(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127423
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及び、燃料電池システム運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230906BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230906BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230906BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20230906BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230906BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230906BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/0662
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031207
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】高須 俊樹
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB13
5H127BB18
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB53
5H127DC23
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で燃料電池の空気極に供給される空気の不純物を低減する。
【解決手段】燃料極12Aへ供給される燃料ガスと空気極12Bへ供給される空気により発電する燃料電池セルスタック12と、異物除去用の空気極用フィルタ24が設けられ、空気極用フィルタ24を介した外部空気を空気極12Aへ導入する空気極外部エア導入路と、可燃ガスを燃焼させる燃焼器と、異物除去用の燃焼器用フィルタが設けられ、前記燃焼器用フィルタを介した外部空気を前記燃焼器へ導入する燃焼空気導入路と、前記燃焼器からの燃焼排ガス及び前記空気極からの空気極オフガスを合流させて前記燃焼排ガス及び前記空気極オフガスから水を分離する水分離部と、前記水分離部で水が分離された後の混合ガスを前記空気極へ供給する循環流路と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給される空気により発電する燃料電池と、
異物除去用の空気極用フィルタが設けられ、前記空気極用フィルタを介した外部空気を前記空気極へ導入する空気極外部エア導入路と、
可燃ガスを燃焼させる燃焼器と、
異物除去用の燃焼器用フィルタが設けられ、前記燃焼器用フィルタを介した外部空気を前記燃焼器へ導入する燃焼空気導入路と、
前記燃焼器からの燃焼排ガス及び前記空気極からの空気極オフガスを合流させて前記燃焼排ガス及び前記空気極オフガスから水を分離する水分離部と、
前記水分離部で水が分離された後の混合ガスを前記空気極へ供給する循環流路と、
を備えた燃料電池システム。
【請求項2】
前記循環流路は、前記空気極用フィルタよりも下流側で前記空気極外部エア導入路と合流されている、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
発電中の前記燃料電池の電圧に基づいて、前記混合ガスを前記循環流路へ送出する循環流量を制御する、循環流量調整部、
を更に備えた、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給されるフィルタを通過した空気極用空気により発電する燃料電池を備えた燃料電池システム運転方法であって、
フィルタを通過した燃焼用空気を導入して可燃ガスを燃焼させる燃焼器からの燃焼排ガス、及び、前記空気極からの空気極オフガスを合流させて、前記燃焼排ガス及び前記空気極オフガスから水を分離し、
水が分離された後の混合ガスを前記空気極へ供給する、
燃料電池システム運転方法。
【請求項5】
発電中の前記燃料電池の電圧に基づいて、前記混合ガスを前記空気極へ供給する量を制御する、
請求項4に記載の燃料電池システム運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、及び燃料電池システム運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、工場や処理施設等の空気に不純物を多く含む環境に設置されることがある。発電用に燃料電池セルスタックのカソードへ不純物を含んだ空気を供給し続けると、燃料電池セルスタックの触媒被毒や構成部品の腐食等の劣化が加速し、システムの故障や寿命の低下を招くことが考えられる。
【0003】
そこで、特許文献1では、不純物を除去するために、空気を燃料電池へ送出するブロワの上流側にフィルタを設けている。しかしながら、フィルタを設けた場合でも、一時的に不純物濃度が高くなった場合には、フィルタで除去されない不純物が多くなり、燃料電池内へ流入してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、簡易な構成で燃料電池の空気極に供給される空気の不純物を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る燃料電池システムは、燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給される空気により発電する燃料電池と、異物除去用の空気極用フィルタが設けられ、前記空気極用フィルタを介した外部空気を前記空気極へ導入する空気極外部エア導入路と、可燃ガスを燃焼させる燃焼器と、異物除去用の燃焼器用フィルタが設けられ、前記燃焼器用フィルタを介した外部空気を前記燃焼器へ導入する燃焼空気導入路と、前記燃焼器からの燃焼排ガス及び前記空気極からの空気極オフガスを合流させて前記燃焼排ガス及び前記空気極オフガスから水を分離する水分離部と、前記水分離部で水が分離された後の混合ガスを前記空気極へ供給する循環流路と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムでは、空気極から排出された空気極オフガス及び可燃ガスを燃焼させた後の燃焼排ガスを合流させて、水分離部で水を分離する。このように、燃焼排ガスと空気極オフガスを合流させて水を分離することにより、別々に水を分離する場合と比較して、水分離部を簡素化することができる。
【0008】
そして、水が分離された後の混合ガスを循環流路から空気極へ供給して、混合ガス中の酸素を発電反応に利用する。空気極オフガス及び燃焼排ガスは、フィルタによって異物が除去された外部空気を発電または燃焼に供した後のガスであるため、異物の混入量は低減されている。したがって、空気極における新たな外部空気の利用量を減少させることができ、空気極への不純物の流入量を減少させることができる。
【0009】
請求項2に係る燃料電池システムは、前記循環流路は、前記空気極用フィルタよりも下流側で前記空気極外部エア導入路と合流されている。
【0010】
このように、混合ガスを空気極用フィルタよりも下流側で空気極外部エア導入路と合流させることにより、空気極用フィルタを通過する気体の流量を少なくすることができる。
【0011】
請求項3に係る燃料電池システムは、発電中の前記燃料電池の電圧に基づいて、前記混合ガスを前記循環流路へ送出する循環流量を制御する、循環流量調整部、を更に備えている。
【0012】
請求項3に係る燃料電池システムによれば、循環流量調整部により、発電中の燃料電池の電圧に基づいて燃焼排ガスの循環流量を制御することにより、空気極における新たな外部空気の利用量を減少させることができ、空気極への不純物の流入量を減少させることができる。
【0013】
請求項4に係る燃料電池システム運転方法は、燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給されるフィルタを通過した空気極用空気により発電する燃料電池を備えた燃料電池システム運転方法であって、フィルタを通過した燃焼用空気を導入して可燃ガスを燃焼させる燃焼器からの燃焼排ガス、及び、前記空気極からの空気極オフガスを合流させて、前記燃焼排ガス及び前記空気極オフガスから水を分離し、水が分離された後の混合ガスを前記空気極へ供給する。
【0014】
請求項4に係る燃料電池システム運転方法では、空気極から排出された空気極オフガス及び可燃ガスを燃焼させた後の燃焼排ガスを合流させて水を分離するので、別々に水を分離する場合と比較して、水の分離を簡易に行うことができる。そして、水が分離された後の混合ガスを空気極へ供給して、混合ガス中の酸素を発電反応に利用する。空気極オフガス及び燃焼排ガスは、フィルタによって異物が除去された外部空気を発電または燃焼に供した後のガスであるため、異物の混入量は低減されている。したがって、空気極における新たな外部空気の利用量を減少させることができ、空気極への不純物の流入量を減少させることができる。
【0015】
請求項5に係る燃料電池システム運転方法は、発電中の前記燃料電池の電圧に基づいて、前記混合ガスを前記空気極へ供給する量を制御する。
【0016】
請求項5に係る燃料電池システム運転方法によれば、発電中の燃料電池の電圧に基づいて燃焼排ガスの循環流量を制御することにより、空気極における新たな外部空気の利用量を減少させることができ、空気極への不純物の流入量を減少させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る燃料電池システム及び燃料電池システム運転方法によれば、簡易な構成で燃料電池の空気極に供給される空気の不純物を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの制御部関連の構成図である。
【
図3】電圧と循環流量の関係を規定する循環流量調整テーブルの一例である。
【
図5】第2実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
燃料電池システム10Aは、ユーザー宅や、集合住宅、工場等に設置されている、発電システムである。
【0021】
図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aの主要構成の概略が示されている。本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aは、主要な構成として、燃料電池セルスタック12、改質器14、燃焼器16、凝縮器18、改質水タンク20、イオン交換樹脂22、空気極用フィルタ24、燃焼器用フィルタ26、及び制御部30を備えている。
【0022】
改質器14には、原料ガス供給管P1が接続されており、原料ガス供給ブロワB1により、原料ガス供給管P1から原料ガスが改質器14へ供給される。原料ガスとしては、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、メタン、都市ガス、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。また、バイオガスを用いてもよい。
【0023】
改質器14では、原料ガスを改質し、水素を含む燃料ガスを生成する。改質器14は、燃料電池セルスタック12の燃料極12Aと接続されている。改質器14で生成された燃料ガスは、燃料ガス管P2を介して燃料電池セルスタック12の燃料極12Aに供給される。
【0024】
燃料電池セルスタック12は、積層された複数の燃料電池セルを有するセルスタックである。燃料電池セルスタック12は、本発明における燃料電池の一例であり、個々の燃料電池セルは、電解質層(不図示)と、当該電解質層の表裏面にそれぞれ積層された燃料極12A、及び空気極12Bと、を有している。なお、燃料電池セルスタック12として、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)等、種々の燃料電池を適用することができる。本実施形態では、PEFCを例に説明する。
【0025】
燃料電池セルスタック12の空気極12Bには、空気供給管P3の一端が接続されており、空気供給管P3には、空気供給ブロワB2が接続されている。空気供給管P3の空気供給ブロワB2よりも上流側には、空気極用フィルタ24が設けられている。空気極12Bには、空気極用フィルタ24を通過した外部空気が空気供給ブロワB2により供給される。空気極用フィルタ24により、外部空気の異物が除去される。燃料電池セルスタック12では、燃料極12A及び空気極12Bにおける発電反応により、発電され、電力が不図示の回路に出力され、回路に出力された電力の電圧が、電圧検知部13により検知される。電圧検知部13は、後述する制御部30と接続されており、検知した電圧を制御部30へ出力する。
【0026】
燃料極12Aからは燃料極オフガス路P5へ燃料極オフガスが排出され、空気極12Bからは空気極オフガス路P4へ空気極オフガスが排出される。燃料極オフガスには、発電反応で未反応の燃料ガスが含まれており、この燃料極オフガスは、燃料極オフガス路P5から燃焼器16へ供給されて燃焼に供される。空気極オフガスには、発電反応で未反応の酸素、発電反応で生成された水が含まれている。空気極オフガスは、空気極オフガス路P4で後述する燃焼排ガスと合流し、凝縮器18へ送出される。
【0027】
燃焼器16は、改質器14と隣接して設けられ、燃焼熱により改質器14を加熱する。燃焼器16には、燃焼用空気供給管P6の一端が接続されており、燃焼用空気供給管P6には、燃焼用空気供給ブロワB3が接続されている。燃焼用空気供給管P6の燃焼用空気供給ブロワB3よりも上流側には、燃焼器用フィルタ26が設けられている。燃焼器16には、燃焼器用フィルタ26を通過した外部空気が、燃焼用空気供給ブロワB3により供給される。燃焼器用フィルタ26により、外部空気の異物が除去される。燃焼器16には、燃料極オフガス路P5から燃料極オフガスが供給され、燃焼用空気供給管P6からの空気に含まれる酸素との反応により燃料極オフガス中の可燃成分が燃焼する。
【0028】
燃焼器16には、燃焼排ガス路P7の一端が接続されており、燃焼排ガス路P7の他端は、空気極オフガス路P4と合流している。燃焼器16から排出された燃焼排ガスは、空気極オフガスと合流して(以下、合流後のガスを「混合ガス」と称する)凝縮器18へ送出される。
【0029】
凝縮器18には、空気極オフガス路P4の他端が接続され、混合ガス中の気相の水が凝縮され気液分離される。液相となった水は、流路P11を経て、改質水タンク20へ送出される。流路P11には逆止弁11が設けられている。
【0030】
水が除去された混合ガスは、混合路P8へ送出される。混合路P8には、流量調整三方弁19が設けられており、混合路P8は、循環流路P9と排出路P10に分岐されている。循環流路P9の下流端は、空気供給管P3に、空気極用フィルタ24よりも下流側且つ空気供給ブロワB2よりも上流側で接続されている。排出路P10は、水除去後の混合ガスを外部に排出する。流量調整三方弁19は、後述する制御部30と接続されており、制御部30からの信号に基づいて、循環流路P9へ送出する混合ガス量を調整する。
【0031】
改質水タンク20へ送出された水(液相)は、規定量が貯留され、規定を超える量が排出管P13から外部に排出される。改質水タンク20に貯留された水は、ポンプ21の駆動により、改質水供給路P12からイオン交換樹脂22を経て改質器14へ改質水として供給される。イオン交換樹脂22は、イオン交換により、通過する水の不純物を除去する。
【0032】
図2に示されるように、制御部30は、ハードウェアとして、プロセッサ32及びメモリ34を備える。プロセッサ32は、CPU(Central Processing Unit)等を有する。メモリ34は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージ等を有する。
【0033】
ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。ROM又はストレージには、燃料電池システム10Aを制御するためのプログラムが格納されている。プロセッサ32は、プログラム35を読み出し、RAMを作業領域としてプログラム35を実行する。
【0034】
メモリ34の記憶領域36には、後述する循環流量調整テーブルT1、電圧検知部13から出力された電圧データD、当該燃料電池システム10の運転データ等が記憶される。
【0035】
循環流量調整テーブルT1は、電圧検知部13から出力された電圧データDに応じて循環流路P9へ送出する混合ガス量(以下「循環流量C」と称する)を調整するためのものである。「循環流量C」は、一例として、
図3に示されるように、電圧V2の時に循環流量C1で調整が開始され、電圧低下に比例して循環流量Cを増加させ、電圧V1の時に循環流量C2で調整することができる。電圧V2は、外部空気に混入する異物により影響を受けている時の電圧低下を考慮して設定される。すなわち、電圧データDの電圧Vが電圧V2以下となった場合には、外部空気に混入する異物により影響を受けていると判断できる電圧である。電圧V2は電圧V1よりも大きい値で設定される。なお、電圧V1は、一例として、外部空気に混入する異物による電圧低下を超えた異常な低電圧に設定することができる。
【0036】
また、調整終了電圧V3を設定し、後述する循環調整処理において、電圧VがV3を超えている場合に、空気極12Bへの混合ガスの供給を停止する指標とする。電圧V3は、外部空気に混入する異物により影響を受けていないと判断できる電圧V2よりも大きい値で設定される。
【0037】
プロセッサ32は、機能的な構成として、循環流量調整部38を備えている。循環流量調整部38の機能部は、プロセッサ32がプログラム35を実行することにより実現される。
【0038】
操作パネル40は、表示器、ランプ、及び、スイッチ等を有している。操作パネル40は、燃料電池システム10Aの動作及び設定等を変更できるスイッチを有している。通信器42は、例えばモデムである。通信器42は、ネットワークNを通じて、燃料電池システム10Aを他の器機と通信可能に接続する機能を有する。
【0039】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0040】
燃料電池システム10Aにおいては、原料ガス供給ブロワB1によって、原料ガスが改質器14へ送出される。改質器14では、改質反応により、原料ガスから水素を含む燃料ガスが生成される。燃料ガスは燃料ガス管P2を介して燃料電池セルスタック12の燃料極12Aに供給される。燃料電池セルスタック12の空気極12Bには、空気極用フィルタ24を通過して、異物が除去された外部空気が、空気供給ブロワB2により供給される。燃料電池セルスタック12では、燃料極12A及び空気極12Bにおける発電反応により、出力された電力の電圧が、電圧検知部13により検知され、検知された電圧が制御部30へ出力される。制御部30では、受信した電圧データDを記憶領域36に記憶する。
【0041】
制御部30では、燃料電池システム10Aの運転中、
図4に示す循環調整処理プログラムが読み出され、プロセッサ32により実行される。
【0042】
まず、ステップS10で、記憶領域36から最新の電圧データDを読み出し、ステップS11で、電圧がV3以上かどうかを判断する。電圧がV3以下の場合には、ステップS12で、電圧がV2以上かどうかを判断する。電圧がV2以下の場合には、ステップS14で、電圧がV1以上かどうかを判断する。電圧がV1よりも低いと判断された場合には、異常な低電圧であるとして、ステップS20で異常を警告し、処理を終了する。異常の警告は、操作パネル40への警告表示や、警告音の出力などで実行することができる。
【0043】
ステップS14で、電圧がV1以上と判断された場合には、電圧Vが、外部空気に混入する異物により影響を受けていると判断できるため、外部空気の取り込み量を減らすために、ステップS16へ進む。ステップS16では、循環流量調整テーブルT1を参照し、読み出した電圧に応じた循環流量Cを決定する。そして、ステップS18で、流量調整三方弁19へ信号を出力して循環流量Cを調整する。これにより、適切な流量の混合ガスが空気極12Bへ供給され、当該供給量に応じて外部空気の取り込み量を減少させることができる。
【0044】
ステップS19で運転終了の指示があったかどうかを判断し、運転終了指示があった場合には、本処理を終了する。運転継続の場合には、ステップS10へ戻って処理を繰り返す。
【0045】
ステップS19での判断が否定された後、ステップS10へ戻り、ステップS11で、電圧がV3よりも大きいと判断された場合には、電圧Vが、空気極12Bへの混合ガスの供給を停止する指標を超えているため、ステップS13で、流量調整三方弁19へ信号を出力して循環流量Cをゼロにする。そして、ステップS10へ戻る。
【0046】
ステップS19での判断が否定された後、ステップS10へ戻り、ステップS11で判断が肯定された後、ステップS12で、電圧がV2よりも大きいと判断された場合には、空気極12Bへの混合ガスの供給を続けるため、ステップS13を経由せずにステップS10へ戻る。
【0047】
このように、循環調整処理により、電圧Vに応じて循環流路P9へ送出する混合ガスの流量を調整することにより、適切な流量の混合ガスを空気極12Bへ供給し、混合ガス中の酸素を空気極12Bで利用することができる。これにより、混合ガスの当該供給量に応じた量の外部空気の取り込みを減少させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、空気極オフガスと燃焼排ガスを合流させた後の混合ガスに含まれている水を凝縮器18で除去するので、簡易な構成で水の除去を行うことができる。このように混合ガスから水を除去することにより、空気極12Bへの過剰な水の流入を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、循環流路P9の下流端を空気供給管P3に接続する位置を、空気極用フィルタ24よりも下流側且つ空気供給ブロワB2よりも上流側としたので、空気極用フィルタ24を通過する気体の流量を少なくすることができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では第1実施形態と同様の部分について同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態の燃料電池システム10Bは、第1実施形態の燃料電池システム10Aの流量調整三方弁19に代えて、循環流路P9に電磁弁44A、オリフィス44Bを備えている。電磁弁44A、オリフィス44B以外の構成については、
図1に示される、第1実施形態の燃料電池システム10Aと同一である。
【0052】
図5に示されるように、燃料電池システム10Bは、循環流路P9に電磁弁44A、オリフィス44Bを備えている。電磁弁44Aはオリフィス44Bよりも上流側に設けられており、電磁弁44Aが開放状態の時、オリフィス44Bにより、循環流路P9へ流れる混合ガスの流量が一定量になるように絞られている。循環流路P9へ流れる混合ガスの流量は、電圧Vの低下により必要とされる循環流量に設定されている。電磁弁44Aは、制御部30と接続されており、制御部30により開閉が制御される。
【0053】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Bの動作について説明する。
【0054】
制御部30では、燃料電池システム10Bの運転中、
図6に示す循環制御処理プログラムが読み出され、プロセッサ32により実行される。
【0055】
まず、ステップS10~ステップS14については、第1実施形態と同様に実行される。ステップS14で、電圧がV1以上と判断された場合には、電圧Vが、外部空気に混入する異物により影響を受けていると判断できるため、外部空気の取り込み量を減らすために、ステップS15で電磁弁44Aを開放する。これにより、所定の循環流量の混合ガスが空気極12Bへ供給され、当該供給量に対応した外部空気の取り込み量を減少させることができる。
【0056】
ステップS18で運転終了の指示があったかどうかを判断し、運転終了指示があった場合には、ステップS19で電磁弁44Aを閉鎖して本処理を終了する。運転継続の場合には、ステップS10へ戻って処理を繰り返す。
【0057】
ステップS18での判断が否定された後、ステップS10へ戻り、ステップS11で、電圧がV3よりも大きいと判断された場合には、電圧Vが、空気極12Bへの混合ガスの供給を停止する指標を超えているため、ステップS17で、電磁弁44Aへ信号を出力して電磁弁44Aを閉鎖する。そして、ステップS10へ戻る。
【0058】
ステップS18での判断が否定された後、ステップS10へ戻り、ステップS11で判断が肯定された後、ステップS12で、電圧がV2よりも大きいと判断された場合には、空気極12Bへの混合ガスの供給を続けるため、ステップS17を経由せずにステップS10へ戻る。
【0059】
このように、循環制御処理により、循環流路P9への混合ガスの供給有無を制御することにより、混合ガスを空気極12Bへ供給し、当該供給量に応じた量の外部空気の取り込みを減少させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10A、10B 該燃料電池システム
12 燃料電池セルスタック(燃料電池)
12A 燃料極
12B 空気極
16 燃焼器
18 凝縮器(水分離部)
24 空気極用フィルタ
26 燃焼器用フィルタ
30 制御部(循環流量調整部)
38 循環流量調整部
P3 空気供給管(空気極外部エア導入路)
P6 燃焼用空気供給管(燃焼空気導入路)
P9 循環流路