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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127736
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】関節装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20230907BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61F 2/62 20060101ALI20230907BHJP
   A61F 2/64 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61F5/01 N
B25J11/00 Z
A61F2/62
A61F2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031605
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 賢
(72)【発明者】
【氏名】窪田 晃稀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌史
【テーマコード(参考)】
3C707
4C097
4C098
【Fターム(参考)】
3C707HT12
3C707XK03
3C707XK06
3C707XK13
3C707XK75
4C097TA06
4C098AA02
4C098BB09
4C098BB11
4C098BC11
4C098BC15
4C098BD04
4C098BD15
(57)【要約】
【課題】装着者の身体的特徴によらず汎用的に使用でき、装着固定位置がずれた場合であっても意図した動作を行え、装着者の身体的負担を招くおそれのない関節装具を提供する。
【解決手段】 関節装具は、第1フレーム部10と、第2フレーム部20と、ジョイント部30と、平行リンク機構40とからなる。ジョイント部30は、膝関節の回転軸近傍に配置され、第1フレーム部10及び第2フレーム部20を回動可能に連結する。平行リンク機構40は、第2フレーム部20に対して、延在方向に前フレーム20aと後フレーム20bに分断するように介在し、ジョイント部30の回動に伴い、前フレーム20aと後フレーム20bが平行に移動可能となるように構成される、2つ以上の平行リンク41,45を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の第1の骨と第2の骨を連結する関節のために装着される関節装具であって、該関節装具は、
第1の骨側に装着固定される第1固定部を有し、第1の骨と第2の骨を連結する関節方向に延在する第1フレーム部と、
第2の骨側に装着固定される第2固定部を有し、第1の骨と第2の骨を連結する関節方向に延在する第2フレーム部と、
第1の骨と第2の骨を連結する関節の回転軸近傍に配置され、前記第1フレーム部及び第2フレーム部を回動可能に連結するジョイント部と、
前記第1フレーム部及び/又は第2フレーム部に対して、延在方向に前フレームと後フレームに分断するように介在し、ジョイント部の回動に伴い、前フレームと後フレームが平行に移動可能となるように構成される、2つ以上の平行リンクを有する平行リンク機構と、
を具備することを特徴とする関節装具。
【請求項2】
請求項1に記載の関節装具において、前記第1フレーム部又は第2フレーム部に対して介在する平行リンク機構は、第1平行リンク及び第2平行リンクからなり、
前記第1平行リンクは、
前フレーム又は後フレームの一方に固定される第1固定リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1駆動リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1従動リンクと、からなり、
前記第2平行リンクは、
前フレーム又は後フレームの他方に固定される第2固定リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2駆動リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2従動リンクと、からなり、
さらに、前記平行リンク機構は、第1駆動リンクと第1従動リンクの間、及び第2駆動リンクと第2従動リンクの間に平行に移動可能に連結される共通中間リンクを有する、
ことを特徴とする関節装具。
【請求項3】
請求項1に記載の関節装具において、前記第1フレーム部又は第2フレーム部に対して介在する平行リンク機構は、第1平行リンク及び第2平行リンクからなり、
前記第1平行リンクは、
前記第1フレーム部の前フレーム又は後フレームの一方に固定される第1固定リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1駆動リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1従動リンクと、第1駆動リンクと第1従動リンクの間に平行に移動可能に連結されると共に前フレーム又は後フレームの他方に固定される第1中間リンクと、からなり、
前記第2平行リンクは、
前記第2フレーム部の前フレーム又は後フレームの一方に固定される第2固定リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2駆動リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2従動リンクと、第2駆動リンクと第2従動リンクの間に平行に移動可能に連結されると共に前フレーム又は後フレームの他方に固定される第2中間リンクと、からなる、
ことを特徴とする関節装具。
【請求項4】
請求項3に記載の関節装具において、
前記第1フレーム部の後フレームは、第1中間リンクからなり、
及び/又は、
前記第2フレーム部の前フレームは、第2中間リンクからなる、
ことを特徴とする関節装具。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れかに記載の関節装具において、
前記前フレームは、第1固定リンクからなり、
及び/又は、
前記後フレームは、第2固定リンクからなる、
ことを特徴とする関節装具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の関節装具において、前記ジョイント部は、アクチュエータにより遠隔駆動されることを特徴とする関節装具。
【請求項7】
請求項6に記載の関節装具において、前記ジョイント部は、アクチュエータから平行リンク機構を経由するタイミングベルトを用いて遠隔駆動されることを特徴とする関節装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節装具に関し、特に、膝関節や肘関節のために装着される関節装具に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節の軟骨の変形による変形性膝関節症に対する伸展時の回旋矯正や、膝関節や肘関節の回旋補助のための関節装具は種々開発されている(例えば特許文献1-7、非特許文献1)。
【0003】
これらは何れも例えば装着者の膝関節の動きを計測し、関節装具を調整することで、個々の装着者の体格に合わせてオーダーメイドされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-132678号公報
【特許文献3】特開2016-019603号公報
【特許文献4】特開2012-183277号公報
【特許文献5】特開2012-085756号公報
【特許文献2】特開2017-140303号公報
【特許文献6】特開2006-115971号公報
【特許文献7】国際公開公報WO2017/043515号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】菊池ら、「生体の膝関節運動を模擬した受動型アシストデバイスの開発と評価」、日本機械学会論文集、Vol.86、No.892、20-00134、2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の関節装具は、何れも個々の装着者に合わせてオーダーメイドされるものであり、装着者の身体の計測の負担や設計や調整のコストがかかるものであった。さらに、身体に装着固定するための正確な固定位置を含めて関節装具はオーダーメイドされる。しかしながら、関節装具の装着固定位置は、装着する際にずれる可能性がある。関節装具が設計時に意図した位置とは異なる位置に装着固定された場合、痛み等、装着者の身体的負担を招くことになっていた。さらには、関節装具の使用中にも装着固定位置がずれる可能性もあり、この場合にも装着者の身体的負担を招くことがあった。
【0007】
したがって、装着者の身体的特徴によらず汎用的に使用でき、また、装着固定位置がずれた場合であっても意図した動作を行え、装着者の身体的負担を招くおそれのない関節装具の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、装着者の身体的特徴によらず汎用的に使用でき、装着固定位置がずれた場合であっても意図した動作を行え、装着者の身体的負担を招くおそれのない関節装具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による関節装具は、第1の骨側に装着固定される第1固定部を有し、第1の骨と第2の骨を連結する関節方向に延在する第1フレーム部と、第2の骨側に装着固定される第2固定部を有し、第1の骨と第2の骨を連結する関節方向に延在する第2フレーム部と、第1の骨と第2の骨を連結する関節の回転軸近傍に配置され、第1フレーム部及び第2フレーム部を回動可能に連結するジョイント部と、第1フレーム部及び/又は第2フレーム部に対して、延在方向に前フレームと後フレームに分断するように介在し、ジョイント部の回動に伴い、前フレームと後フレームが平行に移動可能となるように構成される、2つ以上の平行リンクを有する平行リンク機構と、を具備するものである。
【0010】
ここで、第1フレーム部又は第2フレーム部に対して介在する平行リンク機構は、第1平行リンク及び第2平行リンクからなり、第1平行リンクは、前フレーム又は後フレームの一方に固定される第1固定リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1駆動リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1従動リンクと、からなり、第2平行リンクは、前フレーム又は後フレームの他方に固定される第2固定リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2駆動リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2従動リンクと、からなり、さらに、平行リンク機構は、第1駆動リンクと第1従動リンクの間、及び第2駆動リンクと第2従動リンクの間に平行に移動可能に連結される共通中間リンクを有する、ものであれば良い。
【0011】
また、第1フレーム部又は第2フレーム部に対して介在する平行リンク機構は、第1平行リンク及び第2平行リンクからなり、第1平行リンクは、第1フレーム部の前フレーム又は後フレームの一方に固定される第1固定リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1駆動リンクと、第1固定リンクに揺動可能に連結される第1従動リンクと、第1駆動リンクと第1従動リンクの間に平行に移動可能に連結されると共に前フレーム又は後フレームの他方に固定される第1中間リンクと、からなり、第2平行リンクは、第2フレーム部の前フレーム又は後フレームの一方に固定される第2固定リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2駆動リンクと、第2固定リンクに揺動可能に連結される第2従動リンクと、第2駆動リンクと第2従動リンクの間に平行に移動可能に連結されると共に前フレーム又は後フレームの他方に固定される第2中間リンクと、からなる、ものであっても良い。
【0012】
また、第1フレーム部の後フレームは、第1中間リンクからなり、及び/又は、第2フレーム部の前フレームは、第2中間リンクからなる、ものであっても良い。
【0013】
また、前フレームは、第1固定リンクからなり、及び/又は、後フレームは、第2固定リンクからなる、ものであっても良い。
【0014】
また、ジョイント部は、アクチュエータにより遠隔駆動されるものであっても良い。
【0015】
また、ジョイント部は、アクチュエータから平行リンク機構を経由するタイミングベルトを用いて遠隔駆動されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の関節装具には、装着者の身体的特徴によらず汎用的に使用でき、装着固定位置がずれた場合であっても意図した動作を行え、装着者の身体的負担を招くおそれがないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の関節装具を説明するための概略側面図である。
図2図2は、本発明の関節装具を装着した装着者が膝を曲げた際の関節装具の動きを説明するための概略側面図である。
図3図3は、本発明の関節装具の到着固定位置のずれによるジョイント部の回転軸の変動域を説明するための概略側面図である。
図4図4は、本発明の関節装具の他の例を説明するための概略側面図である。
図5図5は、本発明の関節装具のさらに他の例を説明するための概略側面図である。
図6図6は、本発明の関節装具の具体例を説明するための概略斜視図である。
図7図7は、本発明の関節装具のさらに他の例を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。本発明の関節装具は、装着者の第1の骨と第2の骨を連結する関節のために装着されるものである。以下、本明細書中では、具体的には関節は膝関節、第1の骨は大腿骨、第2の骨は脛骨として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば肘関節の場合は上腕骨と尺骨というように、身体の旋回する関節のために装着されるものであれば良い。
【0019】
図1は、本発明の関節装具を説明するための概略側面図である。図示の通り、本発明の関節装具は、大腿骨1と脛骨2を連結する膝関節3のために装着される。本発明の関節装具は、第1フレーム部10と、第2フレーム部20と、ジョイント部30と、平行リンク機構40とから主に構成されている。なお、以下の説明では、膝関節3の片側側方にのみ本発明の関節装具が装着される例について説明するが、本発明はこれに限定されず、膝関節3の両側側方に本発明の関節装具が装着されるものであっても良い。
【0020】
第1フレーム部10は、第1固定部11を有する。第1固定部11は、大腿骨1側に装着固定されるものである。即ち、第1固定部11を用いて大腿部に第1フレーム部10が固定されれば良い。第1固定部11は、具体的には、例えばベルトやバンド等からなるものであり、大腿部に巻き付けることで固定されれば良い。そして、第1フレーム部10は、大腿骨1と脛骨2を連結する膝関節3方向に延在するものである。具体的には、第1フレーム部10は、第1固定部11から膝関節3まで延在する棒状体や板状体のものであれば良い。
【0021】
第2フレーム部20は、第2固定部21を有する。第2固定部21は、脛骨2側に装着固定されるものである。即ち、第2固定部21を用いて下腿部に第2フレーム部20が固定されれば良い。第2固定部21は、具体的には、例えばベルトやバンド等からなるものであり、下腿部に巻き付けることで固定されれば良い。そして、第2フレーム部20は、大腿骨1と脛骨2を連結する膝関節3方向に延在するものである。具体的には、第2フレーム部20は、第2固定部21から膝関節3まで延在する棒状体や板状体のものであれば良い。
【0022】
ジョイント部30は、第1フレーム部10及び第2フレーム部20を回動可能に連結するものである。ジョイント部30は、ベアリング等により構成されるものであっても良いし、単に軸棒により連結するものであっても良い。また、ジョイント部30は、回旋矯正を行うようにパッシブ動作可能なように構成されるものであっても良いし、旋回補助を行うようにアクティブ動作可能なアクチュエータ等により駆動可能に構成されるものであっても良い。ジョイント部30は、膝関節の回転軸近傍に配置される。即ち、膝の側方に配置されれば良い。
【0023】
そして、本発明の関節装具は、最も特徴となる平行リンク機構40を有している。図示例の平行リンク機構40は、第2フレーム部20を分断するように介在している。具体的には、第2フレーム部20に対して、延在方向に前フレーム20aと後フレーム20bに分断するように介在している。そして、平行リンク機構40は、前フレーム20aと後フレーム20bが平行に移動可能となるように構成されるものである。図示例の平行リンク機構40は、2つの平行リンク、具体的には、第1平行リンク41及び第2平行リンク45からなるものを示した。なお、本発明の関節装具の平行リンク機構40は2つの平行リンク41,45からなるものに限定されず、さらに多くの平行リンクを有するものであっても良い。1つの平行リンクでは、第1固定部11や第2固定部21に不必要な負荷がかかるおそれがある。したがって、本発明の関節装具では、平行リンク機構40は、少なくとも2つ以上の平行リンクを有するものとなる。
【0024】
第1平行リンク41は、第1固定リンク42と、第1駆動リンク43と、第1従動リンク44とからなる。第1固定リンク42は、第2フレーム部20の前フレーム20aに固定されている。第1駆動リンク43は、第1固定リンク42に揺動可能に連結されている。第1従動リンク44は、第1固定リンク42に揺動可能に連結されている。連結は、ベアリングや軸棒等を用いて適宜揺動可能となるように提供されれば良い。
【0025】
第2平行リンク45は、第2固定リンク46と、第2駆動リンク47と、第2従動リンク48とからなる。第2固定リンク46は、第2フレーム部20の後フレーム20bに固定されている。第2駆動リンク47は、第2固定リンク46に揺動可能に連結されている。第2従動リンク48は、第2固定リンク46に揺動可能に連結されている。連結は、ベアリングや軸棒等を用いて適宜揺動可能となるように提供されれば良い。
【0026】
さらに、平行リンク機構40は、共通中間リンク49を有している。共通中間リンク49は、第1駆動リンク43と第1従動リンク44の間、及び第2駆動リンク47と第2従動リンク48の間に、平行に移動可能に連結されている。
【0027】
このように、平行リンク機構40は、必ずしも完全な形の平行リンクを2つ以上有しているものには限定されず、中間リンクを共通で用いる共通中間リンク49により2つ以上の平行リンクを連結して提供するものであっても良い。
【0028】
図2を用いて本発明の関節装具の動きを説明する。図2は、本発明の関節装具を装着した装着者が膝を曲げた際の関節装具の動きを説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、装着者が膝を曲げ伸ばしする動作に合わせて、ジョイント部30を回転軸として第1フレーム部10及び第2フレーム部20が回動する。このとき、関節装具の装着固定位置がずれている場合、膝関節の回転軸とジョイント部30が完全に一致しなくなる。そのような場合であっても、本発明の関節装具では、図示の通り、平行リンク機構40により第2フレーム部20の前フレーム20aと後フレーム20bが平行に移動することで、この装着固定位置のずれを吸収している。したがって、装着者の大腿部や下腿部に対して、第1固定部11や第2固定部21により不必要な滑り方向の力が加わることがなく、装着者の身体的負担を招くおそれがない。
【0029】
図3を用いて関節装具のジョイント部の回転軸の変動域について説明する。図3は、本発明の関節装具の到着固定位置のずれによるジョイント部の回転軸の変動域を説明するための概略側面図である。図3(a)が大腿部側のずれによる回転軸の変動域を、図3(b)が下腿部側のずれによる回転軸の変動域を、図3(c)がこれらの回転軸の変動域に対する平行リンク機構の吸収可能範囲をそれぞれ示している。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図3(a)に示される通り、第1固定部11の装着固定位置が図示のような範囲でずれることを想定した場合には、ジョイント部30の回転軸の変動域は図示のような範囲となる。図3(a)の場合には、第2固定部21の装着固定位置はずれいていない状態である。しかしながら、通常使用時には、当然第2固定部21の装着固定位置もずれる可能性がある。そこで、図3(b)に示される通り、さらに第2固定部21の装着固定位置が図示のような範囲でずれることを想定した場合には、ジョイント部30の回転軸の変動域は、第1固定部11のずれの影響が重畳され、図示のような範囲となる。本発明の関節装具では、このような回転軸の変動域を吸収するために、ジョイント部30の回転軸の変動域が収まるような平行リンク機構40の吸収可能範囲となるように、平行リンク機構40のリンク長を設計すれば良い。
【0030】
このように構成されることで、本発明の関節装具では、従来の関節装具では許容できなかった装着固定位置のずれがあったとしても、意図した動作を行え、装着者の身体的負担を招くおそれがない。さらに、装着固定位置のずれを許容できるということは、装着者の身体的特徴によらず汎用的に使用できるものとなる。したがって、オーダーメイドで関節装具を作成する必要もなく、装着者の身体の計測の負担や設計や調整のコストも抑えることが可能となる。
【0031】
上述の図示例では、平行リンク機構40は第2フレーム部20に対して介在するものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1フレーム部10に対して介在するものであっても良い。図4は、本発明の関節装具の他の例を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、平行リンク機構40は、第1フレーム部10に対して介在するものであっても良い。平行リンク機構40は、第1フレーム部10に対して、延在方向に前フレーム10aと後フレーム10bに分断するように介在し、ジョイント部30の回動に伴い、前フレーム10aと後フレーム10bが平行に移動可能となるように構成されている。
【0032】
このように、本発明の関節装具では、平行リンク機構40は、第1フレーム部10又は第2フレーム部20のどちらにあっても良い。さらには、平行リンク機構40は、第1フレーム部及び第2フレーム部20の両方にあっても良い。平行リンク機構40は、本発明の関節装具の装着固定される位置や、各フレームや平行リンク機構の大きさ、装着位置ずれの許容量等に応じて適宜選択されれば良い。
【0033】
さらに、上述の図示例では、平行リンク機構40の2つの平行リンクは、共通中間リンク49を用いて一体的に形成されたものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、それぞれ中間リンクを有するものであっても良い。即ち、2つの平行リンクが、それぞれ第1フレーム部10の2か所を、又は第2フレーム部20の2か所を分断するように介在するものであっても良い。
【0034】
さらに、2つの平行リンクは、第1フレーム部10と第2フレーム部20のそれぞれに介在するように構成されても良い。図5は、本発明の関節装具のさらに他の例を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、平行リンク機構40は、第1フレーム部10と第2フレーム部20のそれぞれに介在するように構成される第1平行リンク41及び第2平行リンク45からなるものである。
【0035】
第1平行リンク41は、第1固定リンク42と、第1駆動リンク43と、第1従動リンク44と、第1中間リンク49aからなる。第1固定リンク42は、第1フレーム部10の前フレーム10aに固定されている。第1駆動リンク43は、第1固定リンク42に揺動可能に連結されている。第1従動リンク44は、第1固定リンク42に揺動可能に連結されている。第1中間リンク49aは、第1駆動リンク43と第1従動リンク44の間に平行に移動可能に連結されると共に後フレーム10bに固定されている。
【0036】
第2平行リンク45は、第2固定リンク46と、第2駆動リンク47と、第2従動リンク48と、第2中間リンク49bからなる。第2固定リンク46は、第2フレーム部20の前フレーム20aに固定されている。第2駆動リンク47は、第2固定リンク46に揺動可能に連結されている。第2従動リンク48は、第2固定リンク46に揺動可能に連結されている。第2中間リンク49bは、第2駆動リンク47と第2従動リンク48の間に平行に移動可能に連結されると共に後フレーム20bに固定されている。
【0037】
このように、本発明の関節装具では、平行リンク機構40の第1平行リンク41と第2平行リンク45を、第1フレーム部10と第2フレーム部20にそれぞれ設けても良い。
【0038】
次に、図6を用いて本発明の関節装具の具体例について説明する。図6は、本発明の関節装具の具体例を説明するための概略斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例のものは、旋回補助を行うようにアクティブ動作可能なアクチュエータにより駆動可能に構成されるものを示した。図示のように、第1フレーム部10や第2フレーム部20は、板状体で構成されれば良い。そして、第2フレーム部20は、平行リンク機構40と一部一体的に構成されても良い。具体的には、図示例の第2フレーム部20は、後フレーム20bが第2固定リンク46からなる。即ち、後フレーム20bが第2固定リンク46と一体的に構成されている。より具体的には、図示例では、第2固定リンク46が三角形の板状体から構成されており、これを後フレーム20bとしても用いている。なお、前フレーム20aも第1固定リンク42からなるものであっても良い。即ち、前フレーム20aが第1固定リンク42と一体的に構成されていても良い。図示例では、第1固定リンク42が三角形の板状体から構成されており、ここから前フレーム20aが延在している。
【0039】
図示例の関節装具では、第1フレーム部10にアクチュエータとしてのモータ50を載置すると共に、ジョイント部30にギアボックス51を設け、両者をタイミングベルト52で繋いでいる。これにより、ジョイント部30が遠隔駆動され、膝関節に対して旋回補助を行うように構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ジョイント部30に直接アクチュエータを設けて駆動可能に構成されても良い。
【0040】
さらに、図7に示されるように、ジョイント部30が、平行リンク機構40を経由して遠隔駆動されるように構成されても良い。図7は、本発明の関節装具のさらに他の例を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、ジョイント部30は、アクチュエータとしてのモータ50から平行リンク機構40を経由するタイミングベルト52を用いて遠隔駆動されるものであっても良い。タイミングベルト52は、モータ50の回転に同期してジョイント部30を回転させるように、モータ50とジョイント部30に設けられるギアに掛かるように凹凸が設けられている。一方、平行リンク機構40の揺動可能な連結軸は、凹凸が設けられていないプーリー53等で構成し、フリーな状態で平行リンク機構40を経由するように構成されている。また、図示例では、モータ50を複数モータで構成し、複数のタイミングベルト52を用いてジョイント部30を回転駆動できるように構成したものを示した。各タイミングベルト52は、それぞれ連結軸やリンク上に設けられたプーリー53等を経由してジョイント部30に掛けられている。このように構成することで、3つのモータ50の駆動力がジョイント部30で合成されるため、より強い回転駆動力をジョイント部30に与えることが可能となる。
【0041】
本発明の関節装具では、装着固定位置のずれやジョイント部30の回転軸の変動があったとしても、平行リンク機構40を用いることでこれを吸収できる。これにより、装着固定位置のずれや回転軸の変動によらずにジョイント部に対して回転駆動角度を伝達することが可能である。
【0042】
また、本発明の関節装具が旋回補助を行うアクチュエータにより回転駆動可能に構成される場合、装着者に対してジョイント部30の回転軸が合っていなかったとしても、平行リンク機構40によりこれを吸収できるため、第1固定部11や第2固定部21には、アクチュエータの駆動トルクによるモーメントのみが与えられ、不必要な滑り方向の力が加わることがない。したがって、装着者の身体的負担を招くおそれもない。
【0043】
なお、本発明の関節装具は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 大腿骨
2 脛骨
3 膝関節
10 第1フレーム部
10a 前フレーム
10b 後フレーム
11 第1固定部
20 第2フレーム部
20a 前フレーム
20b 後フレーム
21 第2固定部
30 ジョイント部
40 平行リンク機構
41 第1平行リンク
42 第1固定リンク
43 第1駆動リンク
44 第1従動リンク
45 第2平行リンク
46 第2固定リンク
47 第2駆動リンク
48 第2従動リンク
49 共通中間リンク
49a 第1中間リンク
49b 第2中間リンク
50 モータ
51 ギアボックス
52 タイミングベルト
53 プーリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7