(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127617
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】水素供給システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20230907BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031399
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 文章
(72)【発明者】
【氏名】山下 育男
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB23
5L049BB56
(57)【要約】
【課題】グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元する。
【解決手段】水素製造装置110は、再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって水素を製造する。環境価値集約サーバ120は、電気分解に使用された再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、水素の製造において削減された二酸化炭素量の合計を計算し、二酸化炭素量が認証された証書の発行を認証サーバに申請する。証書取引サーバ130は、証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成する。環境価値分配サーバ140は、購入量に応じた収入の分配に必要な分配情報を水素取引サーバ114に出力する。水素取引サーバ114は、分配情報に基づいて購入量に応じた請求に分配を反映させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を消費者に供給する水素供給システムであって、
再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって前記水素を製造する水素製造装置と、
前記水素供給システムからの購入量に応じた請求を前記消費者へ行う水素取引サーバと、
前記電気分解に使用された前記再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、前記水素の製造において削減された二酸化炭素削減量を計算し、前記二酸化炭素削減量が認証された証書の発行を認証サーバに申請する環境価値集約サーバと、
前記証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成する証書取引サーバと、
前記収入情報と前記電力量に対応する前記水素の製造量とを用いて、前記購入量に応じた前記収入の分配に必要な分配情報を前記水素取引サーバに出力する環境価値分配サーバとを備え、
前記水素取引サーバは、前記分配情報に基づいて前記請求に前記分配を反映させる、水素供給システム。
【請求項2】
前記分配情報は、前記購入量に応じた標準請求額を前記分配に基づいて減額するための販売価格データを含み、
前記水素取引サーバは、前記販売価格データに基づいて前記購入量に応じた請求額を決定する、請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
前記分配情報は、前記購入量を共通ポイントに換算するためのポイント換算データを含み、
前記水素取引サーバは、前記ポイント換算データに基づいて、前記購入量に応じた前記共通ポイントを前記消費者に与える、請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項4】
水素を消費者に供給する水素供給システムにおいて行われる方法であって、
再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって前記水素を製造するステップと、
前記水素供給システムからの購入量に応じた請求を前記消費者へ行うステップと、
前記電気分解に使用された前記再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、前記水素の製造において削減された二酸化炭素削減量を計算するステップと、
前記二酸化炭素削減量が認証された証書の発行を認証サーバに申請するステップと、
前記証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成するステップと、
前記収入情報と前記電力量に対応する前記水素の製造量とを用いて、前記購入量に応じた前記収入の分配に必要な分配情報を出力するステップと、
前記分配情報に基づいて前記請求に前記分配を反映させるステップとを含む、方法。
【請求項5】
水素を消費者に供給する水素供給システムにおいて実行される少なくとも1つのプログラムであって、
前記水素は、再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって製造され、
前記少なくとも1つのプログラムは、プロセッサに実行されることによって、
前記水素供給システムからの購入量に応じた請求を前記消費者へ行い、
前記電気分解に使用された前記再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、前記水素の製造において削減された二酸化炭素削減量を計算し、
前記二酸化炭素削減量が認証された証書の発行を認証サーバに申請し、
前記証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成し、
前記収入情報と前記電力量に対応する前記水素の製造量とを用いて、前記購入量に応じた前記収入の分配に必要な分配情報を出力し、
前記分配情報に基づいて前記請求に前記分配を反映させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素を消費者に供給する水素供給システム、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力消費における環境への貢献度を環境価値として顕在化させる構成が知られている。たとえば、特開2021-34826号公報(特許文献1)には、環境価値を伴う電力に係るトランザクションに基づいて環境コインを生成する電力取引システムが開示されている。当該環境コインは、Jクレジットまたはグリーン電力証書などと連動させて卸電力取引所の非化石価値取引市場において売買され得る。当該電力取引システムによれば、再生可能エネルギーの供給者および需要者に、環境貢献に対するインセンティブを与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力を用いて生産されるエネルギー源として、水の電気分解によって生産される水素が知られている。電力によって生産された水素は、当該電力が再生可能エネルギーに由来する場合、グリーン水素に分類され、当該電力が化石燃料に由来している場合、グレー水素に分類される。消費者がグリーン水素を使用する場合、消費者がグレー水素を使用する場合よりも二酸化炭素(CO2)削減という環境への貢献が消費者に帰属する環境価値として発生する。しかし、消費者がグリーン水素の消費毎に消費量を計測し、当該消費量に対応する環境価値を取引可能な規模まで集約することには経済合理性が乏しい場合が多い。その結果、グリーン水素の消費量に応じた環境価値が消費者に還元されることなく埋没し得る。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る水素供給システムは、水素を消費者に供給する。水素供給システムは、水素製造装置と、水素取引サーバと、環境価値集約サーバと、証書取引サーバと、環境価値分配サーバとを備える。水素製造装置は、再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって水素を製造する。水素取引サーバは、水素供給システムからの購入量に応じた請求を消費者へ行う。環境価値集約サーバは、電気分解に使用された再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、水素の製造において削減された二酸化炭素量の合計を計算し、二酸化炭素量が認証された証書の発行を認証サーバに申請する。証書取引サーバは、証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成する。環境価値分配サーバは、収入情報と電力量に対応する水素の製造量とを用いて、購入量に応じた収入の分配に必要な分配情報を水素取引サーバに出力する。水素取引サーバは、分配情報に基づいて請求に分配を反映させる。
【0007】
上記の水素供給システムにおいて、分配情報は、水素の購入量に応じた標準請求額を上記分配に基づいて減額するための販売価格データを含んでもよい。水素取引サーバは、販売価格データに基づいて上記購入量に応じた請求額を決定してもよい。
【0008】
上記の水素供給システムにおいて、分配情報は、水素の購入量を共通ポイントに換算するためのポイント換算データを含んでもよい。水素取引サーバは、ポイント換算データに基づいて、上記購入量に応じた共通ポイントを消費者に与えてもよい。
【0009】
本開示の他の局面に係る方法は、水素を消費者に供給する水素供給システムにおいて行われる。当該方法は、再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって水素を製造するステップと、水素供給システムからの購入量に応じた請求を消費者へ行うステップと、電気分解に使用された再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、水素の製造において削減された二酸化炭素量の合計を計算するステップと、二酸化炭素量が認証された証書の発行を認証サーバに申請するステップと、証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成するステップと、収入情報と電力量に対応する水素の製造量とを用いて、購入量に応じた収入の分配に必要な分配情報を出力するステップと、分配情報に基づいて請求に分配を反映させるステップとを含む。
【0010】
本開示の他の局面に係る少なくとも1つのプログラムは、水素を消費者に供給する水素供給システムにおいて実行される。水素は、再生可能エネルギー電気を用いて水を電気分解することによって製造される。少なくとも1つのプログラムは、プロセッサに実行されることによって、水素供給システムからの購入量に応じた請求を消費者へ行い、電気分解に使用された再生可能エネルギー電気の電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量を乗じることによって、水素の製造において削減された二酸化炭素量の合計を計算し、二酸化炭素量が認証された証書の発行を認証サーバに申請し、証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を生成し、収入情報と電力量に対応する水素の製造量とを用いて、購入量に応じた収入の分配に必要な分配情報を出力し、分配情報に基づいて請求に分配を反映させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、グリーン水素の購入量に応じた収入の分配に必要な分配情報に基づいて当該購入量に応じた請求に当該分配を反映させることにより、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の水素取引サーバ、環境価値集約サーバ、証書取引サーバ、および環境価値分配サーバの各々のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図1の環境価値分配サーバ、環境価値集約サーバ、および証書取引サーバの各々によってサンプリングタイム毎に行われる処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
【
図4】実施の形態2に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4の環境価値分配サーバ、環境価値集約サーバ、および証書取引サーバの各々によってサンプリングタイム毎に行われる処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る水素供給システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、水素供給システム100は、水素製造装置110と、電力計量装置111と、水素計量装置112と、水素取引サーバ114と、環境価値集約サーバ120と、証書取引サーバ130と、環境価値分配サーバ140とを備える。水素供給システム100は、発電事業者200から供給されるカーボンフリー電力(再生可能エネルギー電気)を用いて、水を電気分解して水素を製造して、当該水素を水素ステーション300を介して消費者に供給する。当該消費者は、たとえば、水素自動車(燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle))600のユーザである。発電事業者200は、再生可能エネルギー源(たとえば、太陽光、風力、水力、地熱、あるいはバイオマス)を用いた発電、あるいは原子力発電により、カーボンフリー電力を生成する。
【0015】
水素製造装置110は、発電事業者200から供給されるカーボンフリー電力を用いて水を電気分解して水素を製造し、当該水素を水素ステーション300に供給する。水素ステーション300は、水素供給装置310と、決済システム320とを含む。水素供給装置310は、水素ステーション300から販売された水素量に関する販売データを水素取引サーバ114に出力する。電力計量装置111は、発電事業者200から供給されるカーボンフリー電力の電力量を計量し、当該電力量を環境価値集約サーバ120に出力する。水素計量装置112は、水素製造装置110によって製造された水素の製造量(出荷量)を計量し、当該製造量を環境価値分配サーバ140に出力する。
【0016】
水素自動車600のユーザは、水素ステーション300において、水素供給装置310から水素自動車600へ水素を補給する。水素自動車600のユーザは、水素自動車600へ補給(消費)した水素量に応じた金額を決済システム320を介して水素供給システム100に支払う。水素取引サーバ114は、水素ステーション300からの補給量(購入量)に応じた請求をユーザへ行う。
【0017】
水素自動車600のユーザのようなグリーン水素の消費者(購入者)には、グレー水素の消費と比較して二酸化炭素の削減という環境価値が発生する。しかし、消費者がグリーン水素の消費毎に消費量を計測し、当該消費量に対応する環境価値を取引可能な規模まで集約することには経済合理性が乏しい場合が多い。その結果、グリーン水素の消費量に応じた環境価値が消費者に還元されることなく埋没し得る。
【0018】
水素製造装置110が、C(kWh)の電力量を使用してA(Nm3)のグリーン水素を製造した場合、グリーン水素の供給者におけるCO2削減量Dおよびグリーン水素の消費者におけるCO2削減量の合計Bは、それぞれ以下の式(1),(2)のように表される。式(1)における係数γ(kg-CO2/kWh)は、化石燃料を用いて生成された通常の電力量の単位量あたりの生成に伴って排出されるCO2量である。式(2)における係数α(kg-CO2/Nm3)は、グレー水素の単位量あたりの製造に伴い排出されるCO2量である。
【0019】
【0020】
グリーン水素の製造量Aは、電力量C、および単位電力量あたりの水素製造量を表す変換効率β(Nm3/kWh)を用いて、以下の式(3)のように表される。
【0021】
【0022】
係数αは、係数γおよび変換効率βを用いて以下の式(4)のように表される。
【0023】
【0024】
式(3),(4)を式(2)に代入することにより、以下の式(5)に示されるように、グリーン水素の消費者におけるCO2削減量の合計Bは、グリーン水素の供給者におけるCO2削減量Dに等しいことが導かれる。
【0025】
【0026】
式(5)より、グリーン水素の消費者におけるCO2削減量の合計Bは、グリーン水素の供給者におけるCO2削減量Dとして把握することができる。そこで、水素供給システム100は、消費者がグリーン水素を消費したことによって発生した環境価値をグリーン水素の供給者におけるCO2削減量として集約する。集約された環境価値は取引可能な証書として顕在化され、当該証書の取引によって得られた収益がグリーン水素の消費量に応じて消費者に分配される。水素供給システム100によれば、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元することができる。また、水素の消費者において購入する水素をグレー水素からグリーン水素へ切り替えることによって付加価値(インセンティブ)が得られるため、水素消費における脱炭素化を促すことができる。また、グリーン水素の製造および消費におけるメリットが生じることにより、水素供給事業の競争力を向上させることができる。さらに、水素の取引において二酸化炭素の削減効果を証書化して環境価値として取り扱うことが可能になり、水素供給事業者の収益力を向上させることができる。
【0027】
環境価値分配サーバ140は、水素製造装置110によって製造された水素の製造量Aが消費者によって消費された場合に発生する環境価値の証書化を環境価値集約サーバ120に指示する。
【0028】
環境価値集約サーバ120は、電力計量装置111から受けた電力量に、化石燃料を用いて生成された電力の単位量に含まれる二酸化炭素量(CO2含有量)を乗じることによって、グリーン水素の製造において削減された二酸化炭素量(CO2削減量)の合計を計算する。CO2含有量としては、たとえば、環境省が公開する一般電気のCO2含有量に関する公開情報を用いることができる。CO2含有量として、実機実験あるいはシミュレーションによって決定された値が使用されてもよい。環境価値集約サーバ120は、CO2削減量が認証された証書(CO2削減証書)の発行を認証サーバ400に申請する。当該証書の発行および取引においては、たとえばブロックチェーンを用いることができる。環境価値集約サーバ120は、認証サーバ400から受けた証書を証書取引サーバ130に引き継ぐ。
【0029】
証書取引サーバ130は、認証サーバ400から受けたCO2削減証書をCO2排出企業の証書取引サーバ500に譲渡するとともに、CO2削減証書の対価支払いを外部の証書取引サーバ500から受ける。証書取引サーバ130は、CO2削減証書を販売することによって得られた収入に関する収入情報を環境価値分配サーバ140に出力する。CO2削減証書を購入したCO2排出企業は、グリーン水素の消費者によるCO2削減量が当該CO2排出企業のCO2削減量であることをCO2削減証書を用いて証明することができる。なお、CO2削減証書の取引価格は、たとえば、予め入札等で決定されていてもよい。
【0030】
環境価値分配サーバ140は、証書取引サーバ130からの収入情報と水素計量装置112からのグリーン水素の製造量とを用いて、消費者のグリーン水素の購入量に応じた、証書取引の収入の分配に必要な分配情報を水素取引サーバ114に出力する。具体的には、環境価値分配サーバ140は、CO2削減証書の取引収入から、予め定められた利益率に応じた費用を差し引き、取引収入の残りを原資としてグリーン水素の通常の販売価格(標準請求額)を下げるために必要な販売価格データを水素取引サーバ114に出力し、当該販売価格データに基づいてグリーン水素の価格を決定するように水素取引サーバ114に指示する。水素取引サーバ114は、環境価値分配サーバ140からの販売価格データに基づいて、グリーン水素の通常の販売価格を減額することにより、グリーン水素の購入量に応じた証書取引の収入の分配を消費者への請求に反映させる。たとえば、グリーン水素の出荷量A(>0)に伴うCO2削減量を証書化し、CO2削減証書の取引によって、利益率差し引き後の収入Gが得られた場合、単位量あたりのグリーン水素の通常の販売価格は、G/Aだけ減額される。
【0031】
図2は、
図1の水素取引サーバ114、環境価値集約サーバ120、証書取引サーバ130、および環境価値分配サーバ140の各々のハードウェア構成を示す図である。以下では、
図1の水素取引サーバ114、環境価値集約サーバ120、証書取引サーバ130、および環境価値分配サーバ140の各々を単に水素供給システム100のサーバと総称する。
【0032】
図2に示されるように、水素供給システム100のサーバは、主たる構成要素として、プログラムを実行するプロセッサ101と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)102と、プロセッサ101によるプログラムの実行により生成されたデータ、または入力装置を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)103と、データを不揮発的に格納するハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)104と、通信IF(Interface)105と、操作キー106と、電源回路107と、ディスプレイ108とを含む。各構成要素は、相互にデータバス109によって接続されている。なお、通信IF105は、他の機器との間における通信を行なうためのインターフェイスである。
【0033】
水素供給システム100のサーバにおける処理は、各ハードウェアおよびプロセッサ101により実行されるプログラムPgによって実現される。このようなプログラムPgは、HDD104に予め記憶されている。ただし、プログラムPgは、その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通していてもよい。あるいは、プログラムPgは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。このようなプログラムPgは、読取装置によりその記憶媒体から読み取られて、あるいは、通信IF105等を介してダウンロードされた後、HDD104に格納される。プロセッサ101は、HDD104からプログラムPgを読み出し、プログラムPgを実行する。
【0034】
図3は、
図1の環境価値分配サーバ140、環境価値集約サーバ120、および証書取引サーバ130の各々によってサンプリングタイム毎に行われる処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
図3に示される処理は、環境価値分配サーバ140、環境価値集約サーバ120、および証書取引サーバ130の各々を統合的に制御する不図示のメインルーチンによって実行される。以下では、ステップを単にSと記載する。
【0035】
図3に示されるように、環境価値分配サーバ140は、S101において、グリーン水素の製造量Aが0より大きいか否かを判定する。グリーン水素の製造量Aが0である場合(S101においてNO)、環境価値分配サーバ140は、処理を環境価値分配サーバ140のメインルーチンに返す。グリーン水素の製造量Aが0より大きい場合(S101においてYES)、環境価値分配サーバ140は、S102において、グリーン水素の製造量Aが消費者によって消費された場合に発生する環境価値の証書化の指示を環境価値集約サーバ120に送信し、処理をS103に進める。環境価値分配サーバ140は、S103において、CO
2削減証書の収入情報を証書取引サーバ130から受信するまで待機する。
【0036】
環境価値集約サーバ120は、S201において、環境価値分配サーバ140から環境価値の証書化の指示を受信したか否かを判定する。環境価値分配サーバ140から環境価値の証書化の指示を受信していない場合(S201においてNO)、環境価値集約サーバ120は、処理を環境価値集約サーバ120のメインルーチンに返す。環境価値分配サーバ140から環境価値の証書化の指示を受信した場合(S201においてYES)、環境価値集約サーバ120は、S202において、CO2削減量を計算し、処理をS203に進める。環境価値集約サーバ120は、S203において、CO2削減量の証書化申請を認証サーバ400に送信し、処理をS204に進める。環境価値集約サーバ120は、S204において、認証サーバ400からCO2削減証書を受信するまで待機する。環境価値集約サーバ120は、認証サーバ400からのCO2削減証書の受信に応じて処理をS205に進める。環境価値集約サーバ120は、S205において、CO2削減証書を証書取引サーバ130に送信し、処理を環境価値集約サーバ120のメインルーチンに返す。
【0037】
証書取引サーバ130は、S301において、環境価値集約サーバ120からCO2削減証書を受信したか否かを判定する。環境価値集約サーバ120からCO2削減証書を受信していない場合(S301においてNO)、証書取引サーバ130は、処理を証書取引サーバ130のメインルーチンに返す。環境価値集約サーバ120からCO2削減証書を受信した場合(S301においてYES)、証書取引サーバ130は、S302において、CO2削減証書を外部の証書取引サーバ500に送信し、処理をS303に進める。証書取引サーバ130は、S303において、外部の証書取引サーバ500からCO2削減証書の対価支払いの完了通知を受信するまで待機する。証書取引サーバ130は、外部の証書取引サーバ500からCO2削減証書の対価支払いの完了通知を受信したことに応じて、処理をS304に進める。証書取引サーバ130は、S304において、CO2削減証書の売却による収入情報を環境価値分配サーバ140に送信し、処理を証書取引サーバ130のメインルーチンに返す。
【0038】
S103において待機中の環境価値分配サーバ140は、証書取引サーバ130からの収入情報の受信に応じて、処理をS104に進める。環境価値分配サーバ140は、S104において、グリーン水素の販売価格を収入情報に基づいて通常よりも割り引くために必要な販売価格データを水素取引サーバ114に送信し、処理を環境価値分配サーバ140のメインルーチンに返す。
【0039】
以上、実施の形態1に係る水素供給システム、方法、およびプログラムによれば、グリーン水素の販売価格の割引という形で、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元することができる。
【0040】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、グリーン水素の販売価格の割引という形で、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元する構成について説明した。実施の形態2においては、現金との代替性が認められる共通ポイントの付与という形で、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元する構成について説明する。
【0041】
図4は、実施の形態2に係る水素供給システム100Aの構成を示すブロック図である。水素供給システム100Aの構成は、
図1の水素取引サーバ114,環境価値分配サーバ140が水素取引サーバ114A,環境価値分配サーバ140Aにそれぞれ置き換えられているとともに、管理サーバ150が追加された構成である。これら以外の水素供給システム100Aの構成は、水素供給システム100と同様であるため、同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0042】
管理サーバ150は、水素製造装置110から水素供給装置310までの間のカーボンフリー水素の移転を追跡する。管理サーバ150によるカーボンフリー水素の移転を追跡により、カーボンフリー水素のスワップ取引等も可能になる。
【0043】
環境価値分配サーバ140Aは、CO2削減証書の取引収入から予め定められた利益率に応じた費用を差し引き、取引収入の残りを原資として、グリーン水素の購入量に応じた共通ポイントを購入者に付与するために必要なポイント換算データ(分配情報)を水素取引サーバ114Aに出力し、当該ポイント換算データに基づいて共通ポイントをグリーン水素の購入者に付与するように水素取引サーバ114Aに指示する。水素取引サーバ114Aは、環境価値分配サーバ140からのポイント換算データに基づいて、グリーン水素の購入者に購入量に応じた共通ポイントを付与することにより、グリーン水素の購入量に応じた証書取引の収入の分配を消費者への請求に反映させる。なお、消費者への請求と共通ポイントの付与とは、必ずしも同じタイミングで行われる必要はなく、消費者への請求に伴う決済が行われた後に共通ポイントが付与されてもよい。
【0044】
図5は、
図4の環境価値分配サーバ140A、環境価値集約サーバ120、および証書取引サーバ130の各々によってサンプリングタイム毎に行われる処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
図5に示されるフローチャートは、
図3に示されるS104がS104Aに置き換えられたフローチャートである。これ以外の
図5に示される処理は
図3に示される処理と同様であるため、同様の処理についての説明を繰り返さない。
【0045】
図5に示されるように、環境価値分配サーバ140A、環境価値集約サーバ120、および証書取引サーバ130の各々によって
図3と同様の処理が行われた後、環境価値分配サーバ140Aは、S104Aにおいて、グリーン水素の購入量に応じた共通ポイントを購入者に付与するために必要なポイント換算データを水素取引サーバ114Aに送信し、処理を環境価値分配サーバ140Aのメインルーチンに返す。
【0046】
以上、実施の形態2に係る水素供給システム、方法、およびプログラムによれば、現金との代替性が認められる共通ポイントの提供という形で、グリーン水素の消費に伴う環境価値を消費者に還元することができる。
【0047】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
100,100A 水素供給システム、101 プロセッサ、102 ROM、103 RAM、104 HDD、105 通信IF、106 操作キー、107 電源回路、108 ディスプレイ、109 データバス、110 水素製造装置、111 電力計量装置、112 水素計量装置、114,114A 水素取引サーバ、120 環境価値集約サーバ、130,500 証書取引サーバ、140,140A 環境価値分配サーバ、150 管理サーバ、200 発電事業者、300 水素ステーション、310 水素供給装置、320 決済システム、400 認証サーバ、600 水素自動車、Pg プログラム。