(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127752
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/20 20060101AFI20230907BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230907BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230907BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230907BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B28B3/20 E
B01J35/02 G ZAB
B01J35/04 301N
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J35/04 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031632
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】徳田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】的場 守昭
【テーマコード(参考)】
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
4G054AA06
4G054AB09
4G054BD00
4G169AA01
4G169AA08
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
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4G169CA14
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA19
4G169EA26
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EB17Y
4G169EE03
4G169FB06
4G169FB30
4G169FB67
4G169FB79
4G169FC06
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】欠陥の発生が抑制されたハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末を篩に通して原料粉末を得る工程と、前記原料粉末とバインダーと分散媒とを混合・混練して坏土を得る工程と、ハニカム構造体の隔壁に対応するスリットが形成された口金から前記坏土を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、前記篩の目開きは、前記口金のスリット幅の30%~100%であり、前記成形工程は、前記坏土を、前記口金のスリット幅の70%~150%の目開きを有するスクリーンを通過させ、前記押出を行う工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末を篩に通して原料粉末を得る工程と、
前記原料粉末とバインダーと分散媒とを混合・混練して坏土を得る工程と、
ハニカム構造体の隔壁に対応するスリットが形成された口金から前記坏土を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記篩の目開きは、前記口金のスリット幅の30%~100%であり、
前記成形工程は、前記坏土を、前記口金のスリット幅の70%~150%の目開きを有するスクリーンを通過させ、前記押出を行う工程を有する、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記口金から前記坏土を押し出す際の押出圧は20MPa以下である、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記原料粉末と前記バインダーと前記分散媒との前記混合には、プロシェアミキサーを用いる、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記原料粉末と前記バインダーと前記分散媒との混合物を、ニーダーにて混練羽根の回転数20rpm~40rpmで50分以上の条件で混練する、請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記原料粉末と前記バインダーに対し、前記分散媒を少なくとも二回以上の複数回に分けて投入し、前記投入ごとに前記混合・混練を行う、請求項1から4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記坏土を15℃~35℃の環境下に12時間以上置いた後に、前記押出を行う、請求項1から5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記押出に用いられる成形治工具はSUS材で構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記押出に用いられる成形治工具は表面処理が施されており、前記表面処理はDLC処理またはクロムメッキの少なくとも一つである、請求項1から7のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理は、少なくとも前記スクリーンよりも押出方向下流側に位置する部位に施されている、請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は10μm未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記炭化ケイ素粉末の粒度分布は、粒子径D90と粒子径D10との比(D90/D10)が2.0以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記口金のスリット幅は155μm以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に、担体に触媒を担持させた触媒担体が用いられている。処理の際、エンジン始動時に触媒温度が低いと、触媒が所定の温度まで昇温されず、排ガスが十分に浄化されないという問題がある。このような問題を解決するために、導電性を有する担体に通電して担体を発熱させることにより、担体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)を用いた排ガス処理装置の開発が進んでいる。
【0003】
特許文献1には、上記担体として、セラミック製のハニカム構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セラミック製のハニカム構造体において、流体の流路となるセルを区画する隔壁に切れ(リブ切れ)、クラック、ササクレ、小孔等の欠陥があると、例えば、優れた通電発熱性の確保が難しい場合がある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、上記欠陥の発生が抑制されたハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末を篩に通して原料粉末を得る工程と、前記原料粉末とバインダーと分散媒とを混合・混練して坏土を得る工程と、ハニカム構造体の隔壁に対応するスリットが形成された口金から前記坏土を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、前記篩の目開きは、前記口金のスリット幅の30%~100%であり、前記成形工程は、前記坏土を、前記口金のスリット幅の70%~150%の目開きを有するスクリーンを通過させ、前記押出を行う工程を有する。
1つの実施形態においては、上記口金から上記坏土を押し出す際の押出圧は20MPa以下である。
1つの実施形態においては、上記原料粉末と上記バインダーと上記分散媒との上記混合には、プロシェアミキサーを用いる。
1つの実施形態においては、上記原料粉末と上記バインダーと上記分散媒との混合物を、ニーダーにて混練羽根の回転数20rpm~40rpmで50分以上の条件で混練する。
1つの実施形態においては、上記原料粉末と上記バインダーに対し、上記分散媒を少なくとも二回以上の複数回に分けて投入し、前記投入ごとに上記混合・混練を行う。
1つの実施形態においては、上記坏土を15℃~35℃の環境下に12時間以上置いた後に、上記押出を行う。
1つの実施形態においては、上記押出に用いられる成形治工具はSUS材で構成される。
1つの実施形態においては、上記押出に用いられる成形治工具は表面処理が施されており、前記表面処理はDLC処理またはクロムメッキの少なくとも一つである。前記表面処理は、少なくとも上記スクリーンよりも押出方向下流側に位置する部位に施されていてもよい。
1つの実施形態においては、上記金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は10μm未満である。
1つの実施形態においては、上記炭化ケイ素粉末の粒度分布は、粒子径D90と粒子径D10との比(D90/D10)が2.0以上である。
1つの実施形態においては、上記口金のスリット幅は155μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、欠陥の発生が抑制されたハニカム構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すハニカム構造体の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
A.ハニカム構造体
図1は本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図であり、
図2は
図1に示すハニカム構造体の断面図である。ハニカム構造体10は、長さ方向に延びて流体の流路となり得る複数のセル12を区画形成する隔壁14と、隔壁14を囲む外周壁16とを有する。外周壁16は、長さ方向に延びる。複数のセル12はそれぞれ、長さ方向に延びる空間とされる。長さ方向に垂直な各セル12の断面形状は、図示例では略正方形であるが、多角形(例えば、三角形、五角形、六角形)、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。長さ方向に垂直な外周壁16の断面形状は、代表的には円形であるが、多角形や楕円形であってもよい。
【0012】
隔壁14の厚さは、例えば、触媒担体としての利用の観点から、好ましくは310μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは230μm以下である。一方、隔壁14の厚さは、例えば、強度の観点から、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは130μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。長さ方向に垂直な断面における単位面積当たりのセル12の数は、例えば50セル/cm2~150セル/cm2であり、好ましくは75セル/cm2~150セル/cm2である。
【0013】
外周壁16の厚さは、例えば、強度の観点から、好ましくは0.1mm以上である。一方、外周壁16の厚さは、例えば1mm以下であり、好ましくは0.7mm以下である。
【0014】
ハニカム構造体10は、好ましくは、ケイ素-炭化ケイ素複合材料で構成される。ケイ素-炭化ケイ素複合材料は、複数の炭化ケイ素粒子が金属ケイ素によって結合された材料であり得る。ハニカム構造体10が、ケイ素-炭化ケイ素複合材料で構成される場合、ハニカム構造体10に含有される「骨材としての炭化ケイ素粒子の質量」と、ハニカム構造体10に含有される「結合材としての金属ケイ素の質量」との合計に対する、ハニカム構造体10に含有される「結合材としての金属ケイ素の質量」の比率が、10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~35質量%であることがさらに好ましい。ハニカム構造体10の400℃における電気抵抗率は、好ましくは0.1Ωcm~200Ωcmである。
【0015】
ハニカム構造体10の隔壁12の気孔率は、好ましくは35%~60%である。ハニカム構造体10の隔壁12の平均細孔径は、好ましくは2μm~15μmである。このような平均細孔径によれば、例えば、上記電気抵抗率を良好に達成し得る。なお、気孔率および平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定することができる。
【0016】
B.製造方法
本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末を篩に通して原料粉末を得る工程と、原料粉末とバインダーと分散媒とを混合・混練して坏土を得る工程と、ハニカム構造体の隔壁に対応するスリットが形成された口金から坏土を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を得る成形工程と、ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、をこの順に含む。
【0017】
B-1.原料粉末
上述のとおり、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末を篩に通して(篩い分けして)原料粉末を得る。篩の目開きは、後述する口金のスリット幅の100%以下であり、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。例えば、篩の目開きは、150μm以下であってもよく、125μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。このような篩を用いることにより、原料粉末中の異物、粗大粒子、凝集粒子を捕捉して、これらに起因する欠陥の発生を効果的に防止することができる。加えて、後述のスクリーンに捕捉される残渣を低減させ、スクリーンの細目化を達成し得る。一方、篩の目開きは、後述する口金のスリット幅の30%以上であり、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上である。例えば、篩の目開きは、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。
【0018】
炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末とは、同じ篩(例えば、同じ目開きを有する篩)を用いて篩い分けしてもよいし、異なる篩(例えば、目開きの異なる篩)を用いて篩い分けしてもよい。1つの実施形態においては、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末ぞれぞれの粒子径に応じて、篩い分けする篩を選択する。具体的には、炭化ケイ素粉末は、後述する口金のスリット幅の60%以下の目開きの篩を用いて篩い分けすることが好ましい。後述の粒度分布を達成すべく、また、コストの観点から、篩い分け前の炭化ケイ素粉末は粗大粒子を含み得る。このような篩を用いることにより、例えば、粗大粒子を捕捉して後述の粒度分布を良好に達成し得る。そして、金属ケイ素の凝集粒子は、後述のスクリーンを通過しやすく、欠陥の発生への影響が大きい傾向にあることから、金属ケイ素粉末は、後述する口金のスリット幅の75%以下の目開きの篩を用いて篩い分けすることが好ましく、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは65%以下である。なお、各篩の目開きの下限値については上述の通りである。
【0019】
上記の平均粒子径(篩い分け後の平均粒子径)は、好ましくは3μm~50μmであり、より好ましくは3μm~40μmである。1つの実施形態においては、得られるハニカム炭化ケイ素粉末構造体のパッキング性(具体的には、気孔率や密度)の観点から、炭化ケイ素粉末の粒度分布(篩い分け後の粒度分布)は、粒子径D90と粒子径D10との比(D90/D10)が2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.3以上である。一方、D90/D10は、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下である。
【0020】
上記金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は、好ましくは10μm未満である。一方、金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は、好ましくは1μm以上である。
【0021】
原料粉末は、炭化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末以外の他の粉末を含んでいてもよい。
【0022】
B-2.坏土
上記原料粉末とバインダーと分散媒とを混合・混練して坏土を得る。原料粉末において、炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末との配合割合は、任意の適切な割合に設定され得る。金属ケイ素粉末の配合割合は、炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末との合計100質量部に対し、10質量部~40質量部であることが好ましく、15質量部~35質量部であることがより好ましい。このような範囲によれば、例えば、上記電気抵抗率を満足するハニカム構造体を得ることができる。
【0023】
上記バインダーとしては、任意の適切なバインダーが用いられ得る。代表的には、セルロース系バインダーが用いられる。セルロース系バインダーの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
バインダーの配合割合は、炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末との合計100質量部に対し、好ましくは1質量部~15質量部であり、より好ましくは6質量部~10質量部である。
【0025】
上記分散媒の具体例としては、水、アルコールが挙げられる。好ましくは、水が用いられる。分散媒の配合割合は、炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末との合計100質量部に対し、好ましくは20質量部~80質量部であり、より好ましくは30質量部~50質量部である。
【0026】
上記坏土は、添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、造孔材、界面活性剤等の分散剤が挙げられる。添加剤の配合割合は、炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末との合計100質量部に対し、例えば0質量部~20質量部である。
【0027】
上記原料粉末と上記バインダーと上記分散媒と、必要に応じて、上記添加剤とを混合・混練することにより坏土を得る。混合・混練の方法は特に限定されず、任意の適切な混合機、混練機を用いて混合・混練を行うことができる。
【0028】
上記混合機としては、例えば、シグマニーダー、バンバリーニーダー、リボンミキサーが挙げられる。また、例えば、プロシェアミキサー、ヘンシェルミキサーが挙げられる。これらの中でも、プロシェアミキサーが好ましく用いられる。プロシェアミキサーによれば、原料粉末の凝集を効果的に解砕することができ、後述のスクリーンに捕捉される残渣を低減させ、スクリーンの細目化を達成し得る。また、得られる坏土の流動性を向上させ得る。
【0029】
上記混練機としては、例えば、シグマニーダー、バンバリーミキサー、スクリュー式の混練押出機が挙げられる。例えば、ニーダーによる混練は、混練羽根(例えば、スクリュー)の回転数20rpm~40rpmで50分以上の条件で行うことが好ましい。このような条件によれば、後述のスクリーンに捕捉される残渣を低減させ、得られる坏土の流動性を向上させ得る。
【0030】
混合・混練において、各原料の投入の順序は特に限定されないが、原料粉末とバインダーに対し、分散媒を少なくとも二回以上の複数回に分けて投入することが好ましい。具体的には、複数回に分けて分散媒を投入し、投入ごとに混合・混練を行うことが好ましい。このような投入方法によれば、後述のスクリーンに捕捉される残渣を低減させ、得られる坏土の流動性を向上させ得る。
【0031】
坏土は、後述の押出(成形工程)の前に、15℃以上の環境下に置かれることが好ましく、より好ましくは15℃~35℃の環境下に置かれることが好ましい。15℃以上の環境下に置く時間は、例えば6時間以上であり、好ましくは12時間以上であり、より好ましくは18時間以上である。このような工程を行うことにより、坏土に含まれ得るガス(例えば、原料由来のガス)を放出させ、坏土の劣化を防止し得る。また、所望の特性(例えば、密度や平均細孔径)を有するハニカム構造体を製造し得る。
【0032】
坏土は、後述の押出(成形工程)の前に、脱気処理が施されることが好ましい。脱気処理を施すことにより、成形性の良好な坏土を得ることができ、欠陥の発生が抑制されたハニカム構造体を得ることができる。例えば、真空ポンプ等の真空減圧装置を備えた混練機(いわゆる真空土練機)を用いることにより、脱気された坏土を得ることができる。
【0033】
上記混練機として、原料をスクリューで混練後に連続して坏土を後述の口金に押し出す混練押出機を使用することにより、混練と成形とを連続的に行うことができる。例えば、プロシェアミキサー等による混合を行い、真空減圧装置を備えた混練押出機で成形する。
【0034】
B-3.成形
上記坏土を、ハニカム構造体の隔壁に対応するスリットが形成された口金から押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を得る。
【0035】
上記口金は、ハニカム構造体の隔壁と相補的な形状を有するスリットが形成される。具体的には、
図1に示すハニカム構造体10は、略正方形のセル12を多数有し、隔壁14は格子状のパターンを有するが、このようなハニカム構造体を製造する場合、隔壁の格子状のパターンと相補的な形状(格子状)のスリットが形成された口金が用いられる。
【0036】
上記スリットのスリット幅は、所望のハニカム構造体の隔壁の厚さに応じて、任意の適切な幅に設定され得る。スリット幅は、例えば、触媒担体として利用の観点から、好ましくは155μm以下であり、より好ましくは140μm以下である。本発明の実施形態によれば、このようなスリット幅の口金を使用する形態において、欠陥の発生が抑制されたハニカム構造体を得ることができる。一方、スリット幅は、例えば、得らハニカム構造体の強度の観点から、例えば120μm以上である。
【0037】
上記坏土の押出を行う押出機としては、例えば、ラム式押出機、二軸混練押出機が挙げられる。例えば、均一なハニカム成形体を得る観点から、二軸混練押出機が好ましく用いられる。
【0038】
本発明の実施形態において、成形工程は、坏土を所定の目開きを有するスクリーン(メッシュ)を通過させ、上記押出を行う工程を有する。具体的には、坏土をスクリーンに通した後、押出を行う。スクリーンは、押出成形機の内部において、口金よりも押出方向上流側に配置され得る。坏土をスクリーンに通すことにより、異物、硬土(凝集物)を捕捉して、これらに起因する欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0039】
上記スクリーンは、目開きが上記口金のスリット幅の150%以下であり、好ましくは140%以下であり、より好ましくは130%以下であり、さらに好ましくは120%以下であり、特に好ましくは110%以下である。一方、スクリーンの目開は、例えば、スクリーンの破れを抑制する観点から、上記口金のスリット幅の50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。
【0040】
押出に用いられる治工具(成形治工具)は、SUS(ステンレス鋼)材で構成されることが好ましい。また、成形治工具には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、DLC処理、クロムメッキが挙げられる。成形治工具に表面処理層が形成されていることにより、成形治工具表面の耐剥離性が向上し得、スクリーンに捕捉される残渣を低減させ得る。上記スクリーンよりも押出方向下流側に位置する部位(成形治工具)に表面処理が施されていることにより、ハニカム成形体への異物(例えば、金属を含む異物)の混入を効果的に防止し得る。
【0041】
口金から坏土を押し出す際の押出圧は、好ましくは20MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下である。坏土の流動性を向上させることにより、このような押出圧が良好に達成され得、欠陥の発生が効果的に抑制されたハニカム構造体を得ることができる。なお、押出圧は、押出速度20mm/秒のときの押出圧をいう。
【0042】
B-4.焼成
上記ハニカム成形体を焼成し、ハニカム構造体を得ることができる。具体的には、焼成により原料粉末を焼結させて緻密化し、所定の強度を有するハニカム構造体を得ることができる。焼成条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。焼成温度は、例えば1350℃~1500℃である。焼成時間は、例えば20時間~80時間である。焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0043】
ハニカム成形体を焼成処理に供する前に、ハニカム成形体を乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態においては、マイクロ波乾燥または誘電乾燥と、熱風乾燥とを組み合わせる。このような形態によれば、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に乾燥させ得る。熱風乾燥の温度は、50℃~150℃とすることが好ましい。
【0044】
また、ハニカム成形体を焼成処理に供する前に、ハニカム成形体を仮焼してもよい。仮焼により、ハニカム成形体に含まれる有機物(例えば、バインダー、造孔材、分散剤等)の除去を促進させることができる。仮焼温度は、例えば、ハニカム成形体に含まれる有機物の燃焼温度に応じて決定され得る。仮焼温度は、例えば200℃~1000℃である。仮焼時間は、例えば10時間~100時間である。なお、仮焼と焼成とは連続的に行ってもよい。具体的には、焼成の昇温過程において、仮焼を行ってもよい。
【0045】
C.使用例
図3は、
図1に示すハニカム構造体の使用例を示す斜視図である。ハニカム構造体10の側面(外周壁16)には、ハニカム構造体10を介して互いに対向する一対の電極層18、18が配設されている。一対の電極層18、18は、それぞれ、ハニカム構造体10のセル12の延びる方向に延びる帯状に形成されている。図示しないが、一対の電極層18、18にはそれぞれ金属電極端子が設けられ、一方の金属電極端子は電源のプラス極に接続され、他方の金属電極端子は電源のマイナス極に接続され得る。
【0046】
図示しないが、隔壁14には触媒が担持され、セル12を通過する排ガス中のCO、NOx、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。
【実施例0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は、断りがない限り、下記の通りである。
1.炭化ケイ素粉末の平均粒子径および粒度分布(D90/D10)
レーザ回折散乱法により測定した。具体的には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製の「LA-960V2」)を用いて粒度分布を測定し、平均粒子径(D50)、D90およびD10を求めた。
2.金属ケイ素粉末の平均一次粒子径
レーザ回折散乱法により測定した。具体的には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製の「LA-960V2」)を用いて粒度分布を測定し、平均一次粒子径(D50)を求めた。
【0048】
[実施例1]
炭化ケイ素粉末を目開き75μm(後述のスリット幅の56%)の篩に通し、金属ケイ素粉末を目開き91μm(後述のスリット幅の67%)の篩に通し、篩に通した炭化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末とを70:30の質量比で混合し、原料粉末を得た。篩い分け後の炭化ケイ素粉末の平均粒子径は33μmであり、D90/D10は2.5であった。また、篩い分け後の金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は2μmであった。
【0049】
得られた原料粉末に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材および水を添加し、これらをプロシェアミキサーで混合して湿粉(混合物)を得た。混合に際し、水は2回に分けて添加した。得られた湿紛をバンバリーニーダーにて35rpmで75分間混練し、坏土を得た。その後、坏土を25℃の環境下に12時間置いた後、真空土練機(連続混練押出成形機)により、円柱状に成形した坏土を作製した。ここで、炭化ケイ素粉末の配合量と金属ケイ素粉末の配合量との合計を100質量部としたとき、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを8質量部配合し、造孔材を2質量部配合し、水を35質量部配合した。
【0050】
得られた円柱状の坏土を押出成形機(連続混練押出成形機)で押し出して、
図1に示すようなハニカム構造体と同様の形状のハニカム成形体を得た。具体的には、所望のハニカム構造体の隔壁と相補的な形状を有するスリット(スリット幅:135μm)が形成された口金から押し出すことにより、ハニカム成形体を得た。ここで、連続混練押出成形機の内部には、目開き125μm(スリット幅の93%)のスクリーンが配置され、スクリーンを通過した坏土を口金から押し出した(押出速度20mm/秒のときの押出圧:10MPa)。こうして、ハニカム成形体を得た。
【0051】
得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。その後、ハニカム成形体を、アルゴン雰囲気下、1450℃で60時間(昇温・降温時間を含む)焼成し、さらに、大気雰囲気下で1050℃を6時間保持して焼成し、その後、冷却してハニカム構造体を得た。
【0052】
[実施例2]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き50μm(後述のスリット幅の37%)の篩に通し、金属ケイ素粉末を目開き75μm(後述のスリット幅の56%)の篩に通したこと、および、連続混練押出成形機の内部に、目開き105μm(スリット幅の78%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
なお、篩い分け後の炭化ケイ素粉末の平均粒子径は28μmであり、D90/D10は3.0であった。また、篩い分け後の金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は2μmであった。
【0053】
[実施例3]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き125μm(後述のスリット幅の93%)の篩に通し、金属ケイ素粉末を目開き75μm(後述のスリット幅の56%)の篩に通したこと、および、連続混練押出成形機の内部に、目開き105μm(スリット幅の78%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
なお、篩い分け後の炭化ケイ素粉末の平均粒子径は29μmであり、D90/D10は3.1であった。
【0054】
[実施例4]
原料粉末の調製において、金属ケイ素粉末を目開き75μm(後述のスリット幅の56%)の篩に通したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0055】
[実施例5]
原料粉末の調製において、金属ケイ素粉末を目開き91μm(後述のスリット幅の67%)の篩に通したこと、および、連続混練押出成形機の内部に、目開き105μm(スリット幅の78%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0056】
[実施例6]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き50μm(後述のスリット幅の37%)の篩に通したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
なお、篩い分け後の炭化ケイ素粉末の平均粒子径は28μmであり、D90/D10は3.0であった。
【0057】
[実施例7]
原料粉末の調製において、金属ケイ素粉末を目開き75μm(後述のスリット幅の56%)の篩に通したこと、および、連続混練押出成形機の内部に、目開き175μm(スリット幅の130%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0058】
[比較例1]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通し、金属ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
なお、篩い分け後の炭化ケイ素粉末の平均粒子径は30μmであり、D90/D10は3.2であった。また、篩い分け後の金属ケイ素粉末の平均一次粒子径は2μmであった。
【0059】
[比較例2]
連続混練押出成形機の内部に、目開き250μm(スリット幅の185%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0060】
[比較例3]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0061】
[比較例4]
原料粉末の調製において、金属ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0062】
[比較例5]
原料粉末の調製において、炭化ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通し、金属ケイ素粉末を目開き150μm(後述のスリット幅の111%)の篩に通したこと、および、連続混練押出成形機の内部に、目開き250μm(スリット幅の185%)のスクリーンを配置したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。
【0063】
<評価>
実施例および比較例において得られたハニカム構造体200個に対し、透光性試験を行った。具体的には、得られたハニカム構造体を透光ライトに照らした上で、内部欠陥の有無を確認し、検査全数(200個)に対して、内部欠陥が確認されたハニカム構造体の個数をカウントし、その不良率を算出した。評価結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。