(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127620
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】便座昇降装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
A47K13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031413
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 英也
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AB07
2D037AC01
2D037BA16
(57)【要約】
【課題】使い勝手の良好な便座昇降装置を提供する。
【解決手段】使用者が着座する便座本体111を大便器100に対して昇降させる便座昇降装置であって、便座本体111が最も上昇した上昇位置を使用者に応じた任意の位置に決定する決定部(第1決定部10)と、決定部が決定した上昇位置に関する情報を記憶する記憶部30と、記憶部30が記憶した上昇位置に関する情報に基づいて上昇位置に便座本体111を上昇させる駆動部40と、駆動部40に便座本体111を上昇位置まで上昇させる操作を受け付ける操作部50と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座本体を大便器に対して昇降させる便座昇降装置であって、
前記便座本体が最も上昇した上昇位置を使用者に応じた任意の位置に決定する決定部と、
決定した前記上昇位置に関する情報を記憶する記憶部と、
前記上昇位置に関する情報に基づいて前記上昇位置に前記便座本体を上昇させる駆動部と、
前記駆動部に前記便座本体を前記上昇位置まで上昇させる操作を受け付ける操作部と、
を備えている、便座昇降装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記便座本体を使用者の所望の高さに移動させた位置を前記上昇位置として決定する請求項1に記載の便座昇降装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記上昇位置に関する情報を複数記憶する請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の便座昇降装置。
【請求項4】
前記操作部は、複数の前記上昇位置に対応した複数の異なる操作を受け付ける請求項3に記載の便座昇降装置。
【請求項5】
前記決定部は第1決定部であり、
前記便座本体が前記上昇位置に上昇する際の上昇速度を使用者に応じた任意の速度に決定する第2決定部を備えている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の便座昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便座昇降装置を開示している。この便座昇降装置は、使用者の便座からの起立動作を補助するため、用便時の位置である使用位置から、この使用位置よりも上方の最高位置まで、昇降装置によって便座を昇降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、便座が最も上昇した位置である最高位置を変更可能であるものの、予め設定された位置を選択することでのみ変更できるものである。この場合、使用者の体格によっては、最高位置の高さが補助に適した位置でない場合があり、使い勝手が十分であるとは言い難い。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、使い勝手の良好な便座昇降装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る便座昇降装置は、便座本体を大便器に対して昇降させる便座昇降装置であって、前記便座本体が最も上昇した上昇位置を使用者に応じた任意の位置に決定する決定部と、決定した前記上昇位置に関する情報を記憶する記憶部と、前記上昇位置に関する情報に基づいて前記上昇位置に前記便座本体を上昇させる駆動部と、前記駆動部に前記便座本体を前記上昇位置まで上昇させる操作を受け付ける操作部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便座昇降装置を備えた便器装置を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る便座昇降装置を備えた便器装置を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態1に係る便座昇降装置を備えた便器装置を示す側面図であり、便座が上限位置にある状態を示す。
【
図4】実施形態1に係る便座昇降装置を備えた便器装置を示す側面図であり、便座が下限位置にある状態を示す。
【
図5】実施形態1に係る便座昇降装置の電気的構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態1に係る操作部の操作面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
実施形態1に係る便座昇降装置1は、
図1から
図4に示す便器装置Tに備えられている。便器装置Tは、便座昇降装置1と、大便器100と、便座装置110と、を備えている。大便器100は、便器本体101とタンク102とを備えた一般的な洋式大便器である。大便器100は、設置面となる床面Fに固定されている。
【0009】
図1から
図4に示すように、便座装置110は、大便器100の上方に配置される。便座装置110は、便座本体111と、機能部112とを有している。便座本体111は、使用者の着座面となる座面111Aを有している。便座本体111は、機能部112を介して、大便器100に対して回転自在に設けられる。機能部112は、大便器100の後部に配置される。機能部112は、局部洗浄、便座開閉等の機能を発揮するための図示しない機能部品を内部に収納している。
【0010】
便座昇降装置1は、大便器100に対して便座本体111を相対移動させる。これによって、便座昇降装置1は、床面Fに対する便座本体111の座面111Aの高さを、設置状態にある便座昇降装置1の機械的上限及び下限の範囲で、使用者の所望の高さ位置に変更する。本実施形態の場合、便座昇降装置1は、大便器100に対し、便座本体111を含む便座装置110全体を昇降させる。
【0011】
便座昇降装置1は自動運転機能を有している。便座昇降装置1は、任意の上昇位置まで、自動運転によって便座装置110を上昇させることができる。この上昇位置は、便座昇降装置1の使用者によって任意に設定可能な任意の高さ位置である。上昇位置は、自動運転において便座装置110が自動的に上昇する場合の停止位置である。便座昇降装置1は、使用者に応じた任意の高さ位置である上昇位置まで、便座装置110を自動的に上昇させることが可能である。本実施形態の場合、便座昇降装置1は、自動運転によって便座装置110を下降させることもできる。便座昇降装置1は、設置状態にある便座昇降装置1における下限位置まで、便座装置110を自動的に下降させることが可能である。
【0012】
以下の説明において、上下、左右、前後の各方向は、便座本体111の座面111Aに正規の姿勢で着座した状態で便器装置Tを使用する使用者から見た前後、左右、上下方向である。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。X軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向をそれぞれ前方、左方、及び上方とする。
【0013】
図2に示すように、便座昇降装置1は、固定部2、相対移動部3、及び昇降機構部4を備えている。固定部2は、大便器100に対して固定的に配置される。固定部2は、大便器100における一対の取付孔100Aを利用して大便器100に固定される。一対の取付孔100Aは、大便器100に対して便座を固定的に取り付ける際に使用する孔である。
【0014】
相対移動部3は、大便器100に対して相対移動自在に配置される。相対移動部3には便座装置110が固定的に配置される。
図2に示すように、相対移動部3は一対の便座取付孔3Aを有している。便座装置110は、これら一対の便座取付孔3Aを利用して相対移動部3に固定される。一対の便座取付孔3Aは、大便器100における取付孔100Aと同等の間隔で形成されている。便座昇降装置1は、一対の便座取付孔3Aを利用して、便座装置110以外の既存の種々の便座装置を取り付けることができる。
【0015】
昇降機構部4は、固定部2と相対移動部3との間に介在する。本実施形態の場合、昇降機構部4は、大便器100の左右の側方に一対設けられている。昇降機構部4は、例えば電動シリンダ等のアクチュエータ、リンク機構等を有して構成される。便座昇降装置1は、
図3に示す上限位置と、
図4に示す下限位置との間で、便座装置110を自在に昇降させることができる。これら上限位置及び下限位置は、設置状態にある便座昇降装置1における機械的上昇端及び下降端の位置である。下限位置は、使用者が用便する際の高さ位置である。本実施形態の場合、上限位置と下限位置の間の移動距離は124mmである。便座昇降装置1は、上限位置では、下限位置における姿勢から前方に約5°、便座装置110を傾ける。
【0016】
本実施形態の場合、便座昇降装置1は、便座装置110の高さ位置を把握するための図示しない位置情報取得手段を有している。位置情報取得手段は、例えば、ポテンショメータ、光学式センサ、加速度センサ等の各種計測器、検知器等を有して構成される。
【0017】
図1から
図4に示すように、本実施形態の場合、便座昇降装置1は手摺90を備えている。手摺90は左右の相対移動部3のそれぞれに併設されている。手摺90は、大便器100に対する便座装置110の相対移動に伴って大便器100に対して相対移動する。手摺90は、大便器100の左右それぞれの側方に一対配置されている。手摺90は高さ調整ノブ91を利用して、便座本体111の座面111Aに対する手摺90の上面の高さを自在に調整することができる。手摺90は、高さ調整によって、上面の高さを便座本体111の座面111Aの高さよりも下方に位置に設定できる。
【0018】
図5に示すように、便座昇降装置1は、電気構成的には、第1決定部10、第2決定部20、記憶部30、駆動部40、操作部50、報知部60、及び制御部70を備えて構成されている。便座昇降装置1は、制御部70に対して、第1決定部10、第2決定部20、記憶部30、駆動部40、操作部50、及び報知部60がそれぞれ接続されている。便座昇降装置1は、各部の動作制御等を制御部70によって制御する構成である。制御部70は、例えばCPUとして構成されている。
【0019】
第1決定部10は上昇位置を決定する。上昇位置は、便座装置110を最も上昇させた高さ位置である。上昇位置は、便座装置110における便座本体111に着座した使用者が立ち上がったり、車いすに移乗したり等する際の所望の高さ位置として決定される。この上昇位置は、便座昇降装置1の使用者に応じ、操作部50の操作によって使用者が任意に設定することができる。上昇位置は、上述した上限位置と下限位置との間の範囲で任意に設定することができる。上昇位置は、上昇位置を決定するための特定の操作が操作部50に入力されることによって第1決定部10が決定する。本実施形態の場合、第1決定部10は、操作部50における後述する自動スイッチ53,54,55のいずれかと後述する決定スイッチ56とが同時に押圧操作された状態になることによって、その時点での便座装置110の高さ位置を上昇位置として決定する。
【0020】
第2決定部20は、便座装置110が上昇位置まで自動的に上昇する際の移動速度である上昇速度、及び下限位置まで自動的に下降する際の移動速度である下降速度を決定する。上昇速度及び下降速度は、操作部50の操作によって使用者が任意に設定することができる。上昇速度及び下降速度は、上昇速度及び下降速度を決定するための特定の操作が操作部50に入力されることによって第2決定部20が決定する。本実施形態の場合、第2決定部20は、自動運転中において、操作部50における後述する決定スイッチ56が押圧操作されることによって、その時点での昇降速度を自動運転時の昇降速度として決定する。
【0021】
記憶部30は、第1決定部10によって決定された上昇位置に関する情報、第2決定部20によって決定された昇降速度に関する情報等を記憶する。記憶部30は、第1決定部10によって決定された上昇位置に関する情報を複数記憶することができる。記憶部30は、第2決定部20によって決定された上昇速度及び下降速度に関する情報を複数記憶することができる。記憶部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成される。記憶部30には、便座昇降装置1における各部を制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0022】
駆動部40は、記憶部30に記憶された上昇位置に関する情報に基づいて便座装置110を上昇位置まで自動的に上昇させる駆動制御を実行する。駆動部40は、制御部70から出力される制御信号を受信して昇降機構部4を駆動する。駆動部40は、上昇位置までの自動運転の他、下限位置までの自動運転、使用者のマニュアル操作による上限位置と下限位置との間の任意の高さ位置に昇降させる駆動制御等を実行する。駆動部40は、上昇位置及び下降位置への自動運転の際には、使用者によって決定された任意の移動速度で便座装置110を昇降させる駆動制御を実行する。
【0023】
操作部50は、便座昇降装置1の動作、設定等に関わる各種操作の入力を受け付ける。具体的には、操作部50は、便座装置110の上昇、下降、上昇位置の決定、自動昇降の際の昇降速度の決定、上昇位置までの自動上昇、下限位置までの自動下降、非常停止等を実行するための操作の入力を受け付ける。操作部50は、押しボタンスイッチ等の押圧式スイッチ、ロータリースイッチ、タッチスイッチ等の公知の各種スイッチを有して構成され得る。
【0024】
本実施形態の場合、操作部50は、
図6に示す複数のスイッチ51,52,53,54,55,56,57を備えて構成される。複数のスイッチ51,52,53,54,55,56,57は、それぞれ押しボタンスイッチである。スイッチ51は上昇スイッチである。上昇スイッチ51は、便座装置110を任意の高さ位置に上昇させる際に使用される。便座昇降装置1は、上昇スイッチ51を単独で押圧している間だけ便座装置110を上昇させ、押圧状態を解除すると上昇を停止する。
【0025】
スイッチ52は下降スイッチである。下降スイッチ52は、便座装置110を任意の高さ位置に下降させる際に使用される。便座昇降装置1は、下降スイッチ52を単独で押圧している間だけ便座装置110を下降させ、押圧状態を解除すると下降を停止する。上昇スイッチ51及び下降スイッチ52は、便座装置110を上昇位置まで自動的に上昇させる際、及び下限位置まで自動的に下降させる際の昇降速度を変更する際にもそれぞれ使用される。
【0026】
スイッチ53,54,55は自動スイッチである。自動スイッチ53,54,55は、便座装置110を使用者に応じた任意の上昇位置に自動的に上昇させる際に使用される。自動スイッチ53,54,55は、便座装置110を下限位置に自動的に下降させる際にも使用される。自動スイッチ53,54,55は、便座装置110を使用者に応じた任意の上昇位置に自動的に上昇させる際には、上昇スイッチ51と組み合わせて使用される。自動スイッチ53,54,55は、便座装置110を下限位置に自動的に下降させる際には、下降スイッチ52と組み合わせて使用される。
【0027】
自動スイッチ53,54,55は複数設けられている。便座昇降装置1は、複数の自動スイッチ53,54,55のそれぞれに対応させた便座装置110の上昇位置、上昇速度、及び下降速度を、それぞれ複数設定することができる。
【0028】
スイッチ56は決定スイッチである。決定スイッチ56は、便座昇降装置1における使用者に応じた任意の上昇位置を決定する際に使用される。決定スイッチ56は、任意の上昇位置を決定する際には、自動スイッチ53,54,55と組み合わせて使用される。決定スイッチ56は、便座装置110を上昇位置まで自動的に上昇させる際、及び下限位置まで自動的に下降させる際の昇降速度を決定する際にもそれぞれ使用される。
【0029】
スイッチ57は非常停止スイッチである。非常停止スイッチ57は、便座装置110を自動的に昇降させている際に押圧することによって、移動中の便座装置110をその場で停止させることができる。非常停止スイッチ57は、一度押圧操作すると、解除操作を行うまで、押圧状態が保持される。
【0030】
報知部60は、自動運転中の便座昇降装置1において、上昇位置、下限位置等の停止位置に近づいた際にそのことを外部に報知する。報知部60は、例えば、スピーカー、ブザー等によって音声や電子音等を発する図示しない報知手段の駆動制御を実行する。報知部60は、例えば、自動運転中であることや、操作部50が操作を受け付けたこと等を外部に報知してもよい。
【0031】
便座昇降装置1は、操作部50に対して、上昇位置まで自動的に上昇させるための特定の操作が入力された場合、使用者に応じて決定された任意の上昇位置まで、便座装置110を自動的に上昇させる。本実施形態の場合、この特定操作とは、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかが押圧された状態において上昇スイッチ51が押圧されることである。便座装置110の自動上昇時、便座昇降装置1は、上昇位置までの自動運転中、使用者に応じて決定された速度で便座装置110を上昇させる。
【0032】
便座昇降装置1は、操作部50に対して、上昇位置を決定するための特定の操作が入力された場合、その時点での便座装置110の高さ位置を上昇位置として決定する。本実施形態の場合、この特定操作とは、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかが押圧操作された状態で決定スイッチ56が押圧されることである。便座昇降装置1は、その時点での便座装置110の高さ位置を、押圧操作したいずれかの自動スイッチ53,54,55に対応した上昇位置として決定する。決定された上昇位置に関する情報は記憶部30に記憶される。
【0033】
便座昇降装置1は、上昇位置までの自動運転中、上昇スイッチ51及び下降スイッチ52のいずれかが操作されると、上昇速度を増減させる。この状態において、便座昇降装置1は、操作部50に対し、上昇速度を決定するための特定の操作が入力されると、その上昇速度を以降の上昇位置までの自動運転時の速度として決定する。本実施形態の場合、この特定操作とは、上昇位置までの移動運転中に決定スイッチ56が押圧されることである。決定された上昇速度に関する情報は記憶部30に記憶される。
【0034】
便座昇降装置1は、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかが押圧された状態で下降スイッチ52が押圧操作されると、便座装置110を下限位置まで自動的に下降させる。この時、便座昇降装置1は、使用者に応じて決定され、各自動スイッチ53,54,55に対応して設定された任意の下降速度で、便座装置110を下降させる。
【0035】
便座昇降装置1は、下限位置までの自動運転中、上昇スイッチ51及び下降スイッチ52のいずれかが操作されると、移動速度を増減させることができる。便座昇降装置1は、下限位置までの自動運転中に下降速度が変更され、その後に決定スイッチ56が操作されることによって、その下降速度を以降の下限位置までの自動運転時の速度として決定する。決定された下降速度に関する情報は記憶部30に記憶される。但し、下限位置までの自動運転中の下降速度は、上昇位置までの自動運転中の昇時の移動速度として設定された速度よりも低い速度でのみ設定可能である。
【0036】
上記構成の便座昇降装置1の作用について、便器装置Tの使用方法と併せて説明する。便器装置Tを使用するために便座装置110に着座するにあたり、便器装置Tの使用者は、便座本体111を含む便座装置110全体を、上昇位置まで上昇させる。便座昇降装置1は、使用者に応じて任意に決定された上昇位置まで、便座装置110を自動的に上昇させることができ、使い勝手が良好である。
【0037】
便座装置110を上昇位置まで上昇させる際、使用者は、操作部50に対し、便座装置110を上昇位置まで上昇させるための特定操作を入力する。本実施形態の場合、この特定操作とは、自動スイッチ53,54,55のいずれかを押圧しつつ、上昇スイッチ51を押圧する操作である。このため、便座昇降装置1は、1つのスイッチのみを操作する場合と比較して、不意に自動運転が開始されるのを抑制できる。
【0038】
便座昇降装置1は、例えば、自動スイッチ53を押圧操作しつつ上昇スイッチ51を押圧操作すると、自動スイッチ53に対応付けて決定された上昇位置まで便座装置110が上昇する。自動スイッチ53の代わりに他の自動スイッチ54,55を押圧操作した場合、便座昇降装置1は、これら他の自動スイッチ54,55に対応付けて決定された上昇位置まで便座装置110を上昇させる。このように、便座昇降装置1は、複数の上昇位置に対応した複数の異なる操作を操作部50において受け付け、それぞれの操作に応じた上昇位置まで便座装置110を上昇させる。
【0039】
操作部50に対して便座装置110を上昇位置まで上昇させるための特定操作が入力されると、便座昇降装置1は、制御部70から駆動部40に制御信号を出力する。駆動部40は、制御部70からの制御信号を受信することによって、便座装置110を上昇位置まで自動的に上昇させる駆動制御を開始する。駆動部40は、記憶部30に記憶された上昇位置に関する情報に基づいて駆動制御を実行する。駆動部40は、図示しない位置情報取得手段によって高さ位置を把握しつつ便座装置110を上昇させる。駆動部40は、便座装置110が上昇位置まで上昇すると駆動制御を終了する。これによって、便座装置110は、使用者に応じて任意に決定された上昇位置まで上昇する。
【0040】
上昇位置の決定は以下のようにして行う。便座昇降装置1の使用者は、操作部50における上昇スイッチ51及び下降スイッチ52を操作し、便座装置110を所望の高さ位置となるように調整する。便座昇降装置1は、例えば、着座状態の使用者自身が便座装置110を昇降させて高さを調整する等、実際の便座本体111の高さを使用者が確認して上昇位置を決定できる。この時、上昇スイッチ51及び下降スイッチ52は、押圧している間だけ便座装置110を昇降させ、押圧を解除すると昇降を停止する。このため、便座昇降装置1は、便座装置110の高さ位置の調整に関して使い勝手がよい。
【0041】
便座装置110を所望の高さ位置まで上昇させたら、使用者は、上昇位置を決定するための特定操作を操作部50に入力する。本実施形態の場合、上昇位置を決定するための特定操作とは、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかを押圧しつつ、決定スイッチ56を押圧する操作である。第1決定部10は、操作部50に対して上昇位置を決定するための特定操作が入力されると、便座装置110の現在の高さ位置を上昇位置に決定する。決定した上昇位置に関する情報は、記憶部30に記憶される。これによって、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかに対応した上昇位置が決定される。
【0042】
上昇位置までの自動運転の際、駆動部40は、記憶部30に記憶された上昇位置まで上昇する際の上昇速度に関する情報を参照し、この情報に基づいた速度で便座装置110を上昇させる。上昇速度は、使用者に応じて任意に決定された速度であるため、当該使用者とって快適である。
【0043】
上昇位置までの自動運転の際の上昇速度の決定は、以下のようにして行う。便座昇降装置1の使用者は、便座昇降装置1が自動運転中に、上昇スイッチ51及び下降スイッチ52を操作する。これによって、便座昇降装置1は、自動運転中の便座装置110の移動速度を増減させる。便座昇降装置1の使用者は、便座装置110の移動速度を所望の速度に調整したら、上昇速度を決定するための特定操作を操作部50に入力する。本実施形態の場合、自動運転の際の上昇速度を決定するための特定操作とは、上昇位置までの自動運転中に決定スイッチ56を押圧する操作である。第2決定部20は、操作部50に対して上昇速度を決定するための特定操作が入力されると、便座装置110の現在の移動速度を自動運転中の上昇速度に決定する。決定した上昇速度に関する情報は、記憶部30に記憶される。これによって、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかに対応した上昇速度が決定される。
【0044】
上昇位置までの自動運転の際、駆動部40は、便座装置110が上昇位置に近づくと上昇速度を低下させる。便座昇降装置1は、便座装置110が上昇位置に近づくと、そのことを報知部60によって外部に報知する。これらによって、便座昇降装置1は、上昇位置までの自動運転時の安全性の向上を図っている。
【0045】
使用者は、便座装置110が上昇位置にあることで、便座装置110が上昇位置よりも低い高さ位置にある場合と比較して、膝の曲げ量が抑えられる等、便座装置110に着座し易くなる。本実施形態に係る上昇位置は、使用者に応じて任意に決定されるため、当該使用者にとっては、便座装置110への着座が一層容易である。便座昇降装置1は、便座装置110とともに昇降する手摺90を併設しているため、使用者の便座装置110への着座、便座装置110からの起立が尚一層容易に行われる。
【0046】
便座装置110を上昇位置まで上昇させ、便座装置110に着座したら、使用者は、便座装置110を下限位置まで下降させる。便座昇降装置1は、便座装置110の下限位置までの下降を自動的に行うことができ、使い勝手が良好である。この時、便座昇降装置1は、記憶部30に記憶された下限位置まで下降する際の下降速度に関する情報を参照し、この情報に基づいた速度で便座装置110を下限位置まで下降させる。
【0047】
下限位置までの自動運転の際、駆動部40は、記憶部30に記憶された下限位置まで下降する際の速度である下降速度に関する情報を参照し、この情報に基づいた速度で便座装置110を下降させる。下降速度は、使用者に応じて任意に決定された速度であるため、当該使用者とって快適である。
【0048】
下限位置までの自動運転の際の下降速度の決定は、上昇位置までの自動運転の際の上昇速度の決定と同様、自動運転中に決定スイッチ56を押圧することによって行われる。第2決定部20は、操作部50に対して下降速度を決定するための特定操作が入力されると、便座装置110の現在の移動速度を下限位置までの自動運転中の速度に決定する。決定した下降速度に関する情報は、記憶部30に記憶される。これによって、複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかに対応した下降速度が決定される。
【0049】
本実施形態の場合、下限位置までの自動運転中の下降速度は、上昇位置までの自動運転中の上昇速度よりも低い速度でのみ設定可能としている。便座昇降装置1は、便座装置110が下限位置に近づくと、そのことを報知部60によって外部に報知する。これらによって、便座昇降装置1は、下限位置までの自動運転時の安全性の向上を図っている。
【0050】
便座装置110から離座する場合、使用者は、上述のようにして便座装置110を再び上昇位置まで上昇させる。
【0051】
以上のように、実施形態1に係る便座昇降装置1は、決定部としての第1決定部10、記憶部30、駆動部40、及び操作部50を備えている。第1決定部10は、便座本体111を最も上昇させた上昇位置を使用者に応じて任意の高さに決定する。記憶部30は、第1決定部10によって決定された上昇位置に関する情報を記憶する。駆動部40は、記憶部30に記憶された上昇位置に関する情報に基づいて、その上昇位置に便座本体111を上昇させる。操作部50は、駆動部40に便座本体111を上昇位置まで上昇させる操作を受け付ける。
【0052】
このような構成により、便座昇降装置1は、着座動作、起立動作時等の高さ位置である便座本体111の上昇位置を、使用者の体格等に応じて、使用者の所望の高さに自在に設定することができる。したがって、便座昇降装置1は、使い勝手が良好である。
【0053】
便座昇降装置1において、決定部としての第1決定部10は、便座本体111を使用者の所望する高さに移動させた位置を上昇位置として決定する。このため、便座昇降装置1は、実際の便座本体111の高さを使用者が確認した上で、その位置を上昇位置として決定でき、使い勝手が良好である。
【0054】
便座昇降装置1において、記憶部30は、上昇位置に関する情報を複数記憶する。すなわち、便座昇降装置1は、複数の異なる高さ位置をそれぞれ上昇位置として決定可能である。このため、便座昇降装置1は、例えば介護施設等、複数の異なる使用者に使用される場合等において、使用者毎に異なる上昇位置を決定することができる。便座昇降装置1は、複数の異なる高さ位置をそれぞれ上昇位置として決定可能であるため、例えば、1人の使用者について、着座動作時の上昇位置と起立動作時の上昇位置とを別々の高さ位置で設定する、といった使い方も可能である。このように、便座昇降装置1は使い勝手が良好である。
【0055】
便座昇降装置1において、操作部50は、複数の上昇位置に対応した複数の異なる操作を受け付ける。具体的には、便座昇降装置1は、複数の上昇位置に対応付けた複数の自動スイッチ53,54,55のいずれかを操作することによって、複数の上昇位置を選択することができる。このため、複数の上昇位置に対応した操作が同じ場合と比較して、所望の上昇位置を確実に選択することができる。
【0056】
便座昇降装置1は、便座本体111の昇降速度を使用者に応じた任意の速度に決定する第2決定部20を備えている。このように、便座昇降装置1は、使用者の所望の速度で便座装置110を昇降させることができ、使い勝手が良好である。
【0057】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0058】
本開示に係る便座本体は、機能部等を有する便座装置に備えられていなくてもよい。便座本体は、例えば、単体で設けられていてもよい。便座本体は、例えば、局部洗浄機能、便座開閉機能等を有さない便座装置に備えられていてもよい。
【0059】
操作部の構成、操作部が受け付ける操作の入力形態等は上記実施形態に限定されない。本開示に係る操作部は、駆動部に便座本体を上昇位置まで上昇させる操作を受け付ける限り、構成等は特に問わない。
【0060】
記憶部が記憶する上昇位置の数は、上記実施形態に限定されない。記憶部は、1つ以上の上昇位置を記憶すればよい。
【0061】
便座昇降装置が第2決定部を備えることは必須ではない。便座昇降装置は、予め定められた速度で便座本体を上昇位置まで上昇させてもよい。
【0062】
便座昇降装置が第2決定部を備える場合、第2決定部は、上昇速度のみならず、下限位置までの自動運転の際の下降速度を決定してもよい。
【0063】
便座昇降装置は、例えば、下限位置までの自動運転の際に、便座本体が下限位置に近づくと下降速度を低下させるようにしてもよい。
【0064】
便座昇降装置が報知部を備えることは必須ではない。報知部を備える場合、報知部は、例えば、下限位置までの自動運転の際、便座本体が下限位置に近づくとそのことを外部に報知してもよい。
【0065】
本実施形態に係る使用者とは、実際に便座本体に着座する着座者のみならず、この着座者を介助する介助者も含むことを意図している。
【符号の説明】
【0066】
1…便座昇降装置、10…第1決定部、20…第2決定部、30…記憶部、40…駆動部、50…操作部、100…大便器、111…便座本体