(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127674
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/21 20060101AFI20230907BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E04B1/21 C
E04B1/58 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031505
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭臣
(72)【発明者】
【氏名】小澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 武蔵
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AC02
2E125AG03
2E125AG12
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】 最小限の高所作業や足場上の作業によってプレキャスト柱とプレキャスト仕口部材とを一体的に固定接合する。
【解決手段】 柱コンクリート上面から複数本の柱主筋1が突出している柱プレキャスト部材10と、柱主筋1を保持する貫通孔2を有する仕口部プレキャスト部材20との接合において、柱プレキャスト部材10の上面と仕口部プレキャスト部材20の下面との間に、側面が弾性封止材15で区画されたグラウト充填空間30が形成されるように、柱主筋1を貫通孔2内に保持させつつ、仕口部プレキャスト部材20を柱プレキャスト部材10上に載置する。次いで、貫通孔2を介してグラウト充填空間30内に仕口部プレキャスト部材20の比重よりも低比重のグラウトを充填し、柱プレキャスト部材10と仕口部プレキャスト部材20とを一体接合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱コンクリート上面から複数本の柱主筋が突出している柱プレキャスト部材と、前記柱主筋を保持する貫通孔を有する仕口部プレキャスト部材との接合方法において、
前記柱プレキャスト部材上面と前記仕口部プレキャスト部材下面との間に、側面が封止材で区画されたグラウト充填空間が形成されるように、前記柱主筋を前記貫通孔内に保持させつつ、前記仕口部プレキャスト部材を前記柱プレキャスト部材上に載置し、
前記貫通孔を介して前記グラウト充填空間内に前記仕口部プレキャスト部材の比重よりも低比重のグラウトを充填し、
前記柱プレキャスト部材と前記仕口部プレキャスト部材とを一体接合することを特徴とする柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項2】
前記グラウト充填空間は、
前記柱プレキャスト部材の上端側部と前記仕口部プレキャスト部材の下端側部とに幅方向拡幅部を設け、前記柱プレキャスト部材の上面と前記仕口部プレキャスト部材の下面の少なくとも一方に形成されたグラウト充填凹部と、前記柱プレキャスト部材の柱断面を確保するように取り付けられた前記封止材と、
で区画されてなる請求項1に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項3】
前記グラウト充填空間は、
前記柱プレキャスト部材の上面と、前記仕口部プレキャスト部材の下面と、前記仕口部プレキャスト部材の下面から突出させたふさぎ板の下端内周面に沿って取り付けられた封止材と、
で区画されてなる請求項1に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項4】
前記封止材は、前記柱プレキャスト部材上に前記仕口部プレキャスト部材が載置された際に弾性変形して前記柱プレキャスト部材と前記仕口部プレキャスト部材とに密着して前記グラウト充填空間の側面を区画する弾性封止材である請求項2または請求項3に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項5】
前記封止材は、前記柱プレキャスト部材または前記仕口部プレキャスト部材の外周面に保持されて前記グラウト充填空間の側面を区画する型枠部材である請求項1に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項6】
前記仕口部プレキャスト部材は、前記貫通孔と並列配置されたグラウト充填孔を有する請求項1に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【請求項7】
前記仕口部プレキャスト部材上端から前記貫通孔を介して前記グラウトを充填流下して前記グラウト充填空間内を充満させ、前記柱主筋が保持された貫通孔からの前記グラウトの充溢を確認する請求項1に記載の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最小限の高所作業や足場上の作業によってプレキャスト鉄筋コンクリート製の柱部材と仕口部部材とを一体的に接合可能な柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャスト鉄筋コンクリート製の柱(柱プレキャスト部材)に、プレキャスト鉄筋コンクリート製(以下、単にプレキャストと記す。)の仕口部部材(仕口部プレキャスト部材)を一体的に接合する接合工法として、柱プレキャスト部材上に所定のクリアランスを設けて仕口部プレキャスト部材を載置し、クリアランス部分にグラウト充填して接合部の一体化を図る方法がある。この接合方法では、接合部に設けられたクリアランス部分の外周を覆うために、桟木等の角棒状の封止材で塞いで型枠としたり(特許文献1)、ゴム圧着片が取り付けられたシール用金具を組み合わせて井桁状にしてプレキャスト部材の外周を覆い(特許文献2)、接合部のクリアランス部分にモルタル充填を行う方法が開示されている。このほか、封止材として細長形状のエアチューブを用いる方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-49657号公報
【特許文献2】特開平5ー311737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された技術では、プレキャスト柱上端の外周全面に封止材(型枠)等を設けるために、高所作業車や足場などを用いて柱上部まで作業員が上がって柱全周面での作業を行う必要があった。また、高所作業車や足場などを配備、設置するために安定したコンクリート作業床等を設ける必要があり、これらを設置する付帯作業も発生していた。
【0005】
また、柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材とを一体化するために、仕口部プレキャスト部材の上部(上面)からまたは下部から所定の圧力をかけてグラウトを充填する必要がある。その場合、グラウトには仕口部プレキャスト部材と同等以上の比重を有するグラウトが用いられることもある。この場合、グラウトが充填される部分の上部のプレキャスト仕口部材がグラウトの充填圧によって浮き上がって設置位置からずれたりしないように、プレキャスト仕口部材を堅固に固定しておく必要があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、最小限の高所作業や足場上の作業によってプレキャスト柱と仕口部材とを一体的に固定接合できるようにした柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合方法は、柱コンクリート上面から複数本の柱主筋が突出している柱プレキャスト部材と、前記柱主筋を保持する貫通孔を有する仕口部プレキャスト部材との接合方法において、前記柱プレキャスト部材上面と前記仕口部プレキャスト部材下面との間に、側面が封止材で区画されたグラウト充填空間が形成されるように、前記柱主筋を前記貫通孔内に保持させつつ、前記仕口部プレキャスト部材を前記柱プレキャスト部材上に載置し、前記貫通孔を介して前記グラウト充填空間内に前記仕口部プレキャスト部材の比重よりも低比重のグラウトを充填し、前記柱プレキャスト部材と前記仕口部プレキャスト部材とを一体接合することを特徴とする。
【0008】
前記グラウト充填空間は、前記柱プレキャスト部材の上端側部と前記仕口部プレキャスト部材の下端側部とに幅方向拡幅部を設け、前記柱プレキャスト部材の上面と前記仕口部プレキャスト部材の下面の少なくとも一方に形成されたグラウト充填凹部と、前記柱プレキャスト部材の柱断面を確保するように取り付けられた前記封止材と、で区画されてなることが好ましい。
【0009】
前記グラウト充填空間は、前記柱プレキャスト部材の上面と、前記仕口部プレキャスト部材の下面と、前記仕口部プレキャスト部材の下面から突出させたふさぎ板の下端内周面に沿って取り付けられた封止材と、で区画されてなることが好ましい。
【0010】
前記封止材は、前記柱プレキャスト部材上に前記仕口部プレキャスト部材が載置された際に弾性変形して前記柱プレキャスト部材と前記仕口部プレキャスト部材とに密着して前記グラウト充填空間の側面を区画する弾性封止材であることが好ましい。
【0011】
前記封止材は、前記柱プレキャスト部材または前記仕口部プレキャスト部材の外周面に保持されて前記グラウト充填空間の側面を区画する型枠部材であることが好ましい。
【0012】
前記仕口部プレキャスト部材は、前記貫通孔と並列配置されたグラウト充填孔を有することが好ましい。
【0013】
前記仕口部プレキャスト部材上端から前記貫通孔を介して前記グラウトを充填流下して前記グラウト充填空間内を充満させ、前記柱主筋が保持された貫通孔からの前記グラウトの充溢を確認することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態において、接合前の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材とを、柱上面に形成されたグラウト充填凹部が分かるように示した斜視図。
【
図2】
図1に示した柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材とを側面視した接合前の構成と、接合後の構成を示した側面図。
【
図3】
図1に示した仕口プレキャスト部材の上面、下面を示した平面図、底面図。
【
図4】
図1に示した柱プレキャスト部材と、仕口部プレキャスト部材の接合手順を示した施工順序図。
【
図5】本発明の第2実施形態において、接合前の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材とを示した斜視図。
【
図6】
図5に示した柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材とを側面視した接合前の構成と、接合後の構成を示した側面図。
【
図7】
図5に示した仕口プレキャスト部材の上面、下面を示した平面図、底面図。
【
図8】
図5に示した柱プレキャスト部材と、仕口部プレキャスト部材の接合手順を示した施工順序図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の柱プレキャスト部材と仕口部プレキャスト部材と接合方法の第1実施形態の構成及びその一連の接合工程について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0016】
図1は、一例として、一辺が1000mmの略正方形断面で、高さ6mの柱プレキャスト部材10の上部と、その柱上面10bに載置され、接合される仕口部プレキャスト部材20との接合前の状態を示している。
図2(a)は、
図1に対応した側面の状態を示している。両図に示したように、柱上面10bからは、仕口部プレキャスト部材20を貫通する異形棒鋼(D32)の柱主筋1が24本突出しており、突出長さは仕口部プレキャスト部材20の高さ(約1400mm)より220mm程度長く設定されている。本実施形態では、仕口部プレキャスト部材20には仕口部内を貫通する柱主筋本数の柱主筋貫通孔2に加え、柱主筋貫通孔2と同様に柱上下方向に貫通する1個のグラウト充填孔3が設けられている。なお、柱主筋貫通孔径が主筋径より十分大きい場合、柱主筋貫通孔2がグラウト充填孔3を兼ねることができる。
【0017】
柱プレキャスト部材10上端の、仕口部プレキャスト部材20の下端と接合される部位には、
図1、
図2(a)に示したように、柱側拡幅部10aが形成されている。この柱側拡幅部10aは、柱側面より約50mmの下側ハンチを含め高さ150mm、幅50mm程度拡幅されており、柱上面10bでの断面寸法は1100mm角となっている。また、この柱上面10bのコンクリート面には、各辺の周縁から幅25mmを確保して深さ6mmの平面視正方形状の柱側グラウト充填凹部11が形成されている。
【0018】
一方、仕口部プレキャスト部材20は、
図1、
図2(a)に示したように、外周面が鋼板製のふさぎ板4で覆われ、ふさぎ板4で囲まれた空間に内部コンクリート23が打設された合成構造からなる。本実施形態では、ふさぎ板4の四方の外側面に所定断面形状の梁端部5が溶接接合されている。また、柱プレキャスト部材10上端と接合される部材下端の外周部位には、仕口部側拡幅部20aが形成されている。この仕口部側拡幅部20aは、仕口部のふさぎ板4の下端から露出している鉄筋コンクリート部分が仕口部断面より高さ75mm、幅50mm程度、幅方向に拡幅され、仕口部下端は1100mm角となっている。また、この仕口部の内部コンクリート下面23aには、
図3(b)に示したように、各辺の周縁幅25mmを確保して深さ6mmの平面視正方形状の仕口部側グラウト充填凹部21が形成されている。
【0019】
ここで、上述した柱プレキャスト部材10と、仕口部プレキャスト部材20の接合方法について、
図4(a)~(c)を参照して説明する。まず、柱プレキャスト部材10を所定の建て込み位置に立設し、その後に、
図4(a)に示したように、柱プレキャスト部材10の上面の柱側グラウト充填凹部11の周縁部10cに沿い、区画する範囲が柱断面を確保する略正方形となるように、弾性封止材としてのバックアップ材15を取り付ける。このバックアップ材15は、断面形が厚さ約40mm、幅約20mmの角形断面のEVA樹脂製の角棒材で、載荷に伴い弾性変形可能な柔軟な合成樹脂部材である。このバックアップ材15のコンクリート面への取り付けは、バックアップ材15の一面にあらかじめ貼付されていた粘着テープ(図示せず)で固定することが好ましい。さらに、柱側グラウト充填凹部11上に高さ20mmのスペーサー16を複数個設置する(
図4(b))。このスペーサー16は仕口部プレキャスト部材20の自重によっても変形しない剛性、強度を有する部材からなることが好ましい。たとえば既製のモルタル製、金物、合成樹脂製品等のスペーサー16を用いることができる。本実施形態では、バックアップ材15は、載置された仕口部プレキャスト部材20がスペーサー16上に載るまで弾性変形して仕口部プレキャスト部材20と柱プレキャスト部材10とが対向し、バックアップ材15により側方が区画された高さ20mmのグラウト充填空間30が形成される。このグラウト充填空間30内にグラウト充填孔からグラウトGが流下充填され、グラウト充填空間30内にグラウトが充満し、その後のグラウト固化に伴って柱プレキャスト部材10の上面と仕口部プレキャスト部材20の下面とが一体接合される。
【0020】
充填されるグラウトGには、比重が仕口部プレキャスト部材20のコンクリート比重より小さいプレミックスタイプの高強度無収縮モルタルが使用されている。本実施形態では、仕口部プレキャスト部材20の比重が24kN/m3であるのに対してグラウトGの比重は21kN/m3に設定されている。このように、グラウトGの比重を上載された仕口部プレキャスト部材20の比重より低比重とすることにより、比重差によって充填されたグラウトG上に位置する仕口部プレキャスト部材20の持ち上がり(浮き上がり)が生じるのを防止することができる。また、グラウトGはテーブルフロー値300mm程度の高流動性を有するため、グラウトGを仕口部プレキャスト部材20の上面側からグラウト充填孔(図示せず)を介して流し込むだけでグラウト充填空間30の隅部まで確実に充満される。さらに充填を進めると、グラウトGは各柱主筋貫通孔2内を上昇して各柱主筋貫通孔2の上端から充溢される。各貫通孔上端からの充溢状態を目視確認することで、グラウト充填空間30及び仕口部プレキャスト部材20内の全ての柱主筋貫通孔2がグラウトGで充満されたことが確認できる。
【0021】
[第2実施形態]
以下、本発明の柱プレキャスト部材10と仕口部プレキャスト部材20と接合方法の第2実施形態の構成および一連の接合工程について、
図5~
図8を参照して説明する。
【0022】
図5は、第2実施形態において、第1実施形態とほぼ同形(一辺960mmの略正方形断面、柱高さ6m)のプレキャスト鉄筋コンクリート製の柱(柱プレキャスト部材10)の上部と、その柱上面10bに載置され、接合される仕口部プレキャスト部材20とを示している。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、柱上面10bから仕口部プレキャスト部材20を貫通する異形棒鋼(D32)の柱主筋1が24本突出し仕口部プレキャスト部材20には仕口部内を貫通する柱主筋本数の柱主筋貫通孔2に加え、柱主筋貫通孔2と同様に柱上下方向に貫通する1個のグラウト充填孔3が設けられている。
【0023】
柱プレキャスト部材10の上端の仕口部プレキャスト部材20の下端と接合される部位には、
図5、
図6(a)に示したように、柱側拡幅部10aが形成されている。この柱側拡幅部10aは、柱断面より高さ120mm、幅20mm程度拡幅されており、柱コンクリート上面10bは1000mm角となっている。柱上面10bは、第1実施形態と異なり平滑面となっている(
図5)。
【0024】
一方、仕口部プレキャスト部材20は、一辺1000mmの仕口部ふさぎ板4(一例として厚さ9mm鋼板)により梁上フランジ取り付け位置から柱上端との接合面近傍までの外側面が覆われている。仕口部プレキャスト部材20内の内部コンクリート23は、ふさぎ板4の下端4aが内部コンクリート23の下面23aから20mmだけ突出するように打設されている。本実施形態でもふさぎ板4の四方の外側面に所定断面形状の梁端部5が溶接接合されている。
【0025】
本実施形態では、内部コンクリート23の下面23aと柱プレキャスト部材10のコンクリート上面10bとの間に形成された高さ20mmのクリアランス部分がグラウト充填空間35として機能する。よって、第2実施形態では、各図に示したように、第1実施形態の仕口部側拡幅部20aに相当するような大きな拡幅部は設けられていない。
【0026】
ここで、第2実施形態の柱プレキャスト部材10と、仕口部プレキャスト部材20の接合方法について、
図8(a)~(c)を参照して説明する。その施工手順は、第1実施形態とほとんど同様にであるため、第2実施形態特有の点についてのみ説明する。柱プレキャスト部材10の所定の建て込み位置への立設後に、
図8(a)に示したように、断面形が厚さ約30mm、幅約10mmの角形断面のEVA樹脂製の角棒材状のバックアップ材15を、仕口部プレキャスト部材20のふさぎ板4の下端4aの内周面に沿って貼着する。さらに、仕口部プレキャスト部材20のふさぎ板4の下端4aが柱プレキャスト部材10の縁部に載るように、仕口部プレキャスト部材20を載置する(
図8(b))。この時、バックアップ材15は、仕口部プレキャスト部材20の自重により弾性変形して仕口部プレキャスト部材20と柱プレキャスト部材10とに密着し、バックアップ材15により側方が区画されたグラウト充填空間35が形成される。次いでグラウト充填空間35内にグラウト充填孔(図示せず)からグラウトGを流下充填することでグラウト充填空間35内にグラウトGが充満し、グラウトGの固化に伴って柱プレキャスト部材10のコンクリート上面10bと仕口部プレキャスト部材20の内部コンクリート23の下面23aとが一体接合される(
図8(c))。
【0027】
本実施形態でも、充填されるグラウトGの比重は、仕口部プレキャスト部材20のコンクリート比重より小さい、高流動性を有するグラウトGが使用されている。このため、グラウトGを仕口部プレキャスト部材20の上面側からグラウトGを流し込むだけでグラウト充填空間35内に完全に充満され、グラウトGが各柱主筋貫通孔2内を上昇して各柱主筋貫通孔2の上端から充溢され、グラウトGの各部への充溢状態を目視確認することができる。
【0028】
また、他の実施形態として、柱プレキャスト部材上にスペーサーを介して仕口部プレキャスト部材を載置し、所定高さのグラウト充填空間を確保した状態で、柱プレキャスト部材の上端と仕口部プレキャスト部材との間を覆うようにせき板を宛がい、せき板を柱プレキャスト部材、仕口部プレキャスト部材で支持してグラウト充填空間の側方を区画するようにしてもよい。この場合、せき板でグラウトGのグラウト充填空間外への漏れは防止できるが、密閉性を高めるためにグラウト充填空間の側方を覆うようにバックアップ材を合わせて用いてもよい。
【0029】
なお、上述した各部材の寸法等は例示であり、所望の接合部構造により各種の寸法、数値が設定されることは言うまでもない。また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 柱主筋
2 柱主筋貫通孔
3 グラウト充填孔
4 ふさぎ板
5 梁端部
10 柱プレキャスト部材
10a 柱側拡幅部
11 柱側グラウト充填凹部
15 バックアップ材(弾性封止材)
16 スペーサー
20 仕口部プレキャスト部材
20a 仕口部拡幅部
21 仕口部側グラウト充填凹部
23 内部コンクリート
30,35 グラウト充填空間