(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127735
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】桁架け替え方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20230907BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E01D21/00
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031604
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達貴
(72)【発明者】
【氏名】蔦尾 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐名川 太亮
(72)【発明者】
【氏名】神田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA05
2D059CC05
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】工期を短縮し、コストを低減できると共に作業スペースを低減させることができる桁架け替え方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る桁架け替え方法は、河川Rの幅方向に沿って並ぶ複数の既設橋台2と、複数の既設橋台2を架け渡す既設桁3とを備えた河川横断橋1の桁架け替え方法である。桁架け替え方法は、河川Rから見て第1方向D1の両側に位置する地盤Gのそれぞれに工事桁10を設置する工程と、各工事桁10の下部に新設橋台20を構築する工程と、複数の既設橋台2、及び複数の新設橋台20の上方に新設桁30を設置する工程と、地盤Gに設置した工事桁10を撤去すると共に、地盤Gの上方に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置する工程と、既設桁3を撤去すると共に、河川Rの上方に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置する工程と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の幅方向に沿って並ぶ複数の既設橋台と、複数の前記既設橋台を架け渡す既設桁とを備えた河川横断橋の桁架け替え方法であって、
前記河川から見て前記幅方向の両側に位置する地盤のそれぞれに工事桁を設置する工程と、
各前記工事桁の下部に新設橋台を構築する工程と、
複数の前記既設橋台、及び複数の前記新設橋台の上方に新設桁を設置する工程と、
前記地盤に設置した前記工事桁を撤去すると共に、前記地盤の上方に位置する前記新設桁に枕木受桁を設置する工程と、
前記既設桁を撤去すると共に、前記河川の上方に位置する前記新設桁に枕木受桁を設置する工程と、
を備える桁架け替え方法。
【請求項2】
前記地盤の上方に位置する前記新設桁に前記枕木受桁を設置する工程、及び前記河川の上方に位置する前記新設桁に枕木受桁を設置する工程の後に、複数の前記既設橋台を撤去する工程を備える、
請求項1に記載の桁架け替え方法。
【請求項3】
前記新設桁を設置する工程の前に、前記既設橋台に前記新設桁を仮受けする仮桁受を設置する工程を備える、
請求項1又は2に記載の桁架け替え方法。
【請求項4】
前記既設桁は、上路桁であり、
前記新設桁は、下路桁である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の桁架け替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、河川横断橋の桁架け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭59-195908号公報には、工場又は架設現場において製作された橋桁を橋軸直角方向の橋脚上の架設位置まで水平ジャッキ等の送り出し装置で送る橋桁の横取り架設工法が記載されている。横取り架設工法では、架設位置において橋桁を、軌条台を介して橋脚上に設置する。
【0003】
軌条台は、橋脚から橋軸直角方向に延在するように配置される。この軌条台の上に橋桁が載せられる。その後、橋桁は、上記の送り出し装置によって架設位置に送られる。架設位置では、橋桁が扛上され、その後上記の軌条台が撤去される。橋桁と橋脚の間には本設用の支承が設置され、この支承によって橋桁が支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の桁架け替え方法としては、上記の横取り架設工法を実行する前に、既設橋台の両脇への新設橋台の構築、工事桁化、既設橋台撤去、及び横取り設備の構築が必要となる場合がある。このように、横取り架設工法を実行する場合には、事前の作業が煩雑となり、工期が長期化しておりコストが増大しているという現状がある。
【0006】
また、横取り架設工法では、橋桁を橋軸直角方向に移動させて架設作業を行うため、既設橋台の橋軸直角方向の両側に作業スペースを確保する必要がある。更に、上記の横取り設備としては、油圧式の水平ジャッキの配管等を配置しなければならないため、この点でも広い作業スペースが必要である。
【0007】
本開示は、工期を短縮し、コストを低減できると共に作業スペースを低減させることができる桁架け替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る桁架け替え方法は、河川の幅方向に沿って並ぶ複数の既設橋台と、複数の既設橋台を架け渡す既設桁とを備えた河川横断橋の桁架け替え方法である。桁架け替え方法は、河川から見て幅方向の両側に位置する地盤のそれぞれに工事桁を設置する工程と、各工事桁の下部に新設橋台を構築する工程と、複数の既設橋台、及び複数の新設橋台の上方に新設桁を設置する工程と、地盤に設置した工事桁を撤去すると共に、地盤の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置する工程と、既設桁を撤去すると共に、河川の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置する工程と、を備える。
【0009】
この桁架け替え方法では、河川から見て幅方向の両側に位置する地盤のそれぞれに工事桁を設置し、各工事桁の下部に新設橋台を構築する。新設橋台は、複数の既設橋台から見て河川の幅方向の両側に構築されるので、河川の幅を広げることができる。従って、河川の流量を多くして河川の洪水等を抑制できる。新設橋台を構築した後には、複数の既設橋台、及び複数の新設橋台の上に新設桁が設置される。その後、地盤に設置した工事桁を撤去して当該地盤の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置し、既設桁を撤去して河川の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置する。以上の工程を経て新設桁に枕木受桁を設置することにより、橋桁を橋軸直角方向に移動させる横取り架設を不要とすることができる。従って、事前の作業を簡易にできるので、工期を短縮してコストを低減させることができる。更に、水平ジャッキ等の横取り設備を不要にできるので、河川の幅方向の両側における作業スペースを低減させることができる。
【0010】
桁架け替え方法は、地盤の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置する工程、及び河川の上方に位置する新設桁に枕木受桁を設置する工程の後に、複数の既設橋台を撤去する工程を備えてもよい。この場合、複数の既設橋台が撤去されるので、河積阻害率を低減でき、河川における水の流量を更に増やすことができるので、河川の洪水等をより確実に抑制できる。
【0011】
桁架け替え方法は、新設桁を設置する工程の前に、既設橋台に新設桁を仮受けする仮桁受を設置する工程を備えてもよい。この場合、既設橋台の上方に設置される新設桁を仮桁受によって仮受けすることができる。
【0012】
前述した既設桁は、上路桁であってもよく、前述した新設桁は、下路桁であってもよい。この場合、既設桁の下面の高さよりも新設桁の下面の高さを高くすることが可能となる。従って、河川の水面に対する新設桁の高さを高くすることができるので、豪雨災害等が生じた場合であっても河川横断橋が流される事態をより確実に抑制できる。このように、災害に対する河川横断橋の耐性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、工期を短縮し、コストを低減できると共に作業スペースを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、実施形態に係る桁架け替え方法が適用される河川横断橋を示す側面図である。(b)は、
図1(a)の河川横断橋を示す平面図である。
【
図3】(a)は、
図1(a)の河川横断橋に工事桁が設置された状態を示す側面図である。(b)は、
図3(a)の河川横断橋を示す平面図である。
【
図4】(a)は、
図3(a)の河川横断橋に新設橋台が設置された状態を示す側面図である。(b)は、
図4(a)の河川横断橋を示す平面図である。
【
図5】(a)は、既設橋台に載せられた既設桁、仮桁受及びレールを示す縦断面図である。(b)は、河川の幅方向の両側に位置する地盤に載せられたバラスト及びレールを示す縦断面図である。
【
図6】(a)は、
図5(a)の河川横断橋に新設桁が設置された状態を示す側面図である。(b)は、
図6(a)の河川横断橋を示す平面図である。
【
図7】(a)は、
図5(a)の仮桁受の上に新設桁が載せられた状態を示す縦断面図である。(b)は、
図5(b)の地盤の上方に新設桁が載せられた状態を示す縦断面図である。
【
図8】(a)は、
図6(b)の河川横断橋における地盤の上方に位置する新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す平面図である。(b)は、
図8(a)の状態の平面図である。
【
図9】(a)は、
図7(b)の河川横断橋のバラストを撤去して枕木受桁を設置した状態を示す縦断面図である。(b)は、
図8の河川横断橋における河川の上方に位置する新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す縦断面図である。
【
図10】
図8(b)の新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す平面図である。
【
図11】河川の上方、及び地盤の上方に位置する新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す平面図である。
【
図12】(a)は、河川横断橋の工事桁が更に撤去された状態を示す側面図である。(b)は、
図12(a)の河川横断橋から既設橋台が撤去された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る桁架け替え方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
図1(a)は、実施形態に係る桁架け替え方法が実行される前の状態の河川横断橋1を示す側面図である。
図1(b)は、河川横断橋1を示す平面図である。
図2は、河川横断橋1が延在する方向である第1方向D1に直交する平面によって河川横断橋1を切断したときの縦断面図である。第1方向D1は、河川横断橋1の長手方向、又は河川Rの幅方向である。
【0017】
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示されるように、河川横断橋1は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の既設橋台2と、複数の既設橋台2に固定された既設桁3と、既設桁3の上に載せられた枕木4と、枕木4の上に載せられたレール5とを備える。本実施形態において、既設桁3は上路桁である。複数の既設橋台2は、第1方向D1に沿って並んでいる。
【0018】
例えば、既設橋台2は、既設桁3が載せられている凹部2bと、凹部2bにおける既設橋台2の第1方向D1の両端側に位置する凸部2cとを有する。一例として、既設桁3の長さは10m程度である。既設桁3の一端3f及び他端3gの位置は既設橋台2の鉛直上方に一致する。河川横断橋1は複数のレール5を備え、レール5は既設橋台2の鉛直上方において第1方向D1に沿って延在している。複数のレール5の上において第1方向D1に沿って鉄道車両Vが走行する。
【0019】
河川Rには河川水Wが流れている。河川横断橋1は、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って並ぶ一対の既設桁3を備える。第2方向D2は、例えば、河川横断橋1の幅方向、又は河川Rが流れる方向である。例えば、既設桁3は、H形鋼である。既設桁3は、既設橋台2の凹部2bの上面2dに固定される下フランジ3bと、枕木4及びレール5に連結される上フランジ3cと、下フランジ3b及び上フランジ3cの間で鉛直方向D3に延在するウェブ3dとを有する。
【0020】
枕木4は、第1方向D1に沿って一定間隔おきに並ぶように配置されている。各枕木4は、第2方向D2に沿って延在している。当該一定間隔は、一例として、0.6m程度である。河川横断橋1は、既設桁3の上フランジ3cに枕木4を連結する連結部材6を備える。例えば、第2方向D2に沿って並ぶ一対の連結部材6が設けられる。
【0021】
連結部材6は、既設桁3の上フランジ3cに枕木4を連結するフックボルト6bを備える。フックボルト6bの下端には、既設桁3の上フランジ3cに掛けられるフック部6cが設けられる。河川横断橋1は、第2方向D2に沿って並ぶ一対のレール5を備える。レール5は、例えば、タイプレート7を介して枕木4の上に固定されており、タイプレート7は枕木4の上面に犬釘8によって固定されている。
【0022】
次に、河川横断橋1の桁架け替え方法について説明する。本実施形態に係る桁架け替え方法では、河川Rの拡幅が行われる。すなわち、本実施形態に係る桁架け替え方法では、河川Rの幅を広げる工事が実行される。具体例として、特に近年、大雨又は短時間強雨の頻度が増えており、河川Rにおける河川水Wの流下能力の向上が求められている。本実施形態に係る桁架け替え方法では、河川Rを拡幅することによって河川水Wの流下能力の向上が可能となる。
【0023】
まず、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、河川Rから見て第1方向D1の両側の部分である土工部P1に位置する地盤Gのそれぞれに工事桁10を設置する(工事桁を設置する工程)。このとき、例えば、地盤Gを掘削して土留め11を構築し、平面視における土留め11の内側に工事桁10を設置する。
【0024】
例えば、工事桁10は、第1方向D1に沿って延びると共に第2方向D2に沿って並ぶ一対の第1桁材12と、第1桁材12の下部において第2方向D2に沿って延びると共に第1方向D1に沿って並ぶ一対の第2桁材13と、各第2桁材13から下方に延在する複数の杭14とを有する。
【0025】
更に、工事桁10は、第1桁材12の上部において第1方向D1に沿って並ぶ複数の枕木15を有する。平面視において、第1桁材12、第2桁材13及び複数の枕木15を囲むように土留め11が構築される。土留め11は、例えば、杭又はシートパイルである。また、杭14が土留め用の杭として機能してもよい。
【0026】
次に、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、各工事桁10の下部に新設橋台20を構築する(新設橋台を構築する工程)。このとき、各土工部P1における第1桁材12の下部に新設橋台20が構築される。新設橋台20の高さ(深さ)は、既設橋台2の高さよりも高い。
【0027】
図5(a)は、河川Rの上方に位置する部分である橋梁部P2における縦断面図を示している。
図5(b)は、土工部P1の工事桁10が構築されていない部分の縦断面図である。
図5(b)に示されるように、土工部P1は、地盤Gの上に設けられたバラストBを備え、バラストBの上にレール5が敷設されている。また、
図4(a)、
図4(b)及び
図5(a)に示されるように、既設橋台2に後述する新設桁30を仮受けするための仮桁受35を設置する(仮桁受を設置する工程)。
【0028】
仮桁受35は、一対の既設桁3から見て第2方向D2の両側のそれぞれに設置される。例えば、仮桁受35は、既設橋台2の凹部2bの上面2dに設置される。一例として、仮桁受35は、凹部2bの上面2dにおいて第2方向D2に延びる第1部材36と、第1部材36の上面に固定されている第2部材37と、第2部材37の上面に固定されている第3部材38とを含む。
【0029】
例えば、第1部材36、第2部材37及び第3部材38は鋼材である。しかしながら、仮桁受35は、第1部材36、第2部材37及び第3部材38を含むものに限られず、仮桁受35の構成及び形状等は特に限定されない。仮桁受35は、既設橋台2において嵩上げを行うために設けられる新設主桁台座であってもよく、コンクリート構造体であってもよい。コンクリート構造体である仮桁受35はロウソク基礎とも称される。
【0030】
続いて、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、複数の既設橋台2、及び複数の新設橋台20の上方に新設桁30を設置する(新設桁を設置する工程)。このとき、構築した仮桁受35(例えば第3部材38)の上面に新設桁30を設置する。本実施形態において、新設桁30は下路桁である。
【0031】
新設桁30は、既設桁3と同様、例えば、H形鋼であり、下フランジ31、上フランジ32及びウェブ33を有する。一例として、新設桁30は、橋梁部P2に設けられる第1新設桁30Aと、土工部P1に設けられる第2新設桁30Bとを含む。例えば、第1新設桁30Aの長さは、第1方向D1に沿って並ぶ一対の既設橋台2の間の距離よりも長い。
【0032】
例えば、第1新設桁30Aは、拡幅前の河川Rよりも第2方向D2の両側に張り出すように設けられる。第2新設桁30Bは、第1新設桁30Aの第2方向D2の両側のそれぞれに設けられる。例えば、第2新設桁30Bの長さは第1新設桁30Aの長さよりも短い。第2新設桁30Bは、第1新設桁30Aの第1方向D1の端部から新設橋台20まで延在するように設置される。土工部P1では、バラストBの第2方向D2の両側のそれぞれに新設桁30が設置される。
【0033】
新設桁30の設置が完了した後には、
図8(a)、
図8(b)及び
図9(a)に示されるように、一対の土工部P1のうちの一方(
図8(b)では左側)において、工事桁10を撤去し(工事桁を撤去する工程)、枕木受桁40を設置する(枕木受桁を設置する工程)。例えば、一対の新設桁30の間に位置するバラストBを除去して一対の新設桁30に枕木受桁40を設置する。土工部P1において、枕木受桁40は、一対の下フランジ31の上面に載せられると共に一対の新設桁30の間において第2方向D2に沿って延在するように設置される。枕木受桁40を設置した後には、枕木受桁40への枕木4の設置、及び枕木4へのレール5の設置を行う(枕木及びレールを設置する工程)。
【0034】
枕木受桁40は、第2方向D2に延在する鋼材であり、例えば、枕木受桁40の一端部及び他端部のそれぞれが新設桁30の下フランジ31の上面に載せられて新設桁30に固定(一例としてボルト固定)される。例えば、枕木受桁40は、枕木4が鉛直上方から挿入されて、挿入された枕木4を保持する断面コの字状の鋼材である。枕木受桁40からは設置された枕木4の上部が露出している。一例として、第1方向D1及び鉛直方向D3に延在する平面で切断した枕木受桁40の断面は、上方を向く開口を有するコの字状とされている。この開口に上方から枕木4が嵌め込まれ、枕木受桁40は嵌め込まれた枕木4を保持する。
【0035】
次に、
図9(b)及び
図10に示されるように、橋梁部P2において、既設桁3を撤去し(既設桁を撤去する工程)、枕木受桁40を設置する(枕木受桁を設置する工程)。具体的には、一旦、既設桁3から連結部材6、枕木4及びレール5を外し(既設のレール、及び既設の枕木を外す工程)、その後、新設桁30に枕木受桁40を設置する。橋梁部P2における枕木受桁40の設置は、例えば、鉄道車両Vが走行していない夜間の間に一晩で行われる。例えば、枕木受桁40の設置は、第1方向D1に沿って徐々に行われる。枕木受桁40を設置した後には、上記と同様に、枕木受桁40に既設の枕木4、及び既設のレール5を設置する(既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程)。
【0036】
続いて、
図11及び
図12(a)に示されるように、一対の土工部P1のうちの他方(
図11では右側)において、工事桁10を撤去し(工事桁を撤去する工程)、枕木受桁40を設置する(枕木受桁を設置する工程)。そして、前述と同様、枕木受桁40への枕木4の設置、及び枕木4へのレール5の設置を行う(枕木及びレールを設置する工程)。
【0037】
以上のように、地盤Gの上方(土工部P1)に位置する枕木受桁40へのレール5の設置、及び河川Rの上方(橋梁部P2)に位置する枕木受桁40へのレール5の設置の後には、例えば、
図12(b)に示されるように、既設橋台2を撤去する(既設橋台を撤去する工程)。このとき、一対の新設橋台20の間に位置する複数の既設橋台2が撤去される。
【0038】
より具体的には、既設橋台2に設置されていた仮桁受35を撤去し(仮桁受を撤去する工程)、その後、既設橋台2を撤去する。以上のように複数の既設橋台2を撤去することにより、河川Rを拡幅すると共に河川Rを新設橋台20の下部の高さまで深くできるので、河川Rにおける河川水Wの流量を増やすことができる。以上の工程を経て、本実施形態に係る桁架け替え方法の一連の工程が完了する。
【0039】
次に、本実施形態に係る桁架け替え方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る桁架け替え方法では、河川Rから見て第1方向D1(幅方向)の両側に位置する地盤Gのそれぞれに工事桁10を設置し、各工事桁10の下部に新設橋台20を構築する。新設橋台20は、複数の既設橋台2から見て河川Rの第1方向D1の両側に構築されるので、河川Rの幅を広げることができる。
【0040】
従って、河川Rの河川水Wの流量を多くして河川Rの洪水等を抑制できる。新設橋台20を構築した後には、複数の既設橋台2、及び複数の新設橋台20の上に新設桁30が設置される。その後、地盤Gに設置した工事桁10(土工部P1における工事桁10)を撤去して地盤Gの上方に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置し、既設桁3を撤去して河川Rの上方に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置する。以上の工程を経て新設桁30に枕木受桁40を設置することにより、従来の横取り架設を不要とすることができる。従って、事前の作業を簡易にできるので、工期を短縮してコストを低減させることができる。更に、水平ジャッキ等の横取り設備を不要にできるので、河川の幅方向の両側における作業スペースを低減させることができる。
【0041】
本実施形態に係る桁架け替え方法は、地盤Gの上方(土工部P1)に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置する工程、及び河川Rの上方(橋梁部P2)に位置する新設桁30に枕木受桁40を設置する工程の後に、複数の既設橋台2を撤去する工程を備える。よって、複数の既設橋台2が撤去されるので、河積阻害率を低減でき、河川Rにおける河川水Wの流量を更に増やすことができるので、河川Rの洪水等をより確実に抑制できる。
【0042】
本実施形態に係る桁架け替え方法は、新設桁30を設置する工程の前に、既設橋台2に新設桁30を仮受けする仮桁受35を設置する工程を備える。従って、既設橋台2の上部に設置される新設桁30を仮桁受35によって仮受けすることができる。
【0043】
本実施形態において、既設桁3は上路桁であり、新設桁30は下路桁である。よって、既設桁3の下面の高さよりも新設桁30の下面の高さを高くすることが可能となる。従って、河川Rの水面に対する新設桁30の高さを高くすることができるので、豪雨災害等が生じた場合であっても河川横断橋1が流される事態をより確実に抑制できる。このように、災害に対する河川横断橋1の耐性を高めることができる。
【0044】
以上、本開示に係る桁架け替え方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、桁架け替え方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0045】
例えば、前述の実施形態では、既設橋台2を撤去する例について説明した。しかしながら、既設橋台2を撤去せず既設橋台2は残置されてもよい。前述の実施形態では、新設桁30が第1新設桁30Aと第1新設桁30Aより短い一対の第2新設桁30Bと含む例について説明した。しかしながら、第1新設桁30Aの長さ、及び第2新設桁30Bの長さは、互いに同一であってもよい。また、第1新設桁30A及び第2新設桁30Bに代えて、一方の新設橋台20から他方の新設橋台20まで第1方向D1に沿って延びる一本の新設桁が設けられてもよい。この場合、仮桁受35を不要とすることも可能となる。以上のように、新設桁の態様は適宜変更可能である。
【0046】
前述の実施形態では、一対の土工部P1のうちの一方への枕木受桁40の設置、橋梁部P2への枕木受桁40の設置、及び一対の土工部P1のうちの他方への枕木受桁40の設置、をこの順で実行する例について説明した。しかしながら、例えば、一対の土工部P1のうちの一方への枕木受桁40の設置、及び、一対の土工部P1のうちの他方への枕木受桁40の設置を同時に行ってもよく、各部に対する枕木受桁40の設置のタイミングは適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…河川横断橋、2…既設橋台、2b…凹部、2c…凸部、2d…上面、3…既設桁、3b…下フランジ、3c…上フランジ、3d…ウェブ、3f…一端、3g…他端、4…枕木、5…レール、6…連結部材、6b…フックボルト、6c…フック部、7…タイプレート、8…犬釘、10…工事桁、11…土留め、12…第1桁材、13…第2桁材、14…杭、15…枕木、20…新設橋台、30…新設桁、30A…第1新設桁、30B…第2新設桁、31…下フランジ、32…上フランジ、33…ウェブ、35…仮桁受、36…第1部材、37…第2部材、38…第3部材、40…枕木受桁、B…バラスト、D1…第1方向(幅方向)、D2…第2方向、D3…鉛直方向、G…地盤、P1…土工部、P2…橋梁部、R…河川、V…鉄道車両、W…河川水。