(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127614
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】汚泥処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/121 20190101AFI20230907BHJP
【FI】
C02F11/121 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031392
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA06
4D059AA23
4D059BE04
4D059BE31
4D059BE49
4D059BE54
4D059BJ00
4D059CA22
4D059CA28
4D059CA29
4D059CB06
(57)【要約】
【課題】
易脱水性汚泥を処理する未消化処理系統と難脱水性汚泥を処理する消化処理系統を統合させた汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】
易脱水性汚泥と難脱水性汚泥をそれぞれ脱水処理する汚泥処理システムにおいて、易脱水性汚泥の処理系統から繊維状物を回収し、難脱水性汚泥を処理する処理系統の難脱水性汚泥に添加して脱水するとともに、難脱水性汚泥の消化脱水ろ液を易脱水性汚泥の処理系統に移送して易脱水性汚泥の処理系統で発生する余剰汚泥に接触させて接触安定化処理することで、難脱水性汚泥の脱水性を向上できるとともに、消化脱水ろ液中の窒素分の一部及びリンを除去できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
易脱水性汚泥と難脱水性汚泥をそれぞれ脱水処理する汚泥処理システムにおいて、
易脱水性汚泥の処理系統から繊維状物を回収し、難脱水性汚泥を処理する処理系統の難脱水性汚泥に添加して脱水するとともに、
難脱水性汚泥の消化脱水ろ液を易脱水性汚泥の処理系統に移送して易脱水性汚泥の処理系統で発生する余剰汚泥に接触させて接触安定化処理する
ことを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項2】
前記易脱水性汚泥は最初沈殿池(1)から発生する初沈汚泥の繊維状物と最終沈殿池(5)から発生する余剰汚泥とを含んだ汚泥であり、
難脱水性汚泥は最初沈殿池(1)から発生する初沈汚泥と最終沈殿池(5)から発生する余剰汚泥とを消化処理して生成した消化汚泥である
ことを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理システム。
【請求項3】
前記接触安定化処理は、余剰汚泥及び消化脱水ろ液が混在する接触槽(6)内で嫌気処理及び好気処理を行い、消化脱水ろ液中の窒素及びリンを余剰汚泥に吸着させる処理である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汚泥処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる汚泥処理系統を利用して難脱水性汚泥を脱水するとともに、難脱水性汚泥の消化脱水ろ液を処理する汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に下水処理場の水処理システムは、処理場に流入する被処理水を最初沈殿池にて沈降分離し、分離した上澄み水を酸素が供給された反応槽内にて生物処理した後、最終沈殿池にて沈降分離して上澄み水を消毒後、河川等に放流している。一方、汚泥処理システムは、最初沈殿池から引き抜いた初沈汚泥と最終沈殿池で発生した余剰汚泥を混合した後、生成した混合生汚泥を脱水機にて固液分離し、脱水ケーキを生成している。また、上記フローにて生成された混合生汚泥を消化槽で嫌気消化して減容化し、生成された消化汚泥を脱水機にて固液分離する汚泥処理システムも知られている。
【0003】
特許文献1の
図7は、最初沈殿池から引き抜いた生汚泥と最終沈殿池で発生した余剰汚泥を混合した混合生汚泥を処理するフローであって、最初沈殿池から引き抜いた生汚泥より繊維分を回収するとともに、脱水機の前段で重力濃縮した生汚泥及び機械濃縮した余剰汚泥からなる混合汚泥に繊維分を添加する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1の
図1は、最初沈殿池から引き抜いた生汚泥と最終沈殿池で発生した余剰汚泥を消化槽にて消化処理した消化汚泥を処理するフローであって、最初沈殿池から引き抜いた生汚泥より繊維分を回収するとともに、脱水機の前段で消化汚泥に繊維分を添加する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、複数の下水処理場から発生する消化汚泥に対して濃縮、脱水等の処理をすることにより発生する下水返流水を接触安定槽で活性化返送汚泥と混合して有機物、窒素及びリンを吸着除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6146665号公報
【特許文献2】特許第2704109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の汚泥処理システムは、混合生汚泥フローのみであれば問題ないが、近年は消化設備を付設して消化ガス等のエネルギー回収を行う処理場が増加している。消化設備にて生成された消化汚泥は脱水装置にて脱水処理されるが、その際、排出される消化脱水ろ液には、高濃度の窒素及びリンが含まれていた。消化脱水ろ液は一般的に返流水として水処理工程に返送されるため、窒素及びリンが処理系統内を循環し続け、既存の水処理設備に過大な負荷を与えるという課題があった。そして、除去しきれない窒素及びリンが処理水と共に河川等に排出し放流水質の悪化に伴い、富栄養化を引き起こしていた。
【0008】
特許文献1は、消化槽で混合生汚泥を消化処理した後、脱水する際、汚泥の脱水性を高めるために、生汚泥より引き抜いた有機物(繊維状物)を添加しているが、1つの処理系統内で発生する有機物(繊維状物)を消化汚泥に添加するものであり、複数の処理系統を組み合わせた技術ではない。また、消化槽の前段で有機物(繊維状物)を回収する場合、消化槽に投入される有機物(繊維状物)が減少しているため、消化効率に影響を及ぼして消化ガス発生量が減少するという問題があった。
【0009】
また、特許文献2には、消化後に発生する下水返流水(消化脱水ろ液)を接触安定化処理して有機物、窒素及びリンを吸着除去する技術及び2つの処理系統から生じる消化汚泥をまとめて処理する技術が開示されているが、2つの処理系統は、同一フローの汚泥処理システムを利用したものであり、異なるフローの汚泥処理システムを利用したものではない。つまり、異なるフローの汚泥処理システムの一方の処理場にて生じた下水返流水を他方の処理場に移送し、接触安定化処理する技術は存在していなかった。
【0010】
本発明は、易脱水性汚泥を処理する未消化処理系統と難脱水性汚泥を処理する消化処理系統の異なる2系統を統合した汚泥処理システムであり、易脱水性汚泥より回収した繊維状物を難脱水性汚泥に供給するとともに、難脱水性汚泥の消化脱水ろ液を易脱水性汚泥の処理系統に移送して接触安定化処理することを特徴とする汚泥処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、易脱水性汚泥と難脱水性汚泥をそれぞれ脱水処理する汚泥処理システムにおいて、易脱水性汚泥の処理系統から繊維状物を回収し、難脱水性汚泥を処理する処理系統の難脱水性汚泥に添加して脱水するとともに、難脱水性汚泥の消化脱水ろ液を易脱水性汚泥の処理系統に移送して易脱水性汚泥の処理系統で発生する余剰汚泥に接触させて接触安定化処理することで、難脱水性汚泥の脱水性を向上できるとともに、消化脱水ろ液中のSSに起因する窒素及び溶解性リンを余剰汚泥に吸着させて除去できるため消化脱水ろ液中の窒素及びリンの濃度を低減できる。
【0012】
易脱水性汚泥は最初沈殿池から発生する初沈汚泥の繊維状物と最終沈殿池から発生する余剰汚泥とを含んだ汚泥であり、難脱水性汚泥は最初沈殿池から発生する初沈汚泥と最終沈殿池から発生する余剰汚泥とを消化処理して生成した消化汚泥であることで、繊維状物が添加されることにより消化汚泥の脱水効率を高めることができる。
【0013】
接触安定化処理は、余剰汚泥及び消化脱水ろ液が混在する接触槽内で嫌気処理及び好気処理を行い、消化脱水ろ液中のSSに起因する窒素及び溶解性リンを余剰汚泥に吸着させる処理であることで、消化脱水ろ液を浄化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の汚泥処理システムは、易脱水性汚泥の処理系統で発生する初沈汚泥から回収した繊維状物を異なる処理系統の難脱水性汚泥に添加するため、難脱水性汚泥の脱水性を高めることができる。これにより、低含水率の脱水ケーキを生成できるため、後段の焼却工程で使用するエネルギーを最小限に抑えることが可能となる。また、難脱水性汚泥の処理系統で発生する消化脱水ろ液を易脱水性汚泥の処理系統の接触槽に移送して消化脱水ろ液中のSSに起因する窒素、溶解性リンを余剰汚泥に接触させて吸着除去するため、消化脱水ろ液が水処理設備に与える負荷が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係るシステムのフロー図である。
第1処理系統は易脱水性汚泥の処理フローであって、本実施例では繊維状物を含有する被処理水を重力沈殿させる最初沈殿池1Aと、最初沈殿池1Aで分離した初沈汚泥を濃縮する重力濃縮槽2Aと、重力濃縮槽2Aから所定量の初沈汚泥を引き抜いて繊維状物を選択的に分離回収する回収装置3と、最初沈殿池1Aから供給される一次処理水に含まれる有機物を生物処理により分解する反応槽4Aと、反応槽4Aから供給される処理水を重力沈殿させて上澄み水を消毒した後、河川等に放流する最終沈殿池5Aと、富栄養化の原因物質となる窒素及びリンを除去する接触槽6と、接触槽6から引き抜いた余剰汚泥を機械濃縮する機械濃縮機7Aと、機械濃縮した余剰汚泥及び重力濃縮槽2Aより引き抜いた重力濃縮汚泥を一時的に貯留する汚泥貯留槽8と、汚泥貯留槽8内で生成した混合生汚泥に凝集剤を供給する凝集混和槽9Aと、凝集汚泥を脱水する脱水装置10Aと、からなる。
【0017】
脱水装置10Aで脱水する凝集汚泥には初沈汚泥由来の多くの繊維状物が含有されているため脱水性が良好であり、第1処理系統の凝集汚泥は易脱水性汚泥といえる。
【0018】
第2処理系統は難脱水性汚泥の処理フローであって、本実施例では被処理水を重力沈殿させる最初沈殿池1Bと、最初沈殿池1Bから供給される一次処理水に含まれる有機物を生物処理により分解する反応槽4Bと、反応槽4Bから供給される処理水を重力沈殿させて上澄み水を消毒した後、放流する最終沈殿池5Bと、最初沈殿池1Bで分離した初沈汚泥を濃縮する濃縮槽2Bと、最終沈殿池5Bで引き抜いた余剰汚泥を機械濃縮する機械濃縮機7Bと、濃縮汚泥を嫌気性処理する消化槽11と、消化処理された消化汚泥に凝集剤を供給する凝集混和槽9Bと、消化汚泥を凝集した凝集汚泥を脱水する脱水装置10Bと、からなる。
【0019】
脱水装置10Bで脱水する凝集汚泥は、前段の消化槽11にて嫌気性処理された消化汚泥がベースとなっているため、汚泥を構成する成分に繊維状物が僅かしか残留していない。また、消化処理によりろ過方式脱水機のろ過速度に悪影響をおよぼす微小コロイド粒子が多く残存する。そのため脱水性が著しく悪く、第2処理系統の凝集汚泥は難脱水性汚泥といえる。
【0020】
第2処理系統の消化汚泥には、第1処理系統の回収装置3から移送された繊維状物を脱水助材として添加する。繊維状物は、消化槽11と凝集混和槽9Bの間で消化汚泥に添加、凝集混和槽9Bに供給された消化汚泥に添加する等、脱水前段で添加するのが望ましい。
【0021】
第2処理系統の脱水装置10Bで固液分離される凝集汚泥は消化汚泥がベースとなっているため、消化脱水ろ液にはSSやSSに起因する窒素及び溶解したリンが含まれている。これらを除去するために、第1処理系統の接触槽6に消化脱水ろ液を移送する。接触槽6では消化脱水ろ液中のSSやSSに起因する窒素及び溶解したリンが最終沈殿池5Aより引き抜かれた余剰汚泥に吸着し、その後、脱水されて第1処理系統から固形物(脱水ケーキ)内にこれらが取り込まれた状態で排出される。
【0022】
最終沈殿池5Bより引き抜いたばかりの余剰汚泥は、反応槽4Bにて生物処理された汚泥であり活性汚泥として機能するため、接触槽6に移送される消化脱水ろ液中のSSやSSに起因する窒素及び溶解したリンを効率よく吸着する。また、接触槽6にて浄化された消化脱水ろ液を水処理工程で再利用することも可能である。
【0023】
本実施形態では、第1処理系統の初沈汚泥と余剰汚泥が供給された汚泥貯留槽8にて混合生汚泥を生成した後、脱水装置10Aにて固液分離しているが、第1処理系統の初沈汚泥と余剰汚泥をそれぞれ別の脱水装置にて固液分離処理してもよい。その際、初沈汚泥から回収した繊維状物の一部を脱水助材として余剰汚泥に添加する。
【0024】
また、第1処理系統の初沈汚泥を第2処理系統の濃縮槽2Bに移送してもよい。その際、第1処理系統の最終沈殿池5Aより引き抜かれた余剰汚泥は、初沈汚泥から回収した繊維状物の一部を脱水助材として添加され、単独で脱水装置10Aにて固液分離処理する。
【0025】
同一処理場内に易脱水性汚泥および難脱水性汚泥の処理系統が混在している場合、繊維状物や消化脱水ろ液等の移送物は連絡配管を通じてそれぞれの処理系統に移送する。
【0026】
一方、易脱水性汚泥および難脱水性汚泥の処理系統が異なる処理場にある場合、繊維状物や消化脱水ろ液等の移送物は連絡配管にてそれぞれの処理系統に移送する。
【0027】
なお、本実施形態では異なる2つの処理系統について詳述したが、例えば、2つの易脱水性汚泥の処理系統と1つの難脱水性汚泥の処理系統がある場合、2つの易脱水性汚泥の処理系統からそれぞれ繊維状物を引き抜き、1つの難脱水性汚泥の処理系統に移送してもよい。
【実施例0028】
<最初沈殿池>
被処理水が第1処理系統の最初沈殿池1Aに流入する。初沈汚泥には固形分比で40%~60%の繊維状物が含有されている。最初沈殿池1Aの上澄み水を反応槽4Aへ供給し、沈降した初沈汚泥を引き抜いて重力濃縮槽2Aに供給する。処理場の規模にもよるが、最初沈殿池1では被処理水を1時間~2時間滞留させる。
【0029】
<重力濃縮槽>
次に、重力濃縮槽2Aでは、槽内で初沈汚泥を重力により濃縮する。濃縮された初沈汚泥は、汚泥貯留槽8に供給するとともに、重力濃縮槽2Aから所定量の初沈汚泥を引き抜いて回収装置3に供給する。重力濃縮槽2Aは回収装置3から返送される分解性有機物等の残渣も濃縮する。
【0030】
<回収装置>
次に、回収装置3では、重力濃縮槽2Aから引き抜いた初沈汚泥から繊維状物を分離・回収する。ここで、初沈汚泥には多量の繊維状物が含有されている。繊維状物の大部分は、繊維長さが0.1mm~0.5mmで、繊維径が1μm~50μmのトイレットペーパーに由来する繊維状物であることが判明している。繊維状物の回収装置3として、螺旋状のスクリュー羽根を内設した円筒スクリーンに汚泥を供給し、内部搬送しつつスクリーンにより分離回収する公知の方法を用いることができる。
【0031】
なお、被処理水中に含有されている繊維状物には、トイレットペーパー由来の繊維状物以外にも植物由来の繊維状物、あるいは食物残渣由来の繊維状物もあり、繊維状に細分化している状態であれば脱水助材として機能する。回収装置3内あるいは回収装置3の前段で汚泥をすり潰すことで、回収する繊維状物の形状を揃えてもよい。回収した繊維状物は、第2処理系統における脱水前の難脱水性汚泥の脱水助材として使用するため、第2処理系統の脱水装置10Bの前段に移送する。繊維状物以外の残渣は最初沈殿池1Aあるいは重力濃縮槽2Aに返送する。本実施形態では重力濃縮槽2Aにて濃縮された汚泥から繊維状物を回収しているが最初沈殿池1Aから直接、繊維状物を回収してもよい。なお、必要に応じて繊維状物を第1処理系統の汚泥に添加してもよい。
【0032】
<反応槽>
次に、反応槽4Aでは、最初沈殿池1Aから供給される一次処理水に活性汚泥(好気性微生物を多量に含んだ汚泥)を加え、空気を吹き込んで攪拌する。空気(酸素)と一次処理水中の有機物とにより、活性汚泥中の微生物が繁殖して一次処理水中の有機物(汚れ)が減少するとともに、活性汚泥がフロックを形成し、沈降しやすい状態になり次段に流出する。処理場の規模にもよるが、反応槽4では一次処理水を6時間~10時間滞留させる。
【0033】
<最終沈殿池>
次に、最終沈殿池5Aでは、反応槽4Aから供給された活性汚泥の混入した処理水を滞留させて重力沈殿を行う。最終沈殿池5Aの上澄み水は、消毒した後、河川等に放流する。最終沈殿池5Aの底部に沈殿した沈殿汚泥は、最終沈殿池5Aより反応槽4Aへ返送される。また、微生物の増殖分は、余剰汚泥として接触槽6に排出される。この余剰汚泥は、微生物が分泌した多糖類、タンパク質、核酸からなり、著しく脱水性が悪いことが知られている。処理場の規模にもよるが、最終沈殿池5では処理水を3時間~4時間滞留させる。
【0034】
<接触槽>
次に、接触槽6では、最終沈殿池5Aから供給される余剰汚泥及び第2処理系統より移送された消化脱水ろ液が混在している。供給された消化脱水ろ液は、接触槽6で余剰汚泥に接触し、接触安定化処理される。接触槽6を構成する嫌気槽、好気槽内でリンを汚泥中の微生物内に取り込む接触安定化処理を行った後、微生物内に取り込まれたリンを余剰汚泥として引き抜くことでリンを除去できる。接触槽6は、例として公知の嫌気・好気法によるリン除去法(AO法)が挙げられる。接触槽6は、長時間汚泥を滞留させながら生物処理を行う反応槽4Bとは異なり、設計事項に応じて例えば、30分~1時間等、反応槽4Bで行う処理よりも短い時間汚泥を滞留させながらリンを汚泥に接触させてリンの吸着除去を行うものである。また、消化脱水ろ液中のSSは、接触槽6で余剰汚泥に吸着されるため、SSに起因する窒素分は吸着除去される。しかし、溶解性の窒素分は短時間のため除去できず返流水として第1処理系統の水処理に返送され、反応タンク4Aにて処理された後、放流される。
【0035】
<機械濃縮機>
次に、機械濃縮機7Aでは、接触槽6より引き抜いた余剰汚泥を機械濃縮した後、汚泥貯留槽8に供給する。このとき、固液分離された分離液は最初沈殿池1Aに返送する。
【0036】
<汚泥貯留槽>
次に、汚泥貯留槽8では初沈汚泥と余剰汚泥とを一時的に貯留し、混合生汚泥(易脱水性汚泥)とする。脱水性が悪い余剰汚泥に、脱水性が良好な初沈汚泥を混合することで、初沈汚泥に含まれる繊維状物を均一に分散させ、繊維状物を凝集の核として機能させるとともに、脱水時に水路を形成する効果を得る。生成された混合生汚泥は凝集混和槽9Aに移送される。
【0037】
<凝集混和槽>
次に、凝集混和槽9Aでは、汚泥貯留槽8から供給される混合生汚泥と、凝集剤供給装置(図示しない)から供給される凝集剤とを均一に攪拌しつつ混合し、脱水装置10Aで安定して脱水可能な凝集汚泥を形成させる。
【0038】
<脱水装置>
次に、脱水装置10Aでは、凝集混和槽9Aから供給される凝集汚泥を脱水し、安定した低含水率の脱水ケーキを生成する。脱水ケーキは、接触槽6で接触安定化処理した際に取り込まれたリンを多く含んでいるため、堆肥の栄養成分として有効利用できる。固液分離された脱水ろ液は最初沈殿池1Aに返送される。
【0039】
第1処理系統と同様の構成要件は省略する。
<機械濃縮機>
機械濃縮機7Bでは、最終沈殿池5Bで分離した余剰汚泥を機械作用により濃縮する。濃縮された機械濃縮汚泥は、消化槽11に供給する。なお、消化槽11には、初沈汚泥(重力濃縮槽2Bがある場合は重力濃縮汚泥)も供給されるが、機械濃縮汚泥を初沈汚泥(重力濃縮汚泥)と別々に消化槽7に供給しても、これらを混合した後、供給してもよい。固液分離された分離液は最初沈殿池1Bに返送される。
【0040】
<消化槽>
消化槽11では、汚泥中の有機物を嫌気性微生物によって、有機酸、二酸化炭素等に分解する。有機酸は嫌気性微生物により、さらにメタン、硫化水素まで分解される。分解が終わり安定した消化汚泥は、消化工程前と比べて50~60%程度に減量される。消化工程で生じた消化ガスは、ボイラ、焼却設備、発電機等のエネルギーとして使用できる。
【0041】
<凝集混和槽>
次に、凝集混和槽9Bでは、消化槽11から供給される消化汚泥と、凝集剤供給装置(図示しない)から供給される凝集剤と、第1処理系統から供給される繊維状物を均一に攪拌しつつ混合し、脱水装置10Bで安定して脱水可能な凝集汚泥を形成させる。このとき、凝集汚泥に第1処理系統から引き抜いた繊維状物を供給することで、凝集の核として機能させることができるため必要最低限の凝集剤にて凝集を行うことが可能となる。
【0042】
<脱水装置>
次に、脱水装置10Bでは、凝集混和槽9Bから供給される凝集汚泥を脱水し、安定した低含水率の脱水ケーキを生成する。排出される消化脱水ろ液は、第1処理系統の接触槽6に移送される。
本発明の汚泥処理システムは、易脱水性汚泥を処理する未消化処理システムおよび難脱水性汚泥を処理する消化処理システムを統合したものであり、異なる下水処理系統それぞれの長所を生かして短所を補うことができる。複数の処理場を連携することで広域処理システムの形成も可能となる。