IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケー・エフ・シーの特許一覧

<>
  • 特開-注入材施工管理システム 図1
  • 特開-注入材施工管理システム 図2
  • 特開-注入材施工管理システム 図3
  • 特開-注入材施工管理システム 図4
  • 特開-注入材施工管理システム 図5
  • 特開-注入材施工管理システム 図6
  • 特開-注入材施工管理システム 図7
  • 特開-注入材施工管理システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127515
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】注入材施工管理システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
E21D9/04 Z
E21D9/04 A
E21D9/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031352
(22)【出願日】2022-03-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
(72)【発明者】
【氏名】真壁 雄貴
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054FA02
(57)【要約】
【課題】操作者の注入孔番号の入力違いに拘わらず注入材の注入作業を継続できる。
【解決手段】サーバ装置1が、地山注入孔の注入孔番号と注入材注入要求の入力に応じて、この注入孔番号の運転状態記録の有無を確認し、運転状態記録が有る場合に、仮孔番号を付与し、仮孔番号に対応させて注入材注入開始指令を生成し、注入材注入開始指令と仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令をポンプユニット5に送信し、ポンプユニット5の運転状態の記録を所定周期で読み込み、注入材の積算注入量の目標注入量への到達に応じて注入材注入終了指令と運転状態記録終了指令をポンプユニットに送信し、ポンプユニット5に格納されている仮孔番号に対応する運転状態記録を取得して格納し、仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、仮孔番号の運転状態記録の仮孔番号を正規の注入孔番号の運転状態記録に修正して格納する注入材施工管理システム。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置と、前記サーバ装置と通信接続されるポンプユニットとを備え、
前記サーバ装置が、
地山の注入孔の注入孔番号と前記注入孔番号に対する注入材注入要求の入力に応じて、前記注入孔番号の運転状態記録の有無を格納している運転状態記録と照合して確認し、前記注入孔番号の運転状態記録が有る場合に、前記注入孔番号に代えて仮孔番号を付与し、前記仮孔番号に対応させて注入材注入開始指令を生成し、前記注入材注入開始指令と前記ポンプユニットのレジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令を前記ポンプユニットに送信し、
前記ポンプユニットの前記レジストリ格納部の運転状態の記録を所定周期で読み込み、注入材の積算注入量の目標注入量への到達に応じて、前記注入材注入終了指令と前記レジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令を前記ポンプユニットに送信し、前記ポンプユニットの前記レジストリ格納部に格納されている前記仮孔番号に対応する運転状態記録を取得して格納し、
前記仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、格納されている前記仮孔番号の運転状態記録の前記仮孔番号を正規の前記注入孔番号の運転状態記録に修正して格納することを特徴とする注入材施工管理システム。
【請求項2】
前記ポンプユニットが、前記注入材注入開始指令と前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令の受信に応じて、前記注入ポンプの運転を制御して注入管が挿入されている注入孔に注入材を注入すると共に、前記注入ポンプの運転制御と並行して運転状態監視センサの検出値とユニットタイマーの計測時刻に基づき、経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態を前記レジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域に前記仮孔番号及び注入開始時刻と併せて記録することを特徴とする請求項1記載の注入材施工管理システム。
【請求項3】
前記サーバ装置と通信接続される操作端末を備え、
前記注入孔番号と前記注入孔番号に対する注入材注入要求とが前記操作端末から前記サーバ装置に送信されて前記サーバ装置に入力されることを特徴とする請求項1又は2記載の注入材施工管理システム。
【請求項4】
前記サーバ装置が、前記操作端末から送信された注入孔番号に対応する運転状態記録を操作端末に送信して提示し、
前記サーバ装置が、前記操作端末からのリセット要求の受信に応じて、提示している運転状態記録が仮孔番号に対応するものである場合に、注入孔番号を仮孔番号に変更して前記運転状態記録を送信して提示することを特徴とする請求項3記載の注入材施工管理システム。
【請求項5】
前記サーバ装置が、前記ポンプユニットのポンプ運転条件を変更可能に格納し、格納している前記ポンプ運転条件を前記注入材注入開始指令と前記運転状態記録指令と併せて前記ポンプユニットに送信し、
前記ポンプユニットが、受信した前記ポンプ運転条件で前記注入ポンプの運転を制御することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の注入材施工管理システム。
【請求項6】
前記サーバ装置が、通信制御サーバと前記通信制御サーバと通信接続される管理サーバとから構成され、
前記管理サーバにおける前記仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、前記仮孔番号の運転状態記録の前記仮孔番号が正規の前記注入孔番号に修正されて前記通信制御サーバの記憶部に格納され、
修正された正規の前記注入孔番号の運転状態記録が前記管理サーバの記憶部に格納されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の注入材施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺先受け工法(AGF工法)や鏡補強工のようなトンネル補助工法や、斜面等の地盤の補強において、地山に注入する注入材の施工を管理する注入材施工管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル補助工法では、長尺先受け工法(AGF工法)や、鏡補強工等のための鋼管を切羽前方地山に向かって打設し、注入孔を形成するように打設した鋼管の内部から周辺地山に注入材を注入することが行われている。この注入材の注入時には、施工断面(STA)毎に複数の注入孔のそれぞれに注入孔番号をつけ、それぞれの注入孔に対して十分な注入材が注入されたかどうかが施工管理される。
【0003】
このような注入材の施工管理に関し、特許文献1には、注入材の注入作業時に、孔番号を入力間違えしたときに、孔指定情報によって指定された注入孔が、注入開始済のものでないか否か又は注入順番にしたがったものであるか否かを判定し、否と判定されたときにアラーム報知又は運転が停止し注入できない状態とすることにより、誤った孔番号の注入孔に注入材が注入されることを防止するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6997139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、誤った孔番号の注入孔への注入材の注入を防止することはできるが、システムの操作者が、アラーム報知又は運転停止の原因を究明し、正しい注入孔番号を入力し直すまで、全ての注入材の注入作業が停止してしまうという問題がある。特に、大きな施工断面で複数の注入ポンプを動かして注入材の注入を行っている場合には、注入材の注入作業の停止は大きなタイムロスとなり、2液混合発泡式の注入材を使用している場合には混合後数十秒で発泡開始し流動性が急低下する為運転停止の原因究明と同時に管路の目詰まり防止措置も必要とする為、施工効率が大幅に低下となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、注入材を注入する操作者の注入孔番号の入力違いに拘わらず、注入材の注入作業を停止することなく継続することができ、施工効率の低下を防止しつつ、注入材の注入状態の施工管理を確実に行うことができる注入材施工管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注入材施工管理システムは、サーバ装置と、前記サーバ装置と通信接続されるポンプユニットとを備え、前記サーバ装置が、地山の注入孔の注入孔番号と前記注入孔番号に対する注入材注入要求の入力に応じて、前記注入孔番号の運転状態記録の有無を格納している運転状態記録と照合して確認し、前記注入孔番号の運転状態記録が有る場合に、前記注入孔番号に代えて仮孔番号を付与し、前記仮孔番号に対応させて注入材注入開始指令を生成し、前記注入材注入開始指令と前記ポンプユニットのレジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令を前記ポンプユニットに送信し、前記ポンプユニットの前記レジストリ格納部の運転状態の記録を所定周期で読み込み、注入材の積算注入量の目標注入量への到達に応じて、前記注入材注入終了指令と前記レジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令を前記ポンプユニットに送信し、前記ポンプユニットの前記レジストリ格納部に格納されている前記仮孔番号に対応する運転状態記録を取得して格納し、前記仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、格納されている前記仮孔番号の運転状態記録の前記仮孔番号を正規の前記注入孔番号の運転状態記録に修正して格納することを特徴とする。
これによれば、サーバ装置が注入材を注入する操作者の注入孔番号が正規の注入孔番号と相違する場合に、仮孔番号を付与し、仮孔番号の注入孔への注入材の注入作業として注入材の注入作業を実行し、後で仮孔番号を正規の注入孔の注入孔番号に修正して施工管理することができる。従って、注入材を注入する操作者の注入孔番号の入力違いに拘わらず、注入材の注入作業を停止することなく継続することができ、施工効率の低下を防止しつつ、注入材の注入状態の施工管理を確実に行うことができる。
【0008】
本発明の注入材施工管理システムは、前記ポンプユニットが、前記注入材注入開始指令と前記仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令の受信に応じて、前記注入ポンプの運転を制御して注入管が挿入されている注入孔に注入材を注入すると共に、前記注入ポンプの運転制御と並行して運転状態監視センサの検出値とユニットタイマーの計測時刻に基づき、経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態を前記レジストリ格納部の前記仮孔番号に対応する記録領域に前記仮孔番号及び注入開始時刻と併せて記録することを特徴とする。
これによれば、仮孔番号に対応する注入孔への注入材の注入状態、注入ポンプの運転状態をリアルタイムで正確に認識することができる。
【0009】
本発明の注入材施工管理システムは、前記サーバ装置と通信接続される操作端末を備え、前記注入孔番号と前記注入孔番号に対する注入材注入要求とが前記操作端末から前記サーバ装置に送信されて前記サーバ装置に入力されることを特徴とする。
これによれば、注入孔番号と注入材注入要求を操作端末からサーバ装置に送信してサーバ装置に入力することにより、注入材を注入する操作者の利便性を高めることができる。
【0010】
本発明の注入材施工管理システムは、前記サーバ装置が、前記操作端末から送信された注入孔番号に対応する運転状態記録を操作端末に送信して提示し、前記サーバ装置が、前記操作端末からのリセット要求の受信に応じて、提示している運転状態記録が仮孔番号に対応するものである場合に、注入孔番号を仮孔番号に変更して前記運転状態記録を送信して提示することを特徴とする。
これによれば、操作端末におけるリセット操作によって、注入材を注入する操作者が、仮孔番号が付与されて仮孔番号に対応してサーバ装置に格納されている運転状態記録を容易に確認することができる。
【0011】
本発明の注入材施工管理システムは、前記サーバ装置が、前記ポンプユニットのポンプ運転条件を変更可能に格納し、格納している前記ポンプ運転条件を前記注入材注入開始指令と前記運転状態記録指令と併せて前記ポンプユニットに送信し、前記ポンプユニットが、受信した前記ポンプ運転条件で前記注入ポンプの運転を制御することを特徴とする。
これによれば、例えば注入ポンプや現場条件等に応じたポンプ運転条件を変更可能にサーバ装置に格納することにより、最適条件が随時変化する最適なポンプ運転条件を柔軟に設定することができ、柔軟に変更設定した最適なポンプ運転条件で地山の注入孔に注入材を注入することができる。
【0012】
本発明の注入材施工管理システムは、前記サーバ装置が、通信制御サーバと前記通信制御サーバと通信接続される管理サーバとから構成され、前記管理サーバにおける前記仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、前記仮孔番号の運転状態記録の前記仮孔番号が正規の前記注入孔番号に修正されて前記通信制御サーバの記憶部に格納され、修正された正規の前記注入孔番号の運転状態記録が前記管理サーバの記憶部に格納されることを特徴とする。
これによれば、管理サーバを通信制御サーバと離間配置し、管理サーバを管理事務所等に設置して必要な操作を行うことが可能となり、システム使用の利便性を高めることができる。また、注入材の注入の運転状態記録を通信制御サーバの記憶部と管理サーバの記憶部の双方に格納することにより、データ保存の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の注入材施工管理システムによれば、注入材を注入する操作者の注入孔番号の入力違いに拘わらず、注入材の注入作業を停止することなく継続することができ、施工効率の低下を防止しつつ、注入材の注入状態の施工管理を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による実施形態の注入材施工管理システムの全体構成を示すブロック図。
図2】実施形態の注入材施工管理システムにおける操作端末のブロック図。
図3】実施形態の注入材施工管理システムにおけるポンプユニットのブロック図。
図4】実施形態の注入材施工管理システムによる施工管理処理を示すフローチャート。
図5】実施形態の注入材施工管理システムを用いて注入材の注入が行われるトンネルの例を示す説明図。
図6】通信制御サーバの注入孔運転情報格納部に格納される番号修正前の運転状態記録の例を示す図。
図7】通信制御サーバの仮孔運転情報格納部に格納される運転状態記録の例を示す図。
図8】通信制御サーバの注入孔運転情報格納部に格納される番号修正後の運転状態記録の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態の注入材施工管理システム〕
本発明による実施形態の注入材施工管理システムは、図1図3に示すように、Webサーバのような通信制御サーバ2と通信制御サーバ2と通信回線CLを介して通信接続されるPCサーバのような管理サーバ3とから構成されるサーバ装置1と、サーバ装置1と通信回線CLを介して通信接続する操作タブレット、スマートフォン、或いは携帯型パーソナルコンピュータ等の操作端末4と、サーバ装置1と通信回線CLを介して通信接続すると共に地山の注入孔に注入材を注入するポンプユニット5とを備える。
【0016】
サーバ装置1を構成する通信制御サーバ2は、MPU、CPU等の制御部21と、HDD、SSD、ROM、RAM等で構成される記憶部22と、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力部23と、ディスプレイ、プリンター等の出力部24と、内蔵タイマー25と、通信制御サーバ2を無線或いは有線の通信回線に接続する通信部26を備える。
【0017】
通信制御サーバ2の記憶部22には、制御部21と協働して通信制御サーバ2の主制御を担う主制御プログラムを格納する制御プログラム格納部221と、通信制御サーバ2の制御部21に重複判定処理を実行させる重複判定プログラムを格納する重複判定プログラム格納部222と、ポンプユニット5の主制御を担うユニット主制御プログラムを格納するユニット主制御プログラム格納部223と、ポンプユニット5のポンプ運転条件を変更可能に格納すると共に注入材の目標注入量を変更可能に格納するポンプ運転条件格納部224が設けられている。
【0018】
更に、記憶部22には、注入孔番号を含む注入孔運転情報を格納する注入孔運転情報格納部225と、仮孔番号を含む仮孔運転情報を格納する仮孔運転情報格納部226が設けられている。注入孔運転情報格納部225に格納されている注入孔運転情報は、注入孔への注入材がまだ行われていない注入孔の注入孔運転情報の場合は基本的に注入孔番号であり、注入孔への注入材が既に行われた注入孔の注入孔運転情報の場合は注入孔番号に加え、注入開始時刻、注入終了時刻、積算注入量、経時的な注入材の注入の流量、注入材注入の注入初期圧や注入最終圧、注入材の注入状態の良否、注入材注入の運転状態記録の有無等の所定情報とされる。
【0019】
仮孔運転情報格納部225に格納されている仮孔運転情報は、使用されていない仮孔番号の仮孔運転情報の場合は基本的に仮孔番号であり、仮孔番号に対応して注入孔への注入材が行われた仮孔運転情報の場合は仮孔番号に加え、注入開始時刻、注入終了時刻、積算注入量、経時的な注入材の注入の流量、注入材注入の注入初期圧や注入最終圧、注入材の注入状態の良否、注入材注入の運転状態記録の有無等の所定情報とされる。
【0020】
サーバ装置1を構成する管理サーバ3は、MPU、CPU等の制御部31と、HDD、SSD、ROM、RAM等で構成される記憶部32と、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力部33と、ディスプレイ、プリンター等の出力部34と、内蔵タイマー35と、管理サーバ3を無線或いは有線の通信回線に接続する通信部36を備える。
【0021】
管理サーバ3の記憶部32には、制御部31と協働して管理サーバ3の主制御を担う主制御プログラムを格納する制御プログラム格納部321と、注入孔番号に対応する注入孔運転情報を格納する注入孔運転情報格納部322が設けられている。注入孔運転情報格納部322には、注入孔番号に対応して、注入開始時刻、注入終了時刻、積算注入量、経時的な注入材の注入の流量、注入材注入の注入初期圧や注入最終圧、注入材の注入状態の良否等の所定情報が注入孔運転情報として格納される。
【0022】
操作端末4は、CPU等の制御部41と、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成される記憶部42と、タッチパネル、マウス、キーボード等の入力部43と、入力部33を兼ねるタッチパネル、ディスプレイ等の出力部44と、操作端末4を無線或いは有線の通信回線に接続する通信部45を備える。記憶部42には、制御部41と協働して操作端末4の制御を担う制御プログラムを格納する制御プログラム格納部421が設けられている。
【0023】
ポンプユニット5は、CPU等のユニット制御部51と、HDD、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成されるユニット記憶部52と、注入材を注入する注入ポンプ53と、注入ポンプ53の起動や停止のスイッチ等のポンプ操作部54と、注入ポンプ53に取り付けられて検出値がユニット制御部51に取り込まれる流量計や圧力計等の運転状態監視センサ55と、内蔵タイマー56と、ポンプユニット5或いはその制御部51を無線或いは有線の通信回線に接続する通信部57を備える。
【0024】
ポンプユニット5のユニット記憶部52には、ポンプユニット5の補助制御を担うユニット補助制御プログラムを格納するユニット補助制御プログラム格納部521と、注入孔番号や仮孔番号に対応する注入孔への注入材注入の運転状態記録を格納するレジストリ格納部522が設けられている。
【0025】
ポンプユニット5のユニット制御部51は、通信制御サーバ2から送信されるユニット主制御プログラムによる主制御指令とユニット補助制御プログラム格納部521に格納されているユニット制御プログラムとから構成される制御指令と協働し、通信制御サーバ2から送信されるポンプ運転条件に基づき、注入ポンプ53の運転を制御すると共に、注入孔番号や仮孔番号に対応する注入孔への注入材注入のポンプ運転状態の記録をレジストリ格納部522に格納する。
【0026】
尚、ユニット補助制御プログラムは、通信制御サーバ2からポンプユニット5に送信される主制御指令の実行を補助するプログラムであり、例えば通信制御サーバ2から主制御指令と併せて送信される注入材注入の流量や注入圧のポンプ運転条件に応じて、この運転条件で注入ポンプ53が運転するようにユニット制御部51を制御するプログラムや、通信制御サーバ2から送信される主制御指令に相当するレジストリ格納部522の特定の注入孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令に応じて、運転状態をレジストリ格納部522に格納するようにユニット制御部51を制御するプログラム等である。
【0027】
本実施形態の注入材施工管理システムは、例えば図5に示すようなトンネル空間Tの施工断面12において、放射状に複数設けられる注入孔11のそれぞれに注入孔番号を設定し、各注入孔番号の注入孔11に注入材を注入するようにして用いられる。尚、図5において、符号13は吹付コンクリート、符号14は覆工コンクリートであり、この例では覆工コンクリート14、吹付コンクリート13を貫通するようにして地山10の注入孔11が形成されている。
【0028】
そして、本実施形態の注入材施工管理システムで注入材の施工管理を行う際には、注入材を注入する操作者の入力により、操作端末4から注入孔番号とこの注入孔番号に対する注入材注入要求がサーバ装置1を構成する通信制御サーバ2に送信される。通信制御サーバ2の制御部21は、図4に示すように、操作端末4から受信した注入孔番号とこの注入孔番号に対する注入材注入要求の入力に応じて、重複判定プログラムに従い、受信した注入孔番号の運転状態記録の有無を注入孔運転情報格納部225に格納されている運転状態記録と照合して確認する(S1、S2)。尚、通信制御サーバ2への注入孔番号とこの注入孔番号に対する注入材注入要求の入力は、通信制御サーバ2の入力部23から直接入力することも可能である。
【0029】
通信制御サーバ2の制御部21は、受信して入力された注入孔番号の運転状態記録が無い場合、主制御プログラムに従い、入力された注入孔番号に対応させて注入材注入開始指令を生成し、注入材注入開始指令と、ポンプ運転条件格納部224に格納されているポンプ運転条件と、ポンプユニット5の主制御を担うユニット主制御プログラムの一部を構成するレジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令と、内蔵タイマー25で取得した送信時刻に相当する注入開始時刻をポンプユニットに送信する(S3)。尚、注入開始時刻には、ポンプユニット5が内蔵タイマー56で取得した注入材注入開始指令の受信時刻等を用いることも可能である。
【0030】
また、通信制御サーバ2の制御部21は、受信して入力された注入孔番号の運転状態記録が有る場合、主制御プログラムに従い、入力された注入孔番号に代えて、仮孔運転情報格納部226に格納されている注入材注入の運転状態記録が無い仮孔番号の中から昇順等で抽出して、入力された注入孔番号と関係付けしながら仮孔番号を付与し、付与した仮孔番号に対応させて注入材注入開始指令を生成し、注入材注入開始指令と、ポンプ運転条件格納部224に格納されているポンプ運転条件と、ポンプユニット5の主制御を担うユニット主制御プログラムの一部を構成するレジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令と、内蔵タイマー25で取得した送信時刻に相当する注入開始時刻をポンプユニットに送信する(S4)。尚、仮孔番号には、例えば数字の注入孔番号に対して頭文字に特定の数列や「K」等の記号を付加した番号を仮孔番号にするなど注入孔番号と異なる種別の番号を用いてもよく、又、トンネル隔壁の注入材注入等で使用が想定されない注入孔番号と同種の番号で大きな数の番号を用いてもよい。
【0031】
地山10の注入孔11に注入ポンプ53と注入ホース61を介して接続された注入管62が挿入され(図3参照)且つ注入ポンプ53が起動された状態において、ポンプユニット5のユニット制御部51は、ユニット補助制御プログラムと協働し、注入材注入開始指令とポンプ運転条件とレジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令と注入開始時刻の受信に応じて、受信したポンプ運転条件で注入ポンプ53の運転を制御して注入管62が挿入されている地山10の注入孔11に注入材を注入すると共に、注入ポンプ53の運転制御と並行して運転状態監視センサ55の検出値と内蔵タイマー56の計測時刻を取得し、運転状態監視センサ55の検出値と内蔵タイマー56の計測時刻に基づき、経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態をレジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域に注入孔番号及び注入開始時刻と併せて記録していく(S5)。尚、図3の符号63は注入管62を保持するスペーサである。
【0032】
また、地山10の注入孔11に注入ポンプ53と注入ホース61を介して接続された注入管62が挿入され(図3参照)且つ注入ポンプ53が起動された状態において、ポンプユニット5のユニット制御部51は、ユニット補助制御プログラムと協働し、注入材注入開始指令とポンプ運転条件とレジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録指令と注入開始時刻の受信に応じて、受信したポンプ運転条件で注入ポンプ53の運転を制御して注入管62が挿入されている地山10の注入孔11に注入材を注入すると共に、注入ポンプ53の運転制御と並行して運転状態監視センサ55の検出値と内蔵タイマー56の計測時刻を取得し、運転状態監視センサ55の検出値と内蔵タイマー56の計測時刻に基づき、経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態をレジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域に仮孔番号及び注入開始時刻と併せて記録していく(S5)。
【0033】
そして、通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、注入材注入を開始したポンプユニット5のレジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域に記録された経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態記録を所定周期で読み込んで注入材の積算注入量を演算取得し、格納している目標注入量と積算注入量とを照合し(S6)、積算注入量の目標注入量への到達に応じて、注入材注入終了指令と、レジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令と、最終的な積算注入量と、内蔵タイマー25で取得した送信時刻に相当する注入終了時刻をポンプユニットに送信する(S7)。尚、注入終了時刻には、ポンプユニット5が内蔵タイマー56で取得した注入材注入終了指令の受信時刻等を用いることも可能である。
【0034】
ポンプユニット5のユニット制御部51は、ユニット補助制御プログラムと協働し、注入材注入終了指令と注入孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令と最終的な積算注入量と注入終了時刻の受信に応じて、注入ポンプ53の運転を停止し、注入終了時刻と積算注入量をレジストリ格納部522の注入孔番号に対応する記録領域に記録して運転状態記録を終了する(S8)。
【0035】
更に、通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、ポンプユニット5のレジストリ格納部522に格納されている最終的な注入孔番号に対応する運転状態記録を取得し、注入孔運転情報格納部225に取得した注入孔番号に対応する運転状態記録を格納する(S9)。レジストリ格納部522と注入孔運転情報格納部225に格納される注入孔番号に対応する運転状態記録には、注入孔番号、注入開始時刻、注入終了時刻、経時的な注入材の注入の流量、積算注入量が含まれ、必要に応じて注入材注入の注入圧の初期圧や最終圧等の所要情報が記録される。図6は注入孔運転情報格納部225に格納される番号修正前の運転状態記録の例であり、仮孔番号が付与された注入孔番号の運転状態記録は空欄になっている。
【0036】
また、仮孔番号に対応する注入材の注入の場合、通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、注入材注入を開始したポンプユニット5のレジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域に記録された経時的な注入材の注入の流量を含む運転状態記録を所定周期で読み込んで注入材の積算注入量を演算取得し、格納している目標注入量と積算注入量とを照合し(S6)、積算注入量の目標注入量への到達に応じて、注入材注入終了指令と、レジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令と、最終的な積算注入量と、内蔵タイマー25で取得した送信時刻に相当する注入終了時刻をポンプユニットに送信する(S7)。
【0037】
ポンプユニット5のユニット制御部51は、ユニット補助制御プログラムと協働し、注入材注入終了指令と仮孔番号に対応する記録領域への運転状態記録終了指令と最終的な積算注入量と注入終了時刻の受信に応じて、注入ポンプ53の運転を停止し、注入終了時刻と積算注入量をレジストリ格納部522の仮孔番号に対応する記録領域に記録して運転状態記録を終了する(S8)。
【0038】
更に、通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、ポンプユニット5のレジストリ格納部522に格納されている最終的な仮孔番号に対応する運転状態記録を取得し、仮孔運転情報格納部226に取得した仮孔番号に対応する運転状態記録を格納する(S9)。レジストリ格納部522と仮孔運転情報格納部226に格納される仮孔番号に対応する運転状態記録には、仮孔番号、注入開始時刻、注入終了時刻、経時的な注入材の注入の流量、積算注入量が含まれ、必要に応じて注入材注入の注入圧の初期圧や最終圧等の所要情報が記録される。図7は仮孔運転情報格納部226に格納される番号修正前の運転状態記録の例である。
【0039】
その後、例えば管理事務所や現場事務所等に設置される管理サーバ3から通信制御サーバ2に、仮孔運転情報格納部226に格納されている仮孔番号に対応する運転状態記録の閲覧要求と注入孔運転情報格納部225に格納されている注入孔番号に対応する運転状態記録の閲覧要求が送信された際に、通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、仮孔運転情報格納部226に格納されている仮孔番号と注入孔番号に対応する運転状態記録を管理サーバ3に送信して提示する。
【0040】
そして、管理サーバ3において、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号の入力と、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号への修正要求の送信入力が行われ、管理サーバ3から通信制御サーバ2に、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号と、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号への修正要求が送信される。特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号の認識、特定は、例えば各注入孔番号の注入孔に対して注入材を注入する順番の注入順番表と、特定の仮孔番号に対する運転状態記録の注入開始時刻及び注入終了時刻と、その前後の注入孔番号に対する運転状態記録の注入開始時刻及び注入終了時刻を対比する等によって行われる。
【0041】
通信制御サーバ2の制御部21は、主制御プログラムに従い、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号と、特定の仮孔番号に対する正規の注入孔番号への修正要求の受信、入力に応じて、仮孔運転情報格納部226に格納されている仮孔番号の運転状態記録の仮孔番号を正規の注入孔番号の運転状態記録に修正して注入孔運転情報格納部225に格納する(S10)。図8は注入孔運転情報格納部225に格納される番号修正前の運転状態記録の例である。
【0042】
更に、仮孔番号を正規の注入孔番号に修正された注入孔番号の運転状態記録を含む、通信制御サーバ2の注入孔運転情報格納部225に格納された各々の注入孔番号に対応する運転状態記録は、管理サーバ3からのダウンロード要求、又は、通信制御サーバ2の制御により、通信制御サーバ2の制御部21の制御によって通信制御サーバ2から管理サーバ3に送信される。管理サーバ3の制御部31は、各々の注入孔番号に対応する運転状態記録の通信制御サーバ2からの受信、入力に応じて、各々の注入孔番号に対応する運転状態記録を注入孔運転情報格納部322に格納する(S11)。
【0043】
本実施形態の注入材施工管理システムによれば、注入材を注入する操作者の注入孔番号が正規の注入孔番号と相違する場合に、サーバ装置1で仮孔番号を付与し、仮孔番号の注入孔への注入材の注入作業として注入材の注入作業を実行し、後で仮孔番号を正規の注入孔の注入孔番号に修正して施工管理することができる。従って、注入材を注入する操作者の注入孔番号の入力違いに拘わらず、注入材の注入作業を停止することなく継続することができ、施工効率の低下を防止しつつ、注入材の注入状態の施工管理を確実に行うことができる。また、仮孔番号に対応する注入孔11への注入材の注入状態、注入ポンプ53の運転状態をリアルタイムで正確に認識することができる。
【0044】
また、操作端末4を用い、注入孔番号と注入材注入要求を操作端末4からサーバ装置1に送信してサーバ装置1に入力し、これに応じてサーバ装置1からポンプユニット5に注入材注入開始指令を送信することにより、注入材を注入する操作者の利便性を高めることができる。
【0045】
また、例えば注入ポンプ53や現場条件等に応じたポンプ運転条件を変更可能にサーバ装置1の記憶部、本実施形態では通信制御サーバ2のポンプ運転条件格納部224に格納することにより、最適条件が随時変化する最適なポンプ運転条件を柔軟に設定することができ、柔軟に変更設定した最適なポンプ運転条件で地山10の注入孔11に注入材を注入することができる。
【0046】
また、管理サーバ3における仮孔番号の正規の注入孔番号への修正入力に応じて、通信制御サーバ2において、仮孔番号の運転状態記録の仮孔番号を正規の注入孔番号に修正して正規の注入孔番号の運転状態記録として格納する構成により、管理サーバ3を通信制御サーバ2と離間配置し、管理サーバ3を管理事務所等に設置して必要な操作を行うことが可能となり、システム使用の利便性を高めることができる。また、各々の注入孔番号に対応する注入材の注入の運転状態記録を通信制御サーバ2の記憶部21と管理サーバ3の記憶部31の双方に格納することにより、データ保存の安全性を高めることができる。
【0047】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0048】
例えば変形例の注入材施工管理システムとして、サーバ装置1を構成する通信制御サーバ2が、操作端末4から送信された注入孔番号に対応する運転状態記録を操作端末4に送信して提示し、通信制御サーバ2の制御部21が、操作端末4からのリセット要求の受信に応じて、提示している運転状態記録が仮孔番号に対応するものである場合に、注入孔番号を仮孔番号に変更して運転状態記録を送信して提示する構成としても好適である。この構成により、操作端末4におけるリセット操作によって、注入材を注入する操作者が、仮孔番号が付与されて仮孔番号に対応して通信制御サーバ2に格納されている運転状態記録を容易に確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば長尺先受け工法(AGF工法)や鏡補強工のようなトンネル補助工法や、斜面等の地盤の補強において、地山に注入する注入材の施工を管理する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…サーバ装置 2…通信制御サーバ 21…制御部 22…記憶部 221…制御プログラム格納部 222…重複判定プログラム格納部 223…ユニット主制御プログラム格納部 224…ポンプ運転条件格納部 225…注入孔運転情報格納部 226…仮孔運転情報格納部 23…入力部 24…出力部 25…内蔵タイマー 26…通信部 3…管理サーバ 31…制御部 32…記憶部 321…制御プログラム格納部 322…注入孔運転情報格納部 33…入力部 34…出力部 35…内蔵タイマー 36…通信部 4…操作端末 41…制御部 42…記憶部 421…制御プログラム格納部 43…入力部 44…出力部 45…通信部 5…ポンプユニット 51…ユニット制御部 52…ユニット記憶部 521…ユニット補助制御プログラム格納部 522…レジストリ格納部 53…注入ポンプ 54…ポンプ操作部 55…運転状態監視センサ 56…内蔵タイマー 57…通信部 61…注入ホース 62…注入管 63…スペーサ 10…地山 11…注入孔 12…施工断面 13…吹付コンクリート 14…覆工コンクリート CL…通信回線 T…トンネル空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8