(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127543
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】治療光照射ユニット、治療光照射装置および内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230906BHJP
A61B 18/24 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61B1/00 735
A61B1/00 621
A61B1/00 650
A61B1/00 715
A61B18/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009155
(22)【出願日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】63/315177
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 亮
【テーマコード(参考)】
4C026
4C161
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026FF17
4C026FF51
4C161BB02
4C161BB04
4C161CC06
4C161FF35
4C161GG11
4C161HH56
4C161LL02
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR06
4C161RR17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】側方の治療対象を画像内に捉え側方の治療対象に治療光を確実に照射することができ、かつ、前方の治療対象の光治療と両立することができる、治療光照射ユニット、治療光照射装置および内視鏡を提供する。
【解決手段】治療光照射ユニット1は、挿入部12の先端から対象に患部を治療するための治療光Lを含む光を照射する光照射部15を有する内視鏡11に適用される。治療光照射ユニット1は、光照射部15の前方に配置され、少なくとも治療光Lの照射方向を、挿入部12の長手軸に沿う第1方向D1と長手軸に交差する第2方向D2との間で切替える照射方向切替部3と、挿入部12の先端に接続される接続部2と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端から対象に光を照射する光照射部を有する内視鏡に適用され、前記光が、患部を治療するための治療光を含み、
前記光照射部の前方に配置され、少なくとも前記治療光の照射方向を、前記挿入部の長手軸に沿う第1方向と前記長手軸に交差する第2方向との間で切替える照射方向切替部と、
前記挿入部の先端に接続される接続部と、を備える治療光照射ユニット。
【請求項2】
前記照射方向切替部が、前記長手軸に交差する方向の回転軸回りに回転可能に設けられた反射部材を備え、
該反射部材が、前記回転軸回りの回転によって、前記光照射部の前方の位置と前記光照射部の前方から外れた位置との間で移動し、それにより、前記照射方向が前記第2方向と前記第1方向との間で切替わる、請求項1に記載の治療光照射ユニット。
【請求項3】
前記照射方向切替部が、前記反射部材に接続され該反射部材を前記回転軸回りに回転駆動する操作部材をさらに備える、請求項2に記載の治療光照射ユニット。
【請求項4】
前記操作部材が、前記内視鏡のルーメンよりも長いワイヤであり、
該ワイヤの先端が、前記反射部材に連結され、
前記内視鏡のルーメンに挿通された前記ワイヤの基端が、前記ルーメンの基端から突出する請求項3に記載の治療光照射ユニット。
【請求項5】
前記反射部材が、前記光照射部から射出される前記光の波長に応じて、前記照射方向を前記第1方向と前記第2方向との間で切替える、請求項1に記載の治療光照射ユニット。
【請求項6】
前記接続部が、前記挿入部の長手方向の複数の位置に、前記挿入部の先端を位置決めする複数の位置決め部を有する、請求項1に記載の治療光照射ユニット。
【請求項7】
挿入部と、
該挿入部の先端から対象に光を照射し、前記光が、患部を治療するための治療光を含む、光照射部と、
前記光照射部の前方に配置され、少なくとも前記治療光の照射方向を、前記挿入部の長手軸に沿う第1方向と前記長手軸に交差する第2方向との間で切替える照射方向切替部と、を備える治療光照射装置。
【請求項8】
前記照射方向切替部が、前記長手軸に交差する方向の回転軸回りに回転可能に設けられた反射部材を備え、
該反射部材が、前記回転軸回りの回転によって、前記光照射部の前方の位置と前記光照射部の前方から外れた位置との間で移動し、それにより、前記照射方向が前記第2方向と前記第1方向との間で切替わる、請求項7に記載の治療光照射装置。
【請求項9】
前記照射方向切替部が、前記反射部材に接続され該反射部材を前記回転軸回りに回転駆動するワイヤをさらに備える、請求項8に記載の治療光照射装置。
【請求項10】
前記反射部材が、前記光照射部から射出される前記光の波長に応じて、前記照射方向を前記第1方向と前記第2方向との間で切替える、請求項7に記載の治療光照射装置。
【請求項11】
照明光を第1方向に照射する照明光照射部と、
治療光を前記第1方向に照射する治療光照射部と、
前記照明光照射部および前記治療光照射部の前方に配置され、前記照明光および前記治療光の両方の照射方向を前記第1方向とは異なる第2方向に変更する照射方向切替部と、
を挿入部の先端に備える内視鏡。
【請求項12】
前記照射方向切替部が、
前記挿入部の長手軸に交差する方向の回転軸回りに回転可能に設けられた反射部材と、
該反射部材に接続され該反射部材を前記回転軸回りに回転駆動するワイヤと、
前記反射部材の回転角度を検出するセンサと、を備え
前記反射部材が、前記回転軸回りの回転によって、前記光照射部の前方の位置と前記光照射部の前方から外れた位置との間で移動し、それにより、前記照射方向が前記第1方向と前記第2方向との間で切替わる、請求項11に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療光照射ユニット、治療光照射装置および内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光治療には、PDT(Photo-Dynamic-Therapy)およびPIT(Photo-Immuno-Therapy)のように、光感受性の薬剤が蓄積した腫瘍に治療光を照射し治療する技術がある。
内視鏡観察下において体内で光治療を実施する際、患者の拍動等によるブレの影響があり、表示画面上で治療光を照射しやすい位置に治療部位を捉えることが難しい。特に、消化管の内壁の腫瘍等、内視鏡では通常正面視できない治療部位を表示画面の中心に捉えることが難しく、その結果、治療光を確実に治療部位に照射することが難しい。
【0003】
一方、腫瘍は体内の様々な部位に生じ得るので、内視鏡を交換せずに前方および側方の両方の患部に治療光を照射できることが望ましい。そこで、治療光の照射領域を選択することができる光治療装置が提案されていえる(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置は、透光性の第1シース内で遮光性の第2シースを回転または長手方向に移動させることによって、第2シースの窓から射出される治療光の照射位置を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、エッチング処理等によって光ファイバの側面から漏れる均一な拡散光を側方の照明に利用しており、側方への光照射に特化した構成である。したがって、前方および側方の両方の光治療の両立が難しい。
【0006】
本発明は、側方の治療対象を画像内に捉え側方の治療対象に治療光を確実に照射することができ、かつ、前方の治療対象の光治療と両立することができる、治療光照射ユニット、治療光照射装置および内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、挿入部の先端から対象に光を照射する光照射部を有する内視鏡に適用され、前記光が、患部を治療するための治療光を含み、前記光照射部の前方に配置され、少なくとも前記治療光の照射方向を、前記挿入部の長手軸に沿う第1方向と前記長手軸に交差する第2方向との間で切替える照射方向切替部と、前記挿入部の先端に接続される接続部と、を備える治療光照射ユニットである。
【0008】
本発明の他の態様は、挿入部と、該挿入部の先端から対象に光を照射し、前記光が、患部を治療するための治療光を含む、光照射部と、前記光照射部の前方に配置され、少なくとも前記治療光の照射方向を、前記挿入部の長手軸に沿う第1方向と前記長手軸に交差する第2方向との間で切替える照射方向切替部と、を備える治療光照射装置である。
【0009】
本発明の他の態様は、照明光を第1方向に照射する照明光照射部と、治療光を前記第1方向に照射する治療光照射部と、前記照明光照射部および前記治療光照射部の前方に配置され、前記照明光および前記治療光の両方の照射方向を前記第1方向とは異なる第2方向に変更する照射方向切替部とを先端に備える内視鏡である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の第1構成例に係る治療光照射ユニットおよび治療光照射装置の構成図である。
【
図2A】本発明の一実施形態の第2構成例に係る治療光照射ユニットおよび治療光照射装置の構成図である。
【
図2B】本発明の一実施形態の第2構成例に係る治療光照射ユニットおよび治療光照射装置の構成図である。
【
図5A】第2構成例の治療光照射ユニットの変形例の構成図である。
【
図5B】第2構成例の治療光照射ユニットの変形例の構成図である。
【
図6】本発明の一実施形態の第3構成例に係る治療光照射ユニットおよび治療光照射装置の構成図である。
【
図7】
図6の治療光照射ユニットにおける反射部材の分光透過特性を示す図である。
【
図8A】複数の位置決め部をさらに備える治療光照射ユニットの変形例の構成図である。
【
図8B】複数の位置決め部をさらに備える治療光照射ユニットの変形例の構成図である。
【
図9A】治療光照射ユニットを挿入部に固定する固定具を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る治療光照射システムの構成図である。
【
図11】シース型の接続部を有する治療光照射ユニットと、それを備える治療光照射システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る治療光照射ユニット、治療光照射装置および内視鏡について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る治療光照射ユニット1の第1構成例を示している。治療光照射ユニット1は、内視鏡11の長尺の挿入部12の先端に必要に応じて取り付けられるキャップである。治療光照射ユニット1は、ディスポーザブルであってもよい。
治療光照射装置10は、内視鏡11と、治療光照射ユニット1とを備える。
【0012】
内視鏡11は、直視型であり、長尺の挿入部12と、挿入部12の先端部に設けられた照明光学系(光照射部)13および対物光学系14とを有する。また、内視鏡11は、治療光Lを射出する治療光照射部(光照射部)15を有する。治療光照射部15は、例えば、挿入部12のチャネル(ルーメン)12a内に挿入され、先端から治療光Lを射出する光ファイバプローブである。
【0013】
照明光学系13および治療光照射部15は、挿入部12の長手軸に沿う第1方向D1に照明光および治療光Lをそれぞれ射出し、対物光学系14は、被写体から第1方向D1に入射する観察光を受光し第1方向D1の視野Fを観察する。対物光学系14によって観察される視野Fは撮像素子16によって撮像され、視野Fの画像が表示部20(
図10参照。)に表示される。
【0014】
治療光照射ユニット1は、挿入部12の先端に取り付けられる接続部2と、照明光および治療光Lの照射方向を切替える照射方向切替部3とを備える。
接続部2は、少なくとも基端面において開口する筒状の部材である。挿入部12の先端部を接続部2内に基端側から挿入することによって、接続部2が挿入部12の先端部に取り外し可能に取り付けられる。
【0015】
照射方向切替部3は、反射面4aを有する反射部材4を備える。反射部材4は、照明光学系13、対物光学系14および治療光照射部15の前方に配置されている。反射面4aは、挿入部12の先端面と対向し、挿入部12の長手軸に対して傾斜している。反射部材4は、反射面4aにおいて、照明光および治療光Lの各々の全部または略全部を第2方向D2に反射し、第2方向D2に入射する観察光を第1方向D1に反射する。これにより、反射部材4は、照明光および治療光Lの照射方向を第1方向D1から第2方向D2に切替え、対物光学系14の観察方向を第1方向D1から第2方向D2に切替える。第2方向D2は、挿入部12の長手軸に交差する方向である。
【0016】
接続部2の内側と外側との間を照明光、治療光Lおよび観察光が第2方向D2に進むことができるように、接続部2は、全体として透明な材料から形成されるか、または、窓2aを有していてもよい。窓2aは、穴または光学的に透明な材料から形成される。
【0017】
このような治療光照射ユニット1は、治療対象の患部Aが挿入部12の側方に位置する場合、特に、
図1に示されるように患部Aが管腔B内かつ側壁に存在する場合に、挿入部12の先端に取り付けられる。これにより、挿入部12の側方の患部Aに照明光学系13から照明光を照射し、側方の患部Aを対物光学系14によって観察することができる。また、側方の患部Aに治療光照射部15から治療光Lを照射し、側方の患部Aを効果的に治療することができる。このように、側方の治療対象Aを画像内に捉え側方の治療対象Aに治療光Lを確実に照射することができる。
【0018】
また、挿入部12の先端に治療光照射ユニット1を取り付けない状態では、挿入部12の前方の患部Aを観察および治療することができる。したがって、治療光照射ユニット1の着脱によって、側方の治療対象Aの光治療と前方の治療対象Aの光治療とを両立することができる。
【0019】
治療光照射ユニット1が挿入部12の先端に取り付けられた状態において、撮像素子16によって取得される画像内の被写体は鏡像になる。したがって、治療光照射ユニット1が挿入部12の先端に取り付けられているとき、鏡像を実像に補正する鏡像補正モードが選択され実行されてもよい。鏡像補正モードにおいて、実像に補正された画像が表示部20に表示される。術者が、鏡像補正モードを選択可能であってもよい。
【0020】
図2Aおよび
図2Bは、本実施形態に係る治療光照射ユニット1の第2構成例を示している。第2構成例において、反射部材4は、薄い平板部材であり、
図2Aに示される直視用の第1角度と、
図2Bに示される側視用の第2角度と、の間で回転可能である可動式である。
【0021】
第1角度の反射部材4は、光学系13,14および治療光照射部15の前方から外れた位置に配置される。
図2Aにおいて、第1角度の反射部材4は、光学系13の径方向外側において、第1方向D1と平行に配置される。
第2角度の反射部材4は、第1構成例における反射部材4と同様に、光学系13,14および治療光照射部15の前方に配置される。第2角度において、反射面4aは、挿入部12の先端面と対向し、挿入部12の長手軸に対して傾斜する。
【0022】
反射部材4は、一端を回転中心として、第1角度と第2角度との間で回転軸回りに回転可能である。回転軸は、挿入部12の長手軸と直交する方向であって第1方向D1および第2方向D2と交差する方向(参照する図面において、紙面に垂直な方向)に延びる。反射部材4が第1角度から第2角度へ回転することによって、照明方向および観察方向が第1方向D1から第2方向D2に切替えられる。
【0023】
術者等のユーザは、挿入部12を体腔内に挿入するときには、反射部材4を第1角度に配置することによって、挿入部12の前方の視野Fの直視画像を観察しながら目的の患部Aが存在し得る領域まで挿入部12を前進させることができる。また、ユーザは、側方の患部Aを治療するときには、反射部材4を第2角度に配置することによって挿入部12の側方の視野Fの側視画像を観察することができる共に、側方の患部Aが視野の略中心に一致したときに治療光Lを患部Aに照射することができる。
こうして、治療光照射ユニット1が挿入部12の先端に取り付けられた状態で、前方および側方の両方の治療対象Aの観察および治療を両立することができる。
【0024】
反射部材4の第1角度と第2角度との間の回転は、機械的に駆動される。
図3Aおよび
図3Bは、反射部材4を回転させる機構の一例を示している。この例において、照射方向切替部3は、反射部材4に接続されたワイヤ(操作部材)5をさらに有する。
ワイヤ5は、チャネル12aよりも長く、チャネル12a内を経由して挿入部12の先端側から基端側まで配置され、ワイヤ5の先端は反射部材4に接続されている。
【0025】
治療光照射ユニット1を挿入部12の先端に取り付ける際には、ワイヤ5を挿入部12の基端から突出するまでチャネル12a内に挿通し、図示せぬ操作部または手動によって牽引可能な長さまでチャネル12a外にワイヤ5の基端部を露出させる。ここで、治療光照射ユニット1を挿入部12の先端に取り付けた状態では、図示されるように、チャネル12aと窓2aとが径方向において反対側の位置となるように、治療光照射ユニット1は、接続部2によって挿入部12に対して周方向に位置決めされる。また、接続部2の内部に配置されるワイヤ5の先端部は、窓2aに向けて湾曲する形状を有し、チャネル12aの長手方向に沿う直線形状に弾性的に変形可能である。こうして、ワイヤ5が基端側に牽引されることによって、反射部材4が第1角度から第2角度へ回転する。ワイヤ5が先端側に押圧されことによって、反射部材4が第2角度から第1角度へ回転する。
【0026】
図4Aおよび
図4Bは、反射部材4を回転させる機構の他の例を示している。この例において、反射部材4は、ばね6によって第2角度に付勢され、ワイヤ5の牽引によって第2角度から第1角度へ回転する。
操作部材は、ワイヤ5に限らず、回転軸周りに回転させるための力を反射部材4に作用させることができる任意の部材であってもよい。
【0027】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、反射部材4の回転に代えて、反射部材4の透過率/反射率の変化によって、照射方向を第1方向D1と第2方向D2との間で切替えてもよい。
図5Aは、反射部材4の反射率が低い(または透過率が高い)状態を示し、
図5Bは、反射部材4の反射率が高い(または透過率が低い)状態を示している。
【0028】
この場合、電気、光または熱に応答して透過率/反射率が変化する反射部材4が使用される。例えば、反射部材4として、エレクトクロミック結晶を含有する光学板を使用し、光の透過と反射とを電気的に切替えてもよい。
反射部材4の材料として光または熱によって透過率が変化する物質を使用し、レーザ光を反射部材4に照射することによって反射部材4の反射率を高め、その後に側方の患部Aに治療光Lを照射してもよい。
【0029】
図6は、本実施形態に係る治療光照射ユニット1の第3構成例を示している。第3構成例において、反射部材4は、光の一部を第1方向D1に透過させ、光の他部を第2方向D2に反射する。
例えば、反射部材4は、照明光および治療光Lの照射方向を波長に応じて第1方向D1と第2方向D2とに切替える。一例において、
図7に示されるように、反射部材4は、青色帯域の光を透過させ、治療光Lを含み青色帯域よりも長波長の光を反射するダイクロイックミラーである。この場合、撮像素子16の青の画素から直視画像が生成され、撮像素子16の緑および赤の画素から側視画像が生成されてもよい。
【0030】
内視鏡11が、赤、緑および青の3色の光を照明光として順番に被写体に照射する面順次方式で画像を取得する場合、赤および緑の光の照射と同期して側視画像を生成し、青の光の照射と同期して直視画像を生成してもよい。
側視画像および直視画像は、表示部20に並列に表示されてもよく、切替え表示されてもよい。
術者等のユーザは、挿入部12を体内に挿入するときには直視画像を観察し、治療のときには側視画像を観察することができる。
【0031】
反射部材4は、ハーフミラーであってもよい。この場合、照明光および治療光Lの各々の半分が反射部材4を第1方向D1に透過し、照明光および治療光Lの各々の残りの半分が反射部材4によって第2方向D2に反射される。
【0032】
上記の各構成例において、接続部2内での挿入部12の先端の位置を第1方向D1に変更可能であってもよい。例えば、接続部2の内周面に段構造が形成され、挿入部12の先端の位置が多段階で変更可能であってもよい。挿入部12の先端の位置を変更することによって、挿入部12の先端から反射部材4までの第1方向D1の距離を変更し、観察位置と治療光Lの照射位置とを第1方向D1に変更することができる。
【0033】
図8Aおよび
図8Bに示されるように、接続部2の内周面に径方向内方に突出する複数の突起(位置決め部)7が設けられていてもよい。複数の突起7は、第1方向D1において複数の位置に設けられている。
挿入部12は、挿入部12の先端面が突起7に突き当たることによって位置決めされる。また、突起7は、弾性を有し、挿入部12を押し込むと、突起7が倒れて挿入部12をさらに深い位置へ挿入することができる。
【0034】
上記の各構成例において、
図9Aに示されるように、治療光照射ユニット1は、接続部2を、挿入部12の長手軸回りの任意の回転角度で挿入部12に固定する固定具8をさらに備えていてもよい。
【0035】
例えば、固定具8は、接続部2の基端部に固定され、挿入部12の先端部の外周面に配置されるリング状の部材である。
図9Bに示されるように、固定具8の内周面には、周方向に並ぶ複数の溝が形成され、挿入部12の先端部の外周面には、固定具8の複数の溝に嵌る複数の突起が形成されている。
【0036】
ユーザは、固定具8および接続部2を挿入部12に対して一体的に回転させ、溝と突起が嵌合する任意の位置で固定具8および接続部2を挿入部12に対して回転方向に位置決めすることができる。
体外において挿入部12に対して接続部2を所望の回転角度で固定し、その後に挿入部12を管腔B内に挿入することによって、管腔B内において光治療を行う患部Aの位置を容易に変更することができる。
【0037】
図10は、治療光照射ユニット1を備える治療光照射システム100の一構成例を示している。
治療光照射システム100は、治療光照射ユニット1と、内視鏡11と、表示部20と、プロセッサ30とを備える。挿入部12の基端は、プロセッサ30に接続されている。プロセッサ30内には、照明光学系13に照明光を供給する照明光源31と、治療光照射部15に治療光Lを供給する治療光源32と、撮像素子16によって取得された画像を処理する画像処理部33とが設けられている。鏡像の補正は、画像処理部33によって行われてもよい。
【0038】
治療光照射システム100は、照明光および治療光Lの照射方向を検出する照射方向検出部34をさらに備えていてもよい。
照射方向が第2方向D2であることが検出されたとき、モード切替部35によって鏡像補正モードに自動的に切替えられてもよい。あるいは、検出された照射方向を示す表示20aが表示部20に表示され、ユーザが、表示20aに基づいて鏡像補正モードを実行させてもよい。
【0039】
照射方向検出部34は、治療光照射ユニット1が挿入部12の先端に取り付けられているか否かを検出してもよい。第1構成例の反射部材4の場合、治療光照射ユニット1の有無に基づいて、照射方向が第1方向D1であるか、または第2方向D2であるかを検出することができる。
第2構成例の可動式の反射部材4を備える場合、照射方向検出部34は、反射部材4の回転角度(第1角度または第2角度)を検出するセンサを有していてもよい。センサは、ワイヤ5の移動量に基づいて反射部材4の回転を検出してもよい。
【0040】
上記の各構成例において、接続部2が挿入部12の先端に取り付けられるキャップであることとしたが、これに代えて、
図11に示されるように、接続部2が、挿入部12を長手方向に覆う管状のシースであってもよい。接続部2を、挿入部12に対して長手軸回りに回転させることによって、照射位置および観察位置を長手軸回りの周方向に変更することができる。
接続部2の回転角度に応じて、画像を表示部20上に3次元表示してもよい。これにより、管腔Bの全周を観察し、管腔Bの全周に治療光Lを照射することができる。
【0041】
上記各構成例において、治療光照射ユニット1は、内視鏡11の一部として提供されてもよい。すなわち、内視鏡11は、挿入部12の先端に、照明光学系13、治療光照射部15および照射方向切替部3を備えていてもよい。照射方向切替部3は、挿入部12の先端に取り外し可能に取り付けられてもよく、挿入部12に組み込まれていてもよい。
【0042】
上述した例では、本発明をPITに適用した場合について説明したが、次のような応用も可能である。すなわち、PITに限らず、観察光と治療光とを用いる医療機器、たとえばPITと同様に蛍光等の光の強度の変動をモニタしながら光治療を行うようなPDTに本発明は転用可能である。また、本発明は、専ら治療光の照射のみを行う光治療プローブにも適用でき、この場合には、本発明の治療光照射ユニット、治療光照射装置および治療光照射システムは、内視鏡とは別のデバイスとして使用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 治療光照射ユニット
2 接続部
3 照射方向切替部
4 反射部材
5 ワイヤ(操作部材)
7 突起(位置決め部)
10 治療光照射装置
11 内視鏡
12 挿入部
12a チャネル(ルーメン)
13 照明光学系(照明光照射部、光照射部)
15 治療光照射部(光照射部)
20 表示部
34 照射方向検出部(センサ)