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特開2023-127648コンクリート組成物および遠心力コンクリート成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127648
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】コンクリート組成物および遠心力コンクリート成形品
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20230907BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230907BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20230907BHJP
   B28B 21/30 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B18/14 A
C04B14/28
B28B21/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031458
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 公則
【テーマコード(参考)】
4G058
4G112
【Fターム(参考)】
4G058AA02
4G058AB03
4G058BA00
4G112PA10
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】安価に製造でき、二酸化炭素の排出量を低減できるコンクリート組成物および遠心力コンクリート成形品を提供する。
【解決手段】コンクリート組成物は、水と、結合材と、フィラー材と、骨材と、を含む。結合材は、ポルトランドセメントと、高炉スラグ微粉末と、を含有する。コンクリート組成物は、水結合材比が20%~35%であり、結合材を370重量部~750重量部有する。フィラー材は、軽質炭酸カルシウムであって、10重量部~100重量部有する。結合材における高炉スラグ微粉末のポルトランドセメントに対する質量での置換率が、40%~60%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、結合材と、フィラー材と、骨材と、を含み、
前記結合材は、ポルトランドセメントと、高炉スラグ微粉末と、を含有し、
水結合材比が20%~35%であり、
前記結合材を370重量部~750重量部有し、
前記フィラー材は、前記軽質炭酸カルシウムであって、10重量部~100重量部有し、
前記結合材における前記高炉スラグ微粉末の前記ポルトランドセメントに対する質量での置換率が、40%~60%である
ことを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項2】
軽質炭酸カルシウムは、廃棄物由来のものである
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のコンクリート組成物を硬化させたコンクリート部と、
このコンクリート部に埋設された補強材と、
を備えることを特徴とする遠心力コンクリート成形品。
【請求項4】
コンクリート部は、材齢7日~14日での圧縮強度が55N/mm以上である
ことを特徴とする請求項3記載の遠心力コンクリート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とを含有する結合材を含むコンクリート組成物および遠心力コンクリート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、一般的に、石灰石、粘土などの原料を高温焼成してセメントクリンカと呼ばれる組成物(中間体)を製造し、このセメントクリンカを粉砕して石膏などを加えることで製造される。セメントクリンカを製造する段階で、炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とする石灰石が焼成され、酸化カルシウム(CaO)を主成分とするセメントクリンカになる際などに二酸化炭素(CO)が排出されるため、セメントを使用するコンクリートは環境に負荷が掛かると言われる。
【0003】
このため、セメント製造に由来する二酸化炭素発生量の低減に向けて、セメントと置換して高炉スラグやフライアッシュを使用し、セメントの使用量を減らした低環境負荷のコンクリート組成物が提案されている(例えば、特許文献1ないし4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-151517号公報
【特許文献2】特開2010-285293号公報
【特許文献3】特開2014-148434号公報
【特許文献4】特開2009-269786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セメントを高炉スラグに多量に置換したコンクリート組成物、あるいはセメントを使用しないコンクリート組成物の場合、クリンカ量が減少するため初期の反応が遅延し、初期強度が低くなるため、早期材齢が求められる高強度コンクリート二次製品には適用が困難である。
【0006】
その対策として、シリカヒューム、無水石膏、二水石膏、C-S-H系などの早強剤を用いることで初期の反応を促進させることが考えられるものの、製品コストが高くなることや、中性化に対し弱くなるなどの問題がある。また、遠心力締固めコンクリート成形に用いる場合、締固めにくくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、安価に製造でき、二酸化炭素の排出量を低減できるコンクリート組成物および遠心力コンクリート成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のコンクリート組成物は、水と、結合材と、フィラー材と、骨材と、を含み、前記結合材は、ポルトランドセメントと、高炉スラグ微粉末と、を含有し、水結合材比が20%~35%であり、前記結合材を370重量部~750重量部有し、前記フィラー材は、前記軽質炭酸カルシウムであって、10重量部~100重量部有し、前記結合材における前記高炉スラグ微粉末の前記ポルトランドセメントに対する質量での置換率が、40%~60%であるものである。
【0009】
請求項2記載のコンクリート組成物は、請求項1記載のコンクリート組成物において、軽質炭酸カルシウムは、廃棄物由来のものである。
【0010】
請求項3記載の遠心力コンクリート成形品は、請求項1または2記載のコンクリート組成物を硬化させたコンクリート部と、このコンクリート部に埋設された補強材と、を備えるものである。
【0011】
請求項4記載の遠心力コンクリート成形品は、請求項3記載の遠心力コンクリート成形品において、コンクリート部は、材齢7日~14日での圧縮強度が55N/mm以上であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価に製造でき、二酸化炭素の排出量を低減できるコンクリート組成物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態の第1実施例における試験体毎の高炉スラグ微粉末置換率に対する圧縮強度を示すグラフである。
図2】(a)は同上第2実施例における試験体を示す斜視図、(b)同上試験体を示す側面図である。
図3】同上第3実施例における試験体の曲げ性能の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係る一実施の形態のコンクリート組成物は、水と、結合材と、フィラー材と、骨材と、を含む。
【0016】
結合材は、ポルトランドセメントと、高炉スラグ微粉末と、を含有する。
【0017】
ポルトランドセメントは、JIS R 5210に規定されるもので、好ましくは普通ポルトランドセメント、あるいは、早強ポルトランドセメントが用いられる。
【0018】
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるコンクリート用高炉スラグ微粉末で、好ましくは高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000のいずれかを用いる。
【0019】
フィラー材としては、軽質炭酸カルシウム粉末が用いられる。軽質炭酸カルシウム粉末は、通常石灰石から生成される。石灰石を粉砕・焼成し、水と反応させ石灰乳とし、焼成で出した二酸化炭素を石灰乳に通し軽質炭酸カルシウムの結晶を生成させて製造される。それに対し、本実施の形態で用いられる軽質炭酸カルシウムは、廃棄物由来のものである。例えば、本実施の形態の軽質炭酸カルシウムは、コンクリート製品工場や生コンプラントで派生するコンクリートスラッジあるいは洗い水を固液分離した液体に対して、工場などのボイラー排気ガス中に含まれる二酸化炭素を固定化させたものが用いられる。あるいは、軽質炭酸カルシウムは、廃海水に対して二酸化炭素を固定化させたものが用いられる。例えば、海水から水酸化マグネシウムを製造した後の廃海水に、pH調整剤としてアルカリ剤を加え、工場や発電所からの排気ガス中に含まれる二酸化炭素をカルシウム成分と反応させることで製造されたものが用いられる。好ましくは、軽質炭酸カルシウムは、比表面積2000cm/g~4000cm/gのものが用いられる。
【0020】
好ましくは、本実施の形態のコンクリート組成物は、その状態に応じて、混和材料が用いられる。混和材料としては、高強度混和材、膨張材、あるいは収縮低減剤が用いられる。混和剤は、JIS A 6204に規定されるコンクリート用化学混和剤で、例えばポリカルボン酸系高性能減水剤、または、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤が用いられる。混和剤は、例えば結合材の合計含有量に対し、0.5%~3.5%含有する。また、混和材は、例えば結合材の合計含有量に対し、質量で3%~10%含有する。
【0021】
そして、本実施の形態のコンクリート組成物は、水結合材比が20%~35%である。水結合材比が20%を下回ると、塑性粘度が大きくなって取扱性が低下し、水結合材比が35%より大きいと、塑性粘度が小さくなって遠心成形による成形性が低下する。要するに、水結合材比の上限および下限は、塑性粘度(取扱性および成形性)に基づいて設定される。
【0022】
また、結合材における高炉スラグ微粉末のポルトランドセメントに対する質量での置換率が、40%~60%である。つまり、ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末との合計含有量に占める高炉スラグ微粉末の含有量の割合が、質量の合計の40%~60%である。
【0023】
この高炉スラグ微粉末の置換率は、強度発現性がポルトランドセメントのみと同等から10N/mm程度の強度低下に留まるように設定されており、圧縮強度がポルトランドセメントのみの場合と比較して低下している場合に水セメント比を容易に調整可能な範囲の使用量となっている。すなわち、高炉スラグ微粉末の置換率が大きいほど、強度低下が増加するため、高炉スラグ微粉末の置換率の上限は、所定材齢での圧縮強度に基づいて設定される。また、高炉スラグ微粉末の置換率の下限は、後述するように、二酸化炭素排出量に基づいて設定される。
【0024】
軽質炭酸カルシウムは、高炉スラグ微粉末の使用による初期強度の低下を抑制する。つまり、石灰石微粉末を用いたコンクリートについて、石灰石微粉末がエーライト(ケイ酸三カルシウム)の水和を促進することを報告した事例があり、石灰石微粉末の主成分は炭酸カルシウムであるとされていることから、上記の軽質炭酸カルシウムを使用することでも類似した効果が得られる。
【0025】
軽質炭酸カルシウムの示方配合は、骨材置換で捉える。軽質炭酸カルシウムは、使用量が多い程、コンクリート組成物の二酸化炭素排出量を削減できるため、使用量が多い方が好ましい。
【0026】
本実施の形態のコンクリート組成物に用いられる材料の二酸化炭素排出量を表1に示す。なお、当該数値は、JIS Q 13315-4 附属書Cから抜粋したものである。また、軽質炭酸カルシウムのデータは、化学式と反応時の電気使用量とに基づいて算出したものである。
【0027】
【表1】
【0028】
また、二酸化炭素排出量の低減率に基づく各材料の配合の例を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
上記のデータに基づき、二酸化炭素排出量の低減率が、結合材をポルトランドセメントのみとした場合(例えば表2中のNo.1)を基準として所定の範囲、例えば30%~60%となるように、高炉スラグ微粉末の置換率の下限と軽質炭酸カルシウムの配合の下限とが設定される。例えば、表2中のNo.2に示されるように、軽質炭酸カルシウムの配合が10重量部のとき、高炉スラグ微粉末の置換率が40%で二酸化炭素排出量の低減率が約35%であることから、高炉スラグ微粉末の置換率が40%を下回ると、軽質炭酸カルシウムの配合に拘らず二酸化炭素排出量の低減率が30%を下回ることが予測されるため、高炉スラグ微粉末の置換率の下限を40%としている。そのため、上記の水結合材比の範囲から、本実施の形態のコンクリート組成物の結合材つまりポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末との合計含有量は、370重量部~750重量部(370kg/m~750kg/m)である。
【0031】
他方、軽質炭酸カルシウムは、骨材置換とするにあたり、骨材に対し比表面積が大きく、吸水率も高いので、使用量が多いほど練上がりにこわばりが見られるようになる。したがって、軽質炭酸カルシウムは、減水剤で調整を行える範囲の使用量とする。要するに、軽質炭酸カルシウムの配合の下限は、二酸化炭素排出量に基づいて設定され、上限は練上がりの状態に応じて設定される。
【0032】
例えば、本実施の形態において、軽質炭酸カルシウムは、10重量部~100重量部(10kg/m~100kg/m)含まれる。
【0033】
骨材は、粗骨材と、細骨材と、を含む。粗骨材は、好ましくは砕石が用いられる。また、細骨材は、好ましくは砕砂が用いられる。
【0034】
そして、本実施の形態のコンクリート組成物を用いて、遠心力コンクリート成形品が製造される。遠心力コンクリート成形品の例としては、コンクリート杭、コンクリート柱、壁体、あるいはその他の遠心成形品が挙げられる。遠心力コンクリート成形品は、コンクリート組成物を硬化させたコンクリート部と、このコンクリート部に埋設された補強材と、を有する。コンクリート部は、短期材齢(材齢7日~14日)での圧縮強度が55N/mm以上の高強度コンクリート部である。また、補強材は、鉄筋などである。
【0035】
次に、上記の遠心力コンクリート成形品の製造方法について説明する。
【0036】
本実施の形態の製造方法は、コンクリート組成物を製造する製造工程(ステップS1)と、この製造工程で製造されたコンクリート組成物を用いた遠心成形工程(ステップS2)と、この遠心成形工程後の、養生工程(ステップS3)と、を含む。
【0037】
製造工程では、市販されているポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、軽質炭酸カルシウム、および骨材を攪拌した後、練り混ぜ水および混和材料を加えて練り混ぜることで、コンクリート組成物を製造する。
【0038】
このとき、軽質炭酸カルシウムは比重がセメントより軽いため、次の遠心成形工程において遠心力締固めでスラッジが発生すると幾分か排出されてしまう。練上がり性状が硬練り(スランプ0cm~5cm)でのスラッジなしの成形では問題とはしないが、スラッジありの成形では軽質炭酸カルシウムが混入量の10%~25%排出されることを想定する必要があるので、スランプ0~5cmでの成形が望ましい。
【0039】
また、軽質炭酸カルシウムは、粉末状態またはスラリー状態で使用し、粉末の状態で1%~4%の含水状態となっているので、例えば軽質炭酸カルシウムを50kg/m使用する場合、0.5kg/m~2.0kg/mの水分を含む。そのため、練り混ぜ水量については、軽質炭酸カルシウム粉末に含まれる水分量を加味して調整する必要がある。また、軽質炭酸カルシウムをスラリーの状態で使用する場合には、含水量を把握し、例えば含水率50%の場合、軽質炭酸カルシウムを50kg/m使用するためには、軽質炭酸カルシウム入りスラリーを100kg/m使用する必要があり、その際に50kg/mの水分を含むため、練り混ぜ水量については軽質炭酸カルシウム入りスラリーに含まれる水分量を加味して調整する必要がある。
【0040】
遠心成形工程では、補強材を配置した所定の型枠に対し、製造工程で製造したコンクリート組成物を打ち、既知の遠心機を用いて遠心成形を行う。遠心成形は、例えば、初速(1G~2G)、低速(3G~5G)、中速(10G~15G)、および、高速(20G~35G)のように、型枠の回転による遠心加速度を漸増させていく。各速度の時間は、遠心力コンクリート成形品の直径および厚さに応じて適宜決定する。
【0041】
養生工程では、遠心成形工程で遠心成形した中間体を、蒸気養生槽で常圧蒸気養生する。蒸気養生は、常温での前置きが3時間~5時間、昇温20℃/時間、最高温度60℃~70℃で3時間~5時間とし、以後自然冷却する。
【0042】
このように製造された遠心力コンクリート成形品は、コンクリート部が、短期材齢(7日~14日)での圧縮強度が55N/mm以上の高強度を示す。
【0043】
このように、本実施の形態のコンクリート組成物は、結合材を370重量部~750重量部有し、結合材における高炉スラグ微粉末のポルトランドセメントに対する質量での置換率を40%~60%とし、かつ、フィラー材として軽質炭酸カルシウムを10重量部~100重量部有することで、早強剤を使用することなく硬化時の初期反応の遅延を抑制して、安価に製造できるとともに、二酸化炭素排出量を、結合材をポルトランドセメントのみで製造するコンクリート成形品に対して30%~60%低減できる。
【0044】
また、このコンクリート組成物を用いて製造した遠心力コンクリート成形品は、早期材齢を得られ、高強度コンクリート二次製品として適している。
【0045】
特に、本実施の形態の遠心力コンクリート成形品のコンクリート部は、上記の通り、蒸気養生の短期材齢(7日~14日)での圧縮強度が55N/mm以上の高強度を達成できるとともに、中性化に対しても弱くなることがない。
【実施例0046】
<第1実施例>
本実施例では、高炉スラグ微粉末の使用量と圧縮強度との関係について、ポルトランドセメントのみを用いたコンクリート組成物を遠心成形した遠心力コンクリート成形品と、ポルトランドセメントの一部を高炉スラグ微粉末に置換したコンクリート組成物を遠心成形した遠心力コンクリート成形品とで、所定材齢、例えば材齢7日の圧縮強度を比較評価した。
【0047】
コンクリート組成物については、共通する材料は同一のものを用い、ジクロスミキサまたは2軸ミキサにより練り混ぜて製造した。
【0048】
また、圧縮強度試験は、直径20cm、長さ30cm、壁厚4cmの試験体により実施した。当該試験体については、各コンクリート組成物を用い、同一の製造方法で製造した。
【0049】
図1および表3に試験結果の例を示す。
【0050】
【表3】
【0051】
図1および表3から分かるように、高炉スラグ微粉末の置換率が高いコンクリート組成物ほど圧縮強度が低下し、例えば高炉スラグ微粉末の置換率75%のコンクリート組成物を用いた遠心力コンクリート成形品はセメントのみのコンクリート組成物を用いた遠心力コンクリート成形品より約25N/mm強度低下を示した。
【0052】
よって、高炉スラグ微粉末の水硬性を発揮させるためには、セメントや石膏などのアルカリ刺激剤が必要とされるが、ポルトランドセメントだけでは刺激剤として不足であるため、高炉スラグ微粉末の置換率を60%以下に抑えることで、刺激剤を使用せず遠心力コンクリート成形品の圧縮強度の低下を10N/mmに留めることができることが示された。
【0053】
<第2実施例>
本実施例では、軽質炭酸カルシウムの使用量によるフレッシュ性状および圧縮強度について評価した。具体的に、ポルトランドセメントに対し高炉スラグ微粉末を45~50%置換し、軽質炭酸カルシウムを骨材に対し置換する量を増やした際のフレッシュ性状と圧縮強度を評価した。
【0054】
軽質炭酸カルシウムはフィラー材として扱い、使用する際、その配合は骨材置換で捉えている。試験体については、実施例1と同様の製造方法により製造した。表4に試験結果を示す。なお、二酸化炭素低減率は、試験例2-1を基準としている。
【0055】
【表4】
【0056】
軽質炭酸カルシウムの使用量が多い程、コンクリート組成物の二酸化炭素排出量が削減できるので、使用量が多い方が好ましいものの、使用量が多いほど練上がりにこわばりが見られる結果を示した。減水剤で調整を行ったものの、試験例2-5では練り混ぜが困難となったため、軽質炭酸カルシウムの使用量は100kg/m以下とすることが好ましいことが示された。また、軽質炭酸カルシウム使用量の増大により、若干だが初期強度の改善が見られる傾向も示した。
【0057】
<第3実施例>
本実施例では、圧縮強度が同程度の、高炉スラグ微粉末および軽質炭酸カルシウムを使用した遠心力コンクリート成形品と使用していない遠心力コンクリート成形品とで、乾燥収縮量、クリープ係数および中性化に影響が出るか否かを比較評価した。
【0058】
それらのコンクリート組成物の配合を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
そして、上記の各実施例と同様に、高炉スラグ微粉末と軽質炭酸カルシウム以外は同一の材料を使用し、試験体を同一の製造方法により製造した。
【0061】
まず、乾燥収縮試験方法については、JIS A 1129-3「モルタルおよびコンクリートの長さ変化測定方法」の「第3部:ダイヤルゲージ法」に準拠し、10×10×40cmの試験体を製造し、その試験体の両端にゲージプラグを埋め込み、ダイヤルゲージ測定器を用い長さ変化を各材齢(1週、2週、4週、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月)で計測することで、収縮量を計算した。測定中の試験体は、温度20±1℃、湿度60±5%の恒温恒湿室で保管した。
【0062】
また、クリープ試験方法については、JIS A 1136に準拠した直径20cm×30cmの中空円筒形遠心試験体を製造し、この試験体の表面にワイヤストレインゲージを、外周の相対する長手方向2箇所に貼り付け、シールテープで表面を封緘状態にし、遠心力コンクリート成形品に加える最大プレストレス力である10N/mmを試験体に載荷し、ひずみを各材齢で計測した。同時に無載荷状態の試験体も準備し、ひずみを各材齢(1週、2週、4週、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月)で計測した。クリープひずみは、載荷試験体のひずみより無載荷状態の試験体のひずみを差し引いた値とする。測定中の試験体は、温度20±1℃、湿度60±5%の恒温恒湿室で保管した。
【0063】
さらに、中性化試験方法については、JIS A 1136に準拠した直径20cm×30cmの中空円筒形遠心供試体を製造し、この供試体を軸方向に切断して、図2(a)および図2(b)に示すようなアーチ形の試験体1として、切断面2にエポキシ樹脂でコーティング3を施した。この試験体1を、各試験例について3つずつ製造し、それぞれにたいして促進中性化試験を実施した。この促進中性化試験は、JIS A 1153に従って行い、アーチ形の試験体1を所定の促進期間(1週、4週、8週、13週、26週)に達した時点で、割裂または切断し、JIS A 1152に従って測定した。
【0064】
乾燥収縮試験の結果、クリープ試験の結果、および、中性化試験の結果について、それぞれ表6ないし表8に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
試験例No.3-1と比較して、試験例No.3-2は、乾燥収縮について、材齢6カ月までの長さ変化率は、ほぼ同等であった。また、クリープ係数は、やや大きいものの、材齢4週以降は収斂していく傾向が見られたので、プレストレスト用コンクリートとして特に問題は見られない。さらに、中性化については、外周面には変化が見られないものの、内面には中性化が進む結果となった。しかしながら、高耐久性指針(案)による耐久性の目安としては、材齢26週の中性化深さが25mm以下と規定されていることから、コンクリートとして問題はない。
【0069】
したがって、乾燥収縮、クリープ、および、中性化に対し、本実施の形態のコンクリート組成物からなる遠心力コンクリート成形品が十分な性能を備えることが示された。
【0070】
<第4実施例>
第3実施例の試験例No.3-2の条件で、直径60cmのPHC杭(B種)を試験体として製造し、それに対して曲げ性能について評価した。図3に試験結果の例を示す。
【0071】
遠心力成形時にコンクリートスラッジは発生せず、成形品内面にひび割れはない成形で製造が可能であった。JIS A 5373 附属書E「(規定)くい類」に従い、曲げ性能試験の結果、初ひび割れ発生モーメントは設計値Mcfの1.29倍、破壊モーメントは設計値Mの1.19倍であり、試験体がPHC杭(B種)としての性能を備えることが示された。
【0072】
よって、以上の第1実施例ないし第4実施例により、遠心力コンクリート成形品が要求される性能を十分に備えるために、本実施の形態のコンクリート組成物の各条件が適していることが示された。
図1
図2
図3