(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127626
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】水耕栽培ユニット及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/06 20060101AFI20230907BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230907BHJP
【FI】
A01G31/06
A01G9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031420
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000157278
【氏名又は名称】丸五ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 将之
(72)【発明者】
【氏名】古城 絢史
【テーマコード(参考)】
2B314
2B327
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314PB08
2B314PB15
2B314PB18
2B314PB19
2B314PB43
2B314PB44
2B314PB49
2B314PD37
2B327ND02
2B327TA04
2B327TA08
2B327UA12
2B327UA19
(57)【要約】
【課題】
異なる箇所に植え付けられた植物の根を絡みにくくすることができる水耕栽培ユニットを提供する。
【解決手段】
複数個を上下方向に接続して使用される水耕栽培ユニット1を、上側管状部10と、上側管状部10と連通して設けられた下側管状部20と、上側管状部10と下側管状部20の境界部α付近に形成された、植物を植え付けるための植付口30とを備えるとともに、植物の根を誘導するための根誘導部δを、上側管状部10内に設けたものとし、一の水耕栽培ユニット1の植付口30に植え付けた植物の根が、当該一の水耕栽培ユニット1の下側に接続された他の水耕栽培ユニット1の上側管状部10内に侵入してきたときに、その侵入してきた根が、前記他の水耕栽培ユニット1の根誘導部δによって、前記他の水耕栽培ユニット1の植付口30に植え付けた植物の根が密集していない箇所ε
1に誘導されるようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個を上下方向に接続して使用される水耕栽培ユニットであって、
上側管状部と、
上側管状部と連通して設けられた下側管状部と、
上側管状部と下側管状部の境界部付近に形成された、植物を植え付けるための植付口と
を備え、
上側管状部の上端が、当該上側管状部の上側に配された別の水耕栽培ユニットにおける下側管状部の下側開口端に接続可能とされ、
下側管状部の下端が、当該下側管状部の下側に配されたまた別の水耕栽培ユニットにおける上側管状部の上端に接続可能とされ、
植物の根を誘導するための根誘導部が、上側管状部内に設けられ、
一の水耕栽培ユニットの植付口に植え付けた植物の根が、当該一の水耕栽培ユニットの下側に接続された他の水耕栽培ユニットの上側管状部内に侵入してきたときに、その侵入してきた根(以下、「侵入根」という。)を、前記他の水耕栽培ユニットの根誘導部によって、前記他の水耕栽培ユニットの植付口に植え付けた植物の根が密集していない箇所に誘導できるようにした
ことを特徴とする水耕栽培ユニット。
【請求項2】
上側管状部と下側管状部とが非同一軸上に配された請求項1記載の水耕栽培ユニット。
【請求項3】
上側管状部の下端側区間が、下側管状部に向かって曲がった曲がり部とされ、
根誘導部が、曲がり部の内部空間のうちの、当該曲がり部の曲げ中心から遠い側の空間とされた
請求項2記載の水耕栽培ユニット。
【請求項4】
根誘導部で誘導されてきた侵入根が、前記他の水耕栽培ユニットの植付口に植え付けられた植物の根が密集する箇所にいかないようにするための仕切り部が、設けられた請求項1~3いずれか記載の水耕栽培ユニット。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の水耕栽培ユニットを用いた植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個を上下方向に接続して使用される水耕栽培ユニットと、その水耕栽培ユニットを用いた植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を水と肥料だけで栽培する水耕栽培が知られている。一般的な水耕栽培では、植物は、トレイ状の栽培ユニットに植え付けられ、水平方向(横方向)に並んだ状態で栽培される。単位面積当たりの植付株数を増やすために、その栽培ユニットを上下多段に配置することも行われている。このように、栽培ユニットに対して植物を水平方向(横方向)に植え付けた状態で行う水耕栽培は、「横型水耕栽培」と呼ばれている。
【0003】
しかし、横型水耕栽培では、植物への水やりを効率的に行いにくい。というのも、水平方向に並んだ植物に対して、じょうろ等の手持式給水具を用いて水やりしようとすると、その手持式給水具を広い範囲で動かす必要があるからである。また、ポンプと給水管を用いて自動的に水やりをする場合でも、ポンプから遠い場所にも水が行き渡るようにするために、圧力の高いポンプを使用する必要があるからである。
【0004】
加えて、横型水耕栽培では、背丈が高くなる植物や、根が長く伸びる植物を栽培しにくい。というのも、背丈が高くなる植物を栽培しようとすると、上下に隣り合う栽培ユニットの隙間を広くして植物が成長するスペースを確保する必要があるし、根が長く伸びる植物を栽培しようとすると、栽培ユニットを上下方向に厚くしてその栽培ユニット内に根が伸びるスペースを確保する必要がある。このため、単位面積当たりの植付株数を増やしにくくなるからである。
【0005】
このような実状に鑑みてか、近年では、上下方向に延びる管状の栽培ユニットに対して植物を上下方向(縦方向)に多段に植え付けて栽培することも行われている。この栽培は、「縦型水耕栽培」と呼ばれている。縦型水耕栽培では、管状の栽培ユニットの上側に水を注ぎ入れれば、その水が重力によって自然と下側に流れ、その栽培ユニットに植え付けられた全ての植物に水やりをすることができる。このため、水やりを効率的に行うことができる。また、背丈が高くなる植物や根が長く伸びる植物も栽培しやすい。
【0006】
縦型水耕栽培に用いられる栽培ユニット(水耕栽培ユニット)としては、これまでに各種のものが提案されており、複数個を上下方向に接続して使用するタイプのものも提案されている。例えば、特許文献1の
図2及び
図3には、相互に着脱可能な複数の筒状分割体21aで構成された栽培筒21と、それぞれの筒状分割体21aに取り付けられた植付部材22とを備えた水耕栽培ユニット20が記載されている。植付部材22は、筒状を為しており、一端側に植物が植え付けられ、他端側が栽培筒21に接続される。この水耕栽培ユニット20は、吊り下げ支持機構に吊り下げられ、上側から栽培筒21内に水を流すことで、植物(苗P)に給水できるようになっている(同文献の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の水耕栽培ユニットは、それぞれの植付部材に植え付けられた植物の根が栽培筒内に集まりやすい構造になっている。このため、植付部材から植物を抜こうとしたとき(植物の植え替えや収穫を行う際)に、その植物の根に他の植物の根が絡まっていて、その植物を抜けないおそれがある。また、その植物を抜くことができたとしても、その植物の根に他の植物の根がつられて出てきてしまい、その出てきた根を栽培筒内に戻すのに手間を要するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、異なる箇所に植え付けられた植物の根を絡みにくくすることができる水耕栽培ユニットを提供するものである。また、この水耕栽培ユニットを用いた植物の栽培方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
複数個を上下方向に接続して使用される水耕栽培ユニットであって、
上側管状部と、
上側管状部と連通して設けられた下側管状部と、
上側管状部と下側管状部の境界部付近に形成された、植物を植え付けるための植付口と
を備え、
上側管状部の上端が、当該上側管状部の上側に配された別の水耕栽培ユニットにおける下側管状部の下側開口端に接続可能とされ、
下側管状部の下端が、当該下側管状部の下側に配されたまた別の水耕栽培ユニットにおける上側管状部の上端に接続可能とされ、
植物の根を誘導するための根誘導部が、上側管状部内に設けられ、
一の水耕栽培ユニットの植付口に植え付けた植物の根が、当該一の水耕栽培ユニットの下側に接続された他の水耕栽培ユニットの上側管状部内に侵入してきたときに、その侵入してきた根(以下、「侵入根」という。)を、前記他の水耕栽培ユニットの根誘導部によって、前記他の水耕栽培ユニットの植付口に植え付けた植物の根が密集していない箇所に誘導できるようにした
ことを特徴とする水耕栽培ユニット
を提供することによって解決される。
【0011】
本発明の水耕栽培ユニットは、通常、複数個を上下方向に接続して使用するところ、上側の水耕栽培ユニット(前記一の水耕栽培ユニット)に植え付けた植物(以下において、「上側の植物」と呼ぶことがある。)の根が、下側の水耕栽培ユニット(前記他の水耕栽培ユニット)の上側管状部内にまで伸びて侵入してくることがある。このとき、下側の水耕栽培ユニットの根誘導部によって、その侵入してきた根(侵入根)を、その下側の水耕栽培ユニットに植え付けた植物(以下において、「下側の植物」と呼ぶことがある。)の根が密集していない箇所に誘導することができる。このため、上側の植物の根(侵入根)と、下側の植物の根とを絡みにくくすることができる。したがって、植物を容易に抜けるだけでなく、抜いた植物の根に他の植物の根が付いて出てこないようにすることが可能である。これにより、植物の植え替えや収穫を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の水耕栽培ユニットにおいて、上側管状部と下側管状部は、同一軸上に配しても(上側管状部の中心線と下側管状部の中心線とが一直線上になるように配されても)よいが、非同一軸上に配する(上側管状部の中心線と下側管状部の中心線とが水平方向にズレた状態となるように配する)ことが好ましい。これにより、上側管状部内に侵入してきた上側の植物の根(侵入根)をより誘導しやすくなる。
【0013】
例えば、上側管状部の下端側区間を、下側管状部に向かって曲がった曲がり部とし、曲がり部の内部空間のうちの、当該曲がり部の曲げ中心から遠い側(以下において、「遠心側」と呼ぶことがある。)の空間を、根誘導部とすることができる。これにより、曲がり部の遠心側の内壁面を利用して侵入根をスムーズに誘導することが可能となる。また、侵入根を誘導するための突起や溝等を別途設ける必要がなくなる。
【0014】
本発明の水耕栽培ユニットにおいては、根誘導部で誘導されてきた上側の植物の根(侵入根)が下側の植物の根が密集する箇所にいかないようにするための仕切り部を設けることが好ましい。これにより、上側の植物の根を、下側の植物の根と一層絡みにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、異なる箇所に植え付けられた植物の根を絡みにくくすることができる水耕栽培ユニットを提供することが可能となる。また、この水耕栽培ユニットを用いた植物の栽培方法を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の水耕栽培ユニットに植物支持用キャップを取り付けた状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の水耕栽培ユニットを上下方向に接続した状態を示した斜視図である。
【
図4】本発明の水耕栽培ユニットの断面斜視図であって、(a)水耕栽培ユニットの一側を正面側から見た状態と、(b)水耕栽培ユニットの他側を背面側から見た状態とをそれぞれ示した図である。
【
図5】本発明の水耕栽培ユニットを植付口に正対して見た状態を示した図である。
【
図6】上側に配された一の水耕栽培ユニットと、その下側に配された他の水耕栽培ユニットとを接続する様子を示した斜視図である。
【
図7】一の水耕栽培ユニットと他の水耕栽培ユニットとの接続部分を示した拡大して示した断面図である。
【
図8】一の水耕栽培ユニットと他の水耕栽培ユニットとの接続態様を示した斜視図である。
【
図9】本発明の水耕栽培ユニットの変形例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の水耕栽培ユニットについて、図面を用いてより具体的に説明する。しかし、以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の水耕栽培ユニットの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の水耕栽培ユニットには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0018】
1.水耕栽培ユニットの概要
図1は、本発明の水耕栽培ユニット1の斜視図である。本発明の水耕栽培ユニット1は、
図1に示すように、上側管状部10と下側管状部20とを上下に繋いだ構造を有している。上側管状部10及び下側管状部20のそれぞれは、上下方向に貫通する中空部分を有している。上側管状部10の中空部分と、下側管状部20の中空部分とは、互いに連通した状態となっている。上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近には、植物を植え付けるための植付口30が設けられている。
【0019】
図2は、本発明の水耕栽培ユニット1に植物支持用キャップ31を取り付けた状態を示した斜視図である。本実施形態においては、
図2に示すように、植付口30に植物支持用キャップ31を取り付け、この植物支持用キャップ31に植物を植え付けるようにしている。
図2(a)の植物支持用キャップ31aは、その中心部から放射状に延びる複数本の切り込みを有している。水耕栽培を行う植物は、スポンジやロックウール等からなる培地101(後掲する
図3を参照。)に植え付けられているところ、植物支持用キャップ31aは、この培地101を上記の切り込み内に押し込むことで、その植物を支持するものとなっている。この植物支持用キャップ31aは、植え付ける植物の本数や培地の形態の自由度が高いという利点を有している。一方、
図2(b)の植物支持用キャップ31bは、その中心部付近にカップ状凹部を有している。植物支持用キャップ31bは、上記のカップ状凹部に培地101を嵌め込むことで、植物を支持するものとなっている。この植物支持用キャップ31bは、苗を安定して支持できるだけでなく、植物の植え付けや引き抜きが容易であるという利点を有している。このように、植付口30には、植物の種類等に応じた種々の植物支持用キャップ31を取り付けることが可能である。
【0020】
図3は、本発明の水耕栽培ユニット1を上下方向に接続した状態を示した斜視図である。本発明の水耕栽培ユニット1は、単体で使用することもできるが、通常は、
図3に示すように、複数個を上下方向に接続して使用される。水耕栽培ユニット1における上側管状部10の上端は、その上側に配された別の水耕栽培ユニット1における下側管状部20の下端に接続される。また、水耕栽培ユニット1における下側管状部20の下端は、その下側に配されたまた別の水耕栽培ユニット1における上側管状部10の上端に接続される。このように、複数の水耕栽培ユニット1を上下方向に接続することによって、植物100を上下方向に並べて栽培することができる。このため、単位面積当たりの植物100の植付株数を増やすことができる。また、それぞれの水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100は、その上側にある植物100等に干渉しない限りは、上方に自由に生長することができる。また、それぞれの水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根は、その水耕栽培ユニット1内だけでなく、その下側の別の水耕栽培ユニット1内にも伸びることができる。このため、背丈が高くなる植物や、根が長く伸びる植物を好適に栽培することもできる。以下においては、上下方向に接続された複数の水耕栽培ユニット1からなる列を「栽培カラム」と呼ぶことがある。栽培カラムは、1本だけでなく、複数本を施工することもできる。
【0021】
栽培カラムを構成する水耕栽培ユニット1の接続構造は、特に限定されない。しかし、水耕栽培ユニット1の接続が簡単に外れると、栽培カラムに衝撃が加えられたり振動が生じたりしたときに、栽培カラムが崩れるおそれがある。また、床面に設置スペースを確保できない場合や、床面に不陸がある場合や、床面が柔らかい場合等には、栽培カラムを床面に設置しにくい。このため、栽培カラムを上側から吊り下げることを考えなければならないが、水耕栽培ユニット1の接続が簡単に外れると、そのような吊り下げ施工を行うことも難しい。このため、本実施形態においては、
図1に示すように、上側管状部10の上端近傍に上側嵌合部β
1を設けるとともに、下側管状部10の下端近傍に下側嵌合部β
2を設けており、下側に配された水耕栽培ユニット1の上側嵌合部β
1に、上側に配される水耕栽培ユニット1の下側嵌合部β
2を嵌合することで、水耕栽培ユニット1を接続するようにしている(後掲する
図6及び
図7参照)。上側嵌合部β
1は、上側管状部10の上端近傍の周部における複数箇所に設けており、下側嵌合部β
2は、下側管状部20の下端近傍の周部における複数箇所に設けている。このような嵌合構造を採用することで、栽培カラムを構成する水耕栽培ユニット1を強固に接続することができる。このため、栽培カラムが崩れにくくなるだけでなく、栽培カラムを吊り下げた状態で施工することも可能となっている。
【0022】
ところで、植物100の生長には、水と肥料が必要であるところ、本発明の水耕栽培ユニット1においては、水耕栽培ユニット1の内部を水が流れるようになっている。すなわち、
図3に示すように、上下方向に接続された複数の水耕栽培ユニット1のうち、一番上側に配された水耕栽培ユニット1の上側管状部10の上端から水を流し込む(矢印A
11)。すると、同図における矢印A
12に示すように、水は、上側の水耕栽培ユニット1から下側の水耕栽培ユニット1に向かって流れ落ちる。これにより、同じ栽培カラムに植え付けられた複数の植物100に対して、水やりを一度で行うことができる。また、この水に肥料(液肥等)を混ぜておくと、植物100に施肥を行うこともできる。本実施形態においては、一番下側の水耕栽培ユニット1から排出された水を、ポンプ等の揚水手段(図示省略)によって汲み上げ(矢印A
13)、再度、一番上側の水耕栽培ユニット1内に流し込むようにしている。
【0023】
図4は、本発明の水耕栽培ユニット1の断面斜視図である。
図4(a)は、水耕栽培ユニット1の一側を正面側から見た状態を示しており、
図4(b)は、水耕栽培ユニット1の他側を背面側から見た状態を示している。上述したように、本実施形態では、水耕栽培ユニット1の内部に水を流下させることで、植物100(
図3を参照。以下同じ。)に水やりをするようになっているところ、
図4に示すように、水を誘導するための構造(第一水誘導部γ
1等)を、上側管状部10の内壁面に沿って設けている。このため、少量の水を上側管状部10の内壁面を伝うように流し込むと、その水が上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近(植付口30に植え付けた植物100の根の近く)に誘導される。したがって、上側管状部10内に流す水の量を少なく抑えても、同じ栽培カラムに植え付けられた複数の植物100の全てに水を行き渡らせることができる。よって、上記の揚水手段を小型化することもできる。加えて、水に肥料(液肥)を混ぜる場合には、肥料の使用量を抑えることもできる。本実施形態においては、水耕栽培ユニット1内に、上記の第一水誘導部γ
1に加えて、第二水誘導部γ
2と、第三水誘導部γ
3と、第四水誘導部γ
4も設けている。
【0024】
また、上述したように、水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根は、その水耕栽培ユニット1内だけでなく、その下側の別の水耕栽培ユニット1内にも伸びることができる。上側の水耕栽培ユニット1から伸びてきた根は、その下側の水耕栽培ユニット1の上側管状部10を通じて、下側の水耕栽培ユニット1内に侵入する。上側の水耕栽培ユニット1から下側の水耕栽培ユニット1に侵入してきた根(以下、「侵入根」と呼ぶことがある。)が、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根と絡んでしまうと、植物100を抜きにくくなる。このため、植物100の植え替えや収穫を行いにくくなる。また、植物100を抜くことができたとしても、その植物100の根に他の植物100の根がつられて出てきてしまい、その出てきた根を水耕栽培ユニット1内に戻すのに手間を要するおそれがある。このため、本発明の水耕栽培ユニット1では、上側の水耕栽培ユニット1からの侵入根を、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根が密集していない箇所ε1に誘導するための根誘導部δを、上側管状部10内に設けている。これにより、上側の水耕栽培ユニット1からの侵入根と、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根とを絡みにくくすることができる。このため、植物を容易に抜けるだけでなく、抜いた植物の根に他の植物の根が付いて出てこないようにすることが可能である。したがって、植物の植え替えや収穫を容易に行うことが可能である。
【0025】
2.水耕栽培ユニットの詳細
以下、本発明の水耕栽培ユニット1のより詳細な構成についてより詳しく説明する。
【0026】
2.1 水耕栽培ユニットの形態
上述したように、本発明の水耕栽培ユニット1は、上側管状部10と下側管状部20とが上下方向に連通した構造を有しており、上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近に植付口30が設けられている。上側管状部10や下側管状部20の水平断面形状は、特に限定されず、四角形等の多角形状としたり、楕円形状としたりしてもよいが、通常、円形とされる。水耕栽培ユニット1の寸法は、水耕栽培する植物100の種類等に応じて適宜決定される。水耕栽培ユニット1の高さ(下側管状部20の下端から上側管状部10の上端までの高さ)は、概ね10~50cmの範囲(本実施形態では約16cm)とされ、上側管状部10及び下側管状部20の上下長は、概ね5~30cmの範囲(本実施形態では、上側管状部10の上下長が約9cm、下側管状部20の上下長が約10cm)とされる。また、上側管状部10及び下側管状部20の外径(最も太い部分の外径)は、概ね3~20cmの範囲(本実施形態では6~7cm程度)とされる。
【0027】
上側管状部10と下側管状部20は、同一軸上に配し(上側管状部10の中心線の延長線上に下側管状部20の中心線が重なるように上側管状部10と下側管状部20とを配し)てもよい。しかし、この場合には、上側管状部10内に流れ込んだ水が、上側管状部10の内壁面を伝うことなく上側管状部10の中空部分を落下してきたときに、その水が、そのまま下側管状部20の中空部分も通り抜けやすくなる。最悪の場合には、一番上側の水耕栽培ユニット1から一番下側の水耕栽培ユニット1まで、上側管状部10や下側管状部20の内壁面に一度も当たることなく、水が落ちてしまう。このため、水やりがされない植物100が生ずるおそれがある。
【0028】
また、上側管状部10と下側管状部20とが同一軸上に配されていると、栽培カラムを単純な直線状(上下方向に真っ直ぐな直線状)にしか施工できなくなる。このため、例えば、水耕栽培を行う部屋の天井の下側に、梁やダクト等の障害物が存在する場合には、その障害物のある高さまでしか水耕栽培ユニット1を施工することができないなど、スペースを有効に利用しにくくなる。加えて、複数の植物100(同じ栽培カラムに植え付ける植物100)が上下方向に直線状に並んだ状態で植え付けられるようになる等、植物100の植付態様が単調になる。また、栽培カラムの見た目も単調になりやすく、栽培カラムの意匠性を高めにくい。
【0029】
このため、本実施形態においては、
図1に示すように、上側管状部10と下側管状部20とを非同一軸上に配し(上側管状部10の中心線と下側管状部20の中心線とを水平方向にずらして配し)ている。これに伴って、上側管状部10の下端側区間(上側管状部10と下側管状部20との繋ぎ部分)を、下側管状部20に向かって曲がった曲がり部11としている。これにより、水が上側管状部10の内壁面を伝うことなく上側管状部10の中空部分を落下してきた場合であっても、その水を、曲がり部11の上向き内壁面で受け止めてから、下側管状部20の内壁面に誘導することが可能になる。このため、曲がり部11よりも下流側では、所望の経路に沿って水を誘導することができるようになる。したがって、水やりがされない植物100が生じないようにすることができる。曲がり部11は、下側になるにつれて管径が小さくなるように漏斗状に形成しており、この曲がり部11で水を集めながら、その水を下側管状部20内にスムーズに誘導できるようにしている。
【0030】
加えて、上側管状部10と下側管状部20とを非同一軸上に配したことで、水耕栽培ユニット1の施工の自由度(栽培カラムの形態の自由度)を高めることができる。例えば、
図3に示すように、水耕栽培ユニット1の鉛直軸回りの向きを180°ずつ切り替えながら水耕栽培ユニット1を接続していくことで、栽培カラムをジグザグ状に形成することができる。この場合、各段の水耕栽培ユニット1の植付口30の向きは、交互に切り替わる。これに対し、水耕栽培ユニット1の鉛直軸回りの向きを揃えながら水耕栽培ユニット1を接続していくことで、栽培カラムを階段状に形成することができる。この場合、各段の水耕栽培ユニット1の植付口30の向きは、揃った状態となる。栽培カラムにおける階段状の部分の向き(鉛直軸回りの向き)は、所定段数ごとに切り替えることも可能である。
【0031】
このほか、後掲する
図8に示すように、水耕栽培ユニット1の鉛直軸回りの向きを180°よりも小さな角度で切り替える(
図8の例では90°ずつ切り替えている。)ことができるようにすれば、栽培カラムの形態をさらに複雑にすることができる。このため、梁やダクト等の障害物が存在する場合でも、その障害物を避けながら水耕栽培ユニット1を施工することが可能になる。したがって、水耕栽培を行う室内のスペースを有効に利用することができる。また、植物100の植付態様にバリエーションを持たせることもできる。さらに、栽培カラムの見た目を面白くすることもできる。
【0032】
下側管状部20に対して上側管状部10を水平方向にどの程度ずらすかは、特に限定されない。しかし、そのずれが小さいと、上述した効果が奏されにくくなる。このため、下側管状部20の中心線から上側管状部10の中心線までの水平距離は、下側管状部20の半径以上に設定することが好ましい。上記の水平距離は、下側管状部20の半径の1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。ただし、上記の水平距離を大きくしすぎると、水耕栽培ユニット1の設置面積が広くなり、単位面積当たりの植付株数を増やしにくくなる。また、水耕栽培ユニット1の重量バランスが悪くなり、水耕栽培ユニット1の設置安定性が低下する。このため、上記の水平距離は、下側管状部20の半径の3倍以下とすることが好ましい。
【0033】
2.2 植付口
既に述べたように、植付口30は、植物100の苗を植え付けるための部分となっている。この植付口30は、
図1に示すように、水耕栽培ユニット1における上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近に設けられる。本実施形態においては、上側管状部10と下側管状部20とを非同一軸上に配し、下側管状部20の真上に上側管状部10が位置しないようにしたところ、下側管状部20の上端(上側開口端)が植付口30となるようにしている。下側管状部20の上端付近は、上側管状部10が配される側とは逆側に曲げられており、植付口30が水平面に対して傾斜した状態となっている。このため、植物100の苗を、植付口30の斜め上方から植え付けることができるようになっており、植物100の植え付けや抜き取りを行いやすくなっている。植付口30の傾斜角度(水平面に対する傾斜角度)は、特に限定されないが、10~60°の範囲とすることが好ましい。本実施形態においては、植付口30の傾斜角度を約30°に設定している。植付口30に植え付けられた植物100の根が密集する部分(上記の培地)は、植付口30の中心付近に配置される。具体的には、後述する傾斜板状部50(中心角が180°よりも大きな扇形状を為す傾斜板状部50)の中心P
4(
図5を参照)に上記の培地が載せられる。
【0034】
2.3 水誘導部(第一水誘導部、第二水誘導部、第三水誘導部及び第四水誘導部)
上述したように、水耕栽培ユニット1内には、水を誘導するための水誘導部が設けられている。具体的には、
図4に示すように、第一水誘導部γ
1と、第二水誘導部γ
2と、第三水誘導部γ
3と、第四水誘導部γ
4とが設けられている。このうち、第一水誘導部γ
1は、上側管状部10の内壁面に沿って設けられている。また、第二水誘導部γ
2と第三水誘導部γ
3は、上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近乃至は下側管状部20の上部に設けられている。さらに、第四水誘導部γ
4は、下側管状部20の内壁面に沿って設けられている。これらの水誘導部γ
1,γ
2,γ
3,γ
4によって、上側管状部10の内壁面を伝うように上側管状部10内に流れ込んだ水は、
図4中の矢印A
21~A
24に示すように誘導されて、貯水部70に貯められる。貯水部70から溢れた水は、矢印A
25に示すように、下側管状部20の内壁面を伝って下側管状部20の下端から排出される。
【0035】
2.3.1 第一水誘導部
第一水誘導部γ
1は、上側管状部10内に流れ込んで上側管状部10の内壁面を伝う水を、上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近に誘導(
図4(a)における矢印A
21を参照。)するための部分となっている。この第一水誘導部γ
1は、上側管状部10の内壁面に沿って設けられる。本実施形態では、
図4に示すように、第一水誘導部γ
1を、一側第一水誘導部γ
1A(
図4(a))と他側第一水誘導部γ
1B(
図4(b))とで構成している。一側第一水誘導部γ
1Aは、上側管状部10の内壁面における、植付口30とは反対側の所定の箇所(点P
1)から一側(背面側)に下り傾斜で形成されている。一側第一水誘導部γ
1Aは、点P
1から点P
2まで設けられている。これに対し、他側第一水誘導部γ
1Bは、点P
1から他側(正面側)に下り傾斜で形成される。他側第一水誘導部γ
1Bは、点P
1から点P
3まで設けられている。このため、第一水誘導部γ
1は、逆U字状を為している(後掲する
図5を参照。)。これにより、上側管状部10の内壁面を伝う水を、一側第一水誘導部γ
1Aと他側第一水誘導部γ
1Bとに分散して誘導することができる。このため、上側管状部10内に流し込む水の量を抑えながらも、境界部α付近に誘導される水の流量を確保することができる。
【0036】
この第一水誘導部γ1は、上側管状部10の内壁面に沿って溝状に設けてもよい。しかし、この場合には、上側管状部10の内壁面を伝う水が第一水誘導部γ1にトラップされることなく第一水誘導部γ1を越えて下側に流れ落ちるおそれがある。加えて、上側管状部10の肉厚を大きくする必要も生じる。このため、本実施形態では、第一水誘導部γ1を、上側管状部10の内壁面から内方に突き出た帯板状に形成している。これにより、上側管状部10の内壁面を伝う水が第一水誘導部γ1にトラップされやすくなる。また、上側管状部10の肉厚を小さくすることもできる。
【0037】
2.3.2 第二水誘導部
第二水誘導部γ
2は、第一水誘導部γ
1によって上側管状部10と下側管状部20との境界部α付近(
図4における点P
2,P
3)まで誘導されてきた水を、植付口30に植え付けられた植物100の根の密集箇所に誘導する(
図4(a)における矢印A
22を参照。)ための部分となっている。本実施形態においては、
図4(a)に示すように、下側管状部20の上部に、傾斜板状部50を設けており、傾斜板状部50の上面における一部の領域(後掲する
図5において網掛けハッチングで示した領域)が、第二水誘導部γ
2として機能するようにしている。傾斜板状部50は、点P
2,P
3において、第一水誘導部γ
1と連続して設けられており、点P
2,P
3から遠くなる(上側管状部10から離れる)につれて低くなるように傾斜されている。傾斜板状部50の傾斜角度(水平面に対する傾斜角度)は、特に限定されないが、通常、10~60°に設定される。本実施形態においては、傾斜板状部50の傾斜角度を約30°に設定しており、植付口30に対して傾斜板状部50が略平行となるようにしている。
【0038】
図5は、本発明の水耕栽培ユニット1を植付口30に正対して見た状態を示した図である。
図5に示すように、傾斜板状部50は、蓮の葉状(中心角が180°よりも大きな扇形状)を為している。傾斜板状部50の上側周縁部は、下側管状部20の内壁面に繋がっている。傾斜板状部50の下部(下側管状部20内における上側管状部10から遠い側)には、三角状の切欠部52が設けられている。下側管状部20内における、傾斜板状部50よりも上側の空間と傾斜板状部50よりも下側の空間は、この切欠部52を通じて連通した状態となっている。既に述べたように、植物100の根の密集箇所(培地101)は、傾斜板状部50の中心P
4付近に載せられるところ、第二水誘導部γ
2によって、傾斜板状部50の中心P
4付近まで水が誘導されるようになっている。第二水誘導部γ
2の両側には、一対の集水用突起51をV字状に設けている。この集水用突起51によって、第二水誘導部51を流れる水を傾斜板状部50の中心P
4に集めることができる。
【0039】
2.3.3 第三水誘導部
第三水誘導部γ
3は、
図4に示すように、第二水誘導部γ
2に誘導されて傾斜板状部50の中心P
4付近(植物100の根の密集箇所)に流れてきた水を、下側管状部20の内壁面における所定の箇所(点P
5,P
6)まで誘導する(
図4(a)における矢印A
23を参照。)ための部分となっている。本実施形態においては、上述したように、切欠部52を有する傾斜板状部50を下側管状部20内に設けたところ、この傾斜板状部50の下縁(逆V字状を為す一対の切欠縁部)が第三水誘導部γ
3として機能するようにしている。すなわち、傾斜板状部50の中心P
4付近に達した水は、その後、傾斜板状部50の下縁P
4P
5,P
4P
6(第三水誘導部γ
3)を伝い、下側管状部20の内壁面における点P
5,P
6に達する。
【0040】
傾斜板状部50の中心P
4を通る水平線L
1に対する、傾斜板状部50の下縁P
4P
5,P
4P
6(第三水誘導部γ
3)の傾斜角度θ(
図5)は、0°よりも大きくされる。これにより、傾斜板状部50の下縁P
4P
5,P
4P
6を下り傾斜にして、第三水誘導部γ
3で水を誘導できるようになる。水の誘導しやすさを考慮すると、傾斜角度θは、10°以上とすることが好ましく、20°以上とすることがより好ましい。ただし、傾斜角度θを大きくしすぎると、切欠部52の幅が狭くなり、植物100の根が切欠部52で詰まりやすくなる。すなわち、切欠部52は、植付口30に植え付けられた植物100の根が伸びたときに、その根が下側管状部20内における傾斜板状部50よりも下側の空間に行けるように、その根を通過させる部分としても機能するところ、この切欠部52の幅が狭くなると、植物100の根が切欠部52を通過しにくくなる。このため、傾斜角度θは、60°以下とすることが好ましく、50°以下とすることがより好ましい。本実施形態において、傾斜角度θは、約30°に設定している。
【0041】
2.3.4 第四水誘導部
第四水誘導部γ
4は、下側管状部20の内壁面を伝って流れる水(主に、第三水誘導部γ
3によって下側管状部20の内壁面における点P
5,P
6まで誘導されてきた水)を、当該内壁面における、植付口30と同じ側(上側管状部10から遠い側)の点P
7に誘導する(
図4(b)における矢印A
24を参照。)ための部分となっている。この第四水誘導部γ
4は、下側管状部20の内壁面に沿って設けられている。本実施形態では、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第四水誘導部γ
4を、一側第四水誘導部γ
4Aと他側第四水誘導部γ
4Bとで構成している。一側第四水誘導部γ
4Aは、点P
5から点P
7まで下り傾斜で形成されている。また、他側第四水誘導部γ
4Bは、点P
6から点P
7まで下り傾斜で形成されている。第四水誘導部γ
4によって点P
7付近まで誘導されてきた水は、点P
7の下側に設けられた貯水部70に流れ落ち、その貯水部70に溜められる。
【0042】
2.4 貯水部
貯水部70は、水耕栽培ユニット1内を流れる水を貯留するための部分となっている。この貯水部70は、傾斜板状部50の切欠部52(
図5参照)の下側に設けられる。植付口30に植え付けられた植物100が生長して根が伸びると、その根が切欠部52を通過し、貯水部70に到達する。この程度まで生長した植物100は、より多くの水を必要とするところ、その植物100の根が貯水部70内の水につかることで、より多くの水を吸収することができる。貯水部70の構造は、特に限定されない。本実施形態では、
図4に示すように、下側管状部20の内壁面に止水板71を傾斜状態で設けることで、貯水部70を設けている。
【0043】
2.5 根誘導部
既に述べたように、根誘導部δは、上側の水耕栽培ユニット1からの侵入根を、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根が密集していない箇所ε1に誘導するためのものとなっている。この根誘導部δは、上側管状部10内に設けられる。
【0044】
根誘導部δによる侵入根の誘導先は、水耕栽培ユニット1の形態等(侵入根が侵入する上側管状部10と、植物100を植え付ける植付口30との位置関係等)によっても異なり、特に限定されない。本実施形態においては、
図4に示すように、植物100を植え付ける植付口30を、上側管状部10が配される側とは逆側に向けるとともに、その植物100の根を通過させる切欠部52(
図5参照)を、上側管状部10が配される側とは逆側に配している。このため、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根は、下側管状部20内における、切欠部52の下側の空間ε
2に密集しやすくなっている。逆に言うと、切欠部52がない側の空間ε
1(下側管状部20内における、上側管状部10に近い側の空間)は、下側の水耕栽培ユニット1に植え付けられた植物100の根が密集しにくくなっている。したがって、本実施形態においては、上側の水耕栽培ユニット1からの侵入根を、矢印A
3に示すように、下側管状部20内の空間ε
1に誘導するようにしている。
【0045】
具体的には、
図4(a)及び(b)に示すように、上側管状部10における曲がり部11の内部空間のうち、その曲がり部11の曲げ中心から遠い側の空間12(以下、「遠心側空間」と呼ぶことがある。)が、根誘導部δとして機能するようにしている。根誘導部δは、上側管状部10内において、第一水誘導部γ
1よりも下側に位置しており、傾斜板状部50よりも下側で下側管状部20内に連通している。傾斜板状部50は、下側管状部20内に到達した侵入根が、切欠部52の下側の空間ε
2(下側の水耕栽培ユニット1の植付口30に植え付けられた植物100の根が密集する箇所)に行かないようにする仕切り部としての機能も発揮する。この仕切り部(傾斜板状部50)によって、侵入根が上側から押さえ付けられて下向きに誘導される。
【0046】
2.6 水耕栽培ユニットの接続構造
既に述べたように、本実施形態においては、栽培カラムを構成する水耕栽培ユニット1を、嵌合により接続するようにしている。すなわち、
図6及び
図7に示すように、下側に配された水耕栽培ユニット1の上側嵌合部β
1と、上側に配される水耕栽培ユニット1の下側嵌合部β
2とを嵌合するようにしている。
図6は、上側に配された一の水耕栽培ユニット1と、その下側に配された他の水耕栽培ユニット1とを接続する様子を示した斜視図である。
図7は、一の水耕栽培ユニット1と他の水耕栽培ユニット1との接続部分を示した拡大して示した断面図である。これにより、栽培カラムが崩れにくくするだけでなく、栽培カラムを吊り下げた状態で施工することも可能となっている。
【0047】
上側嵌合部β
1及び下側嵌合部β
2は、互いに嵌合可能な各種形態を採用することができる。本実施形態においては、上側嵌合部β
1を凸部とし、下側嵌合部β
2を凹部としているが、これとは逆に、上側嵌合部β
1を凹部とし、下側嵌合部β
2を凸部としてもよい。また、本実施形態においては、上側嵌合部β
1を、上側管状部10の上端近傍の内周側に設けており、下側嵌合部β
2を、下側管状部20の下端近傍の外周側に設けているが、これとは逆に、上側嵌合部β
1を、上側管状部10の上端近傍の外周側に設けて、下側嵌合部β
2を、下側管状部20の下端近傍の内周側に設けてもよい。下側嵌合部β
2(凹部)は、下側管状部20の下端から上向きに延びる第一凹部β
1Aと、第一凹部β
1Aの上端から水平方向(下側管状部20の周方向)に延びる第二凹部β
1Bとで構成している。このため、下側嵌合部β
2(凹部)は、逆L字状を為している(
図1参照)。下側の水耕栽培ユニット1における上側嵌合部β
1(凸部)を、上側の水耕栽培ユニット1における下側嵌合部β
2の第一凹部β
1Aの下側から挿し込んだ後、下側の水耕栽培ユニット1に対して上側の水耕栽培ユニット1を水平回転(鉛直軸回りに回転)させることで、水耕栽培ユニット1が上下方向に接続される。上記の水平回転を行うようにしたことで、互いに接続された水耕栽培ユニット1を上下方向に引っ張っても、上側嵌合部β
1と下側嵌合部β
2との嵌合が外れない。このため、栽培カラムを上側から吊り下げる施工も可能となっている。
【0048】
上側嵌合部β1と下側嵌合部β2は、上下方向に互いに重なる配置で設けられる。上側嵌合部β1の個数と、下側嵌合部β2の個数は、異なっていてもよいが、通常、同じとされる。上側嵌合部β1及び下側嵌合部β2は、それぞれ3個以上設けることが好ましく、それぞれ4個以上設けることがより好ましい。これにより、下側の水耕栽培ユニット1と上側の水耕栽培ユニット1とをバランスよく強固に接続することができる。上側嵌合部β1及び下側嵌合部β2の個数に、特に上限はないが、水耕栽培ユニット1の成形等を考慮して、通常、それぞれ10個以下に抑えられる。
【0049】
上側嵌合部β1は、上側管状部10の中心線に対して回転対称を為すように設け、下側嵌合部β2は、下側管状部20の中心線に対して回転対称を為すように設けることが好ましい。これにより、互いに嵌合される上側嵌合部β1と下側嵌合部β2とを切り替えることで、下側の水耕栽培ユニット1に対して上側の水耕栽培ユニット1を接続する向き(鉛直軸回りの向き)を切り替えることができる。本実施形態においては、4個の上側嵌合部β1を、上側管状部10の中心線に対して90°の回転対称性を有するように配置するとともに、4個の下側嵌合部β2を、下側管状部20の中心線に対して90°の回転対称性を有するように配置している。このため、下側の水耕栽培ユニット1に対して上側の水耕栽培ユニット1を接続する向き(鉛直軸回りの向き)を90°毎に切り替えることができるようになっている。
【0050】
図8に、本実施形態の水耕栽培ユニット1の接続態様を示す。
図8(a)は、下側の水耕栽培ユニット1と上側の水耕栽培ユニット1とを同じ向きで接続した状態を示している。
図8(b)は、下側の水耕栽培ユニット1に対して、上側の水耕栽培ユニット1の向きを-90°(上側から見て反時計回りに90°)変えて接続した状態を示している。
図8(c)は、下側の水耕栽培ユニット1に対して、上側の水耕栽培ユニット1の向きを+90°(上側から見て時計回りに90°)変えて接続した状態を示している。また、下側の水耕栽培ユニット1に対して、上側の水耕栽培ユニット1の向きを+180°変えて接続していくと、
図3に示す状態となる。これらの接続態様を組み合わせることで、栽培カラムを様々な方向に曲げることができる。このように、本実施形態の水耕栽培ユニット1は、施工の自由度が高いものとなっている。
【0051】
ところで、本実施形態においては、
図7に示すように、水耕栽培ユニット1を上下方向に接続したときに、その接続部分において、上側に接続された水耕栽培ユニット1の下側管状部20が、下側に接続された水耕栽培ユニット1の上側管状部20の内側に被るようにしている。具体的には、下側管状部20の下端(下側開口端)近傍に、上側管状部10の上端(上側開口端)に挿し込み可能な外径を有する挿込部21を設けており、水耕栽培ユニット1を接続したときに、この挿込部21が上側管状部10の上側開口端の内側に挿入されるようにしている。上記の下側嵌合部β
2も、この挿込部21の外周部に設けている。これにより、矢印A
4に示すように、上側の水耕栽培ユニット1から下側の水耕栽培ユニット1に流れる水を、その接続部分から漏れにくくすることができる。
【0052】
3.水耕栽培ユニットの変形例
以上では、1個の水耕栽培ユニット1を、1本の上側管状部10と1本の下側管状部20とで構成する場合について説明したが、1個の水耕栽培ユニット1に、上側管状部10を2本以上設けてもよいし、下側管状部20を2本以上設けてもよい。
図9は、本発明の水耕栽培ユニット1の変形例を示した正面図である。この水耕栽培ユニット1には、2本の下側管状部20が設けられている。これに伴って、上側管状部10の下端側区間が二股に分かれている。上側管状部10は、2本の下側管状部20のいずれに対しても連通した状態となっている。それ以外の構成は、
図1の水耕栽培ユニット1と略同様となっている。
図1に示す水耕栽培ユニット1と組み合わせて、異なる形態の水耕栽培ユニット1(
図9に示す水耕栽培ユニット1等)を使用することで、栽培カラムを途中で分岐させたり、合流させたりといったことも可能になる。このため、栽培カラムの形態の自由度をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 水耕栽培ユニット
10 上側管状部
11 曲がり部
12 遠心側空間(根誘導部)
20 下側管状部
21 挿込部
30 植付口
31 植物支持用キャップ
50 傾斜板状部
51 集水用突起
52 切欠部
70 貯水部
71 止水板
100 植物
101 培地
α 上側管状部と下側管状部との境界部
β1 上側嵌合部
β2 下側嵌合部
β2A 第一凹部
β2B 第二凹部
γ1 第一水誘導部
γ1A 一側第一水誘導部
γ1B 他側第一水誘導部
γ2 第二水誘導部
γ3 第三水誘導部
γ4 第四水誘導部
γ4A 一側第四水誘導部
γ4B 他側第四水誘導部
δ 根誘導部
ε1 非根密集箇所
ε2 根密集箇所