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  • 特開-フロートカバー及びフロート装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127583
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】フロートカバー及びフロート装置
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
B63C11/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067554
(22)【出願日】2023-04-18
(62)【分割の表示】P 2022030760の分割
【原出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】522080214
【氏名又は名称】株式会社Kai・la
(74)【代理人】
【識別番号】100189728
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢
(57)【要約】
【課題】フロート装置の使用時において、フロートカバーにかかる負荷を軽減することができるフロートカバーを提供する。
【解決手段】気体が注入されて水面に浮遊される浮遊体を覆うフロートカバーにおいて、前記フロートカバーを背負うために左肩に掛けられる第1のショルダーストラップと、前記フロートカバーを背負うために右肩に掛けられる第2のショルダーストラップと、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が注入されて水面に浮遊される浮遊体を覆うフロートカバーにおいて、前記フロートカバーを背負うために左肩に掛けられる第1のショルダーストラップと、前記フロートカバーを背負うために右肩に掛けられる第2のショルダーストラップと、を備えることを特徴とするフロートカバー。
【請求項2】
前記フロートカバーの底面には網目状のメッシュ部が設けられ、前記フロートカバーが背負われた場合に前記メッシュ部と背中とが対向することを特徴とする請求項1に記載のフロートカバー。
【請求項3】
前記フロートカバーが背負われた場合、前記フロートカバーの底面と背中とが対向し、
前記フロートカバーの上面には、前記フロートカバーの内部に形成された収納空間を開放するための開放手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロートカバー。
【請求項4】
前記開放手段は、ファスナー部と面ファスナー部とを備え、
前記フロートカバーが背負われた状態で前記面ファスナー部が剥がされた場合、前記収納空間の上部が開放されることを特徴とする請求項3に記載のフロートカバー。
【請求項5】
前記収納空間は、前記浮遊体が収納される空間であることを特徴とする請求項3又は4に記載のフロートカバー。
【請求項6】
気体が注入され、水面を浮遊する浮遊体と、
前記浮遊体を覆う請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフロートカバーと、
を備えることを特徴とするフロート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキューバダイビングやシュノーケリングなどを行う者の安全を確保するために水面に浮遊させるフロート装置に用いられるフロートカバーと、当該フロートカバーを備えるフロート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキューバダイビングやシュノーケリングなどを行う者が掴まって休息を取る目的や、これらの者が水中にいることを知らせる目印として、係留型のフロート装置が使用されている。特許文献1では、フロート装置として、気体が注入されて水面に浮遊する浮遊体と、この浮遊体を覆うフロートカバーを備える構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-7198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロート装置を使用する場合、フロート装置を係留させるために、フロートカバーには、アンカーが一端に固定されたアンカーロープの他端が固定される。このため、フロートカバーには、アンカーロープやアンカーの重量が負荷としてかかる。
【0005】
フロート装置の繰り返しの使用により、フロートカバーに上記負荷が繰り返しかかる場合、フロートカバーの破れに繋がる。フロートカバーが破れると、フロート装置を使用できなくなることや、フロートカバーの交換を要することになる。このため、フロート装置の使用時において、フロートカバーにかかる負荷をできる限り軽減するのが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、フロート装置の使用時において、フロートカバーにかかる負荷を軽減することができるフロートカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るフロートカバーの代表的な構成は、気体が注入されて水面に浮遊される浮遊体を覆うフロートカバーにおいて、前記フロートカバーを背負うために左肩に掛けられる第1のショルダーストラップと、前記フロートカバーを背負うために右肩に掛けられる第2のショルダーストラップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロート装置の使用時において、フロートカバーにかかる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】フロート装置の斜視図である。
図2】フロート装置の下側から見た図である。
図3】フロートカバーを背負った状態を示す斜視図である。
図4】フロートカバーの内部構成を示す図である。
図5】フロートカバーの内部構成を示す図である。
図6】フロート装置の断面図である。
図7】フロート装置の断面図である。
図8】フロート装置の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<フロート装置>
以下、まず本発明の一実施形態に係るフロート装置の全体構成について図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係るフロート装置10を上側から見た斜視概略図である。図2は、本実施形態に係るフロート装置10を下側から見た図である。図1図2に示す様に、フロート装置10は、気体が注入可能なチューブ1(浮遊体)と、チューブ1を覆うフロートカバー2から構成されている。
【0012】
チューブ1は、PU(ポリウレタン)コーティングされたナイロン製の部材であって、円環状で中空状の部材である。チューブ1には、気体を注入又は排出するためのバルブ(不図示)が設けられている。このバルブには、中圧ホースが接続可能に構成されており、圧縮空気などの気体をタンクから中圧ホースを介してチューブ1内部に注入することでチューブ1が膨張し、チューブ1は水面に浮遊するための浮力を得る。
【0013】
なお、本実施形態では、チューブ1として円環状でナイロン製のものを例示して説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ちチューブ1は、中空状で内部に気体が注入されて膨張し、水面に浮遊するための浮力を得ることができる構成であれば、他の材質や形状であってもよい。またチューブ1に気体を注入するためには必ずしも中圧ホースを使用する必要はなく、バルブを介して人間の口から空気を注入することもできる。
【0014】
フロートカバー2は、チューブ1を収納可能な空間を内部に有し、チューブ1を収納することによってチューブ1の全体を覆う。なお、フロートカバー2は、フロート装置10の使用時にフロートカバー2からチューブ1が外れない構成であれば、チューブ1の一部を覆う構成としてもよい。
【0015】
フロートカバー2は、フロート装置10を水面に浮遊させた際に鉛直方向の上部に位置する上面2aと、下部に位置する底面2bと、鉛直方向において上面2aと底面2bとの間に位置し、上面2aと底面2bとを繋ぐ側面2cとを備える。上面2a、底面2b、側面2cは、後述する底面2bの補強部2z及び側面2cの補強部を除いてPVC(:Poly Vinyl Cloride)製である。なお、フロートカバー2の材質はこれに限られず、他の材質のものを用いてもよい。
【0016】
フロートカバー2の上面2aには、ファスナー部2a1と二つの把手部2a2とマジックテープ部2a3(面ファスナー部)が設けられている。ユーザは、マジックテープ部2a3を剥がし、ファスナー部2a1を開放することによって形成される上面2aの開口部からフロートカバー2の内部にアクセスすることができる。これによりフロートカバー2の内部に収納されているチューブ1に気体を注入し、又はチューブ1から気体を排出することができる。フロート装置10が使用される場合、チューブ1には気体が注入され、ファスナー部2a1は閉じられ、マジックテープ部2a3が接着されて、フロートカバー2の上面2aの開口部が閉じられた状態で使用される。
【0017】
フロートカバー2の底面2bは、全体として円形状であり、生地部2xとメッシュ状(網目状)のメッシュ部2yとナイロン製の補強部2zを有する。生地部2xとメッシュ部2yはともにPVC製であるものの、配合比率によってメッシュ部2yの方が生地部2xよりも柔らかい素材となっている。また生地部2xの裏面には防水コーティングが施されており、液体を通さない仕様になっている。このように生地部2xは、メッシュ状ではないためメッシュ部2yよりも生地量が多く、メッシュ部2yよりも硬い素材であり、且つ、裏面に防水コーティングが施されているため、メッシュ部2yよりも強度が高くなっている。ここで円形状には、底面2bが正円な構成の他に、円周上の一部に公差等の影響で凹凸がある構成も含まれる。フロートカバー2にメッシュ部2yが設けられていることにより、フロートカバー2の内部に浸入した水を外部に排出することができる。また補強部2zは、円形状の底面2bの中心部で直交するように十字状に底面2bの表面における生地部2x及びメッシュ部2yに縫い付けられており、底面2bを補強するために設けられている。またフロートカバー2の底面2bの中心部には、Dカン2b1(ロープ取り付け部)が設けられている。Dカン2b1は、底面2bにおける補強部2zに固定されている。
【0018】
フロートカバー2の側面2cには、六つの把手部2c1と、二つのDカン2c2と、D字状の樹脂製の二つのフック掛け部2c3と、サイドリリースバックル2c4と、フラッグホルダ2c5が設けられている。側面2cの表面全域にはナイロン製の補強部が縫い付けられている。フック掛け部2c3には、ショルダーストラップ2c6のフック2c6aが掛けられるようになっており、一つのショルダーストラップ2c6が一つのDカン2c2と一つのフック掛け部2c3に掛けられ、もう一つのショルダーストラップ2c6が同じDカン2c2と異なるショルダーストラップ2c6に掛けられる。これにより後述する通りフロートカバー2を背負えるようになる。
【0019】
次に、フロート装置10の使用時の構成について説明する。フロート装置10を使用する場合、フロートカバー2の底面2bに設けられたDカン2b1に対し、アンカーロープ4(図8参照)を介して、フロート装置10を係留するための係留部材としてのアンカー3(図8参照)が取り付けられる。つまりDカン2b1には、一端がアンカー3に取り付けられたアンカーロープ4の他端が取り付けられる。なお、アンカー3は、フロートカバー2に覆われたチューブ1を係留するための部材とも考えることができる。
【0020】
アンカー3としては、水底に着底してフロート装置10を係留するタイプのものや、水底に着底せずに水中に浮遊した状態でフロート装置10を係留するタイプのものが用いられる。一般的に、水中に浮遊した状態でフロート装置10を係留するタイプのアンカー3は、水底に着底するタイプのアンカー3よりも重量が大きい12kg程度のものが用いられ、アンカーロープ4の張力を確保し、フリーダイビングなどに使用される。
【0021】
アンカーロープ4を介してアンカー3が取り付けられたフロート装置10は水中に投入される。そしてアンカー3によってフロート装置10が係留され、水面に浮遊した状態になると、スキューバダイビングやシュノーケリングを行うユーザは、フロート装置10の把手部2c1に掴まって休息を取ることができるようになる。
【0022】
ここでダイビングのラインセンス講習の人数は最大で六人と規定で定められている。従って、規定で定められた人数の講習者の全員がフロート装置10で休息を取ることができるように、本実施形態では六つの把手部2c1を設けている。またフロートカバー2の上面2aの二つの把手部2a2は、ユーザがフロート装置10に掴まって浮いた状態で泳ぐために用いられる。ユーザは、二つの把手部2a2を両手でそれぞれ掴み、フロート装置10の上に身体を乗せた状態で泳ぐことにより楽に泳ぐことが可能となる。
【0023】
またユーザは、フロート装置10のフラッグホルダ2c5に不図示のフラッグを差し込むことにより、ユーザが水中にいることを周囲の船などに知らせることができる。またユーザは、フロート装置10のDカン2c2にライトなどの持ち物を引っ掛けて保持させておくことができる。
【0024】
また図3に示す様に、ユーザは、フロートカバー2のサイドリリースバックル2c4を嵌合させ、二つのショルダーストラップ2c6を両肩に一つずつ掛けることによりフロートカバー2を背負うことができる。これによりユーザは、フロートカバー2の内部に様々なものを収納した状態でフロート装置10を背負って移動することができるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0025】
またフロート装置10を背負った状態でフロートカバー2の上面2aに設けられたマジックテープ部2a3を剥がすことによりフロートカバー2の内部の収納空間の上部が開放される。これによりユーザは、フィン30などの収納空間に入り切らない物を当該開放部分から外部に露出させて落下させることなく持ち運ぶことができる。
【0026】
またユーザがフロートカバー2を背負った時、フロートカバー2の底面2bのメッシュ部2yはユーザの背中の位置に配置される。このような構成により、フロートカバー2を背負った際にユーザの背中にかかる負担を小さくすることができる。
【0027】
<フロートカバーの内部構成>
次に、フロートカバー2の内部構成について説明する。
【0028】
図4は、フロートカバー2の内部構成を示す図であり、フロートカバー2の上面2aを透明化した状態でフロートカバー2を上から見た図である。図4に示す様に、フロートカバー2の内部には、チューブ1を固定するための四つの固定ベルト11(固定部)が設けられている。固定ベルト11は、ナイロン製のベルト状の部材であり、長手方向の異なる位置にマジックテープのオス部(不図示)とメス部(不図示)がそれぞれ設けられている。
【0029】
各々の固定ベルト11の一端部11aは、フロートカバー2の底面2bの裏面に縫い付けられて固定されている。具体的には、各々の固定ベルト11の一端部11aは、フロートカバー2の底面2bの中心部から略等間隔の位置において生地部2xに縫い付けられている。なお、固定ベルト11の一端部11aは、底面2bの表面において補強部2zが設けられた位置の裏側に縫い付けられている。ここで固定ベルト11の一端部11aとは、固定ベルト11の一端側において底面2bに固定されている部分を指す。なお、固定ベルト11の材質はナイロン製に限られず、他の材質であってもよい。
【0030】
またフロートカバー2の側面2cの裏面には、固定ベルト11の他端部11bを固定するための四つのベルト固定部12が設けられている。ベルト固定部12は、ナイロン製の環状の部材であり、側面2cの裏面に縫い付けられて固定されている。またベルト固定部12は、側面2cにおける底面2bの補強部2zの延長線上の位置に配置されている。つまり各々のベルト固定部12は、底面2bの中心部から等間隔の位置に配置されている。ここで固定ベルト11の他端部11bとは、固定ベルト11の他端側においてフロートカバー2に固定されている部分を指し、本実施形態では側面2cに固定されている部分を指す。なお、ベルト固定部12の材質はナイロン製に限られず、他の材質であってもよい。
【0031】
固定ベルト11をベルト固定部12に固定する場合、まずベルト固定部12の環状部分に固定ベルト11を通す。次に、固定ベルト11に設けられたマジックテープのオス部をメス部に接着させる。このようにして固定ベルト11は、ベルト固定部12に遊びを持った状態で固定される。
【0032】
このように固定ベルト11の他端部11bをベルト固定部12にマジックテープを用いて固定することにより、固定ベルト11の他端部11bをフロートカバー2から取り外すことができ、チューブ1の交換性を向上させることができる。なお、固定ベルト11に環状部分を形成し、ベルト固定部12を長手方向の異なる位置にマジックテープのオス部とメス部を有するベルト状の部材とし、固定ベルト11の環状部分にベルト固定部12を通してマジックテープを用いて固定ベルト11の他端部11bを固定する構成としてもよい。
【0033】
ここで本実施形態において、底面2bの表面(ロープ取り付け部が設けられた面)は底面2bにおける外部に露出した側の面であり、Dカン2b1が配置された側の面である。底面2bの裏面(裏側の面)は表面の裏側の面でありフロートカバー2の内側の面である。同様に、側面2cの表面は側面2cにおける外部に露出した側の面であり、把手部2c1やDカン2c2などが配置された側の面である。側面2cの裏面は表面の裏側の面でありフロートカバー2の内側の面である。
【0034】
図5は、フロートカバー2の内部構成を示す拡大斜視図であり、気体が注入されたチューブ1がフロートカバー2に収納されている状態を示す図である。図5に示す様に、固定ベルト11は、チューブ1に対して鉛直方向の上方からフロートカバー2の底面2bの径方向に跨がるように配置される。これによりチューブ1の内周部が固定ベルト11に接触して移動が規制されて固定され、フロートカバー2の底面2bの径方向におけるチューブ1の位置が決められる。
【0035】
図6は、チューブ1に気体が注入されていない状態のフロート装置10の断面図である。図6に示す様に、チューブ1に気体が注入されていない場合、チューブ1は膨張していないため、チューブ1は固定ベルト11に圧接しておらず、固定ベルト11は撓んだ状態となる。このとき、フロートカバー2の底面2bにおける固定ベルト11の一端部11aが固定された部分には、底面2bをチューブ1に向かって鉛直方向の上方に引っ張る力が発生していない。
【0036】
図7は、チューブ1に気体が注入されている状態のフロート装置10の断面図である。図7に示す様に、チューブ1に気体が注入されている場合、チューブ1への気体の注入によるチューブ1の膨張に伴って、チューブ1が固定ベルト11に圧接して固定ベルト11が押圧される。これにより固定ベルト11はピンと張った状態となり、換言すればチューブ1が固定ベルト11を押圧する力が固定ベルト11の張力を大きくする力として作用する。この固定ベルト11の張力により、フロートカバー2の底面2bにおける固定ベルト11の一端部11aが縫い付けられて固定された部分(底面2bの裏面)は、チューブ1に向かって鉛直方向の上方に引っ張られる。つまりフロートカバー2の底面2bには、アンカーロープ4やアンカー3の重量による負荷とは反対方向の力である鉛直方向の上方に向かう力Fが作用する。
【0037】
図8は、本実施形態に係るフロート装置10と、固定ベルト11を有しない比較例に係るフロート装置100において、装置の使用時の構成を比較した比較図である。フロート装置100の構成は、固定ベルト11とベルト固定部12を有しない以外はフロート装置10の構成と同一であるため、対応する部材にはフロート装置10と同一の符号を付している。
【0038】
図8に示す様に、フロート装置10及びフロート装置100には、アンカーロープ4を介してアンカー3が固定されており、両者は水中に係留された状態で浮遊している。ここで比較例に係るフロート装置100の底面2bは、アンカーロープ4やアンカー3の負荷により鉛直方向の下方に引っ張られ、下方に突出している。
【0039】
フロート装置100の繰り返しの使用により、フロートカバー2の底面2bにアンカーロープ4やアンカー3の負荷による引っ張り荷重が繰り返し付与される場合、フロートカバー2の底面2bや側面2cにかかる応力が大きくなり、フロートカバー2が破れやすくなる。また底面2bが鉛直方向の下方に突出しているため波の力を受けやすく、これによってフロートカバー2にかかるせん断応力が大きくなり、フロートカバー2が破れやすくなる。
【0040】
これに対して本実施形態に係るフロート装置10は、固定ベルト11を有するため、上述した通り、フロートカバー2の底面2bには、アンカーロープ4やアンカー3の重量による負荷とは反対方向の力である鉛直方向の上方に向かう力Fが作用している。このため、アンカーロープ4やアンカー3の重量による負荷が力Fに打ち消されて低減し、フロート装置10の使用時においてフロートカバー2にかかる負荷が軽減される。またフロートカバー2の底面2bの下方への突出量も小さくなるため、底面2bが波の力を受けにくくなり、フロートカバー2にかかるせん断応力が低減される。
【0041】
このように本実施形態の構成によれば、フロート装置10の使用時においてフロートカバー2にかかる負荷を軽減することができる。このため、フロートカバー2にかかる応力が小さくなり、フロートカバー2が破れることを抑制することができる。従って、フロート装置10を使用するユーザの安全を確保することができる。
【0042】
また本実施形態では、固定ベルト11の一端部11aは、フロートカバー2の底面2bにおける生地部2xに縫い付けられて固定されている。これにより固定ベルト11の一端部11aをメッシュ部2yに縫い付けて固定する構成と比較して、フロート装置10の使用時にフロートカバー2にかかる上記負荷がメッシュ部2yよりも生地部2xにかかりやすくなる。上述した通り、メッシュ部2yの強度よりも生地部2xの強度の方が高いため、このような構成によりフロートカバー2をより破れにくくすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、固定ベルト11の一端部11aをフロートカバー2の底面2bに縫い付けて固定し、他端部11bをベルト固定部12にマジックテープ(登録商標)を用いて固定する構成について説明した。しかし本発明はこれに限られず、他の方法で固定ベルト11を固定する構成としてもよい。但し、本実施形態の構成のように、固定ベルト11の一端部11aはフロートカバー2の底面2bに完全に固定し、他端部11bは側面2cに遊びを持った状態で固定するのが好ましい。これにより固定ベルト11の張力をフロートカバー2の側面2cよりも底面2bに作用させやすくなる。
【0044】
また本実施形態では、固定ベルト11の一端部11aをフロートカバー2の底面2bに固定し、他端部11bを側面2cに固定する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、固定ベルト11の一端部11aをフロートカバー2の底面2bに固定した上で、チューブ1への気体の注入によるチューブ1の膨張に伴ってチューブ1が固定ベルト11に圧接して固定ベルト11が押圧され、これにより底面2bに対して鉛直方向の上方に向かう力が作用する位置に固定ベルト11の他端部11bを固定する構成とすれば、上記同様の効果を得ることができる。
【0045】
例えば、固定ベルト11の一端部11aと他端部11bの双方をフロートカバー2の底面2bに固定する構成してもよい。この場合、固定ベルト11の一端部11aを底面2bにおける中心に近い位置に固定し、他端部11bを中心から離れた位置に固定する方が、固定ベルト11によって底面2bを鉛直方向の上方に向かって引っ張る力が大きくなりやすい。従って、底面2bの径方向において、固定ベルト11の一端部11aを底面2bの中心と外縁部とを結ぶ仮想線の中心に対して底面2bの中心に近い位置で底面2bに固定し、他端部11bをこの仮想線の中心に対して底面2bの外縁部に近い位置で底面2bに固定する構成とするのが好ましい。ここでいう底面2bの外縁部とは円形状の底面2bの円周部分であり、底面2bの中心と外縁部とを結ぶ仮想線とは底面2bの中心と底面2bの円周上の任意の点とを結ぶ仮想線である。
【0046】
また固定ベルト11の一端部11aをフロートカバー2の底面2bに固定し、他端部11bをチューブ1に固定する構成としてもよい。例えばチューブにフック状のベルト固定部を設け、このベルト固定部に固定ベルト11の他端部11bを固定する構成としてもよい。この場合にも、上記同様の理由で、底面2bの径方向において固定ベルト11の一端部11aを底面2bの中心と外縁部とを結ぶ仮想線の中心に対して底面2bの中心に近い位置で底面2bに固定し、他端部11bをこの仮想線の中心に対して底面2bの外縁部に近い位置でチューブ1に固定する構成とするのが好ましい。
【0047】
また本実施形態では、フロートカバー2が四本の固定ベルト11を有する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、上述した効果が得られる構成であれば固定ベルト11の数は任意であり、単数であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…チューブ(浮遊体)
2…フロートカバー
2b1…Dカン(ロープ取り付け部)
3…アンカー(係留部材)
4…アンカーロープ(ロープ)
10…フロート装置
11…固定ベルト(固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8