(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127655
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】含水比測定装置、含水比測定方法及び含水比測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20230907BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230907BHJP
G01N 33/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N21/359
G01N33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031468
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512094410
【氏名又は名称】西華デジタルイメージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 隆文
(72)【発明者】
【氏名】福里 克彦
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 勉
(72)【発明者】
【氏名】町井 潤
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC09
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ03
2G059KK04
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】現場での地盤材料における含水比の測定を従来よりも簡易かつ迅速に行うことができるとともに、地盤材料における含水比の測定精度を向上させる。
【解決手段】地盤材料(試料S)に向かって近赤外光を照射するLED照明部4と、LED照明部4から照射された近赤外光のうち地盤材料から反射した反射光の近赤外波長成分を含む地盤材料の画像を撮影する近赤外線カメラ2と、近赤外線カメラ2から取得した画像を解析して地盤材料の含水比を測定する解析部7と、を備えており、解析部7は、予め記憶している地盤材料に関する含水比と吸光度との相関性を示す相関データ71bに基づいて画像を解析する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤材料に向かって近赤外光を照射するLED照明部と、
前記LED照明部から照射された近赤外光のうち前記地盤材料から反射した反射光の近赤外波長成分を含む前記地盤材料の画像を撮影する近赤外線カメラと、
前記近赤外線カメラから取得した前記画像を解析して前記地盤材料の含水比を測定する解析部と、を備えており、
前記解析部は、予め記憶している前記地盤材料に関する含水比と吸光度との相関性を示す相関データに基づいて前記画像を解析することを特徴とする含水比測定装置。
【請求項2】
前記LED照明部は、波長の異なる複数種類のLEDを有しており、
前記複数種類のLEDは、水に吸収されない特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する一のLEDと、水に吸収される特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する他のLEDと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の含水比測定装置。
【請求項3】
前記LED照明部は、
円環状に形成されて中央に孔を有するLED基板と、
前記LED基板の一側面に複数並べられて配置され、前記複数種類のLEDがユニット化されたLEDユニットと、を備えており、
前記LED照明部は、前記LED基板における前記中央の孔の位置と、前記近赤外線カメラのレンズの位置とが合致するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の含水比測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の含水比測定装置によって地盤材料における含水比を測定する方法であって、
前記地盤材料に関する含水比と吸光度との関係を示す相関データを予め取得して記憶する工程と、
前記LED照明部から前記地盤材料に向かって近赤外光を照射する工程と、
前記近赤外線カメラによって、前記LED照明部から照射された近赤外光のうち前記地盤材料から反射した反射光の近赤外波長成分を含む前記地盤材料の画像を撮影する工程と、
前記解析部によって、前記近赤外線カメラから取得した前記画像を、前記相関データに基づいて解析して前記地盤材料の含水比を測定することを特徴とする含水比測定方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の含水比測定装置と、
前記含水比測定装置と互いにデータ通信可能に接続されるとともに、前記解析部によって測定された前記地盤材料の含水比における測定結果のデータ及び前記相関データを蓄積するデータベースと、を備えており、
前記データベースは、前記含水比測定装置から取得した前記測定結果のデータ及び前記相関データから、前記地盤材料における含水比の絶対値を導き出す絶対値化手段を備えており、
前記解析部は、前記絶対値化手段によって導き出された前記絶対値を含む照合データを前記データベースから取得し、当該照合データと照合して、前記画像を解析することを特徴とする含水比測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水比測定装置、含水比測定方法及び含水比測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
盛土工事等に使用される地盤材料の含水比は、土の物理特性や力学特性を評価する上で重要な指標となる。そのため、工事の際は、地盤材料の含水比を都度確認して品質管理することが求められる。
従来、地盤材料の含水比を求める方法として、(1)110℃程度の乾燥炉に試料を24時間程度入れて乾燥させて含水比を求める炉乾燥法(JIS A 1203:2009)、電子レンジによる加熱で水を蒸発させて求める電子レンジ法(JGS 0122-2009)、(3)ラジオアイソトープにおける中性子を測定装置から放出し、その変化などを測定することで試料の含水比を測定するRI法、(4)水に吸収される近赤外光を用いて試料の含水量を測定する方法、等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6173894号公報
【特許文献2】特許第6050729号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】地盤工学会、室内試験規格・基準委員会編集「地盤材料試験の方法と解説(第一回改訂版)」地盤工学会 2020年
【非特許文献2】地盤工学会、地盤調査規格・基準委員会編集「地盤調査の方法と解説」地盤工学会 2013年
【非特許文献3】株式会社ケツト科学研究所「近赤外成分計/水分計」[online][令和4年2月2日検索]インターネット<URL: https://www.kett.co.jp/wp-content/uploads/2018/09/kjt_in-line_series_catalog_rev0101_web-1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記(1)の方法は、乾燥炉が必要なうえに計測時間も1日かかるため、現場施工時にすぐに含水比を測定することには適していない。上記(2)の方法は、計測時間を10~30分程度に短縮できるものの、乾燥ムラなどにより電子レンジのキャリブレーションに時間がかかったり高い精度を維持しにくかったりする場合がある。上記(3)の方法は、キャリブレーションから計測まで30分程度の時間がかかるし、原子力関連の技術であるため、計器の保管に配慮が必要となる。
【0006】
上記(4)の方法は、タングステンランプから出力された近赤外線領域の光を、分光フィルターに通して分光し、分光フィルターを通過した光を地盤材料に導き、地盤材料からの反射光(吸収波長帯と参照波長帯)を受光素子で計測することで試料の表面水量を推定して含水比を算出している。
しかし、このような方法の場合、測定距離が変更されると、地盤材料に照射される光量も大きく変更されることとなり、地盤材料における含水比の測定精度の向上を図りにくい場合がある。
さらに、地盤材料からの反射光に基づいて計測を行うため、例えば礫が多い、様々な土質が混合している、水が表面に浮き出ている、などといった地盤材料の状態が不明のまま計測が行われることとなる。その場合、仮に含水比の測定にエラーが発生しても、なぜエラーが発生したのか判断がつきにくいため、地盤材料における含水比の測定精度の向上を図りにくくなる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、現場での地盤材料における含水比の測定を従来よりも簡易かつ迅速に行うことができるとともに、地盤材料における含水比の測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、含水比測定装置であって、
地盤材料に向かって近赤外光を照射するLED照明部と、
前記LED照明部から照射された近赤外光のうち前記地盤材料から反射した反射光の近赤外波長成分を含む前記地盤材料の画像を撮影する近赤外線カメラと、
前記近赤外線カメラから取得した前記画像を解析して前記地盤材料の含水比を測定する解析部と、を備えており、
前記解析部は、予め記憶している前記地盤材料に関する含水比と吸光度との相関性を示す相関データに基づいて前記画像を解析することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の含水比測定装置において、
前記LED照明部は、波長の異なる複数種類のLEDを有しており、
前記複数種類のLEDは、水に吸収されない特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する一のLEDと、水に吸収される特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する他のLEDと、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の含水比測定装置において、
前記LED照明部は、
円環状に形成されて中央に孔を有するLED基板と、
前記LED基板の一側面に複数並べられて配置され、前記複数種類のLEDがユニット化されたLEDユニットと、を備えており、
前記LED照明部は、前記LED基板における前記中央の孔の位置と、前記近赤外線カメラのレンズの位置とが合致するように配置されていることを特徴とする。
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の含水比測定装置によって地盤材料における含水比を測定する方法であって、
前記地盤材料に関する含水比と吸光度との関係を示す相関データを予め取得して記憶する工程と、
前記LED照明部から前記地盤材料に向かって近赤外光を照射する工程と、
前記近赤外線カメラによって、前記LED照明部から照射された近赤外光のうち前記地盤材料から反射した反射光の近赤外波長成分を含む前記地盤材料の画像を撮影する工程と、
前記解析部によって、前記近赤外線カメラから取得した前記画像を、前記相関データに基づいて解析して前記地盤材料の含水比を測定することを特徴とする。
【0012】
以上の課題を解決するため、請求項5に記載の発明は、含水比測定システムであって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の含水比測定装置と、
前記含水比測定装置と互いにデータ通信可能に接続されるとともに、前記解析部によって測定された前記地盤材料の含水比における測定結果のデータ及び前記相関データを蓄積するデータベースと、を備えており、
前記データベースは、前記含水比測定装置から取得した前記測定結果のデータ及び前記相関データから、前記地盤材料における含水比の絶対値を導き出す絶対値化手段を備えており、
前記解析部は、前記絶対値化手段によって導き出された前記絶対値を含む照合データを前記データベースから取得し、当該照合データと照合して、前記画像を解析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現場での地盤材料における含水比の測定を従来よりも簡易かつ迅速に行うことができるとともに、地盤材料における含水比の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】近赤外線カメラ付近の構成を示す概略図である。
【
図4】砂礫土における最適含水比及び施工含水比の範囲の例を示すグラフである。
【
図5】砂礫土における含水比と吸光度との相関性を表すグラフである。
【
図6】砂質土における含水比と吸光度との相関性を表すグラフである。
【
図7】粘性土における含水比と吸光度との相関性を表すグラフである。
【
図8】複数の測定距離で測定を行った場合の含水比を表すグラフである。
【
図9】含水比測定システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1において符号1は、含水比測定装置を示す。この含水比測定装置1は、盛土工事等に使用される地盤材料(土質材料、盛土工事の場合は盛土材料、等とも言う)の含水比を測定するためのものであり、より詳細には、地盤材料から得られた試料Sの含水比を測定するためのものである。
【0017】
本実施形態における含水比測定の対象となる地盤材料の土質は大まかに、砂礫土、砂質土、粘性土(ローム土)に分類されているが、より細かく分類して含水比を測定してもよい。
なお、砂礫土とは礫(小石)と砂が混合した土を指し、砂質土とは粗粒土に属する土のうち細粒分が50%未満で、粒径2mm以下の土を指し、粘性土とは粘土やシルトなど粒径が小さい土粒子(75μm以下)を50%以上含む土を指す。
【0018】
そして、測定対象の地盤材料(試料S)は、盛土工事等の工事を行う際に設定される施工含水比(施工可能含水比とも言う)の範囲内で含水しているものとする。
なお、施工含水比とは、
図4に示すように、地盤材料の含水比を変えながら同一方法で複数回の締め固めを行って求められた乾燥密度の最も高い最適含水比付近に設定される含水比の範囲であり、含水比測定装置1は、地盤材料の試料Sの含水比が、この施工含水比の範囲内であれば測定可能となっている。
換言すれば、例えば盛土工事等の工事を行う際の地盤材料が施工含水比の範囲から外れるものであると安全性が確保されないため、試料Sの含水比も、当然この施工含水比の範囲で測定される。
【0019】
本実施形態の含水比測定装置1は、試料Sの含水比を測定するための構成として、
図1に示すように、近赤外線カメラ2と、近赤外線対応レンズ3と、LED照明部4と、カメラ支持台5と、遮光ボックス6と、解析部7と、電源ユニット8と、を備える。
【0020】
近赤外線カメラ2は、試料Sから反射した近赤外光(反射光)の近赤外波長成分を検出できる撮像装置であり、近赤外波長成分を含む画像を撮影できる。
近赤外線カメラ2によって撮影された画像は、含水比が高いほど色が濃く(黒っぽく)、含水比が低いほど色が淡く(白っぽく)映し出される。例えば砂礫土の撮影画像においては、例えば礫の部分が白っぽく見え、水を多く含んだ砂の部分が黒っぽく見えることになり、その状態を撮影画像上で人が視認できることとなる。つまり、試料Sがどのような状態(状況)であるかを、撮影画像を見て認識することができる。撮影画像には、例えば礫のシルエットなども映し出される。
なお、近赤外線カメラ2で撮影された試料Sの画像データは、互いに通信可能に接続された解析部7に送信される。
【0021】
近赤外線対応レンズ3は、近赤外線カメラ2とセットで用いられるものであり、試料Sから反射した近赤外光の近赤外波長成分を確実に捉えるためのピント調整や、焦点距離及び画角の調整といった機能を有する。
この近赤外線対応レンズ3の先端部に、LED照明部4が取り付けられている。
【0022】
LED照明部4は、
図2に示すように、試料Sに対して照射する近赤外光を出力するためのものであり、LED基板4aに実装された複数個のLEDユニット4bを有する。
LED基板4aは、近赤外線対応レンズ3の先端部が取り付けられ、円環状(ドーナツ型、輪形)に形成されている。そして、中央に形成された孔の位置と近赤外線対応レンズ3の位置とが合致するように配置されている。
複数個のLEDユニット4bは、円環状のLED基板4aの一側面に円環状に並べられて配置されている。つまり、近赤外線対応レンズ3の周りに、複数個のLEDユニット4bが配置された状態となっている。
なお、これら複数個のLEDユニット4bは、
図1に示すように、外部の光を遮断するシェード4cによって覆われてもよい。
【0023】
LEDユニット4bは、波長の異なる複数種類のLED(Light Emitting Diode)41,42,43がユニット化されたものである。
複数種類のLED41,42,43は、水に吸収されない(反射する)特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する第一LED41と、水に吸収される特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する第二LED42及び第三LED43と、を有する。
より具体的には、第一LED41はλ=0.85μmの近赤外光を出力する。また、第二LED42はλ=1.2μmの近赤外光を出力し、第三LED43はλ=1.45μmの近赤外光を出力する。
これら第一LED41と、第二LED42と、第三LED43は、切り替え式とされており、別個に近赤外光を出力できるようになっている。
【0024】
カメラ支持台5は、本実施形態においては三脚であり、図示はしないが、センターポール5aの上端部には、近赤外線カメラ2を保持するブラケットが設けられている。ブラケットは、センターポール5aの上端部から水平方向に延出しており、その先端部に近赤外線カメラ2が取り付けられている。
ブラケットの先端に取り付けられて保持された近赤外線カメラ2は、例えば近赤外線対応レンズ3及びLED照明部4を下向きにした状態で配置されている。したがって、三脚であるカメラ支持台5の脚を避けた位置に被写体(試料S)を置くような形で撮影を行うことができる。なお、本実施形態においては、三脚であるカメラ支持台5の脚を避けた位置にトレイ9が置かれ、トレイ9の中に試料Sが入れられている。
なお、三脚であるカメラ支持台5は、近赤外線カメラ2の高さ位置を適宜調整することができる。本実施形態においては、トレイ9が置かれた面から近赤外線カメラ2下面までの高さを、300~1000mmの範囲で変更できる。
【0025】
遮光ボックス6は、カメラ支持台5の脚を避けた位置に配置されて、トレイ9及び試料Sを覆うことが可能な箱体である。なお、この遮光ボックス6には底がない。
上端面を構成する上板部には、LED照明部4の径よりも若干小さい径に設定された貫通孔が形成されている。より詳細に説明すると、貫通孔の径は、LED照明部4におけるシェード4cの径よりも小さく設定されるとともに、貫通孔の縁部は、複数個のLEDユニット4bが並べられて配置された円状の範囲の外周よりも外側に位置している。したがって、LED照明部4におけるシェード4cの縁部を、貫通孔の縁部に沿わせて配置すれば、遮光ボックス6の内部に外部の光が入りづらくなるので、測定精度の向上に貢献できる。
【0026】
解析部7は、所謂ノートパソコンやタブレット端末等のコンピューターであり、演算部70と、記憶部71と、インターフェース72と、を少なくとも備える。各部70,71,72は、バス等で電気的に接続されている。なお、解析部7は、ディスプレイ等の表示部やキーボード、マウス等の入力部、あるいは表示部兼入力部として機能するタッチパネルなどを適宜備える。
【0027】
演算部70は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、CPUは、記憶部71に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、解析部7各部の動作を集中制御するようになっている。
【0028】
記憶部71は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部71は、演算部70が実行する各種プログラム、各種データ等を記憶しており、記憶部71が記憶するプログラムには、演算部70によって実行される解析プログラム71aが少なくとも含まれている。また、記憶部71が記憶するデータには、解析プログラム71aの実行時に使用される相関データ71bが少なくとも含まれている。
解析プログラム71a及び相関データ71bは、近赤外線カメラ2から取得した画像を解析して試料Sの含水比を測定する際に利用される。
【0029】
インターフェース72は、例えばUSB(Universal Serial Bus)インターフェースであり、近赤外線カメラ2から伸びる伝送ケーブルが接続される。解析部7は、このインターフェース72を通じて、近赤外線カメラ2から撮影画像のデータを取得することができる。
【0030】
電源ユニット8は、近赤外線カメラ2及びLED照明部4に対して電源ケーブル8aを通じて電力を供給するためのものであり、バッテリーを有する。そのため、含水比測定装置1を現場に持ち出して、現場で試料Sの含水比を測定することができる。
【0031】
次に、以上のように構成された含水比測定装置1によって、現場で採取した任意の地盤材料の試料Sにおける含水比を測定する方法について説明する。
【0032】
まず、工事の対象となる地盤材料に関する含水比と吸光度(近赤外光が水に吸収されている度合い、程度、レベル)に相関性があることを、含水比測定装置1を用いた事前の検証(モニタリング)により判明させる。
事前の検証は、上記の施工含水比の範囲内において行われ、近似曲線が描けるように少なくとも3点以上で測定を行うものとする。すなわち、施工含水比の範囲内で3回以上の含水比の測定を行う。このようにして含水比の測定結果と吸光度との相関性を取得することを、キャリブレーションと称する。
そして、得られた含水比の測定結果と吸光度との相関性を示すデータを、上記の相関データ71bとして記憶部71に記憶させる。
【0033】
図5は、地盤材料における砂礫土の試料Sに対し、LED照明部4から第三LED43の1.45μmの近赤外光を当てた場合における含水比の測定結果と吸光度との相関性を丸型のマークと近似曲線とで表したグラフである。
図5のグラフからは、含水比が少なければ吸光度も低く、含水比が多ければ吸光度も高いことが見て取れる。吸光度が低いということは光の反射が少ないことを意味する。そのため、吸光度の高い(含水比の大きい)撮影画像ほど色の濃い箇所が多いものとなる。砂礫土おける礫は水を含みにくいため、吸光度の高い撮影画像の中でも礫が映り込んでいる部分は吸光度が低く、色の淡い箇所として表れることとなる。
反対に、吸光度の低い(含水比の低い)撮影画像ほど色の淡い箇所が多いものとなり、その中で水の多い箇所は色が濃く表れることとなる。
【0034】
図6は、地盤材料における砂質土の試料Sに対し、LED照明部4から第三LED43の1.45μmの近赤外光を当てた場合における含水比の測定結果と吸光度との相関性を丸型のマークと近似曲線とで表したグラフである。
図6のグラフからも、
図5のグラフと同様に、含水比が少なければ吸光度も低く、含水比が多ければ吸光度も高いことが見て取れる。すなわち、砂質土の場合も、吸光度の高い撮影画像ほど色の濃い箇所が多いものとなり、吸光度の低い撮影画像ほど色の淡い箇所が多いものとなる。
【0035】
図7は、地盤材料における粘性土の試料Sに対し、LED照明部4から第三LED43の1.45μmの近赤外光を当てた場合における含水比の測定結果と吸光度との相関性を丸型のマークと近似曲線とで表したグラフである。
図7のグラフからも、
図5及び
図6のグラフと同様に、含水比が少なければ吸光度も低く、含水比が多ければ吸光度も高いことが見て取れる。すなわち、粘性土の場合も、吸光度の高い撮影画像ほど色の濃い箇所が多いものとなり、吸光度の低い撮影画像ほど色の淡い箇所が多いものとなる。
【0036】
吸光度の高い撮影画像ほど色の濃い箇所が多いものとなり、吸光度の低い撮影画像ほど色の淡い箇所が多いものとなる、という濃淡の表れ方は、1.2μmの近赤外光を出力する第二LED42の場合も同様である。
また、第二LED42から出力される近赤外光は、第三LED43の場合よりも波長が短いため、第三LED43から出力される近赤外光よりも、やや水に吸収されにくい。換言すれば、水に反射しやすいため、第二LED42の近赤外光を当てて撮影された画像は、第三LED43の近赤外光を当てて撮影された画像よりも全体的に淡い画像となる。したがって、相関データ71bを取得する際は、第二LED42の近赤外光を当てた場合と、第三LED43の近赤外光を当てた場合の双方の場合で、相関データ71bを取得する。
【0037】
また、図示はしないが、第一LED41の0.85μmの近赤外光は水に吸収されない特性を持つ。そのため、この第一LED41の近赤外光を当てた場合の撮影画像を確認すると、近赤外光が水に吸収されない場合に、撮影画像がどのような状況になるかが判明することとなる。したがって、相関データ71bを取得する際は、第一LED41の近赤外光を当てた場合の相関データ71bも取得する。
【0038】
図8は、複数の測定距離で測定を行った場合の地盤材料における試料Sの含水比を表すグラフである。各測定距離には50cmもの大きな差があるにもかかわらず、得られる含水比の測定結果には大きな差がない。これは近赤外光の照射に、指向性があって強いLEDを使用しているためであり、近赤外光の光源として例えばタングステンランプを使用する場合に比して優位性がある。また、各LED41,42,43の数を増やすことによって光量が容易に稼げる点や、波長が細かく設定できるために吸光度が高くなるといった点も、LEDを使用する利点として挙げることができる。
【0039】
そして、キャリブレーションによって得られた以上のような相関データ71bを記憶部71に記憶させると、現場で採取した任意の地盤材料における含水比を簡易かつ迅速に、更に精度よく測定できるようになる。
すなわち、任意の地盤材料を採取して、その地盤材料の試料Sに対してLED照明部4から近赤外光を照射する。続いて、近赤外線カメラ2によって、LED照明部4から照射された近赤外光のうち試料Sから反射した反射光の近赤外波長成分を含む試料Sの画像を撮影する。
【0040】
撮影時には、遮光ボックス6によって試料Sを覆い、かつ、LED照明部4におけるシェード4cの縁部を、遮光ボックス6の上板部に形成された貫通孔の縁部に沿わせて配置し、遮光ボックス6の内部に外部の光を入れないようにする。
【0041】
撮影画像のデータは、伝送ケーブル2aを通じて近赤外線カメラ2から解析部7に伝送される。解析部7は、演算部70によって解析プログラム71aを実行することで、キャリブレーションによって得られた相関データ71bに基づいて、上記伝送された撮影画像を解析する。
すなわち、相関データ71bは、各波長(0.85μm、1.2μm、1.45μm)の近赤外線を当てた場合の、各土質(砂礫土、砂質土、粘性土)の試料Sにおける含水比の測定結果と吸光度との相関性を示す情報が含まれている。そのため、伝送された撮影画像の濃淡の表れ方(吸光度)から、施工含水比の範囲内の含水比を推定して算出することができる。
【0042】
以上のようにして含水比測定装置1によって、現場で採取した任意の地盤材料の試料Sにおける含水比を測定することができる。
【0043】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、LED照明部4によって地盤材料の試料Sに向かって近赤外光を照射するので、例えばタングステンランプ等を光源として使用する場合よりも指向性があって強い光を出力できる。また、使用するLEDの数を増やすことで光量が容易に稼げるとともに、波長が細かく設定できるために吸光度が高くなる。そのため、近赤外光の照射強度の減衰を極力抑えて、試料Sと近赤外線カメラ2との間の距離(測定距離)が変化しても影響を受けにくくなるので、近赤外線カメラ2によって反射光を捉えやすい。したがって、測定距離による含水比の測定精度の低下を抑えることができる。
さらに、近赤外線カメラ2によって、LED照明部4から照射された近赤外光のうち試料Sから反射した反射光の近赤外波長成分を含む試料Sの画像を撮影し、解析部7によって、近赤外線カメラ2から取得した撮影画像を、地盤材料に関する含水比と吸光度との相関性を示す相関データに基づいて解析して試料Sの含水比を測定するので、単に受光素子で反射光を受ける場合とは異なり、試料Sの表面がどのような状態(状況)であるかを撮影画像上で人が視認できる。つまり、例えば礫が多い、様々な土質が混合している、水が表面に浮き出ている、などといった試料Sの表面の状態が明らかとなっている条件下で計測が行われるので、地盤材料における含水比の測定精度を向上させることができる。しかも、従来とは異なり、試料Sの表面の状態が確認できるため、含水比を測定する上で明らかに妨げとなるような礫(骨材)等を画像処理時に容易に取り除くことができ、含水比の測定精度の向上に貢献できる。加えて、撮影画像と予め記憶している相関データ71bを照合するだけで含水比を測定できるので、現場での試料Sにおける含水比の測定を従来よりも簡易かつ迅速に行うことができる。
【0044】
また、LED照明部4は、波長の異なる複数種類のLED41,42,43を有しており、複数種類のLED41,42,43は、水に吸収されない特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する一のLED41と、水に吸収される特性を持つ波長帯域の近赤外光を出力する他のLED42,43と、を備えるので、近赤外光が水に吸収されない場合に撮影画像がどのような状況になるか、近赤外光が水に吸収される場合に撮影画像がどのような状況になるか、といった条件の相違点を視認しながら試料Sの含水比を測定できる。これにより、地盤材料の含水比を測定する精度の向上に貢献できる。
【0045】
また、LED照明部4は、円環状に形成されて中央に孔を有するLED基板4aと、LED基板4aの一側面に複数並べられて配置され、複数種類のLED41,42,43がユニット化されたLEDユニット4bと、を備えており、LED照明部4は、LED基板4aにおける中央の孔の位置と、近赤外線カメラ2の近赤外線対応レンズ3の位置とが合致するように配置されているので、試料Sからの反射光を近赤外線対応レンズ3が捉えやすくなる。これにより、地盤材料の含水比を測定する精度の向上に貢献できる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、図面を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記の第1実施形態との共通する要素については共通の符号を付して説明を省略又は簡略し、上記の第1実施形態とは異なる構成部分に重点を置いて説明する。
【0047】
図9は、含水比測定システムの構成を示しており、この含水比測定システムは、上記の含水比測定装置1と、含水比測定装置1と通信ネットワークN(例えば、インターネット)を通じて互いにデータ通信可能に接続されたデータベースDBと、を備える。
より詳細に説明すると、含水比測定装置1の解析部7は、通信モジュール等で構成された通信部(図示省略)を有し、データベースDBとの間でデータのやり取りを行うことができる。解析部7は、近赤外線カメラ2から解析部7に伝送された地盤材料における試料Sの撮影画像データや相関データ71bを、通信ネットワークN(例えば、インターネット)を通じてデータベースDBに送信することができ、データベースDBは、受信した当該データを蓄積する。
【0048】
データベースDBは、全国の現場における含水比測定装置1から撮影画像データや相関データ71bを受信することができる。データベースDBに蓄積されたデータ(以下、蓄積データ)は、例えば土質ごと、近赤外光の波長ごと等のように様々なカテゴリーごとに分類したり、データの並びを並べ替えたりすることができる。
また、撮影画像データや相関データ71bには、取得場所(現場)や取得日時、近赤外線カメラ2のIDといった基本情報が紐付けられており、識別情報として用いることができる。すなわち、蓄積データには、基本情報を含む識別情報が紐付けられており、データベース化しやすくなっている。
このような蓄積データは、ビッグデータとして用いることができ、データベースDBの管理者によって利活用される。
【0049】
また、ある程度(例えばビッグデータとして用いることができる程度)の量の蓄積データが蓄積されると、土質ごとの含水比の絶対値(絶対値に近い値)を取得できる。
より詳細に説明すると、データベースDBは、蓄積データから地盤材料における含水比の絶対値を導き出す絶対値化手段を備える。このような絶対値は、データベースDBを構成する演算部(CPU等)が、同じくデータベースDBを構成する記憶部(不揮発性のメモリーやハードディスク等)に記憶された絶対値化プログラムを実行することで導き出すことができる。換言すれば、絶対値化手段は、演算部と絶対値化プログラムとにより構成されている。
【0050】
解析部7は、データベースDBとの間で通信を行って当該絶対値が含まれる照合データを取得することで、上記のキャリブレーションを行わなくても、現場で採取した任意の地盤材料の試料Sにおける含水比を測定できるようになる。なお、照合データには、絶対値のデータ、土質の種類、近赤外光の波長の種類等が含まれている。
また、解析部7は、撮影画像データのリファレンスを使うことでキャリブレーションを省略できる。さらに、撮影画像データが蓄積できれば、解析部7は、特徴的な撮影画像から含水比を求められる。
【0051】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、含水比測定装置1と互いにデータ通信可能に接続されたデータベースDBは、含水比測定装置1から取得した測定結果データ及び相関データ71bから、地盤材料における含水比の絶対値を導き出す絶対値化手段を備えており、解析部7は、絶対値化手段によって導き出された絶対値を含む照合データを取得し、当該照合データと照合して、現場で採取した任意の地盤材料における試料Sの撮影画像を解析するので、キャリブレーションを省略でき、地盤材料の含水比の測定を従来よりも格段に簡易かつ迅速に行うことができる。また、従来の含水比の測定方法においては、試料Sに接触しなければならないものも含まれていたが、本実施形態によれば、試料Sの採取をせずに、完全に非接触で含水比を算出することも可能となる。さらに、蓄積された撮影画像データのリファレンスを使うことで、キャリブレーションを省略することができる。しかも、十分な量の蓄積データが蓄積できれば、特徴的な撮影画像から含水比を求めることも可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 含水比測定装置
2 近赤外線カメラ
2a 伝送ケーブル
3 近赤外線対応レンズ
4 LED照明部
4a LED基板
4b LEDユニット
4c シェード
41 第一LED
42 第二LED
43 第三LED
5 カメラ支持台
5a センターポール
6 遮光ボックス
7 解析部
70 演算部
71 記憶部
71a 解析プログラム
71b 相関データ
72 インターフェース
8 電源ユニット
8a 電気ケーブル
9 トレイ
S 試料(地盤材料)
N 通信ネットワーク
DB データベース