(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127539
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/26 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A61B18/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204602
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】63/315,421
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 祐平
【テーマコード(参考)】
4C026
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026BB08
4C026FF17
4C026GG03
4C026HH02
4C026HH13
4C026HH15
4C026HH24
(57)【要約】
【課題】フラッシング現象の発生を抑制すること。
【解決手段】制御装置56は、ハードウェアから構成され、レーザ光源521の動作を制御することによってレーザ光源521からレーザ光を発光させ、光ファイバ51を通してレーザ光を照射対象STに対して照射させるプロセッサ561を備える。プロセッサ561は、照射対象STに対するレーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報を算出し、オーバーラップ情報に基づいて、レーザ光源521からのレーザ光の出力を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアから構成され、レーザ光源の動作を制御することによって前記レーザ光源からレーザ光を発光させ、光ファイバを通して前記レーザ光を照射対象に対して照射させるプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記照射対象に対する前記レーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報を算出し、
前記オーバーラップ情報に基づいて、前記レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記照射領域の直径と、前記光ファイバの移動距離とに基づいて、前記オーバーラップ情報であるオーバーラップ指標値を算出する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記光ファイバの移動に応じた走査速度と、前記レーザ光におけるパルス発光のパルス周波数とに基づいて、前記移動距離を算出する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記照射対象と前記光ファイバとの間の距離と、前記光ファイバの直径と、前記光ファイバの開口数と、前記レーザ光が通過する媒質の屈折率とに基づいて、前記照射領域の直径を算出する請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記オーバーラップ指標値に基づいて、オーバーラップ領域の有無を判定し、
前記オーバーラップ領域が無い場合、前記レーザ光の照射を許可する請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記照射対象を撮像した内視鏡画像に基づいて、前記走査速度を算出する請求項3に記載の制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記照射対象に照射され、前記照射対象によって散乱した光によって形成されるスペックルパターンに基づいて、前記走査速度を算出する請求項3に記載の制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記照射対象に照射され、前記照射対象によって反射されて戻ってきた光に基づいて、ドップラー効果を利用することで前記走査速度を算出する請求項3に記載の制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記照射対象に照射され、前記照射対象によって反射された光の明るさに基づいて、前記距離を算出する請求項4に記載の制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記照射対象に光が照射されてから前記照射対象によって反射されて戻ってくるまでの時間に基づいて、前記距離を算出する請求項4に記載の制御装置。
【請求項11】
前記照射対象を撮像した内視鏡画像に基づいて、前記距離を算出する請求項4に記載の制御装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記走査速度が低くなるにしたがって前記パルス周波数を下げる請求項3に記載の制御装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記距離が大きくなるにしたがって前記レーザ光におけるパルス発光のパルス周波数を下げる請求項4に記載の制御装置。
【請求項14】
前記オーバーラップ情報は、
前記照射対象に照射する前記レーザ光を第1のパルス発光によって発光させた時に出現する第1の照射領域と、
前記レーザ光を前記第1のパルス発光に続き第2のパルス発光によって発光させた時に出現する第2の照射領域と、が重なる領域である前記オーバーラップ領域についての情報である請求項1に記載の制御装置。
【請求項15】
ハードウェアから構成され、レーザ光源の動作を制御することによって前記レーザ光源からレーザ光をパルス発光させ、光ファイバを通して前記レーザ光を照射対象に対して照射させるプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記照射対象に対する前記光ファイバの移動に応じた走査速度を算出し、
前記走査速度に基づいて、レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する制御装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記走査速度が低くなるにしたがって前記レーザ光における前記パルス発光のパルス周波数を下げる請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、
前記照射対象と前記光ファイバとの間の距離を算出し、
前記走査速度と前記距離とに基づいて、前記レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する請求項15に記載の制御装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、
前記距離が大きくなるにしたがって前記レーザ光における前記パルス発光のパルス周波数を下げる請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
制御装置のプロセッサが実行する制御方法であって、
照射対象に対するレーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報を算出し、
前記オーバーラップ情報に基づいて、レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する制御方法。
【請求項20】
前記オーバーラップ情報は、
前記照射対象に照射する前記レーザ光を第1のパルス発光によって発光させた時に出現する第1の照射領域と、
前記レーザ光を前記第1のパルス発光に続き第2のパルス発光によって発光させた時に出現する第2の照射領域と、が重なる領域である前記オーバーラップ領域についての情報である請求項19に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光源からレーザ光をパルス発光させ、光ファイバを通して当該レーザ光を破砕対象である結石に対して照射することによって、当該結石を破砕する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術では、レーザ光が結石によって反射されて戻ってきた当該レーザ光の光量を用いることによって当該結石までの距離を測定し、当該距離に基づいて当該レーザ光の条件を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0354464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光による結石の破砕中には、当該結石が光るフラッシング現象が生じる場合がある。このフラッシング現象が生じた場合には、術者が確認する内視鏡画像に白飛びが発生するため、術者は、当該内視鏡画像から結石を確認することが難しい。特に、フラッシング現象が頻繁に生じた場合には、術者は、手技の中断を余儀なくされる。その結果、手術時間が長くなってしまうとともに、術者の疲労も増長させてしまう。
そこで、フラッシング現象の発生を抑制することができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フラッシング現象の発生を抑制することができる制御装置、処置システム、及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、ハードウェアから構成され、レーザ光源の動作を制御することによって前記レーザ光源からレーザ光を発光させ、光ファイバを通して前記レーザ光を照射対象に対して照射させるプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記照射対象に対する前記レーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報を算出し、前記オーバーラップ情報に基づいて、前記レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する。
【0007】
本発明に係る制御装置は、ハードウェアから構成され、レーザ光源の動作を制御することによって前記レーザ光源からレーザ光をパルス発光させ、光ファイバを通して前記レーザ光を照射対象に対して照射させるプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記照射対象に対する前記光ファイバの移動に応じた走査速度を算出し、前記走査速度に基づいて、レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する。
【0008】
本発明に係る制御方法は、制御装置のプロセッサが実行する制御方法であって、照射対象に対するレーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報を算出し、前記オーバーラップ情報に基づいて、レーザ光源からの前記レーザ光の出力を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る制御装置及び制御方法によれば、結石を破砕中に生じるフラッシング現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る処置システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、制御装置が実行する制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態2に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態3に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態4に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、パルス周波数変更情報を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施の形態4の変形例4-1を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施の形態4の変形例4-2を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施の形態5に係る制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0012】
(実施の形態1)
〔処置システムの構成〕
図1は、実施の形態1に係る処置システム1の構成を示すブロック図である。
処置システム1は、生体内を観察しつつ、レーザ光によって当該生体内の照射対象(本実施の形態1では尿路結石ST(
図1))を破砕するシステムである。この処置システム1は、
図1に示すように、内視鏡2と、表示装置3と、フットスイッチ4と、処理装置5とを備える。
【0013】
内視鏡2は、一部が生体内に挿入され、当該生体内を撮像し、当該撮像によって生成した画像信号(以下、内視鏡画像と記載)を出力する。この内視鏡2は、
図1に示すように、挿入部21と、撮像装置22とを備える。
挿入部21は、少なくとも一部が可撓性を有し、生体内に挿入される部分である。この挿入部21内には、当該挿入部21の長手方向に沿って貫通するチャンネル211が設けられている。
【0014】
撮像装置22は、挿入部21内の先端部分に設けられている。そして、撮像装置22は、被写体像を受光して電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有し、生体内を撮像することによって生成した内視鏡画像を処理装置5に対して出力する。
【0015】
表示装置3は、LCD(Liquid Crystal Display)またはEL(Electro Luminescence)ディスプレイ等であり、処理装置5による制御の下、内視鏡画像等を表示する。
フットスイッチ4は、尿路結石STの破砕を開始する開始操作を受け付ける。そして、フットスイッチ4は、当該開始操作に応じた信号を処理装置5に対して出力する。
なお、当該開始操作を受け付ける構成としては、術者が足で操作するフットスイッチ4に限らず、その他、手で操作するスイッチ等を採用しても構わない。
【0016】
処理装置5は、
図1に示すように、光ファイバ51と、光源装置52と、ハーフミラー53と、ダイクロイックミラー54と、光検出器55と、制御装置56とを備える。
光ファイバ51は、
図1に示すように、挿入部21のチャンネル211内に挿入されている。なお、本実施の形態1では、
図1に示すように光ファイバ51の数を1本としているが、当該光ファイバ51の数は、1本に限らず、2本以上であっても構わない。
【0017】
光源装置52は、制御装置56による制御の下、尿路結石STの破砕に用いる処置用レーザ光と、ガイド光とをそれぞれ出射する。この光源装置52は、
図1に示すように、処置用レーザ光源521と、ガイド光用光源522とを備える。
処置用レーザ光源521は、本発明に係るレーザ光源に相当し、処置用レーザ光をパルス発光する。この処置用レーザ光源521としては、2μm程度の中赤外の波長帯域の処置用レーザ光を出射する半導体レーザ等を例示することができる。
【0018】
ガイド光用光源522は、ガイド光を出射する。このガイド光用光源522としては、可視の波長帯域のガイド光を出射するLED(Light Emitting Diode)、または、近赤外の波長帯域のガイド光を出射するLEDや半導体レーザ等を例示することができる。例えば、ガイド光用光源522として、緑色の波長帯域のガイド光を出射する緑色LEDと、赤色の波長帯域のガイド光を出射する赤色LEDとによって構成すれば、制御装置56による制御の下、ガイド光の色を緑色または赤色に変更することができる。
そして、ガイド光用光源522から出射されたガイド光は、
図1に矢印で示したように、処置用レーザ光源521から出射された処置用レーザ光と平行となる状態で当該処置用レーザ光と同一方向に進行する。
【0019】
ハーフミラー53は、ガイド光用光源522から出射されたガイド光の一部を反射させ、ダイクロイックミラー54に向けて進行させる。
ダイクロイックミラー54は、ガイド光の波長帯域の光を反射させ、処置用レーザ光の波長帯域の光を透過させる。
【0020】
ここで、ガイド光用光源522から出射され、ハーフミラー53を経由した後、ダイクロイックミラー54で反射したガイド光は、当該ダイクロイックミラー54を透過した処置用レーザ光と同じ光軸上を進行し、光ファイバ51の基端に入射する。当該光ファイバ51の基端に入射したガイド光は、当該光ファイバ51によって伝搬され、当該光ファイバ51の先端から尿路結石STに照射され、当該尿路結石の照射位置に当該ガイド光のスポットを形成する。この際、術者は、表示装置3に表示された内視鏡画像から、当該ガイド光のスポットを認識することができる。なお、当該スポットは、尿路結石STへの処置用レーザ光の照射位置に相当する。
【0021】
また、尿路結石STに照射され、当該尿路結石STで反射したガイド光の一部(以下、戻り光と記載)は、光ファイバ51の先端に入射する。当該光ファイバ51の先端に入射した戻り光は、当該光ファイバ51によって伝搬され、当該光ファイバ51の基端からダイクロイックミラー54及びハーフミラー53を経由した後、光検出器55に入射する。
【0022】
一方、処置用レーザ光源521から出射され、ダイクロイックミラー54を透過した処置用レーザ光は、上述したガイド光と同様に、光ファイバ51を経由した後、当該光ファイバ51の先端から尿路結石STに照射される。そして、光ファイバ51の先端から尿路結石STに処置用レーザ光が照射されることによって、当該尿路結石STは、破砕する。
【0023】
光検出器55は、戻り光を検出し、当該検出結果に応じた信号を制御装置56に対して出力する。
【0024】
制御装置56は、処置システム1全体の動作を統括的に制御する。この制御装置56は、
図1に示すように、制御部561と、記憶部562と、入力部563とを備える。
制御部561は、本発明に係るプロセッサに相当する。この制御部561は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコントローラ、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を含んで構成され、処置システム1全体の動作を制御する。なお、制御部561の機能については、後述する「制御方法」において説明する。
【0025】
記憶部562は、制御部561が実行する各種プログラム(本発明に係る制御プログラムを含む)、及び当該制御部561の処理に必要な情報等を記憶する。ここで、制御部561の処理に必要な情報としては、処置用レーザ光におけるパルス発光のパルス周波数f、光ファイバ51のファイバ直径D、当該光ファイバ51の開口数NA、及び当該処置用レーザ光が通過する媒質(生理食塩水)の屈折率n(1.3程度)等のデータを例示することができる。なお、パルス周波数fについては、術者等による入力部563へのユーザ操作に応じて、当該術者の好みに応じた値に変更可能に構成しても構わない。
入力部563は、キーボード、マウス、スイッチ、タッチパネル等を用いて構成され、術者等によるユーザ操作を受け付ける。そして、入力部563は、当該ユーザ操作に応じた走査信号を制御部561に対して出力する。
【0026】
〔制御方法〕
次に、制御装置56が実行する制御方法について説明する。
図2は、制御装置56が実行する制御方法を示すフローチャートである。
図3は、制御方法を説明する図である。具体的に、
図3は、処置用レーザ光が光ファイバ51を通して尿路結石STに照射される状態を示している。なお、
図3において示す実線は、所定のタイミングで処置用レーザ光がパルス発光(以下、第1のパルス発光と記載)した際の光ファイバ51及び当該処置用レーザ光を示している。一方、
図3に示す一点鎖線は、第1のパルス発光の直後のタイミングで処置用レーザ光がパルス発光(以下、第2のパルス発光と記載)した際の光ファイバ51及び当該処置用レーザ光を示している。
先ず、制御部561は、術者によるフットスイッチ4への開始操作があったか否かを常時、監視する(ステップS1A)。
【0027】
そして、開始操作があったと判断した場合(ステップS1A:Yes)には、制御部561は、光源装置52の動作を制御し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光のパルス発光、及びガイド光用光源522からのガイド光の出射を開始させる(ステップS1B)。
【0028】
ステップS1Bの後、制御部561は、光ファイバ51の先端と尿路結石STとの間の距離d(
図3)を算出する(ステップS1C)。
具体的に、距離dの算出方法としては、以下の(1)~(3)の算出方法のいずれかの算出方法を採用することができる。
【0029】
(1)戻り光の明るさに基づく距離dの算出方法
制御部561は、光検出器55によって検出された戻り光の明るさに基づいて、距離dを算出する。具体的に、距離dと戻り光の明るさとの間には相関関係がある。例えば、距離dが小さくなるにしたがって、戻り光の明るさは高くなる。そして、制御部561は、例えば記憶部562に記憶された当該相関関係を示すデータを参照し、光検出器55によって検出された戻り光に対応する距離dを算出する。
【0030】
(2)タイムオブフライト法に基づく距離dの算出方法
制御部561は、ガイド光用光源522からガイド光をパルス発光させ、当該ガイド光がパルス発光してから光検出器55によって戻り光が検出されるまでの時間に基づいて、距離dを算出する。すなわち、制御部561は、所謂、タイムオブフライト法を利用して、距離dを算出する。
【0031】
(3)内視鏡画像に基づく距離dの算出方法
制御部561は、尿路結石STを撮像した内視鏡画像に基づいて、距離dを算出する。
具体的に、例えば、撮像装置22をステレオカメラによって構成する。そして、制御部561は、当該ステレオカメラによって異なる視点から同時に撮像され、同一被写体の画像中の相対的なずれ量を用いることによって、三角測量の原理に基づいて被写体の3次元位置を算出するステレオ計測技術を用い、距離dを算出する。
また、例えば、撮像装置22をTOF(Time Of Flight)センサ等の距離画像センサによって構成する。そして、制御部561は、当該距離画像センサによって撮像された内視鏡画像に基づいて、距離dを算出する。
【0032】
ステップS1Cの後、制御部561は、術者によって挿入部21が移動された際での尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に応じた走査速度V(
図3)を算出する(ステップS1D)。
具体的に、走査速度Vの算出方法としては、以下の(4)~(6)の算出方法のいずれかの算出方法を採用することができる。
【0033】
(4)内視鏡画像に基づく走査速度Vの算出方法
制御部561は、尿路結石STを撮像した内視鏡画像に基づいて、走査速度Vを算出する。
具体的に、例えば、撮像装置22をステレオカメラによって構成する。ここで、制御部561は、当該ステレオカメラによって異なる視点から同時に撮像され、同一被写体の画像中の相対的なずれ量を用いることによって、三角測量の原理に基づいて被写体の3次元位置を算出するステレオ計測技術を用いる。そして、制御部561は、時系列的に並ぶ隣接するフレーム(内視鏡画像)間において、相関の高い特定の位置の3次元位置同士の移動量を当該隣接するフレーム間の時間で除算することによって、走査速度Vを算出する。
また、例えば、制御部561は、時系列的に並ぶ隣接するフレーム間のオプティカルフローを推定することによって、走査速度Vを算出する。
【0034】
(5)スペックルパターンに基づく走査速度Vの算出方法
ところで、ガイド光を尿路結石STに照射すると、当該尿路結石STの表面で散乱した光が互いに干渉し、スペックルパターンと呼ばれるランダムな斑点模様を形成する。
そして、制御部561は、光検出器55によって検出された戻り光のスペックルパターンを利用し、尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に伴う当該スペックルパターンの移動量を算出することによって、走査速度Vを算出する。
【0035】
(6)ドップラー効果を用いた走査速度
制御部561は、ガイド光用光源522から出射されたガイド光の波長と、光検出器55によって検出された戻り光の波長との変化に基づいて、走査速度Vを算出する。すなわち、制御部561は、所謂、ドップラー効果を利用して、走査速度Vを算出する。
【0036】
ステップS1Dの後、制御部561は、術者によって挿入部21が移動された際での尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に応じた処置用レーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域ArO(
図3)を示すオーバーラップ指標値Iを算出する(ステップS1E)。当該オーバーラップ指標値Iは、本発明に係る「オーバーラップ領域についての情報であるオーバーラップ情報」に相当する。
ここで、オーバーラップ領域ArOは、
図3に示すように、処置用レーザ光の第1のパルス発光によって尿路結石STに照射された当該処置用レーザ光の照射領域Ar1と、第2のパルス発光によって尿路結石STに照射された処置用レーザ光の照射領域Ar2とが重なる領域を意味する。当該照射領域Ar1は、本発明に係る第1の照射領域に相当する。また、当該照射領域Ar2は、本発明に係る第2の照射領域に相当する。
【0037】
ところで、フラッシング現象が生じる要因としては、以下の要因が考えられる。
第1のパルス発光によって処置用レーザ光が尿路結石STに照射されることによって、当該尿路結石STにおける当該照射領域Ar1に対応する表面は、破砕する。この際、
図3に示すように、当該照射領域Ar1には、破砕されずに熱を持った状態で破砕不良部分ST1が残る場合がある。そして、第2のパルス発光によって当該破砕不良部分ST1に処置用レーザ光を照射し、当該破砕不良部分ST1を再加熱してしまった場合には、当該破砕不良部分ST1の熱蓄積による黒体輻射によって、フラッシング現象が生じる。
【0038】
そして、本願発明では、上述した要因を考慮した結果、フラッシング現象を抑制するために、オーバーラップ領域ArOに着目している。
具体的に、制御部561は、ステップS1Eにおいて、照射領域Ar1,Ar2の直径W(
図3)を処置用レーザ光の1パルス分で光ファイバ51が移動する移動距離L(
図3)で除したW/Lをオーバーラップ指標値Iとして算出する。
【0039】
ここで、制御部561は、ステップS1Cにおいて算出した距離dと、記憶部562に記憶されたファイバ直径D、開口数NA、及び屈折率nとに基づいて、(D+2dtanθ)を直径Wとして算出する。なお、θは、NA=nsinθから導くことができる。
また、制御部561は、ステップS1Dにおいて算出した走査速度Vを記憶部562に記憶されたパルス周波数fで除したV/fを移動距離Lとして算出する。
【0040】
ステップS1Eの後、制御部561は、ステップS1Eにおいて算出したオーバーラップ指標値Iが特定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS1F)。
本実施の形態1では、当該特定の条件を満たすか否かは、I<N+1という関係を満たすか否かを意味する。
ここで、Nは、処置用レーザ光がパルス発光している際、各パルス発光での当該処置用レーザ光の尿路結石ST上の各照射領域がオーバーラップする回数(以下、オーバーラップ回数と記載)を意味する。例えば、Nが0である場合には、上述した条件は、オーバーラップが1回もない、言い換えれば、オーバーラップ領域ArOが0であるという条件となる。なお、当該Nとしては、予め設定された値であってもよく、あるいは、術者等による入力部563へのユーザ操作に応じて設定された値であってもよい。
【0041】
オーバーラップ指標値Iが特定の条件を満たしていると判定した場合(ステップS1F:Yes)には、制御部561は、ステップS1Cに戻る。例えば、制御部561は、Nが0である場合には、オーバーラップ指標値Iが1より小さいと、オーバーラップ領域ArOが無い(ステップS1F:Yes)と判定し、ステップS1Cに戻ってレーザ光の照射を継続(許可)する。
一方、オーバーラップ指標値Iが特定の条件を満たしていないと判定した場合(ステップS1F:No)には、制御部561は、処置用レーザ光源521の動作を停止する(ステップS1G)。これによって、尿路結石STの破砕が停止される。
【0042】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態1に係る制御装置56を構成する制御部561は、尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に応じた処置用レーザ光の照射領域におけるオーバーラップ領域ArOを示すオーバーラップ指標値Iを算出する。そして、制御部561は、当該オーバーラップ指標値Iに基づいて、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光の出力を制御する。言い換えれば、制御部561は、フラッシング現象が生じる要因として考えられるオーバーラップ領域ArOを考慮し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光の出力を制御する。
したがって、本実施の形態1に係る制御装置56によれば、フラッシング現象の発生を抑制することができる。その結果、術者は、フラッシング現象に応じて手技を中断することが少なくなる。また、手術時間も短くすることができ、術者の疲労も軽減することができる。
【0043】
特に、制御部561は、距離d及び走査速度Vをそれぞれ算出し、当該距離d及び当該走査速度Vに基づいて、オーバーラップ指標値Iを算出する。
このため、オーバーラップ指標値Iを精度良く算出することができ、フラッシング現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図4は、実施の形態2に係る制御方法を示すフローチャートである。
本実施の形態2では、
図4に示すように、上述した実施の形態1に対して、制御装置56が実行する制御方法が異なる。
【0045】
以下、本実施の形態2に係る制御方法について
図4を参照しつつ説明する。
先ず、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Aと同様に、術者によるフットスイッチ4への開始操作があったか否かを常時、監視する(ステップS2A)。
【0046】
そして、開始操作があったと判断した場合(ステップS2A:Yes)には、制御部561は、光源装置52の動作を制御し、ガイド光用光源522からのガイド光の出射を開始させる(ステップS2B)。
ステップS2Bの後、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Cと同様に、距離dを算出する(ステップS2C)。
【0047】
ステップS2Cの後、制御部561は、ステップS2Cにおいて算出した距離dが第1の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS2D)。
ここで、当該第1の閾値は、予め設定された値であってもよく、あるいは、術者等による入力部563へのユーザ操作に応じて設定された値であってもよい。
【0048】
距離dが第1の閾値を超えると判定した場合(ステップS2D:No)には、制御部561は、ステップS2Cに戻る。
距離dが第1の閾値以下であると判定した場合(ステップS2D:Yes)には、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Dと同様に、走査速度Vを算出する(ステップS2E)。
【0049】
ステップS2Eの後、制御部561は、ステップS2Eにおいて算出した走査速度Vが第2の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS2F)。
ここで、第2の閾値は、ステップS2Cにおいて算出した距離dと、記憶部562に記憶されたファイバ直径D、開口数NA、屈折率n、及びパルス周波数fと、オーバーラップ回数Nとに基づいて、(D+2dtanθ)・f/(N+1)によって算出される値を採用することができる。なお、θは、NA=nsinθから導くことができる。
【0050】
走査速度Vが第2の閾値以下であると判定した場合(ステップS2F:No)には、制御部561は、ステップS2Cに戻る。
走査速度Vが第2の閾値を超えると判定した場合(ステップS2F:Yes)には、制御部561は、光源装置52の動作を制御し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光のパルス発光を開始させる(ステップS2G)。
【0051】
ステップS2Gの後、制御部561は、ステップS2Cと同様に距離dを算出し(ステップS2H)、この後、ステップS2Dと同様に当該距離dが第1の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS2I)。
距離dが第1の閾値を超えると判定した場合(ステップS2I:No)には、制御部561は、ステップS2Lに移行する。
一方、距離dが第1の閾値以下であると判定した場合(ステップS2I:Yes)には、制御部561は、ステップS2Eと同様に走査速度Vを算出し(ステップS2J)、この後、ステップS2Fと同様に当該走査速度Vが第2の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS2K)。
【0052】
走査速度Vが第2の閾値を超えると判定した場合(ステップS2K:Yes)には、制御部561は、ステップS2Iに戻る。
一方、走査速度Vが第2の閾値を超えると判定した場合(ステップS2K:No)、または、距離dが第1の閾値以下であると判定した場合(ステップS2I:No)には、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Gと同様に、処置用レーザ光源521の動作を停止する(ステップS2L)。
【0053】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態2に係る制御部561は、尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に応じた走査速度Vを算出する。そして、制御部561は、当該走査速度Vに基づいて、処置用レーザ光源521からの処理用レーザ光の出力を制御する。言い換えれば、制御部561は、フラッシング現象が生じる要因として考えられるオーバーラップ領域ArOに起因する走査速度Vを考慮し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光の出力を制御する。
したがって、本実施の形態2に係る制御装置56によれば、フラッシング現象の発生を抑制することができる。その結果、術者は、フラッシング現象に応じて手技を中断することが少なくなる。また、手術時間も短くすることができ、術者の疲労も軽減することができる。
【0054】
また、本実施の形態2に係る制御部561は、走査速度Vの他、オーバーラップ領域ArOに起因する距離dも考慮し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光の出力を制御する。
このため、フラッシング現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0055】
特に、処置用レーザ光の照射条件を満たした場合(ステップS2D:Yes、ステップS2F:Yes)に限って、当該処置用レーザ光のパルス発光を開始(ステップS2G)するので、適切なタイミングで当該パルス発光を開始させることができる。このため、フラッシング現象の発生を効果的に抑制しつつ、尿路結石STを効率的に破砕することができる。
【0056】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図5は、実施の形態3に係る制御方法を示すフローチャートである。
本実施の形態3では、
図5に示すように、上述した実施の形態1,2に対して、制御装置56が実行する制御方法が異なる。
【0057】
以下、本実施の形態3に係る制御方法について
図5を参照しつつ説明する。
本実施の形態3に係る制御方法では、
図5に示すように、上述した実施の形態2において説明した制御方法に対して、ステップS3Aが追加されている点が異なる。このため、以下では、ステップS3Aのみを主に説明する。
【0058】
ステップS3Aは、ステップS2Bの後に実行される。
具体的に、制御部561は、ステップS3Aにおいて、光源装置52の動作を制御し、処置用レーザ光源521から1パルスのみ処置用レーザ光をパルス発光させる。この後、制御部561は、ステップS2Cに移行する。
なお、距離dが第1の閾値を超えると判定した場合(ステップS2D:No)、及び走査速度Vが第2の閾値以下であると判定した場合(ステップS2F:No)にはそれぞれ、制御部561は、ステップS3Aに戻る。
【0059】
以上説明した本実施の形態3によれば、上述した実施の形態2と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態3に係る制御部561は、処置用レーザ光の照射条件を満たす(ステップS2D:Yes、ステップS2F:Yes)前に、1パルスのみ処置用レーザ光をパルス発光(ステップS3A)させる。
このため、尿路結石STへの当該1パルスのみの処置用レーザ光の照射によって、当該尿路結石STの表面の一部が破砕されるため、術者は、表示装置3に表示された内視鏡画像から、挿入部21(光ファイバ51)を動かしてよいタイミングを明確に認識することができる。また、尿路結石STの表面の一部が破砕されるため、光ファイバ51を動かす際に、当該光ファイバ51の先端が当該尿路結石STの表面に引っ掛かることがなく、術者は、挿入部21(光ファイバ51)を動かし易いものとなる。
【0060】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図6は、実施の形態4に係る制御方法を示すフローチャートである。
本実施の形態4では、
図6に示すように、上述した実施の形態1~3に対して、制御装置56が実行する制御方法が異なる。
【0061】
以下、本実施の形態4に係る制御方法について
図6を参照しつつ説明する。
先ず、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Aと同様に、術者によるフットスイッチ4への開始操作があったか否かを常時、監視する(ステップS4A)。
【0062】
そして、開始操作があったと判断した場合(ステップS4A:Yes)には、制御部561は、光源装置52の動作を制御し、処置用レーザ光源521からの処置用レーザ光のパルス発光、及びガイド光用光源522からのガイド光の出射を開始させる(ステップS4B)。
【0063】
ステップS4Bの後、制御部561は、上述した実施の形態1において説明したステップS1Cと同様に距離dを算出し(ステップS4C)、この後、上述した実施の形態1において説明したステップ1Dと同様に走査速度Vを算出する(ステップS4D)。
【0064】
ステップS4Dの後、制御部561は、記憶部562に記憶されたパルス周波数変更情報と、ステップS4Cにおいて算出した距離d、及びステップS4Dにおいて算出した走査速度Vとに基づいて、処置用レーザ光源521の動作を制御し、処置用レーザ光におけるパルス発光のパルス周波数fを変更する(ステップS4E)。この後、制御部561は、ステップS4Cに戻る。
【0065】
図7は、パルス周波数変更情報を説明する図である。ここで、
図7において、横軸は、距離dを示している。また、縦軸は、走査速度Vを示している。さらに、変更後のパルス周波数fを%によって表現している。
パルス周波数変更情報は、ステップS4Cにおいて算出された距離dと、ステップS4Dにおいて算出された走査速度Vとの組み合わせに対して変更後のパルス周波数fが関連付けられた情報である。
【0066】
ここで、本実施の形態4では、パルス周波数変更情報は、走査速度Vが低くなるにしたがってパルス周波数fを下げるように設定されている。また、パルス周波数変更情報は、距離dが大きくなるにしたがってパルス周波数fを下げるように設定されている。
図7の例では、距離dが小さく走査速度Vが高い左上の領域では、変更後のパルス周波数fは、「100%」に設定されている。なお、当該「100%」は、記憶部562に記憶され、例えば、術者等による入力部563へのユーザ操作に応じて設定されたパルス周波数f(以下、設定値f0と記載)を変更後のパルス周波数fとして用いることを意味する。そして、距離dが大きく走査速度Vが低くなるにしたがって、言い換えれば、
図7の右下に向かうにしたがって、変更後のパルス周波数fは、「75%」、「50%」、「25%」、及び「0%」に順次、変更される。なお、「75%」は、設定値f0の75%の値をパルス周波数fとして用いることを意味する。さらに、「50%」は、設定値f0の50%の値をパルス周波数fとして用いることを意味する。また、「25%」は、設定値f0の25%の値をパルス周波数fとして用いることを意味する。さらに、「0%」は、処置用レーザ光源521の動作を停止することを意味する。
【0067】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態4に係る制御部561は、尿路結石STに対する光ファイバ51の移動に応じた走査速度Vを算出する。そして、制御部561は、当該走査速度Vに基づいて、パルス周波数fを変更する。言い換えれば、制御部561は、フラッシング現象が生じる要因として考えられるオーバーラップ領域ArOに起因する走査速度Vを考慮し、パルス周波数fを変更することによって、当該オーバーラップ領域ArOを調整する。
したがって、本実施の形態4に係る制御装置56によれば、フラッシング現象の発生を抑制することができる。その結果、術者は、フラッシング現象に応じて手技を中断することが少なくなる。また、手術時間も短くすることができ、術者の疲労も軽減することができる。
【0068】
また、本実施の形態4に係る制御部561は、走査速度Vの他、オーバーラップ領域ArOに起因する距離dも考慮し、パルス周波数fを変更する。
このため、フラッシング現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0069】
(変形例4-1)
図8は、実施の形態4の変形例4-1を説明する図である。具体的に、
図8は、本変形例4-1に係るパルス周波数変更情報を説明する図である。ここで、
図8において、横軸は、走査速度Vを示している。また、縦軸は、パルス周波数fを示している。
上述した実施の形態4に係るステップS4Eでは、制御部561は、記憶部562に記憶されたパルス周波数変更情報と、ステップS4Cにおいて算出した距離d、及びステップS4Dにおいて算出した走査速度Vとに基づいて、パルス周波数fを変更していた。しかしながら、パルス周波数fの変更方法は、これに限らない。
例えば、制御部561は、ステップS4Cを実行せずに、ステップS4Eにおいて、記憶部562に記憶されたパルス周波数変更情報と、ステップS4Dにおいて算出した走査速度Vとに基づいて、パルス周波数fを変更しても構わない。
【0070】
本変形例4-1に係るパルス周波数変更情報は、ステップS4Dにおいて算出された走査速度Vに対して変更後のパルス周波数fが関連付けられた情報であり、走査速度Vが低くなるにしたがってパルス周波数fを下げるように設定されている。
具体的に、パルス周波数変更情報は、
図8に示すように、走査速度Vが0~走査速度V1の範囲では、パルス周波数fが「0」となるように設定されている。言い換えれば、当該範囲では、処置用レーザ光源521の動作を停止する。また、パルス周波数変更情報は、走査速度Vが走査速度V1から高くなるにしたがってパルス周波数fが「0」から上がるように設定されている。さらに、パルス周波数変更情報は、走査速度Vが走査速度V2以上になると設定値f0となるように設定されている。
【0071】
(変形例4-2)
図9は、実施の形態4の変形例4-2を説明する図である。具体的に、
図9は、本変形例4-2に係るパルス周波数変更情報を説明する図である。ここで、
図9において、横軸は、距離dを示している。また、縦軸は、パルス周波数fを示している。
上述した実施の形態4に係るステップS4Eでは、制御部561は、記憶部562に記憶されたパルス周波数変更情報と、ステップS4Cにおいて算出した距離d、及びステップS4Dにおいて算出した走査速度Vとに基づいて、パルス周波数fを変更していた。しかしながら、パルス周波数fの変更方法は、これに限らない。
例えば、制御部561は、ステップS4Dを実行せずに、ステップS4Eにおいて、記憶部562に記憶されたパルス周波数変更情報と、ステップS4Cにおいて算出した走査速度Vとに基づいて、パルス周波数fを変更しても構わない。
【0072】
本変形例4-2に係るパルス周波数変更情報は、ステップS4Cにおいて算出された距離dに対して変更後のパルス周波数fが関連付けられた情報であり、距離dが大きくなるにしたがってパルス周波数fを下げるように設定されている。
具体的に、パルス周波数変更情報は、
図9に示すように、距離dが「0」である場合にはパルス周波数fが設定値f0となるように設定されている。また、パルス周波数変更情報は、距離dが「0」から大きくなるにしたがってパルス周波数fが設定値f0から下がるように設定されている。さらに、パルス周波数変更情報は、距離dが距離d1以上になるとパルス周波数fが「0」となるように設定されている。言い換えれば、距離dが距離d1以上になると、処置用レーザ光源521の動作を停止する。
【0073】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図10は、実施の形態5に係る制御方法を示すフローチャートである。
本実施の形態5では、
図10に示すように、上述した実施の形態1~4に対して、制御装置56が実行する制御方法が異なる。
【0074】
以下、本実施の形態5に係る制御方法について
図10を参照しつつ説明する。
本実施の形態5に係る制御方法では、
図10に示すように、上述した実施の形態2において説明した制御方法に対して、ステップS2Aの実行タイミングが異なるとともに、ステップS5A,S5Bが追加されている点が異なる。このため、以下では、ステップS5A,S5B,S2Aのみを主に説明する。
【0075】
ステップS5Aは、走査速度Vが第2の閾値を超えると判定された場合(ステップS2F:Yes)に実行される。
具体的に、制御部561は、ステップS5Aにおいて、ガイド光用光源522の動作を制御し、当該ガイド光用光源522から出射されているガイド光の色を緑色に設定する。これによって、術者は、表示装置3に表示された内視鏡画像から、当該ガイド光の色が緑色に設定され、処置用レーザ光を出射可能な状態であることを認識する。
なお、ステップS2Bにおいて、ガイド光用光源522から出射されるガイド光の色は、緑色以外の色(赤色も含む)である。
【0076】
そして、ステップS5Aの後、ステップS2Aが実行される。
制御部561は、開始操作があったと判断した場合(ステップS2A:Yes)には、ステップS2Gに移行する。
一方、制御部561は、開始操作がないと判断した場合(ステップS2A:No)には、ステップS2Cに戻る。
【0077】
ステップS5Bは、距離dが第1の閾値を超えると判定された場合(ステップS2D:No)、または、走査速度Vが第2の閾値以下であると判定された場合(ステップS2F:No)に実行される。
具体的に、制御部561は、ステップS5Bにおいて、ガイド光用光源522の動作を制御し、当該ガイド光用光源522から出射されているガイド光の色を赤色に設定する。これによって、術者は、表示装置3に表示された内視鏡画像から、当該ガイド光の色が赤色に設定され、処置用レーザ光を出射すべきでない状態であることを認識する。
そして、ステップS5Bの後、制御部561は、ステップS2Cに戻る。
【0078】
以上説明した本実施の形態5によれば、上述した実施の形態2と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態5に係る制御部561は、処置用レーザ光の照射条件を満たした場合(ステップS2D:Yes、ステップS2F:Yes)に、ガイド光の色を緑色に設定する(ステップS5A)。
このため、術者は、表示装置3に表示された内視鏡画像から、処置用レーザ光の照射条件を満たしたことを明確に認識し、当該処置用レーザ光のパルス発光を開始させることができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態5では、ステップS5Aにおいて、ガイド光の色を緑色に設定することによって、処置用レーザ光の照射条件を満たしたことを術者に知らせていたが、これに限らない。
例えば、ステップS5Aにおいて、ガイド光を点滅させることによって、処置用レーザ光の照射条件を満たしたことを術者に知らせても構わない。
また、例えば、ステップS5Aにおいて、表示装置3に特定のメッセージ等を表示することによって、処置用レーザ光の照射条件を満たしたことを術者に知らせても構わない。
さらに、例えば、ステップS5Aにおいて、スピーカから音声を出力することによって、処置用レーザ光の照射条件を満たしたことを術者に知らせても構わない。
【0080】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1~5及び変形例4-1,4-2によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1~3,5において、ステップS1G(ステップS2L)の後、所定の時間が経過した後、ステップS1B(ステップS2G)に戻る構成を採用しても構わない。
上述した実施の形態1~5及び変形例4-1,4-2において、尿路結石STを破砕する手技として、術者が光ファイバ51の先端を尿路結石STに当接させるようにしている場合には、距離dは、常時、0になるため、ステップS1C(ステップS2C,S2D,S2H,S2I,S4C)は、不要である。
【符号の説明】
【0081】
1 処置システム
2 内視鏡
3 表示装置
4 フットスイッチ
5 処理装置
21 挿入部
22 撮像装置
51 光ファイバ
52 光源装置
53 ハーフミラー
54 ダイクロイックミラー
55 光検出器
56 制御装置
211 チャンネル
521 処置用レーザ光源
522 ガイド光用光源
561 制御部
562 記憶部
563 入力部
ArO オーバーラップ領域
Ar1,Ar2 照射領域
d,d1 距離
D ファイバ直径
f0 設定値
L 移動距離
ST 尿路結石
ST1 破砕不良部分
V,V1,V2 走査速度
W 直径