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  • 特開-エレベーター 図1
  • 特開-エレベーター 図2
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  • 特開-エレベーター 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127714
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B66B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031571
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳寛
(72)【発明者】
【氏名】沼田 聡志
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304DA47
3F304DA49
(57)【要約】
【課題】
引き上げ機構の構成部品を変更することなく引き上げ量を変更することができる非常止め装置を備えるエレベーターを提供する。
【解決手段】
本エレベーターは、乗りかご(3)と、乗りかごに設けられる非常止め装置(11)と、乗りかごに設けられ、非常止め装置の制動子を引き上げる引き上げ機構(110)と、を備えるものであって、引き上げ機構は、調速機ロープに接続される引き上げレバー(12)と、乗りかごにおいて回動可能に支持され、引き上げレバーの変位に応じて回動するリンク部材(17)と、を備え、リンク部材の端部に非常止め装置の制動子(14)が引き上げ可能に接続され、リンク部材は、回動軸の位置を変更可能に、構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、
前記乗りかごに設けられる非常止め装置と、
前記乗りかごに設けられ、前記非常止め装置の制動子を引き上げる引き上げ機構と、
を備えるエレベーターにおいて、
前記引き上げ機構は、
調速機ロープに接続される引き上げレバーと、
前記乗りかごにおいて回動可能に支持され、前記引き上げレバーの変位に応じて回動するリンク部材と、
を備え、
前記リンク部材の端部に前記非常止め装置の制動子が引き上げ可能に接続され、
前記リンク部材は、回動軸の位置を変更可能に、構成されていることを特徴とするエレベーター。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記リンク部材は、第1の孔部および第2の孔部を有し、
前記回動軸が、前記第1の孔部および前記第2の孔部の一方を通ることを特徴とすることを特徴とするエレベーター。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターにおいて、
前記リンク部材の前記端部における前記制動子との接続部と、前記第1の孔部との距離が、前記接続部と、前記第2の孔部との距離よりも大きいことを特徴とするエレベーター。
【請求項4】
請求項2に記載のエレベーターにおいて、
前記リンク部材は、他のリンク部材を介して、前記引き上げレバーと接続されることを特徴とするエレベーター。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記非常止め装置および前記引き上げ機構は、前記乗りかごの下方に位置することを特徴とするエレベーター。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
さらに、
前記乗りかごに設けられる他の非常止め装置と、
前記乗りかごに設けられ、前記他の非常止め装置の制動子を引き上げる他の引き上げ機構と、
を備え、
前記引き上げ機構および前記他の引き上げ機構はリンク部を介して機械的に接続されることを特徴とするエレベーター。
【請求項7】
請求項6に記載のエレベーターにおいて、
前記非常止め装置と、前記他の非常止め装置と、前記引き上げ機構と、前記他の引き上げ機構と、前記リンク部は、前記乗りかごの下方に位置することを特徴とするエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常止め装置を備えているエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、乗りかごの昇降速度を常時監視して、所定の過速状態に陥った乗りかごを非常停止させるために、調速機および非常止め装置が備えられている。一般に、乗りかごと調速機は調速機ロープによって結合されており、過速状態を検出すると、調速機が調速機ロープを制動することで乗りかご側の非常止め装置を動作させ、乗りかごを非常停止するようになっている。
【0003】
エレベーター用の非常止め装置に関する従来技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0004】
本従来技術においては、乗りかごの下部に、非常止め装置と、非常止め装置を動作させる引き上げ機構が設けられる。引上げ機構は、調速機ロープが接続される引き上げレバーと、引き上げレバーと非常止め装置とを連結する引き上げリンクを備える。調速機ロープがガバナによって制動されると、乗りかごの下降に伴って、引き上げレバーが回動する。引き上げリンクが、引き上げレバーの回動に連動して変位すると、非常止め装置が動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-193845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術では、引き上げ機構の取り付け位置に応じて引き上げ量が変更となる場合、引き上げ機構の構成部品を変更する必要が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、引き上げ機構の構成部品を変更することなく引き上げ量を変更することができる非常止め装置を備えるエレベーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベーターは、乗りかごと、乗りかごに設けられる非常止め装置と、乗りかごに設けられ、非常止め装置の制動子を引き上げる引き上げ機構と、を備えるものであって、引き上げ機構は、調速機ロープに接続される引き上げレバーと、乗りかごにおいて回動可能に支持され、引き上げレバーの変位に応じて回動するリンク部材と、を備え、リンク部材の端部に非常止め装置の制動子が引き上げ可能に接続され、リンク部材は、回動軸の位置を変更可能に、構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、引き上げ機構の構成部品を変更することなく引き上げ量を変更することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例であるエレベーターの概略構成図である。
図2】実施例における非常止め装置を作動させる機構の配置構成を示す概略的な正面図である。
図3】実施例おける非常止め装置および引き上げ機構の構成を示す側面図である。
図4】リンク部材の回動状態を示す引き上げ機構の部分構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態であるエレベーターについて、以下の実施例により図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるエレベーターの概略構成図である。
【0014】
本エレベーターは、昇降路上部に設置される巻上機を有し、巻上機におけるトラクションシーブ1および方向転換プーリー50に巻き掛けられる主ロープ2の一端部に乗りかご3が連結され、主ロープ2の他端部に釣り合いおもり4が連結されている。
【0015】
乗りかご3は、昇降路内において、主ロープ2によって吊られる。電動機によって巻上機が駆動されてトラクションシーブ1が回転すると、主ロープ2が駆動される。これにより、乗りかご3は、昇降路内に設置される一対のかご用ガイドレール5A,5Bに沿って、昇降路内を昇降する。また、釣り合いおもり4は、昇降路内に設置される一対のおもり用ガイドレール6A,6Bに沿って、乗りかご3とは反対方向に、昇降路内を昇降する。
【0016】
調速機7は、昇降路の上部に配置される調速機プーリー8と、昇降路の下部に設置される張りプーリー9と、調速機プーリー8と張りプーリー9との間に無端状に巻き掛けられる調速機ロープ10を有している。
【0017】
乗りかご3の下部には、非常時に、後述する制動子によって、かご用ガイドレール5A,5Bを挟持して、乗りかご3の昇降を停止させる非常止め装置11が配置されている。後述するように、非常止め装置11の引き上げ機構が備える引き上げレバー12の一端が調速機ロープ10に連結される。
【0018】
なお、本実施例では、非常止め装置11は、乗りかご3の下部の左右に一台ずつ設けられる。
【0019】
調速機ロープ10は、引き上げレバー12を介して乗りかご3と同期して昇降するので、調速機7は、調速機ロープ10の動きに応じて、乗りかご3の速度を検知できる。調速機7は、乗りかご3の昇降速度が定格速度を超えて第1過速度(例えば、定格速度の1.3倍を超えない速度)に達したことを検知すると、巻上機を駆動する電動機の電源および電動機を制御する制御装置の電源を遮断する。また、調速機7は、乗りかご3の下降速度が第2過速度(例えば、定格速度の1.4倍を超えない速度)に達すると、引き上げレバー12を介して非常止め装置11を動作させ、乗りかご3を機械的に非常停止させる。
【0020】
図2は、本実施例における非常止め装置11を作動させる機構の配置構成を示す概略的な正面図である。
【0021】
上述のように、非常止め装置11は、乗りかご3の下部の左右に一台ずつ設けられる。
各非常止め装置11上には、乗りかご3を非常停止させる場合に、非常止め装置11の制動子(図3の「14」)を引き上げる引き上げ機構110が設けられる。
【0022】
乗りかご3の下部において、乗りかご3の左右に位置する引き上げ機構110は、リンク用シャフト30を介して機械的に接続される。リンク用シャフト30は、乗りかご3の下枠60に固定される軸受け32およびシャフト用ブラケット31に回転可能に支持される。
【0023】
乗りかご3の下部の左右二か所に設けられる引き上げ機構110の一方は、引き上げレバー12を有する。引き上げレバー12の一端には、図2では図示されない調速機ロープ10(図1)が接続される。また、引き上げレバー12の他端は、リンク用シャフト30の一端に接続される。調速機ロープ10が調速機7によって制動されると、乗りかご3の下降とともに引き上げレバー12はリンク用シャフト30の回りに回動して、引き上げレバー12の一端が、上方(図2中の矢印Cの方向)へ変位する。
【0024】
引き上げレバー12の一端が変位すると、左右一対の非常止め装置11の一方(図2中右側)の制動子が、引き上げレバー12を備える引き上げ機構110によって引き上げられる。引き上げレバー12の一端が変位すると、すなわち引き上げレバー12が回動すると、リンク用シャフト30が回転する(図2中の矢印D)。これにより、リンク用シャフト30の他端に機械的に接続される引き上げ機構110(図2中左側)によって、左右一対の非常止め装置11の他方(図2中左側)の制動子が引き上げられる。
【0025】
このように、左右一対の非常止め装置11は、リンク用シャフト30によって連動する引き上げ機構110によって、共に動作する。
【0026】
図3は、本実施例おける非常止め装置11および引き上げ機構110の構成を示す側面図である。図3において、非常止め装置11は動作していない。すなわち、エレベーターは通常運転状態である。
【0027】
水平方向に延びる引き上げレバー12の一端部(図3中左側)には、図3では図示されない調速機ロープ10(図1)が接続される。引き上げレバー12は、引き上げレバー12の他端部近くでリンク用シャフト30の一端に接続される。これにより、引き上げレバー12は、リンク用シャフト30の回りで回動可能である。引き上げレバー12が回動すると、引き上げレバー12と共にリンク用シャフト30が回転する。
【0028】
引き上げレバー12の他端部(図2中右側)は、回転ピン44を介して、リンク部材21の一端部と互いに回動可能に接続される。
【0029】
リンク部材21の他端部(図2中右側)は、回動軸43を介して、水平方向に延びるリンク部材17の一端部に固定的に接続される接続部材16と、互いに回動可能に接続される。なお、リンク部材17は、引き上げレバー12よりも上方に位置する。
【0030】
リンク部材17の一端部には、回転ピンを挿通するために、孔部71および孔部72が設けられる。孔部71および孔部72は、水平方向に並設されている。リンク部材17は、孔部71および孔部72のいずれか一方に挿通される回転ピンを介して、下枠60(図2)に対して固定されるリンク部材用ブラケット70に回動可能に支持される。
【0031】
リンク部材用ブラケット70にも、回転ピンを挿通する2個の孔部が、リンク部材17の孔部71および孔部72に対応する位置に設けられている。すなわち、リンク部材用ブラケット70における2個の孔部は、水平方向に、孔部71および孔部72の距離と同じ距離だけ離れて並設されている。なお、本実施例では、孔部間の距離は、孔部中心間の距離である。
【0032】
リンク部材17の孔部71および孔部72の一方と、リンク部材用ブラケット70における対応する孔部とに挿通される回転ピンによって、リンク部材17はリンク部材用ブラケット70に回動可能に支持される。
【0033】
図3のように、リンク部材17が水平方向に延びるように位置する場合、回転ピンが孔部71および孔部72のいずれに挿通されても、リンク部材17とリンク部材用ブラケット70の相対的な位置関係は同じである。
【0034】
リンク部材17の他端部(図3中右側)は、非常止め装置11の上方で、回転ピン42を介して、リンク部材19の一端と、互いに回動可能に接続される。リンク部材19の他端は、回転ピン41を介して、非常止め装置11の制動子14を引き上げる引き上げロッド20と、互いに回動可能に接続される。
【0035】
非常止め装置11においては、筐体13内に、図3では図示されない、かご用ガイドレール5Aを挟んで左右対称に配置される一対の制動子14(楔状体)と、各制動子14の外側に配置される案内子15と、案内子15の反ガイドレール側からかご用ガイドレール5Aへの押圧力を与える図示しない弾性体(例えば、Uバネなどのバネ体)が配置されている。なお、本実施例における非常止め装置11は公知技術によるものである。
【0036】
引き上げレバー12の一端が上方(矢印C)に変位すると、リンク部材17が孔部71および孔部72の一方に挿通される回転ピンの回りに回動するので(矢印A)、リンク部材17の他端が上方(矢印E)へ変位する。これにより、引き上げロッド20が上方に変位するので、制動子14が引き上げられる。
【0037】
図3に示す非常止め装置11および引き上げ機構110は、乗りかご3が備える左右一対の非常止め装置11および引き上げ機構の組の一方の組であるが、他方の組も同様の構成を有する。なお、他方の組においては、引き上げレバー12に代えて、調速機ロープ10が接続されないリンク部材が用いられる。このリンク部材は、引き上げレバー12と同様にリンク用シャフト30に接続される。したがって、引き上げロッド20が上方に変位して、リンク用シャフトが回転すると、他方の組においても、引き上げ機構110が動作して、非常止め装置11の制動子14が引き上げられる。
【0038】
図4は、リンク部材17の回動状態を示す引き上げ機構110の部分構成図である。
【0039】
リンク部材17が、孔部71と、孔部71に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸として回動した場合のリンク部材17の位置を実線で示す。また、リンク部材17が、孔部72と、孔部72に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸として回動した場合のリンク部材17の位置を鎖線で示す。
【0040】
なお、両方の場合において、引き上げレバー12の上方への変位量は同じである。
【0041】
図4に示すように、回転ピン42の高さは、実線で示す方が鎖線で示す方よりも、図中のΔhだけ高くなる。すなわち、孔部71と、孔部71に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸とする方が、孔部72と、孔部72に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸とするよりも、非常止め装置11の制動子14の引き上げ量が大きくなる。
【0042】
本実施例においては、引き上げレバー12の上方への同じ変位量に対して、いずれの回動軸の回動角度も略同じ大きさである。また、図示のように、リンク部材17において、回転ピン42と孔部71を通る回動軸との距離(L2)が、回転ピン42と孔部72を通る回動軸との距離(L1)よりも大きい(L2>L1)。したがって、リンク部材17において回転ピン42が挿通している端部の上方(矢印E)への変位量は、孔部71と、孔部71に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸とする方が、孔部72と、孔部72に対応するリンク部材用ブラケット70の孔部とに挿通される回転ピンを回動軸とするよりも大きい。このため、前者の方が後者よりも制動子14の引き上げ量が大きくなる。
【0043】
なお、本実施例では、回動軸と回転ピン42との距離は、回動軸の中心と回転ピン42の中心との距離である。
【0044】
上述のように、本実施例によれば、乗りかご3の下部において回動可能に支持され、端部に非常止め装置11の制動子14が引き上げ可能に接続されるリンク部材17が、回動軸の位置を変更可能に構成される。これにより、制動子14の引き上げ量を変更することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、削除、他の構成の追加、他の構成との置換が可能である。
【0046】
たとえば、リンク部材に設ける孔部の個数は、2個に限らず複数個でもよい。
【0047】
また、リンク部材17およびリンク部材用ブラケット70に設ける孔部を長孔としてもよい。この場合、長孔における回動軸の位置を固定する部材が設けられる。
【0048】
また、エレベーターは、機械室レスエレベーターでもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…トラクションシーブ、2…主ロープ、3…乗りかご、4…釣り合いおもり、5A,5B…かご用ガイドレール、6A,6B…おもり用ガイドレール、7…調速機、8…調速機プーリー、9…張りプーリー、10…調速機ロープ、11…非常止め装置、12…引き上げレバー、13…筐体、14…制動子、15…案内子、16…接続部材、17…リンク部材、19…リンク部材、20…引き上げロッド、21…リンク部材、30…リンク用シャフト、31…シャフト用ブラケット、32…軸受け、41…回転ピン、42…回転ピン、43…回動軸、44…回転ピン、50…方向転換プーリー、60…下枠、70…リンク部材用ブラケット、71…孔部、72…孔部、110…引き上げ機構
図1
図2
図3
図4