(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127555
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】平盤状ガラスの製造方法とその製造装置、及びガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 11/00 20060101AFI20230906BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20230906BHJP
C03B 40/02 20060101ALI20230906BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C03B11/00 C
C03B11/08
C03B40/02
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027140
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022030744
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 明
【テーマコード(参考)】
4G015
4G059
【Fターム(参考)】
4G015HA02
4G059AA08
4G059AC03
(57)【要約】
【課題】 平盤状ガラスの製造方法に関し、特にガラス材料の移し替えによる不安定成分の混入や付着の恐れがなく、安定して均一の品質を備えた高品質の製品の成形が可能となる平盤状ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】
(1)耐熱性およびプレス耐性を有する軟化板の上にガラスピースを載置する工程と、(2)前記ガラスピースを前記軟化板とともに加熱エリアに移動し、前記ガラスピースを軟化させる工程と、(3)前記ガラスピースの軟化後、前記ガラスピースを載置した状態で前記軟化板をプレスエリアに移動する工程と、(4)前記プレスエリアにて、上金型と前記軟化板とで前記ガラスピースをプレスする工程と、(5)前記上金型は、上面金型と側面金型とから構成され、プレス後に前記側面金型を離型してから、前記上面金型を離型する工程とを含む平盤状ガラスの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスピースを再加熱しプレスすることにより、平盤状ガラスを製造する方法であって、
(1)耐熱性およびプレス耐性を有する軟化板の上にガラスピースを載置する工程と、
(2)前記ガラスピースを前記軟化板とともに加熱エリアに移動し、前記ガラスピースを軟化させる工程と、
(3)前記ガラスピースの軟化後、前記ガラスピースを載置した状態で前記軟化板をプレスエリアに移動する工程と、
(4)前記プレスエリアにて、上金型と前記軟化板とで前記ガラスピースをプレスする工程と、
(5)前記上金型は、上面金型と側面金型とから構成され、プレス後に前記側面金型を離型してから、前記上面金型を離型する工程と、を含む平盤状ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記ガラスピースの軟化後、前記ガラスピースを軟化板に載置した状態で、プレスエリアに移動し、プレス前に幅寄せ装置で前記ガラスピースの角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の平盤状ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記ガラスピースの重量が2kg以上である、請求項1又は2に記載の平盤状ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記軟化板の材料が金属、セラミックス又はセラミックスコーティング金属である、請求項1又は2に記載の平盤状ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記軟化板、前記上金型及び前記ガラスピースには、離型剤が塗布されている、請求項1又は2に記載の平盤状ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1に記載の平盤状ガラスの製造方法における前記上金型が、上金型を構成する上面金型と側面金型とが一体に構成され、前記側面金型の内周面が、上方から下方の開口に向かうにつれて拡径するテーパー状に形成してなることを特徴とする平盤状ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の平盤状ガラスの製造工程と、
前記平盤状ガラスの製造工程で製造された平盤状ガラスを研削及び/又は研磨加工する工程とを含む、ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
平盤状ガラスを製造する製造装置であって、
軟化板の上に載置したガラスピースを加熱し軟化させる軟化炉と、
前記軟化したガラスピースを、上金型と前記軟化板とでプレスするプレス装置と、
上部に前記軟化板が配置され、下部に走行部材を備え、前記軟化板の上面にガラスピースを載置した状態で、前記軟化炉のある加熱エリアと、前記プレス装置のあるプレスエリアを順に移送する走行手段を備えてなることを特徴とする平盤状ガラスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平盤状ガラスの製造に関し、特にガラス材料の移し替えによる異物の混入や付着の恐れがなく、安定して均一の品質を備えた高品質の平盤状ガラスの製造方法及び前記平盤状ガラスから製造されるガラス基板の製造方法、そして、前記平盤状ガラスの製造方法を実施するための製造装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来からガラスの製造方法として、所定の形状のガラス材料を下型と上型とを備えた金型に供給し、当該ガラス材料を加熱軟化させた後に前記金型でプレス成形し、成形済のガラスを取り出すようにしたリヒートプレス方式が広く知られている。リヒートプレス方式では、加熱軟化したガラス材料を金型に供給し、プレス成形する場合もある。
一般にリヒートプレス方式の成形は、まず、ガラス材料(ガラス塊)を例えば珪藻土の軟化板(軟化盆)の上に積載し、軟化板ごと軟化炉に投入し加熱し柔らかくする。
その後、軟化したガラスピースを軟化炉から取り出して、軟化したガラス材料を金型に供給しプレス成形を行う。そして、金型からプレス品を取り出してアニールして仕上げる。
【0003】
例えば、特許文献1には、光学ガラスを研削、研磨してプレス成形用ガラス素材を作製し、前記プレス成形ガラス素材表面に窒化ホウ素粉末を均一に塗布し、耐熱性軟化皿上に載せ、加熱軟化炉内へ入れ加熱し、次いで、軟化したガラス素材を軟化皿上からプレス成形用型内に導入しプレスしてレンズ形状に成形し、成形したレンズブランクをプレス成形用型から取り出しアニールし、その後研削、研磨してレンズを作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記リヒートプレス方式は、ガラス素材を溶融状態から金型に流し込んで加圧成形する方法(ダイレクトプレス方式)に比べて、高い精度の品質を保って安定した成形が可能である。
【0006】
しかし、上記リヒートプレス方式では、加熱・軟化したガラス材料をプレスして成形するため、軟化炉から取り出したガラス材料を軟化板から、金型内に移す必要があるが、金型に移す際に不純物が入り込む恐れがある。また、温度管理が難しいという問題があり、計算通りの精度を維持した高品質の成形ができない場合が生じる。
また、珪藻土の軟化板は、その特性上、欠けや割れが生じることがあり、その破片がガラス材料に付着や混入の恐れがある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とし、ガラス材料を再加熱しプレスして製造する方法において、安定して高精度の品質の平盤状ガラスの製造方法を提供するとともに、前記平盤状ガラスから製造されるガラス基板の製造方法、そして、前記平盤状ガラスの製造方法を実施するための製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕 ガラスピースを再加熱しプレスすることにより、平盤状ガラスを製造する方法であって、
(1)耐熱性およびプレス耐性を有する軟化板の上にガラスピースを載置する工程と、
(2)前記ガラスピースを前記軟化板とともに加熱エリアに移動し、前記ガラスピースを軟化させる工程と、
(3)前記ガラスピースの軟化後、前記ガラスピースを載置した状態で前記軟化板をプレスエリアに移動する工程と、
(4)前記プレスエリアにて、上金型と前記軟化板とで前記ガラスピースをプレスする工程と、
(5)前記上金型は、上面金型と側面金型とから構成され、プレス後に前記側面金型を離型してから、前記上面金型を離型する工程と、を含む平盤状ガラスの製造方法。
【0009】
〔2〕前記ガラスピースの軟化後、前記ガラスピースを軟化板に載置した状態で、プレスエリアに移動し、プレス前に幅寄せ装置で前記ガラスピースの角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する工程を含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の平盤状ガラスの製造方法。
【0010】
〔3〕ガラスピースの重量が2kg以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の平盤状ガラスの製造方法。
〔4〕前記軟化板の材料が金属、セラミックス、セラミックスコーティング金属である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の平盤状ガラスの製造方法。
〔5〕前記軟化板、前記上金型及び前記ガラスピースには、離型剤が塗布されている、前記〔1〕又は〔2〕に記載の平盤状ガラスの製造方法。
〔6〕前記〔1〕に記載の平盤状ガラスの製造方法における前記上金型が、上金型を構成する上面金型と側面金型とが一体に構成され、前記側面金型の内周面が、上方から下方の開口に向かうにつれて拡径するテーパー状に形成してなることを特徴とする平盤状ガラスの製造方法。
【0011】
〔7〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の平盤状ガラスの製造工程と、
前記平盤状ガラスの製造工程で製造された平盤状ガラスを研削及び/又は研磨加工する工程とを含む、ガラス基板の製造方法。
【0012】
〔8〕平盤状ガラスを製造する製造装置であって、
軟化板の上に載置したガラスピースを加熱し軟化させる軟化炉と、
前記軟化したガラスピースを、上金型と前記軟化板とでプレスするプレス装置と、
上部に前記軟化板が配置され、下部に走行部材を備え、前記軟化板の上面にガラスピースを載置した状態で、前記軟化炉のある加熱エリアと、前記プレス装置のあるプレスエリアを順に移送する走行手段
を備えてなることを特徴とする平盤状ガラスの製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラス材料を軟化板に載せたまま、移し替えることなく製造できるので、ガラス材料の移し替えによる不安定成分の混入や付着、すなわち、ガラスへの異物の混入、付着の恐れがなく、かつ無駄な工程がなく、また、工程ごとに熱伝導率の違いによる収縮・膨張に影響を受けることがなく、安定して均一の品質を備えた高品質の製品の成形が可能となり、高歩留で生産が可能な平盤状ガラスの製造方法及び製造装置を提供することができる。
また、本発明は、軟化板を耐熱性およびプレス耐性を有する、例えば金属、セラミックス、セラミックスコーティング金属製の材料で構成するので、珪藻土と比べて破損の恐れもなく、プレスエリアで軟化板が受けるプレス力にも対応でき(プレス耐性を備え)、各工程において軟化板の材料に影響を受けることがなくガラス材料の製造が可能となる。さらに、上記の材料は珪藻土のような多孔質材料ではなく中実材料であるため、珪藻土製の軟化板でガラスピースを加熱、軟化したときにおきる軟化板からガラスへ気泡が進入することもなく、成形品の精度にばらつきを生じさせる恐れもない。
【0014】
さらに、本発明は、金型の上金型が上面金型と側面金型とから構成され、プレス後に前記側面金型を離型してから、前記上面金型を離型する二段階で離型するので、軟化板を金属にすることで、ガラスは熱を奪われ収縮しやすく、逆に金属は膨張しやすくなって形状の精度に不具合が生じるような場合でも、まず側面のみ型を離型することで、熱伝導率の違いによる形状変形の影響を削減することができ、プレス品の側面が破損したり、歪みが生じたり、変形することがなく、高屈折率、低比重、高透過率の精度の高い成形品を成形することができる。
また、上金型を上面金型と側面金型で構成し、プレス成形後にプレス品を上面金型で押さえた状態で側面金型を上昇させることで、側面金型の離型をスムーズに行うことができる。
そして、軟化板や上金型、ガラスピースには、離型剤を塗布することで、よりスムーズに離型できプレス品に不良を生じさせることなく離型できる。
さらに、上金型の上面金型と側面金型を一体に構成した場合、側面金型の内周面にはテーパーが形成されているので、ガラスピースからの上金型と軟化板への熱移動の違いによる膨張収縮を調節することができ、安定して離型できる。
【0015】
また、上記のように本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の工程によれば、高精度の平盤状ガラスが製造でき、この工程で製造された平盤状ガラスについて、研削及び/又は研磨加工する工程を追加することにより、歪みや変形がなく、高品質のガラス基板の製造が可能となる。
【0016】
そして、本発明にかかる平盤状ガラスの製造装置は、上部に軟化板が配置され、下部に走行部材を備えた走行手段を、前記軟化板の上面にガラスピースを載置した状態で、軟化炉のある加熱エリアと、プレス装置のあるプレスエリアを順に移送させる構成であるため、不純物等が混入する可能性を低く抑えながら、平盤状ガラスを製造することができるので、上記効果に加え、人手によるガラス材料の移し替え、取外し等の必要がなく、すべて装置をシステム制御することが可能となり、効率良く平盤状ガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明にかかる製造方法の一例のフローチャート
【
図2】本発明にかかる製造方法の他の例のフローチャート
【
図3】本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法におけるプレスに用いられるプレス機の上金型の動作の説明用図面
【
図4-1】本発明にかかる製造方法の一例の流れを説明するための説明用図面
【
図4-2】本発明にかかる製造方法の一例の流れを説明するための説明用図面
【
図4-3】本発明にかかる製造方法の一例の流れを説明するための説明用図面
【
図5】本発明にかかる製造方法の他の例の流れを説明するための説明用図面
【
図6】本発明にかかる製造方法の他の例におけるセンタリング工程を説明するための説明用図面
【
図7-1】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-2】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-3】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-4】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-5】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-6】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図7-7】本発明にかかる製造方法の他の例の実施の手順を説明するための説明用図面
【
図8】本発明にかかる製造方法の第3の例の上金型を説明するための説明用図面
【
図9】本発明にかかる製造方法に使用される走行手段の例を説明するための説明用図面
【
図10】本発明にかかるガラス基板の製造方法の例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
なお、本発明は多くの異なる態様で実施可能であり、以下の実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【0019】
図1は、本発明にかかる製造方法の一例のフローチャート、
図2は、本発明にかかる製造方法の他の例のフローチャートであり、
図3は、本発明にかかる製造方法における上金型の動作の説明用図面である。
図中、1はガラスピース、2は軟化板、3は軟化炉、31はシャッター、40は上金型、41は上面金型、42は側面金型、5は幅寄せ装置、7は走行手段、αは金型の全ストローク長さ、βはプレスストローク長さ、γは側面金型の離型ストローク長さ、である。
【0020】
〔ガラス材料(ガラスピース)〕
本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法及びその方法を実施するための製造装置は、主としてAR(拡張現実)用のウエアブルディスプレイの導光板の材料となる高屈折率ガラスウエハの成形を目的としたものであり、成形品としては、例えば、φ155mm~305mm、厚さが5~50mm程度の平盤状(平板状)に成形される。
ガラス材料を再加熱してプレスする方法に使用されるガラス材料としては、直方体、立方体等の多角形のもの、円柱体などが挙げられるが、本発明では、成形品の形状を考慮して、ガラス材料をプレスしやすいように所定の大きさに加工されたもの、例えば切断されたものや割断されたもの、切削加工されたものなどが使用される。切断されたガラス材料は、ガラスピース、ガラスカットピース、カットピースなどと称されるが、本明細書においては、「ガラスピース」と称する。
例えば、ストリップ材、Eバー材などと呼ばれ、略直方体であり、二辺の長さに比べて特定方向に一辺が長いガラス板を、前記特定方向に対して垂直にスライス加工し、複数枚のガラス板を作って複数のガラスピースを得る。あるいは、円柱状、角柱状のガラスをそれぞれ円柱の軸、角柱の軸に対して垂直にスライス加工し、複数枚のガラス板を作って複数のガラスピースを得てもよい。
【0021】
本発明において、ガラスピースは、加熱エリアにおける加熱、軟化、プレスエリアにおけるプレスを同一軟化板上に載置された状態で行えるよう、加熱エリアからプレスエリアまで1台の走行手段で移送され、成形される。
したがって、成形に使用されるガラスピースは、最終的に成形される成形品の形状及び、軟化後にプレス機の金型に適合(入り込む)する形状で構成される。
なお、後述する第2実施例のように、ガラスピースを軟化後にプレスエリアに移送し、プレス前にプレス機の金型に適合するよう形状を調整しセンタリングする工程を含めることもできる。
【0022】
本発明にかかる平盤状のガラスの製造方法は、前述のとおり、ガラスピースの加熱、軟化、プレスの工程を走行手段の上部に配設された同一の軟化板上に載置した状態で行うことから、全製造工程においてガラス材料の移し替えが不要であり、不安定成分の混入や付着の恐れがなく、かつ重量の嵩む大口径の成形が可能という特徴を有する。
例えば、本発明によれば、成形されるガラスピースの重量が、2kg以上、好ましくは2~20kg程度(体積であれば、5.0×103~2.5×106mm3程度)であっても、平盤状ガラスを安定して高精度で製造することができる。
【0023】
〔軟化板〕
加熱エリアでガラスピースを加熱する軟化炉には、耐熱性皿、耐熱性軟化板と称される軟化板に載置されたガラスピースが送り込まれ、軟化炉はガラスピースの入室後に温度を上昇させ、ガラスピースが軟化するまで加熱をする。そして、ガラスピースの退室後に温度を下げる。加熱中、軟化板は360℃正転逆転を繰り返すようにすると、ガラスピースの加熱が均一化され好ましい。なお、軟化炉、加熱温度等は、公知の装置、公知の条件を使用することができる。
本発明において、ガラスピースは、成形工程の第1工程で軟化板に載置され、その後、加熱エリアでの加熱、軟化、次いでプレスエリアでのプレス、金型からの離型により成形が完了するまで、同一の軟化板に載置されたまま成形ラインを進む。
したがって、本発明における軟化板は、加熱エリアで必要とされる耐熱性及びプレスエリアにおけるプレスに耐えうる強度(プレス耐性)を備えた材料で構成され、好ましくは金属製又はセラミックス製の板体、あるいはその他の材料にセラミックコーティングした板体で構成される。加熱エリアでの軟化炉の温度によるが、軟化炉の温度より融点が高い金属、例えば、ステンレスや鉄、クロム、ニッケル、タングステンなどが挙げられ、ステンレス、特にステンレスSUS304等が好適である。これらの材料は、珪藻土のように多孔質材料ではないので、高温下で軟化板からガラスに気泡が入り込むこともない。
なお、珪藻土は耐熱性を有するものの、多孔質材料であり、十分なプレス耐性を備えていないので、ここでは軟化板材料としては不適当である。したがって、本明細書においては、珪藻土等の多孔質材料で構成されるものは、「耐熱性およびプレス耐性を有する軟化板」から除外される。
これにより、ガラスピースをエリアごとに移し替える必要がなく、移し替えによりガラスピースに不安定成分が混入する恐れがない。
また、ガラスピースの移し替えによる受け皿との非効率な熱伝導損失がなく、失透温度領域が少なく失透が発生しにくく、効率よく高透過率の成形品の成形が可能となる構成となっている。
なお、軟化板には、離型しやすいように、その表面に窒化ホウ素などの粉末状離型剤が均一に塗布される。また、軟化板はガラスピースを載置後、ガラスピースとともにバーナー等の公知の加熱手段により、予熱して温度を調整しておくと急激な温度変化によるガラスの破損を防ぐことができる。
【0024】
〔上金型〕
本発明の製造方法におけるプレスエリアでは、所定の形状に形成された上金型40が配置され、ガラスピース1が載置された前記軟化板2を下金型として、加熱エリアで軟化したガラスピース1がプレスされる。
ここで使用される上金型40は、上面金型41と側面金型42とからなる内外周2重構造となっている。そして、プレスエリアでのプレス後には、前記外周側の側面金型42を上昇させて離型してから、内周側の上面金型41を上昇させて離型する2段階の離型工程を経る。
【0025】
図3は、本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法におけるプレスに用いられるプレス機の上金型の動作の説明用図面である。
図3(a)は、プレス前の待機時の上金型40の状態を示す図である。長さαは、上金型40の全ストローク長さである。図において、上金型40の下方に軟化板2が配置され、前記軟化板2の上にガラスピース1が載置されている。
図3(b)は、プレス時における上金型40の状態を示す図である。長さβは、プレスに必要な長さ分、上金型40が降下するプレスストローク長さである。上金型40の降下時には、上面金型41及び側面金型42は、同時に降下し、ガラスピースをプレスする。
図3(c)は、プレス後に、プレス時の位置から、外周側の側面金型42だけを上昇させて離型した状態を示す図である。内周側の上面金型41はそのままに、外周側の側面金型42を先に上昇させて離型している。長さγは、側面金型42が上昇した長さ、側面金型の離型ストローク長さである。
【0026】
このように、プレス後に、一気に上金型40を離型せずに、まず側面側から離型し、次に上面側を離型する二段階離型とすることで、側面を離型する際に、プレス品の上面が上面金型41にしっかり押さえられているので、プレス品の側面にかかる上昇方向の負荷が減り、傷や歪みを生じさせることなく側面金型42が離型でき、さらに側面が離型しているので、上面金型41は側面に引っ張られることなく離型でき、プレス品に負荷をかけることなくきれいに離型ができる。
さらに説明すると、本発明のようなリヒートプレス方式では、ガラスが金型に焼き付いてしまうことを防止するため離型剤を用いるが、本発明のような比較的大きな径の平盤状ガラス成形品を製造する際、プレス時にガラスピース内部のガラスが表面に出てきてしまい、離型剤が塗布されていないガラスが金型に接することになり、離型が困難になってしまう場合がある。特に、軟化板を金属製又はセラミックス製の板体、あるいはその他の材料にセラミックコーティングした板体にすると、ガラスが保持する熱が軟化板2に吸収され、ガラスの温度低下が速くなる。そのため、第一段階として、プレス品の上面を上面金型41でしっかり押さえた状態で、側面金型42を離型することでガラスの温度低下を防ぎ、その後、上面金型41を離型することで、焼き付き等がなくきれいにプレス品の離型ができ、寸法精度の高い平盤状ガラスを成形することができる。
また、プレス時の温度は、軟化板2よりガラスの方が高い。そして、プレス時の温度における熱膨張率は、ガラスの方が金属よりも大きい。したがって、軟化板2を金属製又はセラミックス製の板体、あるいはその他の材料にセラミックコーティングした板体にすると、ガラスの熱が軟化板2に移動し、ガラスの温度が下がって収縮するが、軟化板2の温度は上昇し膨張するので、温度が落ち着くまで安定した離型が難しい。そこで、側面金型42を先に離型し、熱移動による膨張収縮を抑えることで、プレス後、短時間での安定した離型を実現している。
【0027】
〔幅寄せ装置〕
加熱エリアでのガラスピースの軟化後、所定の大きさに調整するために、プレス前に幅寄せ装置を使用してもよい。
幅寄せ装置5は、
図6に示すように四方から押し込むように作動し、軟化したガラスピース1を所定の大きさにし、プレス機の金型に整合するようにガラスピース1の形状を調整する。
これにより、加熱前のガラスピース1が角板状であっても、前記幅寄せ装置5により円盤状に調整したり、ガラスピースの各角部を押し込み、ガラスピースの対角線の長さを短くして、上金型にガラスピースをはめ込める形状とすることができる。
前述の略直方体形状のストリップ材、あるいはEバー材からガラスピースを作るときに、ストリップ材をスライス加工してガラス板を作り、必要に応じてガラス板を切断あるいは割断してガラスピースを得るとガラスの利用率を高めることができる。円盤形状のガラスをプレス成形する場合でも、ガラスの利用率を高める上から四角いガラス板のガラスピースを使用することが好ましい。
なお、前記幅寄せ装置5は、ガラスピース1の形状の調整の他、幅寄せ装置5の中心と金型の中心を機械的に合わせておくことで、ガラスピース1の中心と、金型、詳しくは上金型40の中心が一致する。このセンタリングの工程により、ガラスピース1が金型内にスムーズに嵌まり、金型内にガラスが十分に充填される前に固化してしまうという伸不の不良発生の要因を排除することもできるものとなっている。
【0028】
〔走行手段〕
図9は本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法に使用される走行手段の例を説明するための説明用図面であり、図に示す走行手段7は、その上部に前記軟化板2が配置され、下部に走行部材7aを備えて構成される。
走行手段7の移動機構である走行部材7aは、レール溝を移動する構成のものや車輪によるものであってもよく、上部に配置した軟化板2の上面に載置されるガラスピース1を安定して、加熱エリア、プレスエリアへと移送できる部材で構成される。
そして、走行手段7は、前記軟化板2の上面に載置したガラスピース1の加熱、軟化およびプレスの製造工程を実行するための製造装置において、同一軟化板上にガラスピース1を載置した状態で効率良く移送するよう制御される。
すなわち、本発明にかかる平盤状ガラスの製造装置は、前記平盤状ガラスの製造方法で平盤状ガラスを製造するための装置であり、軟化板2の上に載置したガラスピース1を加熱し軟化させる軟化炉3と、前記軟化したガラスピース1を、上金型40と前記軟化板2とでプレスするプレス装置と、上部に前記軟化板2が配置され、下部に走行部材7aを備え、前記軟化板2の上面にガラスピース1を載置した状態で、前記軟化炉3のある加熱エリアと、プレス装置のあるプレスエリアを順に移送する走行手段7を備えて構成される。
【0029】
〔実施例1〕
次に、
図1の本発明にかかる製造方法の一例のフローチャート及び
図4の本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の一例の流れを説明するための説明用図面に基づいて、本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の第1実施例を説明する。
まず、(1)軟化板2の上にガラスピース1を載置する(S1:第1工程)。
軟化板2は、加熱エリアでの加熱に耐えうる耐熱性、プレスエリアでの押圧に耐えうる強度(プレス耐性)を備えた材料で構成され、好ましくは金属製又は耐熱性セラミックスからなり、例えばステンレス製で構成される。セラミックコーティングを施しておくことも好ましい。また、軟化板2は、BN粉末等の粉末状の離型剤が塗布されているものが好ましい。なお、軟化板が備える耐熱性は、900℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。また軟化板が備えるプレス耐性としては、圧縮強度が50kg/mm
2以上であることが好ましい。
ガラスピース1は、成形品の大きさに合わせて適当な大きさのものが切断されて用意される。ガラスピース1及び軟化板2には、窒化ホウ素などの粉末状離型剤が均一に塗布される。なお、窒化ホウ素以外の粉末状離型剤として、二硫化モリブデン、アルミナ、カオリン等を用いることができる。
なお、本実施例では、
図4-1に示すようにガラスピース1を載置した軟化板2を走行手段7に載せた構成となっている。状況によって、加熱エリアの軟化炉3に入室する前に、バーナー等の加熱手段(図示せず)によりガラスピース1を予熱する。
【0030】
(2)前記ガラスピース1を前記軟化板2とともに加熱エリアに移動し、前記ガラスピース1を軟化させる(S2:第2工程)。
本実施例では、前記軟化板2を載せた走行手段7である走行車により、加熱エリアに送られる。加熱エリアには、軟化炉3が配置され、軟化炉3のシャッター31が開き走行手段7が入室する。
そして、本実施例では、前記走行手段7の回転機構により、軟化板2を回転させることで、軟化板2上に載置されたガラスピース1にムラなく熱を加える構成となっている。
軟化炉3は、走行手段7が炉内に入った後、ランピング昇温し(予め定めたスケジュールに基づき昇温し)、走行手段7が炉外に出た後降温する。昇温温度、降温温度は、ガラスピース1の大きさや状況にあわせて適宜選択、決定する。プレスする時のガラスの温度は、粘度が106dPa・s以下、好ましくは105dPa・s~106dPa・sとなる温度とすればよい。
【0031】
(3)前記ガラスピース1の軟化後、前記軟化したガラスピース1を軟化板2に載置した状態で前記軟化板2をプレスエリアに移動する(S3:第3工程)。
プレスエリアには、プレス機の上金型40が配置され、ガラスピース1をプレスする機構が構成される。軟化板2は、プレス機の上金型40が配置されたプレス位置まで、ガラスピース1を載せて移動し、上金型40が降下してガラスピース1をプレスする時には、その受け台となって下金型の役割を担う。したがって、別途下金型を準備する必要はなく、また軟化板2から別の受け台に移す必要もなく、軟化板2を移動させるだけで、全工程を実行することができる構成となっている。
本実施例では、軟化板2を載せた走行手段7を全工程で走らせることにより、スムーズに各エリアの移動を可能としているが、プレスエリアに受け台を設け、その受け台にガラスピース1を載置した軟化板2を移してプレスしてもよく、各エリアの移動手段は特に限定されない。
【0032】
(4)プレスエリアにて、上金型40と前記軟化板2とで、ガラスピースをプレスする(S4:第4工程)。
第4工程は、プレス機の上金型40の降下位置をプレス位置とし、前記プレス位置にガラスピース1が配置されるよう軟化板2が移動しセットされる(第4工程(a))。
そして、軟化したガラスピース1をプレスする(第4工程(b)(c))。
第4工程(c)は、ガラスピース1が所望の厚さにプレスされた状態である。
【0033】
(5)上金型40は、上面金型41と側面金型42とから構成され、プレス後に前記側面金型42を離型してから、前記上面金型41を離型する(S5:第5工程)。
上金型40は、内外周2重構造となっていて、内周を構成する上面金型41と、外周を構成する側面金型42はそれぞれ、独自で上昇下降が可能となっている。
本実施例では、上面金型41が、第4工程(c)のガラスピース1が所望の厚さにプレスされた状態のまま、外周の側面金型42のみ上昇させて離型している(第5工程(a))。
その後、上金型40を上昇させ、上面金型41を離型している(第5工程(b))。
そして、軟化板2にプレス品10を載せたままアニールし成形が終了する。
【0034】
上記の製造方法により、直径305.0mm、厚さ13.5mmの平盤状(円盤状)のガラスを1000枚作製した。1000枚のガラス成形品の直径、厚さを測定したところ、すべての成形品の直径が305.0mm±1.0mm、厚さ13.5mm±0.7mmの範囲内であった。
なお、ガラス成形品の両主表面はともに平坦であるが、主表面を曲面に成形することもできる。例えば、上金型の成形面を凸面としてプレス成形することにより、一方の主表面が凹面である成形品を作製することができる。また、上金型の成形面を凹面としてプレス成形することにより、一方の主表面が凸面である成形品を作製することができる。
【0035】
〔実施例2〕
図2の本発明にかかる製造方法の他の例のフローチャート及び
図5の本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の他の例の流れを説明するための説明用図面に基づいて、本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の第2実施例を説明する。
第2実施例は、前記第1実施例における加熱エリアでガラスピース1を軟化させる第2工程の後、プレスエリアに移動しプレスする前に、前記ガラスピース1を軟化板2に載置した状態で、幅寄せ装置5で前記ガラスピース1の角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する工程を含む製造方法である。
すなわち、以下の工程で構成される。
(1)軟化板2の上にガラスピース1を載置する(S11:第1工程)。
(2)前記ガラスピース1を前記軟化板2とともに加熱エリアに移動し、前記ガラスピース1を軟化させる(S12:第2工程)。
(3)ガラスピース1を軟化板2に載置した状態でプレスエリアに移送(S13:第3工程)。
(4)幅寄せ装置5で、前記ガラスピース1の角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する(S14:第4工程)。
(5)上金型40と前記軟化板2とで、ガラスピースをプレスする(S15:第5工程)。
(6)上金型40は、上面金型41と側面金型42とから構成され、プレス後に前記側面金型42を離型してから、前記上面金型41を離型する(S16:第6工程)。
そして、軟化板2にプレス品10を載せたままアニールし成形が終了する。
【0036】
第2実施例は、第2工程で軟化したガラスピース1の形状をプレス前に調整することで、次の工程で上金型40に前記ガラスピース1がはまりやすくするために中心が合うように幅寄せ装置5を使用する第4工程を含むものである。
幅寄せ装置5は、
図6の本発明にかかる製造方法の他の例におけるセンタリング工程を説明するための説明用図面に示すように四方からガラスピース1の角部を押し込むように作動し、軟化したガラスピース1を所定の大きさにする(
図6:第3工程)。
また、前記幅寄せ装置5は、ガラスピース1の形状の調整だけでなく、幅寄せ装置5の中心と上金型40の中心を機械的に合うように設定し、ガラスピース1の中心と、金型(上金型)の中心を一致させる。
第2実施例における幅寄せ装置5による形状調整の工程により、ガラスピース1と金型の形状が合わずに軸ずれが生じ、金型内にガラス材料が十分に充填される前に固化してしまうという伸不の不良発生の要因を大幅に削減でき、熱の不均一による不均一な収縮を防止することができる。
このようにして、第1実施例と同様の高精度なガラス成形品を多数作製した。
【0037】
〔実施の手順〕
前記第2実施例を一例として、本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の実施の手順を
図7に基づいて説明する。
第2実施例における成形手順は、加熱エリアでガラスピース1を軟化させる第2工程の後、軟化板2をプレスエリアに移動(第3工程)し、プレスする前に前記ガラスピース1を軟化板2に載置した状態で、幅寄せ装置5で前記ガラスピース1の角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する。
図7-1は、前準備位置、プレス位置、軟化位置が順に配置され、走行手段7で相互に移送可能となっている。
そして第2実施例の実施の手順は以下の通りである。
(1)軟化板2の上にガラスピース1を載置する(
図7-2:第1工程)。
なお、ガラスピース1を載置する前に、ガラスピース1及び軟化板2にはBN粉末等の離型剤を均一に塗布しておく。また、ガラスピース1の急激な温度変化による破損を防止するために、状況によってあらかじめバーナー等で予熱しておく。
(2)前記ガラスピース1を前記軟化板2とともに走行手段7に載置し、そのまま加熱エリアの軟化位置(図面視、右側)まで移動し、軟化炉3で前記ガラスピース1を加熱し軟化させる(
図7-3:第2工程)。
(3)その後、前記ガラスピース1を軟化板2に載置したまま、プレスエリアのプレス位置(図面視、中央)まで戻り、幅寄せ装置5に移動し、前記ガラスピース1の角部をとりセンタリングして、所定の大きさに調整する(
図7-4:第3、4工程)。
(4)前記ガラスピース1を軟化板2に載置し、センタリングした位置のまま、上金型40を降下し、前記軟化板2とで、ガラスピース1をプレスする(
図7-5:第5工程)。
(5)上金型40は、上面金型41と側面金型42とから構成され、プレス後に前記側面金型42を離型してから、前記上面金型41を離型する(
図7-6:第6工程)。
そして、軟化板2に離型したプレス品10を載せたまま、前準備位置まで移動し、アニールし成形が終了する(
図7-7:完成)。
【0038】
本実施例では、平盤状ガラスの製造装置を構成する走行手段7として、レール上を走行可能な走行部材7aを備えた走行車を使用しているが、それぞれの工程の移動には無駄がなく移動距離は短いので、走行手段7はレール上を走行するものに限定されることはなく、複数の車輪を備えた自走式や無限軌道型の走行手段であってもよく、公知の移送手段を採用できる。走行手段7の走行は、手動や無線によるもの、電子制御によるもの等、システムの構成に合わせて任意に選択できる。
そして、上記手順により、省スペースで効率よく、高品質な平盤状ガラスの成形が可能となる。
【0039】
図8は、本発明にかかる製造方法の第3の例の上金型を説明するための説明用図面である。
図8に示す上金型は、上面金型61と側面金型62とが一体に構成される一体形上金型60である。前記一体型上金型60は、前記側面金型62の内周面63が、上方から下方の開口に向かうにつれて拡径するテーパー64状に形成される。
プレス時において、ガラスピース1の下側の軟化板2は、軟化炉3でガラスピース1と共に加熱されるため、ガラスピース1との温度差は大きくはない。そのため、一体型上金型60と軟化板2の温度差が大きく、ガラスピース1からの熱移動率が異なり、ガラスピース1の上面と下面の収縮や、軟化板2と上面金型61の膨張に差が生じる。そのため、本実施例では、前記側面金型62の内周面63に上方から下方の開口に向かうにつれて拡径するテーパー64を形成し、プレス時において、ガラスピース1からの一体型上金型60と軟化板2への熱移動の違いによる膨張収縮を調節し、精度高く成形でき、安定して離型できるものとなっている。
第1実施例、第2実施例で作製したガラス成形品を用いて、ゴーグルタイプの拡張現実型ディスプレイの表示ガラス板(導光板)を複数枚作製した。
また、第1実施例、第2実施例で作製したガラス成形品を用いて、ガラス製レンズなどの光学素子を作製した。ともに、安定した高品質の製品に仕上がった。
【0040】
〔第4実施例〕
第4実施例として、上記した本発明にかかる平盤状ガラスの製造方法の第1実施例、第2実施例の製造工程で作成した平盤状ガラスについて、研削及び/又は研磨加工する工程を追加し、平盤状ガラスからガラス基板を製造する。
図10は、本発明にかかるガラス基板の製造方法の例のフローチャートを示す。
前記平盤状ガラスの製造方法の第1実施例の第1工程(S1)から第5工程(S5)で製造され上面金型を離型しアニールして製造された成形品である平盤状ガラスを、研削及び/又は研磨加工することで、ガラス基板が製造される(SX)。
なお、ガラス基板は、上述のとおり平盤状(平板状)であり、一般的には薄い円盤状であるが、それに限定されるものではなく、四角形等の多角形などにしてもよい。
得られるガラス基板に対して、必要に応じ表面処理を実施し、その後、複数個のガラス素子に切断する。ガラス素子を所定の形状に研削及び研磨することにより、ウエアブルディスプレイの導光板などを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は平盤状ガラスの製造方法は、平盤状のガラスだけでなく、上金型の形状を調整することで片面に曲面が成形されるガラス製品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ガラスピース
2 軟化板
3 軟化炉
31 シャッター
40 上金型
41 上面金型
42 側面金型
5 幅寄せ装置
60 一体型上金型
61 上面金型
62 側面金型
63 内周面
64 テーパー
7 走行車
α 金型の全ストローク長さ
β プレスストローク長さ
γ 側面金型の離型ストローク長さ