(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127784
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031678
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋介
(72)【発明者】
【氏名】望月 英二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴行
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 頌吾
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】
【課題】地中鋼製構造部材の腐食を抑制することを目的とする。
【解決手段】基礎構造は、表層部に腐食代Rを有し、地盤10の掘削部12に設置される鉄骨基礎梁60と、アルカリ性を有し、掘削部12に充填され、内部に鉄骨基礎梁60が埋設される流動化処理土80と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層部に腐食代を有し、地盤の掘削部に設置される地中鋼製構造部材と、
アルカリ性を有し、前記掘削部に充填され、内部に前記地中鋼製構造部材が埋設される流動化処理土と、
を備える基礎構造。
【請求項2】
前記地中鋼製構造部材は、フランジ部及びウェブ部を有する鉄骨基礎梁とされ、
前記フランジ部及び前記ウェブ部は、両側の表層部に前記腐食代をそれぞれ有する、
請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記地中鋼製構造部材の表面には、防錆塗膜層が設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中鉄骨梁が設置された地盤の掘削部を、当該掘削部の掘削土に水及びセメント等を混合した地盤改良土で埋め戻す地中鉄骨梁の施工方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-170175号公報
【特許文献2】特開2002-146807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された施工方法では、アルカリ性の地盤改良土によって地中鉄骨梁の腐食が抑制される。
【0005】
しかしながら、地盤改良土は、時間の経過に伴って中性化され、防錆効果が小さくなるため、地中鉄骨梁等の地中鋼製構造部材が腐食する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、地中鋼製構造部材の腐食を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の基礎構造は、表層部に腐食代を有し、地盤の掘削部に設置される地中鋼製構造部材と、アルカリ性を有し、前記掘削部に充填され、内部に前記地中鋼製構造部材が埋設される流動化処理土と、を備える。
【0008】
請求項1に係る基礎構造によれば、地中鋼製構造部材は、表層部に腐食代を有する。この地中鋼製構造部材は、地盤の掘削部に設置される。また、地盤の掘削部には、アルカリ性を有する流動化処理土が充填される。この流動化処理土の内部に、地中鋼製構造部材が埋設される。
【0009】
このようにアルカリ性を有する流動化処理土に地中鋼製構造部材を埋設することにより、地中鋼製構造部材の腐食が抑制される。
【0010】
また、硬化前の流動化処理土は、地盤改良土と比較して流動性に優れるため、地中鋼製構造部材の表面を隙間なく被覆することができる。さらに、流動化処理土は、地盤改良土と比較して遮水性に優れている。したがって、地中鋼製構造部材の腐食がさらに抑制される。しかも、流動化処理土は、締固めが不要であるため、地盤改良土と比較して、施工性が向上する。
【0011】
また、地中鋼製構造部材は、表層部に腐食代を有する。そのため、時間の経過に伴って流動化処理土が中性化し、防錆効果を薄れたとしても、地中鋼製構造部材に所定の断面を確保することができる。したがって、地中鋼製構造部材の耐久性が向上する。
【0012】
請求項2に記載の基礎構造は、請求項1に記載の基礎構造において、前記地中鋼製構造部材は、フランジ部及びウェブ部を有する鉄骨基礎梁とされ、前記フランジ部及び前記ウェブ部は、両側の表層部に前記腐食代をそれぞれ有する。
【0013】
請求項2に係る基礎構造によれば、地中鋼製構造部材は、フランジ部及びウェブ部を有する鉄骨基礎梁とされる。これらのフランジ部及びウェブ部は、両側の表層部に腐食代をそれぞれ有する。
【0014】
これにより、時間の経過に伴って流動化処理土が中性化し、防錆効果を薄れたとしても、鉄骨基礎梁のフランジ部及びウェブ部に、所定の厚み(断面)を確保することができる。したがって、鉄骨基礎梁の耐久性が向上する。
【0015】
請求項3に記載の基礎構造は、請求項1又は請求項2に記載の基礎構造において、前記地中鋼製構造部材の表面には、防錆塗膜層が設けられる。
【0016】
請求項3に係る基礎構造によれば、地中鋼製構造部材の表面に防錆塗膜層を設けることにより、地中鋼製構造部材の腐食がさらに抑制される。したがって、鉄骨基礎梁の耐久性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、地中鋼製構造部材の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る基礎構造が適用された構造物の基礎を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る基礎構造について説明する。
【0020】
(基礎構造)
図1には、本実施形態に係る基礎構造が適用された構造物(建物)20の基礎が示されている。構造物20の基礎は、一例として、杭基礎とされている。この構造物20は、杭30と、フーチング40と、鉄骨柱50と、鉄骨基礎梁60と、鉄骨補強梁70とを備えている。
【0021】
なお、構造物20の基礎は、杭基礎に限らず、例えば、直接基礎等でも良い。
【0022】
(杭)
杭30は、一例として、構造物20の外周部に配置された外周杭とされており、地盤10に設けられている。また、杭30は、一例として、円筒状の鋼管杭とされている。この杭30の杭頭部30Hは、地盤10を掘削した掘削部12の根切り底12Lから上方へ突出している。
【0023】
より具体的には、掘削部12の根切り底12L上には、砕石14を介して捨てコンクリート16が敷設されている。杭30の杭頭部30Hは、砕石14及び捨てコンクリート16を上下方向に貫通し、捨てコンクリート16の上面から上方へ突出されている。この杭30の杭頭部30Hには、フーチング40が設けられている。
【0024】
なお、掘削部12は、後述する流動化処理土80及び埋戻し土18によって埋め戻されている。また、杭30は、鋼管杭等の鋼製杭に限らず、コンクリート杭等でも良い。また、砕石14及び捨てコンクリート16は、適宜省略可能である。
【0025】
(フーチング)
フーチング40は、鋼管42と、充填コンクリート46とを有している。鋼管42は、一例として、丸形鋼管とされている。また、鋼管42は、軸方向を上下方向として配置されており、平面視にて、リング状の仮設用モルタル44を介して捨てコンクリート16の上に載置されている。この鋼管42は、杭30の杭頭部30Hに被せられており、杭頭部30Hを取り囲んでいる。
【0026】
なお、鋼管42は、丸形鋼管に限らず、例えば、角形鋼管でも良い。また、仮設用モルタル44は、適宜省略可能である。
【0027】
充填コンクリート46は、鋼管42の内部に充填されている。この充填コンクリート46には、鉄骨柱50の柱脚部50L、及び鉄骨基礎梁60(ブラケット62)の端部が埋設されている。なお、本実施形態では、鋼管杭とされた杭30の杭頭部30Hにも充填コンクリート46が充填されている。
【0028】
(鉄骨柱)
鉄骨柱50は、一例として、角形鋼管によって形成されており、杭30の杭頭部30Hの上方に立てられた柱とされている。また、鉄骨柱50の柱脚部50Lは、鋼管42の内部に挿入されるとともに、充填コンクリート46に埋設されている。これにより、鉄骨柱50の柱脚部50Lが、充填コンクリート46を介して杭30の杭頭部30Hと接合されている。
【0029】
鉄骨柱50の柱脚部50Lには、上下方向に互いに対向する一対のダイアフラム52が設けられている。一対のダイアフラム52は、一例として、通しダイアフラムとされている。また、一対のダイアフラム52には、水抜き孔54がそれぞれ形成されている。
【0030】
鉄骨柱50の柱脚部50Lには、複数(本実施形態では2本)の鉄骨基礎梁60の端部、及び複数(本実施形態では2本)の鉄骨補強梁70の端部が接合されている。つまり、鉄骨柱50の柱脚部50Lは、鉄骨基礎梁60及び鉄骨補強梁70との仕口部とされている。
【0031】
なお、鉄骨柱50は、角形鋼管に限らず、丸形鋼管やH形鋼によって形成されても良い。また、鉄骨柱50は、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱における内部鉄骨でも良い。さらに、鉄骨柱50に換えて、鉄筋コンクリート造の柱を用いても良い。
【0032】
(鉄骨基礎梁)
図2に示されるように、2本の鉄骨基礎梁60は、平面視にて、L字状に配置されている。これらの鉄骨基礎梁60は、鉄骨柱50の柱脚部50Lに二方向から接合されている。また、複数の鉄骨基礎梁60は、鉄骨柱50と図示しない鉄骨柱に架設されている。
【0033】
なお、鉄骨基礎梁60は、柱に架設される大梁に限らず、梁に架設される小梁でも良い。また、鉄骨基礎梁60は、地中鋼製構造部材の一例である。
【0034】
各鉄骨基礎梁60は、ブラケット62及び梁本体64を有している。
図3に示されるように、ブラケット62は、H形鋼によって形成されている。このブラケット62は、上下方向に互いに対向する一対のフランジ部62Aと、一対のフランジ部62Aを接続するウェブ部62Bとを有している。
【0035】
図1に示されるように、ブラケット62は、鋼管42に形成された矩形状の切欠き42Aに挿入された状態で、その一端部が鉄骨柱50の柱脚部50Lに溶接接合されている。また、ブラケット62のウェブ部62Bには、切欠き42Aを塞ぐ一対のスチフナ62Cが設けられている。
【0036】
ブラケット62の一端部は、その一対のフランジ部62Aを一対のダイアフラム52に突き当てた状態で溶接されるとともに、そのウェブ部62Bが鉄骨柱50の柱脚部50Lの側面に突き当てられた状態で溶接されている。
【0037】
ブラケット62の他端部は、切欠き42Aを介して鋼管42から外側へ突出している。このブラケット62の他端部には、梁本体64の端部が溶接接合されている。梁本体64は、ブラケット62と同様のH形鋼によって形成されている。この梁本体64は、上下方向に互いに対向する一対のフランジ部64Aと、一対のフランジ部64Aを接続するウェブ部64Bとを有している。
【0038】
梁本体64とブラケット62とは、各々のフランジ部62A,64A同士を突き合せた状態で溶接されるとともに、各々のウェブ部62B,64B同士を突き合せた状態で溶接されている。これにより、鉄骨基礎梁60が形成されている。
【0039】
(腐食代)
ここで、
図4に示されるように、鉄骨基礎梁60のブラケット62の断面は、所定期間の腐食量(腐食厚)を考慮して設計されている。具体的には、ブラケット62の断面には、構造設計上の必要断面(芯部)に、腐食代Rが付加されている。
【0040】
腐食代Rは、腐食の可能性があるブラケット62の表層部に設けられている。具体的には、腐食代Rは、断面視にて、ブラケット62のフランジ部62Aの厚み方向両側(上下両側)の表層部に設けられるとともに、ウェブ部62Bの厚み方向両側(左右両側)の表層部に設けられている。また、腐食代Rは、断面視にて、フランジ部62Aの幅方向両側の表層部に設けられている。
【0041】
腐食代Rは、ブラケット62(鉄骨基礎梁60)の寿命年数、及び後述する流動化処理土80のpH値に基づいて適宜設定される。なお、図示を省略するが、梁本体64(鉄骨基礎梁60)のフランジ部64A及びウェブ部64Bにも、ブラケット62と同様の腐食代が設けられている。
【0042】
(防錆塗膜層)
また、鉄骨基礎梁60の表面には、防錆塗膜層66が設けられている。防錆塗膜層66は、例えば、鉄骨基礎梁60のブラケット62及び梁本体64の表面(腐食代の表面)に、さび止め塗料を塗布することにより形成される。さび止め塗料としては、例えば、一般的な鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K 5674)が用いられる。
【0043】
なお、防錆塗膜層66は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0044】
(鉄骨補強梁)
図2に示されるように、2本の鉄骨補強梁70は、鉄骨柱50の柱脚部50Lと鋼管42とを連結し、鉄骨柱50と鋼管42との間で曲げモーメント等を伝達する。この2本の鉄骨補強梁70は、2本の鉄骨基礎梁60とそれぞれ連続するように、平面視にてL字状に配置されている。また、2本の鉄骨補強梁70は、鉄骨柱50の柱脚部50Lに二方向から接合されている。
【0045】
鉄骨補強梁70は、鉄骨基礎梁60のブラケット62と同様のH形鋼によって形成されている。この鉄骨補強梁70は、上下方向に互いに対向する一対のフランジ部70Aと、一対のフランジ部70Aを接続するウェブ部70Bとを有している。
【0046】
鉄骨補強梁70は、鋼管42に形成され切欠き42Aに挿入された状態で、その一端部が鉄骨柱50の柱脚部50Lに溶接接合されている。また、鉄骨補強梁70のウェブ部70Bには、切欠き42Aを塞ぐ一対のスチフナ70Cが設けられている。
【0047】
(流動化処理土)
地盤10の掘削部12には、流動化処理土80が充填されている。これにより、流動化処理土80の内部に、鋼管42、鉄骨基礎梁60、及び鉄骨柱50の下部等が埋設されている。また、掘削部12における流動化処理土80の上方の空間は、掘削土等の埋戻し土18によって埋め戻されている。
【0048】
流動化処理土80は、原料土(主材)に、水又は泥水と固化剤とを加えて混練することにより、流動化させた安定処理土である。流動化処理土80の原料土(主材)には、高含水比の粘性土やシルト等の細粒分、泥土等の発生土(礫や高有機質土を除く)が用いられる。
【0049】
また、流動化処理土80の固化剤には、普通ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等のセメント系固化剤が用いられる。また、流動化処理土80には、流動性や固化時間等の調整のために、必要に応じて混和剤が添加される。
【0050】
流動化処理土80は、難透水性を有し、その透水係数が、例えば、1.0×10-5~10-7[cm/sec]とされる。なお、比較例として、粘土の透水係数は、例えば、0.3×10-5[cm/sec]である。
【0051】
流動化処理土80は、所定の要求品質を満たすように、常設プラントや現地プラント等のプラントで製造される。流動化処理土の要求品質としては、強度や、フロー値(流動性)、ブリーディング率(材料分離抵抗性)、湿潤密度等が挙げられる。
【0052】
本実施形態では、流動化処理土80に防錆効果を持たせるために、流動化処理土80がアルカリ性に調整される。より具体的には、流動化処理土80のpH値が所定値以上に調整される。
【0053】
なお、pH値が9未満になると、十分な防錆効果を得られなくなるため、流動化処理土80のpH値は、9以上に設定される。また、製造上の観点から、流動化処理土80のpH値は、13以下が望ましい。
【0054】
ここで、流動化処理土80は、時間の経過に伴って中性化し、すなわちpH値が減少し、防錆効果が小さくなる。そのため、流動化処理土80のpH値(初期pH値)は、防錆対象物(地中鋼製構造部材)の寿命年数、及び腐食代Rの厚みに基づいて設定される。
【0055】
具体的には、例えば、鉄骨基礎梁60の寿命年数、及び腐食速度を以下とする。なお、鉄骨基礎梁60の腐食速度は、鋼杭の腐食代設計で用いられる鋼杭の腐食速度(地表3m以浅の平均腐食速度)を準用する。
<寿命年数>
60年
<腐食速度>
通常土壌(中性雰囲気)影響下:0.013[mm/年]
アルカリ性雰囲気影響下 :0.013×0.37[mm/年]
【0056】
また、流動化処理土80のpH値の減少速度(中性化速度)を以下とする。なお、流動化処理土80のpH値の減少速度は、土中の地盤改良体(ソイルセメント)のpH値の減少速度を準用する。
<流動化処理土のpH値の減少速度(中性化速度)>
0.1/年
【0057】
流動化処理土80の当初のpH値(初期pH値)を12とすると、当初から30年間は、鉄骨基礎梁60がアルカリ性雰囲気影響下におかれる。この30年間の鉄骨基礎梁60の腐食量t1は、以下となる。
腐食量t1=0.013[mm/年]×0.37×30[年]=0.144[mm]
【0058】
次に、30年後、流動化処理土80のpH値は12から9に減少し、鉄骨基礎梁60が通常土壌(中性雰囲気)影響下におかれる。そのため、残り30年間の鉄骨基礎梁60の腐食量t2は、以下となる。
腐食量t2=0.013[mm/年]×30[年]=0.390[mm]
【0059】
以上のことから、60年間の鉄骨基礎梁60の腐食量(t1+t2)は、0.534mmとなる。したがって、鉄骨基礎梁60の腐食代Rは、0.534mm以上に設定される。これに安全率等を考慮し、鉄骨基礎梁60の腐食代Rは、例えば、1mmに設定される。
【0060】
なお、上記試算では、鉄骨基礎梁60の防錆塗膜層66が考慮されていないが、防錆塗膜層66を考慮することも可能である。また、上記試算では、予め設定された流動化処理土80のpH値に基づいて、鉄骨基礎梁60の腐食代Rを算出した。これとは逆に、予め設定された鉄骨基礎梁60の腐食代Rに基づいて、流動化処理土80のpH値(初期pH値)を算出しても良い。
【0061】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0062】
図1に示されるように、本実施形態によれば、鉄骨基礎梁60は、地盤10の掘削部12に設置されている。また、地盤10の掘削部12には、アルカリ性を有する流動化処理土80が充填されている。この流動化処理土80の内部に、鉄骨基礎梁60が埋設されている。
【0063】
このようにアルカリ性を有する流動化処理土80に鉄骨基礎梁60を埋設することにより、鉄骨基礎梁60の腐食が抑制される。
【0064】
また、硬化前の流動化処理土80は、地盤改良土と比較して流動性に優れるため、狭い空間や、形状が複雑な空間に、隙間なく充填することができる。これにより、流動化処理土80によって、鉄骨基礎梁60の表面を隙間なく被覆することができる。したがって、鉄骨基礎梁60の腐食をより確実に抑制することができる。
【0065】
また、流動化処理土80は、地盤改良土と比較して遮水性に優れている。したがって、鉄骨基礎梁60の腐食を効率的に抑制することができる。
【0066】
さらに、硬化前の流動化処理土80は、前述したように、流動性に優れるため、ポンプ等によって圧送及び打設することができる。さらに、流動化処理土80は、自硬性を有するため、充填後の締固めが不要となる。したがって、施工性が向上する。
【0067】
また、
図4に示されるように、鉄骨基礎梁60は、腐食する可能性がある表層部に腐食代Rを有している。具体的には、鉄骨基礎梁60のブラケット62は、一対のフランジ部62A及びウェブ部62Bを有している。これらのフランジ部62A及びウェブ部62Bにおける両側の表層部に、腐食代Rがそれぞれ設けられている。
【0068】
これと同様に、鉄骨基礎梁60の梁本体64は、一対のフランジ部64A及びウェブ部64Bを有している。これらのフランジ部64A及びウェブ部64Bにおける両側の表層部に、図示しない腐食代がそれぞれ設けられている。
【0069】
これにより、時間の経過に伴って流動化処理土80が中性化し、防錆効果を薄れたとしても、鉄骨基礎梁60の一対のフランジ部62A及びウェブ部62Bに、所定の厚み(断面)を確保することができる。したがって、鉄骨基礎梁60の耐久性が向上する。
【0070】
また、鉄骨基礎梁60の寿命年数、及び腐食代Rに基づいて、流動化処理土80のpH値(初期pH値)を調整することにより、鉄骨基礎梁60の腐食を効率的に抑制することができる。
【0071】
さらに、鉄骨基礎梁60の寿命年数、及び流動化処理土80のpH値(初期pH値)に基づいて、腐食代Rを調整することにより、腐食代Rを小さくしつつ、すなわち鉄骨基礎梁60の断面を小さくしつつ、鉄骨基礎梁60の腐食を抑制することができる。
【0072】
しかも、鉄骨基礎梁60の表面には、防錆塗膜層66が設けられている。これにより、鉄骨基礎梁60の腐食がさらに抑制される。したがって、鉄骨基礎梁60の耐久性がさらに向上する。
【0073】
また、本実施形態では、鉄骨基礎梁60のブラケット62と梁本体64とが溶接によって接合されている。ここで、ブラケット62と梁本体64とをボルト接合する場合、時間の経過に伴ってボルト及びナットが腐食し、接合強度が低下する可能性がある。
【0074】
これに対して本実施形態では、前述したように、ブラケット62と梁本体64とが溶接によって接合されている。これにより、ブラケット62と梁本体64との接合強度を長期的に確保することができる。
【0075】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0076】
上記実施形態では、鉄骨基礎梁60の表層部の全面に腐食代Rが設けられている。しかし、腐食代Rは、例えば、鉄骨基礎梁60の表層部のうち、腐食する可能性がある部位に設ければ良い。したがって、例えば、鉄骨基礎梁60の表層部の一部がコンクリート等によって被覆されている場合は、当該部位には、腐食代Rを設けなくても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、地中鋼製構造部材が、鉄骨基礎梁60とされている。しかし、地中鋼製構造部材は、鉄骨基礎梁60に限らず、例えば、鉄骨補強梁70や鋼管42、鉄骨柱50、鉄骨ブレース等でも良い。なお、鋼管42の場合、内部に充填コンクリート46が充填されるため、鋼管42の外周面側の表層部に腐食代が設けられる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
10 地盤
12 掘削部
60 鉄骨基礎梁(地中鋼製構造部材)
62 ブラケット(地中鋼製構造部材)
62A フランジ部
62B ウェブ部
64 梁本体(地中鋼製構造部材)
64A フランジ部
64B ウェブ部
66 防錆塗膜層
80 流動化処理土
R 腐食代