(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127547
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】生分解性電気化学デバイス及びその方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/26 20060101AFI20230906BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20230906BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230906BHJP
H01G 9/20 20060101ALI20230906BHJP
H01M 8/1018 20160101ALI20230906BHJP
H01M 8/1051 20160101ALI20230906BHJP
H01M 8/1081 20160101ALI20230906BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20230906BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20230906BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230906BHJP
H01M 12/06 20060101ALN20230906BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230906BHJP
【FI】
H01M10/26
B32B7/025
H01M12/08 K
H01G9/20 105
H01G9/20 121
H01M8/1018
H01M8/1051
H01M8/1081
C25B13/04 301
C25B13/08 301
C25B9/23
H01M12/06 G
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023450
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】17/652,935
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン、チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、マグワイア
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、ジー.、ズワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ナンシン、フー
【テーマコード(参考)】
4F100
4K021
5H028
5H032
5H126
【Fターム(参考)】
4F100AA23
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4F100AB31
4F100AH08B
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4F100AR00C
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5H126HH04
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5H126HH10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生分解性電気化学デバイス、その電解質、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アノード及びカソードを含む電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスはまた、アノードとカソードとの間に配置された押出電解質組成物を含む。電気化学デバイスのカソード及び/又はアノードは、積層ジオメトリ又は横方向x-y平面ジオメトリで配置され得る。電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含み得る。電解質組成物は、横方向不連続パターンでアノードとカソードとの間に配置される。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法もまた開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスであって、
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された押出電解質組成物と、を備える、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記カソード及び/又は前記アノードは、積層ジオメトリで配置されている、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記カソード及び/又は前記アノードは、横方向X-Y平面ジオメトリで配置されている、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記ゲルポリマー電解質は、コポリマーのヒドロゲルと、コポリマーの前記ヒドロゲル中に分散された塩と、を含む、請求項4に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記電解質組成物は、架橋剤を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記電解質組成物は、光開始剤を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムを含む、請求項7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記電解質組成物は、横方向不連続パターンで前記アノードと前記カソードとの間に配置される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
電気化学デバイスであって、
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された非スクリーン印刷電解質組成物と、を備える、電気化学デバイス。
【請求項11】
押出電解質組成物を含む組成物。
【請求項12】
前記押出電解質組成物は、電気化学デバイスに組み込まれており、前記電気化学デバイスは、電池を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
電気化学デバイスの電解質層を作製する方法であって、
電気化学デバイス用基板を調製することであって、前記基板は、電極を有する、調製することと、
電解質組成物を押出ディスペンサから前記基板上に分配して、前記電極と接触させることと、
前記電解質組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲルと、コポリマーの前記ヒドロゲル中に分散された塩と、を含むゲルポリマー電解質を含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項15】
前記電解質組成物は、前記電解質組成物の粘度を調節するための希釈剤を含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項16】
前記電解質組成物は、光開始剤を含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項17】
電解質組成物を分配する前に前記電解質組成物を混合することを更に含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項18】
前記電解質組成物は、特定のパターンに従って分配される、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項19】
前記電解質組成物を分配後に周囲条件下で融合させるために一時停止することを更に含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【請求項20】
硬化させることは、前記電解質組成物に紫外線放射を当てることを含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例又は実装態様は、生分解性電気化学デバイス、その電解質、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で生産されている電池の数は、携帯可能な遠隔電源に対する増大する必要性の結果として、絶えず増加している。特に、多くの新しい技術は、組み込み電子機器に電力を供給するために電池を必要とする。例えば、携帯型電子機器及びウェアラブル電子機器、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)デバイス、患者ヘルスケアモニタリング、構造モニタリング、環境モニタリング、スマートパッケージングなどの組み込み電子機器は、電力を電池に依存する。従来の電池は、一部がリサイクルされ得るが、現在、環境に優しい又は生分解性である市販の電池はない。したがって、従来の電池の製造及び使用の増加は、適切に処分又はリサイクルされない場合、環境中の毒性廃棄物及び有害廃棄物が相応に増加する。上記に鑑みて、改良された生分解性電池を、特に、廃棄される前に限られた時間に使い捨て電池を利用する用途のために開発する必要がある。
【0003】
更に、可撓性、低コスト、中性能又は低性能の電池に対する需要を満たすために、全印刷電池(all-printed battery)が開発されている。これらの全印刷電池のいくつかは、水溶液に浸された紙又はフリース材料の代わりにGPE(gel polymer electrolyte、ゲルポリマー電解質)を使用する。GPE層の利点には、製造の容易さ、改善された構造的完全性、可撓性、及びより一貫した性能が挙げられる。硬化性GPE材料をスクリーン印刷する現在の方法は、不均一な厚さ、不適切なパイル高さ、及びフィルム中の気泡などの問題が課題である。不均一な厚さは、全印刷電池構造において座屈につながるおそれがある。電池内の不適切なパイル高さは、短絡につながるおそれがあり、フィルム内の気泡は、電池構造内の不十分なフィルム均一性及び不規則な性能をもたらすおそれがある。
【0004】
良好な忠実度(気泡がなく、適切な厚さ、及び均一なパイル高さ)を有する生分解性ゲルポリマー電解質層を作製するためのプロセス、並びにそのようなプロセスを使用して作製される電池が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範な概略ではなく、本教示の主要又は重要な要素を特定することも、本開示の範囲を明示することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形式で提示するだけである。
【0006】
電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスは、アノード及びカソードを含む。電気化学デバイスはまた、アノードとカソードとの間に配置された押出電解質組成物を含む。電気化学デバイスの実装態様は、カソード及び/又はアノードが積層ジオメトリで配置される場合を含み得る。カソード及び/又はアノードは、横方向x-y平面ジオメトリで配置され得る。電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含み得る。ゲルポリマー電解質は、コポリマーのヒドロゲルと、コポリマーのヒドロゲル中に分散された塩と、を含み得る。電解質組成物は、架橋剤を含み得る。電解質組成物は、光開始剤を含み得る。光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウム(lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzophoosphinate)を含み得る。電解質組成物は、横方向不連続パターンでアノードとカソードとの間に配置される。
【0007】
別の電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスは、アノード及びカソードを含む。電気化学デバイスは、アノードとカソードとの間に配置された非スクリーン印刷電解質組成物を含み得る。
【0008】
電気化学デバイスの電解質層を作製する方法が開示される。また、電気化学デバイスの電解質層を作製する方法は、電気化学デバイス用基板を調製することを含み、基板は、電極を有する。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法はまた、電解質組成物を押出ディスペンサから基板上に分配して、電極と接触させることを含む。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法はまた、電解質組成物を硬化させることを含む。
【0009】
電気化学デバイスの電解質層を作製する方法の実装態様は、電解質組成物がゲルポリマー電解質を含む場合を含んでもよく、ゲルポリマー電解質は、コポリマーのヒドロゲルと、コポリマーのヒドロゲル中に分散された塩と、を更に含み得る。電解質組成物は、電解質組成物の粘度を調整するために希釈剤を含み得る。電解質組成物は、約1,000cp~約100,000cpの粘度を有し得る。電解質組成物は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムなどの光開始剤を含み得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法は、電解質組成物を分配する前に電解質組成物を混合することを含み得る。電解質組成物は、特定のパターンに従って分配され得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法は、分配後に電解質組成物を周囲条件下で融合させるために一時停止することを含み得る。硬化は、電解質組成物に紫外線放射を当てることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を例解する。本開示の実施形態におけるこれら及び/又は他の態様及び利点は、添付の図面と併せて以下の様々な実施形態の説明から明らかになり、より容易に理解されるであろう。
【
図1】本開示による、積層構成の例示的な電気化学デバイスの分解図である。
【
図2】本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を分配することができる押出装置の概略図である。
【
図3】本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を設けるためのプロセスの概略図である。
【
図4】本開示による、電気化学デバイス用の押出ゲルポリマー電解質層の写真である。
【
図5】本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法の図である。
【
図6】本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法の図である。
【
図7】本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法の図である。
【0011】
図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺は維持されるものではなく、本教示の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な典型的な態様の以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、その用途、又は使用を限定することを意図するものではない。
【0013】
全体にわたって使用されるように、範囲は、その範囲内にある各値及び全ての値を説明するために、省略として使用される。範囲内の任意の値は、範囲の終点として選択され得る。更に、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と引用された参考文献との矛盾の場合には、本開示が制御する。
【0014】
別段の指定がない限り、本明細書及び本明細書の他の箇所で表される全ての百分率及び量は、重量百分率を指すと理解されるべきである。与えられた量は、材料の活性重量に基づく。
【0015】
加えて、全ての数値は、示された値の「約」又は「およそ」であり、当業者によって期待されるであろう実験誤差及び変動を考慮する。本明細書に開示される全ての数値及び範囲は、「約」がそれとともに使用されるかどうかに関わらず、近似値及び範囲であることを理解されたい。本明細書で使用するとき、「約」という用語は、数字とともに、その数字の±0.01%(境界値を含む)、±0.1%(境界値を含む)、±0.5%(境界値を含む)、その数字の±1%(境界値を含む)、その数字の±2%(境界値を含む)、その数字の±3%(境界値を含む)、その数字の±5%(境界値を含む)、その数字の±10%(境界値を含む)、又はその数字の±15%(境界値を含む)であり得る値を指すことも理解されたい。数値範囲が本明細書に開示されるとき、その範囲内に入る任意の数値もまた具体的に開示されることが更に理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用するとき、「又は」という用語は、包括的な操作者であり、文脈上別段の明確な指示がない限り、「及び/又は」という用語と同等である。「に基づく」という用語は、排他的ではなく、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、記載されていない追加の要因に基づくことを可能にする。本明細書において、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」の記載は、A、B、若しくはC、A、B、若しくはCの複数の例、又はA/B、A/C、B/C、A/B/B/ B/B/C、A/B/Cなどの組み合わせを含む例を含む。加えて、本明細書全体を通して、「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含む。「in」の意味は、「in」及び「on」を含む。
【0017】
ここで、本教示の例示の実施例を詳細に参照し、この実施例を添付図面に示す。可能な限り、同じ参照番号が、同じ、類似、又は同様の部分を指すように図面全体にわたって使用される。
【0018】
生分解性電気化学デバイスが本明細書に開示される。本明細書で使用される場合、「生分解性」又は「生分解性材料」という用語は、生物、特に埋立地内の微生物によって妥当な時間内に分解されることが可能な、又は分解されるように構成された材料、構成要素、物質、デバイスなどを指し得る。材料、構成要素、物質、デバイスなどは、水、二酸化炭素及びメタンのような自然発生ガス、バイオマス、又はそれらの組み合わせに分解され得る。本明細書で使用される場合、「生分解性電気化学デバイス」又は「生分解性デバイス」という表現は、それぞれ、その少なくとも1つ以上の構成要素が生分解性である電気化学デバイス又はデバイスを指し得る。場合によっては、生分解性電気化学デバイス又は生分解性デバイスの構成要素の大部分又は相当数は、生分解性である。他の例では、生分解性電気化学デバイス又は生分解性デバイスのポリマー成分の全てが生分解性である。例えば、電気化学デバイスのポリマー及び/又は他の有機系構成要素は、生分解性であるが、金属及び/又は金属酸化物を含む本明細書に開示される電気化学デバイスの無機材料は、生分解性でなくてもよい。電気化学デバイスの全てのポリマー及び/又は有機ベースの構成要素が生分解性である場合、電気化学デバイス全体が生分解性であると考えられることが一般に受け入れられていることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「堆肥化可能」という用語は、堆肥にすることができるか、又はそうでなければ持続可能な若しくは環境に優しい方法で処分することができる品目を指し得る。堆肥化可能な材料は、生分解性材料の下位カテゴリであると考えてもよく、堆肥化可能な材料を分解するために、追加の特定の環境温度又は条件が必要な場合がある。堆肥化可能という用語は生分解性と同義ではないが、生分解性材料を処理する又は分解するのに必要な条件が、堆肥化可能材料を処理するのに必要な条件と同様であると理解される場合には、それらは互換的に使用され得る。本明細書で使用される場合、「電気化学デバイス」という用語又は表現は、電気を化学反応に変換する、かつ/又はその逆に変換するデバイスを指し得る。例示的な電気化学デバイスは、電池、色素増感太陽電池、電気化学センサ、エレクトロクロミックガラス、燃料電池、電解槽などであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「環境に優しい電気化学デバイス」又は「環境に優しいデバイス」という用語又は表現は、それぞれ、一般に生態系又は環境に対して最小限の毒性を示すか、低減された毒性を示すか、又は毒性を示さない電気化学デバイス又はデバイスを指し得る。少なくとも1つの実施形態では、本明細書に開示される電気化学デバイス及び/又はその構成要素は、環境に優しい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「フィルム」又は「バリア層」という用語又は表現は、基板、接続部、封入容器、バリア、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な電気化学デバイス構成要素又は部品において使用され得る、薄い、部分的に若しくは実質的にプラスチック及び/又はポリマー材料を指し得る。本明細書に記載されるフィルムは、フィルムのそれぞれの組成物の固有の物理的特性又は寸法に応じて、剛性又は可撓性であり得る。少なくとも1つの実施形態では、これらのフィルム又はバリア層は、環境に優しいか又は生分解性であり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「封入容器」、「バリア」、又は「水蒸気バリア」という用語又は表現は、水分、水、又は他の蒸発可能な材料が電気化学デバイスのバリアを介して出入りするのを防止するために使用される、部分的に封止された、完全に封止された、又は他の方法で利用される材料を指すことがある。少なくとも1つの実施形態では、これらの封入容器は、環境に優しいか又は生分解性であり得る。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、本明細書に開示される電気化学デバイスは、アノードと、カソード(すなわち、集電体及び/又は活性層)と、1つ以上の電解質組成物(例えば、生分解性固体水性電解質組成物)と、を含み得る。別の実施形態では、生分解性電気化学デバイスは、1つ以上の基板、1つ以上のシール、1つ以上のパッケージ、1つ以上のパウチ、1つ以上の封入容器、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。
【0023】
本明細書に開示される電気化学デバイスは、可撓性であり得る。本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、破断及び/又は亀裂を生じることなく所定の曲率半径の周りに曲げることができる材料、デバイス、又はその構成要素を指し得る。本明細書に開示される生分解性電気化学デバイス及び/又はその構成要素は、破損又は亀裂を生じることなく、約30cm以下、約20cm以下、約10cm以下、約5cm以下の曲率半径で曲げられてもよい。
【0024】
押出電解質組成物の例示的な実施例としては、本明細書に記載の組成物を挙げることができ、電池又は生分解性電池などの電気化学デバイスに含めることができる。本明細書に記載される押出電解質組成物を含むデバイス又は装置の代替例としては、炭素捕捉又は二酸化炭素還元デバイス、ガルバニ電池、又は電解槽を挙げ得るが、これらに限定されない。電解槽は、電気分解プロセスにおいて水を水素及び酸素に分解するために電気を利用することができるシステムであるが、電気を使用して化学プロセスを実行する他のシステムは、本明細書に記載されるような押出電解質組成物を組み込んでもよい。
【0025】
図1は、本開示による、積層構成の例示的な電気化学デバイスの分解図を示す。
図1に示すように、電気化学デバイス100は、第1の基板102と、第1の基板102に隣接して又はその上に配置された第1の集電体104と、第1の集電体104に隣接して又はその上に配置されたアノード活性層106と、アノード106に隣接して又はその上に配置された電解質層108と、電解質組成物108に隣接して又はその上に配置されたカソード活性層110と、カソード活性層110に隣接して又はその上に配置された第2の集電体112と、第2の集電体112に隣接して又はその上に配置された第2の基板114と、を含み得る。第1の集電体104及びアノード活性層106は、本明細書ではまとめて電気化学デバイス100のアノードと称し得ることを理解されたい。第2の集電体112及びカソード活性層110は、本明細書ではまとめて電気化学デバイス100のカソードと称し得ることを更に理解されたい。
図1に示すように、電気化学デバイス100のアノード及びカソードは、アノード及びカソードが互いの上又は下に配置されるように、積層構成又は積層ジオメトリで配置され得る。
【0026】
特定の実施例では、電気化学デバイス100は、電気化学デバイス100の第1の基板102と第2の基板114との間に、集電体104、106、アノード活性層106、カソード活性層110、及び電解質組成物108を気密封止することが可能な、又は気密封止するように構成された、ここには示されていない1つ以上のシールを含み得る。別の実施例では、電気化学デバイス100は、
図1に示すように、シールがなくてもよい、又は実質的になくてもよい。例えば、基板102、114は、電気化学デバイス100を封止するために互いに溶融又は結合され得る。更に他の実施例では、集電体104、106の各々は、電気化学デバイス100の本体の外側に延在し、それによって接続性を提供することができるそれぞれのタブを含み得る。いくつかの実施例では、電気化学デバイス100は、並列構成又は共平面構成で配置され得る。更に、電気化学デバイス100のアノード及びカソードは、アノード及びカソードが同じX-Y平面に沿って配置されるように、同一平面上にあり得る。
【0027】
少なくとも1つの実施例では、電気化学デバイス100の基板のうちの任意の1つ以上は、生分解性基板であり得るか、又はそれを含み得るが、これに限定されない。例示的な生分解性基板は、以下に限定されるわけではないが、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(polylactic-co-glycolic acid、PLGA)、絹フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrate、PHB)、ライスペーパー、セルロース、又はそれらの組み合わせ若しくは複合材料のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0028】
それぞれの生分解性電気化学デバイス100の生分解性基板は、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。本明細書で使用される場合、「安定な」又は「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露されたときに寸法変化に抵抗し、構造的完全性を維持する基板の能力を指し得る。例えば、生分解性基板は、約50℃~約150℃の温度への曝露後に、約20%未満、約15%未満、若しくは約10%未満の寸法変化で構造的完全性を維持することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。一実施例では、生分解性基板の各々は、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、又は約110℃から約120℃、約130℃、約140℃、又は約150℃の温度で安定(例えば、20%未満の寸法変化)であり得る。別の実施例では、生分解性基板の各々は、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、又は少なくとも145℃の温度で安定であり得る。少なくとも1つの実施形態では、生分解性基板は、約50℃~約150℃の温度で約5分~約60分以上の時間で安定であり得る。例えば、生分解性基板は、前述の温度で、約5分、約10分、約20分、又は約30分から約40分、約45分、約50分、約60分、又はそれ以上の時間で安定であり得る。
【0029】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性基板は、追加の接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、かつ/又は恒久的に熱封止可能である。例えば、基板102、114の各々の生分解性基板は、それぞれのシールを使用することなく互いに溶接可能かつ/又は結合可能であり得る。互いに溶接可能及び/又は結合可能であり得る例示的な生分解性基板は、ポリ乳酸(PLA)などの熱可塑性プラスチック、ポリラクチドポリブチレンサクシネート(polylactide polybutylene succinate、PBS)などの結晶化度を高めるために成核剤で修飾されたポリラクチド、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutylene adipate terephthalate、PBAT)、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)とのブレンド、PHB系ブレンドなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「結合可能」、「溶接可能」、及び/又は「恒久的に熱封止可能」という用語又は表現は、材料(例えば、基板)が、加熱又は溶融を介して2つの表面を互いにヒートシールするか、又は2つの表面を互いに恒久的に接合する能力を指し得る。
【0030】
例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106は、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、炭素(C)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金、亜鉛合金など、若しくはそれらの組み合わせ及び/若しくは合金のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的なアノード活性層又はそれらの材料は、など、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、アノード活性層は、H2ガス発生を調節又は制御するのに十分な量の酸化亜鉛(ZnO)を含み得る。
【0031】
少なくとも1つの実施例では、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106は、アノードペーストから調製又は製造され得る。例えば、アノード活性層は、亜鉛アノードペーストから調製され得る。アノードペーストは、アトリッターミルで調製され得る。少なくとも1つの実施形態では、アノードペーストの調製を容易にするために、ステンレス鋼ショットをアトリッターミル内に配置してもよい。アノードペーストは、1つ以上の金属若しくは金属合金、1つ以上の有機溶媒、1つ以上のスチレン-ブタジエンゴムバインダ、又はそれらの組み合わせを含み得る。例示的な実施形態では、アノードペーストは、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴムバインダ、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、Znダスト、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。例示的な有機溶媒は、当該技術分野において既知であり、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、任意の1つ以上の生分解性バインダは、スチレン-ブタジエンゴムバインダの代わりに、又はスチレン-ブタジエンゴムバインダと組み合わせて利用され得る。
【0032】
例示的な生分解性電気化学デバイス100のカソード活性層110は、鉄(Fe)、酸化鉄(VI)、酸化水銀(HgO)、酸化マンガン(IV)(MnO2)、炭素(C)、炭素含有カソード、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、三酸化モリブデン(MoO3)、酸化銀(Ag2O)、銅(Cu)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化ニッケル(NiO)、ヨウ化銅(Cu2I2)、塩化銅(CuCl)など、若しくはそれらの組み合わせ及び/若しくは合金のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的な実施例では、カソード活性層110は、酸化マンガン(IV)を含み得る。炭素及び/又は炭素含有カソード活性層は、亜鉛空気電池などの水性金属空気電池において利用してもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施例では、カソード活性層110は、カソード活性層110の電子伝導性を少なくとも部分的に向上させることができるか、又は向上させるように構成された1つ以上の添加剤を含み得る。例示的な添加剤は、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなどの炭素粒子など、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0034】
少なくとも1つの実施例では、例示的な生分解性電気化学デバイス100のカソード活性層110は、カソードペーストから調製又は製造され得る。例えば、カソード活性層110は、酸化マンガン(IV)カソードペーストから調製され得る。カソードペーストは、アトリッターミルで調製され得る。少なくとも1つの実施例では、カソードペーストの調製を容易にするために、ステンレス鋼ショットをアトリッターミル内に配置することができる。カソードペーストは、1つ以上の金属若しくは金属合金、1つ以上の有機溶媒(例えば、エチレングリコール)、1つ以上のスチレン-ブタジエンゴムバインダ、又はそれらの組み合わせを含み得る。例示的な実施例では、カソードペーストは、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴムバインダ、酸化マンガン(IV)(MnO2)、グラファイト、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。例示的な有機溶媒は、当該技術分野において既知であり、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施例では、1つ以上の有機溶媒は、水などの水性溶媒と置き換えてもよいか、又は水性溶媒と組み合わせて使用してもよい。例えば、水を酸化マンガン(IV)と組み合わせて利用してもよい。
【0035】
アノードペースト及び/又はカソードペーストは、約100cP~約1E6cPの粘度を有し得る。例えば、アノードペースト及び/又はカソードペーストは、約100cP以上、約200cP以上、約500cP以上、約1,000cP以上、約1,500cP以上、約2,000cP以上、約10,000cP以上、約20,000cP以上、約50,000cP以上、約1E5cP以上、約1.5E5cP以上、約2E5cP以上、約3E5cP以上、約4E5cP以上、約5E5cP以上、約6E5cP以上、約7E5cP以上、約8E5cP以上、又は約9E5cP以上の粘度を有し得る。別の実施例では、アノードペースト及び/又はカソードペーストは、約200cP以下、約500cP以下、約1,000cP以下、約1,500cP以下、約2,000cP以下、約10,000cP以下、約20,000cP以下、約50,000cP以下、約1E5cP以下、約1.5E5cP以下、約2E5cP以下、約3E5cP以下、約4E5cP以下、約5E5cP以下、約6E5cP以下、約7E5cP以下、約8E5cP以下、約9E5cP以下、又は約1E6cP以下の粘度を有し得る。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、アノード及びカソードの各々、又はそれらの活性層106、110は、独立して、生分解性バインダを含み得る。生分解性バインダの機能は、それぞれの層の各々の粒子を一緒に固定し、下の基板への接着を提供することであり、それぞれの層は、アノード集電体104、カソード集電体112、アノード活性層106、カソード活性層110、又はそれらの組み合わせである。例示的な生分解性バインダは、キトサン、ポリ乳酸-co-グリコール酸(polylactic-co-glycolic acid、PLGA)、ゼラチン、キサンタンガム、酢酸酪酸セルロース(cellulose acetate butyrate、CAB)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物に関して本明細書に開示される生分解性ポリマーのうちの任意の1つ以上はまた、アノード、カソード、それらの構成要素、又はそれらの任意の組み合わせの生分解性バインダとして利用され得る。本明細書に更に記載されるように、1つ以上の生分解性ポリマーは、架橋され得る。したがって、アノード、カソード、及び/又はそれらの構成要素に利用される生分解性バインダは、電解質組成物に関して本明細書に開示される架橋生分解性バインダを含み得る。
【0037】
例示的な生分解性電気化学デバイス100の電解質層108は、電解質組成物であり得るか、又は電解質組成物を含み得る。電解質組成物は、生分解性ポリマー材料を利用してもよい。電解質組成物は、固体の水性電解質組成物であり得る。固体水性電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、並びにヒドロゲル中及び/若しくはヒドロゲル全体に分散された塩であり得るか、又はそれらを含み得る。コポリマーは、ポリマー中央ブロック(center block、CB)と結合した少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含み得る。例えば、コポリマーは、PCL-CB-PCLなどのポリマー中央ブロックと結合した少なくとも2つのPCL鎖を含むブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであり得る。別の実施例では、コポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリエチレンイミン(polyethylene imine、PEI)、若しくはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ以上を含むブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであってもよく、ポリマー中央ブロックと結合している。
【0038】
コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量(例えば、溶媒、ポリマー、及び塩の総重量)に基づいて、約5重量%以上~90重量%以下の量でヒドロゲル中に存在し得る。例えば、コポリマーは、ヒドロゲルの総重量に基づいて、約5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上の量で存在し得る。別の実施例では、コポリマーは、ヒドロゲルの総重量に基づいて、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下の量で存在し得る。好ましい実施形態では、コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、約5重量%~約60重量%、約5重量%~約50重量%、約20重量%~約40重量%、又は約30重量%の量でヒドロゲル中に存在し得る。更に別の好ましい実施形態では、コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、30重量%超~60重量%の量でヒドロゲル中に存在し得る。
【0039】
特定の実施例では、電気化学デバイスは、本開示に詳述される1つ以上の方法に従って分配されるような、押出電解質組成物又は層を含む。本明細書で定義されるように、押出電解質層は、気泡がなく、本明細書で説明されるような適切な厚さを有し、均一なパイル高さの押出電解質層であるということに関して、良好な忠実度を有する電解質層を提供する。均一なパイル高さは、1つ以上の寸法にわたって一貫した厚さを有する電解質層を指す。そのような結果として生じる物理的特性は、他の方法によって堆積される電解質層、例えば、本開示による電気化学デバイスにおいてスクリーン印刷された電解質層と比較して有利である。本開示による電気化学デバイスの特定の実施例はまた、非スクリーン印刷法である手順によって作製され、これは、そのような電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を堆積させるスクリーン印刷法が、不均一な厚さ、不適切なパイル高さ、及びゲルポリマー電解質フィルム内の気泡など、手順に関連する問題を有することが知られているからである。不均一な厚さは、全印刷電池構造において座屈につながるおそれがある。電池内の不適切なパイル高さは、短絡につながるおそれがあり、フィルム内の気泡は、電池構造内の不十分なフィルム均一性をもたらすおそれがある。押出、型成形などの、例示的な非スクリーン印刷電解質組成物層を作製する、方法及び本開示の方法に従って堆積されたゲルポリマー電解質層は、不均一な厚さ、不適切なパイル高さ、及びゲルポリマー電解質フィルム層に関連する気泡を有するゲルポリマー電解質層を作製しない。
【0040】
コポリマーは、気泡を含まない又は実質的に含まない連続フィルム又は層を設けるのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。コポリマーはまた、約1,000cP~約100,000cPの粘度を提供するのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。例えば、コポリマーは、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、又は約20,000cPから約30,000cP、約40,000cP、約50,000cP、約75,000cP、約90,000cP、又は約100,000cPの粘度を提供するのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。特定の実施例では、粘度は、一部のアノード電池ペースト及びカソード電池ペーストで既知であるように、1,000,000cPもの高さであり得る。
【0041】
コポリマーのポリマー中央ブロックは、生分解性ポリマーであってもよく、それによって固体水性電解質組成物の生分解性を改善又は増加させる。ポリマー中央ブロックの生分解性ポリマーは、好ましくは天然に存在する。ポリマー中央ブロックは、ε-カプロラクトンとの反応に利用可能な少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む、生分解性ポリマーなどのポリマーであり得るか、そのポリマーを含み得るか、又はそのポリマーから誘導され得る。本明細書に更に記載されるように、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含むポリマーは、ε-カプロラクトンと反応してコポリマーを形成し得る。ポリマー中央ブロック(CB)を形成するために利用され得る少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む例示的なポリマーは、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ヒドロキシル含有多糖、生分解性ポリエステル、ヒドロキシ脂肪酸(例えば、ヒマシ油)など、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的なヒドロキシル含有多糖は、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キチン、グアーガム、キサンタンガム、寒天、プルラン、アミロース、アルギン酸、デキストランなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的な生分解性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリラクチド-co-グリコール酸、ポリイタコン酸、ポリブチレンサクシネートなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、ポリマーの中央ブロックは、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシル含有多糖、生分解性ポリエステル、又はヒドロキシ脂肪酸のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0042】
少なくとも1つの実施例では、コポリマーのポリマー中央ブロックは、生分解性ポリマーでなくてもよい。例えば、コポリマーのポリマー中央ブロックは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ヒドロキシ末端ポリエステル、ヒドロキシ末端ポリブタジエンなどのヒドロキシル末端ポリオレフィンなど、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0043】
ポリマー中央ブロックに結合した少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含むコポリマーは、グラフトコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。コポリマーがグラフトコポリマーであるか又はブロックコポリマーであるかは、ポリマー中央ブロックの少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基の数及び/又は配置によって少なくとも部分的に決定され得る。例えば、ε-カプロラクトンを、ポリマー中央ブロック鎖の長さに沿ってモノマー上にヒドロキシル基を有するポリマー中央ブロックと反応させることで、グラフトコポリマーが形成される。別の実施例では、ε-カプロラクトンを、ポリマー中央ブロックのそれぞれの末端にヒドロキシル基の各々を有するポリマー中央ブロックと反応させることで、ブロックコポリマーを形成する。例示的なブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、スターブロックコポリマー、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0044】
上述のように、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲルと、ヒドロゲル中に分散された塩と、を含む固体水性電解質組成物であり得る。ヒドロゲルの塩は、当技術分野で公知の任意の好適なイオン性塩であり得るか、又はそれを含み得る。例示的なイオン性塩は、有機系塩、無機系塩、室温イオン液体、深共晶溶媒系塩など、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、塩は、亜鉛/酸化マンガン(IV)(Zn/MnO2)電気化学において使用可能な塩であるか、又はそれを含む。例示的な塩は、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化第二鉄(FeCl3)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)など、若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、電解質組成物の塩は、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化亜鉛(ZnCl2)、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物であり得るか、又はそれらを含み得る。別の実施形態では、塩は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ金属塩、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0045】
塩は、イオン伝導性を提供することができるか、提供するように構成されるか、又は提供するのに十分な量で存在し得る。例えば、塩は、ヒドロゲル中に、少なくとも0.1M、より好ましくは少なくとも0.5M、更により好ましくは少なくとも2M、更により好ましくは少なくとも4Mの量又は濃度で存在し得る。塩は、10M以下、より好ましくは6M以下の濃度でヒドロゲル中に存在し得る。別の実施例では、塩は、約3M~約10M、約4M~約10M、約5M~約9M、又は約6M~約8Mの量でヒドロゲル中に存在し得る。例示的な実装態様では、塩は、塩化アンモニウム及び塩化亜鉛を含み、塩化アンモニウムは、約2.5M~約3M、約2.8M~約2.9M、又は約2.89Mの量で存在し、塩化亜鉛は、約0.5M~1.5M、約0.8M~約1.2M、又は約0.9Mの量で存在する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。1つ以上の添加剤は、生分解性若しくは環境に優しいナノ材料であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。生分解性ナノ材料は、電解質層若しくはその電解質組成物の可撓性を犠牲にすることなく、電解質層若しくはその電解質組成物の構造強度を提供かつ/又は改善することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。添加剤の例示的な生分解性ナノ材料は、多糖系ナノ材料、無機ナノ材料など、又はそれらの組み合わせであり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的な多糖系ナノ材料は、セルロースナノ結晶、キチンナノ結晶、キトサンナノ結晶、デンプンナノ結晶など、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。例示的な無機ナノ材料は、酸化ケイ素(例えば、ヒュームドシリカ)、酸化アルミニウム、層状ケイ酸塩若しくは石灰、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物のうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0047】
1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて少なくとも0.1重量%の量で存在し得る。例えば、1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%の量で存在し得る。1つ以上の添加剤はまた、ヒドロゲルの総重量に基づいて、40重量%以下の量で存在し得る。例えば、1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下の量で存在し得る。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、水性溶媒を含み得る。例えば、電解質組成物は、水を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、共溶媒を含み得る。例えば、電解質組成物は、水及び追加の溶媒を含み得る。例示的な共溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。共溶媒は、電解質組成物の水性溶媒の総重量又は体積に対して、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超から約60%超、約70%超、約80%超、約85%超、若しくは約90%超の量の水を含み得る。
【0049】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル及びヒドロゲル中に分散された塩、溶媒(例えば、水若しくは水及び共溶媒)、1つ以上の光開始剤、任意選択の1つ以上の添加剤、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、溶媒、1つ以上の添加剤、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物を含む。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、及び溶媒(例えば、水若しくは水及び共溶媒)からなるか、又は本質的になる。別の実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、溶媒、及び1つ以上の添加剤からなるか、又は本質的になる。水又は水と共溶媒との組み合わせであり得る溶媒は、ヒドロゲルの残部を提供してもよい。好適な電解質組成物並びにそれを作製するためのプロセス及び手順は、国際出願PCT/US2020/046932号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
先に論じたように、例示的な生分解性電気化学デバイス100の電解質層108は、固体水性電解質組成物であり得るか、又はそれを含み得る。固体水性電解質組成物は、市販の印刷電池又は商業的に有用な印刷電池に必要な十分な機械的特性及び電気化学的特性を有し得る。例えば、固体水性電解質組成物は、約0.10メガパスカル(MPa)超、約0.15MPa超、若しくは約0.20MPa超のヤング率又は貯蔵弾性率を有してもよく、それによって、応力下での破損を防止するのに十分な可撓性を維持しながら、固体水性電解質組成物に十分な強度を提供する。固体水性電解質組成物は、約100MPa以下、約80MPa以下、約60MPa以下、又はそれ未満のヤング率を有し得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「降伏強度」という用語又は表現は、材料が永久的に変形し始める前に材料が経験又は受けることができる最大応力を指し得る。固体水性電解質組成物は、約5kPa以上の降伏強度を有し得る。例えば、固体水性電解質組成物は、約5kPa以上、約8kPa以上、約10kPa以上、約12kPa以上、約15kPa以上、又は約20kPa以上の降伏強度を有し得る。
【0052】
固体水性電解質組成物は、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106及びカソード活性層110の両方に対して電気化学的に安定であり得る。例えば、固体水性電解質組成物は、長期間にわたって安定した開回路電圧を維持してもよく、それによって、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106及びカソード活性層110の両方に対する電気化学的安定性を実証する。少なくとも1つの実施形態では、固体水性電解質組成物は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも1年、又はそれ以上の間、電極層と接触して電気化学的に安定であり得る。
【0053】
本明細書に開示される固体水性電解質組成物は、電気化学セル、電池、及び/又は本明細書に開示される生分解性電気化学デバイス100などの任意の電気化学デバイスにおいて利用され得る。好ましい実施形態では、固体水性電解質組成物は、Znアノード活性層及びMnO2カソード活性層を含む電池において利用されてもよい。
【0054】
例示的な生分解性電気化学デバイス100の集電体104、112は、電気を受け取り、伝導し、送達することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。例示的な集電体104、112は、銀マイクロ粒子及び銀ナノ粒子などの銀、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、還元型酸化グラフェン(reduced graphene oxide、RGO)などの炭素ナノ粒子など、若しくはこれらの任意の組み合わせであり得る、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
図2は、本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を分配することができる押出装置の概略図を示す。これは、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を分配するのに好適な押出装置200の例示的な概略図であるが、本開示によるゲルポリマー電解質層を分配する他の手段を使用してもよい。押出装置200は、通信線204を介して押出装置200の残りの部分に指示を通信することができるコンピュータ処理ユニット202を含む。押出装置200は、分配ヘッド212に接続され、ゲルポリマー電解質などの材料を分配ヘッド212に送達するポンプ208への空気又は材料のいずれかの流れを調整するために使用される圧力又は流量のコントローラ206を含む。分配ヘッド212は、ノズル214を有し、ノズル214を通して材料が基板220に供給される。材料の流量、分配された材料のパターニング、又はコンピュータ処理ユニット202から受信される他の命令を含む命令に応じて、x軸モータ218、y軸モータ216、及びz軸モータ210は、それぞれ、x軸移動226、y軸移動228、及びz軸移動224に沿って、基板及び/又は分配ヘッド212を平行移動させる。この移動及びコンピュータ処理ユニット202から受信した命令は、基板220上に堆積又は分配されたゲルポリマー電解質222の所望のパターン及び量を提供する。
【0056】
本開示の例示的な実施例は、電気化学デバイスを製造するための方法、特に、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を設けるための方法を提供してもよい。
図3は、本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を設けるためのプロセスの概略図を示す。電気化学デバイス300用のゲルポリマー電解質層を設けるためのプロセスは、電気化学デバイスの製造の順序に応じて取り付けられたアノード又はカソードを含み得る集電体304を有する基板302を設けることを含む。分配ノズル306は、集電体304の表面上に所定のパターンでゲルポリマー電解質308の流れを設ける。パターンは、実施例において連続的であり得る、又は非連続的であり得る。堆積されたゲルポリマー電解質の層310は、あるパターンで分配され、集電体304の表面にわたってゲルポリマー電解質312のパターニング又は堆積の方向に塗布され得る。堆積されたゲルポリマー電解質308は、融合工程314の間に定着して平坦にされる。次いで、融合したゲルポリマー電解質の層316が集電体304の表面上に存在するが、集電体304の一部は、電気化学デバイスの内部構成要素と、外部構成要素、接続部、又は他の電気化学デバイスとの間の接続又は連続性のために露出されたままである。硬化プロセス工程318中に、融合したゲルポリマー電解質の層316は、硬化ゲルポリマー電解質組成物層320に変換される。硬化は、紫外線又は他の放射曝露を含む多くの手段によって達成し得る。あるいは、硬化は、架橋剤又は架橋分子と組み合わせて、赤外線放射、熱曝露、又は高温への曝露によって達成され得る。堆積されたゲルポリマー電解質の層310は、横方向不連続パターンで集電体304の表面にわたってゲルポリマー電解質のパターン又は堆積312で分配され得る。電解質層の横方向不連続パターンとは、電気化学デバイスの構造と一致する横方向平面内で必ずしも互いに接触しない特徴又は物理的接触点を有するパターンを指す。この横方向不連続パターンは、電解質配置の位置、したがって活性を隔離又は方向付ける可能性を提供し、連続的に製造される複数の電気化学デバイス構造を設ける製造方法を可能にする。パターンはまた、ゲルポリマー電解質が説明されるような様式で製造又は堆積されるとき、電気化学デバイスごとに可変様式で堆積され得る。任意選択的な架橋剤としては、PEG-ジアクリレート及びEOTMPTA(ethoxylated trimethylolpropane triacrylate、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)などの水溶性アクリレートを挙げてもよい。
【0057】
ゲルポリマー電解質の例示的な配合は、以下の組成を含み得る。表1に示すように、ゲルポリマー電解質組成物を水中で調製した。
【0058】
【0059】
GPEポリマーは、以下に示す一般構造を有するグラフトポリマーである。
【0060】
【0061】
GPEポリマーの例示的な実施例は、以下の構造に示されるようなPCL側部ペンダント基又は側鎖を有するPVA主ポリマー鎖である。
【0062】
【0063】
図4は、本開示による、電気化学デバイス用の押出ゲルポリマー電解質層の写真である。写真400は、
図2の押出装置と同様のシステムを利用するプロセスを示す。示されるように、本開示の方法、手順、及び材料に従って、基板408上にゲルポリマー電解質406を堆積させるプロセス中の、分配ノズル404を有する分配ヘッド402が示されている。
図4に示されるようなゲル押出の例示的な実施例は、Hyrel Hydra 16A 3Dプリンタを使用して実行されてもよく、この3Dプリンタは、種々のプリントヘッドを操作して、フィラメント、ペーストなどであるが、これらに限定されない、異なるタイプの材料を分配し得る。例えば、材料を分配するために10mLの使い捨てシリンジを使用するSDS-10プリントヘッドが、プリンタのツールヨーク上のスロット内に配置される。次に、UV硬化性GPE(ゲルポリマー電解質)を利用する、表1に記載の配合の水溶液を、直径0.8mmのルアーロックチップを備えた10mLシリンジに充填し、そのシリンジをSDS-10プリントヘッドに搭載する。より大きな体積を使用するシリンジ、アセンブリ、若しくはプリントヘッド、一体化された加熱プリントヘッド、又はUV架橋プリントヘッドもまた、同様の方法における使用のために利用可能である。印刷される単純な固体充填物は、3Dオブジェクトを作成し、STLファイルフォーマットにエクスポートするために、OpenScadソフトウェアを使用して構築されるが、当技術分野で知られている任意のそのようなプログラムが使用され得る。
図4に示す物体の寸法は、38mm×40mmの内壁、及び0.5mmの高さである。使用された追加のパラメータは、ほとんどデフォルトパラメータを有するSlic3rスライシングソフトウェアを使用するgコードの生成であった。
図4の実施例では、印刷速度を10mm/sに、層高さを0.5mmに、充填率を100%に設定した。
【0064】
本開示による1つ以上の例示的な方法は、本明細書に開示されるような生分解性電気化学デバイスの一部又は全体を作製するために使用され得る。本開示による方法は、生分解性基板を設けることを含み得る。本方法はまた、生分解性基板に隣接して又はその上に電極及び/又は電極組成物を堆積させることを含み得る。電極を堆積させることは、電極の集電体を堆積させて乾燥させることと、集電体に隣接して又はその上に活性層(すなわち、アノード材料又はカソード材料)を堆積させて乾燥させることと、を含み得る。本方法はまた、電極及び/又は電極組成物を乾燥させることを含み得る。電極組成物は、熱的に乾燥され得る(例えば、加熱)。本方法はまた、生分解性放射硬化性電解質組成物を電極組成物上に又はそれに隣接して堆積させることを含み得る。本方法は、生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させることを更に含み得る。生分解性放射硬化性電解質組成物は、電極組成物を乾燥させる前又は乾燥に続いて放射硬化させてもよい。生分解性基板は、任意選択の熱乾燥と熱的に適合性であり得る。例えば、生分解性基板は、熱乾燥時に寸法安定性(例えば、座屈及び/又は湾曲がない)であり得る。本方法は、第2の電極及び/又は電極組成物を生分解性放射硬化性電解質組成物上に又はそれに隣接して堆積させることを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、第1及び第2の電極組成物の各々は、金属箔組成物である。第1の電極の金属箔組成物は、第2の電極の金属箔組成物と異なってもよい。
【0065】
少なくとも1つの実施例では、電気化学デバイス、その構成要素の全て、又はその構成要素の実質的に全ては、印刷プロセスによって製造される。印刷プロセスは、堆積、スタンピング、噴霧、スパッタリング、ジェッティング、コーティング、層化などを含み得る。例えば、1つ以上の集電体、1つ以上の電極組成物、生分解性放射硬化性電解質組成物、又はそれらの組み合わせは、印刷プロセスによって堆積され得る。例示的な印刷プロセスは、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷(例えば、スタンプ)、グラビア印刷、オフセット印刷、エアブラシ、エアロゾル印刷、植字、ロールツーロール法など、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、電気化学デバイスの構成要素は、スクリーン印刷によって印刷される。
【0066】
少なくとも1つの実施例では、生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させることは、電解質組成物を放射エネルギーに曝露することを含む。放射エネルギーは、紫外光であり得る。生分解性放射硬化性電解質組成物を放射エネルギーに曝露することにより、生分解性放射硬化性電解質組成物を少なくとも部分的に架橋し、それによってヒドロゲルを形成し得る。生分解性放射硬化性電解質組成物は、室温で放射硬化され得る。少なくとも1つの実施形態では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、不活性雰囲気で硬化される。例えば、生分解性放射硬化性電解質組成物は、窒素、アルゴンなどの下で硬化させてもよい。別の実施形態では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、非不活性雰囲気中で硬化され得る。
【0067】
少なくとも1つの実施例では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、約5ms~約100msの時間で放射硬化され得る。例えば、生分解性放射硬化性電解質組成物は、約5ms、約10ms、約15ms、約20ms、約30ms、約40ms、又は約50msから約60ms、約70ms、約80ms、約85ms、約90ms、約95ms、又は約100msの時間で放射硬化され得る。生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させるのに十分な時間は、UV光の出力によって少なくとも部分的に決定され得る。
【0068】
少なくとも1つの実施例では、本方法はまた、生分解性接着剤などの接着剤を堆積させ、それによって例示的な生分解性電気化学デバイスの1つ以上のシールを設けることを含み得る。例えば、本方法は、接着剤の層を堆積させて、電気化学デバイスの基板又は基板の一部(例えば、タブの周囲の領域)を互いに結合することを含み得る。いくつかの実施例では、接着剤は、ホットメルト接着剤であり得る。別の実施例では、電気化学デバイスは、いかなる接着剤も含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。例えば、生分解性基板は、追加の接着剤を使用することなく溶接可能かつ/又はヒートシール可能であり得る。
【0069】
少なくとも1つの実施例では、生分解性基板は、連続ウェブであり得るか、又は連続ウェブによって支持され得る。本明細書で使用するとき、「ウェブ」という用語は、コンベヤベルトなどの移動支持面を指し得る。少なくとも1つの実施例では、複数の電気化学デバイスは、連続ウェブ上に独立した又は連結された要素又は構成要素として同時に印刷される。例えば、複数の電気化学デバイスのそれぞれの構成要素は、並列プロセスにおいてアレイとして連続ウェブ上に独立した又は連結された構成要素として同時に印刷され得る。本明細書で使用される場合、「連結された要素」又は「連結された構成要素」という用語又は表現は、それぞれ、互いに物理的に接触している、重なり合っている、又は別様に接触している電気化学デバイスの要素又は構成要素を指し得る。例示的な連結された要素は、集電体層に隣接して又はその上に配置された活性層(例えば、カソード活性層又はアノード活性層)、集電体層及び銅テープタブ、若しくは活性カソード/アノード層上の電解質層であり得るか、又はそれらを含み得る。
【0070】
例示的な生分解性電気化学デバイスの少なくとも1つの実施例では、その固体水性電解質、及びそれを合成して製造するための方法が利用可能であり、集電体、カソード/アノード材料、バインダ、接着剤、及び電解質を含む様々な材料の層は、高い忠実度及び精度で印刷される必要がある。更に、水性電解質内の水分の保持は、良好なイオン伝導性のための可溶化塩の維持による電池性能にとって重要であり、これらのような印刷された生分解性又は堆肥化可能な電池は、ポリ乳酸(PLA)フィルムであり得る生分解性基板を通した蒸発による水分損失に起因して寿命が短くなるという問題がある。そのような電気化学デバイスは、生分解性バリア層を有する生分解性ポリマー複合フィルム封入パウチを有し得る。例示的な生分解性封入材料は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、絹フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ライスペーパー、セルロース、又はそれらの組み合わせ若しくは複合体のうちの1つ以上であり得る、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。
【0071】
少なくとも1つの実施例では、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に印刷された、架橋される前に放射硬化性である架橋生分解性ポリマー材料を含む電解質組成物と、を含む可撓性生分解性電気化学デバイスは、水性電解質材料内に存在する水分が蒸発するのを防止するために、電気化学デバイスの外側部分の周りに封入容器、フィルム、又はパウチを形成する生分解性の水分バリア若しくは水蒸気バリア又はバリア層を有し得る。そのような実施例では、電気化学デバイス全体が生分解性であるので、デバイスは、封入パウチの改善された水蒸気バリア特性又は水分バリア層特性に起因して延長された耐用年数を有し得、また、生分解性であるか、かつ/又はその耐用年数が終わると生分解性であり得る。生分解性水蒸気バリア又は封入容器の機能とは、電気化学デバイス内の水性電解質組成物からの水の蒸発を妨げる水分バリア層を設け、したがって、電気化学デバイスの耐用年数を延ばすことである。本明細書に記載される水蒸気バリア又は水分バリア層に関して、電気化学デバイスの特定の実施例は、かなりの量の水又は水分を有し得るが、他の溶媒又は蒸発可能な材料もまた、本開示の水蒸気バリア内に封入された電気化学デバイスの長期の許容可能な動作に寄与し得ることに留意されたい。
【0072】
それぞれの生分解性電気化学デバイスの生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。本明細書で使用される場合、「安定な」又は「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露されたときに寸法変化に抵抗し、構造的完全性を維持する基板の能力を指し得る。例えば、生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度への曝露後に約20%未満、約15%未満、若しくは約10%未満の寸法変化で構造的完全性を維持することが可能であり得るか、又は維持するように構成され得る。一実施例では、生分解性水蒸気バリアの各々は、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、又は約110℃から約120℃、約130℃、約140℃、又は約150℃の温度で安定(例えば、20%未満の寸法変化)であり得る。別の実施例では、生分解性水蒸気バリアの各々は、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、又は少なくとも145℃の温度で安定であり得る。少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度で、約5分~約60分、又はそれ以上の時間で安定であり得る。例えば、生分解性水蒸気バリアは、前述の温度で、約5分、約10分、約20分、又は約30分から約40分、約45分、約50分、約60分、又はそれ以上の時間で安定であり得る。
【0073】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリア材料は、追加の接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、かつ/又は恒久的に熱封止可能である。例えば、電気化学デバイス封入容器用の本明細書に記載される生分解性水蒸気バリアは、それぞれのシールを使用せずに互いに溶接可能かつ/又は結合可能であり得る。互いに溶接可能かつ/又は結合可能であり得る例示的な生分解性水蒸気バリア材料は、ポリ乳酸(PLA)、結晶化度を高めるために成核剤で修飾されたポリラクチド、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)とのブレンド、PHBベースのブレンドなど、若しくはそれらの組み合わせなどの熱可塑性物質であり得るか、又はそれらを含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「結合可能」、「溶接可能」、及び/又は「恒久的に熱封止可能」という用語又は表現は、材料(例えば、基板)が、加熱又は溶融を介して2つの表面を互いにヒートシールするか、又は2つの表面を互いに恒久的に接合する能力を指し得る。
【0074】
いくつかの実施例では、生分解性封入容器、パウチ、又は水蒸気バリアは、アルミニウムメタライズドポリ乳酸フィルムなどのメタライズド生分解性ポリ乳酸(PLA)フィルムから作製され得る。メタライゼーションをもたらす金属表面層は、アルミニウムであり得る。特定の実施例では、メタライゼーション層は、アルミニウム、他の好適な金属又は合金、セラミック、粘土、無機-有機バイオポリマーのハイブリッド材料、及びそれらの組み合わせを含み得る。代替実施例は、金属の複数の層、多層フィルムの内側層上の金属、外側層、又は両方を有し得る。PLAフィルムは、封入パウチの物理的特性を改善するために二軸延伸され得る。更に他の実施例は、フィルムに組み込まれた添加剤を有してもよく、向上した水分バリア特性を提供する。電気化学デバイスのための生分解性封入容器、パウチ、又は水蒸気バリアは、単一層を有し得るか、又は代替実施例では1つ以上の材料の組み合わせによる複数の層を有し得る。単層フィルム又はバリアは、約20マイクロメートル~約100マイクロメートル、約40マイクロメートル~約80マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約75マイクロメートルの全厚を有し得る。水蒸気バリアのメタライズド層は、PLAなどのベースフィルム層の上に約0.5nm~約100nm、約5nm~約50nm、又は約5nm~約25nmの厚さを有し得る。
【0075】
特定の実施例では、水蒸気バリア特性を有することが知られている他の材料を使用してもよい。これらの材料は、生分解性かつ/又は堆肥化可能な形式に適合しなければならず、蜜蝋、可塑剤、及び代替の生分解性ポリマー複合フィルムなどの材料を含む。水蒸気バリアが電気化学デバイスの基板の一部ではない代替デバイスでは、より広い範囲の温度耐性を有する生分解性材料、ポリマー、又は複合材料と比較して、より高い温度安定性及び耐性を有する水蒸気バリアを使用してもよい。生分解性封入容器又は水分バリア特性を有する水蒸気バリアを有する電気化学デバイスの実施例は、そのようなバリア、層、又は封入容器を有さない電気化学デバイスと比較して、低減された水蒸気透過率(water vapor transmission rate、WVTR)を示し得る。
【0076】
いくつかの実施例では、電気化学デバイスは、電池又は電気化学デバイスが、封入容器内に、又は改善された水蒸気バリア特性を有する上述のような水蒸気バリア内に完全に収容されるように配置されてもよく、カソード及びアノードが並列又は横方向X-Y平面ジオメトリになるように配向又は配置され得る。代替的なデバイスでは、電気化学デバイスは、電池又は電気化学デバイスが、改善された水蒸気バリア特性を有する上述のような封入容器内に収容されるように配置されてもよく、
図1に示すように、カソード及びアノードが積層ジオメトリになるように配向又は配置され得る。
【0077】
本開示の実施例は、改善された水分バリア特性又は水蒸気バリア特性を有する電気化学デバイスを製造、作製、又は別様に封入するための方法を提供し得る。本方法は、第1のメタライズドPLAフィルムの非メタライズド側が第2のメタライズドPLAフィルムの非メタライズド側に面するように、4つの縁部を有する第1のメタライズドPLAフィルム及び4つの縁部を有する第2のメタライズドPLAフィルムを配向することを含み得る。第1及び第2のメタライズドPLAフィルムの1つ以上の縁部は、一緒に封止され得る。生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスは、第1のメタライズドPLAフィルムと第2のメタライズドPLAフィルムとの間に配置されてもよく、続いて、電気化学デバイスの1つ以上の電極が4つの縁部のうちの少なくとも1つを通して露出されるように、第1のメタライズドPLAフィルムの縁部及び第2のメタライズドPLAフィルムの縁部を一緒に封止する。
【0078】
方法は、代替的に、非メタライズド側が電気化学デバイスに面するように、4つの縁部を有する第1のメタライズドPLAフィルムを、電気化学デバイスの上側に配向する工程を含み得る。第2のメタライズドPLAフィルムは、非メタライズド側が電気化学デバイスに面するように、電気化学デバイスの底部側に配向される。1つ以上の電極が4つの縁部のうちの少なくとも1つを通して露出されるように、第1のメタライズドPLAフィルムの4つの縁部及び第2のメタライズドPLAフィルムの4つの縁部の全てが一緒に封止され得る。表面コーティング及び/又はポリマー添加剤と組み合わせた生分解性アルミナイズドポリマーバリア層からこのようにして製造された封入容器又は水蒸気バリアは、生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスからの水蒸気損失を低減又は防止し得る。このようなデバイスは、電解質溶媒が経時的に蒸発するのを防止することによって、生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスの耐用年数を著しく延ばし得る。
【0079】
図5は、本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500は、電気化学デバイス用の基板を調製し、基板は、電極を含む、最初の工程502を含む。次に、電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500は、電解質組成物を押出ディスペンサから基板上に分配して電極と接触させること504と、電解質組成物を硬化させること506と、を含む。電解質組成物に応じて、硬化は、電解質組成物に紫外線放射を当てることと、電解質組成物を高温にさらすことと、別の硬化方法の使用、又はそれらの組み合わせと、を含み得る。例示的な実施例では、電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含み、コポリマーのヒドロゲルと、コポリマーのヒドロゲル中に分散された塩と、を更に含み得る。電解質組成物は、代替的に、電解質組成物の粘度を調整するために希釈剤を含み得る。電解質組成物に使用される希釈剤の例示的な例としては、水、又は本明細書に記載される他の希釈剤を挙げてもよい。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500において使用される電解質組成物の粘度は、約1,000cP~約100,000cPであり得る。電解質組成物の他の例示的な実施例は、光開始剤を含んでもよく、いくつかの実施例では、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムを含み得る。電解質組成物は、バインダポリマー及び希釈剤の第1の構成部分を有する第1の部分と、光開始剤及び希釈剤の第2の構成部分を有する第2の部分と、を含むことができる。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500において使用される電解質組成物の特定の実施例は、架橋剤を含んでもよく、したがって、電解質組成物は、バインダポリマー及び希釈剤の第1の構成部分を有する第1の部分と、架橋剤及び希釈剤の第2の構成部分を有する第2の部分と、を含み得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500は、電解質組成物を分配する前に、いくつかの実施例ではスタティックミキサを使用して、電解質組成物を混合する工程を含み得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500は、特定のパターンに従って電解質組成物を分配することを含み得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法500は、分配後に周囲条件下で電解質組成物を融合させるために一時停止することを含み得る。
【0080】
図6は、本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法600は、電気化学デバイス用基板を調製し、基板は、電極を有する、工程602で始まり、バインダポリマーを有する第1の部分及び光開始剤を有する第2の部分を含む生分解性電解質組成物を混合する工程604が続く。電解質組成物は、本明細書で前述した電解質組成物のうちのいずれかを含み得る。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法600はまた、生分解性電解質組成物を、スタティックミキサを有する押出ディスペンサから基板上に分配して電極と接触させる工程606と、生分解性電解質組成物に紫外線放射を当てる工程608と、を含む。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法600において使用される生分解性電解質組成物は、生分解性ポリマーバインダ及び水性成分を含み得る。
【0081】
図7は、本開示による、電気化学デバイスの電解質層を作製するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を作製する方法700は、電気化学デバイス用の基板を調製し、基板は、電極を有する、工程702と、続いて、横方向不連続パターンに従って、電解質組成物を押出ディスペンサから基板上に分配してかつ電極と接触させる工程704と、最後に電解質組成物を硬化させる工程706と、を含む。電解質層の横方向不連続パターンとは、電気化学デバイスの構造と一致する横方向平面内で必ずしも互いに接触しない特徴又は物理的接触点を有するパターンを指す。この横方向不連続パターンは、電解質配置の位置、したがって活性を隔離又は方向付ける可能性を提供し、連続的に製造される複数の電気化学デバイス構造を設ける製造方法を可能にする。
【0082】
本教示は、1つ以上の実装態様に対して示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、示された実施例に対して変更及び/又は修正が行われ得る。例えば、プロセスが一連の行為又は事象として説明されているが、本教示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されないことが理解され得る。一部の行為は、異なる順序で、及び/又は本明細書に記載されているものとは別の他の行為若しくは事象と同時に発生する可能性がある。また、全てのプロセス段階が、本教示の1つ以上の態様又は実施形態に従う方法論を実装するために必要とされ得るわけではない。構造的物体及び/若しくは処理段階が追加され得るか、又は既存の構造的物体及び/若しくは処理段階が除去若しくは修正され得ることが理解され得る。更に、本明細書に示される行為のうちの1つ以上は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行され得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するように使用される。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、2つの材料に対して使用される「上」という用語、他方「上」の一方は、材料間の少なくとも一部の接触を意味し、一方、「の上」は、材料が、場合によっては、接触が可能であるが必要とされないように、1つ以上の追加の介在材料に近接していることを意味する。「上(on)」又は「の上(over)」のいずれも、本明細書で使用される場合にいかなる指向性も暗示しない。「共形」という用語は、下にある材料の角度が共形材料によって保持されるコーティング材料を記述する。「約」という用語は、変更が、示された実施形態に対してプロセス又は構造の不適合とならない限り、列挙される値が少し変更され得ることを示す。「結合する」、「結合される」、「接続する」、「接続」、「接続される」、「と接続して」、及び「接続している」という用語は、「と直接接続する」又は「1つ以上の中間要素又は部材を介して接続する」ことを指す。最後に、「例示の」又は「例示的な」という用語は、説明が理想的であることを意味するのではなく一例として使用されることを示す。本教示の他の実施形態は、本明細書及び本明細書での本開示の慣行を考慮して当業者に明らかであり得る。本明細書及び実施例は、例示としてのみみなされることが意図され、本教示の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。