(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127514
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】樹木の切断支援具、及びこれを備えた伐倒装置
(51)【国際特許分類】
A01G 23/08 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A01G23/08 501G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031349
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】517329524
【氏名又は名称】佐藤機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好美
(57)【要約】
【課題】 樹木伐倒作業に際して、建設機械の操縦席からでもソー部材による切断位置や切断範囲を容易に確認する事のできる樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置を提供すること。
【解決手段】 ソー部材が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる樹木の切断支援具であって、樹木を切断しているソー部材の切断領域を検出する切断領域検出部と、前記切断領域検出部が検出したソー部材の切断領域に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部とからなる、樹木の切断支援具とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソー部材が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる樹木の切断支援具であって、
樹木を切断しているソー部材の切断領域を検出する切断領域検出部と、
前記切断領域検出部が検出したソー部材の切断領域に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部とからなる、樹木の切断支援具。
【請求項2】
前記断領域検出部は、樹木を切断する方向に回転駆動するソー部材の回転位置、回転角度及び回転範囲の少なくとも何れかを検出し、
前記領域通知部は、樹木における切断領域又は未切断領域を表示する光又は画像を表示出力するか、若しくは切断している樹木における切断領域又は未切断領域に対応する音を音声出力する、請求項1に記載の切断支援具。
【請求項3】
前記切断領域検出部は、切断している樹木における太さ方向の一方からの切断領域と、当該一方からの切断領域に対向する他方からの切断領域を検出し、
前記領域検知部は、一方からの切断領域と他方からの切断領域の間に存在するツル部分の領域を作業者に知らせる、請求項1又は2に記載の切断支援具。
【請求項4】
樹木を伐倒するための伐倒用ソー装置であって、
樹木を切断可能なソー部材と、
当該ソー部材における樹木の切断領域又は未切断領域を表示する樹木の切断支援具とからなり、
当該樹木の切断支援具は、請求項1~3の何れか一項に記載の樹木の切断支援具である、伐倒用ソー装置。
【請求項5】
可動アームを備えた作業機械と、当該稼働アームの先端に取り付けられる樹木伐倒用アタッチメントとからなる樹木の伐倒装置であって、
当該樹木伐倒用アタッチメントは、請求項4に記載の伐倒用ソー装置で構成されている、樹木の伐倒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹木伐倒作業に際して、伐倒している樹木の切断した領域又は未切断の領域を表示することのできる樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置に関し、特に樹木伐倒装置に装着して使用する事のできる樹木の切断支援具、及びこれを備えた伐倒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木の伐倒にはチェーンソーが使用されているが、近年では効率的且つ安全に樹木を伐倒する為に、フェラーバンチャやハーベスタ等の高性能林業機械も提供されている。このフェラーバンチャとは、樹木を切り倒し、それを掴んだまま搬出に便利な場所へ集積できる自走式機械であり、ハーベスタとは、伐倒、枝払い、玉切りの各作業と玉切りした材の集積作業を一貫して行う自走式機械であり、何れも油圧ショベルなどの建設機械の稼働アーム部分に装着して使用される。
【0003】
また本願出願には、建設機械に装着して使用する樹木伐採装置として、特許文献1(特開2019-054734号公報)を提案している。この文献では、切断終了時における切断部材の破壊を防止できる伐採用ソー装置として、ハウジングを構成するフレーム部材と、当該フレーム部材に設けられて、樹木を切断可能なソー部材と、前記ソー部材の切断動作に追従するとともに、当該ソー部材の切断方向に向かって進退自在に前記フレーム部材に設けられたスペーサ部材とからなる伐採用ソー装置と、この伐採用ソー装置を用いた樹木伐採用アタッチメント及び樹木伐採装置を提案している。
【0004】
また、従前においては作業者が手持ちして操作するソー部材を、機械で操作するようにした樹木伐採装置も提案されている。例えば特許文献2(特開2010-110292号公報)では、立木を伐採する際の電動チェーンソー等の切断手段と、該切断手段を搭載して立木の上下方向に移動する昇降手段とを備えて成り、枝打ち後の立木に装着して樹木を上方から順次所定長さに切断しつつ下降する樹木伐採装置が提案されている。そして特許文献3(特開2003-88258号公報)では、伐採作業車のグラップル近傍に配設するソー装置であって、ケース体と、該ケース体の内部に回動制御可能に収納したソー本体とからなる樹木伐採用のソー装置において、前記ケース体の一端部を、樹木伐採時に略水平方向に回動制御可能に軸支する一方、前記ソー本体を、ケース体の軸支点と左右反対の位置において回動制御可能に軸支する樹木伐採用のソー装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-054734号公報
【特許文献2】特開2010-110292号公報
【特許文献3】特開2003-88258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、従前においても樹木を伐倒するソー部材(またはソー本体)を回転駆動させて、樹木などを伐倒する装置は提案されている。特に特許文献1の伐採用ソー装置や特許文献3の樹木伐採用のソー装置は、ソー部材(またはソー本体)による樹木の伐倒動作を、作業者が建設機械の操縦席から行うものとなっている。しかしながら、建設機械の操縦席からは、樹木を切断しているソー部材の位置や切断範囲を確認するのが困難であり、どの程度樹木を切断しているのかを作業者が知るのは困難であった。特に樹木の伐倒に際しては、切断している範囲によって樹木が倒れることから、作業の安全性を確保する為には、作業者が切断範囲を確認しながら作業を進めるか、或いは補助者に切断範囲を確認してもらいながら、伐倒作業を行う必要があった。
【0007】
そこで本発明では、樹木伐倒作業に際して、建設機械の操縦席からでもソー部材による切断位置や切断範囲を容易に確認する事のできる樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置を提供することを課題の1つとする。
【0008】
また、樹木の伐倒に際して、安全に作業を行う上では、樹木を切り倒す方向の見極めと、そのための手順が重要となる。一般的に樹木の伐倒に際しては、切り倒す方向に作る切り込みである受け口を形成し、そして受け口の反対側から追い口を形成し、受け口と追い口の間に切らない部分であるツル部分を形成する。前記したソー部材(またはソー本体)による樹木の伐倒に際しても、切り倒す方向を制御することが望ましいことから、樹木の伐倒に際しては受け口と追い口を形成できることが望ましい。特に伐倒する樹木が大きく、グラッブルでの保持が難しい場合には、当該伐倒方向の調整が重要となる。
【0009】
そこで本発明では樹木の伐倒に際して、その伐倒方向を制御できるように樹木を切断する事のできる伐倒装置用の切断表示具、及びこれを備えた伐倒装置を提供することも別の課題とする。
【0010】
更に伐倒する樹木の大きさは様々であることから、ソー部材(またはソー本体)による受け口、追い口およびツル部分の形成も伐倒する樹木の大きさに応じて調整する必要がある。そこで本発明は、伐倒する樹木の大きさを客観的に把握することができる樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では伐倒などにおける樹木の切断に際して、ソー部材が切断した領域または未切断の領域を作業者に知らせることのできる樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置を提供する。
【0012】
即ち本発明では、ソー部材が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる樹木の切断支援具であって、樹木を切断しているソー部材の切断領域を検出する切断領域検出部と、前記切断領域検出部が検出したソー部材の切断領域に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部とからなる、樹木の切断支援具を提供する。
【0013】
かかる本発明の樹木の切断支援具は、特に立木を伐倒する際に有効に機能することから、特にソー部材が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる樹木の伐倒支援具として具体化することができる。
【0014】
前記本発明の樹木の切断支援具(特に望ましくは「伐倒支援具」。以下同じ)において、前記断領域検出部は、樹木を切断する方向に回転駆動するソー部材の回転位置、回転角度及び回転範囲の少なくとも何れかを検出するものとして形成することができる。また前記領域通知部は、樹木における切断領域又は未切断領域を表示する光又は画像を表示出力するか、若しくは切断している樹木における切断領域又は未切断領域に対応する音を音声出力するように構成することができる。
【0015】
そして前記切断領域検出部は、切断している樹木における太さ方向の一方からの切断領域と、当該一方からの切断領域に対向する他方からの切断領域を検出するように構成することができる。一方の切断領域と他方の切断領域とは正対する位置関係の他、相互に交差する位置関係であって良い。また前記領域検知部は、一方からの切断領域と他方からの切断領域の間に存在するツル部分の領域を作業者に知らせるものとして形成することができる。樹木、特に立木の伐倒に際してはツル部分の存在が重要となる為である。
【0016】
更に本発明に係る樹木の切断支援具において、前記領域通知部は、ソー部材が切断している樹木の太さを作業者に知らせるように構成することも望ましい。その上で、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせることにより、伐倒時の安全性を高めることができる。よって当該領域通知部は、ソー部材が切断している樹木の太さと、ソー部材が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を、音、光、及び/又は画像によって作業者に知らせるように構成することが望ましい。当該切断している樹木の太さは、カメラなどで撮像した画像の処理や、伐倒する樹木を把持するグラッブル装置等の開度によって認識することができる。
【0017】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するために、前記本発明に係る樹木の切断支援具を用いて形成した伐倒用ソー装置を提供する。即ち、樹木を伐倒するための伐倒用ソー装置であって、樹木を切断可能なソー部材と、当該ソー部材における樹木の切断領域又は未切断領域を表示する樹木の切断支援具とからなり、当該樹木の切断支援具は、前記本発明に係る樹木の切断支援具である、伐倒用ソー装置を提供する。
【0018】
また本発明では、当該伐倒用ソー装置を用いた樹木伐倒用アタッチメントを提供する。当該樹木伐倒用アタッチメントは、作業機械の可動アームの先端に設けられ、伐倒する樹木を把持するグラッブル装置と、樹木を伐倒するための伐倒用ソー装置とからなる樹木の樹木伐倒用アタッチメントとからなり、当該伐倒用ソー装置は、樹木を切断するソー部材が切断している位置および/又は切断した範囲を作業者に知らせる領域通知部を備えて構成することができる。
【0019】
そして本発明では、可動アームを備えた作業機械と、当該稼働アームの先端に取り付けられる樹木伐倒用アタッチメントとからなる樹木の樹木伐倒装置であって、当該樹木伐倒用アタッチメントは、本発明にかかる伐倒用ソー装置で構成されている樹木の樹木伐倒装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹木の切断支援具と、これを備えた伐倒装置は、樹木を切断しているソー部材の切断領域を検出する切断領域検出部と、前記切断領域検出部が検出したソー部材の切断領域に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部とを備えている。この為、実際に伐倒作業を行っている最中に、伐倒している樹木における切断位置や切断範囲を正確に知ることができ、樹木伐倒作業において、建設機械の操縦席からでもソー部材による切断位置や切断範囲を容易に確認することができる樹木の切断支援具、及びこれを備えた伐倒装置を提供することができる。その結果、伐倒している樹木を切り倒す方向をコントロールすることができ、作業の安全性を高めることができる。
【0021】
特に、当該樹木の切断支援具を、伐倒する樹木を把持するグラッブル装置と共に用いた場合には、当該グラッブル装置における樹木の把持に際して、当該樹木の太さを測定することもできる。その結果、伐倒する樹木における最適なツル部分の残し方を把握することができ、正確に樹木を伐倒することができる樹木の切断支援具、及びこれを備えた伐倒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態にかかる樹木の伐倒装置を示す側面図
【
図2】本実施の形態に係る伐倒用ソー装置を示す底面図
【
図3】第1の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置を示す底面図
【
図4】第2の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置を示す底面図
【
図5】第3の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る樹木の切断支援具、伐倒用ソー装置20及び樹木の伐倒装置50を具体的に説明する。
図1は本実施の形態にかかる樹木の伐倒装置50を示す側面図であり、
図2は本実施の形態に係る伐倒用ソー装置20を示す底面図であり、
図3は第1の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置20を示す底面図である。特に本実施の形態では、立木を伐倒する為の伐倒用ソー装置20及び樹木の伐倒装置50として具体化しているが、伐倒した樹木を所定の長さに裁断する伐倒用ソー装置20及び樹木の伐倒装置50として実施することも可能である。
【0024】
図1に示す様に、本実施の形態に係る樹木の伐倒装置50は、可動アームを備えた作業機械40と、当該稼働アームの先端に取り付けられる樹木伐倒用アタッチメント30とで構成されている。本実施の形態に係る樹木伐倒装置50では、作業機械としてバックホウを使用し、その稼働アームの先端側に、後述する樹木伐倒用アタッチメント30を取り付けている。かかる樹木伐倒用アタッチメント30は、樹木を把持するグラッブル装置10に、樹木を切断する為のソー部材21を有する伐倒用ソー装置20を設けて構成している。
【0025】
また当該樹木伐倒装置50は、グラッブル装置10を備えた作業機械に対して、樹木を切断する為のソー装置を取り付けることによって構成することもでき、更にはバックホウなどの作業機械にグラッブル装置10とソー装置をそれぞれ設けることによって形成することもできる。なお作業機械は必ずしもバックホウに限定されるものではなく、グラッブル装置10など樹木を把持できる機構を備えて作業機であれば、使用することができる。
【0026】
図2は前記樹木伐倒用アタッチメント30を構成する伐倒用ソー装置20を示す底面図である。かかる伐倒用ソー装置20は、主として樹木を伐採するために使用されるものであり、樹木を切断可能なソー部材21と、当該ソー部材21における樹木の切断領域又は未切断領域を表示する樹木の切断支援具とで構成される。特に
図2には、ソー部材21の回転量又は回転範囲を検知する為のエンコーダ24を設けており、当該エンコーダ24によってソー部材21の回転位置又は回転範囲を検知することにより、樹木の切断領域を検知することができる。
【0027】
かかる伐倒用ソー装置20は、伐倒する樹木を掴むことのできるグラッブル装置10と、このグラッブル装置10と一体状に取り付けられた伐倒用ソー装置20とからなる。そしてこの伐倒用ソー装置20は、ハウジングを構成するフレーム部材25と、当該フレーム部材25に設けられて、回転することで樹木を切断可能なソー部材21と、当該ソー部材21の回転範囲を検知する切断領域検出部24とを備えている。
【0028】
グラッブル装置10は、開閉自在な2つの把持部11を伴って構成されており、当該把持部11は作業機械から供給される油圧によって動作する油圧シリンダーによって開閉することができる。かかる把持部11の開閉動作により、伐倒する樹木を把持することができ、伐倒した樹木が意図しない方向に倒伏するのを阻止したり、あるいは伐倒した樹木を持ち上げたり、伐倒した樹木を任意の方向に回転させたり、更には伐倒した樹木を移動させるために使用することができる。
【0029】
伐倒用ソー装置20は、本実施の形態では前記グラッブル装置10に取り付けられている。伐倒する樹木をグラッブル装置10で把持し、その把持した部分の近傍、望ましくは下側を切断するため、当該伐倒用ソー装置20は、グラッブル装置10の近傍に設けている。
【0030】
かかる伐倒用ソー装置20は、本実施の形態では前記グラッブル装置10に設けたフレーム部材25に、樹木を切断するためのソー部材21を収容させている。特に、当該ソー部材21としてチェーンソーを用いており、当該チェーンソーが一端側を軸として回転(又は搖動。以下同じ)するように構成されており、当該チェーンソーの回転動作により樹木を切断して伐倒することができる。かかるソー部材21の回動動作は、本実施の形態では前記フレーム部材25に設けた油圧シリンダー(特に「ソー部材用油圧シリンダー22」とする)によって行うことができる。ただし、当該油圧シリンダー22に変えてモータなどの電力装置によってソー部材21を動作させることもできる。
【0031】
本実施の形態では、ソー部材21用油圧シリンダーが縮む力によって、ソー部材21の回転中心部に設けられている回転駆動部から突出している舌片23を引き寄せ、これにより当該ソー部材21をフレーム部材25から押し出す向きに回転させている。そしてソー部材21をフレーム部材25に収容する際には、前記ソー部材用油圧シリンダー22を伸ばす向きの力により前記回転駆動部の舌片23を押し出し、これによりソー部材21をフレーム部材25に収容する向きに回転移動させることができる。特にシリンダー22の動作をこのように設定しているのは、伐倒した後のソー部材21を戻す時に大きな力を発揮できるようにするためである。なお、当該ソー部材21は必ずしもチェーンソーに限定されるものではなく、伐倒する樹木の太さによってはレシプロソーや丸鋸切り、或いは斧などを使用することもできる。
【0032】
図3は第1の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置20を示す底面図である。この図に示す伐倒用ソー装置20は、前記
図2に示した伐倒用ソー装置20に、樹木を切断しているソー部材21の切断領域を検出する切断領域検出部24と、前記切断領域検出部24が検出したソー部材21の切断領域に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部26とを設けている。
【0033】
特に本実施の形態において、当該切断領域検出部24は、ソー部材21の回転中心部に設けられている回転駆動部に対向配置し、当該回転駆動部の回転量を計測するエンコーダ24によって構成している。特に本実施の形態において、エンコーダ24は磁気によって回転駆動部の回転量を計測する他、当該回転駆動部に接触するローラーや歯車などによって、ソー部材21の回転量を検出するように構成することができる。また領域通知部26として、当該エンコーダ24が検知した回転量に応じて表示が変化するインジケータ26(領域通知部26)を設けている。特にこの実施の形態において、当該インジケータ26はLED27の発光、消灯または変色によって、切断領域と未切断領域とを表示するように構成している。但し、当該領域通知部26はLED27の他にも液晶表示によって切断領域と未切断領域とを表示することもでき、更にはアナログメータによって、切断領域と未切断領域とを表示することもできる。かかる領域通知部26は、作業機の操縦席に搭乗する作業者の視界に存在する場所に設けることができ、操縦席の他、グラッブル装置10に設け、樹木の切断作業に際して視線の移動を極力少なくして目視できるように設けることができる。
【0034】
かかる切断支援具を設けた伐倒用ソー装置20では、ソー部材21が未だ樹木を切断していない状態では、
図3(A)に示す様に、インジケータ26のLED27は全て点灯した状態となっている。特に、樹木の伐倒に際しては、その切り倒し方向に作る切り込みである受け口を形成することから、グラッブル装置10による把持に際して、ソー部材21はハウジングから突出した状態となっている。その後、受け口T1を形成する為に所定の範囲まで樹木を切断する(
図3(B)参照)。この時、当該ソー部材21の回転量(または回転角)に応じて、インジケータ26のLED27が消灯していく。そして一旦グラッブル装置10による樹木の把持を解除して、ソー部材21をハウジング(フレーム部材25)内に戻し、前記受け口よりも高い位置にソー部材21が存在する様に、グラッブル装置10によって樹木を把持する。なお、伐倒する樹木の太さや高さ次第ではあるが、ソー部材21は受け口と同じ高い位置に存在させて把持しても良い。
【0035】
そしてソー部材21をハウジング(フレーム部材25)内に収容し、樹木を把持し直した後においては、ハウジング内から押し出す向きにソー部材21を回転させ、追い口T2を形成する為に樹木を切断する(
図3(C))。この時、インジケータ26には、切断量又は切断範囲に対応するLED27が消灯していくことから、前記受け口の切断範囲に対応したLED27の消灯部分と、追い口の切断範囲に対応したLED27の消灯部分として、樹木の切断範囲を作業者に知らせることができる。そして伐倒する樹木において未切断の領域(即ち切断していない領域)であるツル部分T3はLED27の点灯によって、その残存幅を表示できることから、意図しない樹木の倒伏を阻止しながら安全に伐倒作業を行うことができる。特に、この伐倒用ソー装置20では、残ったツル部分をLED27の点灯によって直感的に表示できることから、作業者はカメラ画像で観察する場合に比べても正確かつ確実に把握することができる。なお切断部をカメラで撮影して確認しようとしても、その撮影方向次第では切断領域を把握するのが困難であることから、本実施の形態に示す様にソー部分の切断領域に関する情報をエンコーダ24などの切断領域検出部24で取得することにより、正確にツル部分の幅を確認することができる。
【0036】
そして最適なツル部分を残した後においては、樹木を把持しているグラッブル装置10によって、任意の方向に当該樹木を伐倒することもできる。特に本実施の形態に係る伐倒用ソー装置20は、グラッブル装置10によって樹木を把持しており、伐採した樹木を任意の方向に回動させることができることから、前記ツル部分を残すことにより、幹が太い樹木や幹が長い樹木であっても安全に伐倒することができる。
【0037】
この実施の形態に係る伐倒用ソー装置20は、樹木の伐倒に際して受け口と追い口を形成し、その切断領域又は未切断領域を作業者に知らせることができる。この為、伐倒時におけるツル部の残存量を確認しながら伐倒作業を行うことができる。かかるツル部の残存量は、伐倒する樹木の太さや長さによって最適な範囲が異なる事から、当該領域通知部26には、樹木の太さや長さに応じた最適なツル部の残存量、即ち点灯または消灯させるLED27の数量を示しておくことも望ましい。
【0038】
図4は第2の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置20を示す底面図である。この実施の形態に係る伐倒用ソー装置20は、特に伐倒する樹木の太さを検知して、これを表示できるように構成している。即ち、この実施の形態に係る伐倒用ソー装置20では、グラッブル装置10で樹木を把持した際における開閉自在な2つの把持部11の開き具合を検知し、これをインジケータ26(領域通知部)に表示するように構成している。例えば
図4(A)に示す様に、幹が太い樹木を把持した場合には、前記把持部11の開き具合が大きいことから、これに応じて全てのLED27が点灯しており、それよりも細い幹の樹木を把持した場合には、
図4(B)に示す様に、当該幹の太さに対応した範囲のLED27を点灯させるように構成している。かかる樹木の太さの検知は、本実施の形態では把持部11の開き具合によって検知しているが、これは把持部11の開閉動作を行う油圧シリンダーの伸縮度合いによって検知することもできる。その他にも、当該幹部を撮影した画像を解析することによっても樹木の太さを検知することができる。
【0039】
特に本実施の形態におけるインジケータ26(領域通知部)は、作業者に対して樹木の切断領域又は未切断領域を知らせる為の領域通知部26と共通にしており、伐倒する樹木の幹の太さを検知して、これを表示させた後、その範囲内において切断領域又は未切断領域を表示するように構成している。かかる切断領域又は未切断領域の表示は、インジケータ26(領域通知部26)がLED27の点灯によって表示する場合には、当該LED27の色を変えることによって行うことができる。その他にも、樹木の幹の太さの表示と、切断領域又は未切断領域を表示とを上下に分けて表示することもできる。特に樹木の幹の太さの表示と切断領域又は未切断領域の表示とを行う事により、伐倒する樹木の太さに応じたツル部分の残し方を確認することができ、その結果、伐倒作業の安全性を高めることができる。
【0040】
そして
図5は第3の実施の形態に係る切断支援具を設けた伐倒用ソー装置20を示す底面図である。この実施の形態に係る伐倒用ソー装置20は、特にエンコーダ24に代えて、ソー部材21の回動を制御する油圧シリンダー(ソー部材用油圧シリンダー22)の伸縮量によって、樹木を切断しているソー部材21の切断領域を検出するように構成している。即ち、ソー部材21用油圧シリンダーの伸縮計を切断領域検出部24としている。なお、その他にもソー部材21の回動に伴って駆動又は変位する部分によって、樹木を切断しているソー部材21の切断領域を検出する切断領域検出部24とすることもできる。
【0041】
また、この実施の形態に係る伐倒用ソー装置20において、樹木における切断領域又は未切断領域を作業者に知らせる領域通知部26は、画像によって切断領域又は未切断領域を表示するものとなっている。具体的には、画像内に表示した円において、切断領域を異なる色で表示することにより、切断領域および未切断領域を作業者に知らせることができる。かかる領域通知部26はモニターなどの映像出力装置28によって形成することができ、前記切断領域検出部24から入力されるソー部材21の切断領域の情報に基づいて、樹木における切断領域又は未切断領域を表示することができる。また前述の通り、伐倒する樹木の太さを検出した場合には、その大きさ(値)に応じてモニター28に出力する円の大きさを変えることができる。
【0042】
そして本実施の形態に係る伐倒用ソー装置20では、作業者に視覚を通じて樹木の切断領域又は未切断領域を知らせる前記モニターからなる領域通知部26の他に、更に音によって樹木の切断領域又は未切断領域を知らせるスピーカーやブザーなどの発音装置29を設けている。かかる発音装置29は切断領域又は未切断領域に応じて音量や音質を異ならせることにより、作業者に切断領域又は未切断領域を知らせることができる。具体的には受け口T1として切断した位置又は範囲を記憶しておき、追い口T2の切断に際して当該記憶した位置に近づくにつれて音量を大きくするか、高音または低音に変化させるか、或いはブザー音の出力間隔を短くする事により、切断領域又は未切断領域の量、即ちツル部T3の幅を知らせるように構成することができる。かかる発音装置29を用いた領域通知部26は、前記モニターやインジケータ26などの視覚を通じた領域通知部26と一緒に、或いはこれらに代えて設置する事ができる。
【0043】
従って、本実施の形態における領域通知部26は、ソー部材21が切断している樹木の太さや、ソー部材21が切断している樹木における切断領域又は未切断領域を、音、光、及び/又は画像によって作業者に知らせるように構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る樹木の切断支援具は、立木の伐倒に際してツル部分を残して切断する為に使用することができ、その他にも切り倒した樹木の切断に際して、所定の領域だけを切断する場合にも利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 グラッブル装置
11 把持部
20 伐倒用ソー装置
21 ソー部材
22 ソー部材用油圧シリンダー
23 舌片
24 エンコーダ(切断領域検出部)
25 フレーム部材(ハウジング)
26 領域通知部(インジケータ)
28 映像出力装置(モニター)
29 発音装置
30 樹木伐倒用アタッチメント
40 作業機械
50 樹木伐倒装置