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特開2023-127452抗PEG抗体結合材料および抗PEG抗体の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127452
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】抗PEG抗体結合材料および抗PEG抗体の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031256
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 武
(72)【発明者】
【氏名】澤田 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 璃奈
(72)【発明者】
【氏名】西浦 聖人
(57)【要約】
【課題】メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出可能な抗PEG抗体結合材料を提供する。
【解決手段】実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、一般式(1)で表されるセルロースオリゴマーを含み、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に結合可能である。式(1)中、nは平均重合度であって6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す。
【化1】
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
で表され、式(1)中のnは平均重合度であって6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す、セルロースオリゴマーを含む、
メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に結合可能な抗PEG抗体結合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の抗PEG抗体結合材料を含むバイオセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の抗PEG抗体結合材料を含む吸着剤。
【請求項4】
下記一般式(1):
【化2】
で表され、式(1)中のnは平均重合度であって6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す、セルロースオリゴマーを、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体との結合を可能にする条件下で、前記抗PEG抗体を含むことが疑われる被検体とインキュベートすること、
前記被検体とのインキュベート後の前記セルロースオリゴマーを、前記抗PEG抗体に対する二次抗体の結合を可能にする条件下で、前記二次抗体を含む試料とインキュベートすること、および、
前記試料とのインキュベート後の前記セルロースオリゴマーを用いて、プローブとしての前記二次抗体により、前記被検体に含まれる前記抗PEG抗体を検出すること、
を含む、抗PEG抗体の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗PEG抗体結合材料、およびそれを用いた抗PEG抗体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、リポソーム、ミセルなどの表面をPEG(ポリエチレングリコール)で修飾することにより、被修飾体の血中滞留性が向上し、免疫原性が低下する。そのため、現在、数多くのPEG修飾医薬品が臨床応用されている。
【0003】
しかしながら、PEG修飾によってPEGに対する抗体(抗PEG抗体)が分泌誘導されることが明らかになった。抗PEG抗体が血中に存在している間にPEG修飾医薬品が投与されると、PEG修飾医薬品が血中から除去される現象(ABC現象)が起こり、血中滞留性が低下したり、副作用が生じたりすることがある。そのため、抗PEG抗体の誘導やPEG修飾医薬品の治療効果に与える影響を評価するために、血中に存在する抗PEG抗体を高感度に検出することが求められている。
【0004】
抗PEG抗体としては、PEG構造のバックボーンであるオキシエチレンの繰り返し構造を認識し、該バックボーンのPEG鎖に選択性の高いバックボーン選択的抗PEG抗体だけでなく、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体がある。メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体は、メトキシ末端PEGに高い選択性を持つものであり、すなわち末端にメトキシ基を持つPEG鎖に特異的に結合する。メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体は、より疎水性度の高いエトキシ基やブトキシ基を末端に持つPEG鎖に対しても結合することが知られている。
【0005】
PEG鎖を含むバイオセンサに関する技術として、例えば特許文献1には、金属(酸化物)微粒子または半導体微粒子に2本以上のPEG鎖を介して官能基または機能性部分を設けたPEG修飾ナノ粒子を含むバイオセンサが開示されている。
【0006】
また、特許文献2および3には、水不溶性粒子と、その表面上に配置されたポリシロキサンを含むプライマー層と、プライマー層上に配置された親水性ポリマー層を含み、該親水性ポリマー層を、抗体が結合されたPEG鎖と、不活性基が結合されたPEG鎖とで構成した親水性粒子を含むバイオセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-180921号公報
【特許文献2】特開2020-143964号公報
【特許文献3】特開2021-012089号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Noharaら,"Enzymatic Synthesis of Oligo(ethylene glycol)-BearingCellulose Oligomers for in Situ Formation of Hydrogels with CrystallineNanoribbon Network Structures",Langmuir,2016年,32,47,12520-12526
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、血中に存在する抗PEG抗体を高感度に検出することを目指し、研究していくなかで、特定のオリゴエチレングリコール基を持つセルロースオリゴマーがメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に特異的に結合することを見い出した。
【0010】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑みてなされたものであり、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に結合可能な抗PEG抗体結合材料、および、それを用いた抗PEG抗体の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 下記一般式(1)で表されるセルロースオリゴマーを含む、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に結合可能な抗PEG抗体結合材料。
一般式(1):
【化1】
(式(1)中、nは平均重合度であって6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す。)
[2] 上記[1]に記載の抗PEG抗体結合材料を含むバイオセンサ。
[3] 上記[1]に記載の抗PEG抗体結合材料を含む吸着剤。
【0012】
[4] 下記一般式(1):
【化2】
(式(1)中のnは平均重合度であって6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す。)で表されるセルロースオリゴマーを、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体との結合を可能にする条件下で、前記抗PEG抗体を含むことが疑われる被検体とインキュベートすること、
前記被検体とのインキュベート後の前記セルロースオリゴマーを、前記抗PEG抗体に対する二次抗体の結合を可能にする条件下で、前記二次抗体を含む試料とインキュベートすること、および、
前記試料とのインキュベート後の前記セルロースオリゴマーを用いて、プローブとしての前記二次抗体により、前記被検体に含まれる前記抗PEG抗体を検出すること、
を含む、抗PEG抗体の検出方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に結合可能な抗PEG抗体結合材料が提供される。該抗PEG抗体結合材料は、例えば、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出するためのバイオセンサや、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を吸着するための吸着剤に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る抗PEG抗体結合材料を構成するセルロースオリゴマーからなるナノリボンの概念図。
図2】実施形態に係る抗PEG抗体の検出方法を示す説明図。
図3】試験例1における各セルロースオリゴマーについての二次抗体の結合評価結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図4】試験例2における各セルロースオリゴマーについてのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の結合評価結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図5】試験例3における各セルロースオリゴマーについてのバックボーン選択的抗PEG抗体の結合評価結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図6】試験例4におけるブランク測定でのBSA濃度依存性の結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図7】試験例5におけるブランク測定(セルロースオリゴマー有り)でのBSA濃度依存性の結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図8】試験例6におけるセルロースオリゴマーに対するBSAの吸着評価結果(280nmでの吸光度)を示すグラフ。
図9】試験例7におけるBSA存在下でのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出下限測定結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図10図9のグラフの低濃度域を拡大して示すグラフ。
図11】試験例8における10%FBS共存下でのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図12図11のグラフの低濃度域を拡大して示すグラフ。
図13】試験例9における10%FBS存在下でのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出結果(490nmでの吸光度)を示すグラフ。
図14図13のグラフの低濃度域を拡大して示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、下記一般式(1)で表されるセルロースオリゴマー(以下、OEG化セルロースオリゴマーともいう。)を含む。OEG化セルロースオリゴマーは、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により連結された構造を持つセルロースオリゴマーにおいて、その還元末端のアノマー炭素にメトキシ基を持つオリゴエチレングリコール基が置換基として結合したものである。
【0016】
【化3】
【0017】
式(1)中、nは6~16の数を表し、mは1~16の整数を表す。また、式(1)中の波線は還元末端のアノマー位の立体配位がα体、β体、または、α体とβ体の混合物であることを表す。
【0018】
上記nは、セルロースオリゴマーの平均重合度(DP)を表し、6以上16以下である。nは6.5以上でもよく、7以上でもよい。また、14以下でもよく、13以下でもよく、12以下でもよい。セルロースオリゴマーの平均重合度は、セルロースオリゴマーの質量比に応じた重合度の加重平均値である。なお、個々のOEG化セルロースオリゴマーの重合度は、特に限定されないが、例えば4以上でもよく、5以上でもよく、6以上でもよく、また、例えば20以下でもよく、16以下でもよく、13以下でもよい。
【0019】
上記mは、オリゴエチレングリコール基におけるエチレンオキシド単位の付加モル数を表し、1以上16以下である。mは3以上であることが好ましく、より好ましくは4以上である。mは12以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは8以下である。なお、OEG化セルロースオリゴマーは、mが1~16のうちのいずれか1つの値を持つものでもよく、mが複数の値を持つ混合物でもよい。
【0020】
一実施形態において、OEG化セルロースオリゴマーは下記一般式(2)で表されるものであってもよい。この場合、還元末端のアノマー位の立体配位はβ体である。なお、式(2)中のmおよびnは、式(1)中のmおよびnと同じである。
【化4】
【0021】
OEG化セルロースオリゴマーは、セルロースII型の結晶構造を持つセルロースオリゴマー集合体でもよい。すなわち、一実施形態において、OEG化セルロースオリゴマーは、式(1)で表される化合物を構成成分とする、セルロースII型の結晶構造を持つセルロースオリゴマー集合体であってもよい。該セルロースオリゴマー集合体は、シート状の構造(セルロースナノシート)を持つものでもよい。ここで、シート状の構造は、図1に示すようなリボン状の構造(セルロースナノリボン)を包含する概念である。
【0022】
天然由来のセルロース鎖が平行に配列したセルロースI型の結晶構造を持つのに対し、人工合成されたセルロースオリゴマーは、熱力学的に安定であるセルロースII型の結晶構造を一般に形成する。その際、セルロース鎖末端の置換基である(OC-OCHは結晶形に影響を与えず、該置換基を持つセルロースオリゴマーはセルロースナノシートの膜厚方向に配列してラメラ結晶を形成し、置換基がシート表面に露出する。
【0023】
詳細には、OEG化セルロースオリゴマーを、上記式(1)の下方に付記したように、セルロース鎖を還元末端から非還元末端に向かう矢印で示し、置換基を波線で示したとき、図1中に断面構造を示すように、OEG化セルロースオリゴマーは上記矢印の向きが交互になるように膜厚方向に配列し、したがって置換基は互い違いにシート表面に露出した構造をとる。
【0024】
OEG化セルロースオリゴマーの合成方法は、特に限定されず、例えば、非特許文献1に記載された、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)の逆反応を利用した酵素合成反応を用いてもよい。すなわち、グルコースまたはセロビオースのアノマー位にβ結合を介して上記置換基を持つプライマーもしくはセロビオースのアノマー位にα結合を介して上記置換基を持つプライマーとα-グルコース-1-リン酸(αG1P)とを、CDPと反応させることにより、プライマーに対してαG1Pが逐次的に重合され、式(1)で表されるOEG化セルロースオリゴマーを合成することができる。
【0025】
上記式(1)で表されるOEG化セルロースオリゴマーは、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に特異的に結合し、プローブとしての二次抗体や、BSA(ウシ血清アルブミン)、リゾチームなどの他のタンパク質には結合しない。そのため、上記セルロースオリゴマー集合体は、タンパク質を非特異的に吸着しないバイオイナートな表面を持ち、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に特異的に結合する。OEG化セルロースオリゴマーは、また、バックボーン選択的抗PEG抗体にも結合しない。そのため、OEG化セルロースオリゴマーは、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に対して選択的に結合可能であり、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を選択的に検出ないし吸着可能な抗PEG抗体結合材料として用いることができる。
【0026】
OEG化セルロースオリゴマーが結合可能なメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体は、より詳細には、末端にメトキシ基を持つPEG(ポリエチレングリコール)に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、メトキシ末端PEG選択的モノクローナル抗PEG抗体とも称される。メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体は、より疎水性度の高いエトキシ基やブトキシ基を末端に持つPEG鎖に対しても結合するものであってもよい。メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体のクラスは、特に限定されず、IgGでもよく、IgMでもよい。
【0027】
本実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、OEG化セルロースオリゴマーを含むことから、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を認識し、これに結合可能なものである。そのため、例えば、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出するためのバイオセンサ、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を吸着するための吸着剤等に用いることができる。
【0028】
該抗PEG抗体結合材料は、OEG化セルロースオリゴマー(例えば上記セルロースオリゴマー集合体)のみからなるものでもよく、また、その効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖、細胞、アミノ酸、金属イオン、有機溶媒等を含んでもよい。
【0029】
OEG化セルロースオリゴマー、詳細にはその集合体であるセルロースオリゴマー集合体は、水に溶解しない物質であり、上記酵素合成反応により合成した場合、OEG化セルロースオリゴマーは水分散液として得られる。一実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、該水分散液から水を除去することにより得られる乾燥粉末であってもよく、該乾燥粉末をそのまま、またはタンパク質等の他の成分を粉体混合することで、粉末状の抗PEG抗体結合材料を調製してもよい。粉末状の抗PEG抗体結合材料は、その使用に際して、水を加えることで容易に水に分散させることができ、水分散液を調製することができる。
【0030】
一実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、OEG化セルロースオリゴマーを水に分散させた水分散液でもよい。OEG化セルロースオリゴマーの水分散液とする場合、水に緩衝剤を加えて緩衝液としてもよい。すなわち、OEG化セルロースオリゴマーの水分散液は、OEG化セルロースオリゴマーが緩衝液に分散したものであってもよい。
【0031】
緩衝剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)緩衝液、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液等を構成する緩衝剤が挙げられる。
【0032】
OEG化セルロースオリゴマーの水分散液とする場合、OEG化セルロースオリゴマーの含有量(濃度)は、特に限定されず、例えば0.01~5%(w/v)でもよく、0.03~0.3%(w/v)でもよい。
【0033】
本明細書において、「%(w/v)」は、質量体積パーセント濃度であり、100mLの体積にしめる対象物質の質量(g)である。
【0034】
一実施形態に係る抗PEG抗体結合材料は、OEG化セルロースオリゴマー(例えば上記セルロースオリゴマー集合体)を、プラスチックやガラスなどの基材の表面に固定化したものであってもよい。
【0035】
一実施形態において、上記抗PEG抗体結合材料を含むバイオセンサは、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出し定量するバイオアッセイを行うために用いられるものである。該バイオセンサは、かかるバイオアッセイを行うのに用いられる各要素またはそれら要素の集成体もしくは組合せをいう。
【0036】
従って、バイオセンサは、例えば、OEG化セルロースオリゴマーからなる粉末のみで構成されてもよく、OEG化セルロースオリゴマーの水分散液のみで構成されてもよい。あるいは、バイオセンサは、これらOEG化セルロースオリゴマーの粉末または水分散液とともに、プローブとしての二次抗体を組み合わせたキット(即ち、抗PEG抗体検出キット)でもよく、さらに、例えば二次抗体が酵素標識抗体の場合、その酵素に対応する基質を組み合わせた抗PEG抗体検出キットでもよい。
【0037】
後述する実施例のとおり、OEG化セルロースオリゴマーによるメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出感度は、OEG化セルロースオリゴマーを被検体とインキュベートする際に、BSA(ウシ血清アルブミン)などのアルブミンを添加することによって向上する。
【0038】
そのため、バイオセンサにはBSAなどのアルブミンが含まれてもよく、OEG化セルロースオリゴマーと被検体をインキュベートする際にアルブミンが添加されることが好ましい。その場合、アルブミンは、上記抗PEG抗体結合材料に含まれてもよく、抗PEG抗体結合材料とは別体として抗PEG抗体検出キットに含まれてもよい。アルブミンが抗PEG抗体結合材料に含まれる場合、OEG化セルロースオリゴマーとともにアルブミンが混合された粉末状であってもよく、OEG化セルロースオリゴマーの水分散液中にアルブミンが溶解されていてもよい。OEG化セルロースオリゴマーとアルブミンの比率は、特に限定されず、例えばOEG化セルロースオリゴマー/アルブミンの質量比で、0.003/1~0.3/1でもよく、0.01/1~0.1/1でもよい。なお、被検体が血液のようにアルブミンを含むものである場合、追加的にアルブミンを添加してもよく、添加しなくてもよい。
【0039】
一実施形態に係る抗PEG抗体の検出方法は、以下の工程を含む。
(1) OEG化セルロースオリゴマーを、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体との結合を可能にするに条件下で、被検体とインキュベートする工程、
(2) 該被検体とのインキュベート後のOEG化セルロースオリゴマーを、二次抗体の結合を可能にする条件下で、二次抗体を含む試料とインキュベートする工程、および、
(3) 該試料とのインキュベート後のOEG化セルロースオリゴマーを用いて、プローブとしての二次抗体により、被検体に含まれるメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出する工程。
【0040】
工程(1)では、上記抗PEG抗体結合材料としてのOEG化セルロースオリゴマーの水分散液とともに被検体を容器に添加し、混合分散させた後、インキュベートする。
【0041】
被検体とは、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を含むことが疑われる検査対象物質である。例えば、抗PEG抗体の誘導やPEG修飾医薬品の治療効果に与える影響を評価するために、血中に存在する抗PEG抗体を検出する場合、血液またはそれを希釈したものを被検体としてもよい。
【0042】
工程(1)では、上記のように、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出感度を向上するために、BSAなどのアルブミンを添加してもよい。その場合、系中におけるアルブミンの濃度(被検体に元々含まれるアルブミンを除いたアルブミン濃度)は、特に限定されないが、例えば0.05~10%(w/v)であることが好ましく、より好ましくは0.5~5%(w/v)である。
【0043】
工程(1)でのインキュベーション条件としては、OEG化セルロースオリゴマーとメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体との結合が可能であれば特に限定されず、例えば4~60℃、1分~2時間でもよい。系中におけるOEG化セルロースオリゴマーの濃度は特に限定されず、例えば0.01~1%(w/v)でもよく、0.01~0.1%(w/v)でもよい。
【0044】
工程(1)では、このようにしてOEG化セルロースオリゴマーに対して、検出対象であるメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を結合させる(図2参照)。その後、遠心分離および洗浄により、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を結合させたOEG化セルロースオリゴマーを、被検体から分離する。
【0045】
工程(2)では、抗PEG抗体を結合させたOEG化セルロースオリゴマーに、二次抗体を含む試料を添加し、混合分散させた後、インキュベートする。
【0046】
二次抗体を含む試料としては、二次抗体の水溶液が挙げられる。二次抗体としては、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体に特異的に結合することでプローブとなるものであれば特に限定されず、例えば、酵素、放射性同位体、ビオチン、蛍光色素などで標識された抗体が挙げられる。
【0047】
工程(2)でのインキュベーション条件としては、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体と二次抗体との結合が可能であれば、特に限定されず、例えば4~60℃、1分~2時間でもよい。系中における二次抗体の濃度は特に限定されず、例えば100~1000ng/mLでもよい。
【0048】
工程(2)では、このようにしてOEG化セルロースオリゴマーに結合した抗PEG抗体に対して、プローブとしての二次抗体を結合させる(図2参照)。その後、遠心分離および洗浄により、二次抗体を結合させたOEG化セルロースオリゴマーを、二次抗体を含む試料から分離する。
【0049】
工程(3)では、二次抗体を結合させたOEG化セルロースオリゴマーを用いて、プローブとしての二次抗体により、被検体に含まれるメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を検出し、その定量を行う。
【0050】
例えば、二次抗体として酵素標識抗体を用いた場合、図2に示すように、上記二次抗体を結合させたOEG化セルロースオリゴマーに対し、当該酵素に対応する基質を加えて酵素反応を行う。これにより生成される生成物の色素を吸光(呈色)、蛍光または化学発光などで検出および定量を行う。
【0051】
他の実施形態において、上記抗PEG抗体結合材料を含む吸着剤は、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を吸着させることにより、当該抗PEG抗体を除去または精製するために用いることができる。
【0052】
該吸着剤は、OEG化セルロースオリゴマーからなる粉末で構成されてもよく、OEG化セルロースオリゴマーの水分散液で構成されてもよく、これらに他の任意成分が含まれてもよい。
【0053】
吸着剤をメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の除去に用いる場合、例えば、当該抗PEG抗体を含む液体に該吸着剤を添加して、該抗PEG抗体とOEG化セルロースオリゴマーとを接触させることにより、両者を結合させる。その後、該抗PEG抗体が吸着した吸着剤を上記液体から遠心分離などにより取り除くことにより、液体から該抗PEG抗体を除去することができる。
【0054】
吸着剤をメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の精製に用いる場合、例えば、当該抗PEG抗体とともに夾雑物を含む液体に該吸着剤を添加して、該抗PEG抗体とOEG化セルロースオリゴマーとを接触させることにより、両者を結合させる。その後、該抗PEG抗体が吸着したOEG化セルロースオリゴマーを上記液体から遠心分離などにより分離して回収する。回収したOEG化セルロースオリゴマーに対して、例えば酸処理を施すことにより、該抗PEG抗体とOEG化セルロースオリゴマーとの結合が解除されるので、OEG化セルロースオリゴマーから該抗PEG抗体を分離回収することができ、純度の高いメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を得ることができる。
【実施例0055】
以下、実施例により更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
[非修飾セルロースオリゴマー(Cell-Glc)の調製]
T.Serizawaら,Polym.J.,2016年,48,539-544に記載の方法に従い、プライマーとしてグルコースを用いて、下記式で表される、平均重合度が10(n=10)の非修飾セルロースオリゴマー(Cell-Glc)を合成した。
【化5】
【0057】
[OEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEGm)の調製]
上記非特許文献1(T.Noharaら,Langmuir,2016年,32,47,12520-12526)に記載の方法に従い、プライマーとしてOEG化グルコースを用いて、上記式(2)で表されるOEG化セルロースオリゴマーを合成した。OEG化セルロースオリゴマーとしては、式(2)において、n=10,m=4のセルロースオリゴマー(Cell-OEG4)と、n=10,m=6のセルロースオリゴマー(Cell-OEG6)と、n=11,m=8のセルロースオリゴマー(Cell-OEG8)とを合成した。
【0058】
平均重合度は、プロトン核磁気共鳴(NMR)装置(AVANCE III HD500(Bruker Biospin、磁場強度:500MHz、積算回数16回))を用いて、OEG化セルロースオリゴマーのセルロース部位における還元末端以外のアノマー位(δ4.2ppm付近)と還元末端のアノマー位(δ4.3ppm付近)のプロトンの積分値をもとに算出した。
【0059】
[セルロースオリゴマー(Cell-Cello-BiP)の調製]
K.Sugiuraら,Polym.J.,2021年,53.1133に記載の方法に従い、プライマーとして両末端にセロビオースを持つオリゴエチレングリコールを用いて、下記式で表される、p=5,q=5のセルロースオリゴマー(Cell-Cello-BiP)を合成した。
【化6】
【0060】
[試薬]
試験例で使用した試薬BSAおよびOPDは以下のとおりである。
・BSA:ウシ血清アルブミン、富士フイルム和光純薬製、プロテアーゼ不含
・OPD:o-フェニレンジアミン二塩酸塩、ナカライテスク製、水質分析用
【0061】
[試験例1:二次抗体の結合評価]
抗PEG抗体の結合を評価する際に使用する二次抗体の吸着を評価した。二次抗体としては、抗ウサギIgG,HRP標識抗体(GeneTex製)を用い、3.3%(w/v)BSA/PBS溶液で1000倍に希釈し、二次抗体の含有量が410ng/mLである二次抗体溶液を調製した。ここで、3.3%(w/v)BSA/PBS溶液は、330mgのBSAを10mLのPBS(pH7.4、以下同じ)に溶かして調製した。
【0062】
PBSにセルロースオリゴマーを5mg/mL分散させたセルロース分散液を調製した。セルロースオリゴマーとしては、非修飾セルロースオリゴマー(Cell-Glc)、OEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4,Cell-OEG6,Cell-OEG8)、およびセルロースオリゴマー(Cell-Cello-BiP)を用いて、それぞれのセルロース分散液を調製した。
【0063】
1.二次抗体の吸着
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液10μLを添加し、さらに二次抗体溶液100μLを添加して分散させた後、25℃で1時間インキュベートした。次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0064】
2.酵素反応
次いで、遠心し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液100μLを添加した。基質溶液としては、OPDを2mg/mLおよび過酸化水素を0.11v/v%含むクエン酸リン酸バッファー(pH4.0)を用いた。基質溶液を添加し、分散させた後、25℃で30分間インキュベートした。次いで、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した後、96穴プレートに上清100μLを添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0065】
結果は、図3に示すとおりであり、非修飾セルロースオリゴマー(Cell-Glc)、OEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4,Cell-OEG6,Cell-OEG8)、およびセルロースオリゴマー(Cell-Cello-BiP)のいずれに対しても、HRP標識抗体(二次抗体)は吸着しないことがわかった。
【0066】
[試験例2:メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の結合評価]
一次抗体であるメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体(methoxy-mAb)としては、PEG-B-47(abcam製)を用いた。PEG-B-47は、動物種:ウサギ、クラス:IgG、免疫原:PEG-KLHである、メトキシ末端PEG選択的モノクローナル抗PEG抗体である(Merry R.Shermanら,Molecular Immunology,2008年,57,236-246)。PEG-B-47を3.3%(w/v)BSA/PBS溶液で68500倍に希釈し、PEG-B-47の含有量が11ng/mLである一次抗体溶液を調製した。
【0067】
セルロース分散液、二次抗体溶液および基質溶液については、試験例1と同じものを用いた。
【0068】
1.一次抗体の抗原抗体反応
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液(5mg/mL,PBS)10μLを添加し、さらに一次抗体溶液100μLを添加し、分散させた後、25℃で1時間インキュベートして抗原抗体反応を実施した。この抗原抗体反応の系は、セルロースオリゴマーの濃度が0.45mg/mL、一次抗体の濃度が10ng/mL、BSAの濃度が3%(w/v)である。
【0069】
インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0070】
2.二次抗体の抗原抗体反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。その後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0071】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。上清を分取し、超純水で2倍希釈した後、100μLを96穴プレートに添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0072】
各セルロースオリゴマーについて測定した吸光度から、セルロースオリゴマー無しで同様に実験した場合の吸光度を減算することにより、評価を行う吸光度を算出した。実験は、各セルロースオリゴマーについて3回ずつ行い、その平均の吸光度を求めた。
【0073】
結果は図4に示すとおりである。非修飾セルロースオリゴマー(Cell-Glc)およびセルロースオリゴマー(Cell-Cello-BiP)では、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体がほとんど結合していないことが分かる。
【0074】
これに対し、OEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4,Cell-OEG6,Cell-OEG8)では、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体が結合していることが分かる。試験例1において、これらのセルロースオリゴマーにはHRP標識抗体(二次抗体)が吸着しないことからも、OEG化セルロースオリゴマーに対するメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の特異的な結合が裏付けられている。
【0075】
また、OEG化セルロースオリゴマーへの抗PEG抗体の結合量は、Cell-OEG4が最大であり、オリゴエチレングリコール基におけるエチレンオキシド単位の付加モル数が大きくなるほど、結合量が減少していた。
【0076】
[試験例3:バックボーン選択的抗PEG抗体の結合評価]
一次抗体であるバックボーン選択的抗PEG抗体(backbone-mAb)としては、clone6.3(Merck製、動物種:マウス、クラス:IgG1)を用いた。clone6.3は、これまでに750Da以上のPEGに結合することが明らかになっている(Samuel K.Lai,Commun.Chem.2020年,3,124)。clone6.3を3.3%(w/v)BSA/PBS溶液で145500倍に希釈し、clone6.3の含有量が11ng/mLである一次抗体溶液を調製した。
【0077】
二次抗体としては、抗マウスIgG1,HRP標識抗体(abcam)を用い、3.3%(w/v)BSA/PBS溶液で2273倍に希釈し、二次抗体の含有量が440ng/mLである二次抗体溶液を調製した。セルロース分散液および基質溶液については、試験例1と同じものを用いた。
【0078】
1.一次抗体の抗原抗体反応
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液10μLを添加し、さらに一次抗体溶液100μLを添加し、分散させた後、25℃で1時間インキュベートして抗原抗体反応を実施した。この抗原抗体反応の系は、セルロースオリゴマーの濃度が0.45mg/mL、一次抗体の濃度が10ng/mL、BSAの濃度が3%(w/v)である。インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0079】
2.二次抗体の抗原抗体反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。その後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0080】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。上清100μLを96穴プレートに添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0081】
セルロースオリゴマーについて測定した吸光度から、セルロースオリゴマー無しで同様に実験した場合(コントロール)の吸光度を減算することにより、評価を行う吸光度を算出した。実験は、3回の実験を3セット行い、各セットの平均値のさらなる平均の吸光度を求めた。
【0082】
結果は、図5に示すとおりである。コントロールの吸光度を差し引いて求めた吸光度はほぼ0であり、OEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4,Cell-OEG6,Cell-OEG8)には、バックボーン選択的抗PEG抗体が結合しないことが分かった。そのため、本実施形態に係るセルロースオリゴマーであると、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を選択的に検出できると考えられる。
【0083】
[試験例4:ブランク測定におけるBSA濃度依存性]
二次抗体が容器に対して非特異的に吸着すると、検出感度が低下する要因となる。そこで、容器に対する二次抗体の非特異的吸着を抑制するために、抗原抗体反応に対して不活性なタンパク質であるBSAを反応系に共存させて、その影響を調べた。
【0084】
1.BSAの吸着
0.2mLのPCRチューブにPBSを10μL添加し、さらにBSA溶液100μLを添加し、分散させた。BSA溶液としては、1.1mgのBSAを1mLのPBSに溶かして調製した0.11%(w/v)BSA/PBS溶液、3.3mgのBSAを1mLのPBSに溶かして調製した0.33%(w/v)BSA/PBS溶液、11mgのBSAを1mLのPBSに溶かして調製した1.1%(w/v)BSA/PBS溶液、33mgのBSAを1mLのPBSに溶かして調製した3.3%(w/v)BSA/PBS溶液、および、BSA無添加の0%(w/v)PBSを用いた。
【0085】
BSA溶液を添加、分散後、25℃で1時間インキュベートした後、100μLのPBSで内容物を3回置換することにより、PCRチューブを洗浄した。
【0086】
2.二次抗体の吸着
次いで、洗浄後のPCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加し、25℃で1時間インキュベートした。二次抗体溶液としては試験例1と同じものを用いた。
【0087】
インキュベート後、100μLのPBSで内容物を3回置換することにより、PCRチューブを洗浄した。
【0088】
3.酵素反応
次いで、PBSを除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、25℃で30分間インキュベートした。基質溶液としては試験例1と同じものを用いた。その後、3N硫酸100μLを添加した。
【0089】
次いで、96穴プレートに、酵素反応後の溶液100μLを添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。実験は3回行い、その平均の吸光度を求めた。
【0090】
結果は図6に示すとおりである。BSAの濃度が増大するにしたがって吸光度が低下しており、バックグラウンドが低下した。BSAが容器(チューブ)に吸着し、二次抗体の非特異的吸着を抑制できたためと考えられる。
【0091】
[試験例5:ブランク測定におけるBSA濃度依存性(セルロースオリゴマー有り)]
セルロースオリゴマーを添加した場合における、BSAの濃度による二次抗体の非特異的吸着への影響を調べた。
【0092】
1.BSAの吸着
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液10μLを添加し、さらにBSA溶液100μLを添加し、分散させた。セルロース分散液としては、PBSにOEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を5mg/mL分散させたものを用いた。BSA溶液としては、試験例4と同じ5種類の溶液を用いた。
【0093】
BSA溶液を添加、分散後、25℃で1時間インキュベートした後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0094】
2.二次抗体の吸着
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。二次抗体溶液としては試験例4と同じものを用いた。
【0095】
インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0096】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。基質溶液としては試験例4と同じものを用いた。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。
【0097】
次いで、上清100μLを96穴プレートに添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。実験は3回行い、その平均の吸光度を求めた。
【0098】
結果は図7に示すとおりである。BSAの濃度が増大するにしたがって吸光度が低下しており、バックグラウンドが低下した。二次抗体での処理に先立ち、高濃度のBSAを添加してインキュベートすることにより、次に添加する二次抗体の容器への非特異的吸着を抑制することができ、検出感度(S/N比)を向上できることが分かった。
【0099】
[試験例6:セルロースオリゴマーに対するBSAの吸着評価]
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液48μLを添加し、さらにBSA溶液72μLを添加し、分散させた。セルロース分散液としては、PBSにOEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を5mg/mL分散させたものを用いた。BSA溶液としては、50mgのBSAを1mLのPBSに溶かして調製した5%(w/v)BSA/PBS溶液を用いた。両者を混合後の液中では、セルロースオリゴマーの濃度が2mg/mLであり、BSAの濃度が3%(w/v)である。
【0100】
上記混合後、25℃で1時間インキュベートし、次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)した後、上清25μLを分取して、超純水で20倍希釈した後、50μLをマイクロセルに添加した。
【0101】
そして、波長200~800nmでUV-vis(紫外可視分光法)分析を行い、280nmの吸光度を求めた。測定は3回実施し、その平均値を求めた。
【0102】
また、ブランクとして、セルロース分散液の代わりにセルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を含まないPBSを48μL添加し、その他は同様にして吸光度の平均値を求めた。
【0103】
結果は図8に示すとおりである。図8において、「セルロース(+)」はセルロース分散液を用いた例、「セルロース(-)」はブランクとしてセルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を含まないPBSを用いた例である。
【0104】
図8に示すように、セルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を添加した場合も未添加の場合もほぼ同じ吸光度を示した。このことから、BSAはセルロースオリゴマー(Cell-OEG4)にほとんど吸着しないことがわかった。
【0105】
[試験例7:BSA存在下でのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出]
【0106】
セルロース分散液としては、PBSにOEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を5mg/mL分散させたものを用いた。
【0107】
一次抗体溶液としては、上記PEG-B-47を3.3%(w/v)BSA/PBS溶液で希釈し、一次抗体の濃度が1.1ng/mL、2.2ng/mL、5.5ng/mL、11ng/mL、22ng/mL、55ng/mL、110ng/mL(6850倍希釈)となるようにそれぞれ調製したものを用いた。
【0108】
二次抗体溶液および基質溶液については、試験例1と同じものを用いた。
【0109】
1.一次抗体の抗原抗体反応
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液(Cell-OEG4,5mg/mL,PBS)10μLを添加し、一次抗体溶液100μLを添加し、分散させた後、25℃で1時間インキュベートして抗原抗体反応を実施した。この抗原抗体反応の系は、セルロースオリゴマーの濃度が0.45mg/mL、一次抗体の濃度が1~100ng/mL、BSAの濃度が3%(w/v)である。また、ブランクとして、一次抗体を含まない3.3%(w/v)BSA/PBS溶液を100μL添加して1時間インキュベートした。
【0110】
インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0111】
2.二次抗体の抗原抗体反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。その後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0112】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。上清を分取し、超純水で5倍希釈した後、100μLを96穴プレートに添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0113】
一次抗体の各濃度について測定した吸光度を求めた。実験は、3回の実験を3セット行い、各セットの平均値のさらなる平均の吸光度を求めた。
【0114】
結果は図9および図10に示すとおりである。横軸は、一次抗体の抗原抗体反応における反応系での一次抗体(methoxy-mAb)の濃度を示し、縦軸は、490nmでの吸光度を示す。図10は、低濃度域(0~10ng/mL)での結果を拡大して示すグラフである。
【0115】
図9および図10に示すように、3%(w/v)BSA存在下で、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を定量検出できることが分かった。図10に示すように、低濃度域における傾き(slope)は0.0612であり、標準偏差σは0.00133であり、決定係数Rは0.997であった。検出下限(=3σ/slope)は0.065ng/mLであり、極めて高い感度を示した。
【0116】
[試験例8:10%FBS共存下での検出下限]
アルブミンは血清中に最も多く含まれるタンパク質ではあるものの、血清にはアルブミンの他にグロブリン、糖、アミノ酸、尿素、および金属イオンなどのさまざまな夾雑物質が含まれている。ここでは実際の血液中に存在するメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出を目指し、モデル血清としてウシ胎児血清(FBS)共存下でのメトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体の検出ならびに定量を検討した。
【0117】
試験例8において、セルロース分散液としては、PBSにOEG化セルロースオリゴマー(Cell-OEG4)を5mg/mL分散させたものを用いた。FBSとしては、BioWest製、細胞培養用の100%FBSを超純水で希釈して22v/v%としたもの(22%FBS)を用いた。なお、FBSにはγ-グロブリン(抗体)は含まれていない。
【0118】
一次抗体溶液としては、上記PEG-B-47を6.6%(w/v)BSA/2×PBS溶液で希釈し、一次抗体の濃度が2.2ng/mL、4.4ng/mL、11ng/mL、22ng/mL、44ng/mL、110ng/mL、220ng/mLとなるようにそれぞれ調製した7種類の溶液を用いた。ここで、6.6%(w/v)BSA/2×PBS溶液は、660mgのBSAを10mLの2×PBS(PBSの2倍濃度溶液、以下同じ)に溶かして調製した。
【0119】
二次抗体溶液および基質溶液については、試験例1と同じものを用いた。
【0120】
1.一次抗体の抗原抗体反応
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液(Cell-OEG4,5mg/mL,PBS)10μLを添加し、22%FBSを50μL添加し、さらに一次抗体溶液50μLを添加し、分散させた後、25℃で1時間インキュベートして抗原抗体反応を実施した。この抗原抗体反応の系は、セルロースオリゴマーの濃度が0.45mg/mL、一次抗体の濃度が1~100ng/mL、FBSの濃度が10v/v%、BSAの濃度が3%(w/v)である。また、ブランクとして、一次抗体を含まない6.6%(w/v)BSA/2×PBS溶液を50μL添加して1時間インキュベートした。
【0121】
インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0122】
2.二次抗体の抗原抗体反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。その後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0123】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。上清を分取し、超純水で5倍希釈した後、100μLを96穴プレートに添加し、次いで、96穴プレートに、遠心後の上清100μLを添加し、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0124】
一次抗体の各濃度について測定した吸光度を求めた。実験は、3回の実験を3セット行い、各セットの平均値のさらなる平均の吸光度を求めた。
【0125】
結果は図11および図12に示すとおりである。横軸は、一次抗体の抗原抗体反応における反応系での一次抗体(methoxy-mAb)の濃度を示し、縦軸は、490nmでの吸光度を示す。図12は、低濃度域(0~10ng/mL)での結果を拡大して示すグラフである。
【0126】
図11および図12に示すように、10v/v%のFBSと3%(w/v)のBSAの共存下で、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を定量検出できることが分かった。図12に示すように、低濃度域における傾き(slope)は0.0554であり、標準偏差σは0.00534であり、決定係数Rは0.994であった。検出下限(=3σ/slope)は0.29ng/mLであり、既報の血清存在下(20倍希釈)でのセンシング系(Shaoyi J.ら,Anal.Chem.2017年,89,16,8217-8222)の検出限界10ng/mL程度と比較して、極めて高い感度を示した。
【0127】
[試験例9:10%FBS存在下での検出下限]
BSAの添加効果を確認するために、試験例8に対してBSAを添加せずに同様の試験を行った。
【0128】
試験例9において、一次抗体溶液としては、上記PEG-B-47を2×PBSで希釈し、一次抗体の濃度が2.2ng/mL、4.4ng/mL、11ng/mL、22ng/mL、44ng/mL、110ng/mL、220ng/mLとなるようにそれぞれ調製した7種類の溶液を用いた。セルロース分散液、22%FBS、二次抗体溶液および基質溶液については、試験例8と同じものを用いた。
【0129】
1.一次抗体の抗原抗体反応
0.2mLのPCRチューブにセルロース分散液(Cell-OEG4,5mg/mL,PBS)10μLを添加し、22%FBSを50μL添加し、さらに一次抗体溶液50μLを添加し、分散させた後、25℃で1時間インキュベートして抗原抗体反応を実施した。この抗原抗体反応の系は、セルロースオリゴマーの濃度が0.45mg/mL、一次抗体の濃度が1~100ng/mL、FBSの濃度が10v/v%である。また、ブランクとして、一次抗体を含まない2×PBSを50μL添加して1時間インキュベートした。
【0130】
インキュベート後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0131】
2.二次抗体の抗原抗体反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに二次抗体溶液(二次抗体含有量:410ng/mLの3.3%BSA/PBS溶液)100μLを添加して分散させ、25℃で1時間インキュベートした。その後、遠心(15000rpm、25℃、5分)し、上清を除去した後、100μLのPBSで再分散させ、この遠心と再分散の操作を3回実施することで洗浄した。
【0132】
3.酵素反応
次いで、遠心(15000rpm、25℃、5分)し上清を除去した後、PCRチューブに基質溶液(OPD:2mg/mL、H:0.11v/v%、pH4.0クエン酸リン酸バッファー)100μLを添加し、分散させ、25℃で30分間インキュベートした。その後、3N硫酸100μLを添加し、遠心(15000rpm、25℃、10分)した。次いで、上清を分取し、超純水で5倍希釈した後、100μLを96穴プレートに添加し、次いで、プレートリーダー(BioTek製「Synergy H1」)で490nmの吸光度を測定した。
【0133】
一次抗体の各濃度について測定した吸光度を求めた。実験は、3回の実験を3セット行い、各セットの平均値のさらなる平均の吸光度を求めた。
【0134】
結果は図13および図14に示すとおりである。横軸は、一次抗体の抗原抗体反応における反応系での一次抗体(methoxy-mAb)の濃度を示し、縦軸は、490nmでの吸光度を示す。図14は、低濃度域(0~10ng/mL)での結果を拡大して示すグラフである。
【0135】
図13および図14に示すように、BSAを添加しなかった場合でも、10v/v%のFBSの存在下で、メトキシ末端PEG選択的抗PEG抗体を定量検出できることが分かった。図14に示すように、低濃度域における傾き(slope)は0.0217であり、標準偏差σは0.00219であり、決定係数Rは0.9979であった。検出下限(=3σ/slope)は0.30ng/mLであり、3%(w/v)BSA存在下の場合と同等の値であった。そのため、FBSの存在下では、BSAの添加効果は観察されなかった。但し、上記既報の血清存在下(20倍希釈)でのセンシング系の検出限界10ng/mL程度と比較して、極めて高い感度を示していた。
【0136】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0137】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
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