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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012745
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ピンチバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/04 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
F16K7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116398
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 稜平
(57)【要約】
【課題】簡単かつコンパクトな構造で、弁開時にチューブが元の形状に戻るのを補助すること。
【解決手段】押圧体42が支持ピン44に対して進退可能に設けられ、押圧体42と支持ピン44との間でチューブ100を弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブ1において、弾性変形可能な復元用弾性部材51を有し、復元用弾性部材51が、自身の弾性力により、押圧体42と支持ピン44との間で押し潰されるチューブ100を直接押すように、支持部材41に取り付けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンチ部材がピンチガイド部材に対して進退可能に設けられ、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間でチューブを弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブにおいて、
弾性変形可能な復元用弾性部材を有し、
前記復元用弾性部材は、自身の弾性力により、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置される前記チューブを直接押すこと、
を特徴とするピンチバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載するピンチバルブにおいて、
前記復元用弾性部材は、前記チューブを直接押す力を解除する解除レバー部が設けられていること、
を特徴とするピンチバルブ。
【請求項3】
請求項2に記載するピンチバルブにおいて、
前記ピンチガイド部材を支持する支持部材を有し、
前記支持部材は、前記チューブを前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に案内する挿入溝が形成されており、
前記挿入溝を塞ぐ第1位置と、前記挿入溝を開放する第2位置との間でスライドするホルダを有し、
前記ホルダは、前記第1位置から前記第2位置へ移動する場合に前記解除レバー部を操作する操作部を有すること、
を特徴とするピンチバルブ。
【請求項4】
請求項1に記載するピンチバルブにおいて、
前記復元用弾性部材が、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置された前記チューブを直接押す押圧位置と、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置された前記チューブを直接押さない押圧解除位置と、の間で変位すること、
を特徴とするピンチバルブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載するピンチバルブにおいて、
前記復元用弾性部材は、前記ピンチ部材が進退する方向に対して直交もしくは斜めとなる一方向のみに、前記チューブを直接押すこと、
を特徴とするピンチバルブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つに記載するピンチバルブにおいて、
前記ピンチ部材を収容する中空穴を備え、前記中空穴に前記ピンチガイド部材が架設された支持部材を有し、
前記復元用弾性部材は、前記中空穴内で弾性変形するように前記支持部材に保持されていること、
を特徴とするピンチバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御流体が流れるチューブを弾性変形させることで制御流体を制御するピンチバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ピンチバルブは、制御流体が流れるチューブを弾性変形させて流体制御を行う。そのため、ピンチバルブに使用されるチューブは、繰り返し押し潰される間に弾性力が低下し、ピンチバルブによる押圧力が解除されても弾性変形せず、制御流体を流通させることができないことがあった。そこで、従来、弁開時にチューブを強制的に復元させる機構を備えるピンチバルブが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、弁開時に、チューブの両側に配置した第1ブロックと第2ブロックが第1弾性ばねと第2弾性ばねに付勢されてチューブ側に移動し、チューブの形状を復元させるピンチバルブが開示されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、一対の可動アームをチューブの両側に揺動可能に配設し、弁開時に一対の可動アームをチューブを挟む方向に可動させ、チューブの形状を復元させるピンチバルブが開示されている。
【0005】
また例えば、特許文献3には、押圧部材に一体に取り付けた復元補助部材が、弁閉時には、押圧部材と一体的に移動してチューブから離間し、弁開時には、押圧部材と一体的に移動してチューブの両側を加圧し、チューブを復元させるピンチバルブが開示されている。
【0006】
また例えば、特許文献4には、弁開時に負圧流体を利用してチューブを元の形状に復元させるピンチバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実全昭63-077173号公報
【特許文献2】特開2003-90446号公報
【特許文献3】特許第6355366号公報
【特許文献4】特許第5699962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような復元補助機構を有するピンチバルブには、問題があった。すなわち、特許文献1および特許文献2に記載されるピンチバルブは、部品点数が多く、バルブサイズが大きくなってしまっていた。また、特許文献3に記載されるピンチバルブは、押圧部材の外側を囲むように復元補助部材を配置するので、バルブサイズが大きくなってしまっていた。また、特許文献4に記載されるピンチバルブは、負圧流体を供給するための流路を形成する必要があり、構造が複雑であった。
【0009】
本明細書は、チューブを弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブにおいて、簡単かつコンパクトな構造で、弁開時にチューブが元の形状に戻るのを補助することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、(1)ピンチ部材がピンチガイド部材に対して進退可能に設けられ、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間でチューブを弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブにおいて、弾性変形可能な復元用弾性部材を有し、前記復元用弾性部材は、自身の弾性力により、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置される前記チューブを直接押すこと、を特徴とする。
【0011】
上記構成を有するピンチバルブは、例えば、ピンチ部材とピンチガイド部材との間で押し潰されているチューブが、塑性変形して弾性変形力を低下させている場合でも、ピンチ部材がピンチガイド部材から離れる方向に後退したときに、復元用弾性部材が自身の弾性力によりチューブを直接押し、チューブが元の形状に戻る弾性変形力を補助する。このように、ピンチバルブは、復元用弾性部材の1部品だけで、ピンチ部材とピンチガイド部材との間で押し潰されたチューブが元の形状に戻るのを補助できる。よって、上記構成のピンチバルブによれば、簡単かつコンパクトな構造で、弁開時にチューブが元の形状に戻るのを補助することができる。
【0012】
(2)(1)に記載するピンチバルブにおいて、前記復元用弾性部材は、前記チューブを直接押す力を解除する解除レバー部が設けられていること、が好ましい。
【0013】
上記構成を有するピンチバルブは、ピンチ部材とピンチガイド部材との間にチューブを脱着する場合に、復元用弾性部材に設けられた解除レバー部を操作すれば、復元用弾性部材がチューブを直接押す力を解除できるので、ピンチ部材とピンチガイド部材との間にチューブを脱着する場合に復元用弾性部材が邪魔になりにくい。
【0014】
(3)(2)に記載するピンチバルブにおいて、前記ピンチガイド部材を支持する支持部材を有し、前記支持部材は、前記チューブを前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に案内する挿入溝が形成されており、前記挿入溝を塞ぐ第1位置と、前記挿入溝を開放する第2位置との間でスライドするホルダを有し、前記ホルダは、前記第1位置から前記第2位置へ移動する場合に前記解除レバー部を操作する操作部を有すること、が好ましい。
【0015】
上記構成を有するピンチバルブは、ホルダが第1位置から第2位置にスライドするのに連動して、ホルダの操作部が解除レバー部を操作するので、ホルダと解除レバー部とを別々に操作する場合と比べ、ピンチ部材とピンチガイド部材との間にチューブを脱着しやすい。
【0016】
(4)(1)に記載するピンチバルブにおいて、前記復元用弾性部材が、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置された前記チューブを直接押す押圧位置と、前記ピンチ部材と前記ピンチガイド部材との間に配置された前記チューブを直接押さない押圧解除位置と、の間で変位すること、が好ましい。
【0017】
上記構成を有するピンチバルブは、復元用弾性部材を押圧位置から押圧解除位置へ変位させることにより、ピンチ部材とピンチガイド部材との間にチューブを挿入しやすい。
【0018】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載するピンチバルブにおいて、前記復元用弾性部材は、前記ピンチ部材が進退する方向に対して直交もしくは斜めとなる一方向のみに、前記チューブを直接押すこと、が好ましい。
【0019】
上記構成を有するピンチバルブは、弁開時にチューブが元の形状に戻るのを補助する場合に、復元用弾性部材がチューブを一方向のみに直接押すだけで、チューブの側面に擦れないので、チューブを劣化させることなく、チューブが元の形状に戻るのを補助することができる。
【0020】
(6)(1)から(5)の何れか1つに記載するピンチバルブにおいて、前記ピンチ部材を収容する中空穴を備え、前記中空穴に前記ピンチガイド部材が架設された支持部材を有し、前記復元用弾性部材は、前記中空穴内で弾性変形するように前記支持部材に保持されていること、が好ましい。
【0021】
上記構成を有するピンチバルブは、ピンチ部材を収容する中空穴内で弾性変形するように、復元用弾性部材が支持部材に保持されているので、チューブが元の形状に戻るのを補助する機構を備えないピンチバルブとほぼ同じバルブサイズで、復元用弾性部材を支持部材に配設し、チューブが元の形状に戻るのを補助する機能を追加することができる。
【発明の効果】
【0022】
従って、本発明によれば、チューブを弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブにおいて、簡単かつコンパクトな構造で、弁開時にチューブが元の形状に戻るのを補助することができる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るピンチバルブの断面図である。
図2】押圧体とアクチュエータロッドとの連結構造を示す図である。
図3】復元用弾性部材の外観斜視図である。
図4】復元用弾性部材の取り付けを説明する図である。
図5】弁閉時のチューブ付近の拡大図である。
図6】弁開時のチューブ付近の拡大図である。
図7】第2実施形態に係るピンチバルブの断面図である。
図8】解除動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
本形態は、チューブを流れる制御流体を制御するピンチバルブについて開示する。図1は、実施形態に係るピンチバルブ1の断面図である。本形態では、ピンチバルブ1の軸線方向、すなわち図1の上下方向を「X軸方向」、ピンチバルブ1の軸線に対して直交する方向、すなわち図1の左右方向を「Y軸方向」とする。なお、図1、後述する図5、後述する図6では、復元用弾性部材51の動きを示すため、復元用弾性部材51のみ断面形状でなく、外形形状を示す。また、図1、後述する図5、後述する図6では、図面を見やすくするために、復元用弾性部材51を支持部材41に固定するねじ59の記載を省略している。
【0026】
ピンチバルブ1は、例えば、培養装置、分取装置、生化学分析装置、理化学分析装置、内視鏡関連装置などの装置に使用される。ピンチバルブ1は、純水、生理食塩水、試薬、洗浄液などの制御流体が流れるチューブが着脱可能に取り付けられる。本形態のピンチバルブ1は、駆動部2とピンチ部4とを備える。
【0027】
駆動部2は、操作圧力に応じて駆動力を発生するエアオペレイト式の駆動部である。駆動部2は、シリンダ21のピストン室22にピストン23が摺動可能に装填され、ピストン室22が第1室221と第2室222とに区画されている。第1室221と第2室222は、それぞれ、シリンダ21に開設された第1操作ポート214と第2操作ポート215に連通し、操作流体を給排気される。
【0028】
アクチュエータロッド24は、後端部がピストン23に結合され、先端部がシリンダ21からピンチ部4側に突出し、押圧体42に結合されている。ピストン23は、第1室221と第2室222との差圧に応じて、アクチュエータロッド24を介して押圧体42と一体的に上下動する。
【0029】
ピンチ部4は、支持部材41と、押圧体42と、ホルダ43と、支持ピン44と、ホルダばね45と、復元用弾性部材51と、を備える。押圧体42は「ピンチ部材」の一例である。支持ピン44は「ピンチガイド部材」の一例である。
【0030】
支持部材41は、中空穴411を備える筒形をなす。支持部材41は、シリンダ21から突出するアクチュエータロッド24の先端部を、中空穴411に挿入された状態で、駆動部2に連結されている。押圧体42は、中空穴411に収容され、ジョイント部材29を介してアクチュエータロッド24の先端部に結合されている。
【0031】
図2は、押圧体42とアクチュエータロッド24との連結構造を示す図である。押圧体42は、略円柱形状をなす。押圧体42は、アクチュエータロッド24側に位置する端部の側面から、押圧体42の軸線に対して直交する方向に沿って、スリット423が形成されており、そのスリット423に嵌め合わせたジョイント部材29をアクチュエータロッド24に螺合させることで、アクチュエータロッド24に結合されている。
【0032】
押圧体42は、アクチュエータロッド24と反対側に位置する端面が、図中上側に凸状となる山形に形成されている。すなわち、当該端面は、頂部により形成される押圧部425と、押圧部425の両側に設けられた一対の傾斜面426,426とを備える。押圧部425は、押圧体42の軸線上であって、押圧体42の軸線に対して直交する方向に沿って、直線状に設けられている。
【0033】
図1に戻り、支持ピン44は、中空穴411の駆動部2と反対側に位置する開口部に架設され、押圧体42と対向配置されている。支持ピン44は、押圧体42の移動方向に対して直交するように配設されている。支持部材41には、支持ピン44より駆動部2側(図中下側)の位置に、挿入溝412がスリット状に形成されている。挿入溝412は、支持部材41の外周面から支持ピン44の架設方向に沿って、中空穴411の中央付近まで形成されている。チューブは、挿入溝412の両側の端部4122に当接するまで挿入溝412に挿入されると、支持ピン44に対して直交する状態で押圧体42と支持ピン44との間に配置される。このチューブの位置を、以下の説明では「セットポジションX」とする。
【0034】
押圧体42は、押圧体42の軸線方向(図中X軸方向)に沿って案内溝421が形成されている。第1案内ピン46は、先端部が中空穴411に突出するように支持部材41に固定されている。押圧体42は、押圧部425を支持ピン44に対して平行に配置する位置で、案内溝421を第1案内ピン46に係合させている。そのため、押圧体42は、押圧部425と支持ピン44との平行状態を維持しながら、アクチュエータロッド24に従って軸線方向に沿って移動することができる。
【0035】
ホルダ43は、円筒形状に形成され、支持部材41の外側にスライド可能に配設されている。ホルダばね45は、ホルダ43と支持部材41との間に縮設され、ホルダ43を駆動部2と反対側に付勢している。ホルダ43は、軸線方向に沿って長穴431が形成されている。第2案内ピン47は、その長穴431に係合可能に支持部材41に固定され、ホルダ43が支持部材41から脱落するのを防いでいる。このようなホルダ43は、ホルダばね45に付勢されて挿入溝412の開口部4121を部分的に塞ぐ第1位置と、ホルダばね45に抗して挿入溝412の開口部4121を開放する第2位置と、の間でスライドすることができる。なお、ホルダ43は、第1位置にて開口部4121を全て塞ぐように構成してもよい。
【0036】
図3は、復元用弾性部材51の外観斜視図である。復元用弾性部材51は、ピンチバルブ1が弁開する場合に、押圧体42と支持ピン44との間で押し潰されていたチューブを元の形状に復元させるのを補助するように、支持部材41に固定されている。本形態の復元用弾性部材51は、1本の金属線により、固定部511と、コイルばね部512と、可動部513と、解除レバー部514と、が構成されている。解除レバー部514は「解除部」の一例である。
【0037】
コイルばね部512は、一端が固定部511に接続され、他端が可動部513に接続されている。可動部513は、三角形の枠状に形成され、中央部に挿通部5131が形成されている。なお、可動部513の形状は、円形や楕円形など、別の形状であってもよい。可動部513は、コイルばね部512に接続する端部と反対側に位置する端部が延設され、復元用弾性部材51の可動部513がチューブを直接押す力を解除する解除レバー部514を形成している。解除レバー部514は、指で操作しやすい形状(本形態では三角形状)に成形されている。固定部511は、固定面積を確保する形状(本形態では横長の環状)に成形されている。なお、解除レバー部514と固定部511は別形状であってもよい。
【0038】
図4は、復元用弾性部材51の取り付けを説明する図である。復元用弾性部材51は、可動部513の挿通部5131に支持ピン44を挿通した状態で、ねじ59,59にて支持部材41に固定されている。復元用弾性部材51は、チューブを挿入溝412に挿入する挿入口と反対側となる位置にて、支持ピン44より上方に位置する上端面415に、固定部511が固定され、コイルばね部512を支点とするてこの原理によって可動部513が可動する。
【0039】
続いて、ピンチバルブ1の動作について説明する。まず、チューブをピンチバルブ1に装着する場合について説明する。
【0040】
ピンチバルブ1は、第1操作ポート214から第1室221に操作流体を供給し、第2操作ポート215から第2室222の操作流体を排出することで、押圧体42を下降させている。ホルダ43は、ホルダばね45に抗して第1位置から第2位置へ押し下げられることで、挿入溝412の開口部4121を開放する。
【0041】
復元用弾性部材51は、図1に実線で示すように、解除レバー部514が操作されない(押されない)場合、可動部513がコイルばね部512によって端部4122側へ付勢されて初期位置に配置されている。
【0042】
復元用弾性部材51は、図1に一点鎖線で示すように、解除レバー部514が操作された(押された)場合、可動部513がコイルばね部512を支点として初期位置から図中K1方向に揺動し、セットポジションXから後退する。
【0043】
この状態で、チューブが、挿入溝412の開口部4121からセットポジションXまで挿入される。このとき、解除レバー部514を操作して、可動部513をセットポジションXから後退させているので、可動部513が邪魔になりにくい。
【0044】
ホルダ43を押し下げる力が解除されると、ホルダ43はホルダばね45に付勢されて第2位置から第1位置へスライドし、挿入溝412の開口部4121を塞ぐ。これにより、チューブが挿入溝412から脱落しなくなる。
【0045】
また、解除レバー部514が操作されなくなる(押圧されなくなる)と、復元用弾性部材51は、可動部513がコイルばね部512に付勢されて、コイルばね部512を支点として図中K2方向に揺動し、セットポジションXに配置されたチューブを挿入溝412の端部4122側へ向かって直接押す。チューブは、可動部513と挿入溝412の端部4122との間で挟まれた状態で、押圧体42と支持ピン44との間に配置される。
【0046】
次に、ピンチバルブ1の弁閉動作を説明する。図5は、弁閉時のチューブ100付近の拡大図である。ピンチバルブ1は、第1操作ポート214から第1室221の操作流体が排気され、第2操作ポート215から第2室222に操作流体が供給されると、図5に示すように、押圧体42が支持ピン44に向かって上昇し、セットポジションXに配置されたチューブ100を押圧部425と支持ピン44との間で押し潰す。チューブ100に制御流体が流通している場合、チューブ100の内壁が密着することで、制御流体が遮断される。
【0047】
この弁閉動作時において、復元用弾性部材51は、チューブ100を介して押圧体42から可動部513に上向き(支持ピン44側)の力Fが作用し、可動部513がコイルばね部512を支点として、コイルばね部512の付勢力に抗して図中K3方向に揺動する。よって、ピンチバルブ1は、弁開時に、セットポジションXに配置されるチューブ100に対して復元用弾性部材51の弾性力が作用していても、弁閉時には、その復元用弾性部材51の弾性力に抗して押圧体42が支持ピン44側へ移動し、押圧部425と支持ピン44との間でチューブ100を押し潰すことができる。
【0048】
次に、ピンチバルブ1の弁開動作を説明する。図6は、弁開時のチューブ100付近の拡大図である。ピンチバルブ1は、第1操作ポート214から第1室221に操作流体を供給され、第2操作ポート215から第2室222の操作流体が排気されると、図6に示すように、押圧体42が支持ピン44と反対側へ下降し、押圧部425と支持ピン44との間でチューブ100を押し潰す力を解除する。
【0049】
押圧体42の下降に伴い、押圧体42から可動部513に作用する上向き(支持ピン44側)の力Fが小さくなる。復元用弾性部材51は、コイルばね部512の弾性力によって、可動部513が押圧体42の下降に連動して図中K4方向に揺動し、チューブ100を直接押す。
【0050】
チューブ100は、弁閉時に、押圧体42の進退方向に対して直交する方向に沿って、つまり、支持ピン44に沿って、内壁を密着させてシールしている。このチューブ100を、復元用弾性部材51の可動部513が、コイルばね部512の付勢力によって、挿入溝412の端部4122と反対側から直接押す。このとき、可動部513は、押圧体42が進退する方向(X軸方向)に対して直交あるいは斜めとなる一方向(図中矢印D方向)のみに、チューブ100を押す。内壁を密着させているチューブ100は、端部4122に移動を制限された状態で可動部513によって端部4122側へ押されるので、強制的に変形し、密着している内壁を分離させる。
【0051】
チューブ100の内壁が分離することで、制御流体がチューブ100を流通するようになる。チューブ100は、制御流体の流体圧が流路内壁に対して径方向外向きに作用する。このとき、復元用弾性部材51は、チューブ100に作用する流体圧に応じて、可動部513がコイルばね部512の付勢力に抗して可動する。よって、チューブ100は、制御流体の流体圧を利用して、元の形状に戻ることができる。
【0052】
このように、ピンチバルブ1は、弁開時にチューブ100が元の形状に戻るのを補助する場合に、復元用弾性部材51がチューブ100を一方向(図中矢印D方向)のみに直接押すだけで、チューブ100の側面に擦れない。そのため、復元用弾性部材51は、チューブ100を劣化させることなく、チューブ100が元の形状に戻るのを補助することができる。
【0053】
このようなピンチバルブ1では、例えば、弁閉状態で長期間(例えば1週間)放置されたため、チューブ100が塑性変形したり、内壁を密着させて弾性変形しにくくなったりした場合、あるいは、チューブ100が繰り返し押し潰されて塑性変形し、弾性力を低下させている場合でも、チューブ100が弁開時に復元用弾性部材51によって弾性変形する力を補助され、元の形状に戻ることができる。
【0054】
ここで、復元用弾性部材51は、可動部513の挿通部5131に支持ピン44を挿通した状態で、支持ピン44を挟んで対称形状となるように、支持部材41に固定されている。また、復元用弾性部材51は、支持部材41の中空穴411内で弾性変形するように支持部材41に取り付けられている。復元用弾性部材51は、チューブ100のシール部分の両側を直接押し、チューブ100を元の形状に戻らせることができる。よって、ピンチバルブ1は、チューブ100が元の形状に戻るのを補助する機構を備えないピンチバルブとほぼ同じバルブサイズで、復元用弾性部材51を支持部材41に配設し、チューブ100が元の形状に戻るのを補助する機能を追加することができる。
【0055】
次に、ピンチバルブ1からチューブ100を取り外す手順について説明する。ピンチバルブ1にチューブ100を装着する場合と同様に、解除レバー部514を操作し、さらに、ホルダ43を押し下げ、チューブ100をセットポジションXから取り出す。そして、解除レバー部514とホルダ43の操作を解除することで、ピンチバルブ1を図1に示す状態に戻す。ピンチバルブ1は、解除レバー部514を操作すれば(押せば)、チューブ100を移動させる経路から後退するように可動部513を可動させることができるので、チューブ100を取り外す場合に、可動部513が邪魔になりにくい。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態のピンチバルブ1は、押圧体42が支持ピン44に対して進退可能に設けられ、押圧体42と支持ピン44との間でチューブ100を弾性変形させて制御流体を制御するピンチバルブ1において、弾性変形可能な復元用弾性部材51を有し、復元用弾性部材51は、自身の弾性力により、押圧体42と支持ピン44との間に配置されるチューブ100を直接押すこと、を特徴とする。
【0057】
このようなピンチバルブ1は、例えば、押圧体42と支持ピン44との間で押し潰されているチューブ100が、塑性変形して弾性変形力を低下させている場合でも、押圧体42が支持ピン44から離れる方向に後退したときに、復元用弾性部材51が自身の弾性力によりチューブ100を直接押し、チューブ100が元の形状に戻る弾性変形力を補助する。このように、ピンチバルブ1は、復元用弾性部材51の1部品だけで、押圧体42と支持ピン44との間で押し潰されたチューブ100が元の形状に戻るのを補助できる。よって、本形態のピンチバルブ1によれば、簡単かつコンパクトな構造で、弁開時にチューブ100が元の形状に戻るのを補助することができる。
【0058】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態に係るピンチバルブ1Aの断面図である。図7および後述する図8では、図1図5図6同様、復元用弾性部材51のみ外形形状を示し、固定するねじ59の記載を省略している。本形態のピンチバルブ1Aは、ホルダ43に連動して復元用弾性部材51を操作できるようにしている点が、第1実施形態のピンチバルブ1と相違する。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を使用し、説明を適宜省略する。
【0059】
ピンチバルブ1Aは、一端が閉鎖面1010により閉鎖されたホルダ1043が、支持部材41の外側にスライド可能に配設されている。閉鎖面1010は「操作部」の一例である。ホルダ1043の周壁1020には、支持部材41の挿入溝412と対応する位置に、チューブ100を挿入するためのホルダ側挿入溝1021が形成されている。ホルダ1043は、ホルダばね45により図中上向きに付勢され、挿入溝412を塞ぐ第1位置と挿入溝412を開放する第2位置との間でスライドできる。
【0060】
図8は、解除動作を説明する図である。ピンチバルブ1Aは、例えばチューブ100をセットポジションXに配置する場合、ホルダ1043をホルダばね45に抗して第1位置から第2位置へスライドさせる。このとき、ホルダ1043に設けた閉鎖面1010の内壁面1011が復元用弾性部材51に設けられた解除レバー部514の端部P1を駆動部2側(図中矢印F10方向)に押す。すると、復元用弾性部材51は、可動部513がコイルばね部512を支点として図中矢印K10方向に揺動し、可動部513の端部P2をセットポジションXから後退させる。これにより、チューブをセットポジションXまで挿入できるようになる。
【0061】
ピンチバルブ1Aは、ホルダ1043を押し下げる力が解除されると、ホルダ1043がホルダばね45に付勢されて第2位置から第1位置へスライドする。すると、復元用弾性部材51は、解除レバー部514の端部P1がホルダ1043の閉鎖面1010によって図中矢印F10方向に押されなくなくなる。これにより、復元用弾性部材51は、可動部513がコイルばね部512を支点として、図中矢印K10と逆方向に揺動し、セットポジションXに配置されたチューブを直接押すようになる。
【0062】
ホルダ1043が第2位置から図7に示す第1位置まで復帰すると、閉鎖面1010の内壁面1011が解除レバー部514の端部P1から離間する。そのため、チューブ100を装着されたピンチバルブ1Aが弁の開閉を繰り返す場合、復元用弾性部材51は、第1実施形態と同様、押圧体42の移動に応じて可動部513を可動させることができる。よって、ピンチバルブ1Aは、弁の開閉動作時に、復元用弾性部材51が弁の開閉動作を阻害しない。
【0063】
以上説明したように、第2実施形態のピンチバルブ1Aは、支持ピン44を支持する支持部材41を有し、支持部材41は、チューブ100を押圧体42と支持ピン44との間に案内する挿入溝412が形成されており、挿入溝412を塞ぐ第1位置と、挿入溝412を開放する第2位置との間でスライドするホルダ1043を有し、ホルダ1043は、第1位置から第2位置へ移動する場合に解除レバー部514を操作する閉鎖面1010を有すること、を特徴とする。
【0064】
このようなピンチバルブ1Aは、ホルダ1043が第1位置から第2位置にスライドするのに連動して、ホルダ1043の閉鎖面1010が解除レバー部514を操作するので、第1実施形態のようにホルダ43と解除レバー部514とを別々に操作する場合と比べ、押圧体42と支持ピン44との間にチューブ100を脱着しやすい。
【0065】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。ピンチバルブ1の駆動部2は、エアオペレイトタイプでなく、ソレノイドタイプであってもよい。また、駆動部2は、例えば、第1室221に圧縮コイルを縮設し、第1操作ポート214を給排気ポートとし、圧縮コイルのばね力と第2室222の内圧とのバランスに応じて押圧体42を上下動させるようにしてもよい。
【0066】
ホルダ43は、チューブ100が挿入溝から脱落することを防止できれば、筒状でなく、別形状にしてもよい。
【0067】
上記形態の復元用弾性部材51は、ねじりばねに限らず、板バネなど、ねじりばね以外の弾性部材であってもよい。また例えば、復元用弾性部材51は、ねじりばねのみで構成しなくてもよい。例えば、ねじりばねの一端に、固定部511に対応する短尺部材を取り付け、ねじりばねの他端に、可動部513と解除レバー部514に対応する長尺部材を取り付けることで、洗濯ばさみのような構造の復元用弾性部材51としてもよい。
【0068】
復元用弾性部材51は、ねじと以外の方法で、支持部材41に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,1A ピンチバルブ
42 押圧体
44 支持ピン
51 復元用弾性部材
100 チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8