(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127588
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20230906BHJP
G01C 11/00 20060101ALI20230906BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230906BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20230906BHJP
【FI】
G01C7/04
G01C11/00
G01S17/89
G01S17/86
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097901
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2020550271の分割
【原出願日】2019-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2018186728
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】天野 克巳
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
(72)【発明者】
【氏名】小山 和紀
(72)【発明者】
【氏名】乘松 直人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置(10)は、点群統合部(11)が、車両Vに搭載されたセンサにより得られたセンサデータと、当該センサデータを取得した際の車両Vの絶対位置データと、に基づいて生成された点群データを取得し、ずれ量算出部(14)が、上空から地表面を俯瞰した航空写真データを取得する。そして、ずれ量算出部(14)が、設定された基準点P,Qに対応する航空写真データ上の絶対位置と、基準点P,Qに対応する点群データに含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、軌跡補正部(15)が、ずれ量算出部(14)で算出したずれ量に基づいて、軌跡抽出部(12)が点群データから抽出した走行軌跡を補正し、軌跡補正部(15)の補正結果に基づいて点群データの点群の絶対位置を補正する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の前記移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報を取得する点群情報取得部と、
上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得部と、
設定された基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、前記基準点に対応する前記点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出部と、
前記算出部が算出したずれ量に基づいて前記点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する補正部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報に所定の処理を行う情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の移動体にレーザースキャナやカメラといったセンサを搭載し、自身の周辺の情報を収集する移動体が開発されている。この種のセンサで取得された点群の情報は、例えば、車両の自動運転に用いられる高精度な地図の素材として利用されることがある。
【0003】
ここで、上述したセンサで取得された点群は、その絶対位置の精度が良くない場合が多く、手動による方法などを用いて点群の位置調整といった補正を行っていた。そのため、補正に時間とコストがかかり効率が悪かった。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、同じ走行路を複数回走行し、各走行での点群の結果において位置が変化しない固定物を基準点とし、基準点が重ね合わさるように点群を伸縮する後処理を行うことで、三次元点群の座標位置データを高精度に算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、高精度な点群を得ることが可能である一方で、主にGPS(Global Positioning System)を使用するため、周囲の建造物の影響でマルチパスが多い場合等、GPSの精度が落ちてしまう場合があり、改善の余地がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の前記移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報を取得する点群情報取得部と、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得部と、設定された基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、前記基準点に対応する前記点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出部と、前記算出部が算出したずれ量に基づいて前記点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する補正部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載の発明は、所定の処理を行う情報処理装置で実行される情報処理方法あって、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の前記移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報を取得する点群情報取得工程と、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得工程と、設定された基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、前記基準点に対応する前記点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出工程と、前記算出工程で算出されたずれ量に基づいて前記点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する補正工程と、を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の情報処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の情報処理プログラムを格納したことを特徴としている。
【0012】
請求項10に記載の発明は、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報を取得した際の前記移動体の絶対位置に関する情報を取得する絶対位置情報取得部と、前記センサ情報及び前記絶対位置に関する情報に基づいて点群情報を生成する点群情報生成部と、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得部と、設定された基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、前記基準点に対応する前記点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出部と、前記算出部が算出したずれ量に基づいて前記点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する補正部と、を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項11に記載の発明は、所定の処理を行う情報処理装置で実行される情報処理方法あって、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得工程と、前記センサ情報を取得した際の前記移動体の絶対位置に関する情報を取得する絶対位置情報取得工程と、前記センサ情報及び前記絶対位置に関する情報に基づいて点群情報を生成する点群情報生成工程と、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得工程と、設定された基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、前記基準点に対応する前記点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出工程と、前記算出工程で算出されたずれ量に基づいて前記点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する補正工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の情報処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0015】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の情報処理プログラムを格納したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施例にかかる情報処理装置を備えたシステムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたサーバ装置の機能構成図である。
【
図3】
図2に示されたサーバ装置における点群データの補正方法についての説明図である。
【
図4】
図2に示された軌跡補正部における走行軌跡の補正方法についての説明図である。
【
図5】
図2に示されたサーバ装置における情報処理方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施例にかかるサーバ装置の機能構成図である。
【
図7】
図6に示されたずれ量算出部における動作の説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施例にかかるサーバ装置の機能構成図である。
【
図10】本発明の第4の実施例にかかるサーバ装置の機能構成図である。
【
図12】
図10に示されたサーバ装置における情報処理方法のフローチャートである。
【
図13】本発明の第5の実施例にかかるサーバ装置の機能構成図である。
【
図14】
図13に示されたサーバ装置における情報処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる情報処理装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる情報処理装置は、点群情報取得部が、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報を取得し、俯瞰情報取得部が、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する。そして、算出部が、設定された基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正部が、算出部で算出したずれ量に基づいて点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する。このようにすることにより、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
【0018】
また、少なくとも基準点に対応する俯瞰情報の位置精度が、点群情報を生成する際に取得される絶対位置に関する情報によって示される絶対位置よりも高い位置精度を有していてもよい。このようにすることにより、俯瞰情報を基準として点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
【0019】
また、点群情報取得部は、絶対位置に関する情報としてセンサ情報をセンサが取得した際の移動体の移動軌跡を取得し、補正部は、算出部が算出したずれ量に基づいて移動軌跡を補正するようにしてもよい。移動軌跡を補正することにより、当該移動軌跡に基づいて算出される点群の絶対位置を補正することができる。
【0020】
また、算出部は、設定された2つの基準点である第1基準点及び第2基準点と、当該第1基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置及び当該第2基準点に対応する前記俯瞰情報の絶対位置と、第1、第2基準点にそれぞれ対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正部は、算出部が算出したずれ量に基づいて、第1基準点及び第2基準点に挟まれた範囲の点群情報の位置を補正するようにしてもよい。このようにすることにより、2つの基準点のずれ量に基づいて2つの基準点間の点群の絶対位置の補正をすることができる。
【0021】
また、補正部が補正した点群情報の絶対位置の精度を判定する判定部を更に備え、判定部が判定した絶対位置の精度が所定以下であった場合は、算出部は、第1基準点及び第2基準点の間に新たな基準点である第3基準点を追加し、当該第3基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、当該第3基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正部は、算出部が算出した第3基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と当該第3の基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置とのずれ量に基づいて点群の絶対位置を補正するようにしてもよい。このようにすることにより、例えば第1基準点や第2基準点におけるずれ量が大きく補正しても十分な精度を確保できない場合であっても、より良い精度にすべく再補正をすることができる。
【0022】
また、点群情報取得部が取得した点群情報を画像情報に変換する変換部を更に備え、俯瞰情報は画像情報であって、俯瞰情報取得部は、俯瞰情報における基準点を含む所定範囲の画像情報を取得し、算出部は、所定範囲の画像情報と点群情報から変換された画像情報との画像マッチング処理を行って、基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出するようにしてもよい。このようにすることにより、基準点を含む範囲について周知の画像マッチング処理により基準点において横軸となるx方向、縦軸となるy方向(もしくは緯度、経度)のずれだけでなく回転角度のずれも算出することができる。
【0023】
本発明の一実施形態にかかる情報処理方法は、点群情報取得工程で、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報と、当該センサ情報を取得した際の移動体の絶対位置に関する情報と、に基づいて生成された点群情報を取得し、俯瞰情報取得工程で、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する。そして、算出工程で、設定された基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正工程で、算出工程にて算出したずれ量に基づいて点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する。このようにすることにより、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態にかかる情報処理プログラムは、上述した情報処理方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、コンピュータを用いて、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
【0025】
また、上述した情報処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【0026】
また、本発明の他の実施形態にかかる情報処理装置は、センサ情報取得部が、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報を取得し、絶対位置情報取得部が、センサ情報を取得した際の移動体の絶対位置に関する情報を取得し、点群情報生成部が、センサ情報及び絶対位置に関する情報に基づいて点群情報を生成し、俯瞰情報取得部が、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する。そして、算出部が、設定された基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正部が、算出部が算出したずれ量に基づいて点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する。このようにすることにより、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。また、点群情報を生成するための構成が一体でなくてもよく、例えば車両等の移動体とサーバ装置等に分かれていてもよい。
【0027】
また、本発明の他の実施形態にかかる情報処理方法は、センサ情報取得工程で、移動体に搭載されたセンサにより得られたセンサ情報を取得し、絶対位置情報取得工程で、センサ情報を取得した際の移動体の絶対位置に関する情報を取得し、点群情報生成工程で、センサ情報及び絶対位置に関する情報に基づいて点群情報を生成し、俯瞰情報取得工程で、上空から地表面を俯瞰した俯瞰情報を取得する。そして、算出工程で、設定された基準点に対応する俯瞰情報の絶対位置と、基準点に対応する点群情報に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、補正工程で、算出工程にて算出したずれ量に基づいて点群情報に含まれる点群の絶対位置を補正する。このようにすることにより、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。また、点群情報を生成するための構成が一体でなくてもよく、例えば車両等の移動体とサーバ装置等に分かれていてもよい。
【0028】
また、上述した情報処理方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、コンピュータを用いて、俯瞰情報を基準として、基準点における絶対位置のずれ量の補正をすることができる。俯瞰情報としては既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。また、点群情報を生成するための構成が一体でなくてもよく、例えば車両等の移動体とサーバ装置等に分かれていてもよい。
【0029】
また、上述した情報処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0030】
本発明の第1の実施例にかかる情報処理装置を
図1~
図8を参照して説明する。本実施例にかかる情報処理装置は、
図1ではサーバ装置10として構成されている。サーバ装置10は、移動体としての車両Vに搭載されているセンサ1で得られたデータ(情報)をインターネット等のネットワークNを介して取得し、そのデータに含まれる点群の位置情報(絶対位置)を後述する航空写真に基づいて補正する。
【0031】
センサ1には、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)やGPS受信機等が含まれる。なお、センサ1は、車両の前方等の周囲を撮像する車載カメラを含めてもよい。
【0032】
ライダは、電磁波としてレーザ光を出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定する。所定の検知領域において出力方向を変えながらパルス状のレーザを出力し、そのレーザの反射波を受信してセンサ情報を生成する。ライダは、検知領域内に複数パルスのレーザを出力し、この複数パルスのレーザの反射波に基づいて点群を生成する。この時点における点群を構成する各点には、レーザの出力方向と、当該レーザを反射した対象物までの距離と、反射波の強度(反射強度)と、を示す情報がセンサデータとして含まれている。
【0033】
GPS受信機は、公知であるように複数のGPS衛星から送信される電波を定期的に受信して、現在の位置情報(緯度経度)及び時刻を検出する。即ち、この現在の位置情報が車両Vの絶対位置となる。なお、絶対位置の検出には、GPS受信機に限らず、IMU(慣性計測装置)等の他のセンサ等を利用してもよい。そして、この絶対位置のデータと上述したセンサデータとは関連付けられてサーバ装置10へ送信される。
【0034】
図2にサーバ装置10の機能構成を示す。サーバ装置10は、点群統合部11と、軌跡抽出部12と、基準点取得部13と、ずれ量算出部14と、軌跡補正部15と、点群補正部16と、を備えている。これらの機能は、サーバ装置10が有するCPUにおいて、サーバ装置10が有するハードディスク等の記憶装置に記憶されているプログラム(情報処理プログラム)を実行することにより機能する。
【0035】
また、サーバ装置10は、センサデータ21と、絶対位置データ22と、航空写真データ23と、補正後点群データ24と、が記憶されている。これらのデータは、サーバ装置10が有するハードディスク等の記憶装置に記憶されている。センサデータ21と、絶対位置データ22と、はセンサ1から送信されたデータである。即ち、センサデータ21はセンサ情報、絶対位置データは絶対位置に関する情報となる。このセンサデータ21と絶対位置データ22と、はセンサデータが得られた絶対位置における絶対位置データが関連付けられている。なお、これらのデータはセンサ1から直接取得するに限らず、サーバ装置10外の他のサーバ装置等から取得するようにしてもよい。
【0036】
航空写真データ23は、航空機等の飛翔体からカメラにより地表面を俯瞰した状態で撮影した写真データである。なお、航空写真に限らず、衛星写真や航空ライダ(航空機等の飛翔体にライダを搭載して地表面に向けてレーザ光を照射する)により取得された点群のデータであってもよい。即ち、航空写真データ23が俯瞰情報となる。
【0037】
補正後点群データ24は、後述する点群補正部16で絶対位置が補正された点群データ(点群の位置が絶対位置となっているデータ)である。即ち、点群データが点群情報となる。
【0038】
点群統合部11は、まず、センサデータ21と絶対位置データ22に基づいてライダで得られた点群の絶対位置を求め、点群の絶対位置からなる点群データを生成して取得する。即ち、点群統合部11は、点群データを取得する点群情報取得部として機能する。また、点群統合部11は、車両Vが同じ経路を複数回走行することにより得られた複数回分の点群データを統合する。統合の方法は、例えば絶対位置から得られる車両Vの走行軌跡およびその点群について、複数回分の軌跡および点群から代表的な一つを選択する、或いは複数回分の軌跡および点群を平均化する、などの方法が挙げられる。複数回分を統合する際には、統合する点群間で共通に存在する位置で例えばICP(Iterative Closest Point)といった手法を用い、点群として不整合がない状態にする。なお、本実施例は、複数回走行せずに1回の走行で得られた点群データに基づいて以下に説明する処理を行ってもよい。1回の走行で得られた点群データの場合は、上述した統合処理は省略することができる。
【0039】
軌跡抽出部12は、点群統合部11が取得した絶対位置データに基づいて車両Vの走行軌跡(移動軌跡)を抽出(生成)する。即ち、軌跡抽出部12は、絶対位置に関する情報として走行軌跡を抽出(取得)する点群情報取得部の一部として機能する。
【0040】
基準点取得部13は、後述する基準点を示すデータを取得する。なお、基準点を示すデータは、外部から取得してもよいし、航空写真データ23に基づいて基準点取得部13自身で生成することで取得してもよい。或いはオペレータ等が航空写真等を参照して手動で設定してもよい。基準点とは、詳細は後述するが、ずれ量算出部14で点群データと航空写真データ23とのずれ量を算出する際に基準とする位置であり、例えば交差点の中心や交差点の角(交差する道路の幅方向の端部を示す線同士が交差する点)などの地図上の特徴地点に設定することができる。
【0041】
ずれ量算出部14は、点群統合部11で統合された点群データと、基準点取得部13で取得された基準点を示すデータと、航空写真データ23と、に基づいて基準点における航空写真データ23と、点群データとのずれ量を算出する。ずれ量算出についての詳細は後述する。ずれ量算出部14は、俯瞰情報を取得する俯瞰情報取得部として機能する。
【0042】
軌跡補正部15は、ずれ量算出部14で算出されたずれ量に基づいて軌跡抽出部12で抽出された走行軌跡の補正をする。
【0043】
点群補正部16は、軌跡補正部15で補正された走行軌跡に基づいて点群統合部11で生成された点群データの絶対位置を補正して補正後点群データ24を生成する。なお、補正後点群データ24には、軌跡補正部15で補正された走行軌跡を含めてもよい。
【0044】
次に、上述した構成のサーバ装置10における点群データの補正方法について
図3を参照して説明する。
図3の左側は、車両Vが走行したある経路において取得されたセンサデータ21(点群)と、絶対位置データ22に基づく車両Vの走行軌跡(
図3の破線)と、を示した図である。
図3の右側は
図3左側の範囲に対応する航空写真である。
【0045】
ここで、点群データの有する絶対位置は、GPSにおけるマルチパス等の影響により位置の測定精度が低下する場合がある。一方、基準点に対応する航空写真の位置精度は、GPSの測定精度よりも高いものもあり、本実施例では、そのような点群データの絶対位置よりも高い位置精度を有する航空写真を用いる。このような航空写真データの例としては国土地理院が提供する地理院地図(空中写真)がある。なお、航空写真の位置精度は、少なくとも基準点における位置精度がセンサ1で取得された絶対位置の位置精度よりも高ければよい。
【0046】
また、図中のP及びQは基準点である。この基準点PQの絶対位置(緯度経度)は、
図3の左側では、点群データに含まれる基準点に対応する点群の絶対位置により求めることができる。
図3の右側(航空写真)は、例えばGeoTIFF等の位置情報付き画像であって、写真の四隅の緯度経度が含まれている画像である。このような位置情報付きの画像において、精度(解像度)も予め判明しているものとすれば、これらの情報から基準点P,Qの絶対位置(緯度経度)を求めることができる。
【0047】
そして、ずれ量算出部14は、それぞれ算出された基準点P、Qにおける絶対位置の差(ずれ量)を求める。即ち、ずれ量算出部14は、設定された2つの基準点である基準点P(第1基準点)及び基準点Q(第2基準点)と、当該基準点P(第1基準点)に対応する航空写真データ23(俯瞰情報)の絶対位置及び当該基準点Q(第2基準点)に対応する航空写真データ23(俯瞰情報)の絶対位置と、基準点P(第1基準点)及び基準点Q(第2基準点)にそれぞれ対応する点群データ(点群情報)に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出する算出部として機能する。
【0048】
そして、軌跡補正部15は、そのずれ量に基づいて基準点PQ間の走行軌跡を補正し、点群補正部16は、その走行軌跡の補正結果に基づいて、センサ情報(点群)の絶対位置を補正する。即ち、軌跡補正部15及び点群補正部16は、ずれ量算出部14(算出部)が算出したずれ量に基づいて、基準点P(第1基準点)及び基準点Q(第2基準点)に挟まれた範囲の点群情報の位置を補正する補正部として機能する。
【0049】
基準点に基づく走行軌跡の補正について
図4を参照して説明する。センサデータ21及び絶対位置データ22から取得した基準点PQの絶対位置について(
図4(a))、航空写真データ23から算出された基準点P’Q’の絶対位置とのずれ量を算出する(
図4(b))。そして、基準点PQを基準点P’Q’にそれぞれずらしたものとして基準点PQ間の走行軌跡を例えば線形補間や非線形補間等により補正する(
図4(c))。
図4(c)では、実線が補正後の走行軌跡、破線が補正前の走行軌跡である。
【0050】
次に、上述したサーバ装置10の動作(情報処理方法)について
図5のフローチャートを参照して説明する。まず、センサデータ21と絶対位置データ22から点群統合部11で複数回走行分の点群データの統合を行い(ステップS11)、次に、ずれ量算出部14で基準点における絶対位置のずれ量を算出し(ステップS12)、次に、軌跡補正部15で基準点間の走行軌跡の補正を行って(ステップS13)、そして、点群補正部16で点群の補正を行う(ステップS14)。
【0051】
即ち、ステップS11が点群情報取得工程、ステップS12が算出工程、ステップS13、S14が補正工程として機能する。
【0052】
なお、基準点は、補正のための拘束条件の観点から、上述したように2つ設定することが好ましいが、1つであってもよい。1つの場合は、1つの基準点におけるずれ量を補正量として走行軌跡の補正をすればよい。即ち、ずれ量算出部14は、設定された基準点に対応する航空写真データ23(俯瞰情報)の絶対位置と、基準点に対応する点群データ(点群情報)に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出すればよい。そして、軌跡補正
部15及び点群補正部16は、ずれ量算出部14(算出部)が算出したずれ量に基づいて点群データ(点群情報)に含まれる点群の絶対位置を補正すればよい。
【0053】
また、基準点は、当該基準点におけるずれ量の算出に関与した点群の補正にのみ用いることが好ましい。例えば
図3の場合、基準点Pにおけるずれ量算出に用いた点群と、基準点Qにおけるずれ量算出に用いた点群と、がそれぞれ異なる車両により取得された場合は、基準点PQ間の補正(線形補間等)は行わない。これは、センサ情報が異なる車両により取得された場合は、ライダ等のセンサ自体の性能やセンサの取付条件等が異なるため、データ間で誤差が生じている可能性があるためである。この場合は、上述した1つの基準点による補正または、同一の車両により得られた点群データに含まれる他の基準点に基づいて補正を行う。
【0054】
本実施例によれば、サーバ装置10は、点群統合部11が、車両Vに搭載されたセンサ1により得られたセンサデータと、当該センサデータを取得した際の車両Vの絶対位置データと、に基づいて生成された点群データを取得し、ずれ量算出部14が、上空から地表面を俯瞰した航空写真データを取得する。そして、ずれ量算出部14が、設定された基準点PQに対応する航空写真データ上の絶対位置と、基準点PQに対応する点群データに含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、軌跡補正部15が、ずれ量算出部14で算出したずれ量に基づいて、軌跡抽出部12が点群データから抽出した走行軌跡を補正し、軌跡補正部15の補正結果に基づいて点群データの点群の絶対位置を補正する。このようにすることにより、航空写真を基準として、基準点PQにおける絶対位置のずれ量の補正をすることができる。このように既にある航空写真等を利用することができるため、高精度なデータを改めて取得する必要が無く、効率的に点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
【0055】
また、軌跡補正部15が、ずれ量算出部14が算出したずれ量に基づいて走行軌跡を補正しているので、当該走行軌跡に基づいて算出される点群の絶対位置を補正することができる。
【0056】
また、ずれ量算出部14は、2つの基準点PQにそれぞれ対応する航空写真上の絶対位置と、2つの基準点PQにそれぞれ対応する点群データに含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出し、軌跡補正部15が、ずれ量算出部14で算出したずれ量に基づいて、軌跡抽出部12が点群データから抽出した走行軌跡を補正し、軌跡補正部15の補正結果に基づいて点群データの点群の絶対位置を補正しているので、2つの基準点のずれ量に基づいて2つの基準点間の点群の絶対位置の補正をすることができる。
【0057】
また、少なくとも基準点に対応する航空写真の位置精度が、点群データを生成する際に取得される絶対位置よりも高い位置精度を有している。このようにすることにより、航空写真を基準として点群情報の絶対位置の補正をすることができる。
点群加工部17は、点群統合部11で生成された点群データを上空から俯瞰した状態で見た二次元の画像データに変換する。即ち、点群加工部17は、点群データ(点群情報)を画像情報に変換する変換部として機能する。
そして、航空写真についてエッジ抽出とぼかし処理を行った画像と二次元画像データについてエッジ抽出とぼかし処理を行った画像について測地系を統一し、縮尺率を合わせて、例えば航空写真側をテンプレート画像としてテンプレートマッチングによる比較を行う。そして、一致した画像の範囲に定めた基準点におけるずれ量(縦横方向のずれ、回転角度等)を求める。
即ち、ずれ量算出部14A(算出部)は、航空写真データ23(所定範囲の画像情報)と点群データ(点群情報)から変換された画像情報とのテンプレートマッチング(画像マッチング処理)を行って基準点に対応する航空写真データ23(俯瞰情報)の絶対位置と、基準点に対応する点群データ(点群情報)に含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出している。
本実施例によれば、点群統合部11で生成された点群データを二次元画像に変換する点群加工部17を備えている。また、ずれ量算出部14Aは、航空写真データ23における基準点を含む所定範囲の画像を取得し、その所定範囲の画像と点群データから変換された二次元画像との画像マッチング処理を行って基準点に対応する航空写真の絶対位置と、基準点に対応する点群データに含まれる点群の絶対位置と、のずれ量を算出するようにしている。このようにすることにより、基準点を含む範囲について周知の画像マッチング処理により基準点における縦横方向(緯度経度)のずれだけでなく回転角度のずれも算出することができる。