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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127580
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】歯科矯正装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031026
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022031147
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522080775
【氏名又は名称】牛込 利彰
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】牛込 利彰
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科矯正の際に患者の負担を軽減する、新規なマウスピース型の歯科矯正装置及び歯科矯正システムを提供する。また、従来は困難だった、複数の大臼歯を同時に歯体移動させることができる、マウスピース型の歯科矯正装置及び歯科矯正システムを提供する。
【解決手段】歯列に嵌合するためのマウスピース本体と、矯正対象歯に矯正力を付与する矯正力付与部材4と、を備え、マウスピース本体は、少なくとも矯正対象歯に該当する部分が開窓した開窓部22を有しており、矯正力付与部材は、矯正対象歯に掛着するための掛着部41と、マウスピース本体に固定された固定部43を備え、矯正力付与部材における掛着部と固定部との間の張力を根源とする矯正力を矯正対象歯に付与する、マウスピース型歯科矯正装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列に嵌合するためのマウスピース本体と、前記矯正対象歯に矯正力を付与する矯正力付与部材と、を備え、
前記マウスピース本体は、歯列に嵌合したときに、少なくとも矯正対象歯が被嵌されずに露出する構造を有しており、
前記矯正力付与部材は、前記矯正対象歯に掛着するための掛着部と、前記マウスピース本体に固定された固定部を備え、
前記矯正力付与部材における前記掛着部と前記固定部との間の張力を根源とする矯正力を前記矯正対象歯に付与する、マウスピース型歯科矯正装置。
【請求項2】
歯列に嵌合するためのマウスピース本体と、前記矯正対象歯に矯正力を付与する矯正力付与部材と、を備え、
前記マウスピース本体は、少なくとも矯正対象歯に該当する部分が開窓した開窓部を有しており、
前記矯正力付与部材は、前記矯正対象歯に掛着するための掛着部と、前記マウスピース本体に固定された固定部を備え、
前記矯正力付与部材における前記掛着部と前記固定部との間の張力を根源とする矯正力を前記矯正対象歯に付与する、マウスピース型歯科矯正装置。
【請求項3】
前記開窓部が、枠によって全周が画定された閉鎖型である、請求項2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項4】
前記開窓部が、枠によって周の一部が画定され、枠が欠けている部分において空間的に開放している開放型である、請求項2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項5】
前記開窓部の前記枠の端部が立ち上がってフック部を形成し、前記フック部に前記固定部を掛着することで、前記矯正力付与部材が前記マウスピース本体に固定される、請求項4に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項6】
掛着部が、矯正対象歯の歯列方向側面に掛着するための部材である、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項7】
前記固定部が、前記マウスピース本体の歯列方向最奥側に設けられている、請求項3に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項8】
前記掛着部が、矯正対象歯の切端又は咬合面に掛着するための部材である、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項9】
前記マウスピース本体が、非矯正対象歯に被嵌するための被嵌部を備える、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項10】
前記マウスピース本体を歯列に嵌合する前に、前記掛着部を仮に掛着しておくためのストッパー部を備え、
前記ストッパー部は、前記矯正対象歯と隣接する前記非矯正対象歯を被嵌するための前記被嵌部に接続されており、
前記ストッパー部は、当該矯正対象歯と当該非矯正対象歯との歯間に対応する位置に、前記掛着部を仮に掛着するための切り込みを備える、請求項9に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項11】
前記マウスピース本体を歯列に嵌合する前に、前記掛着部を仮に掛着しておくためのストッパー部を備え、
前記ストッパー部は、前記矯正対象歯と隣接する前記非矯正対象歯を被嵌するための前記被嵌部における、歯列方向両側面に突出して設けられた突起である、請求項9に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項12】
前記被嵌部によって被嵌される隣接する前記非矯正対象歯の歯間に対応する位置に、前記固定部を掛着して固定するためのスリットが前記被嵌部に設けられている、請求項9に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項13】
前記矯正力付与部材における、少なくとも前記掛着部と前記固定部とを連結する連結部が、復元力を有する素材からなる、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項14】
前記矯正力付与部材が、1つ又は2つの前記固定部から延び、前記掛着部にて折り返して環状又は半環状の形態をとる、復元力を有する部材である、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置
【請求項15】
前記マウスピース本体における、前記開窓部における枠部分の厚みが、他の部分の厚みと比較して厚く形成された、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項16】
前記マウスピース本体における、硬口蓋又は顎堤に接する部分に接触部を備える、請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置。
【請求項17】
請求項1又は2に記載のマウスピース型歯科矯正装置と、前記矯正対象歯に取り付けられ、掛着した矯正力付与部材が矯正対象歯から脱離することを防ぐための、又は、矯正対象歯の歯頚部に食い込まないようにするための、矯正補助部材を備える、歯科矯正システム。
【請求項18】
マウスピース型歯科矯正装置の製造方法であって、
患者の歯型模型において、矯正対象歯に相当する部分の側面を、矯正対象歯の移動に十分な隙間を確保できるように形状を補正した補正歯型模型を作製する、補正工程と、
前記補正歯型模型に基づいてマウスピースを成形する成形工程と、
矯正対象歯に該当する部分を開窓させる開窓部作製工程と、を有する、マウスピース型歯科矯正装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科矯正装置、特に、マウスピース型の歯科矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科矯正をする際には、金属製のブラケット及びワイヤからなる矯正装置を用いることが普通であった。
しかし、金属製のブラケット及びワイヤは目立つこと、及び、食べかす等が歯とブラケットとの間に詰まりやすく不衛生になりやすいことから、近年、透明の樹脂製のマウスピース型の矯正装置も、使用されてきている。
【0003】
マウスピース型の矯正装置において、歯をより移動させやすくするため、矯正対象の歯に対して矯正力を付与する部材をさらに備える装置が考案されてきた。
例えば特許文献1には、使用者の歯列の少なくとも一部を収容することができる収容空間が形成されている本体と、前記収容空間から離れる方向に前記本体から突起している主突起部とを更に有し、かつ透明材料で作製された歯科矯正具と、前記歯列の所定の矯正対象歯に接着される取付ユニットと、前記矯正対象歯に矯正力を与えるように前記取付ユニットと前記主突起部との間に取付けられる束縛ユニットとを有する補助調整手段と、を備えることを特徴とする歯列矯正システムが記載されている。
【0004】
また、矯正力を付与するという観点から、従来のブラケットとワイヤに加えて、さらに歯科矯正用アンカースクリューを用いた歯科矯正(インプラント矯正)も行われてきた。この方法では、患者の歯茎の骨部分に埋め込んだアンカースクリューとブラケットとの間にワイヤ等を渡して歯に対して矯正力を付与するため、ブラケットとワイヤのみの矯正と比較して強い矯正力を歯に付与することにより短期間で矯正をすることができ、また所望する歯の移動方向に合わせて柔軟に位置を変更することも可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているシステムや従来用いられていたブラケットとワイヤを用いた矯正では、複数の歯(特に、大臼歯)の歯体移動を行うことが困難であるという問題があった。
【0007】
また、インプラント矯正の場合、アンカースクリューを直接患者の歯茎に埋め込むため、患者が恐怖心を抱きやすく、また患者の負担が大きいという問題があった。
【0008】
上記状況に鑑み、本発明は、歯科矯正の際に患者の負担を軽減する、新規なマウスピース型の歯科矯正装置及び歯科矯正システムを提供することを、課題とする。また、従来は困難だった、複数の大臼歯を同時に歯体移動させることができる、マウスピース型の歯科矯正装置及び歯科矯正システムを提供することを、さらなる課題とする。
さらにまた、歯科矯正の際に患者の負担を軽減する、新規なマウスピース型の歯科矯正装置を製造するための方法を提供することを、さらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、歯列に嵌合するためのマウスピース本体と、前記矯正対象歯に矯正力を付与する矯正力付与部材と、を備え、前記マウスピース本体は、歯列に嵌合したときに、少なくとも矯正対象歯が被嵌されずに露出する構造を有しており、前記矯正力付与部材は、前記矯正対象歯に掛着するための掛着部と、前記マウスピース本体に固定された固定部を備え、前記矯正力付与部材における前記掛着部と前記固定部との間の張力を根源とする矯正力を前記矯正対象歯に付与する、マウスピース型歯科矯正装置である。
本発明によれば、歯科矯正を行う際の患者の負担を軽減しつつ、複数の歯(特に、複数の大臼歯)の歯体移動を容易に行うことができる。
【0010】
また、上記課題を解決する本発明は、歯列に嵌合するためのマウスピース本体と、前記矯正対象歯に矯正力を付与する矯正力付与部材と、を備え、前記マウスピース本体は、少なくとも矯正対象歯に該当する部分が開窓した開窓部を有しており、前記矯正力付与部材は、前記矯正対象歯に掛着するための掛着部と、前記マウスピース本体に固定された固定部を備え、前記矯正力付与部材における前記掛着部と前記固定部との間の張力を根源とする矯正力を前記矯正対象歯に付与する、マウスピース型歯科矯正装置である。
本発明は、上述した「少なくとも矯正対象歯が被嵌されずに露出する構造」として開窓部を備えるものである。本発明によれば、歯科矯正を行う際の患者の負担を軽減しつつ、複数の歯(特に、複数の大臼歯)の歯体移動を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記開窓部が、枠によって全周が画定された閉鎖型である。
【0012】
また、本発明の好ましい別の形態では、前記開窓部が、枠によって周の一部が画定され、枠が欠けている部分において空間的に開放している開放型である。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記開窓部の前記枠の端部が立ち上がってフック部を形成し、前記フック部に前記固定部を掛着することで、前記矯正力付与部材が前記マウスピース本体に固定される。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記掛着部が、矯正対象歯の歯列方向側面に掛着するための部材である。
本発明の好ましい形態では、前記固定部が、前記マウスピース本体の歯列方向最奥側に設けられている。
本発明によれば、複数の歯(特に、複数の大臼歯)の移動を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の別の好ましい形態では、前記掛着部が、矯正対象歯の切端又は咬合面に掛着するための部材である。
本発明によれば、特に歯の圧下を目的とする矯正を、患者の負担が少なく行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記マウスピース本体が、非矯正対象歯に被嵌するための被嵌部を備える。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記マウスピース本体を歯列に嵌合する前に、前記掛着部を仮に掛着しておくためのストッパー部を備え、前記ストッパー部は、前記矯正対象歯と隣接する前記非矯正対象歯を被嵌するための前記被嵌部に接続されており、前記ストッパー部は、当該矯正対象歯と当該非矯正対象歯との歯間に対応する位置に、前記掛着部を仮に掛着するための切り込みを備える。
掛着部をストッパー部に仮に掛着しておいた状態で、マウスピース本体を歯列に嵌合し、その後にストッパー部から掛着部を外すことで、容易に掛着部を矯正対象歯に掛着することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記マウスピース本体を歯列に嵌合する前に、前記掛着部を仮に掛着しておくためのストッパー部を備え、前記ストッパー部は、前記矯正対象歯と隣接する前記非矯正対象歯を被嵌するための前記被嵌部における、歯列方向両側面に突出して設けられた突起である。
掛着部をストッパー部に仮に掛着しておいた状態で、マウスピース本体を歯列に嵌合し、その後にストッパー部から掛着部を外すことで、容易に掛着部を矯正対象歯に掛着することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記被嵌部によって被嵌される隣接する前記非矯正対象歯の歯間に対応する位置に、前記固定部を掛着して固定するためのスリットが前記被嵌部に設けられている。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記矯正力付与部材における、少なくとも前記掛着部と前記固定部とを連結する連結部が、復元力を有する素材からなる。
本発明の好ましい形態では、前記矯正力付与部材が、1つ又は2つの前記固定部から延び、前記掛着部にて折り返して環状又は半環状の形態をとる、復元力を有する部材である。
本発明によれば、歯科矯正を行う際の患者の負担を軽減しつつ、複数の歯(特に、複数の大臼歯)の歯体移動を容易に行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記マウスピース本体における、前記開窓部における枠部分の厚みが、他の部分の厚みと比較して厚く形成されている。
本発明によれば、開窓部の強度を増すことができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記マウスピース本体における、硬口蓋又は顎堤に接する接触部を備える。
矯正対象歯に矯正力を付与すると、その反作用により、矯正対象歯以外の歯に、矯正力とは反対向きの力がかかる。矯正対象歯に付与する矯正力がそれほど大きくない場合には、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力もそれほど大きくないため、矯正対象歯以外の歯の移動は起こらない。しかし、矯正対象歯に付与する矯正力が大きい場合には、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力も大きくなるため、当該反対向きの力を受けた矯正対象歯以外の歯の、望まない前方への移動をするおそれがある。本発明によれば、接触部を設けることで、マウスピース本体と硬口蓋又は顎堤とを接触させ、これにより矯正対象歯に付与する矯正力が大きい場合でも、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力を軽減させることができ矯正対象歯以外の歯の望まない前方への移動をすることを抑制することができる。
【0023】
上記課題を解決する本発明は、上記したマウスピース型歯科矯正装置と、前記矯正対象歯に取り付けられ、掛着した前記矯正力付与部材が前記矯正対象歯から脱離することを防ぐための又は、矯正対象歯の歯頚部に食い込まないようにするための、矯正補助部材を備える、歯科矯正システムである。
矯正対象歯が傾斜している場合や、歯冠の長さが矯正力付与部材を掛着するのに十分でない場合には、矯正力付与部材が矯正対象歯から脱離し、十分に矯正力を付与できないことがある。本発明によれば、矯正対象歯から矯正力付与部材が脱離することを抑制し、矯正対象歯に対して十分な矯正力を付与し、矯正することができる。また、矯正対象歯の歯頚部に食い込まないようにするための矯正補助部材を備えることで、歯頚部や歯茎に矯正力付与部材が食い込んで歯茎が損傷するのを防ぐこともできる。
【0024】
上記課題を解決する本発明は、マウスピース型歯科矯正装置の製造方法であって、患者の歯型模型において、矯正対象歯に相当する部分の側面を、矯正対象歯の移動に十分な隙間を確保できるように形状を補正した補正歯型模型を作製する、補正工程と、前記補正歯型模型に基づいてマウスピースを成形する成形工程と、矯正対象歯に該当する部分を開窓させる開窓部作製工程と、を有する、マウスピース型歯科矯正装置の製造方法である。
本発明によれば、歯科矯正の際に患者の負担を軽減する、新規なマウスピース型の歯科矯正装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のマウスピース型歯科矯正装置及び歯科矯正システムによれば、矯正時の患者の負担を軽減することができる。また、好ましい形態では、従来は困難だった複数の大臼歯の歯体移動を目的とする矯正を、容易にすることができる。
また、本発明のマウスピース型歯科矯正装置の製造方法によれば、歯科矯正の際に患者の負担を軽減する、新規なマウスピース型の歯科矯正装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る歯科矯正装置1の第1の実施形態及び患者の歯列S(上顎)を表す図である。図中白抜き矢印は、歯科矯正装置1を歯列Sに取り付けることをあらわす。
図2図2(a)は、歯列Sに取り付けた歯科矯正装置1の固定源3と、矯正対象歯T1又はT3の間に、矯正力付与部材4を取り付けることを表す図である。図2(a)中曲がった矢印は、矯正力付与部材4を、固定源3と矯正対象歯T1及びT3に取り付けることを表す。図2(b)は、固定源3と矯正対象歯T1及びT3との間に、矯正力付与部材4を取り付けた後の図である。
図3図3(a)は、図2(a)の一部を拡大した図である。図3(a)中の白抜き矢印は、歯科矯正装置1を歯列Sに取り付けることを表す。図3(b)は、図2(b)の一部を拡大した図である。図3(b)中白抜き矢印は、矯正対象歯T3及びT4にかかる矯正力の向き並びに矯正対象歯T3及びT4の移動方向を表す。またH1及びH2は、マウスピース本体2の高さを表す。
図4図4は、図2(b)を顎堤側から見た図である。図4中白抜き矢印は、矯正対象歯T3及びT4にかかる矯正力の方向及び矯正対象歯T3及びT4の移動方向を表す。
図5図5は、本発明に係る歯科矯正装置1の第2の実施形態を表す。図5中白抜き矢印は、矯正対象歯にかかる矯正力の方向及び矯正対象歯の移動方向を表す。
図6図6は、マウスピース型の歯科矯正装置を取り付けた歯列Sの垂直断面図である。図6中左向き矢印は、矯正対象歯に矯正力を付与することにより、矯正対象歯以外の歯に与えられる反作用の力の向きを表す。またWは、マウスピース本体2の厚みを表す。
図7】第3の実施形態におけるマウスピウース本体2を表す図である。
図8】第3の実施形態における矯正力付与部材4を表す図である。
図9】第3の実施形態における歯科矯正装置1を装着した状態を表す図である。図中の白抜き矢印は矯正対象歯T1にかかる矯正力の方向及び矯正対象歯T1の移動方向を表す。
図10】第4の実施形態の歯科矯正装置1を歯列に嵌合する前の状態を表す図である。矯正力付与部材4の掛着部41は、ストッパー部6に仮掛着されている。
図11】第5の実施形態の歯科矯正装置1を歯列に装着する前の状態を表す図である。矯正力付与部材4の掛着部41は、2つのストッパー部6を横架するように仮掛着されており、矯正対象歯と非矯正対象歯の歯間に位置している。(a)は側面図、(b)は平面図を表す。
図12】第6の実施形態の歯科矯正装置1を歯列に装着した状態を表す平面図である。図中の白抜き矢印は矯正対象歯T1及びT2にかかる矯正力の方向及び矯正対象歯T1及びT2の移動方向を表す。
図13図13は、本発明に係る歯科矯正システムの一部を表す図である。
図14】本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置の使用前(図14中左)及び使用後(図14中右)に作製した歯科模型を横から見た図である。
図15】本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置の使用前(図15中左)及び使用後(図15中右)に作製した歯科模型を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.マウスピース型歯科矯正装置
<第1の実施形態>
まず、本発明に係る歯科矯正装置1の第1の実施形態を、図1図4を参照して説明する。なお、図1図4に表された歯科矯正装置1は、上顎側の歯列Sに対して装着するものであるが、下顎側の歯列に対して本発明に係る歯科矯正装置1を装着する場合でも、構成としては同様である。
また本明細書において、口腔内のより咽頭側を「奥側」、より中切歯側を「手前」という。
【0028】
図1~4に、第1の実施形態に係る歯科矯正装置1を示す。第1の実施形態に係る歯科矯正装置1は、マウスピース本体2、固定源3、矯正力付与部材4からなる。そして、第1の実施形態に係る歯科矯正装置1は、矯正対象歯T1、T2(左の第一大臼歯及び第二大臼歯)及び、矯正対象歯T3、T4(右の第一大臼歯及び第二大臼歯)を、それぞれさらに奥側に歯体移動(水平移動)させる矯正を目的とする装置である。
本発明によれば、従来は困難であった、複数の大臼歯の歯体移動を、従来よりも容易に、患者への負担が少なく、実現することができる。また、インプラント矯正のように、口腔内に直接矯正力付与部材4の固定源を設ける必要がなく、患者の負担を軽減することができる。さらにまた、ワイヤとブラケットを使用する従来の矯正と比較して、矯正装置が目立たないため、審美的にも患者への負担が少ない。
【0029】
本実施形態において、マウスピース本体2は、少なくとも矯正対象歯T1及びT2に該当する部分並びに矯正対象歯T3及びT4に該当する部分がそれぞれ開窓した開窓部22を2つと、矯正対象歯でない歯(非矯正対象歯)に被篏するための被嵌部21と、硬口蓋に接する接触部23と、を有している(図1~4)。
開窓部22は、枠によって全周が画定された形態をとる。本明細書においては、枠によって全周が画定された閉鎖的な形態の開窓部22のことを閉鎖型という。
【0030】
本実施形態では、開窓部22は、矯正対象歯T1及びT2並びにT3及びT4に該当する部分が開窓しているが、矯正対象歯T1及びT3よりも手前側の、非矯正対象歯に該当する部分も含めて開窓していてもよい。
また、本実施形態において被嵌部21は、矯正対象歯T1~T4以外の、非矯正対象歯の全てに被嵌しているが、被嵌部21の形態はこれに限定されず、被嵌部21は、非矯正対象歯の一部に被嵌する形態としてもよい。
さらにまたマウスピース本体2は、被嵌部21を有しなくてもよい。被嵌部を有さない形態としては、マウスピウース本体2が歯茎を覆う枠で形成されている形態が例示できる。また、マウスピウース本体2と歯列の位置関係を固定するために、枠と歯をバネ等で固定する形態としてもよい。
【0031】
マウスピース本体2の素材は特に制限されず、通常マウスピース型の歯科矯正装置を作製する際に使用されている材料(例えば、ポリウレタン、熱可塑性樹脂シート、義歯床用アクリリック樹脂等)を適宜使用することができる。装着したマウスピース型歯科矯正装置1の目立たなさの観点から、マウスピース本体2の素材は、透明であることが好ましい。
【0032】
マウスピース本体2は、マウスピース型歯科矯正装置1を使用する患者の歯列及びかみ合わせを基に作製されたものである。
例えば、マウスピース本体2は、以下の方法で作製することができる。まず、患者の口腔内及び噛み合わせを、印象材を用いて採取し(採取工程)、これに基づいて患者の歯列や硬口蓋又は顎堤を再現した石膏模型を作製する(歯型模型作製工程)。次に、作製した石膏模型の矯正対象歯に相当する部分の形状を、レジン等の補正剤で補正する(補正工程)。次に、補正をした石膏模型に、必要に応じて加熱等を行い加工可能な状態にしたシート状の矯正装置用素材を押し付け、マウスピースを成形する(マウスピース成形工程)。最後に、必要に応じて冷却したマウスピースにおいて、開窓部22に相当する部分を開窓させることにより(開窓部作製工程)、マウスピース本体2を作製することができる。本実施形態に係るマウスピース型歯科矯正装置1は、後述する接触部23を残して、マウスピースの余分な部分を除去する除去工程をあわせて行う。
【0033】
後述する通り、開窓部22は、矯正対象歯に対して、矯正による移動に十分な隙間を開けて設けられている。よって上記補正工程における補正は、上記開窓部作製工程を経たマウスピース本体2において、開窓部22と矯正対象歯との間に、矯正対象歯の移動に十分な隙間を確保できるように、歯型模型における矯正対象歯に相当する部分の側面に後述する補正剤を塗布、必要に応じて乾燥、硬化、重合等させる方法を採用することができる。
これにより、矯正対象歯の移動に十分な隙間を設けることができるほか、矯正力付与部材4が患者の歯の根元に接触したり食い込んだりしないようにすること、及び後述する固定部43(又は、固定源3)を適切な位置に設けることもできる。
【0034】
補正剤としては、上記したレジンに限られず、患者の歯型模型における矯正対象歯に相当する部分の側面に付着させ、必要に応じて乾燥(乾燥方法は問わない)、硬化(硬化方法は問わない)、重合(重合方法は問わない)等させることにより、後述する開窓部22の形状を成形することができる材料であれば、石膏等公知の材料を適宜採用することができる。
【0035】
またマウスピース本体2の製造は、その一部又は全部をコンピュータ上で行うこともできる。
具体的に述べると、まず採取工程は、光学印象を用いて行うことができる。この場合、歯型模型作製工程は、光学印象により採取したデータを3Dプリンタで出力して行うことができる。この場合でも、補正工程以降は、上記と同様にすることができる。また、これ以降の工程をコンピュータ上で行うこともできる。
【0036】
次に、補正工程も、コンピュータ上で行うことができる。この場合、光学印象で採取した患者の歯列や硬口蓋又は顎堤を再現したデータ(以下、歯型データという)に対して、矯正対象歯の移動に十分な隙間を確保できるように、歯型データにおける矯正対象歯に相当する部分の側面のデータを編集して形状を補正して、補正歯型データを得る。なおデータ上での形状の補正は、CAD等公知のツールを利用してコンピュータ上で行うことができる。
この時、補正歯型データに基づいてマウスピースのデータを作製し、作製したマウスピースのデータを3Dプリンタで出力することで、マウスピース成形工程を行うことができる。またこれ以降の工程も、コンピュータ上で行うこともできる。
【0037】
さらにまた、補正歯型データに基づいてマウスピースのデータを作製し、作製したマウスピースのデータを、開窓部を有するように編集することにより、開窓部を有するマウスピースのデータを作製し(開窓マウスピースデータ作製工程)、作製したマウスピースのデータを3Dプリンタで出力して(出力工程)、マウスピース本体2を作製することもできる。この場合、補正工程から開窓マウスピースデータ作製工程を全てコンピュータにて行うことができるので、簡便にマウスピース型歯科矯正装置1を作製することができる。
【0038】
後述する固定源3をマウスピース本体2と一体成型する場合には、例えば上記補正工程において、固定源3に相当する部品を接着し、これに基づいてマウスピースを成形することができる。またマウスピース本体2の作製をコンピュータで行う場合には、固定源3に相当する部品を有するように歯型データを編集し、これをその後の工程に供することで、マウスピースと固定源3を一体成型することができる。
また何れの工程も、上記記載した形態に限られず、適宜公知の方法を採用することができる。
【0039】
開窓部22は、矯正対象歯T1及びT2、並びにT3及びT4に対して、これらの歯体移動に十分な隙間を開けて設けられている(特に、図3(b)、図4)。
また本実施形態では、開窓部22の幅(歯列に対して垂直方向の長さ)は一定であるが、固定源に向かって幅が広くなるように設けることが好ましい。
【0040】
開窓部22の位置は、図1図4で表された位置に限定されず、矯正対象歯の位置に応じて、マウスピース本体2上の適当な位置に設けることができる。
例えば矯正対象歯が犬歯である場合、当該犬歯の移動のために十分な隙間を開けて、マウスピース本体2上の当該犬歯に該当する部分に開窓部22を設けることができる。その他の位置にある歯についても、同様である。
【0041】
開窓部22の大きさは、矯正対象歯の矯正のために必要な隙間を確保することができるように、矯正対象歯の数やマウスピース型歯科矯正装置1の強度を考慮し、適宜設定することができる。また矯正対象歯の移動のために必要な隙間の大きさは、所望する矯正対象歯の大きさや、所望する移動距離、移動方向、矯正の目的に応じて、適宜設定することができる。
好ましくは、少なくとも歯頚部を除く歯冠が露出するように、開窓部22を設ける。さらに好ましくは、矯正対象歯の歯茎が露出しないように、開窓部22を設ける。
上記形態で開窓部22を設けることで、矯正力付与部材4が患者の歯茎に食い込むことを防ぐことができる。
【0042】
本実施形態において、開窓部22は左右対称に設けられているが、開窓部22は、矯正対象歯の位置に応じて左右非対称に設けることもできる。例えば図1~4の矯正対象歯T3及びT4のみ歯体移動させる必要があり、T1及びT2は移動させる必要がない場合には、矯正対象歯T3及びT4を露出させる開窓部22のみを設けることができる。
【0043】
また本実施形態において、開窓部22は、矯正対象歯T1~T4の咬合面が露出するように設けられているが、矯正の目的に応じて、開窓方向は適宜変更することができる。例えば、矯正対象歯の側面(口腔外側でも口腔内側でも良い)が露出するように、開窓部22を設けることもできる。
【0044】
マウスピース本体2は、全体として同じ厚みでもよいが、開窓部22の枠部分の厚みを、他の部分と比較して厚く形成することが好ましい。
本発明によれば、マウスピース型歯科矯正装置1の開窓部22における強度を上げることができる。
なお本発明において、「厚み」とは、マウスピース型歯科矯正装置1における、歯茎に対して垂直方向の長さ(図6中W)をいい、「高さ」とは、歯及び歯茎に対して平行な部分の長さ(図3(b)中H1及びH2)をいう。
【0045】
マウスピース本体2の厚みは、マウスピース本体2を構成する材料によって、適宜設定することができる。例えば材料として、熱可塑性樹脂シートのような、可撓性が比較的高い材料を用いてマウスピース本体2を作製する場合、マウスピース本体2の厚みを0.4~8.0mm程度とすることで、矯正力付与部材4を掛着した際にマウスピース型矯正装置1がたわんだり歪んだりすることを防ぐことができる。
また例えば歯科用の金属やカーボン樹脂、ジルコニアなど、可撓性が比較的低い材料を用いてマウスピース本体2を作製する場合には、可撓性が比較的高い材料の場合と同様に厚みを0.4~8.0mm程度とすることもできるし、厚みが0.5mm以下の極薄いマウスピース本体2とすることもできる。
またマウスピース本体2の高さH1及びH2は、矯正の目的や矯正対象歯の位置によって、適宜設定することができる。
【0046】
開窓部22の枠部分の厚みは、他の部分の厚みよりも1.1倍以上厚いことが好ましく、3倍以上厚いことがより好ましい。
本発明によれば、マウスピース型歯科矯正装置1の開窓部22における強度を上げることができる。
開窓部22の枠部分の厚みの上限は、マウスピース型歯科矯正装置の強度と、患者の使用感との兼ね合いで適宜決定することができるが、例えば3倍程度とすることができる。
開窓部22の枠部分の厚みは、例えばマウスピース本体2と同じ素材のシートを、開窓部22の枠部分に重ねて接着することにより、調整することができるが、厚みの調整方法はこれに限定されない。
【0047】
本実施形態においては、矯正力付与部材4は、矯正用エラスティック(環状のゴム)である(図2図4)。換言すれば、本実施形態においては、矯正力付与部材4は、1つの固定部43から伸び、掛着部41にて折り返して環状の形態をとる、復元力を有する部材からなる。
本発明によれば、矯正対象歯に簡便に、効率的に矯正力を付与することができる。
【0048】
ただし、矯正力付与部材4は、矯正対象歯に掛着するための掛着部41と、マウスピース本体2に固定された固定部43と、を有し、掛着部41と固定部43との間の張力を根源として、矯正力を矯正対象歯T1~T4に付与する(図3(b)白抜き矢印、図4白抜き矢印)ことができれば、具体的な部材は矯正用エラスティックに限定されない。
また矯正力付与部材4は、掛着部31と固定部43との間に張力を生じさせることができれば、必ずしも連結部42を備えなくてもよい(すなわち、掛着部41と固定部43とが直接連結していてもよい)が、復元力を有する素材からなる連結部42を備えることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、固定部43は、マウスピース本体2の歯列方向最奥側(最も奥側の歯の、さらに奥側)に設けられたボタン状の固定源3に掛着することにより、構成されている。すなわち本形態においては、固定部43は、所望する矯正対象歯の移動方向(口腔内奥側)前方直線上に設けられている。
本発明によれば、従来は困難であった、複数の大臼歯の歯体移動を、従来よりも容易に、患者への負担が少なく、実現することができる。また、インプラント矯正のように、口腔内に直接矯正力付与部材4の固定源を設ける必要がなく、患者の負担を軽減することができる。さらにまた、ワイヤとブラケットを使用する従来の矯正と比較して、矯正装置が目立たないため、審美的にも患者への負担が少ない。
【0050】
ただし、固定部43のマウスピース本体2への固定方法は、これに限定されず、矯正力付与部材4をマウスピース本体2に固定することができればよい。例えば、フック状の固定源3(マウスピース本体2とは別部材を接着しても良く、マウスピース本体2と一体成型してもよい)に掛着する形態や、固定部43とマウスピース本体2とを直接接着する形態をとることもできる。
ただし、後述する通り、矯正力付与部材4の矯正力付与能の維持のために、矯正力付与部材4(又は少なくとも連結部42)を定期的に交換する形態とする場合には、固定部43を固定源3に掛着することで矯正力付与部材4をマウスピース本体2に固定することが好ましい。
【0051】
なお本発明において、「矯正力付与部材4をマウスピース本体2に固定する」とは、患者が本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1を使用している最中に、マウスピース本体2(又は固定源3)から、矯正力付与部材4が脱離しないことを意味する。換言すれば、患者が本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1を使用していないときには、矯正力付与部材4は、マウスピース本体2(又は固定源3)に固定されていてもよく、固定源3から脱離していてもよい。そのため、マウスピース型歯科矯正装置1のメンテナンス時において、矯正力付与部材4を必要に応じて交換する際に、マウスピース本体2又は固定源3から矯正力付与部材4が脱離しても構わない。
【0052】
固定部43のマウスピース本体2上の位置は、図1図4に表された位置に限定されず、所望する矯正対象歯の移動方向前方(前方直線上及び斜め前方の何れも含む)に設けられていればよい。
例えば、犬歯のみの奥側への歯体移動(水平移動)を目的とする矯正をする場合には、犬歯よりも奥側の歯に相当する位置に、矯正力付与部材4をマウスピース本体2に直接、又は固定部43を介して固定することで、所望の移動を達成することができる。その他の位置の歯及び矯正の目的であっても、同様である。
【0053】
矯正力付与部材4は、その矯正力付与能の維持のため、少なくとも連結部42については、定期的に交換することが好ましい。例えば矯正力付与部材4として矯正用エラスティックを使用する場合には、矯正用エラスティックを1日1回交換することが好ましい。交換の頻度は、連結部42の素材によって適宜設定することができる。
【0054】
本実施形態においては、上記の通り矯正力付与部材4は環状の矯正用エラスティック(すなわち、1つの固定部43から伸び、掛着部41にて折り返して環状の形態をとる、復元力を有する部材)であるが、矯正力付与部材4の形態は、これに限定されない。
本発明の効果を奏するためには、上記の通り、掛着部31と固定部43との間に張力を生じさせることができればよい。矯正力付与部材4が連結部42を有する場合には、少なくとも連結部42が復元力を有する素材からなる部品であればよく、掛着部41及び固定部43は、異なる素材(復元力を有しない素材を含む)からなる部品であってもよい。例えば掛着部41は、フックや曲面を有するプレート等、矯正対象歯に掛着することができる、口腔内で使用可能な素材からなる部品であれば、その素材や形状は特に制限されない。また固定部43は、マウスピース本体2に矯正力付与部材4を固定することができ、口腔内で使用可能な素材からなる部品であれば、特にその素材や形状、大きさは特に制限されない。
【0055】
本実施形態において、固定部43は、マウスピース本体2の歯列方向最奥側に設けられた固定源3により固定されている(図1図4)。
本発明によれば、従来は困難であった、複数の大臼歯の歯体移動を、従来よりも容易に、患者への負担が少なく、実現することができる。
【0056】
ただし、上記の通り、固定源3を設けることは必須ではなく、矯正力付与部材4の固定部43を直接マウスピース本体2と接着させる形態とすることもでき、この場合も同様の効果を奏する。また、固定源3を設ける場合、その位置は、図1図4に表された位置に限定されず、矯正対象歯の歯列上の位置及び矯正の目的に応じて、矯正対象歯の移動方向前方に位置するように、適宜設定することができる。
さらにまた、固定源3を設ける場合、その素材や形状は、矯正力付与部材4を固定源3に固定することができれば、特に制限されず、例えば形状の異なる別部材をマウスピース本体2に接着させても、マウスピース本体2と一体成型させてもよい。
【0057】
本形態では、マウスピース本体2における、硬口蓋に接する部分に接触部23を備える(図1図2)。ただし、下顎側の歯列に対して本発明に係る歯科矯正装置1を装着する場合には、接触部23は顎堤に接する。
好ましくは、少なくとも使用時において、当該接触部23に、マウスピース本体2と硬口蓋又は顎堤との接触状態を安定化させるための接触層(図示しない)を備える。
マウスピース型矯正装置1を用いての矯正においては、矯正対象歯にかける矯正力の反作用として、矯正対象歯以外の歯に、手前側に向かう力が作用する(図6左向き矢印)。矯正対象歯に付与する矯正力がそれほど大きくない場合には、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力もそれほど大きくないため、矯正対象歯以外の歯の移動は起こらないか、またはごくわずかな移動しか生じないため、矯正上は問題にならない。
しかし、矯正対象歯に付与する矯正力が大きい場合には、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力も大きくなるため、当該反対向きの力を受けた矯正対象歯以外の歯の望まない前方への移動が生ずるおそれがある。しかし本発明によれば、接触部を設けることにより、マウスピース本体と硬口蓋又は顎堤とを接触させ、これにより矯正対象歯に付与する矯正力が大きい場合でも、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力を軽減することができ、矯正対象歯以外の歯が望まない前方への移動をすることを抑制することができる。また、少なくとも使用時に接触層を設けることにより、マウスピース本体2と硬口蓋又は顎堤との接触状態をより安定化することができるため、矯正対象歯以外の歯にかかる反対向きの力をより軽減することができる。
なお接触部は、マウスピース本体2の作製時に、適宜その大きさ等を調整することができる。
【0058】
接触層は、マウスピース本体2と硬口蓋又は顎堤との接触状態を安定化することができれば、その素材は特に限定されない。
例えば公知の義歯安定剤を、マウスピース本体2の接触部23に塗布し、硬口蓋又は顎堤に接着させることができる。この場合、接触部23と硬口蓋又は顎堤との間に形成される両義歯安定剤からなる接着層が、本明細書でいう接触層に該当する。つまり、本明細書でいう接触層は要時成形することができる。
なお、上述したような要時成形の形態に限られず、本発明は不使用時においても接触層を備える形態であってもよい。
【0059】
本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1は、公知のマウスピース型歯科矯正装置と同様に使用することができる。
1日の装着時間としては、20時間以上を目安にすることができるが、食事及び歯磨きの時間を除いて、1日中装着し続けることが好ましい。
使用期間(矯正開始から矯正終了までの期間)は、矯正前の患者の歯及び歯列の状態や矯正の目的によって適宜設定することができる。
【0060】
<第2の実施形態>
図5を参照し、本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0061】
第2の実施形態は、矯正対象歯の圧下を目的とする矯正のために使用する歯科矯正装置である。
本実施形態において、マウスピース型歯科矯正装置1のマウスピース本体2には、開窓部22の枠部分において、矯正対象歯を挟んで互いに反対側に位置するように固定部43が2つ設けられている。すなわち、2つの固定部43は、矯正対象歯の移動(圧下)方向前方に設けられている。また2つの固定部43は、マウスピース本体2の開窓部22の枠部分に、矯正対象歯を挟んで互いに反対側に位置するように設けられた2つの固定源3に、固定部43を掛着することで、構成されている。
また本実施形態において、矯正力付与部材4は矯正用エラスティックであり、2つの固定部43においてマウスピース本体2に固定されることにより、略U字状の形状をとっている。換言すれば、本実施形態において矯正力付与部材は、2つの固定部43から伸び、掛着部41にて折り返して半環状の形態をとる、復元力を有する部材である。
【0062】
ただし、固定部43(固定源3)の位置関係等の形態は、図5に表された形態に限定されない。また掛着部41は、矯正対象歯によっては、咬合面に掛着していてもよい。
また、第2の実施形態に係るマウスピース型歯科矯正装置1は、第1の形態と同様に製造することができる。
【0063】
<第3の実施形態>
図7~9を参照し、本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1の第3の実施形態を説明する。なお、第1及び第2の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0064】
第3の実施形態のマウスピース型歯科矯正装置1のマウスピース本体2を図7に示す。マウスピース本体2は、矯正対象歯T1の側面に設けられた枠よって周の一部が画定された開窓部22を備える。矯正対象歯T1の奥側部分において開窓部22の枠が欠けていることから、開窓部22は空間的に開放している。本明細書においては、図7に示すような、枠によって周の一部が画定され、枠が欠けている部分において空間的に開放している形態の開窓部22のことを開放型の開窓部という。
【0065】
開放型の開窓部21を備える第3の実施形態では、第1の実施形態のように大臼歯のさらに奥側に枠を配置することを要しないため、装着時の口腔内の圧迫感が軽減されている。さらにはスペースの問題から後方に枠が配置できない症例にも、強い矯正力を作用させることができる。
【0066】
第3の実施形態においては、開窓部22の両枠の端部が立ち上がり、2つのフック部31(固定源3に相当)が形成されている。2つのフック部31は矯正対象歯T1を挟んで頬側と口蓋側に対抗するように設けられている(図7)。
【0067】
第3の実施形態の矯正力付与部材4は、2つの環状構造が連結した8の字型の構造をとっている(図8)。矯正力付与部材4は両端の環状構造をフック部31に掛着することで、マウスピース本体2に固定する(図9)。そして、環状構造を連結する部分を矯正対象歯T1に掛着することで、矯正対象歯T1に矯正力を付与する(図9)。すなわち、矯正力付与部材4における環状構造の端部が固定部43、2つの環状構造を連結する部分が掛着部41、固定部43と掛着部41の間が連結部42として機能する。
【0068】
なお、第3の実施形態の矯正力付与部材4は8の字型の構造をとっているが、フック部31に固定でき、矯正対象歯T1に掛着できるのであれば、その形態は設計変更することができる。
【0069】
<第4の実施形態>
第4の実施形態について図10を参照しながら説明する。なお、第1~第3の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0070】
第4の実施形態のマウスピース本体2の構造は、おおむね第3の実施形態のものと共通するが、ストッパー部6を有する点で相違する(図10)。ストッパー部6は、マウスピース本体2を歯列に嵌合する前に、矯正力付与部材4の掛着部41を仮に掛着しておくための部位である。
【0071】
ストッパー部6は、矯正対象歯T1と隣接する非矯正対象歯を被嵌するための被嵌部21に接続されている。具体的には被嵌部21から開窓部22の方向に突設されている。マウスピース本体2を歯列に嵌合した際に、開窓部22から露出する矯正対象歯T1の邪魔にならないように、ストッパー部6は矯正対象歯T1の上面の一部に適合した形状に形成されている(図10)。
ストッパー部6は、矯正対象歯T1と非矯正対象歯との歯間に対応する位置に、掛着部41を仮に掛着するための切り込み61を備える(図10)。
【0072】
マウスピース本体2を歯列に嵌合する前に、矯正力付与部材4の固定部43をフック部31に掛着し、掛着部41をストッパー部6の切り込み61に仮に掛着させておく(図10)。
図10に図示した状態にセットした歯科矯正装置1を歯列に嵌合し、ストッパー部6に仮掛着しておいた矯正力付与部材4の掛着部41を外せば、容易に掛着部41を矯正対象歯T1に掛着することができる。
【0073】
<第5の実施形態>
第5の実施形態について図11を参照しながら説明する。なお、第1~第4の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0074】
第5の実施形態のマウスピース本体2の構造は、おおむね第3の実施形態のものと共通するが、マウスピース本体2を歯列に嵌合する前に、掛着部41を仮に掛着しておくためのストッパー部6を有する点で相違する(図11)。
【0075】
ストッパー部6は、矯正対象歯T1と隣接する非矯正対象歯を被嵌するための被嵌部21に設けられている。具体的にストッパー部6は、被嵌部21の歯列方向両側面(頬側側面及び口蓋側側面)に突出して設けられた突起である(図11)。
【0076】
マウスピース本体2を歯列に嵌合する前に、矯正力付与部材4の固定部43をフック部31に掛着し、掛着部41を図11に図示するように2つのストッパー部6に仮に掛着させる。仮掛着した状態では、矯正力付与部材4の掛着部41は、2つのストッパー部6に張架され、矯正対象歯T1と非矯正対象歯の歯間に対応する部位に位置することとなる。
図11に図示した状態にセットした歯科矯正装置1を歯列に嵌合し、ストッパー部6に仮掛着しておいた矯正力付与部材4の掛着部41を外せば、容易に掛着部41を矯正対象歯T1に掛着することができる。
【0077】
<第6の実施形態>
第6の実施形態について図12を参照しながら説明する。なお、第1~第5の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0078】
第6の実施形態のマウスピース本体2は、歯列に嵌合したときに、矯正対象歯T1及びT2が被嵌されずに露出する構造を有している。そして、第1~6の実施形態とは異なり、開窓部の「枠」に該当する部材を備えない(図12)。
【0079】
第6の実施形態の特徴部分は、被嵌部21にスリット32(固定源3に相当する)が設けられている点である。スリット32は、被嵌部21によって被嵌される隣接する非矯正対象歯の歯間に対応する位置に設けられている(図12)。
【0080】
歯科矯正装置1を歯列に嵌合した状態において、矯正力付与部材4の固定部43は、スリット32に掛着されることでマウスピース本体2に固定される。すまり固定部43は、非矯正対象歯の歯間に位置することとなる。一方、スリット32に固定された矯正力付与部材4の掛着部41は、矯正対象歯T2に掛着される(図12)。
【0081】
図12に図示するように第6の実施形態の歯科矯正装置1を装着することで、スリット32に固定された固定部43と掛着部41との間の張力を根源とする矯正力が矯正対象歯T1及びT2に付与される。
【0082】
なお、第6の実施形態においては、矯正力付与部材4の張力が、非矯正対象歯にかからず、すべてスリット32にかかるように構成されている。これにより、非矯正対象歯の意図しない移動を防ぐことができる。
【0083】
2.歯科矯正システム
図13に、本発明に係る歯科矯正システムの一部を示す。本発明に係る歯科矯正システムは、上記したマウスピース型歯科矯正装置1と、矯正対象歯に取り付けられ、掛着した矯正力付与部材4が矯正対象歯から脱離することを防ぐための矯正補助部材5を備える。
矯正対象歯が傾斜している場合や、歯冠の長さが矯正力付与部材4の掛着部41を掛着するのに十分でない場合には、矯正力付与部材4の掛着部41が、矯正対象歯から脱離し、十分に矯正力を付与することができないことがある。
本発明によれば、矯正対象歯から矯正力付与部材4が脱離することを抑制することができる。その結果、矯正対象歯が傾斜している場合や、歯冠の長さが矯正力付与部材4を掛着するのに十分な長さでない場合でも、矯正対象歯に矯正力を付与し、目的に沿った矯正をすることができる。
【0084】
本実施形態では、矯正補助部材5は、矯正力付与部材4が矯正対象歯から脱離することを防ぐために設けられているが、矯正力付与部材4が矯正対象歯の歯頚部に食い込まないようにするために設けられていてもよい。
この場合、矯正補助部材5は、矯正力付与部材4より歯頚部側面側に設けられる。
【0085】
矯正補助部材5は、歯科用に用いられる素材を適宜選択して使用することができるが、例えば、粘土状の光重合レジンを矯正対象歯の側面(口蓋側ないし舌側でも、頬側ないし唇側でも良い)に付着させ、光を当ててレジンを重合させることで、設けることができる。
【0086】
3.マウスピース型歯科矯正装置の製造方法
本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置の製造方法は、患者の歯型模型において、矯正対象歯に相当する部分の側面を、矯正対象歯の移動に十分な隙間を確保できるように形状を補正した補正歯型模型を作製する、補正工程と、前記補正歯型模型に基づいてマウスピースを成形する成形工程と、矯正対象歯に該当する部分を開窓させる開窓部作製工程と、を有する。
本発明によれば、矯正時の患者の負担を軽減することができるマウスピース型歯科矯正装置を製造することができる。また、従来は困難だった複数の大臼歯の歯体移動を目的とする矯正を、容易にすることができるマウスピース型歯科矯正装置を製造することができる。
【0087】
ただし、本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置の製造方法には、その他必要な工程を適宜含むことができる。例えば、患者の口腔内及び噛み合わせを、印象材を用いて採取する採取工程、採取工程で採取した患者の口腔内及び噛み合わせに基づいて、患者の歯列や硬口蓋又は顎堤を再現した石膏模型を作製する歯型模型作製工程、補正をした石膏模型をもとに、マウスピースを成形するマウスピース成形工程、及び/又は、マウスピースの余分な部分を除去する除去工程等を、適宜含むことができる。除去工程においては、接触部23を残すように、マウスピースの余分な部分を除去することもできる。
【0088】
また、すべての工程を光学印象や設計ソフト3Dプリンタなどを用いてデジタル化により作製できる。具体的には、光学印象により患者の3次元歯型データを取得し、同データに基づき、コンピュータ上で患者の歯型にあったマウスピースの3次元データを作成する。マウスピースの3次元データをコンピュータ上で編集し、矯正対象歯の移動に十分な隙間が確保された形状、かつ、矯正対象歯に該当する部分が開窓した形状とする。このようにして得られたマウスピースの3次元データを3Dプリンタで出力し、本発明に係る歯科矯正装置を製造することができる。
【0089】
4.適用範囲
上述した第1、第3~第5の実施形態の歯科矯正装置は、主に歯体移動を目的とした実施形態である。第2の実施形態の歯科矯正装置は圧下を目的とした実施形態である。しかし、本発明の適用は、具体的に図示して説明した歯体移動や圧下に限定されない。
【0090】
本発明は、矯正力付与部材の固定部を固定する固定源の位置や、掛着部を掛着する歯の位置関係などを適宜調整することで、傾斜や挺出にも応用できる。具体的には、本発明の歯科矯正装置は、埋伏歯、異所萌出歯、傾斜歯、捻転歯及びC3処置歯の矯正の用途に用いることもできる。
【実施例0091】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
<実施例>
図2に表される、マウスピース型歯科矯正装置1を製造した。矯正対象歯は左右の第一大臼歯及び第二大臼歯の計4本とした。
本実施例に係るマウスピース本体2は、以下の方法で作製した。
<マウスピース本体2の作製方法>
(1)本発明者の口腔内を、印象材を用いた一般的な方法で採取し(採取工程)、石膏模型を作製した(歯型模型作製工程)。
(2)マウスピース本体において、矯正対象歯の移動に十分な隙間が確保され、矯正対象歯の根元に矯正力付与部材が食い込まないようにするため、矯正対象歯に相当する部分の側面に相当する位置に補正剤としてレジンを塗布し、重合させ、上記(1)で作製した石膏模型の形状を補正した(補正工程)。補正後の石膏模型及び一般的に使用されている熱可塑性樹脂を用いて、マウスピースを成形した(マウスピース成形工程)。
(3)上記(2)で作製したマウスピースにおいて、矯正対象歯の歯頚部を除く歯冠(咬合面及び歯冠最大豊隆部)が露出するように開窓部22を作製した(開窓部作製工程)。また、接触部23を残すようにして、マウスピースの余分な部分を削った。
(4)歯列方向最奥側に、ボタン状の固定源3を、左右一つずつ接着した。
【0093】
本実施例において、矯正力付与部材4は矯正用エラスティックであり、マウスピース本体の歯列方向最奥側にて、固定部43を固定源3に掛着することによりマウスピース本体2に固定されている。そして、本実施例に係るマウスピース型歯科矯正装置1は、左右の第一大臼歯にそれぞれ矯正力付与部材を掛着し、矯正力を付与することにより、左右の第一大臼歯及び第二大臼歯をそれぞれさらに奥側に歯体移動させる矯正を目的とする装置である。
【0094】
上記の通り作製したマウスピース型歯科矯正装置1を、本発明者が1日20時間、35日間装着した。
矯正力付与部材4である矯正用エラスティックは、左右共に1日1回交換した。
35日の期間が終了後、上記<マウスピース本体2の作製方法>の(1)と同じ方法で、矯正後の本発明者の歯科模型を作製した。矯正前に作製した歯型模型と矯正後に作製した歯型模型を、図14及び図15に示す。
【0095】
図14左側が矯正前の歯型模型であり、図14右側が矯正後の歯型模型である。また図15左側が矯正前の歯型模型であり、図15右側が矯正後の歯型模型である。
図14及び図15から明らかな通り、1日1回矯正力付与部材4を交換しながら、1日あたり20時間、35日間、本発明に係るマウスピース型歯科矯正装置1を使用すると、複数の大臼歯の移動を同時にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、矯正時の患者の負担を少なくすることができる。また、従来を困難だった複数の大臼歯の歯体移動を同時に行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
1 マウスピース型歯科矯正装置
2 マウスピース本体
21 被嵌部
22 開窓部
23 接触部
3 固定源
31 フック部
4 矯正力付与部材
41 掛着部
42 連結部
43 固定部
5 矯正補助部材
6 ストッパー
61 切り込み
T1 矯正対象歯
T2 矯正対象歯
T3 矯正対象歯
T4 矯正対象歯
H1 マウスピース型歯科矯正装置の高さ
H2 マウスピース型歯科矯正装置の高さ
W マウスピース型歯科矯正装置の厚み



図1
図2
図3
図4
図5
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図15