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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127654
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】循環式パレット搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20230907BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20230907BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B23Q7/00 H
B65G54/02
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031466
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】若松 直之
(72)【発明者】
【氏名】道平 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 健二
(72)【発明者】
【氏名】横田 輝久
【テーマコード(参考)】
3C033
3F021
5H641
【Fターム(参考)】
3C033AA02
3C033AA03
3C033AA07
3C033AA10
3C033AA23
3C033AA30
3F021AA05
3F021BA02
3F021CA06
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG26
5H641HH03
5H641JA09
(57)【要約】
【課題】パレットの間隔を容易に変更し得る比較的安価な循環式パレット搬送装置を得る。
【解決手段】循環式パレット搬送装置は、鉛直方向に離間して互いに平行に設けられた上下のガイドレール21,31と、パレット15を上下のガイドレール21,31に沿って搬送させる上下のパレット送り手段40,50と、パレット15を昇降させて上又は下のガイドレールから下又は上のガイドレールに移動させるパレット昇降手段60とを備える。上のパレット送り手段が、上のガイドレール21に沿って連続的に設けられた固定子41と、固定子41に対向するようにパレット15に設けられた可動子42とを有するリニアモータ40であって、下のパレット送り手段50が、下のガイドレール31に沿って設けられパレット15が係止可能に構成された移動体51を含む。移動体であるベルト51が下のガイドレール31の両側から突出して設けられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に離間して互いに平行に設けられパレット(15)を移動可能に搭載する上下のガイドレール(21,31)と、前記パレット(15)を前記上下のガイドレール(21,31)に沿って搬送させる上下のパレット送り手段(40,50)と、前記上下のガイドレール(21,31)の両端にそれぞれ設けられ前記パレット(15)を昇降させて上又は下のガイドレール(21又は31)から下又は上のガイドレール(31又は21)に前記パレット(15)を移動させるパレット昇降手段(60)とを備えた循環式パレット搬送装置において、
上のパレット送り手段が、前記上のガイドレール(21)に沿って連続的に設けられた固定子(41)と、前記固定子(41)に対向するように前記パレット(15)に設けられた可動子(42)とを有するリニアモータ(40)であって、
下のパレット送り手段(50)が、下のガイドレール(31)に沿って設けられ前記パレット(15)が係止可能に構成された移動体(51)を含む
ことを特徴とする循環式パレット搬送装置。
【請求項2】
移動体が下のガイドレール(31)に沿って無端で循環可能に設けられたベルト(51)であり、
パレット昇降手段(60)により下降したパレット(15)に係合する様に前記ベルト(51)が前記下のガイドレール(31)の両側から突出して設けられた請求項1記載の循環式パレット搬送装置。
【請求項3】
幅方向に延びる凹凸(51a,51b)がベルト(51)に長手方向に交互に連続して形成され、
下のガイドレール(31)に搭載された状態で前記凹凸(51a,51b)に係合可能な被凹凸(14a,14b)がパレット(15)に形成された請求項2記載の循環式パレット搬送装置。
【請求項4】
パレット昇降手段(60)が、
パレット(15)を移動可能に搭載する短レール(61)と、
前記短レール(61)を上のガイドレール(21)に連通する上昇位置と下のガイドレール(31)に連通する下降位置との間で昇降させる昇降手段(63)と、
前記短レール(61)に沿って設けられ前記パレット(15)に設けられた可動子(42)と共にリニアモータを構成して前記短レール(61)に搭載された前記パレット(15)を移動又は停止させる固定子(71)と
を備えた請求項1ないし3いずれか1項に記載の循環式パレット搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが搭載可能なパレットを循環させるように搬送する循環式パレット搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製造ラインにおいて、加工の対象であるワークをパレットに搭載し、そのパレットをワークとともに搬送するパレット搬送装置が知られている。このパレット搬送装置では、搬送先の加工ステーションにおける工作機がパレットに搭載されたワークに対して所定の加工を行うようになっており、本出願人は加工ステーションに対してワークを載せる複数のパレットを四角形の軌道で循環するように搬送するパレット搬送装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このパレット搬送装置では、パレットを移動可能に搭載するレールに沿ってベルトを設け、このベルトに係合可能にパレットを形成し、そのベルトを循環させることによりそのベルトに係合したパレットをレールに沿って搬送させる構造をなす。
【0004】
また、このようなベルトを用いることなくレールに搭載されたパレットを、そのレールに沿って搬送するパレット搬送装置としては、リニアモータを用いたリニアコンベアが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このリニアコンベアにあっては、パレットの移動をリニアモータにより行うことにより、複数のパレットをレールに搭載された状態で速やかに搬送させることが期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-93032号公報
【特許文献2】特開2015-49109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パレットをベルトに係合する構造のパレット搬送装置は、循環するベルトの任意の位置にパレットを係合させるので、レールに複数のパレットを搭載すると、それら複数のパレットの全てが単一のベルトに係合するので、それら複数のパレットの間隔をレールに搭載された状態で変更することは困難であるという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0007】
一方、リニアモータを用いたリニアコンベアにあっては、パレットの移動をリニアモータにより行うことにより、複数のパレットの間隔をレールに搭載された状態で容易に変更することが期待できる。けれども、リニアモータは、複数の電機子コイルを備える固定子と、その固定子に対向する様にパレットに設けられた磁極を有する可動子を備えており、その構造の複雑さから比較的高価なものとして知られている。
【0008】
従って、パレットを往動させた後に復動させて循環させる循環式パレット搬送装置において、パレットの往復動の全てにおいてリニアモータを用いると、循環式パレット搬送装置の単価が著しく押し上げられる不具合がある。
【0009】
本発明の目的は、作業側となるレールに搭載されて移動するパレットの間隔を容易に変更し得る比較的安価な循環式パレット搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鉛直方向に離間して互いに平行に設けられパレットを移動可能に搭載する上下のガイドレールと、パレットを上下のガイドレールに沿って搬送させる上下のパレット送り手段と、上下のガイドレールの両端にそれぞれ設けられパレットを昇降させて上又は下のガイドレールから下又は上のガイドレールにパレットを移動させるパレット昇降手段とを備えた循環式パレット搬送装置の改良である。
【0011】
その特徴ある構成は、上のパレット送り手段が、上のガイドレールに沿って連続的に設けられた固定子と、固定子に対向するようにパレットに設けられた可動子とを有するリニアモータであって、下のパレット送り手段が下のガイドレールに沿って設けられパレットが係止可能に構成された移動体を含むところにある。
【0012】
移動体が下のガイドレールに沿って無端で循環可能に設けられたベルトである場合、パレット昇降手段により下降したパレットに係合する様にベルトが下のガイドレールの両側から突出して設けられることが好ましく、幅方向に延びる凹凸がベルトに長手方向に交互に連続して形成されていれば、下のガイドレールに搭載された状態で凹凸に係合可能な被凹凸がパレットに形成されることが好ましい。
【0013】
一方、パレット昇降手段は、パレットを移動可能に搭載する短レールと、短レールを上のガイドレールに連通する上昇位置と下のガイドレールに連通する下降位置との間で昇降させる昇降手段と、短レールに沿って設けられパレットに設けられた可動子と共にリニアモータを構成して短レールに搭載されたパレットを移動又は停止させる固定子とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の循環式パレット搬送装置では、上のガイドレールに搭載されたパレットを移動させる上のパレット送り手段としてリニアモータを用いるので、その上のガイドレールに複数のパレットを搭載したとしても、それら複数のパレットの間隔をレールに搭載された状態で容易に変更させることが可能となる。
【0015】
一方、下のガイドレールに搭載されたパレットを移動させる下のパレット送り手段として移動体を用いたので、リニアモータより安価とさせることが出来る。
【0016】
よって、上のガイドレールを作業側とすることにより、そのレールに搭載されて移動するパレットの間隔を容易に変更し得る比較的安価な循環式パレット搬送装置を提供することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態における循環式パレット搬送装置の正面図である。
図2】その循環式パレット搬送装置の上面図である。
図3】そのパレット送り手段を示す図1のA-A線断面図である。
図4】そのパレット昇降手段を示す図1のB-B線断面図である。
図5】その上のガイドレールから短レールにパレットが移動する状態を示す図である。
図6】その短レールがパレットと共に下降する状態を示す図である。
図7】その下のガイドレールから短レールにパレットが移動する状態を示す図である。
図8】その短レールがパレットと共に上昇する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0019】
図1及び図2に、本発明における循環式パレット搬送装置10を示す。各図において、互いに直交するX,Y,Zの3軸を設定し、X軸が略水平横方向、Y軸が略水平前後方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとして、この循環式パレット搬送装置10の構成について説明する。
【0020】
この循環式パレット搬送装置10は、ワークを搭載したパレット15を一方向(X軸方向)に搬送し、その搬送経路に沿って設けられた工作機1~5(図2)の前でそのパレット15を停止させ、その状態を維持して、それらの工作機1~5によりそのパレット15に搭載されたワークを加工させ、全ての加工が終了したワークを取り外した後にパレット15のみを逆方向に搬送して元に戻し、その後にワークを搭載して再び一方向に搬送させ、その新たに搭載されたワークに対して加工を行わせるような場合に用いられるものである。
【0021】
図2では5台の工作機1~5が並んだ場合を示しているけれども、これは一例であって、工作機1~5の台数は、加工を必要とするワークにより異なり、パレット15の台数は、その工作機1~5の台数に応じて適宜に増減されるものである。
【0022】
図1に示す様に、この循環式パレット搬送装置10は、鉛直方向に離間して互いに平行に設けられパレット15を移動可能に搭載する上下のガイドレール21,31と、その上下のガイドレール21,31に沿ってパレット15を別々に搬送させる上下のパレット送り手段40,50とを備える。
【0023】
上下のガイドレール21,31はそれぞれベース22,32に設けられ、下のガイドレール31が設けられた下のベース32は基台9に台座12を介して設けられ、上のガイドレール21が設けられた上のベース22は、下のベース32を跨ぐように設けられた鳥居部材13に設けられる。
【0024】
図3に示す様に、この実施の形態における台座12は、基台9に取付けられた台板12aと、その台板12aに立設された支持板12bと、その支持板12bの上縁に連続的に設けられてその上面に下のベース32が取付けられる取付板12cとを有するものを示す。
【0025】
一方、図1に示す様に、下のベース32を跨ぐ鳥居部材13は、X軸方向に所定の間隔を開けて基台9に複数設けられ、上のガイドレール21が下のガイドレール31に平行になるように、これら複数の鳥居部材13に上のベース22が架設される。
【0026】
上のベース22及び下のベース32はそれぞれ同一構造であり、この上下のベース22,32は、例えば、アルミニウム及び/又はオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料からなるフレームである。図3に示す様に、この上下のベース22,32の上面には、Y方向に離間してX方向に延びる一対のレール台座部位22a,22b,32a,32bがそれぞれ設けられ、このレール台座部位22a,22b,32a,32bに、X方向に延びるガイドレール21,31がそれぞれ敷設されるものを示す。
【0027】
上のベース22に固定される上のガイドレール21と下のベース32に固定される下のガイドレール31は同一のものであり、いずれかのガイドレール21,31に搭載されたパレット15が他のガイドレール21,31に移動して搭載されても、そのパレット15は、この他のガイドレール21,31に搭載されて移動可能に構成されるものとする。
【0028】
また、この上下のガイドレール21,31が取付けられるレール台座部位22a,22b,32a,32bの間には、上下のベース22,32の上面から仕切り部位22c,32cがそれぞれ立設される。これらの仕切り部位22c,32cもレール台座部位22a,22b,32a,32bと同様にX方向に延設されている。
【0029】
このように上下のベース22,32を介して上下のガイドレール21,31は鉛直方向に間隔を開けて互いに平行に設けられ、この上下のガイドレール21,31に搭載されるパレット15は、ワークが上面に搭載される搭載板16と、その搭載板16が上面に取付けられたスライダフレーム17と、そのスライダフレーム17の下面に取付けられてガイドレール上を移動可能に構成された直線運動ブロック18とを有する。
【0030】
この搭載板16及びスライダフレーム17は、アルミニウム等の金属ブロックからなり、搭載板16の上面には、図示しないワークを搭載する搭載具19が更に設けられる。この搭載具19は、図示しないワークを搭載するものであり、この搭載具19の構造はパレット15に搭載して加工しようとするワークの種類や形状によって、適宜変更使用されるものである。
【0031】
一方、直線運動ブロック18は、上下のガイドレール21,31にそれぞれ対向する位置において、スライダフレーム17の下面に取付けられる。この直線運動ブロック18は上下のガイドレール21,31と対に販売される市販のものであって、上下のガイドレール21,31との相対的な移動により回転するベアリング(図示省略)を備える。
【0032】
そして、直線運動ブロック18を上又は下のガイドレール21又は31に対してX方向端部から嵌め込むと、直線運動ブロック18はその上又は下のガイドレール21又は31に係合し、これによりパレット15は上又は下のガイドレール21又は31に搭載されることになる。そして、このように搭載されたパレット15は、上下のパレット送り手段40,50により、それらのガイドレール21,31に沿ってX方向に移動するように構成される。
【0033】
図1図3に示す様に、本発明の循環式パレット搬送装置10において、上のガイドレール21に搭載されたパレット15を移動させる上のパレット送り手段はリニアモータ40からなる。このリニアモータ40は、上のベース22に搬送方向に延びて上のガイドレール21に平行に連続的に設けられた固定子41と、パレット15に設けられた可動子42とを備える。
【0034】
このリニアモータ40は市販のものであって、図1の拡大図に示す様に、その固定子41は、搬送方向に延びて設けられたホルダ41aに複数個の単位電磁石41bを連続して設けたものである。図では、ホルダ41aはアルミニウムなどの非磁性材料で構成され、このホルダ41aに、複数の単位電磁石41bがX方向に一列に配列しながら嵌入されたものを示す。
【0035】
このように、複数の単位電磁石41bがホルダ41aにX方向に一列に配列された固定子41は、上のガイドレール21と同様に端面が矩形状とされた細長い略角柱状をなし、この実施の形態では、一方の上のガイドレール21と仕切り部位22cとの間に位置して上のベース22に連続的に取付けられる場合を示す(図3)。
【0036】
このような固定子41と共にリニアモータ40を構成する可動子42は、スライダフレーム17の下面に取付けられる。可動子42は、X方向に配列された複数の永久磁石42a(図3の点線)と、これら永久磁石42aを保持するバックヨーク42bとを備えており、このバックヨーク42bは、永久磁石42aを保持すると共に磁路を形成する機能を有するものである。
【0037】
図3に示すように、このバックヨーク42bは、下方に向けて開口する門型構造をなして、固定子41は、このような門型構造を形成する可動子42に入り込む様に構成される。複数の永久磁石42aは、バックヨーク42bの一対の側板(固定子41との対向面)の各々において、N極とS極とが交互に配列され、この可動子42は、固定子41から直上に離間した状態でパレット15におけるスライダフレーム17に取付けられる。
【0038】
このような可動子42及び固定子41によりリニアモータ40が構成され、上のガイドレール21に搭載されたパレット15を任意の位置で停止可能に構成される。
【0039】
このように、本発明の循環式パレット搬送装置10は、上のパレット送り手段としてリニアモータ40を用い、任意の位置でパレット15を停止させるので、上のガイドレール21に搭載されたパレット15の位置を検出する位置検出手段46が設けられる。
【0040】
図3に示す様に、上のベース22の上面から立設された仕切り部位22cの側面には位置センサ47が取付けられ、上のガイドレール21に搭載され状態で仕切り部位22cに対向する取付片17aがスライダフレーム17の下部に下方に向けて垂設される。そして、この取付片17aには、位置センサ47に対向して、磁気スケール48が取付けられる。
【0041】
このような位置センサ47および磁気スケール48により、パレット15の位置を検出する位置検出手段46が構成され、位置センサ47は、パレット15におけるスライダフレーム17に取付けられた磁気スケール48を介して上のガイドレール21に搭載されたパレット15の位置を検出するように構成される。
【0042】
このような位置検出手段46の検出出力は図示しないコントローラの制御入力に接続され、コントローラは、入力された位置情報に基づき固定子41における単位電磁石41bへの通電を制御し、その単位電磁石41b及びスライダフレーム17に取付けられた可動子42の永久磁石の磁束の相互作用により、可動子42に磁気的な推進力を発生させる。これにより、その可動子42が取付けられたパレット15をX方向に移動させかつ任意の位置で停止させることになる。
【0043】
図1に戻って、下のガイドレール31に搭載されたパレット15を移動させる下のパレット送り手段50は、下のガイドレール31に沿って設けられた移動体を備えるものであり、この実施の形態における移動体は、下のガイドレール31に沿って無端で循環可能に設けられたベルト51である場合を示す。
【0044】
即ち、この下のパレット送り手段50は、パレット15と係合可能に構成され、下のガイドレール31に沿って設けられて循環して移動体となる環状の循環ベルト51と、下のガイドレール31を支持する台座12に設けられて、この環状の循環ベルト51が循環するように移動させる移動手段52とを備える。
【0045】
具体的に、台座12は下のガイドレール31と同一の長さに形成され、その下のガイドレール31を支持する台座12の両端から離間した基台9には支柱53がそれぞれ立設される。それらの支柱53には、鉛直方向に離間する一対の従動プーリ54がそれぞれ設けられ、循環ベルト51はこれらの四つの従動プーリ54を包囲するように掛け回される。
【0046】
支柱53は、後述するパレット昇降手段60が介装可能な間隔を開けて下のガイドレール31の端縁から離間して立設され、これにより下のガイドレール31の端縁から離間して従動プーリ54が設けられることになるので、これに掛け回されるベルト51は、その上側が下のガイドレール31に沿って延び、かつその下のガイドレール31の両側から突出して設けられることになる。そして、後述するパレット昇降手段によりパレット15が下降すると、このパレット15はその突出したベルト51に係合する様に構成される。
【0047】
一方、基台9には、この循環ベルト51を循環させる移動手段であるサーボモータ52が設けられ、その回転軸52aに駆動プーリ55が連結される。駆動プーリ55は四つの従動プーリ54と同一面上に設けられ、その駆動プーリ55の近傍には、その駆動プーリ55に循環ベルト51を掛け回すようにその循環ベルト51を転向させる一対の転向プーリ56が枢支される。
【0048】
そして図示しないコントローラからの指令によりサーボモータ52が駆動すると駆動プーリ55が回転し、その駆動プーリ55に掛け回されて下のガイドレール31に沿って設けられた循環ベルト51は四つの従動プーリ54を包囲した状態で循環するように構成される。
【0049】
循環ベルト51は、いわゆる歯付きベルト51である。この循環ベルト51は、図1の拡大図に示すように、幅方向に延びる凹凸51a,51bが長手方向に交互に連続するベルト51であって、下のガイドレール31に搭載された状態で、そのベルト51に重合する係止部材14がパレット15に設けられる。
【0050】
そして、ベルト51の凹凸51a,51bに係合可能な被凹凸14a,14bが、パレット15の搭載板16に設けられた係止部材14に形成され、この係止部材14の被凹凸14a,14bは循環ベルト51の凹凸51a,51bと係合するように構成される。
【0051】
即ち、パレット15が下のガイドレール31に搭載されると係止部材14は循環ベルト51に重合する様に構成され、係止部材14が循環ベルト51に重合すると、係止部材14に形成された被凹凸14a,14bは、循環ベルト51に形成された凹凸51a,51bに係合し、下のガイドレール31に搭載されたパレット15の循環ベルト51と独立したX軸方向の移動は禁止されるように構成される。
【0052】
これにより、移動手段であるサーボモータ52を駆動させて、パレット15が係合された循環ベルト51を循環させると、下のガイドレール31に搭載されたパレット15がその循環ベルト51とともに移動し、循環ベルト51が沿う下のガイドレール31に沿ってそのパレット15は搬送されることになる。
【0053】
ここで、図1の符号57は、従動プーリ54間の循環ベルト51が弛むことを防止して係止部材14から循環ベルト51が離間することを防止する支持材57であり、符号58は、その支持材57を台座12に取付ける取付具58を示す。
【0054】
また、この循環式パレット搬送装置10には、パレット15を昇降させて上又は下のガイドレール21又は31から下又は上のガイドレール21又は31にそのパレット15を移動させるパレット昇降手段60が、上下のガイドレール21,31の端縁をそれぞれ連結するように、上下のガイドレール21,31の両側にそれぞれ設けられる。
【0055】
即ち、パレット昇降手段60は、上のガイドレール21に搭載されたパレット15を、下のガイドレール31にまで下降移動させるもの、或いはその逆に下のガイドレール31搭載されたパレット15を上のガイドレール21にまで上昇移動させるものであって、上下のガイドレール21,31の両側にそれぞれ設けられたパレット昇降手段60は同一構造である。
【0056】
図4図6及び図8に示すように、この実施の形態におけるパレット昇降手段60は、パレット15を搭載可能に構成された短レール61と、その短レール61が搭載された短ベース62と、その短ベース62と共に短レール61を上のガイドレール21に連続する上昇位置から、下のガイドレール31に連続する下降位置の間で下降又は上昇移動させるZ軸方向伸縮アクチュエータ63とをそれぞれ備える。
【0057】
この短レール61は上下のガイドレール21,31と同一のものが用いられ、その短レール61が搭載される短ベース62は、上下のガイドレール21,31を搭載する上下のベース22,32と同一の断面形状を有するものが用いられる。そして、この短レール61及びそれが取付けられた短ベース62のX軸方向の長さW(図2)はパレット15のX軸方向の長L(図2)と同一又はそれよりも長く形成される。
【0058】
このような短レール61を移動させるZ軸方向伸縮アクチュエータ63は、短レール61が取付けられた短ベース62を基台9に対してZ軸方向に移動させるものであって、このZ軸方向伸縮アクチュエータ63は、細長い箱形ハウジング63dと、その内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ63aによって回動駆動されるボールネジ63bと、このボールネジ63bに螺合して平行移動する従動子63c等によって構成される。
【0059】
そして、Z軸方向伸縮アクチュエータ63は、サーボモータ63aが駆動してボールネジ63bが回転すると、このボールネジ63bに螺合する従動子63cがハウジング63dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0060】
この実施の形態では、短レール61が設けられた短ベース62をZ軸方向に移動可能にZ軸方向伸縮アクチュエータ63の従動子63cに取付け、このZ軸方向伸縮アクチュエータ63におけるサーボモータ63aは、これを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続され、コントローラからの指令により、Z軸方向伸縮アクチュエータ63は短レール61をZ軸方向に昇降可能に構成される。
【0061】
そして、図5及び図7に示す様に、上下のガイドレール21,31に、パレット昇降手段60における短レール61が連続していると、上のガイドレール21又は下のガイドレール31を移動するパレット15は、これらのガイドレール21,31から短レール61に移動可能となる。又は、そのように連続状態では、短レール61に搭載されたパレット15をそれらの上又は下ガイドレール21,31に移動可能に構成される。
【0062】
図4図6及び図8に示す様に、短ベース62には、短レール61に平行に固定子71が取付けられる。この固定子71は、上のガイドレール21に搭載された固定子41と同一構造のものであって、ホルダ71aに複数個の単位電磁石71bが連続して設けられる。
【0063】
即ち、この固定子71は、パレット15に設けられた可動子42(図6及び図8)とともにリニアモータ70を構成するものであり、パレット15が短レール61に搭載された状態で、図示しないコントローラが単位電磁石71bへ通電すると、その可動子42が取付けられたパレット15を短レール61に搭載された状態で維持し又はそのパレット15をX方向に移動させて上のガイドレール21又は下のガイドレール31にまで移動可能に構成される。
【0064】
また、短ベース62の上面から立設された仕切り部位62cの側面にも位置センサ47が取付けられ、パレット15が短レール61に搭載された状態で、パレット15の取付片17aに取付けられた磁気スケール48は、この位置センサ47に対向して、短レール61におけるパレット15の位置を検出するように構成される。そして、この位置センサ47の検出出力も図示しないコントローラの制御入力に接続される。
【0065】
このようなパレット昇降手段60が上下のガイドレール21,31の両端にそれぞれ設けられた本発明の循環式パレット搬送装置10は、図5に示す様に上のガイドレール21を移動したパレット15をその端縁から一方のパレット昇降手段60における短レール61に搭載して図6に示す様に下降させ、その短レール61から下のガイドレール31にパレット15を移動させ、その下のガイドレール31を逆方向移動させて戻し、図7に示す様にその端縁から他方のパレット昇降手段60における短レール61に搭載して図8に示すように上昇させることにより、そのパレット15を循環させることが可能となる。
【0066】
次に、この循環式パレット搬送装置を用いたワークの加工を説明する。
【0067】
加工の対象となる図示しないワークはパレット15に搭載され、ワークを搭載したパレット15は上のガイドレール21に搭載されて移動させる。ここで、ワークのパレット15への搭載は、上のガイドレール21に搭載されたパレット15にワークを搭載しても良く、ワークが予め搭載されたパレット15を上のガイドレール21に搭載するようにしても良い。
【0068】
なお、この実施の形態におけるパレット15には、ワークを搭載する搭載具16を備えるので、ワークはこの搭載具16を介してパレット15に搭載されるものとする。
【0069】
また、パレット15の上のガイドレール21への搭載は、パレット15の直線運動ブロック18を上のガイドレール21の側端部から搭載する。この場合、パレット昇降手段60における短レール61を下降させた状態で上のガイドレール21の端部から搭載しても良く、短レール61を上昇させて上のガイドレール21に連続させた状態であっても、その短レール61を介して上のガイドレール21にパレット15を搭載することが出来る。
【0070】
パレット15を上のガイドレール21に搭載したら、上のパレット送り手段40により、上のガイドレール21に沿ってそれらのパレット15を搬送する。この上のガイドレール21に搭載されたパレット15の搬送は、パレット15が各工作機1~5(図2)に対峙するまで行われ、パレット15が各工作機1~5に対峙した状態でコントローラはそのパレット15の移動を停止させ、パレット15に搭載されたワークをそれらの各工作機1~3において加工を施すことになる。
【0071】
ここで、上のパレット送り手段はリニアモータ40なので、パレット16を任意の位置に停止可能であり、上のガイドレール21に複数のパレット15が搭載されていたとしても、それら複数のパレット15を別々に移動させ、かつパレット15が各工作機1~5に対峙した位置で停止させることが可能となるものである。
【0072】
このように、上のパレット送り手段としてリニアモータ40を用いることにより、この上のガイドレール21に沿って設けられた各工作機1~5の間隔や加工時間が異なる様であっても、複数のパレット15の間隔を各加工機の間隔に合致させた状態で停止させることにより、複数のパレット15を各加工機に対向させることができ、加工の終了したパレット15のみを移動させることも可能となるのである。
【0073】
パレット15に搭載されたワークに対する各工作機1~5による加工が全て終了すると、そのパレット15は上のガイドレール21の下流側の端部にまで達することに成り、加工が終了したワークはパレット15から取り外されることに成る。
【0074】
そして、ワークが取り外されたパレット15は、次に、下方に位置する下のガイドレール31に移動して戻される。このパレット15の移動は、上のガイドレール21の下流側端部に設けられた一方のパレット昇降手段60により行われる。
【0075】
その具体的手順は、図5に実線矢印で示す様に、上のガイドレール21の端部に達したパレット15を、パレット昇降手段60における短レール61に搭載する。この短レール61へのパレット15の搭載にあっては、Z軸伸縮アクチュエータ63により短レール61を上昇させて、その短レール61を上のガイドレール21に連続させる。その状態で、リニアモータ40により上のガイドレール21を移動するパレット15を、この上のガイドレール21に連続する短レール61にまで移動させる。
【0076】
図6に示す様に、上のガイドレール21に連続する短レール61にパレット15が搭載された状態で、そのパレット15に設けられた可動子42は、短レール61に平行に設けられた固定子71に嵌挿され、その固定子71に図示しないコントローラから通電が成されて、パレット15に取付けられた可動子42の永久磁石の磁束の相互作用により、パレット15の移動を停止させ、短レール61にパレット15が搭載された状態を維持させる。
【0077】
その後、短レール61をそこに搭載されたパレット15とともに破線矢印で示すように下降させ、パレット15が搭載された短レール61を上方に位置する上のガイドレール21に連続する位置から、下のガイドレール31に連続する下方の位置まで移動させる。この移動はZ軸方向伸縮アクチュエータ63により行われる。
【0078】
この循環式パレット搬送装置10では、下のガイドレール31に沿って設けられたパレット昇降手段60を構成するベルト51を下のガイドレール31の両側から突出して設けているので、その短レール61が下のガイドレール31に連続すると、そのベルト51はパレット15に係合することになる。
【0079】
即ち、短レール61を下降させて、その短レール61を下のガイドレール31に連続させると、パレット15に設けられた係止部材14がベルト51に重合して、パレット15に設けられた被凹凸14a,14bは下のガイドレール31に沿って設けられた循環ベルト51の凹凸51a,51bに係合することになる(図1の拡大図)。
【0080】
このため、パレット15の被凹凸14a,14bが循環ベルト51の凹凸51a,51bに係合した後、短レール61に沿って設けられた固定子71への通電を停止してパレット15の拘束を解除し、駆動機構であるサーボモータ52を駆動させて、その循環ベルト51を循環させることにより、短レール61に搭載されたパレット15は、その短レール61から下のガイドレール31に移動し、更にその循環ベルト51を循環させることにより、パレット15を、その下のガイドレール31に沿って逆方向に搬送させることになる。
【0081】
パレット15が下のガイドレール31の始端側に戻ったら、そのパレット15はその始端側に設けられた他方のパレット昇降手段60により上昇して、上のガイドレール21の始端側に戻される。
【0082】
即ち、図7に示す様に、この他方のパレット昇降手段60のZ軸伸縮アクチュエータ63により短レール61を下降させて、その短レール61を下のガイドレール31に連続させる。この循環式パレット搬送装置10では、下のガイドレール31に沿って設けられたパレット昇降手段60を構成するベルト51を下のガイドレール31の両側から突出して設けているので、その短レール61が下のガイドレール31に連続した状態で循環ベルト51を循環させると、図7の実線矢印に示す様に、下のガイドレール31を始端側に移動するパレット15は、その下のガイドレール21からそれに連続する短レール61に移動して搭載されることになる。
【0083】
下のガイドレール31に連続する短レール61にパレット15が搭載されると、図8に示す様に、そのパレット15に設けられた可動子42は、短レール61に平行に設けられた固定子71に嵌挿されるので、その固定子71に図示しないコントローラから通電が成されて、パレット15に取付けられた可動子42の永久磁石の磁束の相互作用により、パレット15の移動を停止させて、短レール61にパレット15が搭載された状態を維持させる。
【0084】
このように、下のガイドレール31に連続する短レール61にパレット15が搭載された状態でその移動を停止させ、その状態で、この他方のパレット昇降手段60のZ軸伸縮アクチュエータ63により短レール61をパレット15と共に破線矢印で示す様に上昇させ、その短レール61を上のガイドレール21に連続させる。
【0085】
この循環式パレット搬送装置10では、下のガイドレール31に沿って設けられたパレット昇降手段60を構成するベルト51を下のガイドレール31の両側から突出して設けているので、短レール61をパレット15共に上昇させると、パレット15に設けられた係止部材14はベルト51から離間し、パレット15とベルト51の係合は解除されることになる。
【0086】
そして、上のガイドレール21に短レール61を連続させた後、短レール61に沿って設けられた固定子71及び上のガイドレール21に沿って設けられた固定子41を通電制御して、短レール61に搭載されたパレット15を、その短レール61から上のガイドレール21に移動させる。このようにして、パレット15を循環させる。
【0087】
ここで、上のガイドレール21の始端側に再び搭載されたパレット15には、図示しないワークが搭載されて、そのワークを加工するために再び下流側に向かって移動することになる。
【0088】
このように、本発明の循環式パレット搬送装置10では、上のガイドレール21に搭載されたパレット15を移動させる上のパレット送り手段としてリニアモータ40を用いるので、その上のガイドレール21に複数のパレット15を搭載したとしても、それら複数のパレット15の間隔をその上のガイドレール21に搭載された状態で容易に変更させることが可能となる。
【0089】
一方、下のガイドレール31に搭載されたパレット15をその始端側に戻す下のパレット送り手段50として移動体51を用いたので、リニアモータ40より安価とさせることが出来る。よって、上のガイドレール21に搭載されて移動するパレット15の間隔を容易に変更し得るにも係わらず、比較的安価な循環式パレット搬送装置10を提供することが可能となるのである。
【0090】
特に、この実施の形態では、短レール61に搭載されたパレット15を移動させ又はその移動を禁止させるパレット移動停止手段として、パレット15における可動子42とともにリニアモータ70を構成する固定子71を設けたので、この短レール61に搭載されたパレット15の位置も容易に変更調節することが可能となり、この短レール61に搭載されたパレット15にワークを搭載して加工させるようなことも可能となる。
【0091】
なお、上述した実施の形態では、短レール61に搭載されたパレット15を移動させ又はその移動を禁止させるパレット移動停止手段として、パレット15における可動子42とともにリニアモータ70を構成する固定子71が設けられる場合を説明した。けれども、パレット移動停止手段は、短レール61に搭載されたパレット15を移動させ又はその移動を禁止させ得る限り、リニアモータに限られない。例えば、短レール61に搭載されたパレット15を機械的に移動させ又はその移動を禁止させるようなものであっても良い。
【0092】
また、上述した実施の形態では、移動体が下のガイドレール31に沿って無端で循環可能に設けられたベルト51である場合を説明した。けれども、この移動体は係止されたパレット15を移動可能である限り、ベルト51に限るものではない。例えば、ボールネジに螺合し、そのボールネジの回転により移動する移動体にパレット15を係止させて移動させ、又はその回転を停止してパレットの移動を禁止させるようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0093】
10 循環式パレット搬送装置
14a,14b 被凹凸
15 パレット
21 上のガイドレール
31 下のガイドレール
40 リニアモータ(上のパレット送り手段)
41 固定子
42 可動子
50 下のパレット送り手段
51 ベルト(移動体)
51a,51b 凹凸
60 パレット昇降手段
61 短レール
63 昇降手段
71 固定子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8