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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127382
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】研削盤設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/04 20060101AFI20230906BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230906BHJP
【FI】
B24B5/04
B24B41/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031151
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 和秀
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB74
3C034BB87
3C034DD20
3C043AA03
3C043AA12
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】研削盤を設計する際の設計者の負担を軽減する研削盤設計支援装置を提供する。
【解決手段】ベッド11に固定される心押台3及び主軸台2の間に支持されて回転駆動される工作物7,8,9を砥石5によって研削する研削盤1の設計を支援する研削盤設計支援装置6は、工作物7,8,9に関する工作物情報を取得する工作物情報取得手段61と、取得した工作物情報に基づいて心押台3及び主軸台2の少なくとも何れかのベッド11への固定位置を設定する位置設定手段62と、位置設定手段62によって設定された固定位置を提示するディスプレイ600を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに固定される一対の回転支持装置によって支持されて回転駆動される工作物を砥石によって研削する研削盤の設計を支援する研削盤設計支援装置であって、
前記工作物に関する工作物情報を取得する工作物情報取得手段と、
前記工作物情報に基づいて、前記一対の回転支持装置の少なくとも何れかの前記ベッドへの固定位置を設定する位置設定手段と、
前記位置設定手段によって設定された前記固定位置を提示する提示手段と、
を備えた研削盤設計支援装置。
【請求項2】
前記研削盤は、前記ベッドに固定される振れ止め装置本体と前記工作物を支持して前記工作物の研削時の振れを抑制するレストとを有する振れ止め装置を備え、
前記位置設定手段は、前記工作物情報に基づいて、前記振れ止め装置本体の前記ベッドへの固定位置を設定し、
前記提示手段は、前記位置設定手段によって設定された前記振れ止め装置本体の固定位置を提示する、
請求項1に記載の研削盤設計支援装置。
【請求項3】
前記振れ止め装置の前記レストの支持面の必要幅を設定する支持面幅設定手段を備え、
前記提示手段は、前記支持面幅設定手段によって設定された前記必要幅を提示する、
請求項2に記載の研削盤設計支援装置。
【請求項4】
前記一対の回転支持装置の少なくとも何れかは、前記ベッドに固定される固定部材と、前記工作物の端部を支持する支持部材と、前記支持部材を前記固定部材に対して前記工作物の回転軸線方向に沿って所定の可動範囲内で移動させることが可能な移動機構とを有しており、
前記工作物情報取得手段は、形状が異なる複数の前記工作物に関する前記工作物情報を取得し、
前記位置設定手段は、前記固定部材の前記ベッドへの固定位置を変えることなく前記複数の前記工作物の研削加工を行えるように、前記固定部材の固定位置を設定する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の研削盤設計支援装置。
【請求項5】
前記位置設定手段は、前記固定部材の固定位置を設定するにあたり、前記支持部材の前記固定部材に対する可動範囲の長さ、複数の前記工作物のそれぞれの長さ、及び複数の前記工作物の回転軸線方向における前記砥石の前記ベッドに対する可動範囲を考慮する、
請求項4に記載の研削盤設計支援装置。
【請求項6】
前記砥石によって前記工作物の複数の被加工部を研削加工するにあたり、前記複数の被加工部の加工順序を設定する加工順序設定手段を備え、
前記加工順序設定手段は、前記工作物情報に基づいて、前記砥石の整形後に前記複数の被加工部のうち高い加工精度が要求される被加工部を優先して行うように前記加工順序を設定し、
前記提示手段は、前記加工順序設定手段によって設定された前記加工順序を提示する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の研削盤設計支援装置。
【請求項7】
前記複数の被加工部を研削する際の前記工作物に対する前記砥石の位置を設定する砥石位置設定手段を備え、
前記砥石位置設定手段は、前記砥石の砥石幅のうち、前記複数の被加工部を連続して研削する場合に用いられる部分の重なり幅が小さくなるように前記砥石の位置を設定し、
前記提示手段は、前記砥石位置設定手段によって設定された前記工作物に対する前記砥石の位置を提示する、
請求項6に記載の研削盤設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削盤の設計を支援する研削盤設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフト等の軸状部材を研削加工するための研削盤は、工作物を一対の回転支持装置としての主軸台と心押台との間に支持し、工作物の中心軸線を回転軸線として工作物を回転させながら、砥石によって被加工部の研削加工を行う。このような研削盤には、主軸台及び心押台の双方が工作物の中心軸線と平行に進退移動可能なものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の研削盤は、主軸台駆動装置及び心押台駆動装置がベッドに取り付けられている。主軸台駆動装置は、ねじ軸及び一対の主軸台ガイドレールを有しており、ねじ軸の回転によって主軸台を主軸台ガイドレールに沿って移動させる。心押台駆動装置も同様に、ねじ軸及び一対の心押台ガイドレールを有しており、ねじ軸の回転によって心押台を心押台ガイドレールに沿って移動させる。主軸台及び心押台は、ねじ軸の長さに応じた所定の移動可能範囲で進退移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-176298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された研削盤は、工作物の軸方向の長さが主軸台及び心押台の移動可能範囲に対応する長さの範囲内であれば、研削加工を行うことが可能である。しかし、長さが大きく異なる複数の工作物に対しては、1台の研削盤でこれらの工作物を加工することが困難となる場合がある。
【0006】
このような問題に対応するため、主軸台及び心押台の何れか一方もしくは両方をユニット化し、ベッドに対する固定位置を変更可能とすることが考えられる。しかし、この場合には、その固定位置を決めるにあたり、工作物の長さ及び主軸台や心押台の移動可能範囲を考慮して様々な計算を行う必要があり、その設計作業が煩雑となっていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、研削盤を設計する際の設計負担を軽減する研削盤設計支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するため、ベッドに固定される一対の回転支持装置によって支持されて回転駆動される工作物を砥石によって研削する研削盤の設計を支援する研削盤設計支援装置であって、前記工作物に関する工作物情報を取得する工作物情報取得手段と、前記工作物情報に基づいて、前記一対の回転支持装置の少なくとも何れかの前記ベッドへの固定位置を設定する位置設定手段と、前記位置設定手段によって設定された前記固定位置を提示する提示手段と、を備えた研削盤設計支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る研削盤設計支援装置を用いることにより、研削盤を設計する際の設計負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】研削盤の構成例を示す構成図である。
図2】(a)は、主軸台の概略構成例を示す断面図である。(b)は、主軸台ケースのベッドへの固定構造を示す説明図である。
図3】(a)は、心押台の概略構成例を示す断面図である。(b)は、心押台ケースのベッドへの固定構造を示す説明図である。
図4】研削盤設計支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】(a),(b),(c)は、第1乃至第3の工作物を示す外観図である。
図6】(a),(b),(c)は、第1乃至第3の工作物がベッド上に支持された状態を、主軸台、心押台、及び振れ止め装置と共に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
(研削盤の構成)
図1は、研削盤の構成例を示す構成図である。この研削盤1は、回転シャフト等の軸状の工作物10を研削加工するためのものである。図1において、図面左右方向をZ方向、図面上下方向をX方向とし、X方向及びZ方向に対して垂直な方向をY方向とする。工作物10は、その軸方向がZ方向となるように支持される。なお、図1では、一例として、外径が異なる二つの円柱状の被加工部101,102を有する工作物10を図示しているが、研削盤1は、形状や大きさが異なる様々な工作物を研削加工することが可能である。
【0013】
研削盤1は、基台であるベッド11と、ベッド11に対してZ方向に移動可能なトラバーステーブル12と、トラバーステーブル12に対してX方向に移動可能な砥石台13と、砥石台13に取り付けられた砥石用モータ14と、工作物10を支持して回転させる一対の回転支持装置としての主軸台2及び心押台3と、主軸台2に固定されたツルア装置15と、工作物10の研削時の振れを抑制する振れ止め装置4と、砥石5とを主な構成要素として備えている。ツルア装置15は、ツルアモータ151と、ツルアモータ151の回転軸に取り付けられたツルア152とから構成されている。
【0014】
ベッド11には、トラバーステーブル12をZ方向に案内するZ軸ガイドレール121,122が設けられており、Z軸モータ123によって駆動されるボールねじ124の回転によってトラバーステーブル12がZ軸ガイドレール121,122に沿って移動する。トラバーステーブル12には、砥石台13を案内するX軸ガイドレール131,132が設けられており、X軸モータ133によって駆動されるボールねじ134の回転によって砥石台13がトラバーステーブル12に対してX軸ガイドレール131,132に沿って移動する。
【0015】
砥石用モータ14の回転軸141には、円盤状の砥石5が着脱可能に取り付けられており、砥石5が砥石用モータ14に回転駆動されて工作物10を研削する。砥石5として具体的には、例えばダイヤモンドホイール又はCBN(立方晶窒化ホウ素)ホイールを用いることができる。砥石5の回転軸線Oは、工作物10の回転軸線Oと平行である。砥石5の使用により研削面5aが偏摩耗したり振れが発生した際には、ツルア装置15によるツルーイング(形直し)を行うことにより、研削面5aを回転軸線Oと平行な直線状に整形することができる。なお、ツルーイングを行うと砥石5の寿命が短くなると共に時間がかかるので、ツルーイングの回数や時間をできる限り減らすことが望ましい。
【0016】
主軸台2、心押台3、及び振れ止め装置4は、それぞれユニット化されており、ベッド11に対して着脱可能である。主軸台2、心押台3、及び振れ止め装置4のベッド11への固定位置は、工作物10の大きさ等に応じて変えることができる。ベッド11には、Z方向に延在する第1及び第2の突起111,112が設けられている。主軸台2及び心押台3は、それぞれ複数のクランプ金具113及びボルト114によって第1の突起111の任意の位置に固定することができる。第2の突起112は、第1の突起111よりも砥石5から遠い位置に設けられており、振れ止め装置4をクランプ金具113及びボルト114によって第2の突起112の任意の位置に固定することができる。
【0017】
図2(a)は、主軸台2の概略構成例を示す断面図である。主軸台2は、ベッド11に固定される固定部材としての主軸台ケース21と、工作物10の一方の端部を支持する支持部材としての主軸台センタ22と、主軸台センタ22を複数の軸受23及び主軸24を介して回転可能に支持する円筒状のラム25と、主軸台センタ22を回転させる主軸モータ26と、主軸台センタ22及び主軸24を主軸台ケース21に対して直線状に進退移動させる移動機構27と、主軸モータ26の回転を主軸台センタ22に伝達する伝達機構28とを備えている。主軸台センタ22は、その先端部が工作物10の一方の端面に形成されたセンタ穴に嵌合する。
【0018】
移動機構27は、移動用モータ270と、移動用モータ270によって回転駆動されるギヤ部材271と、ギヤ部材271に噛み合わされたナットホルダ272と、ナットホルダ272に保持されたボールねじナット273と、ボールねじナット273の回転によって軸方向に移動するボールねじ274と、ボールねじ274の一端部に固定されたスライダ275と、スライダ275とラム25とを連結する連結部材276とを備えて構成されている。
【0019】
移動用モータ270は、例えばサーボモータであり、主軸台ケース21に収容固定されている。ギヤ部材271及びボールねじナット273は、主軸台ケース21に保持された軸受277,278によってそれぞれ回転可能に支持されている。スライダ275は、主軸台ケース21に対して回転不能かつZ方向に移動可能である。移動用モータ270によってギヤ部材271が回転駆動されると、ボールねじナット273がボールねじ274に対して回転し、主軸24及び主軸台センタ22がラム25と共にZ方向に移動する。
【0020】
伝達機構28は、主軸台センタ22と一体に回転する回転軸281と、回転軸281に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能にスプライン嵌合されたプーリ282と、主軸モータ26のモータシャフト261とプーリ282との間に掛け回されたベルト283とを有している。プーリ282は、主軸台ケース21に保持された軸受284によって回転可能に支持されている。
【0021】
主軸台2は、主軸台センタ22及びボールねじ274がZ方向に延在するようにベッド11に取り付けられる。移動機構27は、移動用モータ270の回転により、主軸台センタ22をボールねじ274の長さに応じた所定の可動範囲内で、主軸台ケース21に対して工作物10の回転軸線方向に沿って移動させることが可能である。
【0022】
図2(b)は、主軸台ケース21のベッド11への固定構造を示す説明図である。主軸台ケース21は、X方向の一方の端部にベッド11の第1の突起111に係合する係合突起211を有している。主軸台ケース21におけるX方向の他方の端部には、クランプ金具113が当接する傾斜面21aがX方向及びY方向に対して傾斜して形成されている。主軸台ケース21を固定するクランプ金具113は、主軸台ケース21の傾斜面21aに当接するケース当接面113aと、第1の突起111のX方向の端部における傾斜面111aに当接するベッド当接面113bとを有しており、主軸台ケース21に螺合するボルト114によって主軸台ケース21に締め付け固定されている。クランプ金具113のケース当接面113aとベッド当接面113bとは、主軸台ケース21をベッド11に押し付けるようにY方向に対して傾斜している。
【0023】
図3(a)は、心押台3の概略構成例を示す断面図である。心押台3は、ベッド11に固定される固定部材としての心押台ケース31と、工作物10における主軸台2側とは反対側の端部を支持する支持部材としての心押台センタ32と、心押台センタ32を複数の軸受33及び心押軸34を介して回転可能に支持する円筒状のラム35と、心押台センタ32及び心押軸34を心押台ケース31に対して直線状に進退移動させる移動機構36とを備えている。心押台センタ32は、その先端部が工作物10における主軸台2側とは反対側の端面に形成されたセンタ穴に嵌合する。
【0024】
移動機構36は、移動用モータ360と、移動用モータ360によって回転駆動されるギヤ部材361と、ギヤ部材361に噛み合わされたナットホルダ362と、ナットホルダ362に保持されたボールねじナット363と、ボールねじナット363の回転によって軸方向に移動するボールねじ364と、ボールねじ364の一端部に固定されたスライダ365と、スライダ365に固定された押圧部材366と、押圧部材366とラム35との間に配置されたコイルばね367とを備えて構成されている。
【0025】
移動用モータ360は、例えばサーボモータであり、心押台ケース31に収容固定されている。ギヤ部材361及びボールねじナット363は、心押台ケース31に保持された軸受368,369によってそれぞれ回転可能に支持されている。スライダ365は、心押台ケース31に対して回転不能かつZ方向に移動可能である。移動用モータ360によってギヤ部材361が回転駆動されると、ボールねじナット363がボールねじ364に対して回転し、コイルばね367が押圧部材366によって押圧され、心押軸34及び心押台センタ32がラム35と共にZ方向に移動する。
【0026】
心押台3は、心押台センタ32及びボールねじ364がZ方向に延在するようにベッド11に取り付けられる。心押台3の移動機構36は、移動用モータ360の回転により、心押台センタ32をボールねじ364の長さに応じた所定の可動範囲内で、心押台ケース31に対して工作物10の回転軸線方向に沿って移動させることが可能である。工作物10は、主軸台センタ22と心押台センタ32との間に挟持される。
【0027】
図3(b)は、心押台ケース31のベッド11への固定構造を示す説明図である。心押台ケース31は、X方向の一方の端部にベッド11の第1の突起111に係合する係合突起311を有している。心押台ケース31におけるX方向の他方の端部には、クランプ金具113が当接する傾斜面31aがX方向及びY方向に対して傾斜して形成されている。心押台ケース31を固定するクランプ金具113は、心押台ケース31の傾斜面31aに当接するケース当接面113aと、第1の突起111のX方向の端部における傾斜面111aに当接するベッド当接面113bとを有しており、心押台ケース31に螺合するボルト114によって心押台ケース31に締め付け固定されている。クランプ金具113のケース当接面113aとベッド当接面113bとは、心押台ケース31をベッド11に押し付けるようにY方向に対して傾斜している。
【0028】
振れ止め装置4は、図1に示すように、クランプ金具113及びボルト114によってベッド11の第2の突起112に固定される振れ止め装置本体41と、振れ止め装置本体41に対してX方向に移動可能なレスト42とを有している。レスト42は、工作物10の外周面に接する支持面42aを有している。レスト42は、支持面42aによって工作物10の外周面を支持することにより、工作物10の研削時の振れを抑制する。レスト42は、例えば振れ止め装置本体41に設けられたシリンダに供給される作動油の油圧によって振れ止め装置本体41に対してX方向に移動し、工作物10を砥石5側に向かって押圧する。
【0029】
(研削盤設計支援装置の構成)
次に、上記のように構成された研削盤1の設計を支援する研削盤設計支援装置の構成について説明する。
【0030】
図4は、研削盤設計支援装置6の機能構成を示すブロック図である。研削盤設計支援装置6は、例えばコンピュータ60と、コンピュータ60に接続された提示手段としてのディスプレイ600とによって構成される。コンピュータ60には、主軸台ケース21に対して主軸台センタ22が移動可能な可動範囲の情報や、心押台ケース31に対して心押台センタ32が移動可能な可動範囲の情報などの研削盤設計支援装置6としての処理に必要な情報が登録されている。
【0031】
コンピュータ60は、マイクロプロセッサがプログラムを実行することにより、工作物情報取得手段61、位置設定手段62、支持面幅設定手段63、加工順序設定手段64、砥石位置設定手段65、及び加工結果予測手段66として機能する。ディスプレイ600は、位置設定手段62、支持面幅設定手段63、加工順序設定手段64、及び砥石位置設定手段65によって設定された各種の設定情報を、ユーザである設計者等に対して視覚によって認識可能に提示する。
【0032】
工作物情報取得手段61は、研削盤1によって研削加工する工作物に関する情報である工作物情報を取得する。この工作物情報には、加工対象の工作物について、中心軸線に沿った軸方向における被加工部の位置や形状、直径、及び要求精度(寸法精度や面粗度)の情報が含まれる。工作物情報取得手段61は、例えば工作物の三次元又は二次元のCADデータもしくはAR(Augmented Reality)用の形状データ等を読み込むことにより、工作物情報を取得する。また、コンピュータ60に接続されたキーボードやマウス等のポインティングデバイスのユーザによる操作によって、工作物情報取得手段61が工作物情報を取得してもよい。
【0033】
位置設定手段62は、工作物情報取得手段61が取得した工作物情報に基づいて、主軸台ケース21及び心押台ケース31の少なくとも何れかのベッド11への固定位置ならびに振れ止め装置本体41のベッド11への固定位置を設定する。また、位置設定手段62は、形状が異なる複数の工作物を研削盤1によって連続して研削加工する場合、主軸台ケース21、心押台ケース31、及び振れ止め装置本体41のベッド11への固定位置を変えることなく複数の工作物の研削加工を行えるように、主軸台ケース21、心押台ケース31、及び振れ止め装置本体41の固定位置を設定する。またさらに、位置設定手段62は、主軸台ケース21及び心押台ケース31のベッド11への固定位置を設定するにあたり、主軸台2及び心押台3における主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対する可動範囲、工作物の軸方向の長さ、ならびにZ方向における砥石5のベッド11に対する可動範囲を考慮する。これらの固定位置の設定方法の具体例については後述する。
【0034】
支持面幅設定手段63は、レスト42の支持面42aの必要幅を設定する。支持面42aの必要幅は、例えばレスト42が支持している部分もしくはその近傍部を研削加工する際に工作物が受ける研削荷重の大きさに応じて最小値が設定され、レスト42の支持面42aが当接する工作物の外周面におけるZ方向に平行な部分の幅に応じて最大値が設定される。なお、支持面幅設定手段63は、支持面42aの必要幅の最小値及び最大値の何れかのみを設定するようにしてもよい。
【0035】
加工順序設定手段64は、加工対象の工作物の複数の被加工部を砥石5によって研削加工するにあたり、工作物情報取得手段61が取得した工作物情報に基づいて、ツルア装置15による砥石5の整形後に複数の被加工部のうち高い加工精度が要求される被加工部を優先して加工するように加工順序を設定する。被加工部の加工順序の設定方法の具体例については後述する。
【0036】
砥石位置設定手段65は、砥石5の砥石幅W図1参照)のうち、複数の被加工部を連続して研削する場合に用いられる部分の重なり幅が小さくなるように、複数の被加工部を研削する際の工作物に対する砥石5の位置を設定する。この砥石5の位置の設定方法の詳細については後述する。
【0037】
ディスプレイ600には、位置設定手段62によって設定された主軸台ケース21、心押台ケース31、及び振れ止め装置本体41のベッド11への固定位置、支持面幅設定手段63によって設定されたレスト42の支持面42aの必要幅、加工順序設定手段64によって設定された被加工部の加工順序、及び砥石位置設定手段65によって設定された被加工部を研削する際の砥石5の位置が表示される。このうち、主軸台ケース21、心押台ケース31、及び振れ止め装置本体41のベッド11への固定位置は、例えば図1に示すような研削盤1の平面図に、主軸台ケース21、心押台ケース31、及び振れ止め装置本体41の形状を、それぞれの基準位置のX方向及びZ方向の座標と共にディスプレイ600にグラフィック表示することにより、ユーザに提示される。
【0038】
レスト42の支持面42aの必要幅は、例えばその上限値及び下限値をディスプレイ600に表示することによりユーザに提示される。また、コンピュータ60に、レスト42の支持面42aの幅W42図1参照)が異なる複数の振れ止め装置4の情報を予め登録しておき、これら複数の振れ止め装置4のうち最適な振れ止め装置4を特定する情報をディスプレイ600に表示するようにしてもよい。
【0039】
被加工部の加工順序は、例えば工作物情報取得手段61が工作物の三次元又は二次元のCADデータを取得した場合には、この三次元又は二次元のCADデータの各被加工部に対応するように加工順序を示す文字列等を追加してディスプレイ600に表示することにより、ユーザに提示される。各被加工部を研削する際の砥石5の位置についても同様に、例えば工作物の三次元又は二次元のCADデータに、各被加工部を研削する際の砥石5の位置を示す情報を追加してディスプレイ600に表示することにより、ユーザに提示される。ユーザは、提示された情報に基づいて、Z軸モータ123及びX軸モータ133を制御するための数値制御プログラム(NCプログラムとも称される)を作成する。
【0040】
加工結果予測手段66は、位置設定手段62、支持面幅設定手段63、加工順序設定手段64、及び砥石位置設定手段65によって設定された各種の設定情報にしたがって工作物を研削加工した場合に予測される研削加工の結果に関する情報を生成する。この情報には、例えば工作物の研削加工に必要な加工時間や、加工品質を示す寸法精度や面粗度、あるいは砥石5の摩耗量等が含まれる。加工結果予測手段66によって生成された各種の情報は、ディスプレイ600への表示によってユーザに提示される。
【0041】
(研削盤設計支援装置の動作)
次に、位置設定手段62、支持面幅設定手段63、加工順序設定手段64、及び砥石位置設定手段65が実行する処理を、具体例に基づいて説明する。ここでは、形状及び大きさが異なる第1乃至第3の工作物を研削盤1によって連続して加工する場合について説明する。なお、砥石5は、予め研削面5aが回転軸線Oと平行な直線状に整形されているものとする。また、以下の説明では、便宜上、砥石5及び第1乃至第3の工作物の軸方向一方側を右側とし、軸方向他方側を左側として説明する。
【0042】
図5(a),(b),(c)は、第1乃至第3の工作物7,8,9を示す外観図である。図6(a),(b),(c)は、第1乃至第3の工作物7,8,9がベッド11上に支持された状態を、主軸台2、心押台3、及び振れ止め装置4と共に示す説明図である。また、図6(a),(b),(c)では、第1乃至第3の工作物7,8,9の各被加工部を研削加工する際の砥石5の位置を二点鎖線で示している。
【0043】
第1乃至第3の工作物7,8,9は、例えば建設機械や貨物の移載機などの産業機械の部品として用いられる一品生産のシャフトである。第1乃至第3の工作物7,8,9は、軸方向の長さL,L,Lがそれぞれ異なり、第1の工作物7の長さLが最も長く、第3の工作物9の長さLがその次に長く、第2の工作物8の長さLが最も短い。
【0044】
第1の工作物7は、被加工部として、大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73を有すると共に、砥石5による研削加工を行わない第1乃至第4の非研削部701~704を有している。第2の工作物8は、被加工部として、大径被加工部81及び小径被加工部82を有すると共に、砥石5による研削加工を行わない第1及び第2の非研削部801,802を有している。第3の工作物9は、被加工部として、小径被加工部91及び大径被加工部92を有すると共に、砥石5による研削加工を行わない第1乃至第3の非研削部901~903を有している。
【0045】
第1の工作物7の大径被加工部71の幅W71は、砥石5の砥石幅Wより僅かに狭い。第1の工作物7の中径被加工部72の幅W72及び小径被加工部73の幅W73は、大径被加工部71の幅W71よりも狭い。第2の工作物8は、大径被加工部81のW81及び小径被加工部82の幅W82が、第1の工作物7の小径被加工部73の幅W73及び中径被加工部72の幅W72よりも、それぞれ狭い。第3の工作物9は、小径被加工部91の幅W91が砥石5の砥石幅Wよりも広く、大径被加工部92の幅W92が砥石5の砥石幅Wよりも狭い。
【0046】
工作物情報取得手段61は、第1の工作物7の大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73、第2の工作物8の大径被加工部81及び小径被加工部82、ならびに第3の工作物9の小径被加工部91及び大径被加工部92のそれぞれの軸方向の位置や幅、直径、及び要求精度の情報を、工作物情報として取得する。
【0047】
ここでは、一例として、第1の工作物7の大径被加工部71ならびに第3の工作物9の小径被加工部91が、比較的高い精度で研削加工が必要な高精度被加工部であり、他の被加工部(第1の工作物7の中径被加工部72及び小径被加工部73、第2の工作物8の大径被加工部81及び小径被加工部82、ならびに第3の工作物9の大径被加工部92)が比較的低い精度で研削加工が可能な低精度被加工部である場合について説明する。高精度被加工部の表面粗さの要求仕様は、例えば0.4μmRaであり、低精度被加工部の表面粗さの要求仕様は、例えば0.8μmRaである。
【0048】
位置設定手段62は、まず、軸方向の長さが最も長い第1の工作物7の長さLと最も短い第2の工作物8の長さLとの差を求め、この差が、主軸台ケース21に対する主軸台センタ22の可動範囲の長さと心押台ケース31に対する心押台センタ32の可動範囲の長さとの合計値よりも小さいか否かを判定する。この判定の結果、主軸台センタ22及び心押台センタ32の可動範囲の長さの合計値よりも第1の工作物7の長さLと第2の工作物8の長さLとの差が大きければ、主軸台ケース21及び心押台ケース31をベッド11に固定したまま第1乃至第3の工作物7,8,9の全ての加工を行うことができないので、その旨をディスプレイ600に表示する。
【0049】
一方、主軸台センタ22及び心押台センタ32の可動範囲の長さの合計値が第1の工作物7の長さLと第2の工作物8の長さLとの差以上であれば、位置設定手段62は、主軸台2及び心押台3における主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対する可動範囲の長さ、第1乃至第3の工作物7,8,9のそれぞれの軸方向の長さL,L,L、ならびにZ方向における砥石5のベッド11に対する可動範囲を考慮し、主軸台ケース21及び心押台ケース31のベッド11への固定位置を変えることなく、第1の工作物7の大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73、第2の工作物8の大径被加工部81及び小径被加工部82、ならびに第3の工作物9の小径被加工部91及び大径被加工部92の全てを砥石5によって研削加工できるように、主軸台ケース21及び心押台ケース31のベッド11への固定位置、ならびに各被加工部の研削加工時における主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を設定する。
【0050】
位置設定手段62は、第1の工作物7の大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73を研削加工する際の砥石5の位置ならびに主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を、大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73の外径の仕上げ寸法D71,D72,D73、ならびに第1乃至第4の非研削部701~704の外径寸法D701,D702,D703,D704及び長さL701,L702,L703,L704を考慮して、砥石5が第1乃至第4の非研削部701~704や主軸24又は心押軸34等に干渉しないように設定する。なお、大径被加工部71、中径被加工部72、及び小径被加工部73のそれぞれを研削加工する際の主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を変えてもよい。例えば、大径被加工部71を研削加工した後に、移動機構27,36によって主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を変えて中径被加工部72及び小径被加工部73を研削加工してもよい。
【0051】
また、位置設定手段62は、第2の工作物8の大径被加工部81及び小径被加工部82を研削加工する際の砥石5の位置ならびに主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を、大径被加工部81及び小径被加工部82の外径の仕上げ寸法D81,D82、ならびに第1及び第2の非研削部801,802の外径寸法D801,D802及び長さL801,L802を考慮して、砥石5が第1及び第2の非研削部801,802や主軸24又は心押軸34等に干渉しないように設定する。
【0052】
また同様に、位置設定手段62は、第3の工作物9の小径被加工部91及び大径被加工部92を研削加工する際の砥石5の位置ならびに主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を、小径被加工部91及び大径被加工部92の外径の仕上げ寸法D91,D92、ならびに第1乃至第3の非研削部901~903の外径寸法D901,D902,D903及び長さL901,L902,L903を考慮して、砥石5が第1乃至第3の非研削部901~903や主軸24又は心押軸34等に干渉しないように設定する。
【0053】
位置設定手段62は、工作物情報取得手段61が取得した工作物情報に基づいて、第1乃至第3の工作物7,8,9の各被加工部について、その研削加工時に振れ止め装置4による振れ止めが必要か否かを判定する。ここでは、第1の工作物7及び第3の工作物9の加工時に、高精度被加工部である第1の工作物7の大径被加工部71ならびに第3の工作物9の小径被加工部91を振れ止め装置4のレスト42によって支持するものとする。この場合、位置設定手段62は、第1の工作物7の大径被加工部71ならびに第3の工作物9の小径被加工部91を振れ止め装置4のレスト42によって支持することができるように、振れ止め装置本体41のベッド11への固定位置を設定する。なお、第1の工作物7の大径被加工部71ならびに第3の工作物9の小径被加工部91を振れ止め装置4のレスト42によって支持するために、大径被加工部71及び小径被加工部91の加工時において、移動機構27,36によって主軸台センタ22及び心押台センタ32の主軸台ケース21及び心押台ケース31に対するZ方向の位置を調節してもよい。
【0054】
加工順序設定手段64は、砥石5の研削面5aが整形された状態で高精度被加工部を研削加工するように加工順序を設定する。つまり、第1の工作物7の大径被加工部71及び第3の工作物9の小径被加工部91の何れか一方を最初に研削加工し、その後に第1の工作物7の大径被加工部71及び第3の工作物9の小径被加工部91の他方を研削加工する際には、その研削加工に先立って砥石5の研削面5aを整形する。ここでは、第1の工作物7の大径被加工部71の研削加工を最初に行うこととする。
【0055】
また、加工順序設定手段64は、先行する被加工部の研削加工によって生じた砥石5の研削面5aの段差が以降の被加工部の加工精度に影響を与えにくいように、各被加工部の加工順序を設定する。砥石5の摩耗状態は、研削面5aのうち研削加工に用いられる部分の位置や大きさに関係するため、加工順序設定手段64は、砥石位置設定手段65と連携して被加工部の加工順序を設定する。
【0056】
次に、第1乃至第3の工作物7,8,9の各被加工部の加工順序ならびに各被加工部を加工する際の砥石5の位置の設定例について、図6(a)~(c)を参照して説明する。図6(a)~(c)に示すように、第1乃至第3の工作物7,8,9を研削加工する際には、第1の工作物7の両端部に形成されたセンタ穴7a,7b、第2の工作物8の両端部に形成されたセンタ穴8a,8b、及び第3の工作物9の両端部に形成されたセンタ穴9a,9bに、主軸台センタ22及び心押台センタ32のそれぞれの先端部が嵌合する。なお、本実施の形態では、砥石5を第1乃至第3の工作物7,8,9の回転軸線に対して垂直に切り込ませるプランジ研削によって研削加工を行う場合について説明するが、必要に応じて、砥石を工作物の回転軸線に対して平行に移動させるトラバース研削を組み合わせてもよい。
【0057】
前述のように、砥石位置設定手段65は、砥石5の砥石幅Wのうち、複数の被加工部を連続して研削する場合に用いられる部分の重なり幅が小さくなるように研削加工時における砥石5の位置を設定する。このため、最初に第1の工作物7の大径被加工部71の研削加工を行った後、第1の工作物7の中径被加工部72及び小径被加工部73を研削加工する際には、中径被加工部72の加工に用いる部分と小径被加工部73の加工に用いる部分とが重ならないように、研削加工時における砥石5の位置を設定する。ここでは、砥石5が主軸台2に干渉しないように、小径被加工部73を研削加工する際には砥石幅Wのうち右側の部分を使用し、中径被加工部72を研削加工する際には砥石幅Wのうち左側の部分を使用する。なお、中径被加工部72を小径被加工部73より先に研削加工してもよく、小径被加工部73を中径被加工部72より先に研削加工してもよい。
【0058】
第1の工作物7の次には、加工精度を確保しながらも砥石5のツルーイングの回数やツルーイングによって削り取る量を抑制して砥石寿命を延ばすため、第1の工作物7の中径被加工部72及び小径被加工部73の研削加工後、ツルーイングを行うことなく第2の工作物8の研削加工を行う。図6では、一例として、砥石幅Wのうち右側の部分を使用して第2の工作物8の大径被加工部81を研削加工し、砥石幅Wのうち左側の部分を使用して第2の工作物8の小径被加工部82を研削加工する場合を示している。なお、大径被加工部81及び小径被加工部82は、何れを先に研削加工してもよい。
【0059】
第2の工作物8の研削加工の後、第3の工作物9の研削加工を行う前に、砥石5のツルーイングを行う。第3の工作物9については、大径被加工部92より先に高精度被加工部である小径被加工部91を研削加工する。前述のように、小径被加工部91の幅W91は、砥石5の砥石幅Wよりも広いので、図6に示すように2回に分けてプランジ研削を行う。具体的には、砥石幅Wの全体を使って小径被加工部91の一部を1回目のプランジ研削で研削加工した後、砥石幅Wの左側の部分を使って小径被加工部91の残部を2回目のプランジ研削で研削加工する。その後、砥石幅Wの右側の部分を使って大径被加工部92の研削加工を行う。
【0060】
上記のように設定された各種の設定内容は、ディスプレイ600の画面表示によって研削盤設計支援装置6のユーザに提示される。ユーザは、提示された情報に基づいて工程設計を行い、研削盤1のZ軸モータ123及びX軸モータ133を制御するための数値制御プログラムを作成する。これにより、研削盤設計支援装置6のユーザの負担が軽減され、工程設計を容易に行うことが可能となる。また、研削盤設計支援装置6を工作物の加工費の見積もりに使用すれば、より正確かつ容易に見積もりを作製することが可能となる。
【0061】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。またさらに、上記した複数の実施の形態の一部の構成を互いに組み合わせることも可能であると共に、例えば下記のように変形することも可能である。
【0062】
上記の実施の形態では、主軸台センタ22及び心押台センタ32の可動範囲の長さの合計値よりも第1の工作物7の長さLと第2の工作物8の長さLとの差が大きいと、第1乃至第3の工作物7,8,9の全ての加工を行うことができないと判定する場合について説明したが、例えば可動範囲の長さが異なる複数の主軸台及び心押台が用意されている場合には、それらの中から複数の工作物の加工に用いることができるものを選択してユーザに提示するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施の形態では、第1乃至第3の工作物7,8,9を連続して研削加工する場合を例にとって説明したが、これに限らず、一つ又は二つ、もしくは四つ以上の工作物を加工する場合にも研削盤設計支援装置6を用いることができる。また、上記の実施の形態では、ユーザへの提示手段としてディスプレイ600を用いる場合について説明したが、提示手段としてはこれに限らず、例えば電子ファイルの生成によってユーザに各種の情報を提示してもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、主軸台2及び心押台3がそれぞれ移動機構27,36を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば心押台3が移動機構36を備え、主軸台2が移動機構27を備えていなくてもよい。
【0065】
またさらに、上記の実施の形態では、工作物をその両端部で支持する一対の回転支持装置として主軸台2及び心押台3を備え、一方の回転支持装置である主軸台2の主軸モータ26によって工作物を回転させる場合について説明したが、一対の回転支持装置のそれぞれが工作物を回転させるためのモータを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…研削盤 10…工作物
11…ベッド 2…主軸台(回転支持装置)
21…主軸台ケース(固定部材) 22…主軸台センタ(支持部材)
27…移動機構 3…心押台(回転支持装置)
31…心押台ケース(固定部材) 32…心押台センタ(支持部材)
36…移動機構 4…振れ止め装置
41…振れ止め装置本体 42…レスト
42a…支持面 5…砥石
5a…研削面 6…研削盤設計支援装置
600…ディスプレイ(提示手段) 61…工作物情報取得手段
62…位置設定手段 63…支持面幅設定手段
64…加工順序設定手段 65…砥石位置設定手段
66…加工結果予測手段 7…第1の工作物
71…大径被加工部 72…中径被加工部
73…小径被加工部 8…第2の工作物
81…大径被加工部 82…小径被加工部
9…第3の工作物 91…小径被加工部
92…大径被加工部 W…砥石幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6