定されない。動力伝達機構35は歯車機構41及び送り機構43以外の他の機構によってプランジャ33を駆動してもよい。
上述した実施形態では、動力伝達機構35は、ケース23に固定されたシリンジ31に対してプランジャ33を移動させるとしたが、これに限定されず、ケース23に固定されたプランジャ33に対してシリンジ31を移動させてもよい。
【0040】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…流体供給装置、11…単電池(電池)、13…モータ(アクチュエータ)、15…ポンプ、17…駆動回路、19…制御部、21…基板、23…ケース、31…シリンジ(筒状部材)、31a…吐出口(供給口)、33…プランジャ(柱状部材)、35…動力伝達機構、37…ばね部材、39…チューブ、51…昇圧回路、53…電流制限回路、55…蓄電デバイス、57…通電切替回路。
図1
図2