(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127594
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】濁質残渣の含水率調節方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/121 20190101AFI20230907BHJP
B01D 29/17 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C02F11/121 ZAB
B01D29/30 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031355
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】館野 覚俊
(72)【発明者】
【氏名】舩石 圭介
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA00
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE13
4D059BE15
4D059BE26
4D059BE46
4D059BE55
4D059BE56
4D059BJ01
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4D116GG02
4D116KK01
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4D116QA24C
4D116QA24D
4D116QC02A
4D116QC07
4D116QC09
4D116QC14A
4D116QC20
4D116QC22A
4D116TT03
4D116TT07
4D116VV12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】指標の数を減らして単純化することが可能な濁質残渣の含水率調節方法を提供する。
【解決手段】スクリュープレス3に供給される懸濁液2の固形物負荷と、スクリュー12の回転速度と、背圧板14の開度とを乗じた値を、スクリュー12を回転駆動させる電動機13の電流値で除することによって指標演算値を予め算出し、指標演算値と濁質残渣19の含水率との相関関係を予め求めておき、上記相関関係に基づいて、濁質残渣19の含水率が目標の含水率であるときの指標演算値を求めるとともに、求められた指標演算値を所定の指標演算値とし、スクリュープレス3を運転しているときに濁質残渣19の含水率が目標の含水率から変動すると、懸濁液2の固形物負荷とスクリュー12の回転速度と背圧板14の開度と電動機13の電流値とからなる4つの指標のうちの少なくともいずれかを調節して、指標演算値を所定の指標演算値にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液を第1槽からスクリュープレスに供給し、懸濁液をスクリュープレスによって脱水して得られる濁質残渣の含水率を目標の含水率に維持する濁質残渣の含水率調節方法であって、
スクリュープレスに供給される懸濁液の固形物負荷と、ろ過筒内で回転するスクリューの回転速度と、ろ過筒の下流側端部に対向して配置された背圧板の開度とを乗じた値を、スクリューを回転駆動させる電動機の電流値で除することによって指標演算値を予め算出し、指標演算値と濁質残渣の含水率との相関関係を予め求めておき、
上記相関関係に基づいて、濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの指標演算値を求めるとともに、求められた指標演算値を所定の指標演算値とし、
スクリュープレスを運転しているときに濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動すると、懸濁液の固形物負荷とスクリューの回転速度と背圧板の開度と電動機の電流値とからなる4つの指標のうちの少なくともいずれかを調節して、指標演算値を所定の指標演算値にすることを特徴とする濁質残渣の含水率調節方法。
【請求項2】
第1槽に供給される懸濁液の流量とSS濃度とに基づいて固形物負荷を求め、
濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動すると、第1槽に供給される懸濁液の流量とスクリューの回転速度と背圧板の開度との少なくともいずれかを調節することを特徴とする請求項1に記載の濁質残渣の含水率調節方法。
【請求項3】
濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの電動機の電流値を所定の電流値とすると、スクリュープレスを運転しているときに電動機の電流値が所定の電流値から変化した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したと判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の濁質残渣の含水率調節方法。
【請求項4】
電動機の電流値の代わりに電動機のトルクを指標とし、
濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの電動機のトルクを所定のトルクとすると、スクリュープレスを運転しているときに電動機のトルクが所定のトルクから変化した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したと判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の濁質残渣の含水率調節方法。
【請求項5】
背圧板の開度の代わりにろ過筒内の懸濁液の圧力を指標とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の濁質残渣の含水率調節方法。
【請求項6】
懸濁液は汚泥であり、濁質残渣は脱水汚泥であり、第1槽は凝集槽であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の濁質残渣の含水率調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば汚泥等の懸濁液をスクリュープレスで脱水して得られる脱水汚泥等の濁質残渣の含水率を調節する含水率調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリュープレスを用いて汚泥を脱水する脱水システムとして、下記特許文献1に記載されたものがある。この脱水システムは、スクリュープレスに投入される汚泥の状態を示す汚泥データと、スクリュープレスの運転状態を示す運転データと、スクリュープレスで生成されたケーキの状態を示すケーキデータとに基づいて、計算モデルを予め構築しておき、汚泥データの現在値と運転データの現在値を計算モデルに入力することによって、ケーキの予測含水率を機械学習により算出するものである。
【0003】
汚泥データと運転データとケーキデータとは具体的に以下のような項目を指標とするデータである。汚泥データは、汚泥の温度、気温、汚泥中の懸濁物質の濃度、汚泥に含まれる繊維材の割合、汚泥に含まれる有機物の割合を指標とする。
【0004】
また、運転データは、凝集混和槽に導入される汚泥の流量、凝集混和槽に注入される凝集剤の注入率、凝集混和槽の撹拌機の回転速度、スクリュー羽根の回転速度、背圧板の位置、洗浄液の圧力、洗浄頻度を指標とする。また、ケーキデータは含水率を指標とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来形式では、各データを採取する際、その指標の数が多いので、これらのデータを採取するには多数の計測機器が必要になる。また、採取したデータは膨大な数になるため、これらのデータを処理するために機械学習の技術が必要である。このため、このような脱水システムを利用して脱水汚泥の含水率を調節する場合、含水率の調節方法が複雑化する虞がある。
本発明は、指標の数を減らして単純化することが可能な濁質残渣の含水率調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明は、懸濁液を第1槽からスクリュープレスに供給し、懸濁液をスクリュープレスによって脱水して得られる濁質残渣の含水率を目標の含水率に維持する濁質残渣の含水率調節方法であって、
スクリュープレスに供給される懸濁液の固形物負荷と、ろ過筒内で回転するスクリューの回転速度と、ろ過筒の下流側端部に対向して配置された背圧板の開度とを乗じた値を、スクリューを回転駆動させる電動機の電流値で除することによって指標演算値を予め算出し、指標演算値と濁質残渣の含水率との相関関係を予め求めておき、
上記相関関係に基づいて、濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの指標演算値を求めるとともに、求められた指標演算値を所定の指標演算値とし、
スクリュープレスを運転しているときに濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動すると、懸濁液の固形物負荷とスクリューの回転速度と背圧板の開度と電動機の電流値とからなる4つの指標のうちの少なくともいずれかを調節して、指標演算値を所定の指標演算値にするものである。
【0008】
これによると、4つの指標のうちの少なくともいずれかを調節して、指標演算値を所定の指標演算値にすることにより、4つの指標に基づいて、濁質残渣の含水率を調節し目標の含水率に維持することができる。このため、含水率調節方法を単純化することができる。
【0009】
本第2発明における濁質残渣の含水率調節方法は、第1槽に供給される懸濁液の流量とSS濃度とに基づいて固形物負荷を求め、
濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動すると、第1槽に供給される懸濁液の流量とスクリューの回転速度と背圧板の開度との少なくともいずれかを調節するものである。
【0010】
これによると、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動した場合、第1槽に供給される懸濁液の流量とスクリューの回転速度と背圧板の開度との少なくともいずれかを調節することにより、容易に濁質残渣の含水率を目標の含水率に維持することができる。
【0011】
本第3発明における濁質残渣の含水率調節方法は、濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの電動機の電流値を所定の電流値とすると、スクリュープレスを運転しているときに電動機の電流値が所定の電流値から変化した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したと判断するものである。
【0012】
これによると、スクリュープレスを運転しているときの電動機の電流値が所定の電流値よりも低下した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から上昇したと判断し、スクリュープレスを運転しているときの電動機の電流値が所定の電流値よりも上昇した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から低下したと判断する。これにより、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したことを容易に察知することができる。
【0013】
本第4発明における濁質残渣の含水率調節方法は、電動機の電流値の代わりに電動機のトルクを指標とし、
濁質残渣の含水率が目標の含水率であるときの電動機のトルクを所定のトルクとすると、スクリュープレスを運転しているときに電動機のトルクが所定のトルクから変化した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したと判断するものである。
【0014】
これによると、スクリュープレスを運転しているときの電動機のトルクが所定のトルクよりも低下した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から上昇したと判断し、スクリュープレスを運転しているときの電動機のトルクが所定のトルクよりも上昇した場合、濁質残渣の含水率が目標の含水率から低下したと判断する。これにより、濁質残渣の含水率が目標の含水率から変動したことを容易に察知することができる。
【0015】
本第5発明における濁質残渣の含水率調節方法は、背圧板の開度の代わりにろ過筒内の懸濁液の圧力を指標とするものである。
【0016】
本第6発明における濁質残渣の含水率調節方法は、懸濁液は汚泥であり、濁質残渣は脱水汚泥であり、第1槽は凝集槽であるものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によると、4つの指標に基づいて、濁質残渣の含水率を調節し目標の含水率に維持することができるため、含水率調節方法を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における脱水設備の模式図である。
【
図2】同、脱水設備に備えられたスクリュープレスの一部拡大断面図であり、背圧板の開度を示す。
【
図4】脱水助剤の添加率を5%にしたときの指標演算値と脱水汚泥の含水率との相関関係を示すグラフである。
【
図5】同、脱水設備を用いて汚泥を脱水するときの脱水汚泥の含水率調節方法を示すフローチャートである。
【
図6】脱水助剤の添加率を6%にしたときの指標演算値と脱水汚泥の含水率との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1~
図3に示すように、1は、例えば下水処理場の汚泥2(懸濁液の一例)を脱水する脱水設備である。脱水設備1は、スクリュープレス3と、スクリュープレス3の上流側(前段)に設置された濃縮機4と、濃縮機4の上流側(前段)に設置された凝集槽6(第1槽の一例)と、凝集槽6の上流側(前段)に設置された混和槽7(第2槽の一例)とを備えている。
【0021】
スクリュープレス3は、ケーシング10内に設けられたろ過筒11と、ろ過筒11内に回転自在に設けられたスクリュー12と、スクリュー12を回転駆動させる電動機13(モータ等)と、ろ過筒11の下流側端部に対向して配置された背圧板14と、背圧板14の開度Cを調節する開度調節装置15と、濃縮機4から排出された汚泥2をろ過筒11内に投入する汚泥供給部16と、汚泥2を脱水した際に発生する脱水ろ液17を排出する脱水ろ液排出部18と、汚泥2を脱水して得られる脱水汚泥19(濁質残渣の一例)を排出する脱水汚泥排出部20とを有している。
【0022】
ろ過筒11は多数の貫通孔22を有する多孔板で構成されている。ろ過筒11の上流側端部は、ケーシング10の一部を構成する前部閉止壁21によって閉鎖されている。スクリュー12は、ろ過筒11内に挿入された回転自在なスクリュー軸24と、スクリュー軸24の外周に設けられた螺旋状のスクリュー羽根25とを有している。電動機13はスクリュー軸24の一端部に接続されている。
【0023】
背圧板14は、ろ過筒11内を上流側から下流側へ移送された脱水汚泥19を受けるためのテーパー面を有する円錐台状の板である。スクリュー軸24は、ろ過筒11と同心状に配置されて、背圧板14を貫通している。背圧板14は、スクリュー軸24と同心状に配置されており、スクリュー軸24に固定されておらず、スクリュー軸24の軸心方向へ移動可能である。これにより、スクリュー軸24が回転しても背圧板14は回転しない。
【0024】
開度調節装置15は複数の油圧式のシリンダ装置26を有しており、シリンダ装置26のピストンロッド26aが背圧板14に連結されている。背圧板14の開度C(
図2参照)とはろ過筒11の下流側端部と背圧板14との間隔に相当し、シリンダ装置26のピストンロッド26aを伸長することにより、背圧板14の開度Cが減少し、ピストンロッド26aを短縮することにより、背圧板14の開度Cが増大する。
脱水汚泥19はろ過筒11の下流側端部と背圧板14との間隙を通って脱水汚泥排出部20へ排出される。
【0025】
また、スクリュープレス3には、スクリュー12の回転速度Bを検出する回転速度検出装置27と、背圧板14の開度Cを検出する開度検出装置28と、電動機13の電流値Dを測定する電流計29とが備えられている。
【0026】
濃縮機4は、ケーシング30と、ケーシング30内に設けられた傾斜スクリーン31とを有している。傾斜スクリーン31は凝集槽6から供給された汚泥2を流下させながらろ過するスクリーンである。ケーシング30の上部には流入口32が形成され、ケーシング30の下部には、汚泥2をろ過した際に発生する濃縮ろ液33を排出する濃縮ろ液排出部34と、濃縮された汚泥2を排出する汚泥排出口35とが形成されている。汚泥排出口35はスクリュープレス3の汚泥供給部16に接続されている。
【0027】
凝集槽6には、槽内の汚泥2に凝集剤41を添加する凝集剤添加装置42と、槽内の汚泥2を撹拌する撹拌装置43とが設けられている。尚、凝集剤41は有機高分子又は無機高分子を含む。凝集槽6と濃縮機4の流入口32とは供給管44を介して接続されている。
【0028】
汚泥2が混和槽7から凝集槽6に連続的に供給されることで、凝集槽6内の汚泥2の液面が供給管44の高さまで上昇すると、凝集槽6内の汚泥2が供給管44を通って濃縮機4に供給される。
【0029】
混和槽7には、槽内の汚泥2にセルロース等の脱水助剤48を添加する助剤添加装置49と、槽内の汚泥2を撹拌する撹拌装置50と、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度を測定するSS濃度計54とが設けられている。混和槽7内の汚泥2は移送管51を通って凝集槽6に供給される。移送管51には、供給ポンプ52と、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量を計測する流量計53とが設けられている。尚、脱水助剤48は、例えば、繊維材、無機凝集剤、pH調整剤および木粉を含む。
【0030】
また、脱水設備1には制御装置55が備えられており、制御装置55は、回転速度検出装置27で検出されたスクリュー12の回転速度Bと、開度検出装置28で検出された背圧板14の開度Cと、電流計29で測定された電動機13の電流値Dと、流量計53で計測された汚泥2の流量と、SS濃度計54で測定された汚泥2のSS濃度とに基づいて、電動機13とシリンダ装置26と供給ポンプ52とを制御する。
汚泥2は脱水設備1によって以下のように脱水される。
【0031】
先ず、混和槽7に供給された汚泥2に助剤添加装置49から脱水助剤48が添加され、撹拌装置50で撹拌されることにより、脱水助剤48の添加率が所定の添加率に調節される。
【0032】
ここで、脱水助剤48の添加率とは、汚泥2のSSの量に対する脱水助剤48の量の比率であり、例えば、汚泥2のSSが10000mg/Lに対して脱水助剤48が500mg/Lの場合、脱水助剤48の添加率が5%(所定の添加率の一例)になる。
【0033】
そして、混和槽7内の汚泥2は移送管51を通って凝集槽6に供給され、この際、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量が流量計53によって計測されるとともに、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度がSS濃度計54によって測定される。
凝集剤41が凝集剤添加装置42から凝集槽6内の汚泥2に添加され、撹拌装置43で撹拌される。これにより、汚泥2中に凝集フロックが形成され、凝集フロックは凝集槽6内に流動分散している。
【0034】
尚、通常、汚泥2は混和槽7から凝集槽6に連続的に供給されるため、凝集槽6内の汚泥2の液面が供給管44の高さまで上昇し、凝集槽6内の汚泥2が供給管44を通って濃縮機4に供給される。
【0035】
このようにして濃縮機4に供給された汚泥2は傾斜スクリーン31を流下しながらろ過され、その際に発生した濃縮ろ液33は濃縮ろ液排出部34から排出される。濃縮された汚泥2は、汚泥排出口35からスクリュープレス3へ供給され、汚泥供給部16からろ過筒11内に投入される。
【0036】
これにより、汚泥2は、ろ過筒11内において、回転するスクリュー12によって汚泥供給部16から下流側へ移送されながら圧搾脱水され、ろ過筒11の下流側端部と背圧板14との間を通り、脱水汚泥19として脱水汚泥排出部20から外部へ排出される。
【0037】
この際、スクリュー12の回転速度Bが回転速度検出装置27によって検出され、背圧板14の開度Cが開度検出装置28によって検出され、電動機13の電流値Dが電流計29によって測定される。
また、上記圧搾脱水によって汚泥2から分離された脱水ろ液17は、ろ過筒11の貫通孔22を通って流れ落ち、脱水ろ液排出部18から外部へ排出される。
【0038】
尚、制御装置55が供給ポンプ52を制御することにより、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量を調節することができる。混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量を増やした場合、凝集槽6から濃縮機4を経てスクリュープレス3へ供給される汚泥2の流量も増加する。反対に、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量を減らした場合、凝集槽6から濃縮機4を経てスクリュープレス3へ供給される汚泥2の流量も減少する。
【0039】
上記のような汚泥2の脱水行程において、スクリュープレス3から排出される脱水汚泥19の含水率は、以下に説明するような含水率調節方法に基づいて、目標とする含水率になるように調節される。
【0040】
発明者は、スクリュープレス3に供給される汚泥2の固形物負荷Aとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cと電動機13の電流値Dとの4つの指標に基づいて指標演算値Eを求め、指標演算値Eと脱水汚泥19の含水率との間に相関関係が存在することを見出した。
【0041】
例えば、
図4は、指標演算値Eと脱水汚泥19の含水率との関係を示すグラフであり、混和槽7内の汚泥2に添加される脱水助剤48の添加率を5%に調節した場合のものである。このグラフは横軸を指標演算値Eとし、縦軸を脱水汚泥19の含水率としている。
【0042】
指標演算値Eとは、以下の関係式(1)で示すように、汚泥2の固形物負荷Aとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cとを乗じた値を、電動機13の電流値Dで除することによって求められる値である。
指標演算値E=固形物負荷A×回転速度B×開度C/電流値D ・・・関係式(1)
【0043】
ここで、固形物負荷Aは、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量F[m3/時]と、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度G[mg/リットル]とに基づいて、以下の関係式(2)で算出される。
固形物負荷A=汚泥2の流量F×汚泥2のSS濃度G/1000 ・・・関係式(2)
尚、固形物負荷Aの単位は[kg-DS/時]となる。
【0044】
また、スクリュー12の回転速度Bは、1分間当たりの回転数であり、単位は[回転/分]となる。また、背圧板14の開度Cの単位は[mm]であり、電動機13の電流値Dの単位は[A]である。
【0045】
例えば、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量Fが2.94[m3/時]であり、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gが17000[mg/リットル]である場合、固形物負荷Aは以下の計算式(3)によって50[kg-DS/時]になる。
2.94×17000/1000=50・・・計算式(3)
【0046】
また、スクリュー12の回転速度Bが0.25[回転/分]、背圧板14の開度Cが143[mm]、電動機13の電流値Dが8[A]の場合、指標演算値Eは以下の計算式(4)によって223[mm・kg-DS/時・分
-1・A
-1]となり、この場合、
図4のグラフによると脱水汚泥19の含水率が70[%]となる。
50×0.25×143/8=223・・・計算式(4)
そこで、
図4で示したような指標演算値Eと脱水汚泥19の含水率との関係を示すグラフを予め作成しておく。
【0047】
例えば、指標演算値Eを290[mm・kg-DS/時・分-1・A-1]にして、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]になるようにスクリュープレス3を運転しているとする。
【0048】
このときの混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量Fと混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cと電動機13の電流値Dとを各種計測機器27,28,29,53,54(
図3参照)を用いて計測する。例えば、計測された汚泥2の流量Fが2.85[m
3/時]、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gが17500[mg/リットル]、スクリュー12の回転速度Bが0.24[回転/分]、背圧板14の開度Cが200[mm]、電動機13の電流値Dが8.3[A]であるとする。
このときの固形物負荷Aは以下の計算式(5)によって50[kg-DS/時]になる。
2.85×17500/1000=50 ・・・計算式(5)
また、このときの指標演算値Eは、以下の計算式(6)によって、上記のように290[mm・kg-DS/時・分
-1・A
-1]になる。
50×0.24×200/8.3=290 ・・・計算式(6)
【0049】
尚、このうち、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gは汚泥2の性状によって決まる数値であり、汚泥2のSS濃度Gを調節することは困難である。
【0050】
また、制御装置55が供給ポンプ52を制御することにより、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量Fを調節することができ、上記のように汚泥2の流量Fを2.85[m3/時]に設定することができる。さらに、制御装置55が電動機13を制御することにより、スクリュー12の回転速度Bを調節することができ、上記のようにスクリュー12の回転速度Bを0.24[回転/分]に設定することができる。また、制御装置55がシリンダ装置26を制御することにより、背圧板14の開度Cを調節することができ、上記のように背圧板14の開度Cを200[mm]に設定することができる。
【0051】
また、電動機13の電流値Dは、汚泥2のSS濃度Gと汚泥2の流量Fとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cに応じて変動する。脱水汚泥19の含水率が目標の含水率(この場合は75[%])であるときの電流値Dを所定の電流値(この場合は8.3[A])とする。
【0052】
さらに、
図4のグラフに基づいて、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率(この場合は75[%])であるときの指標演算値Eを求め、求められた指標演算値Eを所定の指標演算値(この場合は290)とする。
【0053】
この状態で、例えば、混和槽7に供給される汚泥2の性状が変化し、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gが17500[mg/リットル]よりも低下した場合、固形物負荷Aが50[kg-DS/時]よりも減少し、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]よりも低下する。
【0054】
反対に、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gが17500[mg/リットル]よりも上昇した場合、固形物負荷Aが50[kg-DS/時]よりも増大し、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]よりも上昇する。
【0055】
このように脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]から上下に変動した場合、これに応じて、電動機13の電流値Dも所定の電流値8.3[A]から変化する。
従って、含水率調節方法では、
図5のフローチャートに示すように、制御装置55によって以下のような制御を行う。
【0056】
制御装置55は、電流計29で測定される電動機13の電流値Dが所定の電流値8.3[A]であるか否かを判断する(ステップ-1)。電流値Dが所定の電流値8.3[A]である場合、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]に維持されていると判断し、汚泥2の流量Fとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cを変えず、引き続いて、汚泥2の流量Fを2.85[m3/時]、スクリュー12の回転速度Bを0.24[回転/分]、背圧板14の開度Cを200[mm]にしたままで、スクリュープレス3を運転して汚泥2を脱水する(ステップ-2)。これにより、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]に維持される。
【0057】
また、制御装置55は、上記ステップ-1において、電流値Dが所定の電流値8.3[A]から変化した場合、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]から変動したと判断し、供給ポンプ52と電動機13とシリンダ装置26との少なくともいずれかを制御して、指標演算値Eが所定の指標演算値290[mm・kg-DS/時・分-1・A-1]になるように、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2の流量Fとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cとの少なくともいずれかを調節する(ステップ-3)。
【0058】
そして、計測された汚泥2の流量Fと汚泥2のSS濃度Gとに基づいて固形物負荷Aを算出し、算出された固形物負荷Aと計測されたスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cと電動機13の電流値Dとに基づいて、指標演算値Eを算出する(ステップ-4)。
【0059】
上記ステップ-4において算出された指標演算値Eが所定の指標演算値290[mm・kg-DS/時・分-1・A-1]であるか否かを判断し(ステップ-5)、指標演算値Eが所定の指標演算値である場合、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]に維持されていると判断する。
【0060】
また、上記ステップ-5において、算出された指標演算値Eが所定の指標演算値と異なっている場合、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率75[%]に維持されていないと判断し、指標演算値Eが所定の指標演算値と同じになるまで上記ステップ-3~ステップ-5を繰り返す。これにより、混和槽7から凝集槽6に供給される汚泥2のSS濃度Gが変化しても、脱水汚泥19の含水率を目標の含水率75[%]に維持することができる。
上記実施の形態において記載した各々の数値はあくまでも一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
【0061】
上記実施の形態では、
図4において、脱水助剤48の所定の添加率の一例として、添加率を5%にしたときの指標演算値Eと脱水汚泥19の含水率との相関関係を示すグラフを記載しているが、添加率は5%に限定されるものではなく、添加率が変わると、これに応じてグラフも変わる。例えば
図6は、脱水助剤48の添加率を6%にしたときのグラフである。添加率を6%にした場合は
図6のグラフを用いて、同様に含水率調節方法の上記ステップ-1~ステップ-5を実施すればよい。
【0062】
上記実施の形態では、汚泥2の固形物負荷Aとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cと電動機13の電流値Dとの4つの指標に基づいて指標演算値Eを算出しているが、電動機13の電流値Dの代わりに電動機13のトルクを指標の1つにして、指標演算値Eを算出してもよい。この場合、スクリュープレス3を運転しているとき、上記ステップ-1において、電動機13のトルクが所定のトルク値であるか否かを判断し、電動機13のトルクが所定のトルク値から変化した場合、脱水汚泥19の含水率が目標の含水率から変動したと判断する。
【0063】
上記実施の形態では、汚泥2の固形物負荷Aとスクリュー12の回転速度Bと背圧板14の開度Cと電動機13の電流値Dとの4つの指標に基づいて指標演算値Eを算出しているが、背圧板14の開度Cの代わりに、ろ過筒11内の汚泥2の圧力を指標の1つにして、指標演算値Eを算出してもよい。
【0064】
上記実施の形態では、
図4および
図6のグラフはスクリュープレス3のサイズ等によって変わってくるので、例えばスクリュープレス3のサイズ毎にグラフを作成しておき、スクリュープレス3のサイズに該当するグラフを適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 汚泥(懸濁液)
3 スクリュープレス
6 凝集槽(第1槽)
11 ろ過筒
12 スクリュー
13 電動機
14 背圧板
19 脱水汚泥(濁質残渣)