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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127439
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/34 20140101AFI20230906BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20230906BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230906BHJP
   B60L 53/14 20190101ALN20230906BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
B60L53/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031238
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250KK02
2E250LL13
2E250PP04
2E250RR11
3D038CA11
3D038CA32
3D038CC16
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA03
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC24
5H125FF11
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現できるリッド開閉装置を提供する。
【解決手段】リッド開閉装置10は、ベース20と、リッド30と、枢着部36及び係合部38を有し、後退位置と進出位置の間を移動可能なアーム32と、駆動源51から受けた駆動力によってアーム32を移動させる回転体52と、アーム32が後退位置にあるときにロック位置とアンロック位置の間を回転可能なロック部材40と、アーム32を進出位置に移動させるときにロック部材40をアンロック位置側に回転させるカム53aと、アーム32を進出位置に移動させるときに、回転体52の回転開始に対して、遅延して枢着部36の回転を開始させる差動機構60とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの受給口の内側に配置されるベースと、
前記受給口を開放可能に閉塞するためのリッドと、
前記ベースに軸支された一端側の枢着部、前記リッドに連なる他端側の連続部、及び前記枢着部に設けられた係合部を有し、前記パネル内に退避して前記リッドによって前記受給口を閉塞した後退位置と、前記パネル外に突出して前記受給口を開放させた進出位置との間を移動可能なアームと、
駆動源から受けた駆動力を前記枢着部に伝達して、前記アームを前記後退位置と前記進出位置との間で移動させる回転体と、
前記枢着部に隣接して前記ベースに軸支され、前記アームが前記後退位置にあるとき、前記係合部に係合したロック位置と、前記係合部との係合が解除されたアンロック位置との間を、前記枢着部の回転軸に沿って延びる回転軸まわりに回転可能なロック部材と、
前記回転体に連動して回転可能で、前記後退位置の前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転力を伝達して前記ロック位置の前記ロック部材を前記アンロック位置側に回転させるカムと、
前記後退位置の前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転開始に対して、遅延して前記枢着部の回転を開始させるための差動機構と
を備える、リッド開閉装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記枢着部の回転軸に沿って前記枢着部に隣接して配置され、
前記回転体には、前記枢着部の回転軸が延びる方向から見て、前記係合部が露出する角度範囲で、前記回転体の外周面から内向きに窪む切り欠きが設けられており、
前記カムは、前記切り欠きのうち前記枢着部の回転軸まわりの周方向に対向する一対の壁面のうちの一方からなり、
前記ロック部材は、前記係合部に係合可能な係合凸部と、前記枢着部の回転軸に沿って前記係合凸部に隣接して設けられ、前記カムに当接可能なカムフォロワとを備える、
請求項1に記載のリッド開閉装置。
【請求項3】
前記枢着部の回転軸が延びる方向から見て、前記枢着部は円形状であり、
前記係合部は、前記枢着部の外周面から内向きに窪む溝状で、前記枢着部の径方向に延びる当接面を有しており、
前記係合凸部は、前記当接面が当接可能な断面円弧状の先端部を有し、前記ロック部材が前記ロック位置にあるとき、前記当接面に対して交差する方向に延びている、
請求項2に記載のリッド開閉装置。
【請求項4】
前記ロック部材が前記ロック位置にあるとき、前記係合凸部は、前記当接面に対して直交方向に延びる第1回転角度位置、又は前記第1回転角度位置よりも前記枢着部の回転軸側に回転した第2回転角度位置に位置する、請求項3に記載のリッド開閉装置。
【請求項5】
前記ロック位置を越える前記ロック部材の回転を規制するストッパを備える、請求項4に記載のリッド開閉装置。
【請求項6】
前記枢着部の回転軸が延びる方向から見て、前記係合凸部は、前記カムフォロワよりも前記枢着部の回転軸側に突出しており、
前記後退位置の前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記ロック部材は、前記カムフォロワと前記カムの摺接によって前記ロック位置から前記アンロック位置側に回転された後、引き続いて前記係合凸部と前記係合部の外端部との摺接によって前記アンロック位置に回転される、
請求項2から5のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【請求項7】
前記差動機構は、
前記枢着部及び前記回転体のうちの一方に設けられた凸部と、
前記枢着部及び前記回転体のうちの他方に設けられ、前記凸部が内部に配置された凹部と
を有し、
前記枢着部の回転軸まわりの前記凸部の角度範囲は、前記枢着部の回転軸まわりの前記凹部の角度範囲よりも小さく、
前記枢着部の回転軸まわりの周方向における前記凸部と前記凹部の間には、定められた差動角度範囲の隙間を有し、
前記回転体の回転によって、前記周方向における前記凸部及び前記凹部それぞれの対向面が当接して押圧することで、前記枢着部が回転する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【請求項8】
前記ベースは、前記回転体を回転可能に配置する第1配置部と、前記第1配置部と連通し、前記ロック部材を回転可能に配置する第2配置部とを有し、
前記第1配置部と前記第2配置部は、前記駆動源と前記回転体の接続部を貫通させる貫通孔を有するカバーによって覆われている、
請求項1から7のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【請求項9】
前記アンロック位置の前記ロック部材を前記ロック位置に付勢する付勢部材を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、電気自動車に用いられるリッド開閉装置が開示されている。特許文献1のリッド開閉装置は、リッドを自動開閉するためのモータを備える。特許文献2のリッド開閉装置は、リッドをロックするロックピンをロック位置とアンロック位置に進退させるアクチュエータを含むロック機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-210473号公報
【特許文献2】特開2011-240753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリッド開閉装置では、閉状態のリッドを開放不可能にロックできないため、セキュリティ性について改善の余地がある。特許文献1のリッド開閉装置に特許文献2のロック機構を適用すれば、セキュリティ性を向上できる。この場合、リッドの開閉用とロック用の2つの駆動源が必要になるため、リッド開閉装置の製造コストが増大する。
【0005】
本発明は、コストの増大を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現できるリッド開閉装置を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パネルの受給口の内側に配置されるベースと、前記受給口を開放可能に閉塞するためのリッドと、前記ベースに軸支された一端側の枢着部、前記リッドに連なる他端側の連続部、及び前記枢着部に設けられた係合部を有し、前記パネル内に退避して前記リッドによって前記受給口を閉塞した後退位置と、前記パネル外に突出して前記受給口を開放させた進出位置との間を移動可能なアームと、駆動源から受けた駆動力を前記枢着部に伝達して、前記アームを前記後退位置と前記進出位置との間で移動させる回転体と、前記枢着部に隣接して前記ベースに軸支され、前記アームが前記後退位置にあるとき、前記係合部に係合したロック位置と、前記係合部との係合が解除されたアンロック位置との間を、前記枢着部の回転軸に沿って延びる回転軸まわりに回転可能なロック部材と、前記回転体に連動して回転可能で、前記後退位置の前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転力を伝達して前記ロック位置の前記ロック部材を前記アンロック位置側に回転させるカムと、前記後退位置の前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転開始に対して、遅延して前記枢着部の回転を開始させるための差動機構とを備える、リッド開閉装置を提供する。
【0007】
駆動源の駆動力を枢着部に伝達してアームを後退位置と進出位置に移動させる回転体を備えるため、アームを介してリッドを自動開閉できる。また、アームが後退位置にあるとき、枢着部の係合部に係合したロック位置と、係合部との係合が解除されたアンロック位置との間を回転可能なロック部材を備えるため、アームを介して閉状態のリッドをロックできる。また、後退位置のアームを進出位置に移動させるとき、回転体の回転力を伝達してロック位置のロック部材をアンロック位置側に回転させるカムを備えるため、リッドの開作動時にはロック部材によるロックを解除できる。このように、1個の駆動源によって、リッドの自動開閉と、ロック部材によるリッドのロックを実現できるため、2個の駆動源を搭載する場合と比較して、リッド開閉装置の大型化と高コスト化を抑えつつ、セキュリティ性を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コストの増大を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るリッド開閉装置の斜視図。
図2】開状態のリッド開閉装置の平面図。
図3】閉状態のリッド開閉装置の平面図。
図4】背面側から見たリッド開閉装置の分解斜視図。
図5】軸受部の分解斜視図。
図6図3のVI-VI線断面図
図7図3のVII-VII線断面図
図8図7のVIII-VIII線断面図。
図9図7のIX-IX線断面図。
図10】スピンドル、インプットカム、及びロックピンの分解斜視図。
図11図10とは異なる方向から見たスピンドル、インプットカム、及びロックピンの分解斜視図。
図12】スピンドルの平面図。
図13】ロックピンの平面図。
図14】インプットカムの平面図。
図15】リッドの開作動時のインプットカム、スピンドル、及びロックピンの動きを示すグラフ。
図16】リッドの閉作動時のインプットカム、スピンドル、及びロックピンの動きを示すグラフ。
図17A】リッド開作動時の第1状態を示す図8と同様の断面図。
図17B】リッド開作動時の第1状態を示す図9と同様の断面図。
図18A】リッド開作動時の第2状態を示す図8と同様の断面図。
図18B】リッド開作動時の第2状態を示す図9と同様の断面図。
図19A】リッド開作動時の第3状態を示す図8と同様の断面図。
図19B】リッド開作動時の第3状態を示す図9と同様の断面図。
図20A】リッド開作動時の第4状態を示す図8と同様の断面図。
図20B】リッド開作動時の第4状態を示す図9と同様の断面図。
図21A】リッド閉作動時の第1状態を示す図8と同様の断面図。
図21B】リッド閉作動時の第1状態を示す図9と同様の断面図。
図22A】リッド閉作動時の第2状態を示す図8と同様の断面図。
図22B】リッド閉作動時の第2状態を示す図9と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るリッド開閉装置10を示す。リッド開閉装置10は、充電プラグ(図示せず)が接続される給電コネクタ(受給部)15を備え、自動車のサイドパネル(パネル)1に取り付けられている。但し、受給部は、ガソリン及び軽油等の液体燃料、並びに水素及びLPガス等の気体燃料のうちのいずれかを補給するためのものでもよい。
【0012】
図面に付したX方向は自動車の車長方向であり、Y方向は自動車の車幅方向であり、Z方向は自動車の車高方向である。個々の図において、X方向の矢印が示す向きが前側であり、矢印とは逆向きが後側である。Y方向の矢印が示す向きが車内側(内側)であり、矢印とは逆向きが車外側(外側)である。Z方向の矢印が示す向きが上側であり、矢印とは逆向きが下側である。
【0013】
図1を参照すると、サイドパネル1には、車幅方向Yに貫通した受給口2が設けられている。車幅方向Yから見て受給口2の形状は、本実施形態では概ね楕円形状であるが、必要に応じて変更可能である。
【0014】
図1から図3を参照すると、リッド開閉装置10は、サイドパネル1に対して車幅方向Yの内側に取り付けられるベース20と、受給口2を開放可能に閉塞するリッド30とを備える。リッド30は、一端側がベース20に軸支されたアーム32を備える。アーム32は、第1アーム部34と第2アーム部35によって構成されたアーム本体33と、枢着部36の一部を構成するスピンドル37とを備える。
【0015】
リッド開閉装置10は更に、図3に示す閉位置にリッド30が回転した状態でアーム32をロックするロックピン(ロック部材)40、トーションスプリング(付勢部材)44、及びアーム32とロックピン40を移動させる駆動機構50とを備える。駆動機構50は、モータ(駆動源)51と、カム面(カム)53aを有するインプットカム52とを備える。図5を参照すると、本実施形態の駆動機構50は、スピンドル37に駆動力を伝達してリッド30を開閉させる差動機構60を備える。差動機構60は、閉位置のリッド30を開位置に回転させるとき、ロックピン40の回転開始に対してスピンドル37の回転を遅延させる。
【0016】
駆動機構50によってアーム32は、差動機構60を介してサイドパネル1外へ突出した図2に示す進出位置と、サイドパネル1内に退避した図3に示す後退位置との間を回転される。リッド30は、図2に示すようにアーム32が進出位置に回転したときに受給口2を開放した姿勢(開位置)になり、図3に示すようにアーム32が後退位置に回転したときに受給口2を閉塞した姿勢(閉位置)になる。また、駆動機構50によってロックピン40は、図3に示すロック位置から図2に示すアンロック位置に回転(移動)される。差動機構60によってアーム32は、ロック位置からアンロック位置側へのロックピン40の移動開始に対して、遅延して回転が開始される。図2に示すアンロック位置のロックピン40は、トーションスプリング44によって図3に示すロック位置に付勢される。
【0017】
次に、ベース20、リッド30、アーム32、ロックピン40、トーションスプリング44、駆動機構50、及び差動機構60について具体的に説明する。
【0018】
以下の説明では、駆動機構50によるアーム32の回転に伴うリッド30の回転を、単に駆動機構50によるリッド30の回転と言うことがある。また、ロックピン40によるアーム32のロック又はアンロックを、ロックピン40によるリッド30のロック又はアンロックと言うことがある。
【0019】
図1及び図4を参照すると、ベース20は、受給口2を塞ぐベース本体21と、アーム32を軸支する軸受部24とを備える。
【0020】
ベース本体21には、給電コネクタ15を取り付ける取付部22が設けられ、閉位置のリッド30とベース本体21との間をシールするシール部材23が取り付けられている。
【0021】
図4を参照すると、取付部22は、車幅方向Yの内側へ窪む凹部22aを備え、この凹部22aの底に取付口22bが形成されている。取付口22bには、車幅方向Yの内側から給電コネクタ15が取り付けられている。これにより、図1に示すように、給電コネクタ15の接続部15aは、受給口2内に位置し、リッド30の解放時に受給口2を介して車外側に露出する。
【0022】
図1を参照すると、シール部材23は、受給口2の形状に対応する形のリング状であり、ベース本体21の外周縁に取り付けられている。シール部材23は、ベース本体21から受給口2に向けて車幅方向Yの外側に突出し、図3に示す閉位置のリッド30に圧接され、ベース本体21とリッド30との間を水密にシールする。シール部材23は、図2に示す開位置のリッド30には圧接されない。
【0023】
図1及び図4を参照すると、ベース本体21には更に、車幅方向Yから見て受給口2内に位置するように、アーム32を進退可能に挿通する挿通孔21aと、図示しないスイッチを配置する開口21bとが設けられている。
【0024】
図4を参照すると、軸受部24は、ベース本体21と一体構造であり、取付部22に対して車長方向Xの前側に隣接し、車幅方向Yの内側に突出している。軸受部24は、図4において上側に位置する端壁部25、図4において下側に位置する端壁部26、及び端壁部25,26を連結する側壁部27を備える。端壁部25,26は、車高方向Zに間隔をあけて設けられ、いずれもXY平面に沿って延びている。端壁部25は挿通孔21aの上側から車幅方向Yの内側へ突出し、端壁部26は挿通孔21aの下側から車幅方向Yの内側へ突出している。側壁部27は、端壁部25,26それぞれの車長方向Xの前端間と車幅方向Yの外端間とを閉鎖している。端壁部25,26の車長方向Xの後端間と端壁部25,26の車幅方向Yの内端間とは開放され、端壁部25,26間には隙間が形成されている。
【0025】
図5及び図6を参照すると、端壁部25には、駆動機構50のインプットカム52を回転可能に配置する第1配置部25a、ロックピン40を回転可能に配置する第2配置部25b、及びトーションスプリング44を配置する第3配置部25cが設けられている。なお、配置部25a~25cの具体的構成については後に詳述する。
【0026】
図1及び図4を参照すると、第1配置部25aから第3配置部25cの上端は、カバー28によって覆われている。カバー28内には、ロックピン40、トーションスプリング44、及びインプットカム52が収容されている。カバー28の外部には、駆動機構50のモータ51を取り付ける取付片28aが突設されている。カバー28には、外部のモータ51と内部のインプットカム52を接続するための貫通孔28bとが設けられている。
【0027】
図1及び図3を参照すると、リッド30は、受給口2よりも小さくシール部材23よりも大きい板状である。リッド30は、軸受部24へのアーム32の軸支によってベース20に対して回転可能であり、受給口2を開放可能に閉塞する。リッド30は、図3に示す閉状態でシール部材23内に位置し、ベース本体21に向けて突出する凸部30aを備える。凸部30aには、ベース本体21に圧接されるシール部材31が取り付けられている。
【0028】
アーム32は、挿通孔21aを通してベース20の車幅方向Yの内側から外側に跨がって配置されている。図5及び図6を参照すると、アーム32は、軸受部24に軸支された枢着部36を備える。より具体的には、アーム32は、第1アーム部34と第2アーム部35とによって構成されたアーム本体33と、枢着部36の一部を構成するスピンドル37とを備える。
【0029】
図1から図3を参照すると、第1アーム部34は、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向に延びる円弧状であり、挿通孔21aに挿通されている。第1アーム部34は、車幅方向Yの外側に位置する先端(アーム32の他端側)に、リッド30の凸部30aに連なる連続部34aを備える。
【0030】
図5及び図6を参照すると、第2アーム部35は、板状で、端壁部25,26間の隙間に差し込まれ、軸受部24から車幅方向Yの内側へ突出している。第2アーム部35の車幅方向Yの内端には、第1アーム部34が機械的に接続されている。第2アーム部35は、車幅方向Yの外端(アーム32の一端側)には筒部35aが形成されている。この筒部35aにスピンドル37が取り付けられている。筒部35aとスピンドル37によって枢着部36が構成されている。
【0031】
筒部35aには、車高方向Zに貫通した非円形状の取付孔35bが設けられている。取付孔35bの軸線が枢着部36の回転軸Aである。
【0032】
図5及び図6を参照すると、スピンドル37は、取付部37a、フランジ部37b、及び軸部37cを備える。図9及び図20Bを参照すると、駆動機構50によってスピンドル37は、図3に示す後退位置のアーム32を図2に示す進出位置に開回転させるときに向きd1に回転し、図2に示す進出位置のアーム32を図3に示す後退位置に閉回転させるときに向きd2に回転する。
【0033】
スピンドル37は、軸着部24の第1配置部25aに車高方向Zの上側から差し込んで取り付けられている。第1配置部25aは、端壁部25を車高方向Zに貫通した円形状の貫通孔からなる。
【0034】
取付部37aは、全体として棒状であり、取付孔35bの断面形状に対応する非円形の断面形状を有する。取付孔35b内への取付部37aの取り付けによって、スピンドル37と筒部35aが一体に回転する。
【0035】
フランジ部37bは、取付部37aの上端に連なり、筒部35aの車高方向Zの上側に位置する。フランジ部37bは、枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、円形状の筒部35aの直径と同じ直径の円形状であり、端壁部25の第1配置部25aの孔壁に回転可能に支持されている。軸受部24へのスピンドル37の取り付けによって、フランジ部37bが第1配置部25aである貫通孔の底を塞ぐ。フランジ部37bの中心には、回転軸Aと一致する軸線を有し、インプットカム52を軸支する軸部37dが突設されている。フランジ部37bには更に、ロックピン40が係合する係合溝(係合部)38と、差動機構60を構成する凹部39とが設けられている。なお、係合溝38と凹部39については後に詳述する。
【0036】
軸部37cは、取付部37aの下端に設けられ、筒部35aから車高方向Zの下側に突出している。軸受部24へのスピンドル37の取り付けによって、軸部37cは、第1配置部25aの車高方向Zの下側に対応するように設けられた端壁部26の軸孔26a内に配置される。軸孔26a内への軸部37cの配置と、第1配置部25a内へのフランジ部37bの配置によって、軸受部24にスピンドル37が回転可能に支持される。
【0037】
図5図10、及び図11を参照すると、ロックピン40は、筒部40aとロックピン本体40bを備える。アーム32が後退位置にあるとき、ロックピン40は、図3に示すロック位置と図2に示すアンロック位置との間を移動可能である。図9を参照すると、ロック位置のロックピン40は、スピンドル37の係合溝38に係合し、図20Bを参照すると、アンロック位置のロックピン40は、係合溝38との係合が解除されている。
【0038】
図8を参照すると、ロックピン40は、トーションスプリング44によってアンロック位置からロック位置に向けて付勢されている。トーションスプリング44の付勢力によるロックピン40の回転は、ストッパ25fへの当接によって停止する。ストッパ25fは、第1配置部25aと第2配置部25bの間の隔壁の一部によって構成され、ロック位置を越えるロックピン40の回転を規制する。なお、図8中の符号45は、トーションスプリング44を介してロック位置のロックピン40をアンロック位置に手動で回転させるエマージェンシ用のロック解除部材である。
【0039】
図5及び図8を参照すると、ロックピン40は、軸受部24の第2配置部25bに配置されている。第2配置部25bは、上端開口の凹みからなり、第1配置部25aに対して車幅方向Yの内側に隣接している。第2配置部25bと第1配置部25aの間の隔壁の一部が切り欠かれ、第2配置部25b内と第1配置部25a内が空間的に連通している。第2配置部25bの車長方向Xの後側には、車高方向Zの上向きに突出してロックピン40を軸支する軸部25dが設けられている。第2配置部25bの車幅方向Yの内側には、センサ取付部25eが設けられている。
【0040】
図5図10、及び図11を参照すると、筒部40aは、第2配置部25bの軸部25dに嵌合され、枢着部36の回転軸Aと平行な回転軸Bまわりに回転可能である。回転軸Aと回転軸Bの配置は、ロックピン40の回転と係合溝38への係合が阻害されない限り、幾何学的に厳密な意味での平行でなくてもよい。
【0041】
ロックピン本体40bは、スピンドル37のフランジ部37bに隣接するように、トーションスプリング44に向けて筒部40aから車長方向Xの前側に突出している。ロックピン本体40bの車高方向Z(回転軸Bが延びる方向)の厚みは、スピンドル37のフランジ部37bの厚みよりも厚い。
【0042】
ロックピン本体40bの車高方向Zの下側部分は、係合溝38に係合する係合凸部41を構成する。ロックピン本体40bの車高方向Zの上側部分は、インプットカム52のカム面(カム)53aに当接可能なカムフォロワ42を構成する。つまり、係合凸部41とカムフォロワ42は、車高方向Zに隣接して一体に設けられている。
【0043】
ここで、スピンドル37の係合溝38とロックピン40の係合凸部41について説明する。
【0044】
図11及び図12を参照すると、スピンドル37の係合溝38は、フランジ部37b(枢着部36)の外周面から内向きに窪んでいる。係合溝38は、ベース面38a、当接面38b、及び規制面38cによって画定されている。係合溝38の当接面38bの外端にはガイド面38dが形成されている。
【0045】
ベース面38aは、XY平面に沿って延びる平坦な扇形状である。図7を参照すると、第1配置部25aにスピンドル37を配置した状態では、ベース面38aはロックピン40よりも車高方向Zの下側に位置する。
【0046】
図11及び図12を参照すると、当接面38bは、ベース面38aから直交方向に突出し、フランジ部37bの径方向に延び平坦面である。当接面38bが延びる方向は、ロックピン40の係脱を阻害しない限り、幾何学的に厳密な意味でフランジ部37bの径方向でなくてもよい。また、当接面38bは、ロックピン40の係脱を阻害しない限り、幾何学的に厳密な意味での平坦面でなくてもよい。図9を参照すると、当接面38bは、閉状態のリッド30の不正開操作によってアーム32を介してスピンドル37が向きd1に開回転されるとき、ロックピン40の係合凸部41への当接によってスピンドル37の回転を規制する。つまり、当接面38bは、係合凸部41への当接によって、後退位置から進出位置へのアーム32の回転、及び閉位置から開位置へのリッド30の回転を阻止する。
【0047】
図9及び図12を参照すると、規制面38cは、ベース面38aから直交方向に突出し、フランジ部37bの径方向に対して交差する方向に延びる平坦面である。規制面38cは、ロック位置の係合凸部41に沿って延び、枢着部36の回転軸Aに向けたロックピン40の回転を規制する。規制面38cと当接面38bとがなす角は、90度以上に設定されており、好ましくは90度よりも大きく90度に近い角度(例えば92度)に設定されている。
【0048】
ガイド面38dは、フランジ部37bの径方向における当接面38bの外端に設けられ、規制面38cとは反対側に傾斜した平坦面である。より具体的には、ガイド面38dは、フランジ部37bの径方向の内側から外側に向けて、スピンドル37が閉回転する向きd2へ傾斜している。このように構成されたガイド面38dは、ロック位置(図9参照)からアンロック位置側(図18B参照)へ回転したロックピン40を、アンロック位置(図19B参照)まで回転させる。
【0049】
図10及び図13を参照すると、ロックピン40の係合凸部41は、カムフォロワ42よりも枢着部36の回転軸A側に突出している。つまり、ロックピン40の回転軸Bまわりの周方向における係合凸部41の横幅は、カムフォロワ42の横幅よりも大きい。図9を参照すると、係合凸部41のうち筒部40aとは反対側の先端部41aは断面円弧状に面取りされている。アーム32が後退位置に回転した状態では、先端部41aには係合溝38の当接面38bが当接可能かつ摺接可能である。
【0050】
ロックピン40には、図8及び図9に示すロック位置と、図19A及び図19Bに示すアンロック位置とが設定されている。図8及び図9に示すロック位置では、スピンドル37を介して図3に示す閉位置のリッド30を移動不可能にロックする。図19A及び図19Bに示すアンロック位置では、スピンドル37を介してリッド30のロックを解除し、リッド30を開閉可能とする。ロック位置のロックピン40の回転角度位置とアンロック位置のロックピン40の回転角度位置とは異なっている。ロックピン40の回転角度位置は、回転軸Bまわりの周方向における係合凸部41の横幅の中心線が延びる方向として定義される。
【0051】
図9に示すように、ロックピン40のロック位置は、係合凸部41が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸A側に回転した第2回転角度位置に設定されている。図19Bに示すように、ロックピン40のアンロック位置は、スピンドル37のフランジ部37bの外周に係合凸部41が当接する回転角度位置に設定されている。
【0052】
当接面38bに対して係合凸部41が直交方向に延びる第1回転角度位置は、リッド30が不正開操作されたとき、係合凸部41への当接面38bの当接(押圧)によって、アンロック位置側へのロックピン40の回転を阻止可能な限界位置である。前述の第2回転角度位置を含む第1回転角度位置よりも回転軸A側は、リッド30の不正開放を阻止できる開放阻止領域であり、この領域に回転した係合凸部41を当接面38bが押圧すると、ロックピン40はロック位置側に回転する。但し、ロックピン40の回転は、係合溝38の規制面38cへの当接によって規制される。これにより、向きd1へのスピンドル37の開回転は、係合凸部41への当接面38bの当接によって阻止される。その結果、リッド30は、図2に示す開位置に回転できず、図3に示す閉位置のまま動かない。そのため、係合凸部41が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸A側に回転した第2回転角度位置を、ロックピン40のロック位置に設定している。但し、係合凸部41が第1回転角度位置に位置する姿勢を、ロックピン40のロック位置としてもよい。
【0053】
一方、係合凸部41が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも回転軸Aから離れる側は、リッド30の不正開放を阻止不可能な領域である。この領域に回転した係合凸部41を当接面38bが押圧すると、ロックピン40には枢着部36の回転軸Aから離れる向きに回転する力が作用する。これにより、ロックピン40は図19Bに示すアンロック位置に向けて回転し、係合凸部41が係合溝38から離脱する。その結果、スピンドル37は向きd1に回転可能である。そのため、係合凸部41が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸Aから離れ、スピンドル37のフランジ部37bの外周に係合凸部41が当接する回転角度位置を、ロックピン40のアンロック位置に設定している。
【0054】
図11及び図13を参照すると、ロックピン40のカムフォロワ42は、ロックピン本体40bのうち係合凸部41よりも車高方向Zの上側の部分によって構成されている。カムフォロワ42は、係合凸部41よりも全長が長く、係合凸部41から車長方向Xの前側へ突出している。カムフォロワ42の筒部40aとは反対側の先端のうち、枢着部36の回転軸A側(車幅方向Yの外側)に位置する角部には、円弧状の面取り部42aが設けられている。ロックピン40が図8及び図9に示すロック位置にあるとき、カムフォロワ42とインプットカム52のカム面53aとの間の隙間は、係合凸部41とスピンドル37の当接面38bとの間の隙間よりも大きい。そのため、ロックピン40がロック位置にあるとき、リッド30が開操作されると、スピンドル37の回転によって当接面38bが係合凸部41に当接し、カムフォロワ42にはカム面53aが当接しない。これにより、リッド30の不正操作によって、インプットカム51を介してロックピン40がアンロック位置に向けて回転することを防止している。
【0055】
ロックピン本体40bのうちカムフォロワ42の面取り部42aとは反対側には、トーションスプリング44を取り付ける枠状の取付部43が設けられている。取付部43は、車幅方向Yの内側に突出している。
【0056】
図5及び図8を参照すると、トーションスプリング44は、巻回部44a、第1アーム部44b、及び第2アーム部44cを備え、軸受部24の第3配置部25cに配置されている。第3配置部25cは、第1配置部25aに対して車幅方向Yの内側に隣接するとともに、第2配置部25bに対して車長方向Xの前側に隣接している。巻回部44aは、車高方向Zの上向きに突出した位置決め凸部25gに嵌め込まれ、位置決め凸部25gを取り囲む第1溝25hに位置決めされている。第1アーム部44bは、第1溝25hと接する方向に延びる第2溝25iに位置決めされている。第3配置部25cと第2配置部25bは、これらの間の隔壁の一部が切り欠かれ、空間的に連通している。第2アーム部44cは、隔壁の切り欠きから第2配置部25b内に突出し、取付部43に引っ掛けて取り付けられる。
【0057】
図4及び図5を参照すると、駆動機構50は、カバー28に配置された1個のモータ41と、軸受部24の第1配置部25aに配置されたインプットカム52とを備える。
【0058】
モータ51は、正転及び逆転が可能な駆動源であり、リッド30の開閉、及びロックピン40の回転の両方を行う。モータ51は、電気的に接続された駆動回路(図示せず)がECU(Electronic Control Unit)によって制御されることで、正転又は逆転する。正転によってモータ51は、インプットカム52とスピンドル37を介してロック位置のロックピン40をアンロック位置に回転させるとともに、インプットカム52と差動機構60を介して後退位置のアーム32を進出位置に回転させる。逆転によってモータ51は、インプットカム52と差動機構60を介して進出位置のアーム32を後退位置に回転させる。これにより、トーションスプリング44の付勢力によるアンロック位置からロック位置へのロックピン40の回転を許容する。
【0059】
図5及び図6を参照すると、インプットカム52は、スピンドル37のフランジ部37b上に位置するように、第1配置部25aに配置され、モータ51から受けた駆動力によって回転する回転体である。インプットカム52は、モータ51から受けた駆動力をロックピン40に伝達し、ロック位置のロックピン40をアンロック位置に向けて移動させるカム面(カム)53aを備える。また、インプットカム52は、モータ51から受けた駆動力をスピンドル37に伝達する差動機構60を構成する凸部54を一体に備える。なお、凸部54については後に詳述する。
【0060】
図10及び図11を参照すると、インプットカム52は、枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て扇形状の本体52aと、本体52aの中心から突出する接続部52bとを備える。図4を参照すると、接続部52bは、貫通孔28bを貫通してカバー28外へ突出し、モータ51に接続される。接続部52bは、回転軸Aに沿って突出しており、外周面に放射状に突出する複数の凸条を備える断面非円形状である。但し、接続部52bはモータ51側に設けられ、インプットカム52に接続されてもよい。
【0061】
図6を参照すると、インプットカム52には、軸穴52cが設けられている。インプットカム52は、スピンドル37の軸部37dへの軸穴52cの嵌合によってフランジ部37b上に軸支され、枢着部36の回転軸Aまわりに回転する。
【0062】
図11及び図14を参照すると、本体52aには、係合溝38への係合凸部41の係合を許容するための切り欠き53が形成されている。切り欠き53は、インプットカム52の外周面から内向きに窪み、車高方向Zに貫通している。切り欠き53が係合溝38の上側に位置するように、インプットカム52がスピンドル37上に配置される。枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、枢着部36の回転軸Aまわりの切り欠き53の角度範囲αは、係合溝38を露出可能な広さで形成されている。より具体的には、図17Aから図21Aに示すように、後退位置のアーム32を進出位置に移動させる開作動時、及び進出位置のアーム32を後退位置に移動させる閉作動時のいずれでも、係合溝38が露出する角度範囲αで切り欠き53が形成されている。
【0063】
切り欠き53を画定する壁面のうちの1つは、後退位置のアーム32を進出位置に移動させるとき、インプットカム52の回転力を伝達してロック位置のロックピン40をアンロック位置側に回転させるカム面(カム)53aを構成する。具体的には、切り欠き53は、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向に対向するカム面53aと対向面53b、及び周方向に延びる内周面53cとで画定されている。カム面53aは、インプットカム52が開回転する向きd1の後側に位置する。カム面53aは、対向面53bに向けて円弧状に膨出しており、インプットカム52に連動して回転する。
【0064】
後退位置のアーム32を進出位置に移動させるとき、ロック位置のロックピン40は、インプットカム52のカム面53aとスピンドル37のガイド面38dによって、アンロック位置に回転される。具体的には、カム面53aとカムフォロワ42との摺接によって、ロック位置のロックピン40がアンロック位置側に回転される(図17A及び図17B参照)。この際、カム面53aによってロックピン40は、当接面38bに対して係合凸部41が直交方向に延びる第1回転角度位置よりもアンロック位置側に位置する領域まで回転する。引き続いて係合凸部41とガイド面38dの摺接によって、ロックピン40がアンロック位置に回転される(図19A及び図19B参照)。
【0065】
図5及び図10を参照すると、差動機構60は、スピンドル37の凹部39とインプットカム52の凸部54とで構成され、これらによってインプットカム52の回転開始に対して、遅延して枢着部36の回転を開始させる。但し、凹部39をインプットカム52に設け、凸部54をスピンドル37に設けてもよい。
【0066】
凸部54は、インプットカム52のうちスピンドル37と対向する下面の外周部に設けられている。枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、凸部54は、扇形状であり、インプットカム52からスピンドル37に向けて突出している。
【0067】
凹部39は、スピンドル37のフランジ部37bに設けられている。凹部39は、フランジ部37bの外周面から内向きに窪み、インプットカム52と対向する上面を開放した扇形状の溝からなり、内部に凸部54が配置される(図9参照)。
【0068】
図9を参照すると、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向において、凸部54を形成する角度範囲βは、凹部39を形成する角度範囲γよりも小さい。これにより、回転軸Aまわりの周方向における凸部54と凹部39の間には、角度範囲β,γの差分の隙間61が形成されている。この隙間61の角度範囲(γ-β)が、インプットカム52の回転開始に対して遅延させて枢着部36を回転させる差動角度範囲である。
【0069】
図17A及び図17Bは、図8及び図9に示すインプットカム52を差動角度範囲(γ-β)だけ回転させた状態を示す。図8図9、並びに図17A図17Bを参照すると、差動角度範囲(γ-β)は、第1回転角度位置を越えてロック位置のロックピン40をアンロック位置側に回転させるときのインプットカム52の回転角度よりも大きい。
【0070】
これにより、ロック位置のロックピン40が第1回転角度位置を越えてアンロック位置側に回転した後、凸部54及び凹部39それぞれの対向面が当接して、スピンドル37が回転し始める。その結果、スピンドル37のガイド面38dによってロックピン40をアンロック位置に回転させながら、後退位置のアーム32を進出位置に回転させることができる。
【0071】
図15図16は、モータ51の回転角度位置に対するインプットカム52、スピンドル37(枢着部36)、及びロックピン40の動きを示すグラフであり、図15は閉位置のリッド30を開位置に回転させるリッド開作動時を示し、図16は開位置のリッド30を閉位置に回転させるリッド閉作動時を示す。
【0072】
インプットカム52のカム面53aによるカムフォロワ42の回転角度範囲、スピンドル37のガイド面38dによる係合凸部41の回転角度範囲、及び差動機構60の隙間61の角度範囲(γ-β)は、図15に示すリッド開作動と図16に示すリッド閉作動とが成立するように設定されている。
【0073】
以下、図15図16を参照しながらリッド開閉装置10の動作について説明する。
【0074】
図15を参照すると、閉位置のリッド30を開位置に回転させるとき、モータ51は、初期回転角度位置(0)から最大回転角度位置(max)まで正転する。これにより、インプットカム52は、図8及び図9に示す閉回転角度位置から図20A及び図20Bに示す開回転角度位置まで、向きd1へ開回転する。この間、アーム32とロックピン40は、以下のように作動する。
【0075】
インプットカム52の開回転によってカム面53aが一体に回転するため、ロック位置のロックピン40は、カム面53aとカムフォロワ42のクリアランス分の遅延時間を経て、アンロック位置側へ移動し始める(図15のSa1参照)。この際、差動機構60の隙間61によって、インプットカム52の回転力はスピンドル37(枢着部36)に伝わらないため、図15にSb1で示すように、アーム32は回転しない。
【0076】
図17A及び図17Bに示すように、インプットカム52が差動機構60の隙間61分(差動角度範囲γ-β)回転すると、凹部39と凸部54の対向面が当接する(図15のSb2参照)。よって、その後は、インプットカム52の回転力が伝わってスピンドル37が回転するため、後退位置のアーム32が進出位置に向けて回転する(図15のSb3参照)。この間もロックピン40は、カム面53aとカムフォロワ42の摺接によってアンロック位置側へ回転し続ける。
【0077】
スピンドル37の回転によって、カム面53aとカムフォロワ42の摺接に引き続き、図18A及び図18Bに示すように、ガイド面38dに係合凸部41が摺接する(図15のSa2参照)。これにより、ロックピン40は引き続きアンロック位置側へ回転する。その後、図19A及び図19Bに示すように、ガイド面38dの外端が係合凸部41に摺接する位置までスピンドル37が回転すると、ロックピン40はアンロック位置まで回転する(図15のSa3参照)。そして、ロックピン40は、トーションスプリング44の付勢力によってスピンドル37のフランジ部37bの外周面に圧接され、アンロック位置に保持される(図15のSa4参照)。
【0078】
インプットカム52が開回転角度位置まで回転すると、図20A及び図20Bに示すように、スピンドル37を介してアーム32が進出位置まで回転する。その結果、リッド30は開位置に回転する。この状態でロックピン40は、トーションスプリング44の付勢力によってフランジ部37bの外周面に圧接され、アンロック位置に維持される。
【0079】
図16を参照すると、開位置のリッド30を閉位置に回転させるとき、モータ51は、最大回転角度位置(max)から初期回転角度位置(0)まで逆転する。これにより、インプットカム52は、図20A及び図20Bに示す開回転角度位置から図8及び図9に示す閉回転角度位置まで、向きd2へ閉回転する。この間、アーム32とロックピン40は、以下のように作動する。
【0080】
インプットカム52の閉回転によってカム面53aが一体に回転するが、カム面53aはカムフォロワ42から離れた回転角度位置に回転しているため、ロックピン40は回転することなくアンロック位置に保持される(図16のSa5参照)。また、差動機構60の隙間61によって、インプットカム52の回転力はスピンドル37(枢着部36)に伝わらないため、図16にSb4で示すように、アーム32も回転しない。
【0081】
図21A及び図21Bに示すように、インプットカム52が差動機構60の隙間61分(差動角度範囲γ-β)回転すると、凹部39と凸部54の対向面が当接する(図16のSb5参照)。よって、その後は、インプットカム52の回転力が伝わってスピンドル37が回転するため、進出位置のアーム32が後退位置に向けて回転する(図16のSb6参照)。この間もロックピン40は、回転することなくアンロック位置に保持される。
【0082】
スピンドル37の回転によって、図22A及び図22Bに示すように、ガイド面38dに係合凸部41が摺接する(図16のSa6参照)。これにより、アンロック位置のロックピン40は、トーションスプリング44の付勢力によってロック位置側へ回転する。その後、インプットカム52が閉回転角度位置まで回転すると、当接面38bに係合凸部41が摺接する位置までスピンドル37が回転する(図16のSa7参照)。その結果、図8及び図9に示すように、ロックピン40はロック位置まで回転し、ストッパ25fに当接した状態で停止する。また、スピンドル37を介してアーム32が後退位置まで回転し、リッド30は閉位置に回転する。
【0083】
以上のように、図15に示すリッド開作動と図16に示すリッド閉作動とが成立するように、インプットカム52のカム面53aによるカムフォロワ42(ロックピン40)の回転角度範囲、スピンドル37のガイド面38dによる係合凸部41(ロックピン40)の回転角度範囲、及び差動機構60の隙間61の角度範囲(γ-β)を設定することで、1個のモータ51によって、図2に示す進出位置と図3に示す後退位置の間のアーム32の回転を阻害することなく、ロックピン40によるアーム32(リッド30)のロックとアンロックを実現できる。
【0084】
このように構成したリッド開閉装置10は、以下の特徴を有する。
【0085】
モータ51の駆動力を枢着部36に伝達してアーム32を後退位置と進出位置に移動させるインプットカム52を備えるため、アーム32を介してリッド30を自動開閉できる。また、アーム32が後退位置にあるとき、枢着部36の係合溝38に係合したロック位置と、係合溝38との係合が解除されたアンロック位置との間を回転可能なロックピン40を備えるため、アーム32を介して閉状態のリッド30をロックできる。また、後退位置のアーム32を進出位置に移動させるとき、インプットカム52の回転力を伝達してロック位置のロックピン40をアンロック位置側に回転させるカム面53aを備えるため、リッド30の開作動時にはロックピン40によるロックを解除できる。このように、1個のモータ51によって、リッド30の自動開閉と、ロックピン40によるリッド30のロックを実現できるため、2個の駆動源を搭載する場合と比較して、リッド開閉装置10の大型化と高コスト化を抑えつつ、セキュリティ性を向上できる。
【0086】
カム面53aがインプットカム52に設けられた切り欠き53の壁面からなり、ロックピン40は、係合溝38に係合可能な係合凸部41とカム面53aに当接可能なカムフォロワ42とを備える。これにより、枢着部36の周辺にカム面53aとインプットカム52を集約して配置できるため、リッド開閉装置10を小型化できる。
【0087】
係合溝38が枢着部36の径方向に延びる当接面38bを有し、係合凸部41は、当接面38bに対して交差する方向に延び、当接面38bに摺接する断面円弧状の先端部41aを有する。そのため、係合溝38へのロックピン40のロック動作とアンロック動作を円滑に行うことができる。
【0088】
ロックピン40がロック位置にあるとき、係合凸部41は、当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置、又は第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸A側に回転した第2回転角度位置に位置する。そのため、閉状態のリッド30が開方向に不正操作された場合、後退位置から進出位置側へのアーム32の移動を、ロックピン40への係合溝38の当接面38bの当接により確実に阻止できる。この際、アーム32の移動によってロックピン40に加わる力は、係合凸部41を曲げる方向である係合凸部41に対して交差する方向ではなく、係合凸部41が延びる方向である圧縮方向に作用する。よって、不正操作によるロックピン40の撓み量を低減でき、ひいてはロックピン40の剛度を向上できる。その結果、片持ち梁のような構成で延び方向に対して交差する方向に力が加わるロックピン40と比較して、リッド30を閉状態に保持する保持力を大幅に向上できる。
【0089】
ロック位置を越えるロックピン40の回転を規制するストッパを備える。これにより、閉状態のリッド30が開方向に不正操作された場合、ロックピン40をロック位置に保持できるため、リッド30のロック強度を向上できる。
【0090】
係合凸部41がカムフォロワ42よりも枢着部36の回転軸A側に突出している。これにより、ロックピン40は、カムフォロワ42とカム面53aの摺接によってロック位置からアンロック位置側に回転された後、引き続いて係合凸部41と係合溝38の外端部との摺接によってアンロック位置に回転され、枢着部36との当接によってアンロック位置に保持される。よって、ロック位置へのロックピン40の意図しない移動を確実に防止できる。
【0091】
差動機構60は、枢着部36及びインプットカム52のうち、一方に設けられた凸部54と他方に設けられた凹部39とを有し、周方向における凸部54と凹部39の間には定められた差動角度範囲(γ-β)の隙間61を有する。そのため、ロックピン40によってリッド30の開閉を阻害することなく、1個のモータ51によってリッド30の自動開閉とロックを実現できる。
【0092】
ベース20にはインプットカム52を配置する第1配置部25aとロックピン40を配置する第2配置部25bとが設けられ、第1配置部25aと第2配置部25bはカバー28によって覆われている。そのため、枢着部36、カム面53aを含むインプットカム52、及びロックピン40への水滴又は埃等の付着を防止できる。よって、アーム32、カム面53aを含むインプットカム52、及びロックピン40の動作不良を抑制できる。
【0093】
アンロック位置のロックピン40をロック位置に付勢するトーションスプリング44を備える。そのため、進出位置のアーム32を後退位置に移動させることで、アンロック位置のロックピン40をロック位置に確実に回転できる。
【0094】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0095】
例えば、リッド30は、車長方向Xに延びる回転軸まわりに垂直方向に回転可能としてもよい。
【0096】
差動機構60は、ロック位置のロックピン40をアンロック位置に移動させた後、アーム32の回転を開始させることが可能な構成(構造)であれば、必要に応じて変更が可能である。
【0097】
第1アーム部34は、リッド30と別体で成形されてもよいし、第2アーム部35と一体成形されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 サイドパネル(パネル)
2 受給口
10 リッド開閉装置
15 給電コネクタ(受給部)
15a 接続部
20 ベース
21 ベース本体
21a 挿通孔
21b 開口
22 取付部
22a 凹部
22b 取付口
23 シール部材
24 軸受部
25 端壁部
25a 第1配置部
25b 第2配置部
25c 第3配置部
25d 軸部
25e センサ取付部
25f ストッパ
25g 位置決め凸部
25h 第1溝
25i 第2溝
26 端壁部
26a 軸孔
27 側壁部
28 カバー
28a 取付片
28b 貫通孔
30 リッド
30a 凸部
31 シール部材
32 アーム
34 第1アーム部
34a 連続部
35 第2アーム部
35a 筒部
35b 取付孔
36 枢着部
37 スピンドル
37a 取付部
37b フランジ部
37c 軸部
37d 軸部
38 係合溝(係合部)
38a ベース面
38b 当接面
38c 規制面
38d ガイド面
39 凹部
40 ロックピン(ロック部材)
40a 筒部
40b ロックピン本体
41 係合凸部
41a 先端部
42 カムフォロワ
42a 面取り部
43 取付部
44 トーションスプリング(付勢部材)
44a 巻回部
44b 第1アーム部
44c 第2アーム部
45 ワイヤ
50 駆動機構
51 モータ
52 インプットカム
52a 本体
52b 接続部
52c 軸穴
53 切り欠き
53a カム面(カム)
53b 対向面
53c 内周面
54 凸部
60 差動機構
61 隙間
α カムの角度範囲
β 差動機構の凸部の角度範囲
γ 差動機構の凹部の角度範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図15
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図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B