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特開2023-127551生分解性電気化学デバイス及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127551
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】生分解性電気化学デバイス及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230906BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230906BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0565
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023025900
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】17/652,936
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】506175792
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン、チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、マグワイア
(72)【発明者】
【氏名】ナンシン、フー
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス、ラフォルグ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、ブラック
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028BB04
5H028BB15
5H028CC11
5H028FF09
5H029AJ14
5H029AK02
5H029AL12
5H029AM16
5H029CJ03
5H029CJ11
5H029HJ12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な忠実度を有する生分解性ゲルポリマー電解質層を有する電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された成形電解質組成物と、を含み得る、電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスの実装形態は、カソード及び/又はアノードが積層ジオメトリで配置される場合を含んでもよい。電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含んでもよく、このゲルポリマー電解質は、コポリマーのヒドロゲル及びコポリマーのヒドロゲル中に分散された塩を含むことができる。代替的に、電解質組成物は、架橋剤又は光開始剤を含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法であって、電気化学デバイス用の電極を有する基材を調製することと、電解質層用の基材上にキャビティを形成するためのガスケットを調製することと、基材上に電解質組成物を堆積させることと、を含む、方法も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスであって、
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された成形電解質組成物と、を備える、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記カソード及び/又は前記アノードが、積層ジオメトリで配置される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記カソード及び/又は前記アノードが、横方向のX-Y平面ジオメトリで配置される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記電解質組成物が、ゲルポリマー電解質を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記ゲルポリマー電解質が、コポリマーを含むヒドロゲル及びコポリマーの前記ヒドロゲル中に分散された塩を含む、請求項4に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記電解質組成物が、架橋剤を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記電解質組成物が、光開始剤を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記光開始剤が、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムを含む、請求項7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記電解質組成物が、横方向に不連続なパターンで前記アノードと前記カソードとの間に配置される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記電解質組成物が、生分解性電解質組成物を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
組成物であって、成形電解質組成物を含む、組成物。
【請求項12】
前記成形電解質組成物が、電気化学デバイスに組み込まれ、前記電気化学デバイスが、電池を備える、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
電気化学デバイスの電解質層を生成する方法であって、
電気化学デバイス用の基材を調製することであって、前記基材が、電極を有する、調製することと、
前記電解質層用の前記基材上にキャビティを形成するためのガスケットを調製することと、
前記キャビティが、前記ガスケットの上面まで充填されるように、前記電極と接触して前記基材上に電解質組成物を堆積させることと、
前記ガスケットの上面及び前記堆積させた電解質組成物の上面上に剥離層を適用することと、
前記剥離層の上面に均一な圧力を加えることと、
前記電解質組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記電解質組成物を堆積させる前に、前記ガスケットの1つ以上の内部部分及び前記基材の上面に剥離剤を適用することを更に含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項15】
前記剥離層の前記上面に加えられた前記均一な圧力を除去することと、
前記ガスケットの前記上面及び前記電解質組成物の前記上面から前記剥離層を除去することと、
前記基材から前記ガスケットを除去することと、を更に含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項16】
剥離層を適用することが、
前記剥離層を、前記堆積させた電解質組成物の前記上面の第1の縁部に接触させることと、
前記堆積させた電解質組成物の前記上面の前記第1の縁部において前記剥離層の位置を一定に保持しながら、前記堆積させた電解質組成物の前記上面の内部部分に前記剥離層を接触させることと、
前記剥離層を、前記堆積させた電解質組成物の前記上面の第2の縁部に接触させることと、を更に含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項17】
前記電解質組成物を硬化させることが、前記電解質組成物を紫外線に供することを含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項18】
前記電解質組成物が、コポリマーを含むヒドロゲル及びコポリマーの前記ヒドロゲル中に分散された塩を含む、ゲルポリマー電解質を含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項19】
前記剥離層の上面に均一な圧力を加えるために、1つ以上の透明板が使用される、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【請求項20】
前記電解質組成物が、結合剤ポリマー及び第1の分量の希釈剤を有する第1の部分と、光開始剤及び第2の分量の希釈剤を有する第2の部分と、を含む、請求項13に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態又は実装形態は、生分解性電気化学デバイス、その電解質、及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で生成されている電池の数は、携帯可能な遠隔電源に対する増大する必要性の結果として、絶えず増加している。特に、多くの新しい技術は、埋め込み電子機器に電力を供給するために電池を必要とする。例えば、携帯可能なウェアラブル電子機器、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)デバイス、患者ヘルスケアモニタリング、構造モニタリング、環境モニタリング、スマートパッケージングなどの埋め込み電子機器は、電力について電池に依存する。従来の電池は、部分的にリサイクルされ得るが、現在、環境に優しいか又は生分解性である市販の電池はない。したがって、従来の電池の製造及び使用の増加は、適切に処分又はリサイクルされない場合、環境中の毒性及び有害廃棄物の対応する増加をもたらす。上記に鑑みて、特に、廃棄される前に限られた時間にわたって使い捨て電池を利用する用途のための改善された生分解性電池を開発する必要がある。
【0003】
更に、可撓性、低コスト、中性能又は低性能の電池に対する需要を満たすために、全印刷電池が開発されている。これらの全印刷電池のいくつかは、水溶液に浸された紙又はフリース材料の代わりにGPE(ゲルポリマー電解質)を使用する。GPE層の利点には、製造の容易さ、改善された構造的完全性、可撓性、及びより一貫した性能が含まれる。GPE層は、統合された加工を含む製造プロセスにおいて良好に統合され得、製造コストの低減において可能性のある利点を提供し得る。硬化性GPE材料をスクリーン印刷する現在の方法は、不均一な厚さ、不十分なパイル高さ、及びフィルム中の気泡などの問題を抱えている。不均一な厚さは、全印刷電池構造において座屈を引き起こす場合がある。電池における不適切なパイル高さは、短絡を引き起こす場合があり、フィルム中の気泡は、電池構造中の不十分なフィルム均一性及び不規則な性能をもたらす場合がある。
【0004】
良好な忠実度(気泡がなく、適切な厚さ、及び均一なパイル高さ)を有する生分解性ゲルポリマー電解質層を創出するためのプロセス、及びそのようなプロセスを使用して作製される電池が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範な概略ではなく、本教示の主要又は重要な要素を特定することも、本開示の範囲を明示することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形式で提示することにすぎない。
【0006】
電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスは、アノードを含み、カソードも含む。電気化学デバイスはまた、アノードとカソードとの間に配置された成形電解質組成物を含む。電気化学デバイスの実装形態は、カソード及び/又はアノードが積層ジオメトリで配置される場合を含んでもよい。カソード及び/又はアノードは、横方向のx-y平面ジオメトリで配置されてもよい。電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含んでもよい。ゲルポリマー電解質は、コポリマーのヒドロゲル、及びコポリマーのヒドロゲル中に分散された塩を含むことができる。代替的に、電解質組成物は、架橋剤を含んでもよい。電解質組成物は、光開始剤を含んでもよい。光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウム(lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzophoosphinate)を含んでもよい。電解質組成物は、横方向に不連続なパターンでアノードとカソードとの間に配置される。電解質組成物は、生分解性電解質組成物を含んでもよい。
【0007】
電気化学デバイスの電解質層を生成する方法も開示される。電解質層を生成する方法は、電極を有する電気化学デバイス用の基材を調製することも含む。電解質層を生成する方法は、電解質層用の基材上にキャビティを形成するためのガスケットを調製することも含む。本方法はまた、キャビティがガスケットの上面まで充填されるように、電極と接触して基材上に電解質組成物を堆積させることを含んでもよい。電解質層を生成する方法はまた、ガスケットの上面及び堆積させた電解質組成物の上面上に剥離層を適用することを含む。電解質層を生成する方法はまた、剥離層の上面に均一な圧力を加えることを含む。本方法はまた、電解質組成物を硬化させることを含む。
【0008】
電解質層を生成する方法の実装形態は、電解質組成物を堆積させる前に、ガスケットの1つ以上の内部部分及び基材の上面に剥離剤を適用することを含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法は、剥離層の上面に加えられた均一な圧力を除去することと、ガスケットの上面及び電解質組成物の上面から剥離層を除去することと、基材からガスケットを除去することと、を含んでもよい。剥離層を適用することは、堆積させた電解質組成物の上面の第1の縁部に剥離層を接触させることと、堆積させた電解質組成物の上面の第1の縁部において剥離層の位置を一定に保持しながら、堆積させた電解質組成物の上面の内部部分に剥離層を接触させることと、堆積させた電解質組成物の上面の第2の縁部に剥離層を接触させることと、を含んでもよい。電解質組成物を硬化させることは、電解質組成物を紫外線に供することを含んでもよい。電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含んでもよく、コポリマーのヒドロゲル及びコポリマーのヒドロゲル中に分散された塩を含むことができる。剥離層の上面に均一な圧力を加えるために、1つ以上の透明プレートが使用される。電解質組成物は、約1,000cP~約100,000cPの粘度を有する。電解質組成物は、結合剤ポリマー及び第1の分量の希釈剤を有する第1の部分と、光開始剤及び第2の分量の希釈剤を有する第2の部分と、を含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法は、電解質組成物を堆積させる前に電解質組成物を混合することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を例解する。本開示の実施形態におけるこれら及び/又は他の態様及び利点は、添付の図面と併せて以下の様々な実施形態の説明から明らかになり、より容易に理解されることになる。
【0010】
図1】本開示による、積層構成の例示的な電気化学デバイスの分解図を示す。
図2】本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を提供するためのプロセスの概略図を示す。
図3】本開示による、電気化学デバイス用の押出ゲルポリマー電解質層のアレイの写真である。
図4】本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。
図5】本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。
図6】本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。
【0011】
図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺は維持されるものではなく、本教示の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な典型的な態様の以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、その用途、又は使用を限定することを意図するものではない。
【0013】
全体にわたって使用されるように、範囲は、その範囲内にある各値及び全ての値を説明するために、省略として使用される。範囲内の任意の値は、範囲の終点として選択され得る。加えて、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と引用された参考文献とが矛盾する場合には、本開示が支配する。
【0014】
別段の指定がない限り、本明細書においてここで及び他の箇所で表される全ての百分率及び量は、重量百分率を指すと理解されるべきである。与えられた量は、材料の活性重量に基づく。
【0015】
追加的に、全ての数値は、示された値の「約」又は「およそ」であり、当業者によって期待されるであろう実験誤差及び変動を考慮に入れる。本明細書に開示される全ての数値及び範囲は、「約」がそれとともに使用されるかどうかに関わらず、近似値及び範囲であることを理解されたい。本明細書で使用するとき、「約」という用語は、数字とともに、その数字の±0.01%(境界値を含む)、±0.1%(境界値を含む)、±0.5%(境界値を含む)、その数字の±1%(境界値を含む)、その数字の±2%(境界値を含む)、その数字の±3%(境界値を含む)、その数字の±5%(境界値を含む)、その数字の±10%(境界値を含む)、又はその数字の±15%(境界値を含む)であり得る値を指すことも理解されたい。数値範囲が本明細書に開示されるとき、その範囲内に入る任意の数値もまた具体的に開示されることが更に理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用するとき、「又は」という用語は、包括的な演算子であり、文脈上別段の明確な指示がない限り、「及び/又は」という用語と同等である。「に基づく」という用語は、排他的ではなく、文脈が別段明確に指示しない限り、記載されていない追加の要因に基づくことを可能にする。本明細書において、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」の記載は、A、B、若しくはC、A、B、若しくはCの複数の例、又はA/B、A/C、B/C、A/B/B/B/B/C、A/B/Cなどの組み合わせを含む例を含む。加えて、本明細書全体を通して、「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の指示対象を含む。「中に(in)」の意味は、「中に(in)」及び「上に(on)」を含む。
【0017】
ここで、本教示の例示の実施例を詳細に参照し、この実施例を添付図面に示す。可能な限り、同じ参照番号が、同じ、類似、又は同様の部分を指すように図面全体にわたって使用される。
【0018】
生分解性電気化学デバイスが本明細書に開示される。本明細書で使用するとき、「生分解性」又は「生分解性材料」という用語は、生物、特にごみ処理地中の微生物によって妥当な時間内に自然分解されることが可能な、又は自然分解されるように構成された材料、構成要素、物質、デバイスなどを指し得る。材料、構成要素、物質、デバイスなどは、水、二酸化炭素及びメタンのような自然発生ガス、バイオマス、又はそれらの組み合わせに自然分解され得る。本明細書で使用するとき、「生分解性電気化学デバイス」又は「生分解性デバイス」という表現は、それぞれ、その少なくとも1つ以上の構成要素が生分解性である電気化学デバイス又はデバイスを指し得る。場合によっては、生分解性電気化学デバイス又は生分解性デバイスの構成要素の大部分又は相当数が、生分解性である。他の例では、生分解性電気化学デバイス又は生分解性デバイスのポリマー構成要素の全てが生分解性である。例えば、電気化学デバイスのポリマー及び/又は他の有機系構成要素は、生分解性であるが、金属及び/又は金属酸化物を含む本明細書に開示される電気化学デバイスの無機材料は、生分解性でなくてもよい。電気化学デバイスの全てのポリマー及び/又は有機系構成要素が生分解性である場合に、全電気化学デバイスが生分解性であるとみなされることが一般に受け入れられていると理解されたい。本明細書で使用するとき、「堆肥化可能」という用語は、堆肥にすることができるか、又は別様に持続可能な若しくは環境に優しい方法で処分することができる品目を指し得る。堆肥化可能な材料は、生分解性材料のサブセットカテゴリーであるとみなされてもよく、堆肥化可能な材料を分解するために、追加の特定の環境温度又は条件が必要とされ得る。堆肥化可能という用語は、生分解性と同義ではないが、生分解性材料を分解する又は自然分解するのに必要な条件が、堆肥化可能材料を分解するのに必要な条件と同様であると理解される場合には、それらは互換的に使用され得る。本明細書で使用するとき、「電気化学デバイス」という用語又は表現は、電気を化学反応に、及び/又はその逆に変換するデバイスを指し得る。例証的な電気化学デバイスは、電池、色素増感太陽電池、電気化学センサ、エレクトロクロミックガラス、燃料電池、電解槽などであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用するとき、「環境に優しい電気化学デバイス」又は「環境に優しいデバイス」という用語又は表現は、それぞれ、生態系又は環境一般に対して最小限の毒性を示すか、低減された毒性を示すか、又は毒性を示さない電気化学デバイス若しくはデバイスを指し得る。少なくとも1つの実施形態では、本明細書に開示される電気化学デバイス及び/又はその構成要素は、環境に優しい。
【0020】
本明細書で使用するとき、「フィルム」又は「バリア層」という用語又は表現は、基材、接続部、エンクロージャ、バリア、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な電気化学デバイス構成要素又は部品において使用され得る、薄い、部分的若しくは実質的にプラスチック及び/又はポリマー材料を指し得る。本明細書に記載されるフィルムは、それらのそれぞれの組成物の固有の物理的特性又は寸法に応じて、剛性又は可撓性であり得る。少なくとも1つの実施形態では、これらのフィルム又はバリア層は、環境に優しいか又は生分解性であってもよい。
【0021】
本明細書で使用するとき、「エンクロージャ」、「バリア」、又は「水蒸気バリア」という用語又は表現は、湿気、水、又は他の蒸発可能な材料が電気化学デバイスのバリアを介して出入りするのを防止するために、部分的に封止された、完全に封止された、又は別様に使用される材料を指し得る。少なくとも1つの実施形態では、これらのエンクロージャは、環境に優しいか又は生分解性であってもよい。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、本明細書に開示される電気化学デバイスは、アノード、カソード(すなわち、集電体及び/又は活性層)、並びに1つ以上の電解質組成物(例えば、生分解性固体水性電解質組成物)を含んでもよい。別の実施形態では、生分解性電気化学デバイスは、1つ以上の基材、1つ以上のシール、1つ以上のパッケージ、1つ以上のパウチ、1つ以上のエンクロージャ、又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0023】
本明細書に開示される電気化学デバイスは、可撓性であり得る。本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、破断及び/又は亀裂を生じることなく所定の曲率半径の周りに曲げることができる材料、デバイス、又はその構成要素を指し得る。本明細書に開示される生分解性電気化学デバイス及び/又はその構成要素は、破断又は亀裂を生じることなく、約30cm以下、約20cm以下、約10cm以下、約5cm以下の曲率半径で曲げられてもよい。
【0024】
成形電解質組成物の例示的な例には、本明細書に記載の組成物が含まれてもよく、これは、電池又は生分解性電池などの電気化学デバイスに含めることができる。本明細書に記載される成形電解質組成物を含むデバイス又は装置の代替例には、炭素捕捉若しくは二酸化炭素還元デバイス、ガルバニ電池、又は電解槽が含まれてもよいが、これらに限定されない。電解槽は、電気分解プロセスにおいて水を水素及び酸素に分解するために電気を利用することができるシステムであるが、電気を使用して化学プロセスを実行する他のシステムに、本明細書に記載の成形電解質組成物が組み込まれてもよい。
【0025】
図1は、本開示による、積層構成の例示的な電気化学デバイスの分解図を示す。図1に示すように、電気化学デバイス100は、第1の基材102と、第1の基材102に隣接して又はその上に配置された第1の集電体104と、第1の集電体104に隣接して又はその上に配置されたアノード活性層106と、アノード106に隣接して又はその上に配置された電解質層108と、電解質組成物108に隣接して又はその上に配置されたカソード活性層110と、カソード活性層110に隣接して又はその上に配置された第2の集電体112と、第2の集電体112に隣接して又はその上に配置された第2の基材114と、を含んでもよい。第1の集電体104及びアノード活性層106は、本明細書ではまとめて電気化学デバイス100のアノードと呼ばれ得ることを理解されたい。第2の集電体112及びカソード活性層110は、本明細書ではまとめて電気化学デバイス100のカソードと呼ばれ得ることを更に理解されたい。図1に示すように、電気化学デバイス100のアノード及びカソードは、アノード及びカソードが互いの上又は下に配置されるように、積層構成又はジオメトリで配置されてもよい。
【0026】
特定の例では、電気化学デバイス100は、電気化学デバイス100の第1の基材102と第2の基材114との間に、集電体104、106、アノード活性層106、カソード活性層110、及び電解質組成物108を気密封止することが可能な、又は気密封止するように構成された、ここには示されていない1つ以上のシールを含んでもよい。別の例では、電気化学デバイス100は、図1に示すように、シールがなくてもよく、又は実質的になくてもよい。例えば、基材102、114は、電気化学デバイス100を封止するために互いに溶融又は接合されてもよい。更に他の例では、電流集電体104、106の各々は、電気化学デバイス100の本体の外側に延在し、それによって接続性を提供し得るそれぞれのタブを含んでもよい。いくつかの例では、電気化学デバイス100は、並列構成又は共平面構成で配設され得る。更に、電気化学デバイス100のアノード及びカソードは、アノード及びカソードが同じX-Y平面に沿って配設されるように、同一平面上にあってもよい。
【0027】
少なくとも1つの例では、電気化学デバイス100の基材のうちのいずれか1つ以上は、生分解性基材であってもよく、又はそれを含んでもよいが、これに限定されない。例証的な生分解性基材は、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(polylactic-co-glycolic acid、PLGA)、シルク-フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrate、PHB)、ライスペーパー、セルロース、又はそれらの組み合わせ若しくは複合材料のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0028】
それぞれの生分解性電気化学デバイス100の生分解性基材は、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。本明細書で使用するとき、「安定な」又は「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露されたときに寸法変化に抵抗し、構造的完全性を維持する基材の能力を指し得る。例えば、生分解性基材は、約50℃~約150℃の温度への曝露後に、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満の寸法変化で構造的完全性を維持することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。一例では、生分解性基材の各々は、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、又は約110℃~約120℃、約130℃、約140℃、又は約150℃の温度で安定(例えば、20%未満の寸法変化)であり得る。別の例では、生分解性基材の各々は、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、又は少なくとも145℃の温度で安定であり得る。少なくとも1つの実施形態では、生分解性基材は、約5分~約60分以上の期間、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。例えば、生分解性基材は、前述の温度で、約5分、約10分、約20分、又は約30分~約40分、約45分、約50分、約60分以上の期間、安定であり得る。
【0029】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性基材は、追加の接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、及び/又は恒久的に熱封止可能である。例えば、基材102、114の各々の生分解性基材は、それぞれのシールを使用することなく互いに溶接可能及び/又は結合可能であってもよい。互いに溶接可能及び/又は結合可能であり得る例証的な生分解性基材は、ポリ乳酸(PLA)などの熱可塑性物質、ポリラクチドポリブチレンサクシネート(polylactide polybutylene succinate、PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutylene adipate terephthalate、PBAT)などの結晶化度を高めるために成核剤で修飾されたポリラクチド、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)とのブレンド、PHB系ブレンドなど、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「結合可能」、「溶接可能」、及び/又は「恒久的に熱封止可能」という用語又は表現は、材料(例えば、基材)が、加熱又は溶融を介して2つの表面を互いにヒートシールするか、又は2つの表面を互いに恒久的に接合する能力を指し得る。
【0030】
例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106は、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、炭素(C)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金、亜鉛合金など、又はそれらの組み合わせ及び/若しくは合金のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。例証的なアノード活性層又はその材料は、など、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、アノード活性層は、Hガス発生を調節又は制御するのに十分な量の酸化亜鉛(ZnO)を含んでもよい。
【0031】
少なくとも1つの例では、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106は、アノードペーストから調製又は製作され得る。例えば、アノード活性層は、亜鉛アノードペーストから調製されてもよい。アノードペーストは、磨砕機ミルで調製されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、アノードペーストの調製を容易にするために、ステンレス鋼ショットは、磨砕機ミル中に配置され得る。アノードペーストは、1つ以上の金属若しくは金属合金、1つ以上の有機溶媒、1つ以上のスチレン-ブタジエンゴム結合剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例示的な実施形態では、アノードペーストは、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴム結合剤、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(III)(Bi)、Znダスト、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。例証的な有機溶媒は、当技術分野において公知であり、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、若しくはそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、いずれか1つ以上の生分解性結合剤は、スチレン-ブタジエンゴム結合剤の代わりに、又はそれと組み合わせて利用されてもよく、アルギン酸塩、キトサン、グアーガム、グルテンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0032】
例示的な生分解性電気化学デバイス100のカソード活性層110は、鉄(Fe)、酸化鉄(VI)、酸化水銀(HgO)、酸化マンガン(IV)(MnO)、炭素(C)、炭素含有カソード、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、三酸化モリブデン(MoO)、酸化銀(AgO)、銅(Cu)、酸化バナジウム(V)、酸化ニッケル(NiO)、ヨウ化銅(Cu)、塩化銅(CuCl)など、又はそれらの組み合わせ及び/若しくは合金のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。例示的な例では、カソード活性層110は、酸化マンガン(IV)を含んでもよい。炭素及び/又は炭素含有カソード活性層は、亜鉛空気電池などの水性金属空気電池において利用され得る。
【0033】
少なくとも1つの例では、カソード活性層110は、カソード活性層110の電子伝導性を少なくとも部分的に向上させることができるか、又は向上させるように構成された1つ以上の添加剤を含んでもよい。例証的な添加剤は、炭素粒子、例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなどなど、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0034】
少なくとも1つの例では、例示的な生分解性電気化学デバイス100のカソード活性層110は、カソードペーストから調製又は製作され得る。例えば、カソード活性層110は、酸化マンガン(IV)カソードペーストから調製され得る。カソードペーストは、磨砕機ミルで調製されてもよい。少なくとも1つの例では、カソードペーストの調製を容易にするために、ステンレス鋼ショットが磨砕機ミル中に配置され得る。カソードペーストは、1つ以上の金属若しくは金属合金、1つ以上の有機溶媒(例えば、エチレングリコール)、1つ以上のスチレン-ブタジエンゴム結合剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例示的な例では、カソードペーストは、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴム結合剤、酸化マンガン(IV)(MnO)、グラファイト、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。例証的な有機溶媒は、当技術分野において公知であり、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、若しくはそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。少なくとも1つの例では、1つ以上の有機溶媒は、水などの水性溶媒と置き換えられてもよく、又は水性溶媒と組み合わせて使用されてもよい。例えば、水は、酸化マンガン(IV)又は他の添加剤と組み合わせて利用され得る。
【0035】
アノード及び/又はカソードペーストは、約100cP~約1E6cPの粘度を有してもよい。例えば、アノード及び/又はカソードペーストは、約100cP以上、約200cP以上、約500cP以上、約1,000cP以上、約1,500cP以上、約2,000cP以上、約10,000cP以上、約20,000cP以上、約50,000cP以上、約1E5cP以上、約1.5E5cP以上、約2E5cP以上、約3E5cP以上、約4E5cP以上、約5E5cP以上、約6E5cP以上、約7E5cP以上、約8E5cP以上、又は約9E5cP以上の粘度を有してもよい。別の例では、アノード及び/又はカソードペーストは、約200cP以下、約500cP以下、約1,000cP以下、約1,500cP以下、約2,000cP以下、約10,000cP以下、約20,000cP以下、約50,000cP以下、約1E5cP以下、約1.5E5cP以下、約2E5cP以下、約3E5cP以下、約4E5cP以下、約5E5cP以下、約6E5cP以下、約7E5cP以下、約8E5cP以下、約9E5cP以下、又は約1E6cP以下の粘度を有してもよい。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、アノード及びカソードの各々、又はそれらの活性層106、110は、生分解性結合剤を独立して含んでもよい。生分解性結合剤の機能は、それぞれの層の各々の粒子を一緒に固定し、下の基材への接着を提供することであり、それぞれの層は、アノード集電体104、カソード集電体112、アノード活性層106、カソード活性層110、又はそれらの組み合わせである。例証的な生分解性結合剤は、キトサン、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ゼラチン、キサンタンガム、酢酸酪酸セルロース(cellulose acetate butyrate、CAB)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、アルギン酸塩、M-アルギン酸塩などのアルギン酸塩の誘導体、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物に関して本明細書に開示される生分解性ポリマーのうちのいずれか1つ以上はまた、アノード、カソード、それらの構成要素、又はそれらの任意の組み合わせの生分解性結合剤として利用されてもよい。本明細書に更に記載されるように、1つ以上の生分解性ポリマーは、架橋されてもよい。したがって、アノード、カソード、及び/又はそれらの構成要素に利用される生分解性結合剤は、電解質組成物に関して本明細書に開示される架橋生分解性結合剤を含んでもよい。
【0037】
例示的な生分解性電気化学デバイス100の電解質層108は、電解質組成物であってもよく、又はそれらを含んでもよい。電解質組成物は、生分解性ポリマー材料を利用してもよい。電解質組成物は、固体の水性電解質組成物であってもよい。固体水性電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、並びにヒドロゲル中及び/又はヒドロゲル全体に分散された塩であってもよく、又はそれらを含んでもよい。コポリマーは、ポリマー中心ブロック(center block、CB)と結合した少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含んでもよい。例えば、コポリマーは、PCL-CB-PCLなどのポリマー中心ブロックと結合した少なくとも2つのPCL鎖を含むブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであってもよい。別の例では、コポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリエチレンイミン(polyethylene imine、PEI)、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ以上を含むブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであってもよく、ポリマー中心ブロックと結合している。
【0038】
コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量(例えば、溶媒、ポリマー、及び塩の総重量)に基づいて、約5重量%以上~90重量%以下の量でヒドロゲル中に存在し得る。例えば、コポリマーは、ヒドロゲルの総重量に基づいて、約5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上の量で存在し得る。別の例では、コポリマーは、ヒドロゲルの総重量に基づいて、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下の量で存在し得る。好ましい実施形態では、コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、約5重量%~約60重量%、約5重量%~約50重量%、約20重量%~約40重量%、又は約30重量%の量でヒドロゲル中に存在し得る。更に別の好ましい実施形態では、コポリマー又は固体は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、30重量%超~60重量%の量でヒドロゲル中に存在し得る。
【0039】
特定の例では、電気化学デバイスは、本開示に詳述される1つ以上の方法に従って分配されるような、成形電解質組成物又は層を含む。本明細書で定義されるように、成形電解質層は、気泡がなく、本明細書で記載されるような適切な厚さを有し、均一なパイル高さである成形電解質層に対して、良好な忠実度を有する電解質層を提供する。均一なパイル高さは、1つ以上の寸法にわたって一貫した厚さを有する電解質層を指す。そのような結果として生じる物理的特性は、他の方法によって堆積させる電解質層、例えば、本開示による電気化学デバイスにおけるスクリーン印刷された電解質層と比較して有利である。本開示による電気化学デバイスの特定の例はまた、非スクリーン印刷法である手順によって生成され、これは、そのような電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を堆積させるスクリーン印刷法が、ゲルポリマー電解質フィルムにおける不均一な厚さ、不十分なパイル高さ、及び気泡などの手順に関連する問題を有することが知られているためである。不均一な厚さは、全印刷電池構造において座屈を引き起こす場合がある。電池中の不適切なパイル高さは、短絡につながる場合があり、フィルム中の気泡は、電池構造中の不十分なフィルム均一性をもたらす場合がある。例示的なスクリーン印刷されていない電解質組成物層を生成する、本開示の方法に従って堆積させた方法及びゲルポリマー電解質層、例えば押出、成形などは、不均一な厚さ、不適切なパイル高さ、及びゲルポリマー電解質フィルム層に関連する気泡を有するゲルポリマー電解質層を生成しない。
【0040】
コポリマーは、気泡を含まない又は実質的に含まない連続フィルム又は層を提供するのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。コポリマーはまた、約1,000cP~約100,000cPの粘度を提供するのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。例えば、コポリマーは、約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、又は約20,000cP~約30,000cP、約40,000cP、約50,000cP、約75,000cP、約90,000cP、又は約100,000cPの粘度を提供するのに十分な量でヒドロゲル中に存在し得る。特定の例では、粘度は、一部のアノード及びカソード電池ペーストでの使用が知られているように、1,000,000cPもの高さであってもよい。
【0041】
コポリマーのポリマー中心ブロックは、生分解性ポリマーであってもよく、それによって固体水性電解質組成物の生分解性を改善又は増加させる。ポリマー中心ブロックの生分解性ポリマーは、好ましくは天然に存在する。ポリマー中心ブロックは、ε-カプロラクトンとの反応に利用可能な少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む、生分解性ポリマーなどのポリマーであってもよく、又はそれを含んでもよく、又はそれに由来してもよい。本明細書に更に記載されるように、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含むポリマーは、ε-カプロラクトンと反応して、コポリマーを形成し得る。ポリマー中心ブロック(CB)を形成するために利用され得る少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む例証的なポリマーは、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ヒドロキシル含有多糖、生分解性ポリエステル、ヒドロキシ脂肪酸(例えば、ヒマシ油)など、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。例証的なヒドロキシル含有多糖は、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キチン、グアーガム、キサンタンガム、寒天、プルラン、アミロース、アルギン酸、デキストランなど、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。例証的な生分解性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコール酸、ポリイタコン酸、ポリブチレンサクシネートなど、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、ポリマー中心ブロックは、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシル含有多糖、生分解性ポリエステル、又はヒドロキシ脂肪酸のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0042】
少なくとも1つの例では、コポリマーのポリマー中心ブロックは、生分解性ポリマーでなくてもよい。例えば、コポリマーのポリマー中心ブロックは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ヒドロキシ末端ポリエステル、ヒドロキシ末端ポリブタジエンなどのヒドロキシル末端ポリオレフィンなど、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0043】
ポリマー中心ブロックに結合した少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含むコポリマーは、グラフトコポリマー又はブロックコポリマーであってもよい。コポリマーがグラフトコポリマーであるかブロックコポリマーであるかは、ポリマー中心ブロックの少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基の数及び/又は配置によって少なくとも部分的に決定され得る。例えば、ε-カプロラクトンを、ポリマー中心ブロック鎖の長さに沿ってモノマー上にヒドロキシル基を有するポリマー中心ブロックと反応させることにより、グラフトコポリマーが形成される。別の例では、ε-カプロラクトンを、ポリマー中心ブロックのそれぞれの末端にヒドロキシル基の各々を有するポリマー中心ブロックと反応させて、ブロックコポリマーを形成する。例証的なブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、スターブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0044】
上述のように、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル及びヒドロゲル中に分散された塩を含む固体水性電解質組成物であってもよい。ヒドロゲルの塩は、当技術分野で公知の任意の好適なイオン性塩であってもよく、又はそれを含んでもよい。例証的なイオン性塩は、有機系塩、無機系塩、室温イオン性液体、深共晶溶媒系塩など、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、塩は、亜鉛/酸化マンガン(IV)(Zn/MnO)電気化学において使用可能な塩であるか、又はそれを含む。例証的な塩は、塩化亜鉛(ZnCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸亜鉛(ZnSO)、硫酸マンガン(MnSO)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化第二鉄(FeCl)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)など、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、電解質組成物の塩は、塩化アンモニウム(NHCl)、塩化亜鉛(ZnCl)、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物であってもよく、又はそれらを含んでもよい。別の実施形態では、塩は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、水酸化カリウム(KOH)、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物などのアルカリ金属塩であってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0045】
塩は、イオン伝導性を提供することができるか、提供するように構成されるか、又は提供するのに十分な量で存在し得る。例えば、塩は、少なくとも0.1M、より好ましくは少なくとも0.5M、更により好ましくは少なくとも2M、更により好ましくは少なくとも4Mの量又は濃度でヒドロゲル中に存在し得る。塩は、10M以下、より好ましくは6M以下の濃度でヒドロゲル中に存在し得る。別の例では、塩は、約3M~約10M、約4M~約10M、約5M~約9M、又は約6M~約8Mの量でヒドロゲル中に存在し得る。例示的な実装形態では、塩は、塩化アンモニウム及び塩化亜鉛を含み、塩化アンモニウムは、約2.5M~約3M、約2.8M~約2.9M、又は約2.89Mの量で存在し、塩化亜鉛は、約0.5M~1.5M、約0.8M~約1.2M、又は約0.9Mの量で存在する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、1つ以上の添加剤を含んでもよい。1つ以上の添加剤は、生分解性又は環境に優しいナノ材料であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。生分解性ナノ材料は、電解質層又はその電解質組成物の可撓性を犠牲にすることなく、電解質層又はその電解質組成物の構造強度を提供及び/又は改善することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。添加剤の例証的な生分解性ナノ材料は、多糖ベースのナノ材料、無機ナノ材料など、又はそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。例証的な多糖系ナノ材料は、セルロースナノ結晶、キチンナノ結晶、キトサンナノ結晶、デンプンナノ結晶など、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0047】
1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%の量で存在し得る。例えば、1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%の量で存在し得る。1つ以上の添加剤はまた、ヒドロゲルの総重量に基づいて、40重量%以下の量で存在し得る。例えば、1つ以上の添加剤は、ヒドロゲルの総重量に基づいて、40重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下の量で存在し得る。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、水性溶媒を含んでもよい。例えば、電解質組成物は、水を含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、共溶媒を含んでもよい。例えば、電解質組成物は、水及び追加の溶媒を含んでもよい。例証的な共溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。共溶媒は、電解質組成物の水性溶媒の総重量又は体積に対して、約20%超、約30%超、約40%超、約50%~約60%超、約70%超、約80%超、約85%超、又は約90%超の量の水を含んでもよい。
【0049】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル及びヒドロゲル中に分散された塩、溶媒(例えば、水若しくは水及び共溶媒)、1つ以上の光開始剤、任意選択の1つ以上の添加剤、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、溶媒、1つ以上の添加剤、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物を含む。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、並びに溶媒(例えば、水又は水及び共溶媒)からなるか、又は本質的になる。別の実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散された塩、溶媒、及び1つ以上の添加剤からなるか、又は本質的になる。水又は水と共溶媒との組み合わせであってもよい溶媒は、ヒドロゲルの残部を提供してもよい。好適な電解質組成物並びにそれを生成するためのプロセス及び手順は、国際出願第PCT/US2020/046932号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のプロセス及び実施例で使用するのに好適な電解質組成物は、加工時に流体であるなどの特性を有するゲルポリマー電解質配合物を含むことができ、任意選択で架橋剤を含み、照射及び/又は温度のいずれかによって架橋して、プロセスの終わりに固体であるが依然として可撓性であるようにすることができ、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0050】
先に考察したように、例示的な生分解性電気化学デバイス100の電解質層108は、固体水性電解質組成物であってもよく、又はそれを含んでもよい。固体水性電解質組成物は、市販の印刷電池又は商業的に有用な印刷電池に必要な十分な機械的及び電気化学的特性を有し得る。例えば、固体水性電解質組成物は、約0.10メガパスカル(MPa)超、約0.15MPa超、又は約0.20MPa超のヤング率又は貯蔵弾性率を有してもよく、それによって、応力下での破損を防止するのに十分な可撓性を維持しながら、固体水性電解質組成物に十分な強度を提供する。固体水性電解質組成物は、約100MPa以下、約80MPa以下、約60MPa以下、又はそれ以下のヤング率を有してもよい。
【0051】
本明細書で使用するとき、「降伏強度」という用語又は表現は、材料が永久的に変形し始める前に材料が経験する又は受ける可能性がある最大応力を指し得る。固体水性電解質組成物は、約5kPa以上の降伏強度を有し得る。例えば、固体水性電解質組成物は、約5kPa以上、約8kPa以上、約10kPa以上、約12kPa以上、約15kPa以上、又は約20kPa以上の降伏強度を有し得る。
【0052】
固体水性電解質組成物は、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106及びカソード活性層110の両方に対して電気化学的に安定であり得る。例えば、固体水性電解質組成物は、長期間にわたって安定した開回路電圧を維持し得、それによって、例示的な生分解性電気化学デバイス100のアノード活性層106及びカソード活性層110の両方に対する電気化学的安定性を実証する。少なくとも1つの実施形態では、固体水性電解質組成物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年以上の間、電極層と接触して電気化学的に安定であり得る。
【0053】
本明細書に開示される固体水性電解質組成物は、電気化学セル、電池、及び/又は本明細書に開示される生分解性電気化学デバイス100などの任意の電気化学デバイスにおいて利用され得る。好ましい実施形態では、固体水性電解質組成物は、Znアノード活性層及びMnOカソード活性層を含む電池において利用され得る。例示的な生分解性電気化学デバイス100の集電体104、112は、電気を受け取り、伝導し、送達することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。例証的な集電体104、112は、銀マイクロ粒子及び銀ナノ粒子などの銀、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素、カーボンナノチューブなどの炭素ナノ粒子、グラフェン、還元グラフェン酸化物(reduced graphene oxide、RGO)など、又はこれらの任意の組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0054】
図2は、本開示による、電気化学デバイス用のゲルポリマー電解質層を提供するためのプロセスの概略図を示す。図2に示されるプロセスは、成形プロセスを使用する堆肥化可能又は生分解性電池用の電解質印刷プロセス200の例示的な実施例である。成形プロセスは、拡張可能であり、高い忠実度、気泡などの欠陥の低減、及び均一なパイル高さを有する硬化ゲル電解質層を再現可能に創出するための効率的な方法である。このプロセスは、例えばポリアクリル酸のような非堆肥化可能な硬化性ゲル電解質組成物にも拡張し得る。電解質印刷プロセス200は、電気化学デバイスで使用するために調製された基材202から始まり、この基材は、本明細書で記載されるアノード、カソード、及びシールなどの追加の構造層を含んでもよい。基材202は、明確にするために、これらの追加の層なしで示されていることに留意されたい。断面図に示すように、ガスケット204の側面は、基材の上面に置かれている。ガスケットの形状及び形態は、基材202の表面上に堆積させるゲルポリマー電解質層210のために意図された幾何学的配置又は形状であると理解されるべきである。ガスケット204は、スペーサ層、金型、又はガイドと呼ばれることもある。例示的な例では、700ミクロン厚のゴムシートを使用して、180メッシュスクリーン及び80デュロメータスキージを使用して、5025銀インクで4cm×4cmのスクリーン印刷を創出し、これを100℃で10分間硬化させる。次いで、X-Acto(登録商標)精密ブレードを使用して4cm×4cmの銀正方形を切り取って、図2に示すような金型ガスケットを創出する。剥離剤を使用して、ガスケット204とゲルポリマー電解質層210との間に剥離表面を提供し、ガスケット204が後に除去されるときに粘着するのを防止した。例示的な例では、Silsurf A208シリコーングリコールコポリマーを、綿棒で軽く拭くことによって成形ゴムガスケット204の内側縁部に適用した。金型を、電池電極基材202の上に置く。ゲルポリマー電解質210溶液を、基材202及びガスケット204によって創出されたキャビティを充填するのに十分な量で金型の中心に注入する。ゲルポリマー電解質層210の一部を、ガスケット204によって創出されたキャビティ、ウェル、又はキャビティ内に堆積させたら、剥離層シート206を、ガスケット206及びゲルポリマー電解質層210の上に置く。例では、閉じ込められたエアポケットを排除するために、剥離層206としてのPLAのベアシートを、充填された金型の上にローリング方式で置く。次に、圧力プレート208、例えば、1枚以上の重いガラスのシートを、金型及び剥離層シート206の上に置き、金型に十分な圧力を加えて、金型を基材202上に封止し、ゲルポリマー電解質210溶液を金型中に広げる。この例ではガラスが使用されているが、ガスケット金型204上に圧力を形成するために適用することができる任意の十分に透明な材料が好適であり、これらの材料には、ポリカーボネートなどの透明プラスチックを含んでもよいが、これに限定されない。ゲルポリマー電解質210を広げ、硬化前に金型を完全に充填した。特定の例は、放射硬化性ゲルポリマー電解質組成物を含んでもよく、これは、放射を介して硬化を開始及び完了するために、硬化中に放射がゲルポリマー電解質を透過するための透明経路を必要とする。次いで、紫外線、赤外線、又は熱上昇又は熱エネルギーなどの硬化エネルギー212の放射を、圧力板208を通して、代替的にその周りに伝達して、硬化又は架橋ゲルポリマー電解質214を生成する。例では、Fusion 16W 395nm LEDランプを使用して、10インチの高さで1000ミリ秒の持続時間にわたって硬化を行った。1つ以上の圧力板208を取り外したら、剥離層シート206を、ゆっくりと回転させる方法で注意深く除去してもよく、基材202上に硬化したポリマー電解質層を供給するために、ガスケット204を除去してもよい。このようにして、約50ミクロン~約700ミクロンの厚さを有するゲルポリマー電解質層が生成され得る。この手順において使用されるガスケット204の厚さ及び物理的特性、並びに加えられる圧力の量は、ゲルポリマー電解質210の最終的な厚さに寄与する。
【0055】
ゲルポリマー電解質の例示的な配合は、以下の組成を含んでもよい。表1に示すように、ゲルポリマー電解質組成物を水中で調製した。
【表1】
【0056】
GPEポリマーは、以下に示す一般構造を有するグラフトポリマーである。
【化1】
【0057】
GPEポリマーの例示的な例は、以下の構造に示されるようなPCL側ペンダント基又は側鎖を有するPVA主ポリマー鎖である。
【化2】
【0058】
図3は、本開示による、電気化学デバイス用の押出ゲルポリマー電解質層のアレイの写真である。写真300は、ゲルポリマー電解質層の部分のアレイに配設された、図2に示されるものと同様の電解質組成物堆積の方法を利用するプロセスの最終結果を示す。示されるように、本開示の方法、手順、及び材料に従って、基材302上にゲルポリマー電解質304を堆積させるプロセス中に、複数のゲルポリマー電解質層304がその上に配置された基材302が示される。
【0059】
本開示による1つ以上の例示的な方法は、本明細書に開示されるような生分解性電気化学デバイスの一部又は全体を生成するために使用され得る。本開示による方法は、生分解性基材を提供することを含んでもよい。本方法はまた、生分解性基材に隣接して又はその上に電極及び/又は電極組成物を堆積させることを含んでもよい。電極を堆積させることは、電極の集電体を堆積及び乾燥させることと、集電体に隣接して又はその上に活性層(すなわち、アノード又はカソード材料)を堆積及び乾燥させることと、を含んでもよい。本方法はまた、電極及び/又は電極組成物を乾燥させることを含んでもよい。電極組成物は、熱的に乾燥させてもよい(例えば、加熱)。本方法はまた、生分解性で放射硬化性の電解質組成物を電極組成物上に又はそれに隣接して堆積させることを含んでもよい。本方法は、生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させることを更に含んでもよい。生分解性放射硬化性電解質組成物は、電極組成物を乾燥させる前又は後に放射硬化させてもよい。生分解性基材は、任意選択の熱乾燥と熱的に適合性であってもよい。例えば、生分解性基材は、熱乾燥時に寸法安定性(例えば、座屈及び/又はカールがない)であり得る。本方法は、第2の電極及び/又は電極組成物を生分解性放射硬化性電解質組成物上に又はそれに隣接して堆積させることを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、第1及び第2の電極組成物の各々は、金属箔組成物である。第1の電極の金属箔組成物は、第2の電極の金属箔組成物と異なっていてもよい。
【0060】
少なくとも1つの例では、電気化学デバイス、その構成要素の全て、又はその構成要素の実質的に全ては、印刷プロセスによって製作される。印刷プロセスは、堆積、スタンピング、噴霧、スパッタリング、ジェッティング、コーティング、層化などを含んでもよい。例えば、1つ以上の集電体、1つ以上の電極組成物、生分解性で放射硬化性の電解質組成物、又はそれらの組み合わせは、印刷プロセスによって堆積させてもよい。例証的な印刷プロセスは、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷(例えば、スタンプ)、グラビア印刷、オフセット印刷、エアブラシ、エアロゾル印刷、植字、ロールツーロール法など、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、電気化学デバイスの構成要素は、スクリーン印刷によって印刷される。
【0061】
少なくとも1つの例では、生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させることは、電解質組成物を放射エネルギーに曝露することを含む。放射エネルギーは、紫外光であってもよい。生分解性放射硬化性電解質組成物を放射エネルギーに曝露することは、生分解性放射硬化性電解質組成物を少なくとも部分的に架橋し、それによってヒドロゲルを形成し得る。生分解性放射硬化性電解質組成物は、室温で放射線硬化されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、不活性雰囲気で硬化される。例えば、生分解性放射硬化性電解質組成物は、窒素、アルゴンなどの下で硬化されてもよい。別の実施形態では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、非不活性雰囲気中で硬化されてもよい。
【0062】
少なくとも1つの例では、生分解性放射硬化性電解質組成物は、約5ms~約100msの期間で放射線硬化されてもよい。例えば、生分解性放射硬化性電解質組成物は、約5ms、約10ms、約15ms、約20ms、約30ms、約40ms、又は約50msから、約60ms、約70ms、約80ms、約85ms、約90ms、約95ms、又は約100msの期間で放射線硬化されてもよい。生分解性放射硬化性電解質組成物を放射硬化させるのに十分な期間は、UV光の出力によって少なくとも部分的に決定され得る。
【0063】
少なくとも1つの例では、本方法はまた、生分解性接着剤などの接着剤を堆積させ、それによって例示的な生分解性電気化学デバイスの1つ以上のシールを提供することを含んでもよい。例えば、本方法は、接着剤の層を堆積させて、電気化学デバイスの基材又は基材の一部(例えば、タブの周りの領域)を互いに結合することを含んでもよい。いくつかの例では、接着剤は、ホットメルト接着剤であってもよい。別の例では、電気化学デバイスは、いかなる接着剤も含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。例えば、生分解性基材は、追加の接着剤を使用することなく溶接可能及び/又はヒートシール可能であってもよい。
【0064】
少なくとも1つの例では、生分解性基材は、連続ウェブであってもよく、又は連続ウェブによって支持されてもよい。本明細書で使用するとき、「ウェブ」という用語は、コンベヤベルトなどの移動支持面を指し得る。少なくとも1つの例では、複数の電気化学デバイスが、連続ウェブ上に独立した又は連結された要素若しくは構成要素として同時に印刷される。例えば、複数の電気化学デバイスのそれぞれの構成要素は、並列プロセスにおいてアレイとして連続ウェブ上に独立した又は連結された構成要素として同時に印刷されてもよい。本明細書で使用するとき、「連結された要素」又は「連結された構成要素」という用語又は表現は、互いに物理的に接触している、重なり合っている、又は別様に接触している電気化学デバイスの要素又は構成要素をそれぞれ指し得る。例証的な連結要素は、集電体層に隣接して又はその上に配置された活性層(例えば、カソード活性層若しくはアノード活性層)、集電体層及び銅テープタブ、又は活性カソード/アノード層の上の電解質層であってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0065】
例示的な生分解性電気化学デバイス、その固体水性電解質、並びにそれを合成及び製作するための方法の少なくとも1つの例では、集電体、カソード/アノード材料、結合剤、接着剤、及び電解質を含む様々な材料の層は、高い忠実度及び精度で印刷される必要がある。更に、水性電解質内の湿気の保持は、良好なイオン伝導性のための可溶化塩の維持による電池性能にとって重要であり、これらのような印刷された生分解性又は堆肥化可能な電池は、ポリ乳酸(PLA)フィルムであってもよい生分解性基材を通した蒸発による水分損失に起因して寿命が短くなるという問題がある。そのような電気化学デバイスは、生分解性バリア層を有する生分解性ポリマー複合フィルムエンクロージャパウチを有し得る。例証的な生分解性エンクロージャ材料は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、シルク-フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ライスペーパー、セルロース、又はそれらの組み合わせ若しくは複合体のうちの1つ以上であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0066】
少なくとも1つの例では、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に印刷された、架橋される前に放射硬化性である架橋生分解性ポリマー材料を含む電解質組成物を含む可撓性生分解性電気化学デバイスは、水性電解質材料内に存在する湿気が蒸発するのを防止するために、電気化学デバイスの外部部分の周りにエンクロージャ、フィルム又はパウチを形成する生分解性の湿気又は水蒸気バリア若しくはバリア層を有し得る。そのような例では、電気化学デバイス全体が生分解性であるので、デバイスは、エンクロージャパウチの改善された水蒸気バリア又は湿気バリア層特性に起因して延長された耐用年数を有し得、その耐用年数が終わると生分解性及び/又は生分解性であり得る。生分解性水蒸気バリア又はエンクロージャの機能は、電気化学デバイス内の水性電解質組成物からの水の蒸発を妨げる湿気バリア層を提供し、したがって、電気化学デバイスの耐用年数を延ばすことである。本明細書に記載される水蒸気バリア又は湿気バリア層に関して、電気化学デバイスの特定の例は、かなりの量の水又は湿気を有し得るが、他の溶媒又は蒸発可能な材料もまた、本開示の水蒸気バリア内に封入された電気化学デバイスの長期の許容可能な動作に寄与し得ることに留意されたい。
【0067】
それぞれの生分解性電気化学デバイスの生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。本明細書で使用するとき、「安定な」又は「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露されたときに寸法変化に抵抗し、構造的完全性を維持する基材の能力を指し得る。例えば、生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度への曝露後に、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満の寸法変化で構造的完全性を維持することが可能であり得るか、又はそのように構成され得る。一例では、生分解性水蒸気バリアの各々は、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、又は約110℃~約120℃、約130℃、約140℃、又は約150℃の温度で安定(例えば、20%未満の寸法変化)であり得る。別の例では、生分解性水蒸気バリアの各々は、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、又は少なくとも145℃の温度で安定であり得る。少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリアは、約5分~約60分以上の期間、約50℃~約150℃の温度で安定であり得る。例えば、生分解性水蒸気バリアは、前述の温度で、約5分、約10分、約20分、又は約30分~約40分、約45分、約50分、約60分以上の期間、安定であり得る。
【0068】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリア材料は、追加の接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、及び/又は恒久的に熱封止可能である。例えば、電気化学デバイスエンクロージャ用の本明細書に記載される生分解性水蒸気バリアは、それぞれのシールを使用せずに互いに溶接可能及び/又は結合可能であってもよい。互いに溶接可能及び/又は結合可能であり得る例証的な生分解性水蒸気バリア材料は、ポリ乳酸(PLA)、結晶化度を高めるために成核剤で修飾されたポリラクチド、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)とのブレンド、PHBベースのブレンドなど、又はそれらの組み合わせなどの熱可塑性物質であってもよく、又はそれらを含んでもよいが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「結合可能」、「溶接可能」、及び/又は「恒久的に熱封止可能」の用語又は表現は、材料(例えば、基材)が、加熱又は溶融を介して2つの表面を互いにヒートシールするか、又は2つの表面を互いに恒久的に接合する能力を指し得る。
【0069】
いくつかの例では、生分解性エンクロージャ、パウチ、又は水蒸気バリアは、アルミニウム金属化ポリ乳酸フィルムなどの金属化生分解性ポリ乳酸(PLA)フィルムから作製されてもよい。金属化を提供する金属表面層は、アルミニウムであってもよい。特定の例では、金属化層は、アルミニウム、他の好適な金属又は合金、セラミック、粘土、無機-有機バイオポリマーのハイブリッド材料、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。代替例は、金属の複数の層、多層フィルムの内側層上の金属、外側層、又は両方を有してもよい。PLAフィルムは、エンクロージャパウチの物理的特性を改善するために二軸延伸されてもよい。更に他の例は、フィルムに組み込まれた添加剤を有してもよく、向上した湿気バリア特性を提供する。電気化学デバイス用の生分解性エンクロージャ、パウチ、又は水蒸気バリアは、単一層、又は代替例では1つ以上の材料の組み合わせを伴う複数の層を有してもよい。単層フィルム又はバリアは、約20ミクロン~約100ミクロン、約40ミクロン~約80ミクロン、又は約50ミクロン~約75ミクロンの全厚を有してもよい。水蒸気バリアの金属化層は、PLAなどのベースフィルム層の上に約0.5nm~約100nm、約5nm~約50nm、又は約5nm~約25nmの厚さを有してもよい。
【0070】
特定の例では、水蒸気バリア特性を有することが知られている他の材料が使用され得る。これらの材料は、生分解性及び/又は堆肥化可能な形式に適合しなければならず、蜜蝋、可塑剤、及び代替の生分解性ポリマー複合フィルムなどの材料を含む。水蒸気バリアが電気化学デバイスの基材の一部ではない代替デバイスでは、より広い範囲の温度耐性を有する生分解性材料、ポリマー又は複合材料と比較して、より高い温度安定性及び耐性を有する水蒸気バリアが使用され得る。生分解性エンクロージャ又は湿気バリア特性を有する水蒸気バリアを有する電気化学デバイスの例は、そのようなバリア、層、又はエンクロージャを有しない電気化学デバイスと比較して、低減された水蒸気透過率(water vapor transmission rate、WVTR)を示し得る。
【0071】
いくつかの例では、電気化学デバイスは、電池又は電気化学デバイスが、改善された水蒸気バリア特性を有する上述の水蒸気バリア内に完全に収容されるように配設されてもよく、カソード及びアノードが並列又は横向きのX-Y平面ジオメトリになるように配向又は配設されてもよい。別のデバイスでは、電気化学デバイスは、電池又は電気化学デバイスが、改善された水蒸気バリア特性を有する上述のエンクロージャ中に収容されるように配設されてもよく、図1に示すように、カソード及びアノードが積層ジオメトリになるように配向又は配設されてもよい。
【0072】
本開示の実施例は、改善された湿気バリア特性又は水蒸気バリア特性を有する電気化学デバイスを製作、生成、又は別様に密閉するための方法を提供し得る。本方法は、第1の金属化PLAフィルムの非金属化側が第2の金属化PLAフィルムの非金属化側に面するように、4つの縁部を有する第1の金属化PLAフィルム及び4つの縁部を有する第2の金属化PLAフィルムを配向することを含んでもよい。第1及び第2の金属化PLAフィルムの1つ以上の縁部は、一緒に封止されてもよい。生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスは、第1の金属化PLAフィルムと第2の金属化PLAフィルムとの間に置かれ、続いて、電気化学デバイスの1つ以上の電極が4つの縁部のうちの少なくとも1つを通して露出されるように、第1の金属化PLAフィルムの縁部及び第2の金属化PLAフィルムの縁部を一緒に封止してもよい。
【0073】
方法は、代替的に、4つの縁部を有する第1の金属化PLAフィルムを、非金属化側が電気化学デバイスに面するように電気化学デバイスの上側に配向するステップを含んでもよい。第2の金属化PLAフィルムは、非金属化側が電気化学デバイスに面するように、電気化学デバイスの底部側に配向される。第1の金属化PLAフィルムの4つの縁部及び第2の金属化PLAフィルムの4つの縁部の全てが一緒に封止されてもよく、それにより1つ以上の電極が4つの縁部のうちの少なくとも1つを通して露出される。表面コーティング及び/又はポリマー添加剤と組み合わせた生分解性アルミニウム化ポリマーバリア層からこのようにして製作されたエンクロージャ又は水蒸気バリアは、生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスからの水蒸気損失を低減又は防止し得る。そのようなデバイスは、電解質溶媒が経時的に蒸発するのを防止することによって、生分解性又は堆肥化可能な電気化学デバイスの耐用年数を著しく延ばし得る。
【0074】
図4は、本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、電極を有する電気化学デバイス用の基材を調製する最初のステップ402を含む。次に、電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、電解質層用の基材上にキャビティを形成するためのガスケットを調製するステップ404を含む。特定の例示的な例では、このステップは、電解質組成物を堆積させる前に、ガスケットの1つ以上の内部部分及び基材の上面への剥離剤の適用を更に含んでもよい。特定の例では、剥離剤は、シリコーンを含むが、当業者に公知の任意の好適な剥離剤を使用してもよい。次に、電解質組成物は、キャビティがガスケットの上面まで充填されるように、電極と接触して基材上に堆積させ406、その後、ガスケットの上面及び堆積させた電解質組成物の上面上に剥離層を適用するステップが続く408。このステップは、特定の例では、堆積させた電解質組成物の上面の第1の縁部に剥離層を接触させることと、堆積させた電解質組成物の上面の第1の縁部で剥離層の位置を一定に保持しながら、堆積させた電解質組成物の上面の内部部分に剥離層を接触させることと、堆積させた電解質組成物の上面の第2の縁部に剥離層を接触させることと、を更に含んでもよい。特定の例では、剥離層は、ポリ乳酸(PLA)のシートであってもよいが、当業者に公知の任意の好適な剥離層又は剥離シートが使用されてもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400はまた、剥離層の上面に均一な圧力を加え410、電解質組成物を硬化させるステップ412を含む。特定の例示的な例では、電解質組成物は、本開示によるゲルポリマー電解質であり、いくつかの例では、コポリマーのヒドロゲル、及びコポリマーのヒドロゲル中に分散された塩を含むことができる。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400の特定の例は、電解質組成物を硬化させる目的で、電解質組成物を紫外線に供することを含んでもよい。
【0075】
電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、剥離層の上面に均一な圧力を加えるための1つ以上の透明プレートの使用を含んでもよい。電解質組成物に応じて、硬化は、電解質組成物を紫外線に供すること、電解質組成物を高温に供すること、別の硬化方法の使用、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例示的な例では、電解質組成物は、ゲルポリマー電解質を含み、コポリマーのヒドロゲル及びコポリマーのヒドロゲル中に分散された塩を更に含むことができる。電解質組成物は、代替的に、電解質組成物の粘度を調整するために希釈剤を含んでもよい。電解質組成物に使用される希釈剤の例証的な例には、水、又は本明細書に記載される他の希釈剤が含まれてもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400で使用される電解質組成物の粘度は、約1,000cP~約100,000cPであってもよい。電解質組成物の他の例示的な例は、光開始剤を含んでもよく、いくつかの例では、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムを含んでもよい。電解質組成物は、結合剤ポリマー及び第1の分量の希釈剤を有する第1の部分と、光開始剤及び第2の分量の希釈剤を有する第2の部分と、を含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400で使用される電解質組成物の特定の例は、架橋剤を含んでもよく、したがって、電解質組成物は、結合剤ポリマー及び第1の分量の希釈剤を有する第1の部分と、架橋剤及び第2の分量の希釈剤を有する第2の部分と、を含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、電解質組成物を分配する前に、いくつかの例ではスタティックミキサーを使用して、電解質組成物を混合するステップを含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、特定のパターンに従って種々の形状又は構成を有する金型を含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、分配後に周囲条件下で電解質組成物を合体させるために休止することを含んでもよい。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法400は、剥離層の上面に加えられた均一な圧力の除去と、ガスケットの上面及び電解質組成物の上面からの剥離層の除去と、基材からのガスケットの除去と、を更に含んでもよい。
【0076】
図5は、本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法500は、電極を有する電気化学デバイス用の基材を調製するステップから始まり502、その後、電解質層用の基材上にキャビティを形成するためのガスケットを調製し504、ガスケットの1つ以上の内部部分及び基材の上面にシリコーンを含む剥離剤を適用するステップ506が続く。次に、キャビティがガスケットの上面まで充填されるように、電極と接触して基材上に電解質組成物を堆積させ508、剥離層をガスケットの上面及び堆積させた生分解性電解質組成物の上面に適用する510。剥離層の上面に均一な圧力を加え512、生分解性電解質組成物を紫外線に供する514。特定の例示的な例では、生分解性電解質組成物は、約1,000cP~約100,000cPの粘度を有する。生分解性電解質組成物の特定の例にはまた、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾホオスフィン酸リチウムなどの光開始剤が含まれるが、これに限定されず、当業者に公知の他の光開始剤が使用されてもよい。特定の例では、生分解性電解質組成物は、生分解性結合剤ポリマー及び第1の分量の希釈剤を有する第1の部分と、光開始剤及び第2の分量の希釈剤を有する第2の部分と、を有する。代替的に、生分解性電解質組成物は、架橋剤を含む。特定の例では、請求項15に記載の電気化学デバイスの電解質層を生成する方法500は、電解質組成物を堆積させる前に生分解性電解質組成物を混合することを更に含む。
【0077】
図6は、本開示による電気化学デバイスの電解質層を生成するための方法を示す。電気化学デバイスの電解質層を生成する方法600は、電極を有する電気化学デバイス用の基材を調製するステップ602と、電解質層用の基材上に複数のキャビティを形成するためのガスケットを調製するステップ604と、を含む。次に、生分解性電解質組成物を混合し、ここで、生分解性電解質組成物は、結合剤ポリマーを有する第1の部分と、光開始剤を有する第2の部分と、を含み606、次いで、複数のキャビティがガスケットの上面まで充填されるように、電極と接触して基材上に生分解性電解質組成物を堆積させる608。次に、ガスケットの上面及び堆積させた電解質組成物の上面に剥離層を適用し、剥離層の上面に均一な圧力を加え、電解質組成物を硬化させる。特定の例では、電解質は、電解質組成物を紫外線に供することによって硬化される。代替的に、電解質組成物を高温に供して硬化を完了させてもよい。特定の例では、本開示の方法の1つ以上は、電解質組成物層の複数の堆積のアレイを提供し、単一の電気化学デバイスとともに使用するための横方向の非連続パターンをもたらすか、又は複数の電気化学デバイスをより効率的に製作するような様式で用いられ得る。電解質層の横方向に不連続なパターンとは、電気化学デバイスの構造と一致する横方向平面内で必ずしも互いに接触しない特徴又は物理的接触点を有するパターンを指す。この横方向に不連続なパターンは、電解質配置の位置、したがって活動を隔離又は方向付ける可能性を提供し、連続的に製造される複数の電気化学デバイス構造を提供する製作方法を可能にする。
【0078】
本教示は、1つ以上の実装態様に関して示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、示された実施例に対して変更及び/又は修正が行われ得る。例えば、プロセスが一連の行為又は事象として説明されているが、本教示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されないことが理解され得る。一部の行為は、異なる順序で、及び/又は本明細書に記載されているものとは別の他の行為若しくは事象と同時に発生する可能性がある。また、全てのプロセス段階が、本教示の1つ以上の態様又は実施形態に従う方法論を実装するために必要とされ得るわけではない。構造的物体及び/若しくは処理段階が追加され得るか、又は既存の構造的物体及び/若しくは処理段階が除去若しくは修正され得ることが理解され得る。更に、本明細書に示される行為のうちの1つ以上は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行され得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するように使用される。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、2つの材料に対して使用される「上(on)」という用語、他方「上」の一方は、材料間の少なくとも一部の接触を意味し、一方、「の上(over)」は、材料が、場合によっては、接触が可能であるが必要とされないように、1つ以上の追加の介在材料に近接していることを意味する。「上(on)」又は「の上(over)」のいずれも、本明細書で使用される場合にいかなる指向性も暗示しない。「共形」という用語は、下にある材料の角度が共形材料によって保持されるコーティング材料を記述する。「約」という用語は、変更が、示された実施形態に対してプロセス又は構造の不適合とならない限り、列挙される値が少し変更され得ることを示す。「結合する」、「結合される」、「接続する」、「接続」、「接続される」、「と接続して」、及び「接続している」という用語は、「と直接接続する」又は「1つ以上の中間要素又は部材を介して接続する」ことを指す。最後に、「例示の」又は「例証的な」という用語は、説明が理想的であることを意味するのではなく一例として使用されることを示す。本教示の他の実施形態は、本明細書の検討及び本明細書での本開示の実施を考慮して当業者に明らかであり得る。本明細書及び実施例は、単なる例示としてみなされることが意図され、本教示の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】