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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127415
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/24 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B65D51/24 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031197
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】高木 健司
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓行
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA23
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC02
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC02
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB08
3E084HA02
3E084HB03
3E084HC03
3E084HC07
3E084HD01
3E084JA19
3E084KA13
(57)【要約】
【課題】合成樹脂部材に情報表示部を設けても、品質面並びにフレーバー性を維持できるキャップを提供すること。
【解決手段】キャップは、天板部及び前記天板部の周縁部から垂下するスカート部を有するキャップ本体と、少なくとも容器の口部を密封する部分より半径方向内側に、UVレーザにより変色する変色誘起物を含有する樹脂材料で形成された、前記変色誘起物の変色により情報を表示する情報表示部を有する、前記キャップ本体内に設けられる合成樹脂部材と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部及び前記天板部の周縁部から垂下するスカート部を有するキャップ本体と、
少なくとも容器の口部を密封する部分より半径方向内側に、UVレーザにより変色する変色誘起物を含有する樹脂材料で形成された、前記変色誘起物の変色により情報を表示する情報表示部を有する、前記キャップ本体内に設けられる合成樹脂部材と、
を備える、キャップ。
【請求項2】
前記情報表示部は、前記変色誘起物の変色により形成されている、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記変色誘起物は、酸化チタンである、請求項1又は請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記変色誘起物の配合量は、前記合成樹脂部材の少なくとも前記情報表示部を形成する樹脂材料の重量に対して0.1~5重量%である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記合成樹脂部材は、成形前の粘度安定性を保つ樹脂改質剤を含有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項6】
前記樹脂改質剤は、シリコーンオイルである、請求項5に記載のキャップ。
【請求項7】
前記樹脂改質剤の配合量は、前記合成樹脂部材を形成する前記樹脂材料の重量に対して、0.1~10重量%である、請求項5又は請求項6に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの口部を密栓するためのキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、くじの当たり表示等の情報を表示することを目的として、キャップの内面に設けられた合成樹脂部材に数字や文字などを印字する方法が用いられている。しかし、合成樹脂部材に印字された情報表示部は内容物と接液する可能性があるため、飲料の衛生性並びにフレーバー性を損なわないようにする必要がある。この対策として、特許文献1には、キャップ本体の天板部内面に設けられているキャップ用ライナーの露出面の構成材料をエラストマーで形成し、ライナーの露出面に、レーザ加工により刻印された情報表示部を形成し、レーザ加工は、COレーザ光を照射して行う技術が提案されている。また、特許文献2には、キャップ本体の天板部内面に設けられた合成樹脂ライナーに、レーザ光照射部分を変色させる発色剤が添加されており、発色剤はアンチモン被膜酸化スズを含み、レーザ発生ユニットは、YAGレーザで行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-227301号公報
【特許文献2】特開2009-113833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、以下のような課題がある。特許文献1の技術のように、COガスを媒質とした、遠赤外領域にあるCOレーザで加工を行った場合、対象物に熱をかけて彫り込んで印字部を形成するため、印字部の発熱により合成樹脂部材が損傷する。特に、合成樹脂部材が焦げやすいことから、臭気的な影響を及ぼすことも考えられ、品質面並びにフレーバー性の点から問題である。
【0005】
また、特許文献2の技術のように、YAG結晶をレーザ媒質とした、近赤外領域にあるYAGレーザで加工を行った場合、レーザ光による照射部が変化し発色することで印字部が形成される。しかしながら、YAGレーザが対象物に当たることで局所的に加熱されて加工される、熱加工のプロセスのため、熱ダメージによる焦げ等の発生は無くなるとは言えず、問題である。
【0006】
そこで、本発明は、合成樹脂部材に情報表示部を設けても、品質面並びにフレーバー性を維持できるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るキャップは、天板部及び前記天板部の周縁部から垂下するスカート部を有するキャップ本体と、少なくとも容器の口部を密封する部分より半径方向内側に、UVレーザにより変色する変色誘起物を含有する樹脂材料で形成された、前記変色誘起物の変色により情報を表示する情報表示部を有する、前記キャップ本体内に設けられる合成樹脂部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、合成樹脂部材に情報表示部を設けても、品質面並びにフレーバー性を維持できるキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るキャップの構成を一部断面で示す側面図。
図2】同キャップの構成を一部断面で示す側面図。
図3】同キャップの構成を下面側から示す説明図。
図4】同キャップを製造する製造装置の構成を模式的に示す説明図。
図5】本発明の他の実施形態に係るキャップの構成を一部断面で示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキャップ1の構成を、容器としての缶容器100に被冠した状態において、一部断面で示す側面図である。図2は、キャップ1の構成を一部断面で示す側面図である。図3は、キャップ1の構成を下面側から断面で示す断面図である。図4は、キャップ1を製造する製造装置200の構成を模式的に示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、キャップ1は、缶容器100の口部110に取り付けられ、缶容器100の口部110に被冠した状態で巻締固着されることで、缶容器100を密封する。
【0012】
ここで、缶容器100は、飲料等を収容する所謂ボトル型容器である。例えば、缶容器100は、両面に樹脂製フィルムが積層されたアルミニウム合金や表面処理鋼板等の金属材料により構成される。缶容器100は、一方の端部が縮径された、異なる外径を有する円筒状に形成されている。缶容器100は、一方の端部に、収容した飲料を排出する口部110を有する。口部110は、その外周面に、缶容器100の底面側から端部に向かって、顎部111、雄螺子部112及びカール部113を有する。なお、キャップ1を被冠する容器は、缶容器100ではなく、ペットボトルや瓶容器であってもよい。
【0013】
顎部111は、環状に突出することで構成される。カール部113は、雄螺子部112よりも小径に形成される。また、カール部113は、キャップ1の内径よりも小さく構成される。カール部113は、口部110の端部が1回以上折りたたまれることで構成される。カール部113は、缶容器100に収納された飲料を排出する口部110の開口部(端部)を構成する。
【0014】
図1及び図3に示すように、キャップ1は、キャップ本体11と、キャップ本体11内に別体に設けられた密封部材12と、を備えている。
【0015】
キャップ本体11は、アルミニウム合金等の金属材料に樹脂皮膜層を形成した材料によって構成される。キャップ本体11は、薄肉の平板状の当該材料をカップ状に絞り成形、ナーリング成形及びロールオン成形等の各成形が行われることで構成される。
【0016】
キャップ本体11は、円板状の天板部21と、天板部21の周縁部に一体に設けられた円筒状のスカート部22と、を備えている。キャップ本体11は、天板部21及びスカート部22が、円環状、且つ、曲面状の角部23によって一体に連続して構成される。
【0017】
天板部21は、円板状に構成され、主面が平面に構成される。スカート部22は、天板部21から垂下する。スカート部22は、一端が角部23を介して天板部21と連続し、他端が開口して構成される。スカート部22は、天板部21側の端部から開口する端部まで、ベントスリット31aを有する複数のナール部31及び複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34と、を備える。
【0018】
図1乃至図4に示すように、複数のナール部31、複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34は、天板部21と、複数のナール部31、複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34が成形されていない円筒状のスカート部22と、角部23とから構成されるカップ状の成形品をナーリング成形やロールオン成形等の加工により形成される。
【0019】
ナール部31は、ベントスリット31aを有し、スカート部22の内周面から突出する。換言すると、ナール部31は、スカート部22の一部がスカート部22の径方向で内方向に向かって窪むことでスカート部22の内周面に一部が切欠した突起を構成する。
【0020】
複数のナール部31は、スカート部22の周方向に複数設けられる。ベントスリット31aは、開封時に缶容器100内のガス等を排出する切り込みである。ベントスリット31aは、ナール部31の天板部21側の端部が切断されることで形成される。
【0021】
凹部32は、スカート部22の一部が外周面側から内周面側に窪むことで構成される。具体的には、凹部32は、スカート部22の一部がスカート部22の径方向で内方に向かって窪むことで、スカート部22の内周面に突起を構成する。
【0022】
凹部32は、複数設けられる。凹部32は、周方向で隣り合うナール部31の間に配置される。複数の凹部32は、複数のナール部31と同数であってもよく、複数のナール部31よりも少ない数であっても良い。即ち、複数の凹部32の数は、適宜設定可能である。例えば、複数の凹部32の内面の少なくとも天板部21側は、キャップ本体11の軸方向に対して傾斜する傾斜面32aで形成され、当接した密封部材12のキャップ本体11に対するセンタリングを行う。
【0023】
雌螺子部33は、缶容器100の雄螺子部112と螺合可能に構成される。雌螺子部33は、缶容器100とともに成形される。即ち、雌螺子部33は、缶容器100に取り付けられる前のキャップ1においては成形されておらず、缶容器100と一体に組み合わされたときに成形される。
【0024】
タンパーエビデンスバンド部34は、キャップ1が缶容器100から離間する方向であって、且つ、キャップ1の軸方向で、缶容器100の顎部111と係合する。また、タンパーエビデンスバンド部34は、キャップ1の開封時に破断して、スカート部22から脱離するための破断部34aを有する。即ち、タンパーエビデンスバンド部34は、スカート部22の端部側に破断部34aを残してスリットが形成されることで構成され、雌螺子部33と同様に、缶容器100と一体に組み合わされたときに、缶容器100の顎部111の形状に賦形されることで、顎部111に係合する。
【0025】
密封部材12は、合成樹脂材料により形成される合成樹脂部材である。密封部材12は、キャップ本体11内に設けられ、容器100の口部110の開口する端部である、カール部113の先端に密着し、口部110を密封する。例えば、密封部材12は、キャップ本体11と別体に構成される。
【0026】
密封部材12は、例えば、天板部21及びスカート部22に対向して配置され、そして、キャップ1と非接着である。具体例として、密封部材12は、円板状に構成され、キャップ本体11のスカート部22に設けられたナール部31の内接円の径よりも大径の外径を有する。また、密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出する凹部32の傾斜面32aの少なくとも一部、具体例として傾斜面32aの軸線方向で中央部の内接円の径と同一の外径を有する。
【0027】
密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出するナール部31のベントスリット31aが設けられた端部と、キャップ本体11の軸線方向で係合することで、キャップ本体11に一体に設けられる。また、密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出する凹部32の傾斜面32aと、キャップ本体11の径方向で係合することで、キャップ本体11の軸線上に中心が位置するように、センタリングされる。
【0028】
密封部材12は、円板状の摺動層41と、摺動層41に一体に積層された円板状の密封層42と、を備える。密封部材12は、摺動層41及び密封層42が異なる樹脂材料で一体に成形されることで構成される。密封部材12は、厚さが一様な平板部12aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面で構成された曲面部12bと、を備えている。換言すると、密封部材12は、円板状に形成され、天板部21側の稜部が所定の曲率の曲面で構成される。また、密封部材12は、外周縁側を構成する曲面部12bが平板部12aよりも厚さが薄く構成されるとともに、曲面部12bが中心側から外周縁に向かって漸次厚さが薄くなり、曲面部12bの先端、即ち外周縁が他部よりも最も薄肉に構成される。平板部12aは、曲面部12b側の一部が缶容器100の口部110と当接する密封部分を構成する。平板部12aは、例えば、密封部分が他の部位よりも肉厚に構成される。
【0029】
また、密封部材12は、UVレーザ光照射により変色することで、情報を表示する情報表示部12cを有する。ここで、UVレーザ光は、紫外線領域のレーザであり、波長は、例えば、355nmである。情報表示部12cは、密封部材12の少なくとも缶容器100の口部110を密封する部分より半径方向内側に形成される。なお、情報表示部12cは、缶容器100の口部110を密封する部分にかかっても良い。
【0030】
情報表示部12cは、スカート部22の開口側の平板部12aの主面の少なくとも一部の領域により形成される。例えば、情報表示部12cは、密封部材12を構成する樹脂材料のうち、少なくとも情報表示部12cとなる領域の表面を構成する樹脂材料に、UVレーザ光照射により変色する変色誘起物が添加されることで形成される。即ち、情報表示部12cを形成する樹脂材料は、変色誘起物を含有し、UVレーザ光が照射されることで変色することで、情報を表示する。
【0031】
情報表示部12cは、表示する情報に対応してUVレーザ光が照射されることによって一部が変色することで、情報を表示可能に構成される。ここで、情報表示部12cに表示する情報とは、文字や数字等の記号、デザイン又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。情報表示部12cは、例えば、くじの当たり表示や、懸賞の応募番号等の情報を表示する。本実施形態の例では、密封部材12の密封層42を構成する樹脂材料に変色誘起物が添加される例を用いて説明する。
【0032】
摺動層41は、密封層42よりも相対的に硬度が高い(硬い)樹脂材料によって構成される。また、摺動層41は、キャップ本体11の樹脂皮膜層と接着性及び粘着性を有さない樹脂材料により構成される。即ち、摺動層41は、天板部21と非接着であり、そして、天板部21と接触した状態で天板部21を摺動する。
【0033】
摺動層41に用いられる樹脂材料は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。本実施形態においては、摺動層41は、例えば、ポリプロピレン樹脂によって構成される。なお、摺動層41に用いられる樹脂材料には、顔料、滑剤、軟化剤等を適宜添加することができる。
【0034】
摺動層41は、キャップ本体11の天板部21と対向して、キャップ本体11と別体に設けられる。摺動層41は、用いられる樹脂材料により、キャップ本体11の天板部21と摺動可能に構成される。摺動層41は、円板状に構成される。摺動層41の外径は、スカート部22の内径よりも小径であり、複数のナール部31の内接円よりも大径であり、複数の凹部32の傾斜面32aの軸線方向で一部を通る内接円と同一径であり、そして、口部110のカール部113の外径よりも大径に構成される。
【0035】
摺動層41は、厚さが一様な第1平板部41aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面により構成された第1曲面部41bと、第1曲面部41bの密封層42側に設けられた突起部41cと、を備えている。第1平板部41aは、摺動層41の中心から口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側までの部分の厚さが一様に構成される。
【0036】
第1曲面部41bは、口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側から外周縁までの部分の厚さが、外周縁に向かって厚さが漸次減少して構成される。突起部41cは、摺動層41の軸方向及び天板部21の面方向に対して傾斜してスカート部22の開口する端部側に向かって湾曲又は傾斜する円環状の突起状に構成される。突起部41cは、第1曲面部41bから先端に向かって厚さが漸次減少する。
【0037】
密封層42は、摺動層41よりも相対的に硬度が低い(軟らかい)樹脂材料により構成される。密封層42に用いられる樹脂材料は、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、より好適にはスチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂のブレンド材、低密度ポリエチレンとスチレン系エラストマーのブレンド材、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。本実施形態においては、密封層42は、例えば、スチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂の混合材料によって構成される。なお、密封層42に用いられる樹脂材料には、顔料、滑剤、軟化剤等を適宜添加することができる。また、密封層42は、情報表示部12cを形成するための、UVレーザ光の照射により合成樹脂部材を変色させる変色誘起物が添加される。
【0038】
具体例として、密封層42に用いられる樹脂材料は、変色誘起物として、酸化チタンを含む。また、密封層42に用いられる樹脂材料は、顔料として白色顔料を含む。例えば、白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白、リトポン等が挙げることができる。なお、酸化チタンは、UVレーザ照射により発色する変色誘起物の性質も備えるため、変色誘起物及び白色顔料を兼ねる酸化チタンが好ましい。変色誘起物の含有量は、変色誘起物を含む樹脂材料の重量に基づいて、0.1~5重量%が好ましい。また、UVレーザ照射により発色はグレーないし黒色になるため、顔料は白色顔料に限らず、発色が目立つ顔料、例えば黄色三二酸化鉄等でも良い。
【0039】
また、密封層42に用いられる樹脂材料として、スチレン系エラストマーに変色誘起物を配合した場合のように、該樹脂材料に流動性が無いか、又は、流動性が低い場合には、加熱溶融押出成形や射出成形をすることができない。このため、樹脂材料は、粘度の安定性を保つ樹脂改質剤の配合が必要である。この樹脂改質剤は、シリコーンオイルが好ましく、合成樹脂部材に流動性を付与し、成形性を安定させるとともに、密封性も向上させることができる。シリコーンオイルとしては、食品衛生や合成樹脂部材への混合性、分散性を考慮すると、動粘度が100~10000mm/s(20℃)のものが好ましく、より具体的には、このような範囲の動粘度をもつジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイル等が好適である。
【0040】
密封層42は、口部110と対向する側の摺動層41の主面に一体に設けられる。密封層42は、円板状に構成される。密封層42の外径は、口部110のカール部113の外径よりも大径に構成されるとともに、摺動層41の外径と略同一に構成される。
【0041】
密封層42は、口部110と対向する部位の厚さが他よりも肉厚に構成された第2平板部42aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面で構成された第2曲面部42bと、第2曲面部42bの摺動層41側とは反対側の主面に設けられた環状の窪み42cと、を備える。第2平板部42aは、カール部113と対向する主面が平面に構成される。例えば、第2平板部42aは、摺動層41の第1平板部41aと同一径に構成される。第2平板部42aは、第1平板部41aとともに、密封部材12の平板部12aを構成する。
【0042】
第2曲面部42bは、例えば、第2平板部42aのカール部113と対向する主面と面一の主面を有する。第2曲面部42bは、口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側から外周縁までの部分の厚さが、外周縁に向かって厚さが漸次減少して構成される。第2曲面部42bは、第1曲面部41b及び突起部41c上に積層される。第2曲面部42bは、第1曲面部41b及び突起部41cとともに、密封部材12の曲面部12bを構成する。
【0043】
窪み42cは、例えば、断面が半円状の環状の窪みである。窪み42cは、密封部材12がキャップ本体11にセンタリングされたときに、例えば、ナール部31のベントスリット31a側の端部と当接する。
【0044】
このような密封部材12は、天板部21を上に向けた状態にキャップ1を配置し、密封部材12が天板部21よりも下方に落下した際に、ナール部31のベントスリット31a側の端部と当接することで、ナール部31によって係止され、重力方向で下方への移動が規制される。また、密封部材12は、キャップ1が缶容器100から取り外されるときに、ナール部31によって支持されることで、口部110から離れ、キャップ本体11とともに移動する。
【0045】
このように構成されたキャップ1の製造方法について、以下簡単に説明する。先ず、例えば、金属板材料からカップ上のキャップ本体11を成形する。次に、キャップ本体11を天板部21が重力方向で下側に位置する姿勢で下金型上に配置する。次に、天板部21上に、溶融又は軟化した摺動層41用の樹脂材料を供給し、上金型で供給された樹脂材料を圧縮成形し、摺動層41を成形する。次に、摺動層41上に溶融又は軟化した密封層42用の樹脂材料を供給し、上金型で供給された樹脂材料を圧縮成形し、摺動層41上に密封層42を成形する。これにより、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34が成形されていないキャップ本体11内で、密封部材12が成形される。その後、キャップ本体11のスカート部22に、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34等を成形する。
【0046】
例えば、密封部材12は、キャップ本体11のスカート部22に、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34等を成形するときに、キャップ本体11から取り出される。そして、密封部材12は、キャップ本体11のスカート部22に、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34等を成形した後に、キャップ本体11に挿入される。このような工程により、密封部材12の情報表示部12cに情報が刻印(印字)されていないキャップ1が製造される。
【0047】
次に、キャップ1の密封部材12の情報表示部12cに情報が印字される。なお、情報表示部12cへ情報を印字する工程は、上述したキャップ本体11のスカート部22に、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34等を成形したあと、連続して行ってもよく、また、他のラインや工場等において行ってもよい。
【0048】
キャップ1の密封部材12の情報表示部12cに情報を刻印(印字)する製造装置200及び製造方法の例を、図4を用いて説明する。
【0049】
まず、製造装置200の構成を説明する。製造装置200は、キャップ1を搬送する搬送装置210と、搬送装置210によるキャップ1の搬送経路上に設けられるレーザ装置220と、搬送装置210及びレーザ装置220を制御する制御装置230と、を備える。
【0050】
搬送装置210は、例えば、キャップ1を所定の間隔で搬送するコンベア211と、コンベア211を駆動する駆動源212と、を備える。
【0051】
コンベア211は、例えば、ローラコンベアやベルトコンベア等である。なお、コンベア211は、これらに限定されず、キャップ1を連続的に搬送できる装置であれば適宜設定できる。また、コンベア211は、一列でキャップ1を搬送する構成であってもよく、また、多列でキャップ1を搬送する構成であってもよい。コンベア211は、キャップ1の天板部21が下方となり、スカート部22の開口端が上方となり、密封部材12が上方に露出する姿勢で、キャップ1を搬送する。
【0052】
駆動源212は、コンベア211を駆動することで、所定の搬送速度でキャップ1を搬送する。駆動源212は、例えば、ローラコンベアのローラやベルトコンベアのベルト等を駆動するモータ等である。
【0053】
レーザ装置220は、UVレーザ光を照射する。レーザ装置220は、一例として、KEYENCE社製の「MD-U1000シリーズ」が用いられる。レーザ装置220は、例えば、搬送装置210により搬送されたキャップ1の密封部材12の情報表示部12cに、UVレーザ光を照射するとともに、予め設定された情報基づいてUVレーザ光を走査させる。レーザ装置220は、情報表示部12cにUVレーザ光を照射させることで、情報表示部12cを変色させて、密封部材12の情報表示部12cに情報の印字を行う。
【0054】
制御装置230は、例えば、製造装置200の統括制御部である。制御装置230は、例えば、レーザ装置220を制御する。また、制御装置230は、搬送装置210の駆動制御を行ってもよい。制御装置230は、例えば、入力部231と、表示部232と、インターフェース233と、通信部234と、メモリ235と、プロセッサ236と、を備える。
【0055】
入力部231は、例えば、ボタンを含む操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス等のユーザ入力を受け付ける装置と、圧力センサ、マイクロフォン、カメラ等のセンサとの、少なくともいずれかを有する。入力部231は、レーザ装置220の駆動パラメータ等の各種設定、製造装置200の各装置の設定等の任意のユーザからの指令であるユーザ入力を受け付ける装置である。なお、制御装置230は、入力部231を有さず、インターフェース233や通信部234を介して接続された各種入力部によって、各種設定やユーザ入力が行われてもよい。
【0056】
表示部232は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスを有する。また、表示部232は、表示デバイスに代えて、又は、表示デバイスに加えて、LED(Light Emitting Diode)点灯部等を有する構成であってもよい。
【0057】
インターフェース233は、各種センサや外部端末等に電気的に接続可能な端子又は回路である。なお、制御装置230は、搬送装置210で搬送されるキャップ1を検出する検出センサを有し、インターフェース233は、この検出センサに電気的に接続される構成であってもよい。
【0058】
通信部234は、プロセッサ236により制御され、外部端末と通信可能な任意の通信インターフェースである。通信部234は、有線通信技術又は無線通信技術を用いて、外部端末と通信を行う。具体例として、通信部234は、BLE規格(Bluetooth(登録商標) Low Energyの規格)、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信技術、またはUSBなどの有線通信技術を用いて、外部端末に接続できる。なお、通信部234は、BLE規格の通信とは別に、基地局及びネットワークを介して管理サーバや他の通信端末に通信可能なモバイル端末の通常の通信インターフェースを含んでもよい。例えば、通信部234は、プロセッサ236の通信制御回路により制御され、レーザ装置220で印字する情報を含む各種情報、パラメータ、各種プログラム、及び、これらデータやプログラムを変更する変更指示を外部端末から受信し、また、レーザ装置220に送信する。
【0059】
メモリ235は、記憶部である。メモリ235は、データの読出及び書込が可能である。メモリ235は、プロセッサ236によって使用されるデータ、レーザ装置220により情報表示部12cに印字する情報、レーザ装置220から照射されるUVレーザ光の出力や走査情報等を含むレーザ装置220の運転データやレーザ装置220の制御に用いる各種データやプログラム等を格納する。また、メモリ235は、製造装置200の他の構成を制御する各種データやプログラム等を格納する。
【0060】
メモリ235は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read only memory)又はNAND型フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。また、メモリ235は、フラッシュメモリを搭載したSSD(Solid State Drive)を含む。
【0061】
プロセッサ236は、レーザ装置220を含む製造装置200の各構成を制御する制御部である。プロセッサ236は、マイコン、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ236は、例えば、通信部234の通信制御、表示部232の表示制御、レーザ装置220の処理制御などの任意の処理を行う。
【0062】
プロセッサ236は、例えば、処理回路とメモリとを含む。プロセッサ236は、例えば、メモリとしての不揮発性のEEPROM領域や揮発性のDRAM領域等の記憶領域を含む。また、プロセッサ236は、メモリ235又は記憶領域に記憶されたプログラム等を実行することで、通信部234を介した通信を制御する通信制御回路、及び、製造装置200の各種装置を制御する処理回路として機能する。
【0063】
次に、このような製造装置200を用いた密封部材12への刻印(印字)方法を説明する。
まず、搬送装置210により複数のキャップ1が、レーザ装置220で密封部材12に刻印する位置に搬送される。例えば、レーザ装置220でキャップ1の密封部材12に移動すると、レーザ装置220は、密封部材12にUVレーザ光を照射する。例えば、密封部材12が刻印する位置に移動したことを、検出センサ等によって検出し、プロセッサ236が検出した情報に基づいて、レーザ装置220を制御する。プロセッサ236により制御されたレーザ装置220は、例えば、予め設定された密封部材12に刻印する情報に対応して、UVレーザ光を所定の出力で密封部材12に走査させる。これにより、密封部材12の密封層42を形成する樹脂材料に含まれる変色誘起物によって、密封層42(情報表示部12c)のUVレーザ光が照射された部位が、図3に示す情報表示部12cに表示された英数字等のように、変色して情報が表示される。例えば、変色誘起物が酸化チタンである場合には、密封層42のUVレーザ光が照射された部位が黒変する。UVレーザ光の照射により酸化チタン中の酸素原子が離脱して、チタン原子と酸素原子の比率が変化する。チタン原子と酸素原子の比率の変化により酸化チタンが黒変すると考えられる。密封層42にUVレーザ光が照射されたキャップ1は、搬送装置210により例えば二次側の回収部に回収される。このように、キャップ1に順次UVレーザ光が照射され、情報表示部12cに情報が刻印(印字)されたキャップ1が製造される。
【0064】
なお、製造されたキャップ1は、キャップ1の天板部21が上方となる姿勢で、口部110に被冠され、密封部材12の密封層42の所定の部位が口部110と対向した状態で、キャップ本体11の角部23を絞り成形しながら、スカート部22をロールオン成形される。これにより、キャップ1は、缶容器100の口部110に巻締固着される。
【0065】
このように構成されたキャップ1によれば、キャップ本体11内に設けられる密封部材12に、情報を刻印(印字)するための情報表示部12cを有する。また、密封部材12の少なくとも情報表示部12cが形成される部位の材料に、UVレーザ光によって変色する変色誘起物を有する。本実施形態においては、密封部材12の密封層42の樹脂材料に、変色誘起物としての酸化チタンが含有させた。これにより、密封部材12は、情報を情報表示部12cに表示させることができる。
【0066】
また、情報表示部12cを変色させるためにレーザ装置220で照射するレーザ光を、UVレーザ光とし、このUVレーザ光により、情報表示部12cを変色させる。即ち、情報表示部12cへの印字は、熱エネルギーではなく、光エネルギー(UVレーザ光)による発色印字であるため、密封部材12(合成樹脂部材)への熱影響が抑えられることから、品質面並びにフレーバー性に優れ、焦げるような臭いが生じることも抑制できる。また、UVレーザ光は、変色誘起物への光吸収率が格段に高く、このため、情報表示部12cへの視認性の高い印字が可能である。
【0067】
また、変色誘起物及び顔料を密封層42(情報表示部12cが形成される領域)の樹脂材料に含有させることで、情報表示部12cの変色の度合いと密封層42(合成樹脂部材)の地色とのコントラストの関係により、見た目の視認性を高めることができる。また、変色誘起物及び白色顔料として酸化チタンを用いることで、情報表示部12cの黒変色の度合いと、密封層42の地色の白色とのコントラストの関係により、見た目の視認性をより高めることができる。
【0068】
また、情報表示部12cは、UVレーザ光によって変色する構成である。即ち、情報表示部12cは、熱エネルギーではなく、光エネルギーによる発色印字であるため、合成樹脂部材(密封部材12、密封層42)への熱影響が抑えられる。即ち、情報表示部12cは、情報の表示のためにUVレーザ光を照射しても、熱ストレスがない。よって、密封部材12は、品質面並びにフレーバー性に優れ、焦げるような臭いも抑制される。このため、キャップ1は、密封部材12が缶容器100内に収容する飲料等の内容物と接液しても、内容物に品質的な問題が生じることがなく、また、情報の表示を行った情報表示部12cに臭いが生じることを防止できることから、内容物のフレーバー性を損なうことがない。
【0069】
また、密封部材12は、樹脂材料にシリコーンオイル等の樹脂改質剤を添加することで、樹脂材料に流動性を付与することで、成形性を安定させることができるとともに、密封性の向上が可能となる。
【0070】
また、合成樹脂部材の少なくとも情報表示部12cを形成する領域の樹脂材料、本実施形態においては、密封層42の樹脂材料に含有される変色誘起物を0.1~5重量%とすることで、成形性の低下を抑制しつつ、高い変色性を確保することができる。なお、密封部材12(密封層42)の成形性、密封性能及び情報の視認性の観点から、密封層42の樹脂材料に含有される変色誘起物の含有量は、5重量%以下が好ましい。
【0071】
また、変色誘起物及び白色顔料として酸化チタンを樹脂材料に含有させることによって樹脂材料の流動性が不安定となる虞がある。しかしながら、本実施形態における合成樹脂部材(密封部材12、密封層42)は、樹脂改質剤を合成樹脂部材の重量に対して0.1~10重量%を含有することから、樹脂材料に変色誘起物が含有していても、成形性を安定的に保つことができる。
【0072】
また、情報表示部12cに、くじや懸賞等のための情報である所謂当たり表示を情報表示部12cに表示することで、キャップ1に付加価値を付与することもできる。
【0073】
上述したように、本発明の一実施形態に係るキャップ1によれば、缶容器100の口部110に被冠されたときにキャップ本体11に非接着の密封部材12の密封性を確保できる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、密封部材12とキャップ本体11が別体で構成される例を示したが、これに限らず、密封部材12とキャップ本体11が一体で構成されていてもよい。
【0075】
以下、他の実施形態に関して図5を用いて説明する。なお、上述した実施形態に係るキャップ1と同様の構成には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図5に示すように、他の実施形態に係るキャップ1は、キャップ本体11と、キャップ本体11に一体に形成された密封部材(合成樹脂部材)12Aと、を備える。なお、キャップ本体11に一体に密封部材12Aが形成されることから、キャップ本体11は、例えば、凹部32をスカート部22に有さない。
【0076】
密封部材12Aは、天板部21の内主面側に一体に形成される。密封部材12Aは、キャップ本体11の内主面に、成形時に固定されてもよく、また、密封部材12Aを成形後に、キャップ本体11の天板部21の内主面に接着等によって固定される構成であってもよい。
【0077】
密封部材12Aは、例えば、平板部12aと、缶容器100の口部110と密着することで口部110を密封するシール部12dと、平板部12aに形成された情報表示部12cと、を備える。
【0078】
シール部12dは、平板部12aよりも肉厚に形成される。例えば、シール部12dは、口部110と当接する面が、カール部113の先端形状に倣って湾曲する曲面状に形成される。シール部12dは、キャップ1を缶容器100の口部110に被冠させたときに、カール部113により押圧されることで弾性変形し、カール部113に密着することで、口部110を密封する。
【0079】
密封部材12Aの少なくとも情報表示部12cが形成される領域を形成する樹脂材料は、上述した密封部材12の密封層42を形成する樹脂材料と同様に、UVレーザ光により変色する変色誘起物を含有する。本実施形態においては、密封部材12Aを構成する樹脂材料が変色誘起物を含有する。
【0080】
密封部材12Aは、密封層42と同様の樹脂材料で形成される。密封部材12Aに用いられる樹脂材料は、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、より好適にはスチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂のブレンド材、低密度ポリエチレンとスチレン系エラストマーのブレンド材、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。本実施形態においては、密封部材12Aは、例えば、スチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂の混合材料によって構成される。なお、密封部材12Aに用いられる樹脂材料には、顔料、滑剤、軟化剤等を適宜添加することができる。また、密封部材12Aは、情報表示部12cを形成するための、UVレーザ光の照射により合成樹脂部材を変色させる変色誘起物が添加される。
【0081】
具体例として、密封部材12Aに用いられる樹脂材料は、変色誘起物として、酸化チタンを含む。密封部材12Aに用いられる樹脂材料の変色誘起物の含有量は、変色誘起物を含む樹脂材料の重量に基づいて、0.1~5重量%が好ましい。
【0082】
また、密封部材12Aに用いられる樹脂材料は、白色顔料を含む。例えば、白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白、リトポン等が挙げることができる。なお、酸化チタンは、UVレーザ照射により発色する変色誘起物の性質も備えるため、変色誘起物及び白色顔料を兼ねる酸化チタンが好ましい。
【0083】
また、密封部材12Aに用いられる樹脂材料として、スチレン系エラストマーに変色誘起物を配合した場合のように、該樹脂材料に流動性が無い場合には、加熱溶融押出成形や射出成形をすることができない。このため、樹脂材料は、粘度の安定性を保つ樹脂改質剤の配合が必要である。この樹脂改質剤は、シリコーンオイルが好ましく、合成樹脂部材に流動性を付与し、成形性を安定させるとともに、密封性も向上させることができる。シリコーンオイルとしては、食品衛生や合成樹脂部材への混合性、分散性を考慮すると、動粘度が100~10000mm/s(20℃)のものが好ましく、より具体的には、このような範囲の動粘度をもつジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイル等が好適である。
【0084】
このように構成された他の実施形態に係るキャップ1によれば、上述した実施形態に係るキャップ1と同様に、情報表示部12cにUVレーザ光を照射することで、情報を表示することができるとともに、品質面並びにフレーバー性を維持できる。
【0085】
また、本発明は、上述した複数の実施形態の構成に限定されない。例えば、キャップ1は、UVレーザ光により変色可能であれば、情報表示部12cは、情報を表示させるのではなく、キャップ1の内部側の意匠性を向上させるために用いられる構成であってもよい。
【0086】
また、上述した例では、合成樹脂部材に用いられる樹脂材料に、顔料として白色顔料を含む構成を説明したがこれに限定されず、顔料は白色以外であってもよい。例えば、情報の視認性を向上させるためには、コントラストの関係から変色誘起物の変色と合成樹脂部材の地色の関係を設定すればよい。しかしながら、密封部材は、情報の視認性以外の機能、例えば、デザイン性等を重要視して変色誘起物の変色と合成樹脂部材の地色との関係を設定してもよい。
【0087】
また、上述した例では、合成樹脂部材として密封層42を形成する樹脂材料、及び、密封部材12Aを形成する樹脂材料に、変色誘起物を含有させる構成を説明したがこれに限定されない。例えば、情報表示部12cを構成するために、密封層42や密封部材12Aの一部の樹脂材料に変色誘起物を含有させる構成であってもよい。また、密封層42の例えば平板部12aとなる表面に、変色誘起物を含有する樹脂材料で形成された情報表示部12cを形成する樹脂層を積層させる構成であってもよい。
【0088】
また、変色誘起物は、摺動層41に添加してあってもよい。即ち、密封層42を形成する樹脂材料に加え、摺動層41を形成する樹脂材料にも変色誘起物を含有させる構成であってもよい。また、他の例として、摺動層41を形成する樹脂材料にのみ変色誘起物を含有させ、摺動層41に情報表示部12cを設ける構成であってもよい。この例の場合、密封部材12は、情報表示部12cを密封部材12の天板21側に設け、キャップ本体11から密封部材12を取り外した際に情報表示部12cを視認できる構成でもよく、また、密封層42を密封部材12の中央側には設けず、露出する摺動層41に情報表示部12cを設けてもよい。
【0089】
また、キャップ本体11や密封部材12、12Aの詳細な形状等は、上述した実施形態の例に限定されない。また、キャップ1は、製造時において情報表示部12cにUVレーザ光を照射して情報を表示した状態で販売や取引などをおこなってもよく、また、UVレーザ光の照射前に販売や取引などをおこなってもよい。即ち、キャップ1は、情報表示部12cにUVレーザ光によって情報を表示可能であれば、情報を表示していないものも発明に含まれる。また、上述した例では、キャップ1の説明を行ったが、キャップ本体11に用いられる密封部材12のみを取引形態としてもよい。
【0090】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0091】
1…キャップ、11…キャップ本体、12、12A…密封部材(合成樹脂部材)、12a…平板部、12b…曲面部、12c…情報表示部、12d…シール部、21…天板部、22…スカート部、23…角部、31…ナール部、31a…ベントスリット、32…凹部、32a…傾斜面、33…雌螺子部、34…タンパーエビデンスバンド部、34a…破断部、41…摺動層、41a…第1平板部、41b…第1曲面部、41c…突起部、42…密封層、42a…第2平板部、42b…第2曲面部、100…缶容器(容器)、110…口部、111…顎部、112…雄螺子部、113…カール部、200…製造装置、210…搬送装置、211…コンベア、212…駆動源、220…レーザ装置、230…制御装置、231…入力部、232…表示部、233…インターフェース、234…通信部、235…メモリ、236…プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5