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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127657
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ビス打込装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20230907BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230907BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230907BHJP
   B27F 7/11 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E04F21/18 F
B25J13/08 Z
E04G21/16
B27F7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031474
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】512326931
【氏名又は名称】株式会社移動ロボット研究所
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 栄次
(72)【発明者】
【氏名】大隈 友和
【テーマコード(参考)】
2E174
3C054
3C707
【Fターム(参考)】
2E174BA01
2E174DA14
2E174DA34
2E174DA52
2E174DA63
3C054CB01
3C054CC02
3C054CD01
3C054CE06
3C054CE12
3C054CF02
3C054CF03
3C054CF12
3C707AS06
3C707CS08
3C707KS03
3C707KS36
3C707NS24
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】支持部材に取り付けた工具の軸芯がビスの軸に対して傾かない打込装置を開発する。
【解決手段】
取付アームにビットを有する打込工具が取りつけられているビスを打込む打込装置であって、機体の外周に球面滑り軸受が設けられた打込工具を介して取付アームに取り付けられている打込装置。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付アームにビットを有する打込工具が取りつけられているビスを打込む打込装置であって、機体の外周に球面滑り軸受が設けられた打込工具を介して取付アームに取り付けられていることを特徴とする打込装置。
【請求項2】
打込工具の側部に打込工具を進退させるスライドユニットと、ビスの打込み深さを検知する貫入センサが取り付けられており、
打込工具の機体の外周に球面滑り軸受けが設けられており、該球面滑り軸受けを介してスライドユニットが打込工具の機体と接続し、スライドユニットが取付アームに取り付けられており、
スライドユニットの前進に伴ってビスの軸心と打込工具の軸心に傾きが生じたときに球面滑り軸受けによって調心され、
板材に対するビスの貫入とともにスライドユニットが前進し、ビスの頭部が板材表面に達したことを貫入センサが検知したときに、スライドユニットの前進を停止することを特徴とする請求項1記載の打込装置。
【請求項3】
取付アームは、回転機構を有する支持構造を備えており、該支持機構を介して他の装置に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の打込装置。
【請求項4】
他の装置は昇降装置であって、
取付アームには、中央部の背面に回転機構が設けられており、中央部の前面にビス供給機構が取り付けられており、一端側に打込工具が取り付けられており、他端側の前面に打込位置検知センサが取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の打込装置。
【請求項5】
打込位置検知センサによってマークを検知して、マークによって規定される打込規則にしたがって、昇降装置を昇降させ、あるいは取付アームを回転させて、打込工具がビスを打ち込むことを特徴とする請求項4記載の打込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
板材を壁に固定する技術に関する。特に、ビスなどを打つ打込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築施工分野でも機械化が求められている。建築分野では、壁下地などに板材を打ち付ける作業がある。
特許文献1(特開平8-4272号公報)には、板材を吸着して搬送し貼り付け位置に位置決めしてビス固定するアームが取り付けられた自走台車を備えた天井及び壁内装施工装置が開示されている。走行台車の駆動源はエンジンであり、クローラで走行する。
特許文献2(特開2019-11666号公報)には、板材を積んだ二つのパレットの間にロボットを据え付けて、アームの先端にある吸着器で壁面に板材を位置合わせして、打ち付ける壁面ボード貼付け装置が開示されている(図16参照)。台車には車輪がついているが、作業位置では、車輪を上昇させ支持脚(アウトリガー)で固定する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-4272号公報
【特許文献2】特開2019-11666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ロボットのアームなどの支持部材の先端に取り付けた回転工具でビスを打込み、打込動作の反作用を受けて回転工具の軸がぶれて、ビスを正しく打込むことができず、ビス打ちに失敗することがあるという、経験に基づいた発明である。
本発明は、支持部材に取り付けた工具の軸芯がビスの軸に対して傾かない打込装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.取付アームにビットを有する打込工具が取りつけられているビスを打込む打込装置であって、機体の外周に球面滑り軸受が設けられた打込工具を介して取付アームに取り付けられていることを特徴とする打込装置。
2.打込工具の側部に打込工具を進退させるスライドユニットと、ビスの打込み深さを検知する貫入センサが取り付けられており、
打込工具の機体の外周に球面滑り軸受けが設けられており、該球面滑り軸受けを介してスライドユニットが打込工具の機体と接続し、スライドユニットが取付アームに取り付けられており、
スライドユニットの前進に伴ってビスの軸心と打込工具の軸心に傾きが生じたときに球面滑り軸受けによって調心され、
板材に対するビスの貫入とともにスライドユニットが前進し、ビスの頭部が板材表面に達したことを貫入センサが検知したときに、スライドユニットの前進を停止することを特徴とする1.記載の打込装置。
3.取付アームは、回転機構を有する支持構造を備えており、該支持機構を介して他の装置に取り付けられることを特徴とする1.又は2.記載の打込装置。
4.他の装置は昇降装置であって、
取付アームには、中央部の背面に回転機構が設けられており、中央部の前面にビス供給機構が取り付けられており、一端側に打込工具が取り付けられており、他端側の前面に打込位置検知センサが取り付けられていることを特徴とする3.記載の打込装置。
5.打込位置検知センサによってマークを検知して、マークによって規定される打込規則にしたがって、昇降装置を昇降させ、あるいは取付アームを回転させて、打込工具がビスを打ち込むことを特徴とする4.記載の打込装置。
【発明の効果】
【0006】
1.ビスを打込むために押し込み力を工具にかけたときに、反作用で工具のビットの軸芯が傾いても、球面滑り軸受けの調心機能が発揮されて、工具の軸芯がビスの軸芯に一致して、ビスを真直ぐ石膏ボードから下地材に向けて打込むことができる。打込工具の打込動作によるこの反作用は、打込装置を取付アームや昇降装置のフレームに取り付ける機構の片持ち支持状態では、しなりが発生するが、球面滑り軸受けの機能が発揮されて、調心され、ビスとビットの軸の傾きを防止でき、ビスをきれいに打込むことができる。特に、石膏ボードよりも硬い軽鉄製の下地材にビスを打込む場合は、軽鉄に接触して打込抵抗が急に大きく変化するので、軸ずれがあると、ビスが傾いてビス打ちが失敗するので、軸ずれを起こすことなく、真直ぐビスを打込むことができることは重要である。
2.真直ぐビスを打つことができる機構を開発できたので、打込工具を押し出すスライドユニットと打込深さを検知する貫入(距離)センサを組み合わせた自動の打込装置を実現できた。
3.軸ずれを防止できることによって、取付アームの一端に打込工具を取り付け、更に取付アームにビス供給機構、ビス検知センサを取り付け、これら機器を取り付けた取付アームを回転させて、板材の天井際や床面際にビスを打込むことができるようになった。
4.本発明の打込装置を開発できたので、昇降装置を備えた自走型の小型板打ちロボットを実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】板打ちの基本的方法を示す図
図2】板打ちロボットの概念構成と装置構成を示す図
図3】基準ビスを用いた板打ちの方法を示す図
図4】板打ちロボットによるビス打ちの概略を示す図
図5】板打ちロボットの全体構成を示す図
図6】板打ちロボットAの分解、組立に関する図
図7】板打込工程を示す図
図8】走行台車を示す図
図9】走行台車の側面と平面を示す図
図10】走行台車の車輪を示す図
図11】昇降装置を示す図
図12】昇降フレームを示す図
図13】打込装置を示す図
図14】打込機構を示す図
図15】壁ボードに対するビスの打ち込み例を示す図
図16】特許文献2に示される従来例
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、打込工具を球面滑り軸受けを介して取付アームに取り付けることによって、ビスの頭に対して傾かない打込装置である。この打込装置を片持ち支持機構である取付アームの一端に打込工具を設けた打込装置である。そして、打込装置を昇降装置に取付た板打ちロボットに適用した。
以下に、本発明の打込装置を採用した板材の打込方法及び打込ロボット技術も含めて、実施形態を説明する。
本発明者は、建物の壁や天井、床を構成する石膏ボードや合板などの板材を木材や軽鉄などの下地材にビスなどで固定するために、ビスなどの止着材を打ち込んで固定する方法とその固定方法を実現する板打ちロボットに関する技術を開発した。
作業員が板材を仮止めすることと、仮止めした板材に打込指示マークを付す作業行う。板打ちロボットが、打込指示マークを検知して、止着材を打つ内容を認識し、自動的に止着材を板材に打込む作業を行う。
図1に、板打ちの基本的方法を示す。
作業員が板材160の4隅に仮止めビス152を打って、下地に仮止めする。また、作業員は、板材160の縁に打込指示マークMを付ける。打込指示マークMは印刷されたシールなどを使用する。打込指示マークMには、打込の始終を示す打込マークCMと止着材を打込箇所を示す打込規則Pxが含まれる。
板打ちロボット200は、打込指示マークMを検知して、打込マークCMが意味する打込開始、打込中止、打込終了などを認識することと止着材打込縦ピッチVpと横ピッチHpを認識して、それに従って、止着材(ビス151)を打込む作業をおこなう。図示の例では、ロボット200は打込開始マークCMsから始めて、打込終了マークCMeを検知するまで打込作業を行う。
【0009】
板材は壁板材、床板材、天井材などを意味し、固定作業は、板材を下地に固定する作業を意味する。固定手段は、釘やビスなどの止着材を用いて行われる。
打込指示マークMは、止着材を打つ作業の開始CMs、中断CMi、終了CMeなどを意味するマーク、止着材を打つ縦方向の間隔(縦ピッチVp)、横方向の間隔(横ピッチHp)などを意味する打込規則Pxを示す印が含まれる。作業の開始CMs、中断CMi、終了CMeなどを意味するマークは、△、☆、□などの図形などを使用することができる。
【0010】
板打ちロボット200の構成概念を図2に示す。
板打ちロボット200は、板材に示された打込指示マークを検知する検知部211と、検知部が検知した打込指示マークに対応する板材に止着材を打込む作業の始終、打込みパターンを示す打込規則を選択して決定する打込規則決定部212と、打込規則決定部が決定した打込規則に沿って、板材に止着材を打込む作業を行う打込作業部213と、打込規則を入力する打込規則設定部214を備えている。
ロボット200は、装置構造として、打込装置230、昇降装置220、走行装置240、制御部250、検知センサ231を備えている。なお、制御部は、他の装置も含めてロボット全体の制御も行う。
ロボット200は、打込装置230、昇降装置220、走行装置240が分割、組立可能となっていて、小型で可搬性に優れている。
【0011】
図3に、打込規則Pxを示す印として基準ビスPsを横一列に打った例を示す。
壁、床、天井などでは下地が規則的に配置されていることが多く、そのような箇所では、打込規則Pxを示す印として、一定の高さ位置に打つビス(止着材)を利用して、基準ビス(止着材)Psを利用することができる。横方向は基準ビスPsで示されることとなるので、各基準ビスPsの位置で、縦方向のライン(L1、L2、・・Ln・・)にビス151を打つことになる。縦ピッチVpは、基準ビスPsの高さで判定することができるので、板打ちロボット200の設定とコントロールが容易になる。
【0012】
図4に板打ちロボットAを用いて板材にビスを打って壁の下地材に固定する基本概念を示す。以下、板打ちロボットAは、板打ちロボット、あるいは、ロボットと称する場合がある。この板打ちロボットは、壁用の板打ちロボットであり、以下、代表例として、壁用の板打ちロボットを用いて説明する。なお、昇降装置を伸ばすと天井板の固定作業ができ、昇降装置を水平に伸ばすと床材の固定作業ができる。
板打ちロボットは、走行台車1と、走行台車1に搭載された昇降装置2と、昇降装置2に取り付けられた、ビス5を板材6に打ち込む打込装置3を備えている。走行台車1と昇降装置2と打込装置3が分割・組立可能に構成されている。走行台車1の下面には全方向走行車輪12が設けられ、上面に距離センサ11が取り付けられており、昇降装置2が着脱自在に取り付けられている。走行装置1の前部にはカウンタウエイト73、後部には配線コネクタ71が設けられている。昇降装置2には、打込装置3が取り付けられている。打込装置3には打込位置検知センサ31があって、打込位置検知センサがビスを打ち込むマークや基準ビスなどを検知し、打込装置は検知した基準に基づいてビス5を板材6に順次打ち込んで下地材53に固定する。
自走式の走行台車1が壁4などを距離センサ11で検知して、壁に沿って走行し、打込装置の打込位置検知センサ31によって、打込位置の打込指示マークM(例えば、基準ビスPsである仮止ビス52)を検出して、それから判断される位置にビス5を板材6に打込んで下地材53に固定する。縦方向の打込位置に対して昇降装置2を伸縮して順次ビス51を板材に打込み、走行台車1で次の列へ移動して、縦方向に打ち込みを行って、板材を固定する。一つの板材を打ち終えたら、次の板材へ移動して、次の板材の打込位置を検出して、ビスを板材に打込んで下地材に固定する動作を繰り返す。
基準となる打込マークは、打込開始(△)、打込中断(☆)、打込終了(□)などの印と、縦ピッチと横ピッチである打込パターンを示す基準マークとして例えば基準ビスなどを使用する。打込開始(△)、打込中断(☆)、打込終了(□)は以下、開始マーク、中断マーク、終了マークなどと表現されることもある。
壁の下地材53は規則的に配置されているので、その下地材に基準ビスを打てば打込位置が検出できれば、そのあとは、順次規則的に打ち込むことができ、確実に板材を固定することができる。打込マークと基準ビスを特定の中間高さなどに設定することにより、ロボットは検知が容易になる。
【0013】
従来技術として、板材の上から下地材を打音などによって検出して、釘などを打ち込む技術があるが、下地材以外の部材が近くにあると、下地材以外を誤検知するなど、下地材検知に失敗して板材の固定ができないこととなる。また、板材を壁などに運んで、位置合わせして、打ち込んで固定までを行う自動ロボットも提案されているが、装置的に大型になり、建築現場では機動性に欠くとともに、位置合わせの精度や打込位置の正確な検知など課題が多く、現実的ではない。特に、複雑な建物や狭い住宅では活用できない。
本発明は、板材の仮止めとマーク等の敷設は作業員が行い、板打ちロボットが仮止めされた板材にビスを打ち込む。本発明の板打ちロボットはビス打ちの専用ロボットであり、打込位置を正確に検知し、ビスを確実に打ち込むことができるともに、小型化して狭隘な建築現場での操作性に優れている。大型の建物は、壁の面積が大きく、多くの板材を固定する単純作業の繰り返しなので、専用ロボットによる省力化は大きな効果である。
【0014】
また、本発明の板打ちロボットは、走行台車、昇降装置、打込装置に3分割でき、大きさと重量の面で小型化されている。間口が90cm程度、壁の高さが200~300cm程度あるので、分割して搬入し現場で組み立てることは、利用性に優れている。また、板打ちロボットを輸送する際に、便利である。壁、床、天井などの内装作業を行う業者は、ワンボックスカーなどを利用することが多いので、これらの小型自動車に積み込むことができる大きさにすることは普及には重要であり、廊下や階段を人力で運ぶことができる重量も重要である。昇降装置の長さを天井高さの半分程度にでき、走行装置と打込装置は作業員が持ち運び出来る大きさと重さに抑えることができる。
【0015】
建築現場で作業する、壁の下地に張る石膏ボードや合板などにビスなどを打ち込んで垂木や軽鉄材に固定する打込ロボットに適用できる。
図5に板打ちロボットAの全体構成を示す。
走行台車1と、走行台車1に搭載された昇降装置2と、昇降装置2に取り付けられた、ビスを板材に打ち込む打込装置3を備えた板打ちロボットAである。走行台車1の基台10に昇降装置2の他、距離センサ11、バッテリやカウンタウエイト73などの機器が搭載され、基台10の下には全方向走行車輪12が取り付けられている。
昇降装置2は、基台10に着脱自在に取り付けられていて、打込装置3を上下に移動案内する昇降機構21を備えている。本例では、昇降機構21は、固定フレーム23を形成する支柱23aの前側に移動フレーム24が上下に昇降できるように取り付けられている。固定フレーム23は前後に支柱23aと副支柱23bが配置され、支柱23aと副支柱23bは上部横部材23cが接続して、枠型や門型に形成されている。
【0016】
板打ちロボットAは走行装置である走行台車と昇降装置と打込装置の3つに分解、組立ができるように構成されている。図6に、分解、組立を示す図を示す。
打込装置3が移動フレーム24に上下動可能に支持機構33を介して着脱自在に取り付けられている。打込装置3は、移動フレーム24の昇降と移動フレーム24に対する打込装置3自体の上下動によって上下に移動することができる。
打込装置3は、打込位置検知センサ31、打込機構32を備えている。打込位置検知センサ31は仮止めされた板材に設けられている打ち込み基準位置を示す打込マークを検知する。
打込マークは作業の開始(再開)、中断、終了、打込規則などを示す印である。開始マーク(△)、中断マーク(☆)、終了マーク(□)を組み合わせることにより、板打ちロボットの打ち込み作業をコントロールすることができる。打込規則は、下地材の配置に応じた、打込高さなどで表すことができる。ここでは、開始マークの付近に基準ビスを打って、打込規則を示す印としている。基準マークとしての基準ビスは、下地材に打ち込まれるビスの一つに当たり、必要な高さ位置に設けられている。
打込マークの敷設順序は、板打ちロボットの進行にしたがって、開始マーク(△)を読み、次いで、基準ビスを検知する順序に配置される。
開始マーク(△)を検知したら走行台車を停止させて、基準ビスを検知し、基準ビスの位置に基づいて判断された箇所に、打込機構32を用いて、ビスを板材に順次打込んでいく。板打ちロボットAは、上下の一列が終了すると次列に走行して移動して停止して、次列の打ち込みを上下に行うことを繰り返す。次の仮止めされた板材に対しても、板打ちロボットAは、走行移動し、基準位置の検知から順次打込み動作と移動走行を繰り返す。ビスを打ち込む箇所は、縦横に規則的であることが原則であるので、次列への移動距離は定まることとなる。
制御装置によって、走行制御、昇降制御、打込制御が行われる。
【0017】
板打ちロボットは、作業の始まりは、開始箇所付近に設置されるのが自然であるが、壁に沿って走行して、打込の開始マーク(△)を検知して走行を停止し、その付近に設けてある基準ビスを検知し、下地材の設定パターンを判断する。下地材は、一枚の壁板に対して、水平方向3本とか、縦方向5本などと特定することができるので、それに従って、横30、60cm間隔、縦60cm間隔などに決定される。基準ビスを120cmや90cmなど決まった高さ位置に打つことによって、それぞれの設定に対応させることができる。
板打ちロボットは、規則性にしたがって、縦方向に昇降装置を操作してビスを打ち、所定距離横に移動して、縦方向にビスを打つことを、中断マーク(☆)まであるいは終了マーク(□)まで繰り返す。
中断マーク(☆)を検知したら、板打ちロボットは、ビス打ちをやめて、横移動を行い、開始マーク(△)と基準ビスを検知したら、ビス打ちを再開する。
壁板1枚ごとに、開始マーク(△)と中断マーク(☆)を付しておくこともでき、事前に印をつけることもできる。開始と中断を繰り返して終了まで行うことができる。
【0018】
<板打込工程>
板材にビスを打込む工程を示す。
板打ちロボットは、次に工程にしたがって板にビスを打込む。
建物の内装は、表面の化粧材の下に石膏ボードや合板、その下に下地材が設けられている。下地材は、縦や横に規則的に配置されている。この下地材に石膏ボードなどを張り付ける作業が行われる。板打ちロボットは、石膏ボードなどにビスを打ち込んで、下地材に固定する。

(準備工程)
走行装置、昇降装置、打込装置の3つの装置に分解されて、壁打ちなどの建築現場に搬入され、建築現場でロボットを組み立てる。板材が仮固定された壁面に沿って本板打ちロボットを設置する。
【0019】
準備工程以降の本発明の板打ち込み工程は、大きく、次の3工程となる。
第1工程:打込マーク及び基準マークを板材に敷設して打込範囲と打込パターンを設定する工程
第2工程:板打ちロボットが、打込マークと基準マークを検知し、検知情報に基づいて仮止めされた板材に対する打込作業の開始と止着材の打込パターンを判断する工程
第3工程:板打ちロボットが、第2工程の判断にしたがって、止着材の打込作業を行い、中断マークと開始マークにしたがって、打ち込み作業の中断と再開を繰り返し、終了マークにしたがって、打込作業を終了する。
【0020】
さらに、第3工程は次のようになる。
第3-1工程:第2工程によって判断された打込パターンにしたがって、板打ちロボットが第1列の止着材を打込む工程
第3-2工程:板打ちロボットが次列の打込位置へ移動する工程
第3―3工程:板打ちロボットが次列に止着材を打込む工程
第3―4工程:中断マークあるいは終了マークがあるまで第3-2、第3-3工程を繰り返す工程
第3-5工程:中断マークがある場合は、打込を中断して、次の打込開始マークから第3-1~第3-5工程を繰り返す工程
【0021】
前述した第1工程から第3-5工程までを、連続工程として、8工程とした工程図を示す図7にしたがって詳述する。
(第1工程):初期打ち込み位置設定工程
壁の下地材に板材を作業員がビスで仮止めして壁に仮固定する。必要ならば、高所作業台車や作業台などを用いて、高いところへの板材の仮固定を行う。この仮止め作業と同時にロボットにビス打ちの作業を指示する打込マーク付けと基準ビス打ちも行うことができる。打込マーク付けは、仮止めの前に行うこともできる。この人力による仮固定作業は、正確に迅速に行うことができる。
板材の搬入、位置合わせ、仮止めを行うロボットは大型となる。水平、垂直と隣との突合せなどの操作をロボットで行おうとすると、操作アームと制御が複雑になり、大型化する。そして、この位置合わせを短時間で行うまでに、ロボットは進化していないので、先行する発明提案があるものの実用化されていない。
【0022】
(第2工程):初期打ち込み位置検知工程
板打ちロボットは、例えば壁面の下端部などを距離センサ―で検知しながら壁に沿って進み、打込位置検知センサが、仮固定された板材に設けられた打込み開始マーク(△)を検知し、その近くにある基準ビスを検出する。
マークと基準ビスの位置は、板材の中間の高さや、板材の下部にして仮止めビスの付近に打込マークを設けることもできる。板材の仮固定が先行するので、板打ちロボットを最初の仮固定箇所に設置し、基準位置の付近に打込位置検知センサがくるように初期設定すれば、その後の板打ち作業をスムーズに行うことができる。基準ビスの機能は、仮止めビスに限らず、シールなどを付して目印のマークにすることもできる。
【0023】
(第3工程):初期打ち込み工程
基準位置(基準ビス)から所定の離れた箇所に最初のビスを打ち込む。ビスを打ち込む位置は、下地材の桟や方立は規則的に配置されているので、最初の打込位置が決まれば、順次規則的にビスを打ち込むことができる。例えば、三番目の高さの桟に基準ビスがあったら、二番目や一番目の桟に最初のビスを打つ。
打込マークと基準ビスが中間の高さに設定してあると板打ちロボットは、一定の高さをサーチすればよく、効率的である。規則的に配置されている下地材に打込まれた基準ビスの高さを検知することにより、その規則に沿って、板打ちロボットは縦、横にビスを打つことができる。なお、所定の位置にビスがあったら、その箇所はスキップして、次の箇所のビスを打つようにセットすることもできる。
また、最上部や最下部では打込装置を反転させる必要があるが、最上部あるいは最下部にあらかじめビスを打つ(仮止めビスなど)ことにより、反転作業が不要となり、ロボットのビス打ち作業が促進する。
【0024】
(第4工程):第1列の打ち込み工程
桟や方立の下地材は規則的に配置されているので、その配置に従って順次ビスを打ち込んでいくことができる。昇降装置に打込装置が装着されているので、下端あるいは上端から始めて、上端あるいは下端までの上下の1列の打込を行う。列の途中から始める場合は、そこから上端あるいは下端に向けてビスを打込み、最初に戻って、逆方向に端部まで打込を行うように制御することもできる。この上端下端は、1枚の板材の上辺あるいは下辺を検知して設定することもできる。また、上下に数枚並べられた板材を一連として、壁の下端(床際)から天井際を上端とすることもできる。
天井際の上端、床際の下端、板材の上辺、板材の下辺は、打込位置検知センサを利用して検知することができる。あるいは、別の検知センサを設けることもできる。
あるいは、板材はそれぞれが仮固定されるので、それぞれに打込基準位置を設けて、それを検知して、打込を始めるようにすることもできる。
【0025】
(第5工程):次列の順次打ち込み位置へ移動工程
水平方向も一定間隔でビスなどを打ち込むので、縦に1列終了後は、走行台車を一定距離(例えば、列間隔分)移動させて次列の打込位置で板打ちロボットは停止する。
【0026】
(第6工程):次列の順次打ち込み工程
次列の打込を上下方向に順次打ち込む。この場合、仮止めビスなどの目印はなくてもよい。この走行台車の移動と上下方向への打込を、1枚の板材あるいは上下に並べて仮固定された一連の板材にビスを打込んで、固定を終了する。
【0027】
(第7工程):最終列まで繰り返す工程
基本的には、一面の壁面を連続して仮固定された板材を順次打ち付けていくことができる。
また、一枚ごとに区切りをつけて、板打ちをすることもできる。例えば、一つの板材の打込を終了したら、板打ちロボットを初期の姿勢にして、次の板材の箇所へ移動し、基準位置を検知して停止し、第2工程から第6工程までを繰り返し、最終の板材まで繰り返して、一旦終了する。
なお、直角に曲がった次の壁面も行う場合は、全方向車輪を制御してロボットを直角に走行させて、第7工程を連続して行うこともできる。あるいは、第1工程から始めること
もできる。
【0028】
(第8工程):中断、再開工程
第6工程の途中で中断マーク(☆)を発見したら、ビスの打込を中断して、板打ちロボットは横方向に移動して、開始マーク(△)を検知したら、そこからビス打ちを再開する。再開マーク(☆)と基準ビスの設定は、第2工程と同様であり、第7工程まで進める。
【0029】
ここでは、一連の基本工程を説明した。開口部があって、天井まで壁が連続していないケースなどでは、その部分は、それにあった制御を設定する。イレギュラー部分は、中断マークを利用してパスし、通常部分に開始マークを設けて、再開することもできる。
あるいは、板材の上辺あるいは下辺を検知したら、同列上に設けてある次の打込基準位置を検知することによって、上下の次の板材の打込を行うようにし、次の打込位置が見つからない場合(例えば、天井や床があって壁にはビスを打ち込む箇所を発見できないときなど)は、上端又は下端に達したと判断し、次列に移動するようにしてもよい。
【0030】
<走行台車>
図8、9、10に走行台車1の例を示す。
走行台車1は、基台10、距離センサ11と全方向走行車輪12を有している。
基台10は、搭載用の機材の位置決め用の位置決穴14、位置決凸15などの凹凸を備えた位置決13や副支柱受段差部17、車輪用取付穴18を有し、下面に全方向走行車輪12が取り付けられており、基台10には、昇降装置2、配線コネクタ71、バッテリ72(72a)、カウンタウエイト73などの機器が搭載される。
全方向走行車輪12は、走行制御用の操舵モータ91とインホイールモータ95を備えた全方向に移動可能な車輪である。
本例では、基台10の前辺中央から中心部にかけて切欠部16が設けられている。打込み機構が基台面より低い位置にビスを打ち込むことができるように切欠が設けてある。搭載機器は、所定の取り付け位置に位置決めした後にボルトなどで走行台車に固定される。
【0031】
配線コネクタ71は、電源ケーブル、制御ケーブルを中継するまとめ部分である。基台に搭載したバッテリ72から昇降用モータや打込装置のモータなどに電気を供給するケーブルを断続できる接続部分である。
バッテリ72は、重量物なので基台に搭載して、ロボットの低重心化をはかっている。昇降装置や打込装置にバッテリを持たせると、それぞれの重量が大きくなり、駆動モータの負荷も大きくなる。
カウンタウエイト73は、打込装置がビスを打込む際に生ずる反力を得るために基台の前方に設ける。本発明の板打ちロボットは、下側を固定し、上側がフリーである片持ち状態の昇降装置に打込装置が設けられているので、ビスの打込力の反作用を受け、その反作用で走行台車が後退しないように前側にカウンタウエイトを設置している。
なお、昇降装置は反作用を受けてしなりが生じて、ビス打ちの軸が傾いた場合は、打込装置側に調整機構を設けている。
【0032】
距離センサ11は、基台の4隅に設けられている。距離センサ11はそれぞれの前方または後方と側方の二方向を検知する。壁面4に対する離間距離を検知し、全方向走行車輪12は距離センサの検知に従って、壁面などに沿って一定の距離を保って走行し、ビスを打ち込む基準位置41(図1)で停止し、ビスの打ち込みと、次の打ち込む横の位置への移動とを繰り返す。移動距離は下地材の配置によって、規則的に決定できる。また、距離センサ11は、周囲の障害物を検討して、走行台車1を停止させる。障害物を設置して、打込み作業範囲を決めることができる。
全方向走行車輪12は、基台10の下側の4隅に設けられ、方向制御用の操舵モータ91とインホイールモータ95を備えており、それぞれを制御して、全方向に移動可能な車輪である。走行台車をコントロールする制御装置8が基台の下面に図示されている。制御装置8の設置箇所は任意である。
【0033】
(全方向車輪)
図10に全方向走行車輪の例を示す。
全方向走行車輪12は、操舵モータ91の回転軸芯(=操舵軸)93aが平面視で車輪90の中心に設けられている。建物の壁は出隅、入隅など直角であることが多く、板打ちロボットは壁に沿って移動するので、ほぼ直角に走行することとなるので、車輪の縦軸上に操舵軸があると小回りができる。また、4輪それぞれ異なる走行ラインを制御することになるが、走行台車の中心から求めたそれぞれの車輪の走行軌跡と操舵軸が一致するので制御が容易にある。
走行台車の移動は、制御に基づく自走と手動によるリモコン制御ができる。
【0034】
配線コネクタ71が基台10の片側(後面など)に設けてある。板打ちロボットは分割タイプにしてあるので、ケーブル85などをまとめて接続できるように、配線コネクタ71を設置している。配線コネクタからは、電源ケーブル、情報・制御ケーブルなどが連結される。
バッテリ72(72a、72b)は、板打ちロボットの走行用、昇降装置の昇降用、打
込装置の作動用などの電源である。重いので、基台10の上面、下面に搭載して、重心を安定させている。
カウンタウエイト73は、走行台車1の前側(打込み機構がビスを打ち込む方向)に設けてある。これは、ビスを打ち込むときの反力(支え)を取りやすいような配置である。 板打ちロボットは、ビスを板材に打込む際に反動を受けるので、この反動を受け止める必要がある。打込機構の安定した姿勢を保つ手段をいくつか準備しているが、バッテリによる低重心化とカウンタウエイトの設置もその手段である。アウトリガーでは、広い場所が必要で、移動・停止に応じて伸縮させるなど、機動性に欠ける。
本発明の走行台車は、打込装置が装着されている方向を前面として扱うので、カウンタウエイトは走行台車の前面側に取り付けられ、後方側に配線コネクタが取り付けられる。走行台車は、壁際に沿って進むことは、機体の方向的には、打込装置が壁に対面する姿勢になり、側面方向(横方向)に進むことになる。
【0035】
その他の機器も基台10に搭載することができる。これらの機器搭載および昇降の設置位置などを規定箇所に正確に設置できるように、位置決め用の位置決13、あるいは副支柱受段差部17を設けてある。位置決13用の凹凸は、上面に限らず裏面、側面にも設けることができる。基台に搭載する機器には、突起を設けて差し込んで位置決めすることができ、正確に容易に設置できる。そのほか、この穴を利用してボルト止めすることもできる。穴は、凹み、貫通でもよく、併用できる。穴の大きさも一定あるいは機器に応じて決めることができる。あらかじめ予備穴を設けて、搭載機器の追加をできるようにすることができる。機器は位置決めして、ボルトなどで固定されることとなる。本発明の昇降装置では、位置決凸15に対応する穴と副支柱受段差部17を設置することで、正確な位置が決まり、ボルトなどで固定される。
位置決を利用することにより、誰でも簡単に正確に板打ちロボットを組立、解体することができる。
【0036】
<昇降装置>
図11、12に昇降装置2の例を示す。
昇降装置2は打込装置3を上下に移動、案内する装置である。通常の建物の階高を考慮すると、床面から300cm程度の高さまで打込装置を移動させる構造が必要となる。
本例の昇降装置2では、固定フレーム23に移動フレーム24が上下動可能に取り付けられている。移動フレーム24には、さらに、打込装置を上下動可能に取り付ける機構が設けられている。固定フレームには、走行台車の位置決に対応する穴や突起が設けられている。
固定フレーム23と移動フレーム24の長さを加えて、天井高までカバーする。両フレームは、天井高さの1/2程度の長さが必要となる。天井は300cm以下のことが普通なので、フレームは150cmの長さ程度に抑えることができる。実際にはオーバーラップが必要なので、その分が加わる。また、長短長さの異なるフレームを準備すれば、高い壁面にも対応できる。交換するフレームは、両フレームの一方または両方とすることができる。
【0037】
図示の例では、固定フレーム23を安定させるために、枠型構造としている。固定フレーム23は前側の支柱23aと後ろ側に副支柱23bを設け、両支柱の下部と上部を上部横部材23c、下部横部材23dでつないで、四角の枠型構造を形成している。この構造によって、固定フレーム部分の前後方向は安定する。下部横部材23dが基台10に設置される昇降装置の取付面となる。この下部横部材23dの下面あるいは支柱の下面に走行台車の位置決に対応する穴や突起が設けられている。
本例の昇降装置2ではさらに、固定フレーム23を下部横部材よりも下方に長く伸ばして下端部を、走行装置の基台10の切り欠き部分から下方に位置させている。固定フレーム23の下端を下げることによって、打込装置を下げてビスを低い位置に打込み易くなる。
図示の枠型構造には、上部横部材23cに昇降用制動機構27を取り付けている。下部横部材23dは、枠型構造の内側をバッテリを収容するバッテリホルダ74などの機器設置空間に利用している。図示の例では、中間に収納BOX29を設けてリモコン82などを収納している。
また、上部横部材23cには、入出力端末81が設置できるようになっている。入出力端末を用いて、事前設定をすることができ、また、ビス打ちの本数や進捗状況などを表示することができる。なお、入出力端末の設置はこの場所に限るものではない。
【0038】
固定フレーム23と移動フレーム24は、固定フレーム23に案内されて移動フレーム24を昇降できるようにする。例えば、固定フレーム23は、断面コ字状あるいはエ字状などの案内面をもった2本の支柱を左右に立設し、移動フレーム24には固定フレームの案内溝などに嵌り込む挿入片などを設けて、係合構造とする。
移動フレーム24には、打込装置が取り付けられる装着器28が上下動可能に設置されている。
昇降装置2の下枠(下部横部材23d)には、フランジに穴を有し、底面に位置決穴が設けられている。この位置決穴に基台の位置決凸15を挿入して、その後フランジの穴と基台10をボルト・ナットなどを用いて固定する。このため昇降装置の固定位置は、着脱を繰り返しても、容易に正確に行うことができる。
【0039】
移動フレームと打込装置を移動させる駆動手段は、ラック・ピニオン機構、ねじ軸・ナット機構、ベルト機構などの公知の機構と駆動機構25と昇降用制動機構27を備えている。
駆動機構25は、移動フレーム24の昇降させる昇降用モータ25aと打込装置3を昇
降させる打込装置昇降用モータ25bを備えている。昇降用モータ25aは固定フレーム23の下方に併設されている。打込装置昇降用モータ25bは移動フレーム23の下方に併設されており、装着器28を上下動させる。
昇降用制動機構27は、固定フレーム23の上部に設けて、移動フレーム24を上昇させた位置で静止させる機能を果たす。例えば、移動フレーム24を一定量上昇させて固定した状態とし、その後は打込装置3を上下動させてビスの打込み動作を行うので、移動フレーム24をロックして安定させる。昇降用制動機構27を設けることにより、重い打込装置を固定して支える昇降用モータ25aの負荷(静止状態を維持するための負荷)が軽減される。
移動フレーム24の前縁には、打込装置を取り付けて上下案内ができる係合機構を備えた装着器28が設けられている。昇降装置の上下動は、図示していない制御装置(走行台車に設置)によって、ビスの打込位置に応じて、制御される。
【0040】
なお、昇降手段として2段以上に伸縮や屈曲する多軸型のアーム(特許文献2など)を用いた場合は、アームの構造が複雑になること、先端に装着する打込装置の重量を支えるための強度が必要になること、横方向に伸ばすとそのモーメントが加わりアームにさらに強い強度が必要になること、さらに、アームが横方向に移動すると重心も移動するので、アウトリガーなどで安定させる必要があることとなる。本発明は、支柱を用いた上下昇降式なので水平方向のモーメントは変化せず、平面重心も変わらないので、複雑な機構やアウトリガーを必要としない。横方向の移動は走行台車を利用するので、横方向のための機構や駆動装置を昇降装置に設ける必要はない。
【0041】
<打込装置>
図13、14に打込装置3の例を示す。
この例は、ビスを使用する例である。
打込装置3は、打込位置検知センサ31、打込機構32、支持機構33、ビス供給機構34を備えている。打込装置3の機器は支持機構の取付アーム36に装着されている。支持機構33は、機器を取り付ける取付アーム36と移動フレームに対する装着と反転機構を備えた支持構造330を備えている。
取付アーム36の上部前側に打込位置検知センサ31、中間位置の前側にビス供給機構34、中間位置の後ろ側に支持構造330が設けられ、取付アーム36の下端に打込機構32が取り付けられている。
【0042】
支持構造330は、移動フレーム24に設けられている装着器28に装着される接続マウント331とアーム回転機構332を備えている。
接続マウント331は装着器28に着脱自在に構成されており、打込装置3を昇降装置2から分離できるようになっている。アーム回転機構332は、駆動モータを内蔵しており、取付アーム36を反転させて、打込工具を天井際、あるいは床際にアクセスできるようにする。
支持構造330を介して打込装置3が昇降装置2の移動フレーム24に取り付けられる。打込工具は反転状態で昇降して打込み作業を行うことができる。
支持機構330に取り付けられている打込位置検知センサ31によって、打込み基準位置を検知し、移動フレーム24に設けられている打込装置昇降用モータが支持構造330を昇降して、打込み位置に打込装置を移動させる。天井際あるいは床際の打込箇所では必要に応じて、アーム回転機構によって取付アーム36を反転させて、打込工具を天井際あるいは床際にアクセスできる姿勢にする。例えば、取付アーム36を反転させることによって、図示の打ち込み機構32が上側となり、壁の上側に板材を打ち付けることができる。
【0043】
打込機構32は、ドライバを内蔵した打込工具300と打込工具を壁面に向かって進退させるスライドユニット310、ビスの貫入を検知する貫入(距離)センサ320を備えている。打込工具300の先端にはビスホルダ306、後部にはビス打ちモータ304が設けられ、内蔵しているドライバを回転させて、ビスホルダにセットされたビスを板材に打込む。ビスはビス供給機構34から供給される。ビスはテープなどで支持して連続体に形成し、連続して送り込むことができるようになっている。また、機体301は球面滑り軸受けを介して(スライダーユニットを経由して)取付アーム36に接続していて、ドライバの軸心とビスの軸心が傾かないようになっている。例えば、ビスを打ち込むとその反力が働いて機体は後ろに押される。この反力は取付アーム36、移動フレーム24、固定フレーム23、走行台車1と伝わっていく。特に、取付アーム36と移動フレーム24は片持ちなので、反力を受けて反りやすく、ドライバの軸心がビスの軸心に対して角度がつくことになり、ビスの打ち込みエラーが発生しやすくなるが、球面ベアリングを有する球面滑り軸受が、両者の軸心を一致させるように傾き姿勢を調整することができる。
また、制御装置が、打込み位置の検知、列状に並んだ打込位置への昇降、打込み動作などの制御を行う。
打込機構32は、打込位置検知センサ31によって検知された初期の基準位置を検知して、走行台車は停止し、打込装置の上下位置を調整して、板材にビスを打ち込む。当該列の打込の終了後に、次列の打ち込み箇所に移動して、次列に列状に打込動作を行い、移動を繰り返す。
【0044】
<打込機構>
打込機構を図13、14を用いて説明する。
前述のように打込機構32は取付アーム36の先端に取り付けられている。
打込機構32は、打込工具300、スライドユニット310、貫入(距離)センサ320を備えている。
スライドユニット310が取付アーム36の先端に固定的に取り付けられている。打込工具300は、スライドユニット310と中央部付近で機体固定部材307、先端(ビスホルダ306)が先端固定部材308で連結されている。貫入(距離)センサ320は打込工具300に固着されている。
機体固定部材307のスライドユニット側は、スライドユニット310のスライド案内部材311に沿って前後に移動する。スライド案内部材311に沿って機体固定部材307で固定されている打込工具300も前後に移動することとなる。
機体固定部材307は球面滑り軸受け309を介して打込工具300に取り付けてある。スライドユニット310側が反るなどの傾きが生じても打込工具300に内蔵されているビットの軸心は調心されてビスを真直ぐに打ち込むことができる。
【0045】
(打込工具の構造)
打込工具300は、機体301の内部にドライバ302、機体の後部にビス打ちモータ304、先端にビスホルダ306を備えている。ドライバ302にはビット軸が設けられており、ビット先端302aが「十」又は「一」に形成されている。ビスホルダ306は
筒状の機体の先端部に設けた摺動部305に接続している。ビスホルダ306はビス供給機構34から供給されるビスを受け止める。ビス打ちモータ304の回転がビット軸を回転してビスホルダ306に保持されているビス51を回転する。なお、石こうボードなどの板材にビスを打込んで、裏面の下地材まで貫入させるビットの前進運動はスライドユニットに機構が設けられている。
機体301の前部には、摺動部305が設けられており、ビスの板材への貫入に従って、摺動部305が、機体301の内側に引き込まれる構造になっている。
また、ビットを回転させる機構として、空気圧などの流体圧を用いることができる。
【0046】
(スライドユニットの構造)
スライドユニット310は、スライドユニット案内部材311とスライドモータ313
を備えている。スライドユニット案内部材311は、ねじ軸が回転してスライド部材312を移動させる。スライド部材312は、例えば雌ネジが設けられたナットである。スライドモータ313の回転がボールネジ314を回転させて、その回転によってスライド部材312が前後進する。このスライド部材312と機体固定部材307は結合されており、機体固定部材307に連結されている打込工具300も前後に移動することとなる。
スライドユニット310の前端には、ビスホルダ306に連結する先端固定部材308が取り付けられている。
【0047】
(ビス供給機構)
ビス供給機構34は、お盆状の容器であるビス受341が取付アーム36に斜めに取り付けられている。ビス受341には中心に軸が設けられている。ビス51を取り付けて渦巻き状にしたビステープ342を軸に通し、ビステープの先端側をビス受341の切り欠き部から搬出してビスホルダ306へ供給する。ビスホルダ306でビスはビットの先端に一致するように保持され、ビスを打込んでビットが後退する動作に応じて、次のビスが送り込まれる機構になっている。
本発明では、打込装置が反転するので、ビス受けには、蓋を設けてビステープの落下を防止する。
【0048】
<ビス打ち動作制御>
板打ちロボットAがビスを打込んで板材を壁に固定する昇降と移動の動作制御の例を図15に示す。
図6に示すように、走行台車1の上に昇降装置2を立設し、移動フレーム24に打込装置3を取り付ける。走行台車1にバッテリ72などの機器を搭載し、配線コネクタ71へ接続する。配線コネクタ71から電源ケーブルや情報ケーブルを各機器に接続して、板打ちロボットAを組み立てる。
板材が耐火下地材の石膏ボードと想定すると、3×6尺サイズあるいは3×8尺サイズで厚みが12.55mmあるいは9.5mmが標準的である。ビスは板材の厚みと下地材の種類に応じて選択される。枠材は、軽量鉄骨や木材で、縦に平行あるいは縦横に配置されることが多い。
板材は下材材53に順次仮止めされる。例えば、図15では、石膏ボードを壁の横方向に順にBoad1、BoadN、BoadEと並べて取り付けられる仮止めは、各石膏ボードの4隅に仮止ビス52が作業員によって打ち込まれている。作業員は、石膏ボードの中間高さに打込マークである開始マークCMsと基準ビスPs,50も敷設する。この例では、打込マークと基準ビスを石膏ボード一枚ごとに設けている。Boad1、BoadNには始まりマーク「△」と中断マーク「☆」、BoadEには始まりマーク「△」と終了マーク「□」である。
この例では、石膏ボードの高さ方向に7本、横方向に3本のビスが打込まれる想定である。
板打ちロボットAは、仮止ビス4本と基準ビス1本を除く16本のビスを各石膏ボードに打込む必要がある。
【0049】
(板打ちロボットによるビス打ち)
この例では、板材の中間にマークと基準ビスを設けることとし、板打ちロボットAは、
移動フレームを一番下に下げて、打込装置は上のほうに上げた状態を基本姿勢としている。打込装置は、打込位置検知センサが上で打込工具が取付アームの下端に取り付けられた状態を基本とする。そして、本例では、基準ビスを検知した後、打込装置を下に下げて、下方のビスから打ち始めて上に順次打ちあがる順番とする。板打ちロボットAの次列への横移動は、打込装置がそのままの位置を維持した状態で行うことと
する。すなわち、ビス打ちは上端から上端、あるいは、下端から下端へ打ち継がれることとする。
板打ちロボットAの進行方向の順に開始マーク(△)、基準ビスが設けられ、中断マーク(☆)は、ビスよりも後ろになるように設ける。
なお、マークや基準ビスの設置位置、板打ちロボットの基本姿勢、最初に打込みビスの位置をどのようにするかは、任意である。例えば、一列が終わったら、次列に横移動する前に、ロボットは基本姿勢に戻ることとし、横移動したのち、下からビス打ちを行うこともできる。
【0050】
図15に示す板打ちロボットAによるビス打ちは次のようになる。
板打ちロボットAは、壁際に沿って進み、boad1に付されている開始マークMs(△)を検知して、ビス打ちの開始を認知し、近くの基準ビスPsを検知して停止する。基準ビスPsの高さから下地材のパターンを判断してビスを打つ最初の位置に打込み装置を下げる。最下段には仮止めビスがあるので、図15の1番のビスを打って、順次上の2番のビスを打ち、基準ビスをスキップして、移動フレームを伸ばして、制動装置を利かせて昇降装置を伸長状態に固定し、打込装置を上方へ移動させて3、4番のビスを打つ。最上段のビスは仮止めビスであるので、スキップする。最上部なので、打込装置を反転して、次列の位置へ板打ちロボットAは横移動し、5番のビスから、順次打ち下がって、8番を打つ前に、移動フレームを降下させた状態にして、8番から下のビスを打つ。11番のビスを打つ前に、打込装置を反転して、11番のビスを打つ。最下段になったので、ビス打ちロボットAは、横移動して次列の位置で停止して、最下段が仮止めビスなので、12番から順次打ちあがり、14番のビスを打って、その左隣りにある中断マークCMi(☆)を検知して認知して記憶して、さらに、移動フレームを伸ばして、15、16番のビスを打って、最上位は仮止めビスであるので、反転して、横移動するが、中断マークがあったので、昇降装置と打込装置を基本姿勢に戻して、横移動を行い、BoadNに開始マークCMs(△)を検知し、さらに近くの基準ビスを検知したので、Boad1と同様の手順でビスを打って、中断して横移動して、BoadEで開始マークCMs(△)を検知し、さらに近くの基準ビスを検知したので、Boad1と同様の手順でビスを打って、終了マークCMe(□)を検知したので、最終列の最上位のビスが仮止めビスであったので、その下のビスで打込みを終了し、移動フレームを降下させて昇降装置と打込装置を基本姿勢にして、ビス打ちを終了する。
板打ちロボットが最上位のビスまたは最下位のビスを判断するのは、壁下地材の配置パターンに組み込むか、天井や床(上や下に障害物がある)を検知して判断することもできる。
【0051】
基準ビスPsを図3に示したように、横一列全部に設ける方法もある。このようにすることによって、中断マークCMi(☆)があった場合は、次に開始マークCMs(△)を検知するまで、ロボットは横移動をして、開始マークCMs(△)を検知したところから、縦方向のビス打ちと横方向の移動を繰り返し、中断マークCMi(☆)あるいは、終了マークCMe(□)を検知するまでビス打ちを行う。
【0052】
また別の方法として、打込マークは、各板材に開始マークと中断マークを付し、最後の板に開始マークと終了マークを付す、全板マーク方式と連続作業方式がある。連続作業方式は、複数の板材を連続したものとして扱って、開始マーク―中断マークを設けてビス打ちをする。その場合は、開始-(数枚)-中断マーク・・・・開始マーク―(数枚)―終了マークを設けておくことができる。
直角の壁面でも本発明の板打ちロボットは自走することができるが、直角の角部で一旦終了し、ロボットの姿勢をマニュアルで調整して再開させることもできる。また、板打ちロボットは横移動中に障害物を検知した場合は、停止するように設定されているので、障害物を設けることで、実質的にビス打ちを終了させることもできる。
次の部屋へのロボットの移動など、作業箇所の移動は、マニュアル操作で走行させるか分解して、次の工事現場へロボットを搬送する。
【符号の説明】
【0053】
A 板打ちロボット
M 打込指示マーク
CM 打込マーク
Px 打込規則
Ps 基準ビス
Vp 縦ピッチ
Hp 横ピッチ
CMs (打込)開始マーク(△)
CMe (打込)終了マーク(□)
CMi (打込)中断マーク(☆)

1 走行台車
10 基台
11 距離センサ
12 全方向走行車輪
13 位置決
14 位置決穴
15 位置決凸
16 切欠部
17 副支柱受段差部
18 車輪用取付穴

2 昇降装置
21 昇降機構
23 固定フレーム
23a 支柱
23b 副支柱
23c 上部横部材
23d 下部横部材
24 移動フレーム
24a 摺動面
24b 取付面
25 駆動機構
25a 昇降用モータ
25b 打込装置昇降用モータ
26 落としピン
27 昇降用制動機構
28 装着器
29 収納BOX

3 打込装置
31 打込位置検知センサ
32 打込機構
33 支持機構
34 ビス供給機構
36 取付アーム
4 壁(面)
41 基準位置

5 ビス
50 基準ビス
51 ビス
52 仮止ビス
53 下地材
6 板材
61 壁板材

7 搭載機器
71 配線コネクタ
72(72a、72b) バッテリ
73 カウンタウエイト
74 バッテリホルダ
8 制御装置
81 入出力端末
82 リモコン
85 ケーブル
90 車輪
91 操舵モータ
92 取付部
93 回転軸
93a 回転軸芯(=操舵軸)
94 支承
95 インホイールモータ
96 伝導系

151 止着材(ビス)
152 仮止めビス
160 板材
200 板打ちロボット
211 検知部
212 打込規則決定部
213 打込作業部
214 打込規則設定部
220 昇降装置
230 打込装置
231 検知センサ
240 走行装置
250 制御部

300 打込工具
301 機体
302 ドライバ
302a ビット先端
304 ビス打ちモータ
305 摺動部
306 ビスホルダ
307 機体固定部材
308 先端固定部材
309 球面滑り軸受け
310 スライドユニット
311 スライド案内部材
312 スライド部材
313 スライドモータ
314 ボールネジ
320 貫入(距離)センサ
330 支持構造
331 接続マウント
332 アーム回転機構
341 ビス受
342 ビステープ
図1
図2
図3
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図5
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