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2023-127774空気浄化ユニット及び空気浄化フェンス構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127774
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】空気浄化ユニット及び空気浄化フェンス構造体
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/28 20060101AFI20230907BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20230907BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230907BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20230907BHJP
   B01J 21/18 20060101ALI20230907BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B03C3/28 ZAB
B03C3/02 B
B01D53/94 222
B01J35/06 A
B01J21/18 A
B01J31/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031666
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正晃
(72)【発明者】
【氏名】増森 忠雄
【テーマコード(参考)】
4D054
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D054AA11
4D054BC01
4D054BC05
4D054BC08
4D054BC16
4D054EA21
4D148AA06
4D148AB01
4D148BA05Y
4D148BB08
4D148CD05
4D148DA03
4D148DA20
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA22B
4G169BD01B
4G169BD04B
4G169BD06B
4G169BE18B
4G169CA02
4G169CA07
4G169CA12
4G169CA13
4G169CA15
4G169CA17
4G169DA06
4G169EA10
4G169EB14Y
4G169EB15Y
(57)【要約】
【課題】微粒子除去機能を従来よりも良好に発揮し得る空気浄化ユニット及び空気浄化フェンス構造体を提供する。
【解決手段】複数の帯電性不織布シート材2が、複数の帯電性不織布シート材2の隣接間に帯電性不織布シート材2の面に沿う通風空間11を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の金属製メッシュからなるセパレータ5が、面方向が帯電性不織布シート材2の面に沿うように通風空間11内に配置され、セパレータ5は、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されて構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帯電性不織布シート材が、前記複数の帯電性不織布シート材の隣接間に前記帯電性不織布シート材の面に沿う通風空間を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の金属製メッシュからなるセパレータが、面方向が前記帯電性不織布シート材の面に沿うように前記通風空間内に配置され、
前記セパレータは、前記シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されて構成されている空気浄化ユニット。
【請求項2】
前記セパレータは、プリーツ状に成型された前記シート状の金属製メッシュの頂部が前記通風空間における通風方向に沿って延びるように前記通風空間内に配置されている請求項1に記載の空気浄化ユニット。
【請求項3】
前記セパレータは、プリーツ状に成型された前記シート状の金属製メッシュの山高さが5mm以下である請求項1又は2に記載の空気浄化ユニット。
【請求項4】
両側面に外気に開放される空気口がそれぞれ形成される本体ケーシングを備え、
前記本体ケーシングの内部には、前記空気口の両方を連通する通風路が形成され、
前記通風路に、前記空気口と前記通風空間における開口部とが連通する状態で、前記帯電性不織布シート材及び前記セパレータが配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の空気浄化ユニット。
【請求項5】
浄化対象区域に対して出入りする空気に含まれる汚染物質を除去するための空気浄化フェンス構造体であって、
請求項4に記載の空気浄化ユニットと、複数の触媒繊維シート材が、前記複数の触媒繊維シート材の隣接間に前記触媒繊維シート材の面に沿う第二通風空間を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されてなる第二セパレータが、面方向が前記触媒繊維シート材の面に沿うように前記第二通風空間内に配置された触媒浄化ユニットと、を備え、
前記空気浄化ユニット及び前記触媒浄化ユニットが、前記空気浄化ユニットの前記通風空間の通風方向と前記触媒浄化ユニットの前記第二通風空間の通風方向とが連続するように積層してなる空気浄化フェンス構造体。
【請求項6】
前記浄化対象区域が自動車道路であり、沿道に前記空気浄化ユニット及び前記触媒浄化ユニットが積層配置される請求項5に記載の空気浄化フェンス構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化ユニット、及び、浄化対象区域に対して出入りする空気に含まれる汚染物質を除去するための空気浄化フェンス構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の交通量が非常に多く、車両が通過する道路や発電所や工場等が密集する工業地帯等のように大気汚染が著しい浄化対象区域において、その浄化対象区域に出入りする空気から、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、揮発性有機化合物(VOC)等の汚染物質や微小粒子状物質(微粒子)を除去するための技術開発が進められている。
【0003】
例えば、道路等の浄化対象区域に対して出入りする空気から汚染物質や微粒子を除去する技術としては、特許文献1に示すように、空気が通流する通風路に、当該空気に含まれる汚染物質を除去可能な触媒繊維シート材を配置した触媒浄化ユニットと、空気に含まれる微粒子を除去可能な帯電性不織布からなる微粒子フィルタとを空気浄化ユニットとして設けたものが用いられている。具体的には、空気浄化ユニットは、複数の触媒繊維シート材が、通風路における通風方向に沿った通風空間を隣接する触媒繊維シート材間に形成し、この通風空間に通気性のセパレータを挟んだ状態で、並べて積層配置されるとともに、シート状の帯電性不織布が通風空間における開口部を覆う状態で配置されている。また、このような空気浄化ユニットを、通風路における通風方向を厚さ方向とした状態で、浄化対象区域の周囲の少なくとも一部を囲むように積層した空気浄化フェンス構造体が知られている。
【0004】
このような空気浄化ユニットにおいては、複数の触媒繊維シート材が、複数の触媒繊維シート材の隣接間に触媒繊維シート材の面に沿う通風空間を形成する状態で積層配置されているから、空気は通風空間を流通しつつ、触媒繊維シート材と接触することで汚染物質を除去することができる。その結果、少ない通気抵抗で空気を浄化することができ、圧損を非常に小さくできる。
【0005】
また、特にNOxの酸化除去には、比較的長い接触時間が必要である。しかしながら、上記空気浄化ユニットにおいて、触媒繊維シート材の隣接間に形成された通風空間を通流する空気は、比較的長い間触媒繊維シート材の面に沿って通流し、更には若干の空気が触媒繊維シート材の繊維間に入り込むので、その空気に含まれる汚染物質を良好に触媒繊維に接触させて酸化除去できる。
【0006】
更に、上記空気浄化ユニットにおいて、帯電性不織布からなり、厚さ方向に通過する空気中に含まれる微粒子を除去するシート状の微粒子フィルタは、通風空間における開口部を覆う状態で、触媒浄化ユニットに配置されている。微粒子を含む空気は、通風空間により整流されつつ、流動方向の揃った状態で、微粒子フィルタの面に対して交差する方向から微粒子フィルタに衝突する。したがって、空気を微粒子フィルタの厚さ方向への通気抵抗に抗して良好に通過させつつ、微粒子の捕捉能力を発揮させることができる。その結果、全体として圧力損失を大きく増加させることなく、微粒子フィルタに微粒子を静電的に吸着保持させて微粒子を除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-28852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の空気浄化ユニットにおいても、微粒子を含む空気がシート状の微粒子フィルタ(帯電性不織布)を、その厚さ方向に通過する必要があり、通風抵抗の増大が避けられないため、微粒子の除去率は高いが、除去量という観点からは十分とは言えなかった。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、微粒子除去機能を従来よりも良好に発揮し得る空気浄化ユニット及び空気浄化フェンス構造体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の空気浄化ユニットの特徴構成は、複数の帯電性不織布シート材が、前記複数の帯電性不織布シート材の隣接間に前記帯電性不織布シート材の面に沿う通風空間を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の金属製メッシュからなるセパレータが、面方向が前記帯電性不織布シート材の面に沿うように前記通風空間内に配置され、前記セパレータは、前記シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されて構成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、複数の帯電性不織布シート材が、複数の帯電性不織布シート材の隣接間に帯電性不織布シート材の面に沿う通風空間を形成する状態で積層配置されることで、空気浄化ユニットにおいて空気を帯電性不織布シート材に貫通させる必要がない。したがって、少ない通気抵抗で空気を浄化することができ、きわめて圧損の少ない空気浄化ユニットとすることができる。
また、上記帯電性不織布シート材の隣接間に形成された通風空間を通流する空気は、比較的長い間帯電性不織布シート材の面に沿って通流しつつ、上記帯電性不織布シート材の繊維間に入り込む。したがって、微粒子を含む空気が通風空間を流通しつつ、帯電性不織布シート材と接触して、帯電性不織布シート材が微粒子を静電的に吸着保持することで、微粒子を除去することができる。即ち、上記特徴構成を備えた空気浄化ユニットにおいては、従来の空気浄化ユニットとは異なり、微粒子を含む空気が帯電性不織布を厚さ方向に通過する必要がないため、通風抵抗が増大することなく、微粒子を良好に除去でき、除去率が高いだけでなく除去量も多くなる。更に、通風空間を流通する空気は、比較的長い間通風空間内を通流するので、帯電性不織布シート材の面方向が通風空間における通風方向と平行であっても、空気に含まれる微粒子が帯電性不織布シート材に良好に捕捉される。
【0012】
また、上記特徴構成を備えた空気浄化ユニットにおいては、通風空間にシート状の金属製メッシュをプリーツ状に成型したセパレータが配置されているので、通風空間内を流通する空気が、通気性を有するセパレータを介して帯電性不織布シート材に接触し易くなる。これにより、空気に含まれる微粒子を帯電性不織布シート材によって効率よく除去できるから、空気浄化ユニットにおいて帯電性不織布シート材による微粒子除去機能を有効に発揮することができる。また、上記特徴構成によれば、複数の帯電性不織布シート材の夫々の隣接間に形成された通風空間がセパレータによって保形されるため、通風空間が極端に狭くなって空気が流通し難くなるといった問題の発生を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る空気浄化ユニットの更なる特徴構成は、前記セパレータは、プリーツ状に成型された前記シート状の金属製メッシュの頂部が前記通風空間における通風方向に沿って延びるように前記通風空間内に配置されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、セパレータはプリーツ状に成型されたシート状の金属製メッシュの頂部が通風空間内における通風方向に沿って延びるように通風空間内に配置されているので、通風空間においてセパレータによる通風抵抗を小さくすることができ、通風空間において通風方向に沿って空気を流れ易くすることができる。
【0015】
本発明に係る空気浄化ユニットの更なる特徴構成は、前記セパレータは、プリーツ状に成型された前記シート状の金属製メッシュの山高さが5mm以下である点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、セパレータによって通風空間において隣接する帯電性不織布シート材の間の距離を5mm以下に設定できるので、通風空間内を流通する空気が帯電性不織布シート材に接触し易くなる。これにより、空気に含まれる微粒子を帯電性不織布シート材により良好に捕捉することができる。
【0017】
本発明に係る空気浄化ユニットの更なる特徴構成は、両側面に外気に開放される空気口がそれぞれ形成される本体ケーシングを備え、前記本体ケーシングの内部には、前記空気口の両方を連通する通風路が形成され、前記通風路に、前記空気口と前記通風空間における開口部とが連通する状態で、前記帯電性不織布シート材及び前記セパレータが配置されている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、空気浄化ユニットが本体ケーシングの両側面に形成された空気口の両方を連通する通風路に、空気口と通風空間における開口部とが連通する状態で配置されているので、当該通風路を通流する空気が空気浄化ユニットの通風空間に良好に通流し、通流する空気が帯電性不織布シート材に接触する。これにより、空気浄化ユニットは、帯電性不織布シート材の微粒子除去機能を簡便な構成で良好に発揮することができる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明の空気浄化フェンス構造体の特徴構成は、浄化対象区域に対して出入りする空気に含まれる汚染物質を除去するための空気浄化フェンス構造体であって、上記記載の空気浄化ユニットと、複数の触媒繊維シート材が、前記複数の触媒繊維シート材の隣接間に前記触媒繊維シート材の面に沿う第二通風空間を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されてなる第二セパレータが、面方向が前記触媒繊維シート材の面に沿うように前記第二通風空間内に配置された触媒浄化ユニットと、を備え、前記空気浄化ユニット及び前記触媒浄化ユニットが、前記空気浄化ユニットの前記通風空間の通風方向と前記触媒浄化ユニットの前記第二通風空間の通風方向とが連続するように積層してなる点にある。
また、前記浄化対象区域が自動車道路であり、沿道に積層配置されるとより好ましい構成となる。
【0020】
本特徴構成によれば、空気浄化フェンス構造体は、別途送風機を設けなくても自然風等だけで、浄化対象区域に対して出入りする空気を良好に空気浄化ユニット及び触媒浄化ユニットの夫々の通風路に通流させ、その空気に含まれる汚染物質や微粒子を良好に除去することができる。
【0021】
尚、空気浄化ユニット及び触媒浄化ユニットを空気浄化フェンス構造体として用いる場合には、空気浄化ユニットに対する空気の流通方向は、環境条件に伴って変化する場合があるが、いずれの方向からの気流に対しても同様に微粒子除去機能及び触媒浄化機能が十分に発揮されるように、浄化対象区域に空気浄化ユニットを対向させて配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気浄化ユニットの斜視図である。
図2】空気浄化ユニットの立断面図である。
図3】空気浄化ユニットの平断面図である。
図4】触媒浄化ユニットの斜視図である。
図5】触媒浄化ユニットの立断面図である。
図6】触媒浄化ユニットの平断面図である。
図7】浄化対象区域に対して空気浄化フェンス構造体を配置した状態を示す図である。
図8】浄化対象区域に対して空気浄化フェンス構造体を配置した状態を示す図である。
図9】実施例1~3及び比較例の微粒子除去性能を示すグラフ(2.5μm以上5.0μm以下)である。
図10】実施例1~3及び比較例の微粒子除去性能を示すグラフ(1.0μm以上2.5μm未満)である。
図11】実施例1~3及び比較例の微粒子除去性能を示すグラフ(0.3μm以上1.0μm未満)である。
図12】実施例4の微粒子除去性能及びNOx除去性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態にかかる空気浄化ユニットおよび空気浄化フェンス構造体を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0024】
〔空気浄化ユニット〕
本発明の実施形態に係る空気浄化ユニット1について、図1図3に基づいて説明する。
【0025】
図1図3に示すように、空気浄化ユニット1は、複数の帯電性不織布シート材2が、複数の帯電性不織布シート材2の隣接間に帯電性不織布シート材2の面に沿う通風空間11を形成する状態で積層配置されるとともに、シート状のセパレータ5が、面方向が帯電性不織布シート材2の面に沿うように通風空間11内に配置されている。
【0026】
また、空気浄化ユニット1は、図1及び図3に示すように、両側面に外気に開放される空気口22がそれぞれ形成される本体ケーシング20を備え、本体ケーシング20の内部には、空気口22の両方を連通する通風路10が形成されている。当該通風路10には、複数の帯電性不織布シート材2及びセパレータ5が配置されている。
即ち、本体ケーシング20は、横幅方向の両側に一対の板状部材24を備え、縦幅方向の両側に一対の降水浸入口25及び金網26を備えている。なお、それぞれの金網26は、一対の板状部材24の上端部同士或いは下端部同士に亘って設けられる矩形枠部材(図示せず)により固定されている。そして、本体ケーシング20は、空気口22を厚さ方向の両端部に備え、これら空気口22同士を連通する状態で、内部に厚さ方向と直交する矩形断面の通風路10を備えている。つまり、本体ケーシング20は厚さ方向の両端部に空気口22を備えた矩形筒状に形成されている。尚、本体ケーシング20は、アルミ板やプラスチック板を枠組みして簡単に製造することができる。
これにより、空気浄化ユニット1は、本体ケーシング20の両側部に形成された一対の空気口22が外気に開放されることになるので、図1に示すように、ある方向に自然風等の空気Aが吹いた場合には、その一対の空気口22のうちの一方が空気Aの流れの上流側に向けて開口するものとなり、他方が空気Aの流れの下流側に向けて開口するものとなる。つまり、一対の空気口22同士を通流する空気Aの通流方向が、通風路10の通風方向となる。なお、本実施形態では、通風方向は、本体ケーシング20の厚さ方向が通風方向となっている。
【0027】
空気浄化ユニット1は、本体ケーシング20の内部に形成される空気Aが通流する通風路10に、当該空気Aに含まれる微粒子を除去可能な帯電性不織布をシート状に形成してなる帯電性不織布シート材2を配置して構成されている。即ち、空気浄化ユニット1は、通風路10に空気Aを通流させることで、その空気Aに含まれる微粒子を、帯電性不織布シート材2を構成する帯電性不織布に接触させて除去するものである。
【0028】
更に、空気浄化ユニット1は、帯電性不織布シート材2が配置された通風路10に空気Aを通流させる際に発生する圧力損失を小さくして、別途送風機を設けなくても自然風等だけで通風路10に空気Aを通流させることができ、その空気Aに含まれる微粒子を良好に除去可能とするように構成されており、その詳細構成について以下に説明する。
【0029】
具体的には、通風路10において、複数の帯電性不織布シート材2が、通風方向に沿った通風空間11を隣接間に形成しながら積層配置されている。即ち、通風路10において複数の帯電性不織布シート材2が各帯電性不織布シート材2の面を通風方向に平行にした状態で積層配置されており、更に、当該通風方向に沿った通風空間11が複数の帯電性不織布シート材2の夫々の隣接間に形成されるように、夫々の帯電性不織布シート材2が離間配置されている。よって、通風路10において空気Aは、上記帯電性不織布シート材2に沿って、当該通風空間11を通流することになり、空気Aを帯電性不織布シート材2に貫通させる場合と比較して、その際に発生する圧力損失は非常に小さいものとなる。尚、本実施形態における複数の帯電性不織布シート材2は、各帯電性不織布シート材2の面が本体ケーシング20の縦幅方向に対して平行となり、各帯電性不織布シート材2が横幅方向に並ぶ状態で積層配置されている。
【0030】
尚、帯電体不織布は、不織布にエレクトレット化処理を施したものが好ましい。エレクトレット化処理としては、高電圧による分極、荷電イオンの衝突、荷電粒子の注入など電気的作用による方法や、摩擦、衝突など固体との相互作用による方法、液体との接触及び衝突を利用した方法など、公知の方法を用いることができる。低圧力損失、微粒子の高除去効率の観点から、液体との接触を利用した方法や固体との摩擦を利用した方法が好ましい。
【0031】
また、帯電性不織布は、補強ネットを含むことが好ましい。補強ネットは、帯電性不織布に剛性を付与し、形状保持性や加工性を向上させるためのものである。補強ネットの材料としては、合成繊維、無機繊維、金属繊維を使用することができるが、熱接着性や加工性の観点から、合成繊維を使用することが好ましい。
【0032】
帯電性不織布シート材2は、通風路10の通風方向での断面形状(縦幅方向の断面形状)が長方形の平板状のものが使用されており、更に、通風路10には、その平板状に形成された帯電性不織布シート材2の複数が、隣接間に通気性のセパレータ5を挟み込みながら積層配置されている。セパレータ5は、面方向が帯電性不織布シート材2の面に沿うように通風空間11内に配置されている。この通気性のセパレータ5は、厚み方向に通気性を有するシート状の金属製メッシュによって構成され、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されている。金属製メッシュは、繊維製品を織るのと同様に、金属の棒線(糸に相当)を所定の間隔を空けて織ることで形成される。セパレータ5を構成する金属製メッシュとしては、例えば、アルミ、ステンレスなどの金属材料を利用できる。
【0033】
即ち、通風路10において、複数の帯電性不織布シート材2と複数のセパレータ5とが交互に積層されており、複数の帯電性不織布シート材2の夫々の隣接間に形成された通風空間11が、上記セパレータ5により保形されることになる。そして、その通風空間11において、空気Aは、圧力損失の増加を抑制しながら、上記セパレータ5に形成された多数の孔を通じて良好に通流することになる。
【0034】
図1及び図2に示すように、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されたセパレータ5には、隣接する2つの帯電性不織布シート材2のうちの一方に向く山部分と他方に向く山部分とが連続して形成されている。セパレータ5は、一方の山部分の先端である頂部6と、他方の山部分の先端である頂部7とが、隣接する帯電性不織布シート材2の夫々に当接する。本実施形態では、図1に示すように、セパレータ5は、頂部6(7)の夫々が通風空間11における通風方向に沿って延びるように通風空間11内に配置されている。
【0035】
具体的には、セパレータ5において、通風空間11の通風方向において隣接する頂部6(7)の夫々は、通風方向視で同一の位置(重複する位置)となるように列状に形成されており、各列を構成する頂部6(7)により各通風空間11が形成される。各列を構成する頂部6(7)は各通風空間11の通風方向に沿う。セパレータ5は、シート状の金属製メッシュの山高さが5mm以下であると好ましい。ここで、セパレータ5におけるシート状の金属製メッシュの山高さとは、一方の帯電性不織布シート材2に向く山部分の頂部6と、他方の帯電性不織布シート材2に向く山部分の頂部7との間の距離Dであり、通風空間11において隣接する帯電性不織布シート材2の間の距離(幅)に等しい。
【0036】
上述のように、空気浄化ユニット1は、通風路10において複数の帯電性不織布シート材2が各帯電性不織布シート材2の面を通風方向と平行にした状態で積層配置されており、更に、当該通風方向に沿った通風空間11が複数の帯電性不織布シート材2の夫々の隣接間に形成されるように、夫々の帯電性不織布シート材2が離間配置されている。そして、空気浄化ユニット1が形成する通風空間11の通流方向における一端側には、開口部27としての一端側開口部28が複数形成され、他端側には、開口部27としての他端側開口部29が複数形成されている。そして、空気浄化ユニット1は、一端側開口部28の夫々が本体ケーシング20の一方の空気口22側に位置し、他端側開口部29の夫々が本体ケーシング20の他方の空気口22側に位置するように、通風路10に配置される。また、複数のセパレータ5は、列状に構成される頂部6(7)の各列が一方の空気口22から他方の空気口22に向けて位置する状態で、セパレータ5の一方側の夫々が本体ケーシング20の一方の空気口22側に位置し、セパレータ5の他端側の夫々が本体ケーシング20の他方の空気口22側に位置するように、通風空間11に配置される。
【0037】
以上の構成を備えた空気浄化ユニット1においては、上流側の空気口22から通風路10を介して下流側の空気口22に通流する自然風等の空気Aの流れが比較的弱い場合でも、図3に示すように、その空気Aの流れだけで当該空気Aが、上流側の空気口22から、空気浄化ユニット1の一端側開口部28、通風空間11、他端側開口部29の順に通流した後に、下流側の空気口22から空気浄化ユニット1の外部に排出されることとなる。
【0038】
〔触媒浄化ユニット〕
触媒浄化ユニット1Aについて、図4図6に基づいて説明する。
図4図6に示すように、触媒浄化ユニット1Aは、複数の触媒繊維シート材3が、複数の触媒繊維シート材3の隣接間に触媒繊維シート材3の面に沿う第二通風空間11aを形成する状態で積層配置されるとともに、シート状の第二セパレータ5aが、面方向が触媒繊維シート材3の面に沿うように第二通風空間11a内に配置されている。
【0039】
また、触媒浄化ユニット1Aは、図4及び図6に示すように、両側面に外気に開放される空気口22aがそれぞれ形成される本体ケーシング20aを備え、本体ケーシング20aの内部には、空気口22aの両方を連通する通風路10aが形成されている。当該通風路10aには、複数の触媒繊維シート材3及び第二セパレータ5aが配置されている。
即ち、本体ケーシング20aは、横幅方向の両側に一対の板状部材24aを備え、縦幅方向の両側に一対の降水浸入口25a及び金網26aを備えている。なお、それぞれの金網26aは、一対の板状部材24aの上端部同士或いは下端部同士に亘って設けられる矩形枠部材(図示せず)により固定されている。本体ケーシング20aの構成は、空気浄化ユニット1の本体ケーシング20と同じであり、一対の空気口22a同士を通流する空気Aの通流方向が、通風路10aの通風方向となる。なお、本実施形態では、通風方向は、本体ケーシング20aの厚さ方向が通風方向となっている。
【0040】
触媒浄化ユニット1Aは、本体ケーシング20aの内部に形成される空気Aが通流する通風路10aに、当該空気Aに含まれる微粒子を除去可能な触媒繊維をシート状に形成してなる触媒繊維シート材3を配置して構成されている。即ち、触媒浄化ユニット1Aは、通風路10aに空気Aを通流させることで、その空気Aに含まれる汚染物質を、触媒繊維シート材3を構成する触媒繊維に接触させ、その触媒機能により酸化除去するものである。
【0041】
更に、触媒浄化ユニット1Aは、触媒繊維シート材3が配置された通風路10aに空気Aを通流させる際に発生する圧力損失を小さくして、別途送風機を設けなくても自然風等だけで通風路10aに空気Aを通流させることができ、その空気Aに含まれる汚染物質を良好に除去可能とするように構成されている。
【0042】
具体的には、通風路10aにおいて、複数の触媒繊維シート材3が、通風方向に沿った第二通風空間11aを隣接間に形成しながら積層配置されている。即ち、通風路10aにおいて複数の触媒繊維シート材3が各触媒繊維シート材3の面を通風方向に平行にした状態で積層配置されており、更に、当該通風方向に沿った第二通風空間11aが複数の触媒繊維シート材3の夫々の隣接間に形成されるように、夫々の触媒繊維シート材3が離間配置されている。よって、通風路10aにおいて空気Aは、上記触媒繊維シート材3に沿って、当該第二通風空間11aを通流することになり、全ての空気Aを触媒繊維シート材3に貫通させる場合と比較して、その際に発生する圧力損失は非常に小さいものとなる。尚、本実施形態における複数の触媒繊維シート材3は、各触媒繊維シート材3の面が本体ケーシング20aの縦幅方向に対して平行となり、各触媒繊維シート材3が横幅方向に並ぶ状態で積層配置されている。
【0043】
上記触媒繊維シート材3を構成する触媒繊維としては、空気A中の汚染物質、特にNOxを良好に酸化除去し得る活性炭素繊維が用いられている。
上記触媒繊維シート材3を構成する活性炭素繊維としては、窒素吸着法による比表面積が400~500m/gの範囲内であり、MP法で解析した細孔分布において、直径2nm以下のミクロポアの内、直径1nm以下のものが全ミクロポア容積の80%以上を占めるものを用いることが好ましく、このような活性炭素繊維の吸着機能と触媒機能により、大気汚染の原因となるNOxの内、特に常温で除去することが困難な一酸化窒素(NO)を常温で長期間除去することができる。
更に、上記触媒繊維シート材3を構成する活性炭素繊維としては、ピッチ系活性炭素繊維(例えば、アドール株式会社製の「A-5」)やポリアクリロニトリル(PAN)系活性炭素繊維を用いることが一層好ましく、特にNOを一層良好に除去することができる。
【0044】
尚、上記触媒繊維シート材3としては、活性炭素繊維をシート状の不織布に加工されたものが利用されている。触媒繊維シート材3は、芯材を備えて構成されていてもよい。
【0045】
触媒繊維シート材3は、通風路10aの通風方向での断面形状(縦幅方向の断面形状)が長方形の平板状のものが使用されており、更に、通風路10aには、その平板状に形成された触媒繊維シート材3の複数が、隣接間に通気性の第二セパレータ5aを挟み込みながら積層配置されている。この通気性の第二セパレータ5aは、空気浄化ユニット1のセパレータ5と同じく、厚み方向に通気性を有するシート状の金属製メッシュによって構成され、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型されている。
【0046】
即ち、通風路10aにおいて、複数の触媒繊維シート材3と複数の第二セパレータ5aとが交互に積層されており、複数の触媒繊維シート材3の夫々の隣接間に形成された第二通風空間11aが、上記第二セパレータ5aにより保形されることになる。そして、その第二通風空間11aにおいて、空気Aは、圧力損失の増加を抑制しながら、上記第二セパレータ5aに形成された多数の孔を通じて良好に通流することになる。
【0047】
図4及び図5に示すように、シート状の金属製メッシュがプリーツ状に成型された第二セパレータ5aには、隣接する2つの触媒繊維シート材3のうちの一方に向く山部分と他方に向く山部分とが連続して形成されている。第二セパレータ5aは、一方の山部分の先端である頂部6aと、他方の山部分の先端である頂部7aとが、隣接する触媒繊維シート材3の夫々に当接する。本実施形態では、図4に示すように、第二セパレータ5aは、頂部6a(7a)の夫々が第二通風空間11aにおける通風方向に沿って延びるように第二通風空間11a内に配置されている。ここで、第二セパレータ5aにおけるシート状の金属製メッシュの山高さとは、一方の触媒繊維シート材3に向く山部分の頂部6aと、他方の触媒繊維シート材3に向く山部分の頂部7aとの間の距離Daであり、第二通風空間11aにおいて隣接する触媒繊維シート材3の間の距離(幅)に等しい。
【0048】
上述のように、触媒浄化ユニット1Aは、通風路10aにおいて複数の触媒繊維シート材3が各触媒繊維シート材3の面を通風方向と平行にした状態で積層配置されており、更に、当該通風方向に沿った第二通風空間11aが複数の触媒繊維シート材3の夫々の隣接間に形成されるように、夫々の触媒繊維シート材3が離間配置されている。そして、触媒浄化ユニット1Aが形成する第二通風空間11aの通流方向における一端側には、開口部27aとしての一端側開口部28aが複数形成され、他端側には、開口部27aとしての他端側開口部29aが複数形成されている。そして、触媒浄化ユニット1Aは、一端側開口部28aの夫々が本体ケーシング20aの一方の空気口22a側に位置し、他端側開口部29aの夫々が本体ケーシング20aの他方の空気口22a側に位置するように、通風路10aに配置される。また、複数の第二セパレータ5aは、列状に構成される頂部6a(7a)の各列が一方の空気口22aから他方の空気口22aに向けて位置する状態で、第二セパレータ5aの一方側の夫々が本体ケーシング20aの一方の空気口22a側に位置し、第二セパレータ5aの他端側の夫々が本体ケーシング20aの他方の空気口22a側に位置するように、第二通風空間11aに配置される。
【0049】
以上の構成を備えた触媒浄化ユニット1Aにおいては、上流側の空気口22aから通風路10aを介して下流側の空気口22aに通流する自然風等の空気Aの流れが比較的弱い場合でも、図6に示すように、その空気Aの流れだけで当該空気Aが、上流側の空気口22aから、触媒浄化ユニット1Aの一端側開口部28a、第二通風空間11a、他端側開口部29aの順に通流した後に、下流側の空気口22aから触媒浄化ユニット1Aの外部に排出されることとなる。
【0050】
〔空気浄化フェンス構造体〕
本発明に係る空気浄化フェンス構造体30,31の実施の形態について図7及び図8に基づいて説明する。尚、図7及び図8は、浄化対象区域に対して空気浄化フェンス構造体30又は31を配置した状態を示す図である。
【0051】
空気浄化フェンス構造体30,31は、空気浄化ユニット1及び触媒浄化ユニット1Aを、空気浄化ユニット1の通風空間11の通風方向と触媒浄化ユニット1Aの第二通風空間11aの通風方向とが連続するように積層することで構成することができる。具体的には、図7に示される空気浄化フェンス構造体30は、空気浄化ユニット1の他端側開口部29に触媒浄化ユニット1Aの一端側開口部28aが対向するよう両者が積層されて通風空間11の通風方向と第二通風空間11aの通風方向が連続する。図8に示される空気浄化フェンス構造体31は、触媒浄化ユニット1Aが中央に配置され、触媒浄化ユニット1Aの両側に空気浄化ユニット1,1が夫々配置されており、空気浄化ユニット1,1の開口部27に触媒浄化ユニット1Aの開口部27aが対向するよう積層される。これにより、空気浄化フェンス構造体30,31は、空気浄化ユニット1の通風方向と触媒浄化ユニット1Aの通風方向とが連続し、空気Aが、空気浄化ユニット1及び触媒浄化ユニット1Aを連通するようになる。
【0052】
即ち、空気浄化フェンス構造体30,31において、上記空気浄化ユニット1は、帯電性不織布シート材2及びセパレータ5が配置された通風路10に空気Aを通流させる際の圧力損失が小さく、また、上記触媒浄化ユニット1Aは、触媒繊維シート材3及び第二セパレータ5aが配置された通風路10に空気Aを通流させる際の圧力損失が小さい。したがって、空気浄化フェンス構造体30,31は、別途送風機を設けなくても、自動車道路50において自然風或いは自動車が走行することで発生する風だけで、自動車道路50に対して出入りする空気Aを通風路10,10aに良好に通流させることができる。その結果、空気Aに含まれる微粒子を帯電性不織布シート材2に良好に接触させて除去することができ、且つ、空気Aに含まれる汚染物質を触媒繊維シート材3に良好に接触させて酸化除去することができる。
【0053】
また、上記の空気浄化方法は、図7及び図8に示す空気浄化フェンス構造体30,31により実行することができる。
即ち、自動車道路50などの浄化対象区域に対して出入りする空気Aに含まれる汚染物質や微粒子を除去するために、空気浄化ユニット1及び触媒浄化ユニット1Aを通風空間11の通風方向と第二通風空間11aの通風方向とが連続するように積層して構成された空気浄化フェンス構造体30,31を、自動車道路50などの浄化対象区域の周囲に沿って並設することで実現される。
【0054】
例えば、図7に示すように、自動車道路50と歩道51との境界部に沿って並設される空気浄化フェンス構造体30にあっては、自動車道路50において車両が通過する際に自動車道路50側から歩道51側に空気Aの流れが発生する。図7に示す例では、空気浄化フェンス構造体30は、空気浄化ユニット1が自動車道路50に対向するように配置されている。すなわち、空気浄化フェンス構造体30は、空気Aの流れの上流側に空気浄化ユニット1が配置され、空気Aの流れの下流側に触媒浄化ユニット1Aが配置されている。
これにより、自動車道路50側から歩道51側への空気Aの流れを利用して、その自動車道路50側から歩道51側に流出する空気Aは、空気浄化フェンス構造体30において、空気浄化ユニット1の圧力損失が小さい通風路10から触媒浄化ユニット1Aの圧力損失が小さい通風路10aに向けて流通させることができる。その結果、空気浄化フェンス構造体30は、その空気Aに含まれる微粒子を帯電性不織布シート材2に良好に接触して吸着除去し、空気Aに含まれるNOx等の汚染物質が触媒繊維シート材3に良好に接触して酸化除去することができる。
【0055】
また、図8に示すように、浄化対象区域としての自動車道路50に対しては、対向車線の境界部にある中央分離帯に空気浄化フェンス構造体31を配置してもよい。空気浄化フェンス構造体31は、空気浄化ユニット1の通風空間11の通風方向と触媒浄化ユニット1Aの第二通風空間11aの通風方向とが連続するように、中央に触媒浄化ユニット1Aが配置され、触媒浄化ユニット1Aの両側に空気浄化ユニット1が積層されて構成されている。これにより、対向車線間で発生する空気Aの流れを利用して、空気浄化フェンス構造体31は、その空気Aを夫々の空気浄化ユニット1の圧力損失が小さい通風路10から触媒浄化ユニット1Aの圧力損失が小さい通風路10aに向けて流通させることができる。その結果、空気浄化フェンス構造体31において、その空気Aに含まれる微粒子が帯電性不織布シート材2に良好に接触して吸着除去され、空気Aに含まれるNOx等の汚染物質が触媒繊維シート材3に良好に接触して酸化除去される。また、浄化対象区域としての自動車道路50に対して、その上空を覆う形態で上記空気浄化フェンス構造体31を配置することで、自動車道路50から上方への空気Aの流れを利用して、その空気Aを夫々の空気浄化ユニット1の圧力損失が小さい通風路10から触媒浄化ユニット1Aの圧力損失が小さい通風路10aに向けて流通させることができる。その結果、空気浄化フェンス構造体31において、その空気Aに含まれる微粒子を帯電性不織布シート材2に良好に接触して吸着除去し、空気Aに含まれるNOx等の汚染物質が触媒繊維シート材3に良好に接触して酸化除去することができる。
【0056】
空気浄化フェンス構造体30、31は、ディーゼル大型車等が多い工場地域や港湾、貨物集積所、バスターミナル等、交通量が多く渋滞が激しい交差点近傍、火力発電所・廃棄物焼却炉周辺等の排ガス濃度が高い箇所等の周辺の自動車道路50沿道で、排ガスに含まれるカーボンブラック、元素状炭素、タイヤの摩耗粉塵等の微少粒子状物質(PM2.5等)の除去と、排ガスに含まれるNOxの浄化を同時に行うことができる。
よって、送風機等の電力消費機器が不要で、自然風、自動車の走行風だけで装置内を通風させ空気Aを浄化することができる。また、設置場所としては道路の端にフェンス状に設置が可能であり、既存道路構造の改造が不要であり、設置スペースも不要となり、簡易な設置が可能である。更に、触媒浄化ユニット1Aにおいて触媒浄化に用いる活性炭素繊維は、水洗いで性能を回復するので、長期間交換は不要である。また、空気浄化フェンス構造体30、31は、触媒浄化ユニット1Aのみを個別に水洗いすることができ、水洗い後の活性炭素繊維の乾燥は、通過する空気A、排気ガスにより行うことができる。
【0057】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
〔実施例〕
図1に示す空気浄化ユニット1と同じ構成のもの(実施例1~3)と、図3に示す触媒浄化ユニット1Aと同じ構成のもの(比較例)との夫々の微粒子除去率を計測する試験を行った。
【0059】
実施例の空気浄化ユニットは、本体ケーシングの内部に形成される通風路の断面形状が縦500mm*横500mmの正方形であり、当該通風路の奥行き即ち通風方向の幅が100mmである。実施例の空気浄化ユニットで使用する帯電性不織布シート材は、帯電性不織布シート(東洋紡株式会社製のEF-R-25、目付40g/m、厚み1.1mm)である。
【0060】
実施例の空気浄化ユニットでは、図1に示される通風路10が、縦500mm*横500mm*奥行き100mmであり、幅100mm*長さ500mm角のサイズにカットした帯電性不織布シート材の複数を、通風方向を横断する横方向に並べ、夫々の隣接間に、所定幅の通風空間(実施例1では2mm、実施例2では3mm、実施例3では5mm)を夫々形成しながら互いに平行になるように積層配置している。
さらに、実施例1~3の空気浄化ユニットでは、セパレータとしてのシート状のアルミ製メッシュ(幅100mm*長さ500mm角のサイズ)を、所定の山高さ(実施例1では2mm、実施例2では3mm、実施例3では5mm)となるように、プリーツ状に折り返し、アルミ製メッシュの幅が通風路の奥行き方向(通風方向)となり、アルミ製メッシュの長さが通風路の縦方向の長さとなるようにして配置している。実施例1では、帯電性不織布シート材2及びセパレータ5を160枚ずつ使用し、実施例2では、帯電性不織布シート材2及びセパレータ5を120枚ずつ使用し、実施例3では、帯電性不織布シート材2及びセパレータ5を80枚ずつ使用した。
【0061】
〔比較例〕
比較例の触媒浄化ユニットは、本体ケーシングの内部に形成される通風路の断面形状が縦500mm*横500mmの正方形であり、当該通風路の奥行き即ち通風方向の幅が200mmである。比較例の触媒浄化ユニットで使用する触媒繊維シート材は、比表面積500m/gであり、原料としてポリアクリロニトリル(PAN)を用いた活性炭素繊維を厚さ5mmのシート状の不織布に乾式加工されたものである。
【0062】
比較例の触媒浄化ユニットでは、図4に示される通風路10aが、縦500mm*横500mm*奥行き200mmであり、幅200mm*長さ500mm角のサイズにカットした触媒繊維シート材の複数を、通風方向を横断する横方向に並べ、夫々の隣接間に幅8mmの通風空間を形成しながら互いに平行になるように積層配置している。
さらに、比較例の触媒浄化ユニットでは、セパレータとしてのシート状のアルミ製メッシュ(幅200mm*長さ500mm角のサイズ)を、山高さ8mmとなるように、プリーツ状に折り返し、アルミ製メッシュの幅が通風路の奥行き方向(通風方向)となり、アルミ製メッシュの長さが通風路の縦方向の長さとなるようにして配置している。
【0063】
実施例の空気浄化ユニット及び比較例の触媒浄化ユニットを、小型風洞式空気浄化性能試験装置により微粒子(PM)の除去性能を測定した。実施例の空気浄化ユニット及び比較例の触媒浄化ユニットを上記試験装置において500mm*500mm角の通風部断面となる箇所に装填し、通過風速が0.05~0.30m/sとなるように送風機で調整した。PMは試験室内の空気Aに含まれる微粒子とし、これを空気浄化ユニット(又は触媒浄化ユニット)の入口と出口で、パーティクルカウンター(柴田科学、GT-526S)より、各1分間測定した。微粒子(PM)の除去率は、PMの粒子径サイズごと(2.5μm以上5.0μm以下、1.0μm以上2.5μm未満、0.3μm以上1.0μm未満の3種)に入口と出口の差から求めた。
【0064】
PM除去率=(入口濃度-出口濃度)/入口濃度*100(%)
【0065】
その結果、図9図11の通り、実施例1~3に係る空気浄化ユニットでは、通風路の奥行き即ち通風方向の幅が100mmであって比較例(200mm)の半分ではあるが、何れも比較例よりもPM除去率が顕著に向上した。具体的には、風速が0.05m/s~0.30m/sであるときのPM除去率は以下の通りである。測定粒子径範囲2.5μm以上5.0μm以下のPM除去率は、実施例1で90%前後、実施例2で約50~70%、実施例3で約20~40%であった。測定粒子径範囲1.0μm以上2.5μm未満のPM除去率は、実施例1で80%前後、実施例2で約50~60%、実施例3で約20~30%であった。また、測定粒子径範囲0.3μm以上1.0μm未満のPM除去率は、実施例1で70%前後、実施例2で約40~50%、実施例3で約15~25%であった。これに対して、比較例では、PM除去率が、実施例1~3よりも低く、測定粒子径範囲2.5μm以上5.0μm以下で約30~50%、測定粒子径範囲1.0μm以上2.5μm未満では15%前後、測定粒子径範囲0.3μm以上1.0μm未満では5%前後であった。比較例では、特に0.3μm以上1.0μm未満の微小粒子は殆ど除去されず、すり抜けることが明らかになった。
【0066】
〔実施例4〕
実施例4として、実施例1の空気浄化ユニットと、「触媒繊維シート材として活性炭素繊維を用いた触媒浄化ユニット」とを、空気浄化ユニットの通風空間の通風方向と触媒浄化ユニットの第二通風空間の通風方向とが連続するように積層した空気浄化構造体(空気浄化フェンス構造体の一例)を作成した。空気浄化構造体の触媒浄化ユニットは、比較例の触媒浄化ユニットの奥行を100mmとし、幅100mm*長さ500mm角のサイズにカットした触媒繊維シート材(ポリアクリロニトリル(PAN)を用いた活性炭素繊維)と、セパレータとしてのシート状のアルミ製メッシュ(幅100mm*長さ500mm角のサイズ)とを複数配置したものである。
この実施例4の空気浄化構造体を、空気浄化ユニットを上流側とし触媒浄化ユニットを下流側にして、小型風洞式空気浄化試験装置によりPM除去率を測定した。
【0067】
また、実施例4の空気浄化構造体について、汚染物質であるNOxの除去性能を、上記と同様に、小型風洞式空気浄化試験装置を用いて測定した。尚、NOxとしてはNOを用い、濃度1%のガスボンベより流量を制御し、空気浄化ユニット1の入口で約1ppmとなるように空気Aに導入した。また、NO濃度は、空気浄化構造体の入口と出口で、NOx自動計測機(アナテックヤナコ、XCL-880US)により、各30分間測定した。NO除去率は、入口と出口の濃度差から求めた。
NO除去率=(入口濃度-出口濃度)/入口濃度*100(%)
【0068】
その結果、図12に示す通り、実施例4の空気浄化構造体は、2.5μm以上5.0μm以下の粒子を90%前後除去し、1.0μm以上2.5μm未満の粒子を概ね85%以上除去し、0.3μm以上1.0μm未満の粒子を概ね70%前後除去した。また、実施例4において、NOの除去率は、風速0.10m/s以下では70%以上であり、風速0.30m/sで40%以上であり、風速が小さいほどNOの除去率が高いことが実証された。
【0069】
〔別実施形態〕
上記実施形態における空気浄化ユニット1では、セパレータ5は、シート状の金属製メッシュの頂部6,7が通風空間11における通風方向に沿って延びて列状に並ぶように通風空間11に配置されている例を示したが、セパレータ5は、頂部6,7が通風空間11における通風方向に沿わない形態で通風空間11に配置されていてもよい。例えば、セパレータ5は、頂部6,7が通風空間11において疎らに存在する形態であってもよい。
また、上記実施形態における触媒浄化ユニット1Aでは、第二セパレータ5aは、シート状の金属製メッシュの頂部6a,7aが第二通風空間11aにおける通風方向に沿って延びて列状に並ぶように第二通風空間11aに配置されている例を示したが、第二セパレータ5aは、頂部6a,7aが第二通風空間11aにおける通風方向に沿わない形態で第二通風空間11aに配置されていてもよい。例えば、第二セパレータ5aは、頂部6a,7aが第二通風空間11aにおいて疎らに存在する形態であってもよい。
【0070】
上記実施形態における空気浄化フェンス構造体30、31は、自動車道路50を浄化対象区域としたが、工場などが密集する工業地帯や大勢の人が集まる施設等を浄化対象区域とし、その浄化対象区域の周囲に空気浄化フェンス構造体30,31を設けても構わない。例えば、近年に注目されている微小粒子物質の除去を目的として、駅やバス停に設置して、これらの周辺の微小粒子物質の濃度を減少させることができる。
【0071】
また、空気浄化ユニット1は、空気浄化フェンス構造体30,31として用いるのに限らず、換気口、換気用ダクト等に取り付けて、換気される空気中の汚染物質の浄化及び微粒子の除去をするように設けられていてもよい。例えば、ビルの空調フィルタの空気取り込み口に取り付けて、空気中の微小粒子物質の濃度を減少させることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、触媒繊維シート材3として活性炭素繊維を採用したが、これに限られるものではなく、NOx等の汚染物質を空気中から除去できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0073】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の空気浄化ユニットは、道路等の浄化対象区域とその周辺とを区画して浄化対象区域に対して出入りする空気に含まれる汚染物質を浄化及び微粒子を除去するための空気浄化フェンス構造体として利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 :空気浄化ユニット
1A :触媒浄化ユニット
2 :帯電性不織布シート材
3 :触媒繊維シート材
5 :セパレータ
5a :第二セパレータ
10,10a:通風路
11 :通風空間
11a :第二通風空間
20,20a:本体ケーシング
22,22a:空気口
27,27a:開口部
30,31 :空気浄化フェンス構造体
50 :自動車道路
A :空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12