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  • 特開-音響構造材及び構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127710
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】音響構造材及び構造体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230907BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031565
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪敏
(72)【発明者】
【氏名】中川 美薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 友輔
(72)【発明者】
【氏名】竹本 周平
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061BB37
(57)【要約】
【課題】構造材としての機能を有し且つ軽量化を実現する音響材を提供する。
【解決手段】音響構造材は、音波を吸収する吸音層を有する表面部と、表面部の背面に接合された背面部とを備える。背面部が、繊維強化プラスチック製の2枚の板状部材と、2枚の板状部材に挟まれた反射層とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を吸収する吸音層を有する表面部と、
前記表面部の背面に接合された背面部とを備え、
前記背面部が、繊維強化プラスチック製の2枚の板状部材と、前記2枚の板状部材に挟まれた反射層とを有する、
音響構造材。
【請求項2】
前記表面部は水よりも密度が大きい、
請求項1に記載の音響構造材。
【請求項3】
前記表面部は、気泡分散型粘弾性材料又は気孔構造型粘弾性材料からなる、
請求項1又は2に記載の音響構造材。
【請求項4】
前記背面部は前記表面部よりも密度が小さい、
請求項1に記載の音響構造材。
【請求項5】
前記表面部は複数の前記吸音層からなる積層構造を有し、前記背面部に近い前記吸音層ほど密度が小さい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の音響構造材。
【請求項6】
フレーム部材と、
前記フレーム部材に結合された請求項1~5のいずれか一項に記載の音響構造材と、を備える、
構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造材としての機能を有する音響材及びそれを備える構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、音波を吸収する吸音材や音波を遮断する遮音材などの音響材が知られている。例えば、特許文献1は、板状の遮音材である遮音板を開示する。
【0003】
特許文献1の遮音板は、一側面に凹部が形成されたゴム弾性体から成る遮音材本体と、遮音材本体の上記の一側面を覆うカバー部材とを備える。カバー部材は、両側面に配置されたゴム層と、ゴム層の間に配置された繊維補強樹脂層とを有し、この繊維補強樹脂層によって経年後もカバー部材の形状が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-166779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、板状の音響材は、構造物のフレームや面材に貼り付けられるか、ボルト及びナット等で締結される。この様式を合理化するにあたり、音響材自体は構造材としての機能や強度を備えていない。音響材に構造材としての強度を併せ備えるために金属製の構造面材を単純に組み合わせると、重量の増加を免れないうえ、吸音性能が低下する。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、構造材としての機能を有する音響材及びそれを用いる構造体の軽量化を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る音響構造材は、
音波を吸収する吸音層を有する表面部と、
前記表面部の背面に接合された背面部とを備え、
前記背面部が、繊維強化プラスチック製の2枚の板状部材と、前記2枚の板状部材に挟まれた反射層とを有することを特徴としている。
【0008】
また、本開示の一態様に係る構造体は、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に結合された前記音響構造材と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、構造材としての機能を有する音響材及びそれを用いる構造体の軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る音響構造材の断面図である。
図2図2は、表面部が複数の吸音層からなる変形例に係る音響構造材の断面図である。
図3図3は、音響構造材が構造物の構成部材として用いられた例を示す図である。
図4図4は、従来の音響材が構造物の構成部材として用いられた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。図1は本開示の一態様に係る音響構造材1の断面図である。図1に示す音響構造材1は、音響材及び構造材としての機能を併せ備える板状部材である。音響材とは、音波を吸収する吸音材と、音波を遮断する遮音材とを指し、本開示に係る音響構造材1は吸音材及び遮音材の両方の機能を備える。構造材とは、建築物、船体、車体、及び機体などの構造物の構成要素(構造材料)となる部材である。構造材には荷重が掛かることから、非構造部材と比較して高い強度及び曲げ剛性が要求される。
【0012】
音響構造材1は、表面部2と背面部4とが積層されてなる。表面部2の背面に背面部4が接合されており、表面部2と背面部4は一体化されている。音響構造材1の表面には表面部2が表れ、背面には背面部4が表れている。
【0013】
表面部2は、音波を吸収して反射波を減衰させる吸音機能を有する。表面部2の構成材料及び構造は、音響構造材1の使用態様に合わせて選択されることが望ましい。本開示に係る音響構造材1は水中で使用される態様を想定して、表面部2は気泡分散型粘弾性材料からなり、水中で音波を吸収して反射波を減衰させる機能を有する。気泡分散型粘弾性材料は、ゴム又はゴム状樹脂などの粘弾性材料の内部に多数の微細気泡が略均一に分散したものである。気泡分散型粘弾性材料は、発泡体であってよい。或いは、表面部2は、気孔構造型粘弾性材料から構成されていてもよい。表面部2の厚みは、減衰したい周波数帯における最高周波数の波長の1/4乃至1/16程度が望ましい。表面部2の固有音響インピーダンス値を水の固有音響インピーダンス値を基準として表した指標値K0(K0=表面部2の固有音響インピーダンス値/水の固有音響インピーダンス値)は0.5以上0.9以下が望ましい。
【0014】
図2に示すように、表面部2は、固有音響インピーダンス値の異なる2種類以上のnの吸音層Aからなる積層構造を有していてよい。ここで、nは実数であり、nの値が大きいほど背面部4に近い。図2に示す例では、n=3である。例えば、第1吸音層A1の固有音響インピーダンス値のほうが第n吸音層Anの固有音響インピーダンス値よりも大きい。その上で、第1吸音層A1の固有音響インピーダンス値を水の固有音響インピーダンス値を基準として表した指標値K1(K1=第1吸音層A1の固有音響インピーダンス値/水の固有音響インピーダンス値)は0.5以上0.9以下が望ましい。同様に、第n吸音層Anの固有音響インピーダンス値を水の固有音響インピーダンス値を基準として表した指標値Kn(Kn=第n吸音層Anの固有音響インピーダンス値/水の固有音響インピーダンス値)は0.5以上0.9以下が望ましい。つまり、表層の第1吸音層A1と水との固有音響インピーダンス値の差は音波の反射を抑える程度に十分に小さく、第n吸音層Anと水との固有音響インピーダンス値の差はそれよりも大きい。例えば、指標値K1が0.9である場合に、指標値Knは0.7である。そして、第(n-1)吸音層An-1の指標値Kn-1は、第n吸音層Anの指標値Knよりも大きい。ここで、指標値Kn-1は、第(n-1)吸音層An-1の固有音響インピーダンス値/水の固有音響インピーダンス値である。固有音響インピーダンス値は、媒質の密度×媒質中の音速として表されることから、表面部2の密度は水の密度よりも大きく、且つ、第(n-1)吸音層An-1の密度は第n吸音層Anの密度よりも大きいこととなる。
【0015】
図1に戻って、背面部4は、表面部2を支える基台となり、音響構造材1に構造材としての強度と曲げ剛性を与える。また、背面部4は、音波を吸収する吸音機能、及び、音波を遮断して反射する遮音機能を有する。背面部4は、第1FRP板41、反射層43、及び、第2FRP板42が、この順に積層されてなる。第1FRP板41、反射層43、及び第2FRP板42は接合されて一体構造となっている。例えば、第1FRP板41と反射層43、及び、反射層43と第2FRP板42が接着により接合されていてよい。第1FRP板41は、表面部2と接合されている。例えば、第1FRP板41と表面部2は接着により接合されていてよい。
【0016】
第1FRP板41及び第2FRP板42は、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)から成る板状部材である。繊維強化プラスチックは、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などに、ガラス繊維、樹脂繊維、及び炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチックである。繊維強化プラスチックは、金属材料よりも比強度が高く、軽量化が可能である。第1FRP板41及び第2FRP板42の個々の厚みは、減衰したい周波数帯における最高周波数の波長の1/4乃至1/16程度が望ましい。
【0017】
反射層43は、音波を吸収して反射波を減衰させる機能を有する。本開示に係る反射層43は、表面部2と同様に、気泡分散型粘弾性材料又は気孔構造型粘弾性材料からなる。反射層43の厚みは、減衰したい周波数帯における最高周波数の波長の1/16乃至1/32程度が望ましい。つまり、反射層43の厚みは、表面部2と同程度かそれよりも小さい。反射層43の固有音響インピーダンス値を水の固有音響インピーダンス値を基準として表した指標値KR(KR=反射層43の固有音響インピーダンス値/水の固有音響インピーダンス値)は0.2以上0.4以下が望ましい。つまり、反射層43の固有音響インピーダンス値は表面部2の固有音響インピーダンス値よりも小さい。換言すれば、反射層43の密度は水の密度よりも小さく、反射層43の密度は表面部2の密度よりも小さい。
【0018】
背面部4は、第1FRP板41及び第2FRP板42の間に反射層43が介在することによって、同じ厚みのFRP板と比較して軽量となっている。このように、背面部4は、背面部4に要求される曲げ強度を備えるための厚みが、より軽量な構造で実現されている。
【0019】
ここで、上記構成の音響構造材1の音響機能について説明する。外部から音響構造材1の表面である表面部2へ音波が入射する。表面部2へ入射した音波の一部は表面部2で吸収され、余の一部は表面部2で反射され、残部は表面部2を透過する。背面部4の第1FRP板41と第2FRP板42は、音波を吸収しつつ反射する。表面部2を透過した音波の一部は、第1FRP板41で反射して表面部2で再び吸収され、残部は背面部4へ入る。背面部4へ入った音波の一部は、第1FRP板41及び第2FRP板42で反射して第1FRP板41と第2FRP板42の間に留まり、反射層43で吸収される。このように、背面部4は、入ってきた音波を吸収するとともに、音響構造材1の背面への音波の透過を抑制する。背面部4による音波の透過抑制および反射により、位相差による音波減衰も実現される。
【0020】
続いて、音響構造材1の適用例について説明する。図3は、音響構造材1の施工例を示す図である。図3に示す例では、音響構造材1は、構造物の表面を形成する構造体10として用いられている。構造体10は枠組みとなるフレーム部材5を備え、フレーム部材5に音響構造材1が取り付けられている。音響構造材1は、当該音響構造材1の背面を形成する背面部4の第2FRP板42とフレーム部材5とが接触するように配置されている。
【0021】
図4は、構造物の一要素としての従来の音響材101を示す図である。図4に示す従来例では、構造物を構成する構造体10Aはフレーム部材5と金属製面材102とを備え、フレーム部材5に金属製面材102が固定され、金属製面材102に音響材101が結合されている。このような従来例の金属製面材102及び音響材101の組み合わせと比較して、本開示に係る音響構造材1は、同等又はそれ以上の強度及び曲げ剛性を備えながら、金属製面材102の省略により構造体10を軽量化できる。
【0022】
〔総括〕
以上に説明した通り、本開示に係る音響構造材1は、
音波を吸収する吸音層を有する表面部2と、
表面部2の背面に接合された背面部4とを備え、
背面部4が、繊維強化プラスチック製の2枚の板状部材(第1FRP板41,第2FRP板42)と、2枚の板状部材41,42に挟まれた反射層43とを有することを特徴としている。
【0023】
上記構成の音響構造材1では、表面部2によって吸音材としての機能が備えられ、表面部2の背面に設けられた背面部4によって構造材としての機能が備えられる。背面部4は第1FRP板41と第2FRP板42の間に軽量の反射層43を挟んで一体構造とした、いわゆる、サンドイッチ構造を有する。このようなサンドイッチ構造を有する背面部4は、背面部4として金属板を採用する場合と比較して、軽量で大きな曲げ剛性を備えることができる。よって、本開示によれば、構造材としての強度及び曲げ剛性を備え且つ軽量化を実現する面状の音響材である音響構造材1を提供することができる。
【0024】
更に、背面部4は、第1FRP板41及び第2FRP板42で反射した音波が反射層43で吸収されることによって、吸音材及び遮音材としての機能を備える。よって、音響構造材1は、優れた遮音及び吸音機能を備える。
【0025】
上記構成の音響構造材1において、表面部2は水よりも密度が大きいものであってよい。
【0026】
上記構成の音響構造材1において、背面部4は表面部2よりも密度が小さいものであってよい。
【0027】
これにより、背面部4は軽量化され、音響構造材1の軽量化に寄与することができる。
【0028】
上記構成の音響構造材1において、表面部2は、傾斜的に密度が変化していく構造を有し、当該構造を実現するために任意のnの吸音層Aの積層構造を有していてよい。ここで、背面部4に近い吸音層Aほど密度が小さい。例えば、第(n-1)吸音層An-1の密度は第n吸音層Anの密度よりも大きい。
【0029】
これにより、表面部2が1種類の吸音層Aで形成される場合と比較して、高い吸音性能を備えることができる。
【0030】
上記構成の音響構造材1において、表面部2は、気泡分散型粘弾性材料又は気孔構造型粘弾性材料からなるものであってよい。この音響構造材1において、表面部2は、第(n-1)吸音層An-1と当該第(n-1)吸音層An-1の背面側に積層された第n吸音層Anとを有し、第(n-1)吸音層An-1及び第n吸音層Anは水よりも密度が大きく、且つ、第(n-1)吸音層An-1は第n吸音層Anも密度が大きいものであってよい。
【0031】
上記の音響構造材1は水中で音波の吸収に使用されるのに好適である。このような音響構造材1は、例えば、船体や水中航走体の構造外面材として用いることができる。
【0032】
また、本開示の一態様に係る構造体10は、フレーム部材5と、フレーム部材5に結合された音響構造材1と、を備える。
【0033】
上記構成の構造体10によれば、音響構造材1が金属材料製の構造材及び音響材としての機能を併せ備えるので、音響材と構造材とが別部材である場合と比較して構造体10の軽量化を実現できる。
【0034】
上記の開示は例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、本開示に含まれる特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 :音響構造材
2 :表面部
4 :背面部
5 :フレーム部材
10 :構造体
41 :第1FRP板(板状部材)
42 :第2FRP板(板状部材)
43 :反射層
A :吸音層
図1
図2
図3
図4