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特開2023-127419発泡成形用の射出成形機および発泡成形品の成形方法
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  • 特開-発泡成形用の射出成形機および発泡成形品の成形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127419
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】発泡成形用の射出成形機および発泡成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/03 20060101AFI20230906BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230906BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B29C45/03
B29C45/17
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031201
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】内藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】油布 拓也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AM32
4F206AP02
4F206AP10
4F206AR02
4F206AR11
4F206JA04
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JM16
4F206JP13
4F206JP14
4F206JQ41
4F206JT24
(57)【要約】
【課題】ガス漏れの虞のない発泡成形用の射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機(1)は、ガス注入口(28)が設けられている加熱シリンダ(17)と、スクリュ(18)と、ガス注入口(28)にガスを供給するガス供給装置(5)と、制御手段(4)と、を備えるようにする。ガス供給装置(5)にはガス流路に弁機構(35)を設ける。制御手段(4)は弁機構(35)を制御して、成形サイクルにおいて少なくとも1回閉鎖するようにすると共に、少なくとも計量工程は開いた状態にするように構成する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内で駆動可能に設けられているスクリュと、
前記ガス注入口にガスを供給するガス供給装置と、
制御手段と、を備え、
前記ガス供給装置は、ガス流路に弁機構が設けられ、
前記制御手段は前記弁機構を制御して、成形サイクルにおいて少なくとも1回閉鎖するようにすると共に、少なくとも計量工程は開いた状態にする、発泡成形用の射出成形機。
【請求項2】
前記弁機構は開閉弁あるいは注入弁からなる、請求項1に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記弁機構を計量工程の完了後、規定遅延時間だけ経過したときに閉鎖するようにする、請求項1または2に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記弁機構を計量工程の開始より規定先行時間だけ早く開くようにする、請求項1~3のいずれかの項に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記弁機構を射出工程のタイミングで開くようにする、請求項1~3のいずれかの項に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項6】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にはガス圧力を検出するガス圧力計が設けられ、前記規定遅延時間は予め複数回成形サイクルを実施して得たガス圧力の変動の傾向に基づいて決定されている、請求項3に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項7】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にはガス圧力を検出するガス圧力計が設けられ、前記規定先行時間は予め複数回成形サイクルを実施して得たガス圧力の変動の傾向に基づいて決定されている、請求項4に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項8】
前記加熱シリンダには前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計が設けられ、前記規定遅延時間は予め複数回成形サイクルを実施して得た樹脂圧力の変動の傾向に基づいて決定されている、請求項3に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項9】
前記加熱シリンダには前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計が設けられ、前記規定先行時間は予め複数回成形サイクルを実施して得た樹脂圧力の変動の傾向に基づいて決定されている、請求項4に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項10】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にはガス圧力を検出するガス圧力計が設けられ、前記弁機構の閉鎖は検出される前記ガス圧力が予め設定された適正ガス圧力範囲に到達したとき、あるいは到達してから規定保持時間後に実施する、請求項1または2に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項11】
前記加熱シリンダには前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計が設けられ、前記弁機構の閉鎖は検出される前記樹脂圧力が予め設定された適正樹脂圧力範囲に到達したとき、あるいは到達してから規定保持時間後に実施する、請求項1または2に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項12】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にはガス圧力を検出するガス圧力計が設けられ、前記規定先行時間は計量工程の開始において検出される前記ガス圧力に基づいて成形サイクル毎に調整される、請求項4に記載の発泡成形用の射出成形機。
【請求項13】
ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内で駆動可能に設けられているスクリュと、
前記ガス注入口にガスを供給するガス供給装置と、を備え、
前記ガス供給装置のガス流路に弁機構が設けられている発泡成形用の射出成形機を使用して、
前記弁機構を制御して、成形サイクルにおいて少なくとも1回閉鎖するようにすると共に、少なくとも計量工程は開いた状態にして前記加熱シリンダ内の樹脂にガスを供給する、発泡成形品の成形方法。
【請求項14】
前記弁機構は開閉弁あるいは注入弁からなる、請求項13に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項15】
前記弁機構の閉鎖は、計量工程の完了後、規定遅延時間だけ経過したときに実施する、請求項13または14に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項16】
前記弁機構の開操作は、計量工程の開始より規定先行時間だけ早いタイミングで実施する、請求項13~15のいずれかの項に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項17】
前記弁機構の開操作は、射出工程において実施する、請求項13~15のいずれかの項に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項18】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にガス圧力を検出するガス圧力計を設け、予め複数回成形サイクルを実施して得たガス圧力の変動の傾向に基づいて前記規定遅延時間を決定するようにする、請求項15に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項19】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にガス圧力を検出するガス圧力計を設け、予め複数回成形サイクルを実施して得たガス圧力の変動の傾向に基づいて前記規定先行時間を決定するようにする、請求項16に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項20】
前記加熱シリンダにおいて前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計を設け、予め複数回成形サイクルを実施して得た樹脂圧力の変動の傾向に基づいて前記規定遅延時間を決定するようにする、請求項15に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項21】
前記加熱シリンダにおいて前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計を設け、予め複数回成形サイクルを実施して得た樹脂圧力の変動の傾向に基づいて前記規定先行時間を決定するようにする、請求項16に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項22】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にガス圧力を検出するガス圧力計を設け、前記弁機構の閉鎖は検出される前記ガス圧力が予め設定された適正ガス圧力範囲に到達したとき、あるいは到達してから規定保持時間後に実施する、請求項13または14に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項23】
前記加熱シリンダに前記ガス注入口における樹脂圧力を検出する樹脂圧力計を設け、前記弁機構の閉鎖は検出される前記樹脂圧力が予め設定された適正樹脂圧力範囲に到達したとき、あるいは到達してから規定保持時間後に実施する、請求項13または14に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項24】
前記ガス供給装置の前記ガス流路にはガス圧力を検出するガス圧力計を設け、前記規定先行時間は計量工程の開始において検出される前記ガス圧力に基づいて成形サイクル毎に調整する、請求項16に記載の発泡成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出材料に不活性ガスを注入して発泡成形品を成形する発泡成形用の射出成形機、および発泡成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物理発泡剤つまりガスを利用して発泡成形品を得る発泡成形用の射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように概ね次のように構成されている。すなわち射出成形機の射出装置は、加熱シリンダとスクリュとから構成され、加熱シリンダ内はスクリュの形状に応じて複数の区間に区分され、上流から下流に向かって、第1の圧縮・計量区間、飢餓区間、第2の圧縮・計量区間を備えている。加熱シリンダには飢餓区間に対応するようにガス注入口が設けられている。ガスは、ガスボンベ等を備えたガス供給装置によって供給され、ガス供給装置のガス流路がガス注入口に接続されている。
【0003】
樹脂は加熱シリンダ内をスクリュによって上流から下流に送られて溶融され、第1の圧縮・計量区間で混錬される。ついで飢餓区間において樹脂の圧力が低下して、窒素、二酸化炭素等のガスが注入される。ガスが注入された樹脂は第2の圧縮・計量区間で混錬・圧縮され、計量され、そして金型に射出されて発泡成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-200937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡成形用の射出成形機において、計量工程が完了した後で加熱シリンダ内に注入されたガスの一部が加熱シリンダを逆流して加熱シリンダの上流側から漏れる、いわゆるガス漏れが発生する場合がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、次の構成を備えた射出成形機とする。すなわち射出成形機は、ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、スクリュと、ガス注入口にガスを供給するガス供給装置と、制御手段と、を備えるようにする。ガス供給装置にはガス流路に弁機構を設ける。制御手段は弁機構を制御して、成形サイクルにおいて少なくとも1回閉鎖するようにすると共に、少なくとも計量工程は開いた状態にするように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、ガス注入口へのガス流路を開閉して、加熱シリンダ内をガスが逆流するガス漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係る射出装置とガス供給装置とを示す正面断面図である。
図3A】本実施の形態に係る射出成形機において実施する発泡成形品の成形方法を説明するタイムチャートである。
図3B】本実施の形態に係る射出成形機において実施する発泡成形品の他の成形方法を説明するタイムチャートである。
図4】本実施の形態に係る射出成形機において、ガス注入口へ常時ガスを供給して成形サイクルを実行したときの、スクリュ位置、スクリュ回転速度、樹脂圧力、そしてガス圧力の変化を示すグラフである。
図5A】本実施の第2の形態に係る射出装置とガス供給装置とを示す正面断面図である。
図5B】本実施の第3の形態に係る射出装置とガス供給装置とを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、ベッドBに設けられている型締装置2と、射出装置3と、射出装置3にガスを供給するガス供給装置5と、これらを制御するコントローラ4と、から概略構成されている。型締装置2は直圧式から構成することもできるが、本実施の形態においてはトグル式からなる。つまり型締装置2は、固定盤7と、可動盤8と、型締ハウジング9と、型締ハウジング9と固定盤7とを連結しているタイバー10、10、…と、トグル機構11とから構成されている。固定盤7と可動盤8に金型13、14が設けられている。したがってトグル機構11を駆動すると金型13、14が型締めされる。
【0012】
<射出装置>
本実施の形態に係る射出装置3は、後で説明するガス供給装置5によってガスが供給され、ガスが混練・混合した樹脂つまり物理発泡剤を含む樹脂が計量されるようになっている。したがって、これを射出すると発泡成形品が得られるようになっている。つまり発泡成形用の射出装置3になっている。
【0013】
射出装置3は、加熱シリンダ17と、図2に示されているように加熱シリンダ17内に入れられているスクリュ18と、加熱シリンダ17を支持すると共にスクリュ18を駆動するスクリュ駆動装置19(図1参照)とを備えている。加熱シリンダ17にはその上流側にホッパ21が、そして下流側の先端には射出ノズル22が、それぞれ設けられている。
【0014】
スクリュ18は、図2に示されているように、上流側から下流側に向かってフライトの溝深さが変化しており、加熱シリンダ17内が複数の区間に区分されている。すなわち上流側から、樹脂が供給され溶融する供給区間24、溶融した樹脂が圧縮される第1の圧縮・計量区間25、樹脂の圧力が低下する飢餓区間26、そして第2の圧縮・計量区間27に区分されている。加熱シリンダ17には飢餓区間26に対応するようにガス注入口28が開けられており、溶融した樹脂にガスが注入されるようになっている。このようにしたガスが注入された樹脂は、第2の圧縮・計量区間27において混錬されることになる。
【0015】
加熱シリンダ17には、ガス注入口28に関連して樹脂圧力センサ30が埋め込まれている。つまりガス注入口28の近傍に樹脂圧力センサ30が埋め込まれ、飢餓区間26における樹脂圧力を検出するようになっている。検出される樹脂圧力はコントローラ4に送られる。
【0016】
<ガス供給装置>
本実施の形態に係るガス供給装置5は、ガス供給源であるガスボンベ32と、減圧弁34と、開閉弁35とを備えている。ガスボンベ32には1次ガス管36が接続され、比較的高圧の1次ガスが1次ガス管36に供給される。減圧弁34は1次ガス管36と2次ガス管37の間に接続されており、1次圧力のガスを樹脂に供給するのに適した2次圧力に減圧するようになっている。2次ガス管37には開閉弁35が設けられ、ガス注入口28に接続されている。開閉弁35は2次ガス管37のガス流路を開閉するようになっている。ガス流路を開くと2次圧力のガスがガス注入口28から加熱シリンダ17内に供給される。ガス流路を閉鎖するとガスの供給が停止されるようになっている。
【0017】
ガス供給装置5において2次ガス管37にはガス圧力計39が設けられ、ガスの2次圧力を検出するようになっている。つまり、実質的にガス注入口28から供給するガス圧力を検出していることになる。ガス圧力計39と開閉弁35はコントローラ4に接続され、2次圧力がコントローラ4に送信されると共に、コントローラ4が開閉弁35の開閉を制御するようになっている。次に説明するように本実施の形態において、開閉弁35は成形サイクルにおいて少なくとも1回は閉鎖するようになっていると共に計量工程において開状態になっているように制御されるようになっている。
【0018】
<発泡成形品の成形方法>
本実施の形態に係る射出成形機1によって実施する発泡成形品の成形方法を説明する。図3Aには、射出成形機1(図1参照)において実施する成形サイクルと、本実施の形態に係るガス供給装置5の開閉弁35つまり弁機構における操作とが並列に示されている。開閉弁35の開閉は成形サイクルと同期して所定のタイミングで実施されるが、開閉弁35の操作の説明はここではせず、最初に射出成形機1において実施する成形サイクルについてのみ説明する。
【0019】
射出成形機1において実施する成形サイクルでは最初に型締工程を実施する。つまり型締装置2(図1参照)を駆動して金型13、14を型締する。次いでスクリュ18を軸方向に駆動して射出工程を実施し、金型13、14に樹脂を射出する。なお、加熱シリンダ17(図2参照)にはガスが溶融した樹脂が予め計量されていたものとする。したがって金型13、14内で樹脂が発泡して発泡成形品が得られる。図3Aに示されているように、保圧工程を実施する。つまりスクリュ18により樹脂圧力を印可する。
【0020】
冷却工程を実施して金型13、14内に充填されている樹脂の固化を待つ。冷却工程の開始と同時に、あるいは冷却工程に遅れて計量工程を実施する。つまりスクリュ18を回転して樹脂を溶融し、計量する。このときガス注入口28(図2参照)からガスが供給されているので、樹脂とガスとが混練される。所定量の樹脂が計量されたら計量工程が完了する。発泡成形品は冷却に時間がかかるので、一般的に計量工程が完了しても冷却工程を所定時間継続する。なお、冷却に要する時間が短い発泡成形品の場合には、計量工程が完了するときすでに冷却工程が完了している場合もある。冷却工程が完了したら型開工程を実施する。すなわち型締装置2を駆動して金型13、14を型開きする。成形品を取り出す取出工程を実施する。次の成形サイクルを開始する。つまり型締工程に戻る。
【0021】
次に、ガス供給装置5の開閉弁35の制御を説明する。開閉弁35は、上で説明した射出成形機1の成形サイクルに同期して操作するようにする。具体的には、図3Aに示されているように計量工程よりも規定先行時間だけ先に開閉弁35を開く。そして計量工程が完了した後、規定遅延時間だけ遅れて開閉弁35を閉じるようにする。規定先行時間と規定遅延時間は予めエンジニアが設定するようになっており、図2に示されているように、コントローラ4に格納されている。コントローラ4は、設定されているこれら設定値つまり規定先行時間と規定遅延時間と、そして成形サイクルの計量工程のタイミングに基づいて開閉弁35を開閉する。
【0022】
開閉弁35が開くと、必然的にガスがガス注入口28(図2参照)から加熱シリンダ17内に供給されるので、適切にガスと樹脂とが混練されることになる。ガスは計量工程において消費されて2次圧力が減少するので、計量工程より規定先行時間だけ早くガス注入口28を開けてガスが安定的に供給されるようにしている。また計量工程が完了した直後は、ガス圧力が若干低下しているので、計量工程完了後、規定遅延時間だけ開閉弁35を開いておき、ガス圧力の上昇を待つ。開閉弁35を閉じると、ガス注入口28へのガスの供給が停止されるので、ガスが加熱シリンダ17(図2参照)内を上流側に流れる、いわゆるガス漏れを確実に防止することができる。そして、開閉弁35は成形サイクルにおいて1度は閉鎖されるので、ガス注入口28から樹脂が侵入するベントアップも防止される。
【0023】
<発泡成形品の成形方法の他の実施の形態>
発泡成形品の成形方法は色々な変形が可能である。例えば、開閉弁35を開くタイミングを計量工程より規定先行時間だけ早くする、と説明した。しかしながら、計量工程の開始のタイミングとすることもできる。また、開閉弁35を閉じるタイミングを計量工程の完了から規定遅延時間だけ遅いタイミングとする、と説明した。しかしながら、計量工程の完了のタイミングで開閉弁35を閉じてもよい。さらに、開閉弁35の開閉のタイミングを、成形サイクルの工程自体に同期させることもできる。図3Bには、このような実施の形態が示されている。すなわち、開閉弁35は成形サイクルの工程の1つである射出工程と同時に開くようにし、そして冷却工程が完了したときに閉じるようにしている。このように開閉弁35の開閉を成形サイクルの工程に同期して操作しても、実質的に同様の効果が得られる。
【0024】
<規定遅延時間、等の決定方法>
規定遅延時間や規定遅延時間については、予めエンジニアがコントローラ4に設定するように説明した。これらの時間、あるいは開閉弁35の開閉を同期させる工程については、エンジニアが自由に決定してよいが、開閉弁35を開いた状態で成形サイクルを繰り返す事前準備によって決定することもできる。これを説明する。事前準備では、図1図2に示されている本実施の形態に係る射出成形機1において開閉弁35を開状態にし、これを維持する。射出成形機1において成形サイクルを数回繰り返す。そして成形サイクルにおけるガス圧力の変化、および樹脂圧力の平均的な変化を得る。図4のグラフには、このようにして得られたガス圧力41と樹脂圧力42の平均的な変化の様子が示されている。グラフには、スクリュ18のスクリュ位置44と回転速度45も示されている。
【0025】
ここで、ガス圧力の適正な範囲を考える。図4には、ガス圧力の適正な範囲46が示されている。適正な範囲は次のように決めることができる。例えばその上限は、ガスが過剰に加熱シリンダ17内に供給されて加熱シリンダ17内を逆流しないようにするための圧力とする。その下限は、ガスが適切に供給されるために必要なガス圧力であり、これを下回ると安定供給がしにくくなるガス圧力とする。図4のグラフを見て分かるように、ガス圧力は計量工程において急激に低下して計量工程が完了した後に徐々に上昇している。つまりガス圧力の回復には時間がかかる。そこで、ガス圧力が適正な範囲46に復帰するタイミング48を探し、計量工程の完了後からの時間を計算して、これを規定遅延時間として決定することができる。
【0026】
一方、射出工程・保圧工程において、ガス圧力はそれほど上昇していないことも分かる。つまり開閉弁35(図2参照)を常時開いた状態にしても、射出・保圧工程においてガス圧力の急激な上昇は発生していない。そこで射出工程に連動して開閉弁35を開くように決定することができる。そうすると、計量工程においてガス圧力の急激な低下が発生する前に、予めガス圧力低下に備えることができる。
【0027】
このように開閉弁35を開閉するタイミング、および開閉弁35の開閉を同期させる工程については成形サイクルにおけるガス圧力の変動に基づいて決定することができるが、樹脂圧力の変動に基づいて決定してもよい。例えば図4において、樹脂圧力は符号49のタイミング以降、ガス圧力より高くなっている。そうするとベントアップの危険がある。そこで、この符号49のタイミングで開閉弁35を閉鎖するように決定することができる。
【0028】
なお、図4で示したガス圧力41や樹脂圧力42のグラフは、射出成形機1の構成によって、成形品によって、あるいは使用する樹脂によって大きく変わる。例えば、2次ガス管37(図2参照)が比較的長い場合にはガス圧力41が低下すると上昇するまでに時間を要する。あるいは、成形品が比較的小さい場合には射出する樹脂量が少ないので、ガス圧力41の変動も樹脂圧力42の変動も比較的小さくなる。したがって、規定遅延時間等の決定、あるいは開閉弁35を開閉する工程の決定においては、実際に使用する射出成形機1と実際に成形する成形品、使用する樹脂に対して、繰り返し成形サイクルを実施してガス圧力41と樹脂圧力42の変化を調べるべきである。
【0029】
<第2の実施の形態に係る射出成形機>
上では、開閉弁35を閉じるタイミングとして、計量工程の完了から規定遅延時間後とし、あるいは計量工程や冷却工程等の工程に同期するとして説明した。しかしながら、開閉弁35をガス圧力計39で測定されるガス圧力に基づいて、あるいは樹脂圧力センサ30で測定される樹脂圧力に基づいて成形サイクル毎にタイミングを決定して閉鎖するようにすることもできる。図5Aには、このように開閉弁35を操作する第2の実施の形態に係る射出成形機1Aが示されている。
【0030】
第2の実施の形態に係る射出成形機1Aは、コントローラ4Aに3個の設定値が格納されている。すなわち適正ガス圧力範囲と、適正樹脂圧力範囲と、規定保持時間とである。第2の実施の形態に係る射出成形機1Aは2通りの方法から開閉弁35の閉鎖のタイミングを決定することができる。第1の方法は、ガス圧力に基づいて決定する方法である。成形サイクルにおいて計量工程が完了したらコントローラ4Aはガス圧力計39で検出されるガス圧力を監視する。このガス圧力が適正ガス圧力範囲に達したら、開閉弁35を閉鎖する。あるいはガス圧力が適正ガス圧力範囲に達して規定保持時間だけ経過したら開閉弁35を閉鎖するようにする。
【0031】
第2の方法は、樹脂圧力に基づいて決定する方法である。成形サイクルにおいて計量工程が完了したらコントローラ4Aは樹脂圧力センサ30で検出される樹脂圧力を監視する。この樹脂圧力が適正樹脂圧力範囲に達したら開閉弁35を閉鎖する。あるいは樹脂圧力が適正樹脂圧力範囲に達して規定保持時間だけ経過したら開閉弁35を閉鎖するようにする。
【0032】
なお、開閉弁35を開くタイミングは例えば、計量工程の開始より規定先行時間だけ早く実施するように説明した。この規定先行時間は成形サイクル毎に調整するようにすることもできる。例えば、計量工程の開始のタイミングでガス圧力もしくは樹脂圧力を検出し、ガス圧力もしくは樹脂圧力が適正な範囲からずれている場合、その偏差の大きさに基づいて規定先行時間を調整することができる。例えば、計量工程の開始時においてガス圧力が適正な範囲に達していない場合、次回以降の成形サイクルにおいて先行規定時間を長く調整し、ガス圧力が適正な範囲になるようにすることができる。
【0033】
<第3の実施の形態に係る射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1については、装置自体の変形も可能である。図5Bには第3の実施の形態に係る射出成形機1Bが示されている。この実施の形態では、ガス供給装置5Bが変形されている。ガス供給装置5Bにおいて、まず弁機構が変形されている。すなわち開閉弁の代わりに注入弁51が採用されている。注入弁51は加熱シリンダ17に埋め込まれ、注入弁51がガス注入口28を兼ねている。ガス供給装置5Bにおいて、2次ガス管37に逆止弁52が設けられている点、ガスボンベ32、32が2本設けられている点も変形されている。さらにこの第2の実施の形態においては、加熱シリンダ17に樹脂圧力を測定するセンサは設けられていない。この第2の実施の形態に係る射出成形機1Bによっても、本実施の形態に係る発泡成形品の成形方法を実施することができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、ガスの供給は開閉弁35、あるいは注入弁51により制御するとしたが、逆止弁の上流側と下流側の圧力差により弁を制御することもできる。図5Bにおいて、規定遅延時間後に減圧弁34を操作して供給圧力を降下させる。すると、逆止弁を挟んでガス供給口のある下流側は高圧に、減圧弁側は低圧になる。そうすると圧力差により逆止弁が閉鎖するので、実質的に開閉弁35、あるいは注入弁51によりガス供給を止めたのと同じ効果を得ることができる。ガス供給を再開する時は、減圧弁34を操作して供給圧力を元の圧力に復帰させればよい。
以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 コントローラ
5 ガス供給装置 7 固定盤
8 可動盤 9 型締ハウジング
11 トグル機構 13 金型
14 金型 17 加熱シリンダ
18 スクリュ 19 スクリュ駆動装置
21 ホッパ 22 射出ノズル
24 供給区間 25 第1の圧縮・計量区間
26 飢餓区間 27 第2の圧縮・計量区間
28 ガス注入口 30 樹脂圧力センサ
32 ガスボンベ 34 減圧弁
35 開閉弁 36 1次ガス管
37 2次ガス管 39 ガス圧力計
41 ガス圧力 42 樹脂圧力
44 スクリュ位置 45 回転速度
46 ガス圧力の適正な範囲 51 注入弁
52 逆止弁
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B