(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127560
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230906BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230906BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230906BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20230906BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20230906BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230906BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230906BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08L9/00
C08L31/04 S
C08L29/14
C08J5/18
C09J201/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027597
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022031077
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
(72)【発明者】
【氏名】下地頭所 彰
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA12X
4F071AA15
4F071AA20
4F071AA21
4F071AA22X
4F071AA30
4F071AA39
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4F071AC11
4F071AE04
4F071AE05
4F071AH08
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4J002BB061
4J002BB151
4J002BB181
4J002BE061
4J002BP011
4J002EJ016
4J002FD346
4J002GJ01
4J040BA192
4J040CA031
4J040DA001
4J040DA051
4J040JB01
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA06
(57)【要約】
【課題】相溶性に優れ、樹脂からの析出の発生が抑制されており、かつ、樹脂の熱劣化についても防止することができる樹脂組成物を提供する。また、該樹脂組成物を用いた樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と、下記式で表される構成単位(A-1)及び構成単位(A-1’)からなる群から選ばれる少なくとも1種である構成単位(A)を有する化合物と、を含有する、樹脂組成物。
[化1]
式中、R
1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。nは2以上、4以下の整数を表し、n’は2以上5以下の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
下記式で表される構成単位(A-1)及び構成単位(A-1’)からなる群から選ばれる少なくとも1種である構成単位(A)を有する化合物と、
を含有する、樹脂組成物。
【化1】
式中、R
1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。nは2以上、4以下の整数を表し、n’は2以上5以下の整数を表す。
【請求項2】
前記化合物は、更に、テルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)を有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物は、前記構成単位(A)の含有率が1モル%以上、60モル%以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物は、前記構成単位(A)の含有率が0.9重量%以上、60重量%以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物は、重量平均分子量が400以上、1万以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記構成単位(A-1)又は前記構成単位(A-1’)において、n及びn’が2である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記構成単位(A-1)又は前記構成単位(A-1’)において、n及びn’が3である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記化合物が少なくとも部分的に水素添加された水素添加体である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、ジエン系ゴム、又は、ジエン系ゴムの水素添加体である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記化合物を0.1~100重量部含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなるフィルム状樹脂成形体。
【請求項16】
請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる粒子状樹脂成形体。
【請求項17】
請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる発泡体。
【請求項18】
請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物からなるホットメルト接着剤 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の熱可塑性樹脂に適用可能な樹脂組成物に関する。また、本発明は、該樹脂組成物を用いた樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン、ゴム、ポリビニルブチラール等の熱可塑性樹脂は、単独では加工時・使用時の熱や紫外線により劣化しやすいため、酸化防止剤等の種々の添加剤を配合することによって、樹脂の劣化の抑制がされている。例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂およびゴム質重合体よりなる組成物に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の添加剤は、低分子量であることや相溶性に劣るため、樹脂との組み合わせによっては添加剤が析出してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、相溶性に優れ、樹脂からの析出の発生が抑制されており、かつ、樹脂の熱劣化についても防止することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該樹脂組成物を用いた樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示1は、熱可塑性樹脂と、下記式で表される構成単位(A-1)及び構成単位(A-1’)からなる群から選ばれる少なくとも1種である構成単位(A)を有する化合物と、を含有する、樹脂組成物である。
【0007】
【0008】
式中、R1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。nは2以上、4以下の整数を表し、n’は2以上5以下の整数を表す。
本開示2は、前記化合物は、更に、テルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)を有する、本開示1の樹脂組成物である。
本開示3は、前記化合物は、前記構成単位(A)の含有率が1モル%以上、60モル%以下である、本開示1又は2の樹脂組成物である。
本開示4は、前記化合物は、前記構成単位(A)の含有率が0.9重量%以上、60重量%以下である、本開示1~3のいずれかの樹脂組成物である。
本開示5は、前記化合物は、重量平均分子量が400以上、1万以下である、本開示1~4のいずれかの樹脂組成物である。
本開示6は、前記構成単位(A-1)又は前記構成単位(A-1’)において、n及びn’が2である、本開示1~5のいずれかの樹脂組成物である。
本開示7は、前記構成単位(A-1)又は前記構成単位(A-1’)において、n及びn’が3である、本開示1~5のいずれかの樹脂組成物である。
本開示8は、前記化合物が少なくとも部分的に水素添加された水素添加体である、本開示1~7のいずれかの樹脂組成物である。
本開示9は、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である、本開示1~8のいずれかの樹脂組成物である。
本開示10は、前記熱可塑性樹脂が、ジエン系ゴム、又は、ジエン系ゴムの水素添加体である、本開示1~8のいずれかの樹脂組成物である。
本開示11は、前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、本開示1~8のいずれかの樹脂組成物である。
本開示12は、前記熱可塑性樹脂が、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂である、本開示1~8のいずれかの樹脂組成物である。
本開示13は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記化合物を0.1~100重量部含有する、本開示1~12のいずれかの樹脂組成物である。
本開示14は、本開示1~13のいずれかの樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体である。
本開示15は、本開示1~13のいずれかの樹脂組成物を成形してなるフィルム状樹脂成形体である。
本開示16は、本開示1~13のいずれかの樹脂組成物を成形してなる粒子状樹脂成形体である。
本開示17は、本開示1~13のいずれかの樹脂組成物を成形してなる発泡体である。
本開示18は、本開示1~13のいずれかの樹脂組成物からなるホットメルト接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行った結果、構成単位(A)を有する化合物を熱可塑性樹脂に配合すると、相溶性に優れるために種々の熱可塑性樹脂において析出の抑制が可能であり、かつ樹脂の熱劣化を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有する。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ジエン系ゴム等のゴム、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種以上用いた組成物でもよい。
【0011】
上記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加体、ポリビニルブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物又は共重合体が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体であってもよいし、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30重量%以下、好ましくは10重量%以下)のα-オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂であってもよい。ポリエチレン系樹脂を構成するα-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0013】
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)ブロック共重合体等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0014】
上記ジエン系ゴムの水素添加体としては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体、水添スチレン-ブチレンゴム(HSBR)等が挙げられる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、下記式で表される構成単位(A-1)及び構成単位(A-1’)からなる群から選ばれる少なくとも1種である構成単位(A)を有する化合物を含有する。
【0016】
【0017】
式中、R1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。nは2以上、4以下の整数を表し、n’は2以上5以下の整数を表す。なお、*は連結部を表す。
【0018】
上記化合物は、上記構成単位(A)を側鎖中に有していてもよいし、主鎖骨格中又は主鎖骨格の末端に有していてもよい。なかでも、添加剤として好適な物性を有することができることから、上記化合物は、上記構成単位(A)を主鎖骨格中又は主鎖骨格の末端に有することが好ましい。
【0019】
上記構成単位(A-1)及び上記構成単位(A-1’)において、R1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。
上記脂肪族炭化水素基は特に限定されず、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等が挙げられる。上記芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば、置換又は非置換の炭素数1~20のアリール基等が挙げられる。
上記極性官能基は特に限定されず、例えば、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシ基、水酸基、ニトリル基、ニトロ基等が挙げられる。
上記極性官能基を有する脂肪族炭化水素基は特に限定されず、例えば、上記のような脂肪族炭化水素基における1以上の水素が上記のような極性官能基に置換された基を用いることができる。上記極性官能基を有する芳香族炭化水素基も特に限定されず、例えば、上記のような芳香族炭化水素基における1以上の水素が上記のような極性官能基に置換された基を用いることができる。
なお、上記化合物において、1つの構成単位(A-1)に含まれる複数のR1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、異なる構成単位(A-1)に含まれる複数のR1も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。同様に、1つの構成単位(A-1’)に含まれる複数のR1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、異なる構成単位(A-1’)に含まれる複数のR1も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
上記構成単位(A-1)及び上記構成単位(A-1’)において、nは2以上、4以下の整数であり、n’は2以上、5以下の整数であれば特に限定されないが、原料の入手のし易さの観点から、n及びn’が2又は3であることが好ましい。
【0021】
上記構成単位(A-1)及び上記構成単位(A-1’)として、より具体的には例えば、ジヒドロキシベンゼン又はその誘導体に由来する構成単位(n及びn’が2の場合)、トリヒドロキシベンゼン又はその誘導体に由来する構成単位(n及びn’が3の場合)等が挙げられる。これらの構成単位は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ジヒドロキシベンゼン又はその誘導体は特に限定されず、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ハイドロキノン、ジヒドロキシトルエン、ジヒドロキシキシレン、ジヒドロキシフェニルエチルアミン塩酸塩、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシアセトフェノン、ジアセチルジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシフェニル-2-ブタノン、ジヒドロキシフェニル酢酸メチル、ベンジルジヒドロキシフェニルケトン、ジヒドロキシベンズアミド、ジヒドロキシメトキシベンゼン、ジヒドロキシベンジルアルコール、ジヒドロキシフェニルエタノール、ジヒドロキシフェニルグリコール、ジヒドロキシフェニルアセトニトリル、ジヒドロキシニトロベンゼン等が挙げられる。これらのジヒドロキシベンゼン又はその誘導体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、立体障害が少なく熱可塑性樹脂と相互作用しやすいことから、ピロカテコールが好ましい。
上記トリヒドロキシベンゼン又はその誘導体は特に限定されず、例えば、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジフェニルメタン、6-ヒドロキシ-L-ドーパ、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸ブチル、没食子酸イソブチル、没食子酸イソアミル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ステアリル、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシフェニルエタノン、トリヒドロキシフェニルブタノン、トリヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアミド、トリヒドロキシニトロベンゼン等が挙げられる。これらのトリヒドロキシベンゼン又はその誘導体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、立体障害が少なく熱可塑性樹脂と相互作用しやすいことから、ピロガロールが好ましい。
【0022】
上記構成単位(A)は、石油由来材料のみからなってもよいが、生物由来材料を含むことが好ましい。石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで、石油由来材料に代えて生物由来材料を用いることにより、石油資源を節約する試みがなされるようになっている。上記構成単位(A)が生物由来材料を含んでいれば、石油資源を節約する観点で好ましい。また、上記構成単位(A)が生物由来材料を含んでいれば、生物由来材料は元々大気中の二酸化炭素を取り込んで生成されるため、これを燃焼させても総量としては大気中の二酸化炭素を増やすことがないと考えられ、二酸化炭素の排出量を削減する観点からも好ましい。
生物由来材料を含む上記構成単位(A)を構成するモノマーとしては、例えば、レゾルシノール、ジヒドロキシフェニルエチルアミン塩酸塩、ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、ジヒドロキシフェニルアラニン、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンジルアルコール、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、6-ヒドロキシ-L-ドーパ、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸ブチル、没食子酸イソブチル、没食子酸イソアミル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ステアリル、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアミド、トリヒドロキシニトロベンゼン等が挙げられる。
【0023】
上記化合物における上記構成単位(A)の含有率(モル基準)は特に限定されないが、好ましい下限は1モル%、好ましい上限は60モル%である。上記構成単位(A)の含有率が1モル%以上であれば、樹脂の熱劣化の抑制効果を効果的に得ることができる。上記構成単位(A)の含有率が60モル%以下であれば、添加剤として好適な物性を有することができる。上記構成単位(A)の含有率のより好ましい下限は5モル%、より好ましい上限は50モル%であり、更に好ましい下限は10モル%、更に好ましい上限は30モル%である。
【0024】
上記化合物における上記構成単位(A)の含有率(重量基準)は特に限定されないが、好ましい下限は0.9重量%、好ましい上限は60重量%である。上記構成単位(A)の含有率が0.9重量%以上であれば、樹脂の熱劣化の抑制効果を効果的に得ることができる。上記構成単位(A)の含有率が60重量%以下であれば、添加剤として好適な物性を有することができる。上記構成単位(A)の含有率のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は50重量%であり、更に好ましい下限は10重量%、更に好ましい上限は30重量%である。
【0025】
上記化合物は、更に、テルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)を有することが好ましい。即ち、上記化合物は、上記構成単位(A)に加えて、更に、テルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)を有することが好ましい。上記構成単位(B)を有することにより、熱可塑性樹脂との相溶性をより向上することができる。
なかでも、樹脂組成物の接着性をより高めることができることから、テルペン系モノマーに由来する構成単位又はビニル系モノマーに由来する構成単位が好ましく、テルペン系モノマーに由来する構成単位とビニル系モノマーに由来する構成単位とを併用することも好ましい。また、熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる観点からは、テルペン系モノマーに由来する構成単位又は共役ジエン系モノマーに由来する構成単位が好ましい。これらの構成単位は不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を有するため、化合物がこれらの構成単位を有することにより、熱可塑性樹脂との相溶性が向上し、相溶性の悪化に起因して樹脂組成物の接着性が低下することを抑制することができる。
【0026】
上記テルペン系モノマーは特に限定されず、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン、δ-3-カレン、ジメチルオクタトリエン、アロオシメン、ミルセン、オシメン、リナロール、コスメン等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物の接着性をより高めることができることから、α-ピネン、β-ピネン又はリモネンが好ましい。
上記ビニル系モノマーは特に限定されないが、熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる観点から、1分子中に芳香環を2以上含む構造(例えば、ナフタレン構造、アントラセン構造、ビフェニル構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造等)を有さないビニル系モノマーが好ましい。上記1分子中に芳香環を2以上含む構造を有さないビニル系モノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、クマロン、インデン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、2-フェニル-2-ブテン等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物の接着性をより高めることができることから、スチレンが好ましい。
上記共役ジエン系モノマーは特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物の接着性をより高めることができることから、イソプレンが好ましい。
これらのモノマー(b)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記構成単位(B)は、石油由来材料のみからなってもよいが、生物由来材料を含むことが好ましい。石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで、石油由来材料に代えて生物由来材料を用いることにより、石油資源を節約する試みがなされるようになっている。上記構成単位(B)が生物由来材料を含んでいれば、石油資源を節約する観点で好ましい。また、上記構成単位(B)が生物由来材料を含んでいれば、生物由来材料は元々大気中の二酸化炭素を取り込んで生成されるため、これを燃焼させても総量としては大気中の二酸化炭素を増やすことがないと考えられ、二酸化炭素の排出量を削減する観点からも好ましい。
生物由来材料を含む上記構成単位(B)を構成する上記モノマー(b)としては、例えば、テルペン系モノマー、エチレン、プロピレン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0028】
上記化合物における上記構成単位(B)の含有率は特に限定されないが、好ましい下限は40モル%、好ましい上限は99モル%である。上記構成単位(B)の含有率が40モル%以上であれば、添加剤として好適な物性を確保しつつ、熱可塑性樹脂との相溶性を向上することができる。上記構成単位(B)の含有率が99モル%以下であれば、上記構成単位(A)の含有率を充分に確保することができるため、添加剤として好適な物性を有することができる。上記構成単位(B)の含有率のより好ましい下限は50モル%、より好ましい上限は90モル%である。
【0029】
上記化合物は、下記式で表される構造を有する共重合体であることが好ましい。このような構造を有する共重合体は、後述するようなカチオン重合を用いた方法により得られる共重合体であり、添加剤として好適な物性を確保しつつ、熱可塑性樹脂との相溶性を向上することができる。
【0030】
【0031】
式中、Aは構成単位(A)を表し、Bは構成単位(B)を表し、s及びtはそれぞれ1以上の整数を表す。なお、*は連結部を表す。
【0032】
上記化合物は、上記構成単位(A)及び上記構成単位(B)を有する化合物であることが好ましく、上記構成単位(A)及び上記構成単位(B)を有する共重合体であることがより好ましく、更に他の構成単位を有してもよい。共重合体である場合、上記構成単位(A)と上記構成単位(B)とは、ランダムに共重合していてもよいし、例えばそれぞれがブロックセグメントを形成したうえでブロックセグメント同士が結合する場合のように規則性又は周期性をもって共重合していてもよい。
【0033】
上記化合物は、不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を有することが好ましい。
上記化合物は、上記不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を上記構成単位(A)又は上記構成単位(B)中に有していてもよいし、他の構成単位中に有していてもよい。なかでも、合成のし易さの観点、及び、熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる観点から、上記不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を上記構成単位(B)又は他の構成単位中に有することが好ましい。このような上記不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を有する上記構成単位(B)又は他の構成単位は特に限定されないが、テルペン系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)が好ましい。即ち、上記化合物は、上記不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素基を、テルペン系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構成単位(B)中に有することが好ましい。なかでも、樹脂組成物の接着性をより高めることができることから、テルペン系モノマーに由来する構成単位中に有することが好ましい。
【0034】
また、上記他の構成単位としては、例えば、上記構成単位(A)には含まれない他のフェノール系モノマーに由来する構成単位、無水マレイン酸に由来する構成単位等も挙げられる。
上記他のフェノール系モノマーは特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノリルフェノール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらの他のフェノール系モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記化合物の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が400、好ましい上限が1万である。上記重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、析出を効果的に抑制することができ、かつ添加剤として好適な物性を有することができる。上記重量平均分子量(Mw)のより好ましい下限は500、より好ましい上限は5000であり、更に好ましい下限は700、更に好ましい上限は3000である。
上記重量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整するには、例えば、化合物の組成、重合方法、重合条件等を調整すればよい。
【0036】
なお、重量平均分子量(Mw)及び後述するような分子量分布(Mw/Mn)は、以下の方法により測定できる。
化合物の溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過する。得られた濾液をゲル浸透クロマトグラフ(例えば、Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、化合物のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求める。カラムとしては、例えば、GPC KF-802.5L(昭和電工社製)を用い、検出器としては、示差屈折計を用いる。
【0037】
上記化合物中の炭素(炭素原子)に占める生物由来の炭素(炭素原子)の含有率は特に限定されないが、炭素に占める生物由来の炭素の含有率が10%以上であることが好ましい。生物由来の炭素の含有率が10%以上であることが「バイオベース製品」であることの目安となる。
上記生物由来の炭素の含有率が10%以上であれば、石油資源を節約する観点や、二酸化炭素の排出量を削減する観点から好ましい。上記生物由来の炭素の含有率のより好ましい下限は30%、更に好ましい下限は60%、更により好ましい下限は70%、一層好ましい下限は90%である。上記生物由来の炭素の含有率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。
なお、生物由来の炭素には一定割合の放射性同位体(C-14)が含まれるのに対し、石油由来の炭素にはC-14がほとんど含まれない。そのため、上記生物由来の炭素の含有率は、化合物に含まれるC-14の濃度を測定することによって算出することができる。具体的には、多くのバイオプラスチック業界で利用されている規格であるASTM D6866-20に準じて測定することができる。
【0038】
上記化合物の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1~100重量部であることが好ましく、より好ましくは1~20重量部である。0.1重量部以上であると、熱可塑性樹脂に対する熱劣化の抑制効果が充分に得られる。一方、100重量部を超えると、その増分に応じた熱劣化の抑制効果が得られにくいことがある。
【0039】
上記化合物には、上述したような化合物の水素添加体(水添体)も含まれる。即ち、上記化合物は、少なくとも部分的に水素添加された水素添加体であってもよい。なお、水素添加体とは、上述したような化合物に存在する炭素-炭素二重結合を少なくとも部分的に水素添加により飽和化した化合物である。すなわち、上記化合物は、上述したような化合物中の炭素-炭素二重結合の一部が水素添加された水添体であってもよく、上述したような化合物中の炭素-炭素二重結合の全てが水素添加された水添体であってもよい。このような水素添加体であっても、種々の熱可塑性樹脂に対して相溶性に優れ、熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制することができる。なかでも、上記構成単位(B)としてのテルペン系モノマーに由来する構成単位における炭素-炭素二重結合が少なくとも部分的に水素添加されていることが好ましい。
【0040】
上記化合物を製造する方法は特に限定されないが、上記構成単位(A)を主鎖骨格中又は主鎖骨格の末端に有する場合は、例えば、次のような方法が好ましい。即ち、上記構成単位(A)を構成するモノマー(a)と、上記構成単位(B)を構成するテルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)とを共重合させる方法(以下、製造方法[I]ともいう)である。
【0041】
上記モノマー(a)としては、下記式で表されるモノマー(a-1)が挙げられる。
【0042】
【0043】
式中、R1はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、極性官能基、極性官能基を有する脂肪族炭化水素基、又は、極性官能基を有する芳香族炭化水素基を表す。n’’は2以上、5以下の整数を表す。
【0044】
上記化合物の製造方法[I]では、上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とをカチオン重合により共重合させることが好ましい。
カチオン重合を用いることにより、上記モノマー(a)のフェノール性水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基等の官能基を予め化学修飾により保護することなく上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とを共重合させることができ、その後の脱保護も不要となる。このため、より簡便な1段階の反応工程により上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とを共重合させることができ、不純物の低減及び収率の向上にもつながる。
【0045】
上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とをカチオン重合により共重合させる方法としては、上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とをルイス酸の存在下で反応させる方法が好ましい。このような方法によれば、上記モノマー(b)のカチオンが生じて、上記モノマー(b)同士のカチオン重合が進行するとともに、上記モノマー(a)と上記モノマー(b)とのFridel-Craftsアルキル化反応が進行すると考えられる。このような反応が繰り返し起こることにより、上記モノマー(a)に由来する構成単位(A)と、上記モノマー(b)に由来する構成単位(B)とを有する共重合体を得ることができる。
上記ルイス酸は特に限定されず、従来公知のルイス酸を用いることができ、例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、ジエチルアルミニウムクロリド(Et2AlCl2)、塩化すず(IV)(SnCl4)、塩化チタン(IV)(TiCl4)、三塩化ホウ素(BCl3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF3・EtO)等が挙げられる。なかでも、より高い収率が得られることから、塩化アルミニウム(AlCl3)が好ましい。
【0046】
より具体的には例えば、上記モノマー(a)としてピロガロールを用い、上記モノマー(b)としてα-ピネンを用い、これらをルイス酸である塩化アルミニウム(AlCl3)の存在下で反応させる場合、下記スキームに示す反応が進行すると考えられる。
即ち、上記モノマー(b)であるα-ピネンのカチオンが生じて、α-ピネン同士のカチオン重合が進行する(下記スキームの上段)とともに、上記モノマー(a)であるピロガロールと上記モノマー(b)であるα-ピネンとのFridel-Craftsアルキル化反応が進行する(下記スキームの中段)。このような反応が繰り返し起こることにより、ピロガロールに由来する構成単位と、α-ピネンに由来する構成単位とを有する共重合体を得ることができる(下記スキームの下段)。なお、このような共重合体は、ピロガロールに由来する構成単位を主鎖骨格中又は主鎖骨格の末端に有するものとなる。
【0047】
【0048】
式中、s及びtはそれぞれ1以上の整数を表す。なお、*は連結部を表す。
【0049】
上記化合物を製造する方法として、上記構成単位(A)を側鎖中に有する場合は、例えば、次のような方法が好ましい。即ち、上記構成単位(A)を構成するモノマー(a)に更に不飽和二重結合を導入したモノマー(a’)と、上記構成単位(B)を構成するテルペン系モノマー、ビニル系モノマー及び共役ジエン系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(b)とを共重合させる方法(以下、製造方法[II]ともいう)である。
【0050】
上記モノマー(a’)としては、例えば、4-ビニルカテコール等が挙げられる。これらのモノマー(a’)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記化合物の製造方法[II]においても、上記化合物の製造方法[I]と同様に上記モノマー(a’)と上記モノマー(b)とをカチオン重合により共重合させることが好ましい。
上記モノマー(a’)と上記モノマー(b)とをカチオン重合により共重合させる方法としては、上記モノマー(a’)と上記モノマー(b)とを上述したようなルイス酸の存在下で反応させる方法が好ましい。このような方法によれば、上記モノマー(a’)中の不飽和二重結合と、上記モノマー(b)中の不飽和二重結合とのカチオン重合が進行し、上記モノマー(a’)に由来する構成単位(A)と、上記モノマー(b)に由来する構成単位(B)とを有する共重合体を得ることができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、更に、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、安定剤、充填剤(無機フィラー)、補強剤、タッキファイヤー、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、発泡剤、オイル、ワックス等の各種添加剤を含有していてもよい。本発明の樹脂組成物は、構成単位(A)を有する化合物を含有することから、これらの添加剤の分散性についても向上し、析出を防止することができる。
【0053】
本発明の樹脂組成物を作製する方法は特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には、例えば、上記熱可塑性樹脂、上記化合物、及び、必要に応じて添加される添加剤を3本ロール、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー等で攪拌する方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物を成形することで樹脂成形体を製造することができる。本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体もまた本発明の1つである。
上記樹脂成形体の形状は特に限定されないが、例えば、シート(フィルム)形状、粒子状とすることが好ましい。即ち、上記樹脂成形体は、フィルム状樹脂成形体や粒子状樹脂成形体であることが好ましく、本発明の樹脂組成物を成形してなるフィルム状樹脂成形体、又は、粒子状樹脂成形体もまた本発明の1つである。シート状成形体の厚さは用途に応じて設定されればよく特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。上記粒子状成形体の粒径は用途に応じて設定されればよく特に限定されないが、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1000μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0055】
上記樹脂成形体は発泡構造を有する発泡体であってもよい。本発明の樹脂組成物を成形してなる発泡体もまた本発明の1つである。
上記発泡体の厚さは用途に応じて設定されればよく特に限定されないが、通常1~15mmが好ましく、2~10mmがより好ましく、3~8mmが更に好ましい。また、発泡体の見掛け密度は、発泡体の柔軟性を向上させる観点から、20~100kg/m3が好ましく、20~75kg/m3がより好ましく、25~75kg/m3が更に好ましく、25~55kg/m3が更により好ましく、30~55kg/m3が一層好ましく、30~40kg/m3が特に好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物は樹脂の熱劣化が抑制されるため、電気・電子部品、家庭電化製品、自動車関連部品、インフラ関連部品、住設関連部品、医療器具・機器等の各種用途に用いることができる。より具体的には、ホットメルト接着剤、合わせガラス用中間膜、樹脂フィルム、タイヤ、発泡体、樹脂粒子及び樹脂成形品等に好適に用いることができ、なかでもホットメルト接着剤として特に好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物からなるホットメルト接着剤もまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、相溶性に優れ、樹脂からの析出の発生が抑制されており、かつ、樹脂の熱劣化についても防止することができる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該樹脂組成物を用いた樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
<樹脂状化合物の調製>
(合成例A)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にトルエン50重量部を入れて、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。30分後にトルエンを75℃に保持しながら塩化アルミニウム(AlCl3)2重量部を投入した。ここに、表1に示す構成単位(A)形成用のモノマー(a)、及び、構成単位(B)形成用のモノマー(b)合計50重量部(モル比は表1に示すとおり)をトルエン50重量部に溶かした溶液を1時間30分かけて、徐々に滴下し反応させた。4時間重合反応させた後、反応器内にピリジン0.1重量部を加えながら冷却することにより、塩化アルミニウム(AlCl3)から発生した塩酸を中和した。中和により生じた沈殿物を濾過し、得られた濾液の分液操作を行った後、トルエンを揮発させて、固体の樹脂状化合物である構成単位(A)を有する化合物を得た。
得られた化合物についてlH-NMR測定を行い、化合物が、モノマー(a)であるカテコールに由来する構成単位(A)と、モノマー(b)であるα-ピネンに由来する構成単位(B)とを有する共重合体であることを確認した。
得られた化合物をテトラヒドロフランに溶かした溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過した。得られた濾液をゲル浸透クロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、化合物のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムとしては、GPC KF-802.5L(昭和電工社製)を用い、検出器としては、示差屈折計を用いた。
【0060】
(合成例B~K)
構成単位(A)形成用のモノマー(a)、及び、構成単位(B)形成用のモノマー(b)を表1に示すように変更したこと以外は合成例Aと同様にして、樹脂状化合物を得た。なお、合成例Dと合成例Iとでは同じモノマーを使用したが、合成例Iではピロガロール(n=3)及びα-ピネン合計70重量部(モル比は表1に示すとおり)をトルエン30重量部に溶かした溶液を滴下することにより重量平均分子量(Mw)の異なる化合物を得た。
【0061】
【0062】
(実施例1~19、比較例1~3)
表2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~19及び比較例1~3の樹脂組成物を調製した。遊星式撹拌機としては、あわとり練太郎(シンキー社製)を用いた。
使用した材料のうち、表1に記載されていないものを以下に示す。
【0063】
<熱可塑性樹脂>
ポリオレフィン樹脂(エチレン・プロピレンランダム共重合体(PE/PP);三井化学社製、商品面「タフマーP-0480」)
ジエン系ゴム(ブチルゴム(IIR);JSR社製、商品名「BUTYL 065」)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、商品名「BH6」)
水素添加ジエン系ゴム(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)共重合体;旭化成社製 社製、商品名「H1041」)
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(東ソー社製、商品名「ウルトラセン(UE)722」)
<樹脂状化合物>
テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターG150」)
石油樹脂(日本ゼオン社製、商品名「クイントンU185」)
<酸化防止剤>
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、商品名「Irganox 1010」)
<可塑剤>
パラフィン系オイル(出光石油社製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」)
【0064】
<評価>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
【0065】
(1)酸化防止性
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を一軸押出機(ジーエムエンジニアリング社製、GM30-28(スクリュー径30mm、L/D28))を用いてTダイ幅400mmにて押出成形して、厚み30μmのフィルム状成形体を得た。得られたフィルム状成形体を200℃で1時間加熱した後、樹脂組成物の色を目視で確認した。
〇:着色しなかった
△:僅かに着色した
×:濃い着色が発生した
【0066】
(2)外観
上記シート性評価で作製したフィルム状成形体を温度85℃、湿度85%の環境下に4週間放置した後、樹脂組成物の外観を目視で確認した。
○:析出しなかった
△:僅かに析出した
×:析出が発生した
【0067】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、相溶性に優れ、樹脂からの析出の発生が抑制されており、かつ、樹脂の熱劣化についても防止することができる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該樹脂組成物を用いた樹脂成形体、フィルム状樹脂成形体、粒子状樹脂成形体、発泡体、及び、ホットメルト接着剤を提供することができる。