(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127578
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】医療用画像検出システム、トレーニング方法及び医療解析方法
(51)【国際特許分類】
G06T 3/40 20060101AFI20230906BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G06T3/40 725
G06T1/00 290
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030623
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】63/268,703
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502160992
【氏名又は名称】宏達國際電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承翰
(72)【発明者】
【氏名】彭 宇劭
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA07
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD03
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC01
(57)【要約】
【課題】医療用画像検出システム、トレーニング方法及び医療解析方法を提供する。
【解決手段】メモリと、メモリに記憶されるニューラルネットワークモデルを実行するためのプロセッサと、を備え、ニューラルネットワークモデルは、医療用画像から複数の中間テンソルを抽出するための特徴抽出ユニットと、特徴抽出ユニットと連動し、中間テンソルに基づいて複数の複合解像度特徴図を生成するための特徴ピラミッドネットワークと、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、グローバル予測を生成するための第1の出力ヘッドと、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、複数のローカル予測を生成するための第2の出力ヘッドと、を含み、プロセッサは、前記医療用画像、前記グローバル予測及び前記複数のローカル予測に基づいて出力情報を生成するために使用される医療用画像検出システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューラルネットワークモデルを記憶するためのメモリと、
前記メモリに結合され、前記ニューラルネットワークモデルを実行するためのプロセッサと、
を備え、
前記ニューラルネットワークモデルは、
医療用画像からそれぞれ解像度を有する複数の中間テンソルを抽出するための特徴抽出ユニットと、
前記特徴抽出ユニットと連動し、前記複数の中間テンソルに基づいて複数の複合解像度特徴図を生成するための特徴ピラミッドネットワークと、
前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、前記医療用画像にターゲットオブジェクトが存在するか否かを示すためのグローバル予測を生成するための第1の出力ヘッドと、
前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、それぞれ前記医療用画像のターゲットオブジェクトの予測位置を示すための複数のローカル予測を生成するための第2の出力ヘッドと、を含み、
前記プロセッサは、前記医療用画像、前記グローバル予測及び前記複数のローカル予測に基づいて出力情報を生成するために使用される医療用画像検出システム。
【請求項2】
前記複数の複合解像度特徴図のうちの少なくとも1つは前記特徴ピラミッドネットワークにより前記複数の中間テンソルのうちの少なくとも2つに基づいて生成され、前記特徴抽出ユニットは複数の畳み込み層を含むことにより、高い解析度を有する第1の中間テンソルと低い解析度を有する第2の中間テンソルとを含む異なる解析度を有する前記複数の中間テンソルを生成し、前記特徴ピラミッドネットワークは、前記第2の中間テンソルをアップサンプリングし且つ前記第1の中間テンソルと合わせて前記複数の複合解像度特徴図のうちの1つを生成するために使用される請求項1に記載の医療用画像検出システム。
【請求項3】
前記特徴抽出ユニットの前記複数の畳み込み層における最後の三層は、複数の変形可能な畳み込み層であり、前記複数の変形可能な畳み込み層の複数のサンプリング点が前記複数の変形可能な畳み込み層の複数のサンプリングウィンドウに不均一に分布される請求項2に記載の医療用画像検出システム。
【請求項4】
前記第2の出力ヘッドは、
前記複数の複合解像度特徴図に複数の関心領域位置を生成するための領域生成ネットワークと、
前記複数の関心領域位置に基づいて前記複数の複合解像度特徴図から複数の提案領域を抽出するための位置合せモジュールと、
前記複数の提案領域をそれぞれターゲットグループ又は非ターゲットグループに分類することで、前記ターゲットグループに属すると分類された前記複数の提案領域に基づいて前記複数のローカル予測を生成するための分類モジュールと、
を含む請求項1に記載の医療用画像検出システム。
【請求項5】
前記第1の出力ヘッドは、複数の畳み込み層と、線形層と、前記グローバル予測を生成するための励起層と、を含む請求項1に記載の医療用画像検出システム。
【請求項6】
前記医療用画像は、胸部、腹部又は頭部に関するX線画像、コンピュータ断層画像又は核磁気共鳴造影画像を含み、前記ターゲットオブジェクトは結節又は腫瘍を含む請求項1に記載の医療用画像検出システム。
【請求項7】
医療用画像検出システムにより実行されるニューラルネットワークモデルをトレーニングすることに適用されるトレーニング方法であって、
医療用画像及び前記医療用画像に関するトレーニング基本的事実を提供する工程と、
前記医療用画像に対して第1の画像増幅を行って、第1の増幅医療用画像を生成する工程と、
前記医療用画像に対して第2の画像増幅を行って、第2の増幅医療用画像を生成する工程と、
前記第1の増幅医療用画像に基づいて前記ニューラルネットワークモデルの第1の出力ヘッドによりグローバル予測を生成する工程と、
前記第2の増幅医療用画像に基づいて前記ニューラルネットワークモデルの第2の出力ヘッドにより複数のローカル予測を生成する工程と、
前記グローバル予測を前記トレーニング基本的事実と比較することで、グローバル損失を計算する工程と、
前記複数のローカル予測を前記トレーニング基本的事実と比較することで、ローカル損失を計算する工程と、
前記グローバル損失及び前記ローカル損失に基づいて前記ニューラルネットワークモデルを逆伝送するように更新する工程と、
を含むトレーニング方法。
【請求項8】
前記ニューラルネットワークモデルは、
前記第1の増幅医療用画像及び前記第2の増幅医療用画像から複数の中間テンソルを抽出するための特徴抽出ユニットと、
前記特徴抽出ユニットと連動し、前記複数の中間テンソルに基づいて複数の第1の複合解像度特徴図及び複数の第2の複合解像度特徴図を生成するための特徴ピラミッドネットワークと、
を含む請求項7に記載のトレーニング方法。
【請求項9】
前記第1の画像増幅と前記第2の画像増幅はそれぞれ、
複数の候補増幅操作から少なくとも1つの増幅操作を選択すること、及び
選択された前記少なくとも1つの増幅操作を前記医療用画像に当てはめさせて、前記第1の増幅医療用画像又は前記第2の増幅医療用画像を生成することで行われる請求項7に記載のトレーニング方法。
【請求項10】
前記トレーニング方法は、前記第1の画像増幅と前記第2の画像増幅を行う時に、それぞれ異なる増幅操作を選択して当てはめさせる請求項9に記載のトレーニング方法。
【請求項11】
ニューラルネットワークモデルを実行する医療用画像検出システムに適用される医療解析方法であって、
医療用画像を取得する工程と、
前記ニューラルネットワークモデルの特徴抽出ユニットを利用して、前記医療用画像からそれぞれ解像度を有する複数の中間テンソルを抽出する工程と、
前記ニューラルネットワークモデルの特徴ピラミッドネットワークを利用して、前記複数の中間テンソルに基づいて複数の複合解像度特徴図を生成する工程と、
前記ニューラルネットワークモデルの第1の出力ヘッドを利用して、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて前記医療用画像にターゲットオブジェクトが存在するか否かを示すためのグローバル予測を生成する工程と、
前記ニューラルネットワークモデルの第2の出力ヘッドを利用して、前記複数の複合解像度特徴図に基づいてそれぞれ前記医療用画像のターゲットオブジェクトの予測位置を示すための複数のローカル予測を生成する工程と、
前記医療用画像、前記グローバル予測及び前記複数のローカル予測に基づいて出力情報を生成する工程と、
を含む医療解析方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、医療用画像検出システム及びトレーニング方法に関し、特に、医療用画像の全体像のグローバル予測及び医療用画像におけるローカル領域に関するローカル予測を生成する医療用画像検出システムに関する。
【0002】
様々な医療用画像技術は、患者の疾患を診断するか又は健康診断を行う応用シーン、例えばX線イメージング、コンピュータ断層撮影及び核磁気共鳴イメージングなどに広く用いられ、上記医療用画像技術は、癌、骨折、内出血及び他の症状を診断する際に重要な情報を提供することができる。一般的に、経験豊富な医師又は専門家は、これらの医療用画像技術により撮影された結果画像を閲覧し、結果画像が正常であるか又は異常であるかを経験的に判断する必要がある。
【0003】
様々な疾患の中で、肺癌は世界中の癌の関連死亡に属する多くの重要な原因の1つである。医療用画像で発見された肺結節は、一般的に良性の結節であるが、潜在的な肺癌の警告信号となる。胸部X線フィルムは、操作が簡単でコストが低いため、現在最も広く適用される胸部医療用画像撮影形態となる。イメージング形態自体の特性により、X線画像を用いた胸部検査の重要な問題の1つは、医療用画像の中の結節が放射線科医に認識されずに見逃された割合である。胸部X線フィルムは、患者の胸部の二次元投影であるため、結節が他の器官(例えば肋骨)又は異物により遮蔽される場合、結節が視覚的に認識しにくい。且つ、仕事量の増加に伴い、胸部放射線科医にとって結節の存在を正確に認識することは容易ではないため、胸部X線フィルムの画像解析過程における見落としを低減するための補助具を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、ニューラルネットワークモデルを記憶するためのメモリと、前記メモリに結合され、ニューラルネットワークモデルを実行するためのプロセッサと、を備え、ニューラルネットワークモデルは、医療用画像からそれぞれ解像度を有する複数の中間テンソルを抽出するための特徴抽出ユニットと、特徴抽出ユニットと連動し、中間テンソルに基づいて複数の複合解像度特徴図を生成するための特徴ピラミッドネットワークと、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、前記医療用画像にターゲットオブジェクトが存在するか否かを示すためのグローバル予測を生成するための第1の出力ヘッドと、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて、それぞれ前記複数の医療用画像のターゲットオブジェクトの予測位置を示すための複数のローカル予測を生成するための第2の出力ヘッドと、を含み、プロセッサは、前記医療用画像、前記グローバル予測及び前記複数のローカル予測に基づいて出力情報を生成するために使用される医療用画像検出システムを開示する。
【0005】
本開示の他の態様は、医療用画像検出システムにより実行されるニューラルネットワークモデルをトレーニングすることに適用されるトレーニング方法であって、医療用画像及び前記医療用画像に関するトレーニング基本的事実を提供する工程と、前記医療用画像に対して第1の画像増幅を行って、第1の増幅医療用画像を生成する工程と、前記医療用画像に対して第2の画像増幅を行って、第2の増幅医療用画像を生成する工程と、前記第1の増幅医療用画像に基づいて前記ニューラルネットワークモデルの第1の出力ヘッドによりグローバル予測を生成する工程と、前記第2の増幅医療用画像に基づいて前記ニューラルネットワークモデルの第2の出力ヘッドにより複数のローカル予測を生成する工程と、前記グローバル予測を前記トレーニング基本的事実と比較することで、グローバル損失を計算する工程と、前記複数のローカル予測を前記トレーニング基本的事実と比較することで、ローカル損失を計算する工程と、前記グローバル損失及び前記ローカル損失に基づいて前記ニューラルネットワークモデルを逆伝送するように更新する工程と、を含むトレーニング方法を開示する。
【0006】
本開示の他の態様は、ニューラルネットワークモデルを実行する医療用画像検出システムに適用される医療解析方法であって、医療用画像を取得する工程と、前記ニューラルネットワークモデルの特徴抽出ユニットを利用して、前記医療用画像からそれぞれ解像度を有する複数の中間テンソルを抽出する工程と、前記ニューラルネットワークモデルの特徴ピラミッドネットワークを利用して、前記複数の中間テンソルに基づいて複数の複合解像度特徴図を生成する工程と、前記ニューラルネットワークモデルの第1の出力ヘッドを利用して、前記複数の複合解像度特徴図に基づいて前記医療用画像にターゲットオブジェクトが存在するか否かを示すためのグローバル予測を生成する工程と、前記ニューラルネットワークモデルの第2の出力ヘッドを利用して、前記複数の複合解像度特徴図に基づいてそれぞれ前記医療用画像のターゲットオブジェクトの予測位置を示すための複数のローカル予測を生成する工程と、前記医療用画像、前記グローバル予測及び前記複数のローカル予測に基づいて出力情報を生成する工程と、を含む医療解析方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の幾つかの実施例による医療用画像検出システムを示す概略図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施例によるニューラルネットワークモデルのアーキテクチャを示す概略図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施例による医療用画像に対応してニューラルネットワークモデルから生成されたグローバル予測と複数のローカル予測を示す概略図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施例による
図1及び
図2の医療用画像検出システム及びニューラルネットワークモデルにより実行される医療解析方法を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の幾つかの実施例による
図2の特徴抽出ユニットの内部アーキテクチャを示す概略図である。
【
図6A】異なる標準畳み込み層のサンプリングウィンドウにおけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
【
図6B】異なる標準畳み込み層のサンプリングウィンドウにおけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
【
図6C】異なる標準畳み込み層のサンプリングウィンドウにおけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
【
図6D】変形可能な畳み込み層のサンプリングウィンドウにおけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
【
図7】本開示の幾つかの実施例による
図2の特徴ピラミッドネットワークの内部アーキテクチャを示す概略図である。
【
図8】本開示の幾つかの実施例による
図2の第1の出力ヘッドの内部アーキテクチャを示す概略図である。
【
図9】本開示の幾つかの実施例による
図2の第2の出力ヘッドの内部アーキテクチャを示す概略図である。
【
図10】本開示の幾つかの実施例によるトレーニングフローにおける医療用画像検出システムを示す概略図である。
【
図11】ニューラルネットワークモデルのトレーニング段階で増幅モデル及びトレーニングエージェントにより行われた操作を示す概略図である。
【
図12】幾つかの実施例による
図10の医療用画像検出システムにより実行されるニューラルネットワークモデルをトレーニングすることに適用されるトレーニング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の開示内容は、本開示の異なる特性を実施するための多くの異なる実施例又は例を提供する。特定の例における素子と配置は、以下の議論で本開示を簡略化するために使用される。何れの例も、説明のためにのみ使用され、本開示またはその例の範囲や意味を制限するものではない。適切な場合には、図面同士及び対応する文字の説明には、同じまたは類似する素子を示すために同じ記号が使用される。
【0009】
図1を参照すると、本開示の幾つかの実施例による医療用画像検出システム100を示す概略図である。幾つかの実施例において、医療用画像検出システム100は、医療用画像におけるターゲットオブジェクトの存在を検出又は予測するために用いられ、その検出結果は医療用画像の内容に基づいて患者に対して検査、評価又は診断を行うことに役立つ。
【0010】
図1に示すように、医療用画像検出システム100は、メモリ120、プロセッサ140、及びインターフェース装置160を備える。メモリ120は、プロセッサ140により実行されてもよく、コンピュータ実行可能なコマンドを記憶するために使用される。幾つかの実施例において、メモリ120は、動的メモリ、静的メモリ、ハードディスク、又はフラッシュメモリ等を含んでよい。インターフェース装置160は、入力データ(例えば医療用画像の入力、コマンド、音声制御コマンド又はキーボード入力等)及び/又は表示出力コンテンツを受信するために使用される。幾つかの実施例において、インターフェース装置160は、キーボード、ディスプレイ、タッチパネル、マイクロフォン、ネットワーク送受信機、ホーンなどを含んでよい。プロセッサ140は、データ又はパラメータがメモリ120に記憶されることができるニューラルネットワークモデル180を実行するために使用される。幾つかの実施例において、プロセッサ140は、中央プロセッサ、グラフィックプロセッサ、テンソルプロセッサ、特殊応用集積回路又は他の同等性がある処理回路を含んでよい。
【0011】
図2を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例によるニューラルネットワークモデル180のアーキテクチャを示す概略図である。プロセッサ140により実行するニューラルネットワークモデル180は、医療用画像IMGiを検出し、医療用画像に関するIMGiのグローバル予測GPおよび複数のローカル予測LPsを生成するためのものである。幾つかの実施例において、グローバル予測GPは、ターゲットオブジェクトが医療用画像に存在するか否かを示すために用いられる。各ローカル予測LPsのそれぞれは、医療用画像IMGiにおけるターゲットオブジェクトの予測位置を示す。
【0012】
幾つかの実施例において、医療用画像IMGiは、患者の胸部、腹部又は頭部に関するX線画像、コンピュータ断層画像又は核磁気共鳴造影画像であってよい。ターゲットオブジェクトは、患者に付いていて且つ医療用画像IMGiに現れている結節及び/又は腫瘍であってよい。説明の簡便上のため、後続の段落の検討では医療用画像IMGiは患者の胸部に関するX線画像であると仮定し、ターゲットオブジェクトは結節であると仮定する。
【0013】
上記組み合わせ(即ち胸部X線画像で結節を検出する)は、ニューラルネットワークモデル180の例示的な応用であるが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0014】
この例において、ニューラルネットワークモデル180により生成されたグローバル予測GPは、医療用画像IMGiに任意の結節があることに関するものであり、ニューラルネットワークモデル180により生成された複数のローカル予測LPsは、医療用画像IMGiにおける各結節に関する予測位置である。
図3を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例による医療用画像IMGiに対応してニューラルネットワークモデル180から生成されたグローバル予測GPと複数のローカル予測LPsを示す概略図である。
図3に示すように、ニューラルネットワークモデル180により生成されたグローバル予測GPは、医療用画像IMGiに含まれた少なくとも1つの結節の存在の確率が高いことを示すための確率値ラベル、例えば85%である。
図2及び
図3に示すように、この実施例におけるニューラルネットワークモデル180により生成された複数のローカル予測LPsは、医療用画像IMGiに結節が存在する可能な五つの位置及び領域範囲を示すための五つのローカル予測LP1、LP2、LP3、LP4及びLP5を含む。この例において、ローカル予測LP1は、医療用画像IMGiにおける1つの予測結節の位置と大きさを示すためのローカル境界ボックスを含む。ローカル予測LP2は、医療用画像IMGiにおける他の予測結節の位置と大きさを示すための他のローカル境界ボックスを含む。同様に、ローカル予測LP3、LP4及びLP5は、他の三つのローカル境界ボックスを表示する。
【0015】
本開示におけるニューラルネットワークモデル180は、デュアルヘッド・ネットワークアーキテクチャに基づく複合タスク肺結節検出アルゴリズムを提供し、グローバル予測GPと複数のローカル予測LPsを同期的に生成する。
図2に示すように、ニューラルネットワークモデル180は、特徴抽出ユニット182、特徴ピラミッドネットワーク184、第1の出力ヘッド186及び第2の出力ヘッド188を含む。
図4を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例による
図1及び
図2の医療用画像検出システム100及びニューラルネットワークモデル180により実行される医療解析方法200を示すフローチャートである。
【0016】
幾つかの実施例において、特徴抽出ユニット182、特徴ピラミッドネットワーク184、第1の出力ヘッド186及び第2の出力ヘッド188は、ニューラルネットワークモデル180におけるソフトウェア機能モジュールであってよく、それぞれソフトウェアプログラム又はコンピュータで実行可能なコマンドにより実現されてよい。特徴抽出ユニット182、特徴ピラミッドネットワークコマンド184、第1の出力ヘッド186及び第2の出力ヘッド188のソフトウェアアーキテクチャの詳細については後続段落で更に説明する。
【0017】
図1、
図2及び
図4に示すように、ステップS210を実行して、医療用画像IMGiをニューラルネットワークモデル180の特徴抽出ユニット182に提供する。幾つかの実施例において、医療用画像IMGiは、患者の胸部の領域に撮影されたX線画像であってよい。患者が肺癌に罹患している場合、一又は複数の結節は医療用画像IMGiに現れる。患者の肺部が健康である場合、医療用画像IMGiにいかなる結節が現れない可能性がある。
【0018】
図1、
図2及び
図4に示すように、ステップS220を実行して、ニューラルネットワークモデル180の特徴抽出ユニット182により医療用画像IMGiから複数の中間テンソルTsを抽出する。
図5を合わせて参照すると、それは本開示の幾つかの実施例による
図2の特徴抽出ユニット182の内部アーキテクチャを示す概略図である。特徴抽出ユニット182は、医療用画像IMGiに基づいて複数の中間テンソルTsを生成するための幾つかの畳み込み層を含む。
図5の実施例において、特徴抽出ユニット182は、順に前後に結合された八つの畳み込み層CL1~CL8を含む。畳み込み層CL1は、異なるチャネルにおける幾つかの畳み込みコアを含んでよく、且つ畳み込み層CL1は医療用画像IMGiに対して畳み込み演算をして中間テンソルT1を生成することに用いられてもよい。畳み込み層CL1により生成された中間テンソルT1は、畳み込み層CL2に伝送され、畳み込み層CL2は中間テンソルT1に対して畳み込み演算をして中間テンソルT2を生成することに用いられてもよい。同様に、畳み込み層CL3~CL8は、順に畳み込み演算を実行して、それぞれ中間テンソルT3~T8を生成することに用いられてもよい。
【0019】
幾つかの実施例において、特徴抽出ユニット182は、これらの畳み込み層CL1~CL8の間又は前後に幾つかのプーリング層(図示せず)及び/又は励起層(図示せず)を更に含んでよい。畳み込み層CL1~CL8は、異なるサンプリング確率を含む可能性があり、及びプーリング層の作用により、中間テンソルT1~T8はそれぞれ互いに異なる解像度を有する。例えば、中間テンソルT5の空間解像度は、128×128であってよく、中間テンソルT6の空間解像度は64×64であってよく、中間テンソルT7の空間解像度は32×32であってよく、及び中間テンソルT8の空間解像度は16×16であってよい。これらの中間テンソルT5~T8の解像度は、畳み込み層CL5~CL8のそれぞれのサンプリング確率及び畳み込み層R3~CL8の間のプーリング層に影響され、本開示は特定の数字に限定されない。
【0020】
この例において、中間テンソルT5は、中間テンソルT6の空間解像度64×64よりも、相対的に高い空間解像度128×128を有する。同様に、中間テンソルT7の空間解像度32×32よりも、中間テンソルT6は、相対的に高い空間解像度64×64を有する。一方、中間テンソルT7は、中間テンソルT8の空間解像度16×16よりも、相対的に高い空間解像度32×32を有する。中間テンソルT5の各ユニットは、より具体的且つローカルの特徴を表現する傾向があり、医療用画像IMGiの相対的に小さい領域に対応する。中間テンソルT8の各ユニットは、より抽象的な特徴を表現する傾向があり、医療用画像IMGiの相対的に大きい領域に対応する。
【0021】
幾つかの実施例において、畳み込み層CL1~CL8のうちの一部は、標準畳み込み層と異なる変形可能な畳み込み層を採用してもよい。1つの標準畳み込み層上の複数のサンプリング点は、この標準畳み込み層のサンプリングウィンドウに均一に分布される。
図6A、
図6B及び
図6Cを併せて参照すると、標準畳み込み層SCL1~SCL3のサンプリングウィンドウW1~W3におけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
図6Aに示すように、標準畳み込み層SCL1のサンプリングウィンドウW1の各ユニットは、何れもサンプリング点SAMPとして選択される。
図6Bに示すように、サンプリング点SAMPは、互いに1単位の間隔距離を有し、且つ標準畳み込み層SCL2のサンプリングウィンドウW2に均一に分布される。
図6Cに示すように、サンプリング点SAMPは、互いに2単位の間隔距離を有し、且つ標準畳み込み層SCL3のサンプリングウィンドウW3に均一に分布される。
【0022】
図6Dを併せて参照すると、変形可能な畳み込み層DCLのサンプリングウィンドウW4におけるサンプリング点の分布状況を示す概略図である。
図6Dに示すように、変形可能な畳み込み層DCLのサンプリング点dSAMPは、それぞれの元の位置からそれぞれ異なる変位ベクトルだけオフセットし、したがって、サンプリング点dSAMPは変形可能な畳み込み層DCLのサンプリングウィンドウW4に不均一に分布される。
【0023】
標準畳み込み層(
図6A~
図6Cに示す基準畳み込み層SCL1~SCL3のように)を採用すると、畳み込み層の受容場が一定である。一方、変形可能な畳み込み層は、関心領域(例えば結節)を検出する時に動的な受容場を提供することができる。実際の応用において、結節の形状と輪郭は実際の状況に応じて変化するため、変形可能な畳み込みを採用すれば、結節の画像特徴を探すことに役立つ。幾つかの実施例において、
図6Dに示された変形可能な畳み込み層DCLを参照すると、特徴抽出ユニット182の全ての畳み込み層CL1~CL8のうちの最後の三つの層(即ち畳み込み層CL6~CL8)には、変形可能な畳み込み層を採用する。
図6A~
図6Cに示す基準畳み込み層SCL1~SCL3を参照すると、他の畳み込み層CL1~CL5には、標準畳み込み層を採用する。
【0024】
図1、
図2及び
図4に示すように、ステップS230を実行して、ニューラルネットワークモデル180の特徴ピラミッドネットワーク184により中間テンソルT5~T8に基づいて、複数の複合解像度特徴
図MFMを生成する。特徴抽出ユニット182に連動する特徴ピラミッドネットワーク184は、特徴抽出ユニット182に結合される。
図7を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例による
図2の特徴ピラミッドネットワーク184の内部アーキテクチャを示す概略図である。
【0025】
幾つかの実施例において、特徴ピラミッドネットワーク184は、特徴抽出ユニット182から中間テンソルT5~T8を受信し、且つ対応して複合解像度特徴
図MFMを生成する。
図7に示す実施例のように、特徴ピラミッドネットワーク184は、2つの隣接する中間テンソルT7とT8との間にある一組のアップサンプラー184a、1×1畳み込み層184b及び加算器184cを含む。
【0026】
幾つかの実施例において、特徴抽出ユニット182により生成された中間テンソルT8(空間解像度16×16を有する)は、そのうちの1つの複合解像度特徴
図MFM1としてコピーされることができる。この複合解像度特徴
図MFM1(中間テンソルT8に基づく)は、アップサンプラー184aを経て32×32にアップサンプリングされる。中間テンソルT7(空間解像度32×32を有する)は、1×1畳み込み層184bの処理を経る。加算器184cは、1×1畳み込み処理された中間テンソルT7とアップサンプリングされた複合解像度特徴
図MFM1を合併し、空間解像度32×32を有する別の複合解像度特徴
図MFM2を形成する。この場合、複合解像度特徴
図MFM2は、中間テンソルT8からの特徴及び中間テンソルT7からの特徴を同時に持っている。換言すれば、複合解像度特徴
図MFM2は、異なる空間解像度(例えば32×32と16×16)を有する2つの中間テンソルT7とT8に基づいて生成される。
【0027】
同様に、特徴ピラミッドネットワーク184は、2つの隣接する中間テンソルT6とT7との間の他の組のアップサンプラー184dと、1×1畳み込み層184eと、加算器184fと、を更に含む。この例において、複合解像度特徴
図MFM2は、アップサンプラー184dを経て64×64にアップサンプリングされる。中間テンソルT6(空間解像度64×64を有する)は、1×1畳み込み層184eの処理を経る。加算器184fは、1×1畳み込み処理された中間テンソルT6とアップサンプリングされた複合解像度特徴
図MFM2を合併し、空間解像度64×64を有する別の複合解像度特徴
図MFM3を形成する。この場合、複合解像度特徴
図MFM3は、三つの中間テンソルT6、T7及びT8からの特徴を同時に持っている。換言すれば、複合解像度特徴
図MFM3は、異なる空間解像度(例えば64×64、32×32と16×16)を有する三つの中間テンソルT6、T7及びT8に基づいて生成される。
【0028】
同様に、特徴ピラミッドネットワーク184は、2つの隣接する中間テンソルT5とT6との間の他の組のアップサンプラー184gと、1×1畳み込み層184hと、加算器184iと、を更に含むことにより、複合解像度特徴
図MFM4を生成する。この場合に、複合解像度特徴
図MFM4は4つの組の中間テンソルT5、T6、T7及びT8からの特徴を同時に持っている。換言すれば、複合解像度特徴
図MFM4は、異なる空間解像度(例えば128×128、64×64、32×32と16×16)を有する四つの中間テンソルT5、T6、T7及びT8に基づいて生成される。
【0029】
この場合、複合解像度特徴
図MFM2、MFM3及びMFM4は、それぞれ異なる解像度を有する中間テンソルT5、T6、T7及びT8のうちの少なくとも2つの中間テンソルに基づいて生成される。複数の複合解像度特徴
図MFMは、異なる解像度での複数の中間テンソルにおいて検出されたパターン特徴を持つため、複数の複合解像度特徴
図MFMは異なるサイズ特性を有する様々な結節を探すことに役立つ。
【0030】
上記
図7に示す実施例において、特徴ピラミッドネットワーク184は、一例として、3つの組の回路が中間のテンソルT5~T8の間に配置されることで、4つの複合解像度特徴
図MFM1~MFM4を生成する。本開示は、これに限定されるものではない。特徴ピラミッドネットワーク184は、幾つかの他の実施例において異なる数の層数を有することができる。
【0031】
図2及び
図4に示すように、幾つかの実施例において、複数の複合解像度特徴
図MFMは、第1の出力ヘッド186と第2の出力ヘッド188に同時に伝送される。ステップS240を実行して、第1の出力ヘッド186により複合解像度特徴
図MFMに基づいて、医療用画像IMGiに何れの結節が存在するか否かを示すためのグローバル予測GPを生成する。
図8を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例による
図2の第1の出力ヘッド186の内部アーキテクチャを示す概略図である。幾つかの実施例において、第1の出力ヘッド186は、畳み込み層186a及び186cと、整流線形ユニット186b及び186dと、プーリング層186eと、線形層186f及びSoftmax層186gと、を含んでよい。
【0032】
図8に示すように、複数の複合解像度特徴
図MFMは、第1の出力ヘッド186に入力される。複数の複合解像度特徴
図MFMは、畳み込み層186a、整流線形ユニット186b、畳み込み層186c及び整流線形ユニット186dを通過し、且つプーリング層186eにより最大のプール化を行って単一ベクトルを生成する。線形層186f及びSoftmax層186gは、この単一ベクトルに当てはめ且つこの画像走査に結節が存在する確率の大きさを示すための確率を得る。幾つかの実施例において、第1の出力ヘッド186により生成されたグローバル予測GPは例えば
図3に示す85%のような確率ラベル形態で表示される。
【0033】
図2及び
図4に示すように、ステップS242を実行して、第2の出力ヘッド188により複合解像度特徴
図MFMに基づいてローカル予測LPsを生成する。
図9を併せて参照すると、本開示の幾つかの実施例による
図2の第2の出力ヘッド188のその内部アーキテクチャを示す概略図である。
図2及び
図9に示すように、第2の出力ヘッド188は、領域生成ネットワーク188aと、位置合せモジュール188bと、分類モジュール188cとを含む。領域生成ネットワーク188aは複合解像度特徴
図MFMに複数の関心領域位置を生成するために使用される。幾つかの実施例において、領域生成ネットワーク188aは、複数の関心領域位置、例えば複合解像度特徴
図MFMの上の関心領域位置ROI1、ROI2、ROI3、ROI4、ROI5及びROI6を提案することができる。位置合せモジュール188bは、関心領域位置ROI1、ROI2、ROI3、ROI4、ROI5及びROI6に基づいて複合解像度特徴
図MFMから複数の提案領域PRを抽出するために使用される。分類モジュール188cは、これらの提案領域PRをそれぞれターゲットグループTAR又は非ターゲットグループNTGに分類するために使用される。ターゲットグループTARに属すると分類された複数の提案領域PRに基づいて第2の出力ヘッド188の複数のローカル予測LPsを生成する。複数のローカル予測LPsの各々(
図3のLP1~LP5参照)は、それぞれ医療用画像IMGiにおける1つの結節予測位置に対応することに用いられる。
【0034】
幾つかの実施例において、
図3に示すように、プロセッサ140は、医療用画像IMGi、グローバル予測GP及びローカル予測LPsを1つの出力情報INFOとして統合することができる。この例において、出力情報INFOは、医療用画像IMGiが結節を有する確率及び医療用画像IMGiにおける結節の潜在的な位置を表現してよい。幾つかの実施例において、出力情報INFOは、インターフェース装置160に表示してよい。
【0035】
図3に示すように、幾つかの実施例において、出力情報INFOは、グローバル予測GPに対応する確率及び複数のローカル予測LPsに対応する潜在的な位置を結合した出力画像の形式である。幾つかの他の実施例において、出力情報INFOは、例えば文字記述、座標指示、描画、テーブル、音声指示又は上記形式の組み合わせのような他の形式を採用してよい。
【0036】
使用者(例えば患者、医者、胸部放射線科医、介護者又は医学専門家)は、医療用画像IMGiを医療用画像検出システム100に入力し、その後にインターフェース装置160で、使用者が医療用画像IMGiに反映された検査結果を迅速に了解することを助けることができる出力情報INFOを閲覧するか又は知ることができる。胸部放射線科医の作業負担が急速に増加している状況で、医療用画像検出システム100及び医療解析方法200は、補助ツールとして、胸部の放射検査過程において結節が存在するが発見されない状況を低減させる。
【0037】
注意すべきことは、第1の出力ヘッド186と第2の出力ヘッド188が医療用画像IMGiに対して適切な予測を生成することを確保するために、ニューラルネットワークモデル180は事前にトレーニングデータ(例えば過去の医療記録における既知の胸部X線画像及びその中の対応する結節ラベル)に基づいて対応するモデルトレーニングを行う必要がある。後続の段落ではニューラルネットワークモデル180のトレーニングフローについて説明する。
【0038】
図10を併せて参照すると、
図10は本開示の幾つかの実施例によるトレーニングフローにおける医療用画像検出システム300を示す概略図である。
図10に示すように、医療用画像検出システム300は、メモリ320と、ニューラルネットワークモデル380を実行するためのプロセッサ340と、インターフェース装置360と、を含む。
図10におけるメモリ320、プロセッサ340、インターフェース装置360及びニューラルネットワークモデル380は、前の実施例において
図1~
図9で検討したメモリ120、プロセッサ140、インターフェース装置160及びニューラルネットワークモデル180と類似している。注意すべきことは、ニューラルネットワークモデル380のトレーニングフローにおいて、プロセッサ340は更に増幅モデル390及びトレーニングエージェント392を実行する。
【0039】
データ増幅は、トレーニングデータの多様性を増加させ且つそれによりモデルの汎用性を改善するための技術である。データ増幅技術により、数が限られたトレーニングデータをより多くのサンプル数に増幅することができる。本開示の幾つかの実施例は、それぞれ独立したデータ増幅ポリシーを複数の出力ヘッドに導入することで、複数の出力ヘッドのそれぞれが達成しようとする目標を十分に最適化するデュアルヘッド増幅技術を提供する。
【0040】
図11及び
図12を併せて参照すると、
図11は、ニューラルネットワークモデル380のトレーニング段階で増幅モデル390及びトレーニングエージェント392により行われた操作を示す概略図である。
図12は、幾つかの実施例による
図10の医療用画像検出システム300により実行されるニューラルネットワークモデル380をトレーニングすることに適用されるトレーニング方法400を示すフローチャートである。
【0041】
図11及び
図12に示すように、ステップS410を実行して、医療用画像IMGt及び医療用画像IMGtに関するトレーニング基本的事実TGを提供する。この例において、医療用画像IMGt及びトレーニング基本的事実TGは、過去の医療記録から取得することができる。医療用画像IMGtは、実際の胸部X線画像であってよく、医療用画像IMGtのトレーニング基本的事実TG(例えば医療用画像IMGtに結節が存在するか否かの医療診断及び発見された結節に関するラベルボックス)について、過去の医療記録から取得されてよい。この医療用画像IMGtは、増幅モデル390に伝送される。
【0042】
図11及び
図12に示すように、ステップS420を実行し、増幅モデル390により医療用画像IMGtに対して第1の画像増幅を行い、第1の増幅医療用画像IMGa1を生成する。また、ステップS422を実行し、増幅モデル390により医療用画像IMGtに対して第2の画像増幅を行い、第2の増幅医療用画像IMGa2を生成する。
【0043】
幾つかの実施例において、ステップS420における第1の画像増幅は、少なくとも一種の増幅操作を選択し、且つ選択された少なくとも1つの増幅操作を医療用画像IMGtに当てはめさせて、第1の増幅医療用画像IMGa1を生成する。幾つかの実施例において、この増幅操作は、例えば、ランダムノイズ挿入と、ランダム輝度調整と、ランダムコントラスト調整と、画像ランプと、画像反転と、画像回転と、を含む複数の候補増幅操作の中から選択される。例示的な説明として、画像ランプが選択され、且つ医療用画像IMGtに当てはめされることで、
図11に示す第1の増幅医療用画像IMGa1を生成したが、本開示はこれに限定されるものではなく、上記一つ又は複数の候補増幅操作は選択され且つステップS420で実行されて第1の増幅医療用画像IMGa1を生成してよい。例えば、ランダムコントラスト調整と画像反転は、同時に選択されることで第1の増幅医療用画像(図示せず)を生成してよい。
【0044】
一方、ステップS422における第2の画像増幅は、複数の候補増幅操作から少なくとも1つの増幅操作を選択し、選択された少なくとも1つの増幅操作を医療用画像IMGtに当てはめさせて、第2の増幅医療用画像IMGa2を生成する。例示的な説明として、ランダム輝度調整は選択され且つ医療用画像IMGtに当てはめさせて
図11に示す第1の増幅医療用画像IMGa2を生成したが、本開示はこれに限定されず、上記一つ又は複数の候補増幅操作は選択され且つステップS422で実行されることで第2の増幅医療用画像IMGa2を生成してよい。
【0045】
幾つかの実施例において、ステップS420における第1の画像増幅及びステップS422における第2の画像増幅はそれぞれ、それぞれ選択された異なる増幅操作に従って行ってよい。
【0046】
幾つかの実施例において、増幅操作を選択する過程において、均一なサンプリング確率に応じて複数の候補増幅操作のうちの1つを選択する。換言すれば、例えばランダムノイズ挿入、ランダム輝度調整、ランダムコントラスト調整、画像ランプ、画像反転及び画像回転のような6種類の異なる候補増幅操作がある場合、各候補増幅操作が選択される機会が1/6となり、且つ1回の画像増幅では単一の候補増幅操作のみを採用する。
【0047】
別の実施例において、増幅操作を選択する過程において、これらの候補増幅操作はそれぞれ二項式サンプリング確率に基づいて互いに独立して選択される。換言すれば、6種類の異なる候補増幅操作がある場合、6種類の候補増幅操作はそれぞれ自体が後に選択された独立したサンプリング確率を有し、且つ一回の画像増幅では1つ又は複数の候補増幅操作を採用する可能性がある。
【0048】
幾つかの実施例において、ステップS430において、第1の増幅医療用画像IMGa1及び第2の増幅医療用画像IMGa2を共に入力バッチBCHinに組み合わせ、特徴抽出ユニット382及び特徴ピラミッドネットワーク384に入る。
【0049】
特徴抽出ユニット382は、入力バッチBCHinにおける第1の増幅医療用画像IMGa1及び第2の増幅医療用画像IMGa2に対して複数の中間テンソルTsを抽出ために使用される。特徴ピラミッドネットワーク384は、特徴抽出ユニット382と連動する。
図12に示すように、ステップS440を実行し、特徴ピラミッドネットワーク384により複数の中間テンソルTsに基づいて、複数の第1の複合解像度特徴
図MFMG(第1の増幅医療用画像IMGa1に対応する)と、第2の複合解像度特徴
図MGML(第2の増幅医療用画像IMGa2に対応する)と、を含む出力バッチBCHoutを生成する。
【0050】
図11及び
図12に示すように、ステップS450を実行し、第1の出力ヘッド386により出力バッチBCHoutにおける複数の第1の複合解像度特徴
図MFMGに基づいてグローバル予測GPを生成する。また、ステップS42を実行し、第2の出力ヘッド388により出力バッチBCHoutにおける複数の第2の複合解像度特徴
図MGMLに応じて複数のローカル予測LPsを生成する。
【0051】
図11において、第1の出力ヘッド386と第2の出力ヘッド388によりグローバル予測GPと複数のローカル予測LPsを生成する方法は、
図2、
図8及び
図9の関連する前の実施例で検討された第1の出力ヘッド186と第2の出力ヘッド188によりグローバル予測GPと複数のローカル予測LPsを生成する方法と類似するため、ここで重複しない。この実施例と従来の実施例との主な相違点は、第1の出力ヘッド386が第1の増幅医療用画像IMGa1に対する複数の第1の複合解像度特徴
図MFMGに基づいてグローバル予測GPを生成するのに対して、第2の出力ヘッド388が第2の増幅医療用画像IMGa2に対する複数の第2の複合解像度特徴
図MGMLに基づいて複数のローカル予測LPsを生成することである。換言すれば、第1の出力ヘッド386と第2の出力ヘッド388は、異なる増幅操作に基づいてトレーニングを行う。
【0052】
図11及び
図12に示すように、グローバル予測GPと複数のローカル予測LPsは、トレーニングエージェント392に伝送される。ステップ360を実行し、トレーニングエージェント392によりグローバル予測GPとトレーニング基本的事実TGを比較することでグローバル損失を計算する。
【0053】
第1の出力ヘッド386の主要な目的は、本回の画像スキャン(即ち、医療用画像IMGt)に結節が存在するか否かを分類することである。幾つかの実施例において、グローバル損失Lglobalの計算には、重み付け交差エントロピーアルゴリズムを採用する。トレーニング基本的事実TGが真(結節が存在する)である場合、グローバル予測GPの確率ラベルが低いほどグローバル損失Lglobalが大きくなり、逆に、グローバル予測GPの確率ラベルが高いほどグローバル損失Lglobalが小さくなる。一方、トレーニング基本的事実TGが否(結節が存在しない)である場合、グローバル予測GPの確率ラベルが高いほどグローバル損失Lglobalが大きくなり、逆に、グローバル予測GPの確率ラベルが低いほどグローバル損失Lglobalが小さくなる。
【0054】
また、ステップS462を実行し、トレーニングエージェント392により複数のローカル予測LPsとトレーニング基本的事実TGを比較することでローカル損失を計算する。幾つかの実施例において、ローカル損失特徴Llocalは、以下の方程式1により計算される。
Llocal = lobj + lreg + lcls + lbbox …(方程式1)
【0055】
トレーニング段階では、第2の出力ヘッド388における領域生成ネットワーク(
図2及び
図9の第2の出力ヘッド188における領域生成ネットワーク188a参照)は、背景と前景の分類過程においてオブジェクト損失l
objを引き起こし、且つ領域生成ネットワークによって提案された領域ボックスとトレーニング基本的事実における境界ボックスとの間に計算された間隔距離に基づいて、且つ間隔距離から回帰損失l
regを得る。第2の出力ヘッド388における分類モジュール(
図2及び
図9の第2の出力ヘッド188における分類モジュール188c参照)は、特徴分類を行う時に分類損失l
clsを生成し、そして更新されたローカル予測境界ボックスとトレーニング基本的事実における境界ボックスとの間に計算された離間距離に基づいて、且つ離間距離から境界ボックス損失l
bboxを得る。幾つかの実施例において、トレーニングエージェント392は、平滑L1損失アルゴリズムに基づいて回帰損失l
reg及び境界ボックス損失l
bboxを計算してよく、トレーニングエージェント392は重み付け交差エントロピーアルゴリズムに基づいてオブジェクト損失l
obj及び分類損失l
clsを計算してよい。
【0056】
幾つかの実施例において、トレーニングエージェント392は、更にグローバル損失Llocalとローカル損失Llocalが重み付けされた後の合計により、計算された複合タスク損失Lmultiに基づいて、例えば以下の方程式2で計算する。
Lmulti=λ1*Lglobal+λ2*Llocal …(方程式2)
【0057】
方程式2では、λ1はグローバル損失の重みであり、λ2はローカル損失重みである。
【0058】
図11及び
図12に示すように、ステップS470を実行し、トレーニングエージェント392により逆伝送するようにグローバル損失L
globalとローカル損失L
local(又は複合タスク損失L
multi)に基づいてニューラルネットワークモデル380を更新する。
【0059】
典型的な画像分類又はオブジェクト検出タスクでは、各トレーニング画像に対して単一の増幅ポリシー(例えば1セットの予測設定されたランダム画像変換形態)を採用する。しかしながら、単一の増幅ポリシーを用いてデュアル出力ヘッドアーキテクチャをトレーニングすることは、そのうちの一方の出力ヘッドの表現が明らかに最適化されるが、同時に他方の出力ヘッドの表現が一般的であるのを引き起こしやすい。2つの出力ヘッドのそれぞれに対応するターゲット表現が十分な最適化を達成するために、本開示は
図11においてデュアルヘッド増幅アーキテクチャを提供する。増幅モデル390は、2つの出力ヘッドにそれぞれ二種類の増幅操作を行うために使用される。この場合、第1の出力ヘッド386と第2の出力ヘッド388をトレーニングするための異なる増幅操作は、それぞれ最適化することができ、これによって、それぞれグローバル損失L
globalとローカル損失L
localを最小化させる(又は複合タスク損失L
multiを最小化させる)。
【0060】
本開示の特定の実施例は、上記の実施例に関することを開示したが、これらの実施例は本開示を制限するためのものではない。各種の代替及び改良は当業者によって本開示の原理及び精神から乖離することなく本開示で実行されることができる。したがって、本開示の保護範囲は添付の特許出願範囲によって決定される。
【0061】
本開示は幾つかの実施例に対して相当に詳細に説明したが、他の類似の実施形態を採用する可能性がある。したがって、添付の特許請求の精神及び範囲は上記開示された実施例の記述に限定されるべきではない。
【0062】
当業者にとって、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示の構造に対して様々な修正及び変更を行うことができる。上記実施例の内容に基づいて、本開示は、添付の特許請求の範囲内に落ちる様々な可能な修正及び変更を含む。
【符号の説明】
【0063】
100、300 医療用画像検出システム
120、320 メモリ
140、340 プロセッサ
160、360 インターフェース装置
180、380 ニューラルネットワークモデル
182、382 特徴抽出ユニット
184、384 特徴ピラミッドネットワーク
186、386 第1の出力ヘッド
188、388 第2の出力ヘッド
184a、184f、184g アップサンプラー
184b、184e、184h 1×1畳み込み層
184c、184f、184i 加算器
186a、186c 畳み込み層
186b、186d 整流線形ユニット
186e プーリング層
186f 線形層
186g Softmax層
188a 領域生成ネットワーク
188b 位置合せモジュール
188c 分類モジュール
390 増幅モデル
392 トレーニングエージェント
200 医療解析方法
S210、S220、S230、S240、S242、S250 ステップ
400 トレーニング方法
S410、S420、S422、S430、S440、S450、S452 ステップ
S460、S462、S470 ステップ
IMGi、IMGt 医療用画像
Ts、T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8 中間テンソル
CL1、CL2、CL3、CL4、CL5、CL6 畳み込み層
CL7、CL8 畳み込み層
SCL1、SCL2、SCL3 標準畳み込み層
DCL 変形可能な畳み込み層
W1、W2、W3、W4 サンプリングウィンドウ
SAMP、dSAMP サンプリング点
MFM 複合解像度特徴図
MFM1、MFM2、MFM3、MFM4 複合解像度特徴図
GP グローバル予測
LPs、LP1、LP2、LP3、LP4、LP5 ローカル予測
INFO 入力情報
ROI1、ROI2、ROI3 関心領域位置
ROI4、ROI5、ROI6 関心領域位置
PR 提案領域
TAR ターゲットグループ
NTG 非ターゲットグループ
TG トレーニング基本的事実
IMGa1 第1の増幅医療用画像
IMGa2 第2の増幅医療用画像
MFMG 第1の複合解像度特徴図
MGML 第2の複合解像度特徴図
BCHin 入力バッチ
BCHout 出力バッチ
【外国語明細書】