(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127379
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】組成物、成形体、及び乳酸菌飲料用容器
(51)【国際特許分類】
C08F 279/02 20060101AFI20230906BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20230906BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08F279/02
C08L51/04
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031138
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】藤松 秀隆
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA11
4J002BN141
4J002FD020
4J002GG01
4J026AA68
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4J026AC32
4J026BA05
4J026BB01
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB13
4J026DB22
4J026DB25
4J026DB26
4J026DB32
4J026EA04
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】乳酸菌飲料用容器等の形状における口部衝撃強度の向上を可能とする組成物、当該組成物を用いた成形体及び乳酸菌飲料用容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ポリブタジエンにスチレン系単量体がグラフト重合したゴム変性スチレン系樹脂を含み、トルエン不溶分が25質量%以上30質量%以下である、組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエンにスチレン系単量体がグラフト重合したゴム変性スチレン系樹脂を含み、トルエン不溶分が25質量%以上30質量%以下である、組成物。
【請求項2】
メタノール可溶分が1.5質量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
MD引張衝撃強度が250kJ/m2以上である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
MD引張降伏応力が20MPa以上である、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ゴム状分散粒子を含み、前記ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が2.7μm以上6.2μm以下である、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
インジェクションブロー成形用である、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物を含む成形体。
【請求項8】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の組成物を含む乳酸菌飲料用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、成形体、及び乳酸菌飲料用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン(HIPS))に代表されるゴム変性スチレン系樹脂を含む組成物は、耐衝撃性、成形性、寸法安定性に優れた樹脂組成物であることから、惣菜容器や弁当容器、各種トレー、飲料容器、食品容器蓋材など、食品包装材料として幅広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乳酸菌飲料用容器等の特定の用途の容器では、形状の特性に応じた強度が樹脂組成物の成形体に求められることがある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、乳酸菌飲料用容器等の形状における口部衝撃強度の向上を可能とする組成物、当該組成物を用いた成形体及び乳酸菌飲料用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ポリブタジエンにスチレン系単量体がグラフト重合したゴム変性スチレン系樹脂を含み、トルエン不溶分が25質量%以上30質量%以下である、組成物が提供される
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、トルエン不溶分が所定の範囲である場合に口部衝撃強度が優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、メタノール可溶分が1.5質量%未満である、組成物である。
好ましくは、MD引張衝撃強度が250kJ/m2以上である、組成物である。
好ましくは、MD引張降伏応力が20MPa以上である、組成物である。
好ましくは、ゴム状分散粒子を含み、前記ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が2.7μm以上6.2μm以下である、組成物である。
好ましくは、インジェクションブロー成形用である、組成物である
【0009】
本発明の別の観点によれば、上記ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含む成形体が提供される。
本発明の別の観点によれば、上記組成物を含む乳酸菌飲料用容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。なお、本明細書でA~Bと記載するときには、A以上B以下を意味するものとする。
【0011】
1.ゴム変性スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、ポリブタジエンにスチレン系単量体がグラフト重合した樹脂を含むゴム変性スチレン系樹脂組成物である。ゴム変性スチレン系樹脂は、ポリブタジエンに由来する鎖とスチレン系単量体に由来するスチレン系単量体単位を有する鎖とを含む。
【0012】
スチレン系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等からなる群から選択される1種以上を含む。スチレン系単量体としては、これら2種以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、好ましくはスチレンである。また、これらのスチレン系単量体と共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等の単量体も本発明の効果を損なわない範囲で共重合させることができる。
【0013】
ポリブタジエンは、1,4-シス構造が90モル%以上のハイシスポリブタジエン及び1,4-シス構造が15~40モル%のローシスポリブタジエン等からなる群から選択される1種以上を含む。ポリブタジエンとしては、これら2種以上を併用してもよい。また、ポリブタジエンは、好ましくはハイシスポリブタジエンである。ハイシスポリブタジエンを用いた場合、剛性と耐衝撃性の面で優れた物性が得られる。
【0014】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくは、ゴム状分散粒子を含む。ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、好ましくは2.7μm以上6.2μm以下であり、より好ましくは3.1μm以上5.8μm以下であり、さらに好ましくは3.6μm以上5.3μm以下である。ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、具体的には例えば、2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.9,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5.0,5.1,5.2,5.3,5.4,5.5,5.6,5.7,5.8,5.9,6.0,6.1,6.2μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記数値範囲内とすることで、剛性と耐衝撃性の面で優れた物性が得られる。
【0015】
粒子径を調整する方法としては、重合工程においてゴム粒子の相転域での攪拌速度を調整する方法や、原料液中の連鎖移動開始剤の量を調整する方法などが挙げられる。なお、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920:相対屈折率120A000I)により測定して求めた体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径をもって本発明の体積中位粒子径とする。
【0016】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、トルエン不溶分が25質量%以上30質量%以下であり、好ましくは26質量%以上29質量%以下である。トルエン不溶分は、具体的には例えば、25,26,27,28,29,30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記数値範囲内とすることで、成形時の流動性と口部衝撃強度の両面で優れる。
【0017】
なお、トルエン不溶分は質量1gのゴム変性ポリスチレン(b)を精秤し、トルエン30mLを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してトルエンで膨潤した不溶分の質量を測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥した後、更に真空乾燥機にて125℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケータ中で冷却した後、不溶分の乾燥質量を算出した。
【0018】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくはメタノール可溶分が1.5質量%未満であり、より好ましくは1.4質量%以下であり、さらに好ましくは1.1質量%以下である。メタノール可溶分は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
メタノール可溶分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のメタノールに可溶な成分を指し、例えばゴム変性スチレン系樹脂の重合工程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の他に、流動パラフィンやシリコンオイル等の各種添加剤や残存スチレンモノマー、及び重合溶媒等の低分子量成分が含まれる。メタノール可溶分を調整する方法としては、開始剤の種類や量によって重合工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の発生量を調整する方法や、流動パラフィン、シリコンオイルの添加量によって調整する方法等が挙げられる。なお、メタノール可溶分はゴム変性スチレン系樹脂1.00gを精秤し(P)、メチルエチルケトン40ミリリットルを加えて溶解し、メタノール400ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させる。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて120℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定して、次のように求めることができる。
メタノール可溶分(質量%)=(P-N)/P×100
【0020】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくは流動パラフィンの含有量が1質量%未満であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%未満である。一態様においては、ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくは流動パラフィンを含まない。なお、流動パラフィンは、沸点的には潤滑油留分に属する液状飽和炭化水素の混合物である。流動パラフィンは、例えば、ホワイトオイルと称されるものである。
【0021】
流動パラフィンの含有量は、質量200mgのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し、1,2-ジクロロメタン2mLを加え完全に溶解し、次いでメタノール2mLを加えてゴム変性スチレン系樹脂を析出・静置後、上澄み液をガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
ガスクロマトグラフ:HP-5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:DB-1(ht) 0.25mm×30m 膜厚0.1μm
インジェクション温度:250℃
カラム温度:100-300℃
検出器温度:300℃
スプリット比:50/1
内部標準物質:n-エイコサン
【0022】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくはゴム分が8.0質量%以上12.0質量%以下であり、より好ましくは8.7質量%以上10.1質量%以下であり、さらに好ましくは9.0質量%以上9.5質量%以下である。ゴム分は、具体的には例えば、8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5,11.0,11.5,12.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記数値範囲内とすることで、剛性と耐衝撃性の面で優れた物性が得られる。
【0023】
なお、ゴム分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
【0024】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、2.0~6.0g/10分であることが好ましく、2.5~5.0g/10分であることがより好ましい。2.0g/10分未満であると流動性が不足し、成形に支障をきたし、6.0g/10分を超えると実用的に十分な強度が発揮できない等の問題がある。MFRは、JIS K-7210に基づき測定することができる。
【0025】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、JISK7160-A法にてデジタル衝撃試験機(東洋精機株式会社製、DG-UB)を用いて試験片3形を測定したMD引張衝撃強度が、好ましくはが250kJ/m2以上であり、より好ましくは300kJ/m2以上である。上記数値範囲内とすることで、口部衝撃強度が優れる。なお、MD引張衝撃強度は、流動性とのバランスを考慮すると、例えば500kJ/m2以下である。
【0026】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくはMD引張降伏応力が20MPa以上であり、より好ましくは25MPa以上である。また、ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、好ましくはTD引張降伏応力が20MPa以上であり、より好ましくは22MPa以上である。上記数値範囲内とすることで、口部圧縮強度及び座屈強度が優れる。なお、MD引張降伏応力は、流動性とのバランスを考慮すると、例えば40MPa以下である。また、TD引張降伏応力は、流動性とのバランスを考慮すると、例えば30MPa以下である。
【0027】
MDはゴム変性スチレン系樹脂組成物をシート(フィルム)状に成形した際の機械方向であり、TDはシートのMDを90°の角度で横切る方向である。
【0028】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、シリコンオイル、ワックス、難燃剤、着色剤、顔料、抗菌剤、充填材等の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法は、ポリブタジエンの存在下、スチレン系単量体をグラフト重合する工程を含む。重合は、公知の方法、例えば、塊状重合法、懸濁重合、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により行われうる。また、溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。反応器の様式としては、完全混合型反応器、プラグフロー反応器、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型反応器等が挙げられ、これらと未反応の単量体等を除去する揮発分除去工程を組み合わせた所謂、連続重合方式を用いてもよい。
【0030】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、上記ゴム変性スチレン系樹脂を含む組成物である。ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、その物性を損なわない範囲で、上記ゴム変性スチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。また、そのブレンド方法には特に制限はなく、複数の樹脂を溶融混練し押出機により再造粒する方法、あるいは、複数の樹脂を混合したものを、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、及びVブレンダー等でドライブレンドする方法がある。
【0031】
また、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法は、上記ゴム変性スチレン系樹脂と流動パラフィンを混合する工程を含んでいてもよい。
【0032】
2.成形体・容器
本発明の一実施形態に係る成形体は、上記ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含む成形体である。成形体は、種々の用途に適用可能であるが、例えば、乳酸菌飲料用容器等である。成形体は、上記ゴム変性スチレン系樹脂組成物から構成される層を含む成形体であり、複数の層により構成されていてもよい。
【0033】
成形体は、押出成形、射出成形、発泡成形、ブロー成形等種々の成形方法により成形可能であるが、例えば、インジェクションブロー成形によって成形される。上記ゴム変性スチレン系樹脂組成物はインジェクションブロー成形による乳酸菌飲料用容器等の容器の成形に好適に用いることができる。
【実施例0034】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0035】
<ゴム変性スチレン系樹脂>
ゴム変性スチレン系樹脂は以下のように製造した。なお、重合に用いたポリブタジエン、重合開始剤、連鎖移動剤、流動パラフィンは次の通りである。
ポリブタジエンA :日本エラストマー株式会社製「アサプレン730AX」
ポリブタジエンB :宇部興産株式会社製「BR-15HB」
ポリブタジエンC :旭化成株式会社製「ジエン55AE」
重合開始剤A :1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサC)
重合開始剤B :t-ブチルクミルパーオキサイド(日油株式会社製パーブチルC)
連鎖移動剤 :t-ドデシルメルカプタン
流動パラフィン:カネダ株式会社「ハイコールK350」
【0036】
(1)ゴム変性スチレン系樹脂R-1の製造
下記第1~第4反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積25Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積40Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第3反応器:容積50Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第4反応器:容積50Lの静止型混合器付プラグフロー反応器
【0037】
スチレン単量体78.5質量%、エチルベンゼン13.8質量%、ポリブタジエンA7.7質量%を溶解させた原料液を、20kg/h供給速度で反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を125℃、撹拌数を100rpm、第2反応器の温度を128~130℃、撹拌数を80rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤Bを0.03質量%、連鎖移動剤0.030質量%添加し、第3反応器の温度を128℃、撹拌数を30rpm、第4反応器の温度を流れ方向に140~165℃の温度勾配がつくように調整し重合を行った。得られた重合液を、直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は190℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は67kPaとし、2段目の脱揮槽内の樹脂温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.7kPaとした。
【0038】
(2)ゴム変性スチレン系樹脂R-2の製造
【0039】
スチレン単量体78.4質量%、エチルベンゼン13.8質量%、ポリブタジエンA7.8質量%を溶解させた原料液を、20kg/h供給速度で反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を125℃、撹拌数を100rpm、第2反応器の温度を128~130℃、撹拌数を80rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤Bを0.02質量%、連鎖移動剤0.015質量%添加し、第3反応器の温度を128℃、撹拌数を30rpm、第4反応器の温度を流れ方向に135~160℃の温度勾配がつくように調整し重合を行った。得られた重合液に、重合体に対して2.5質量%の濃度となるように流動パラフィンを添加/混合し、直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は190℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は60kPaとし、2段目の脱揮槽内の樹脂温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.4kPaとした。
【0040】
(3)ゴム変性スチレン系樹脂R-3~13の製造
【0041】
表1に示す樹脂の性状となるように、原料組成や重合温度等を調整し、樹脂R-1、又はR-2と同様の方法でR-3~13を得た。なお、R-3、4、5、7、13はポリブタジエンB、R-6、8、9、10、12はポリブタジエンC、R-11はポリブタジエンAを用いた。このようにして製造した各樹脂を用いた樹脂組成物について、実施例1~7及び比較例1~6として表1に物性及び評価とともに示す。
【0042】
(ゴム分)
ゴム分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0043】
(トルエン不溶分)
トルエン不溶分は、質量1gのゴム変性ポリスチレン(b)を精秤し、トルエン30mLを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してトルエンで膨潤した不溶分の質量を測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥した後、更に真空乾燥機にて125℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケータ中で冷却した後、不溶分の乾燥質量を算出した。
【0044】
(メタノール可溶分)
メタノール可溶分はゴム変性スチレン系樹脂1.00gを精秤し(P)、メチルエチルケトン40ミリリットルを加えて溶解し、メタノール400ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させる。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて120℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定して、次の式に基づき算出した。
メタノール可溶分(質量%)=(P-N)/P×100
【0045】
(体積中位粒子径)
ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920:相対屈折率120A000I)により測定し、体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径を算出した。
【0046】
(MFR)
メルトマスフローレートは、射出成形機を用いて試験片を作成し、JIS K-7210に基づき200℃、49N荷重の条件により求めた。
【0047】
(MD引張降伏応力)
MD引張降伏応力は、Tダイ押出機を用いて0.25mmのシートを作成し、JIS K-6241-2号形の試験片をシートの機械方向に打ち抜き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、引張速度5mm/分で測定した。
【0048】
(TD引張降伏応力)
MD引張降伏応力は、Tダイ押出機を用いて0.25mmのシートを作成し、JIS K-6241-2号形の試験片をシートのMDを90°の角度で横切る方向に打ち抜き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、引張速度5mm/分で測定した。
【0049】
(MD引張衝撃強度)
MD引張衝撃強度は、Tダイ押出機を用いて0.25mmのシートを作成し、JIS K-7160-A法に基づいて、3形の試験片をシートの機械方向に打ち抜き、デジタル衝撃試験機(東洋精機株式会社製、DG-UB)を用いて、測定した。
【0050】
(口部衝撃強度相対値)
実施例・比較例の樹脂組成物を用いて、口径φ20mm、深さ80mm、底径φ35mm、容器の口部から底面に向かって25mmから80mmの胴径φ35mmの形状の容器1をインジェクションブロー成形にて作成した。得られた容器1について、デュポン衝撃試験機を用いて、落下荷重200g、撃芯半径1/8インチの錘を落下させ、口部衝撃強度を測定した。そして、比較例1の測定結果を「1.00」とする相対値を口部衝撃強度相対値として表1に示す。
【0051】
(口部圧縮強度相対値)
上記容器1について、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、圧縮速度20mm/分にて、口部圧縮強度を測定し、3mm圧縮時の測定値とした。そして、比較例1の測定結果を「1.00」とする相対値を口部圧縮強度相対値として表1に示す。
【0052】
(座屈強度相対値)
上記容器1について、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、圧縮速度20mm/分にて座屈強度を測定し、5mm圧縮するまでの最大測定値とした。そして、比較例1の測定結果を「1.00」とする相対値を座屈強度相対値として表1に示す。
【0053】