(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127788
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】掘削オーガー
(51)【国際特許分類】
E21B 3/02 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
E21B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031683
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津國 正一
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB21
2D129BA04
2D129BA05
2D129BB04
2D129DA12
2D129DC16
2D129EB06
2D129EB19
(57)【要約】
【課題】撹拌性能を向上させる掘削オーガーを提供する。
【解決手段】掘削オーガー10は、回転可能なロッド12の先端部12A側に取付けられた掘削翼14と、ロッド12に回転自在に取付けられ、掘削翼14の張出し幅よりも小さい供回り防止翼16と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロッドの先端側に取付けられた掘削翼と、
前記ロッドに回転自在に取付けられ、前記掘削翼の張出し幅よりも小さい供回り防止翼と、
を有する掘削オーガー。
【請求項2】
前記供回り防止翼には、供回り防止翼本体の上方及び下方の少なくとも一方に張り出した縦板が取付けられている請求項1に記載の掘削オーガー。
【請求項3】
前記掘削翼の上下方向の長さよりも前記縦板の上下方向の長さが長い請求項2に記載の掘削オーガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削オーガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の掘削及び撹拌を行う撹拌翼装置が提案されている。下記特許文献1に記載の撹拌翼装置では、ロッドの先端の掘削翼と、ロッドの中間部に設けられると共に掘削翼の幅よりも幅が広い供回り防止翼とを備えた掘削オーガーが設けられている。掘削オーガーは、供回り防止翼の幅がロッドの先端の掘削翼の幅よりも広いので、掘削翼が回転しても、供回り防止翼は回転せず、土壌中に推進されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の撹拌翼装置では、供回り防止翼の幅がロッドの先端の掘削翼の幅よりも広いので、掘削中に供回り防止翼が孔壁に当たり、掘削効率が低下するので、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、掘削効率を向上させる掘削オーガーを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の掘削オーガーは、回転可能なロッドの先端側に取り付けられた掘削翼と、前記ロッドに回転自在に取付けられ、前記掘削翼の張出し幅よりも小さい供回り防止翼と、を有する。
【0007】
第1態様に記載の掘削オーガーによれば、掘削オーガーのロッドに回転自在に取付けられた供回り防止翼の張出し幅が、掘削翼の張出し幅よりも小さい。
このため、削孔するとき、供回り防止翼が掘削孔の孔壁に当たらないので、供回り防止翼が削孔作業の障害とならない。このため、掘削効率が向上する。
また、供回り防止翼はロッドに回転自在に取付けられているので、掘削翼だけが旋回して、供回り防止翼と掘削翼との間にある土塊にせん断力を生じさせることができ、撹拌性能が向上する。
【0008】
第2態様に記載の掘削オーガーは、第1態様に記載の掘削オーガーにおいて、前記供回り防止翼には、供回り防止翼本体の上方及び下方の少なくとも一方に張り出した縦板が取付けられている。
【0009】
第2態様に記載の掘削オーガーによれば、供回り防止翼には、供回り防止翼本体の上方及び下方の少なくとも一方に張り出した縦板が取付けられているため、縦板で供回り防止翼が掘削孔内に確実に固定されて、供回り防止翼がロッドと供回りをしない。このため、掘削オーガーの攪拌性能がより向上する。
【0010】
第3態様に記載の掘削オーガーは、第2態様に記載の掘削オーガーにおいて、前記掘削翼の上下方向の長さよりも前記縦板の上下方向の長さが長い。
【0011】
第3態様に記載の掘削オーガーによれば、掘削翼の上下方向の長さよりも縦板の上下方向の長さが長いので、掘削翼との間の抵抗が大きくなり、供回り防止翼が掘削孔内により確実に固定される。このため、掘削オーガーの攪拌性能がより向上する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の掘削オーガーによれば、掘削効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の掘削オーガーを備えた掘削撹拌装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の掘削オーガーを示す斜視図である。
【
図3】(A)は、第1実施形態の掘削オーガーの供回り防止翼を示す平面図であり、(B)は、第1実施形態の掘削オーガーの供回り防止翼を示す側断面図である。
【
図4】(A)は、供回り防止翼本体を示す平面図であり、(B)は、供回り防止翼本体を示す側面図であり、(C)は、縦板を示す側面図である。
【
図5】第1実施形態の掘削オーガーの掘削翼を示す側面図である。
【
図6】第2実施形態の掘削オーガーを示す斜視図である。
【
図7】第1比較例の掘削オーガーを示す斜視図である。
【
図8】第2比較例の掘削オーガーを示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態、第2実施形態及び第1比較例の掘削オーガーの掘削トルクと深度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態の掘削オーガーについて説明する。
【0016】
[掘削撹拌装置の全体構成]
図1には、第1実施形態の掘削オーガー10を備えた掘削撹拌装置の一例が示されている。
図1に示すように、掘削撹拌装置100は、バックホー102のアーム104の先端に取り付けられている。一例として、掘削撹拌装置100は、機械式撹拌工法で地盤を改良する装置である。なお、
図1では、構成を分かりやすくするため、バックホー102及びアーム104に対して掘削撹拌装置100を大きく示しており、実際の寸法とは異なる。
【0017】
掘削撹拌装置100は、軸方向に延びたロッド110と、ロッド110の軸方向のアーム104側の端部に設けられた水平方向回転部112と、ロッド110の軸方向のアーム104と反対側の端部(先端部)に設けられた鉛直方向回転部114と、を備えている。さらに、掘削撹拌装置100は、ロッド110の先端部に鉛直方向回転部114を介して取付けられた掘削オーガー10を備えている。また、掘削撹拌装置100は、掘削オーガー10のロッド12を軸回りに回転させる回転部42を備えている。
【0018】
ロッド110は、水平方向回転部112を介してアーム104に取付けられている。水平方向回転部112は、アーム104の先端部でロッド110を水平方向に回転させる。
【0019】
鉛直方向回転部114は、ロッド110の先端部にロッド110の軸方向と交差する方向(本実施形態では、直交する方向)に配置された回転軸114Aを備えており、回転軸114Aに掘削オーガー10が取付けられている。鉛直方向回転部114は、回転軸114Aの回転により、ロッド110に先端部で掘削オーガー10を鉛直方向(すなわち、
図1中の矢印Aに示す上下方向)に回転させる。一例として、鉛直方向回転部114は、ロッド110の軸方向に沿って配置された掘削オーガー10を左右方向にそれぞれ90度回転させる。これにより、ロッド110の先端部で掘削オーガー10は、最大180度の範囲の所望の角度で傾斜した状態で回転する。
【0020】
一例として、掘削オーガー10は、油圧オーガーである。回転部42は、油圧によりロッド12の内部に挿通される軸部44(
図2参照)に対してロッド12を軸回りに回転させる。ロッド110の回転により、掘削オーガー10が軸回りに回転する。
【0021】
第1実施形態では、バックホー102のアーム104の先端に取付けられた掘削撹拌装置100の掘削オーガー10を地盤130に貫入して掘削すると共に、掘削オーガー10の先端からセメントミルク等の安定材(図示省略)を吐出させて撹拌及び混合する。これにより、地盤130の所望範囲を改良する。
【0022】
[掘削オーガーの構成]
図2には、第1実施形態の掘削オーガー10が斜視図にて示されている。
図2に示すように、掘削オーガー10は、回転可能なロッド12と、ロッド12の軸方向の先端部12A側に取付けられた掘削翼14と、ロッド12の中間部に回転自在に取付けられた供回り防止翼16と、を備えている。さらに、掘削オーガー10は、ロッド12の軸方向の供回り防止翼16よりも鉛直方向回転部114(
図1参照)に取付けられた撹拌翼18を備えている。第1実施形態では、掘削オーガー10の構成を分かりやすくするため、
図1及び
図2に示す掘削オーガー10のロッド12の軸方向をロッド12の上下方向又はロッド12の上下と表現する場合がある。
【0023】
(ロッド)
図2に示すように、ロッド12は、水平方向回転部112によりロッド110が回転することで(
図1参照)、軸回りに回転する構成とされている。ロッド12の先端部12Aには、先端側に側面視にて略三角形状に突出した尖形部22が設けられている。なお、第1実施形態では、ロッド12の軸方向と直交する方向の断面は、略六角形状であるが、ロッド12の形状は変更可能であり、円形等でもよい。
【0024】
(掘削翼)
図2、
図3(B)及び
図5に示すように、掘削翼14は、ロッド12に装着される筒部14Aと、筒部14Aから半径方向外側に延びた2つの羽根部14B、14Cと、を備えている。筒部14Aは、略円筒状であり、ロッド12に溶接等により接合されている。2つの羽根部14B、14Cは、筒部14Aの中心に対して約180度の方向に延びている。
図2に示すように、2つの羽根部14B、14Cは、略矩形状の板であり、羽根部14B、14Cの面が水平方向(
図2に示すロッド12の軸方向と直交する方向)に対して異なる角度で傾斜している。すなわち、羽根部14B、14Cの面は、互いに交差する方向に配置されている。なお、
図3(B)では、構成を分かりやすくするため、ロッド12に対する掘削翼14と供回り防止翼16の取付位置を幅方向の位置が合うように変更している。
【0025】
羽根部14B、14Cにおけるロッド12の先端部12A側には、複数の掘削刃(例えば、ビット)24が装着されている。
【0026】
図3(B)及び
図5に示すように、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径をD1とする。すなわち、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径D1は、羽根部14Bの先端から羽根部14Cの先端までの長さである。例えば、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径D1は、1m程度である。また、掘削翼14の上下方向の長さをL1とする。掘削翼14の上下方向の長さL1は、複数の掘削刃24を除いた部分の寸法である。掘削翼14の上下方向の長さL1については、後述する。
【0027】
(供回り防止翼)
図2及び
図3(A)、(B)に示すように、供回り防止翼16は、ロッド12の軸方向の上下、すなわちロッド12の軸方向の離れた位置に取付けられた一対の供回り防止翼本体30と、一対の供回り防止翼本体30に連結される縦板34と、を備えている。
【0028】
すなわち、供回り防止翼16には、供回り防止翼本体30の上方及び下方の少なくとも一方に張り出した縦板34が取付けられている。第1実施形態では、縦板34は、ロッド12の上下方向の下側の供回り防止翼本体30の上方に張り出しており、ロッド12の上下方向の上側の供回り防止翼本体30の下方に張り出している。一例として、縦板34は2枚である。
【0029】
本実施形態では、一対の供回り防止翼本体30は、ほぼ同じ形状である(
図4(A)、(B)参照)。供回り防止翼本体30は、ロッド12に回転自在に取付けられる筒状部30Aと、筒状部30Aから半径方向外側に延びた2つの羽根部30B、30Cと、を備えている。
【0030】
図3(A)、(B)に示すように、筒状部30Aは、略円筒状の部材であり、筒状部30Aの内部にベアリング36が設けられている。ベアリング36により、供回り防止翼本体30とロッド12との間に殆ど摩擦が生じない状態となり、供回り防止翼本体30を備えた供回り防止翼16がロッド12に対して回転自在となる。
【0031】
図2、及び
図3(A)、(B)に示すように、2つの羽根部30B、30Cは、筒状部30Aの中心に対して約180度の方向に延びている。2つの羽根部30B、30Cは、略矩形状の板であり、羽根部30B、30Cの面がロッド12の軸方向に沿って配置されている。
【0032】
図2、
図3(A)及び
図4(C)に示すように、縦板34は、側面視にて凸状形状の板である。より具体的には、縦板34は、ロッド12の軸方向に長い矩形状の長板部34Aと、長板部34Aの中間部から横方向に張り出した矩形状の張出部34Bと、を備えている(
図4(C)参照)。縦板34は、上記のように2枚であり、一方の縦板34は、長板部34Aの長手方向の両端部(
図2に示す縦板34の上下)で、一対の供回り防止翼本体30の羽根部30Bに連結されている。他方の縦板34は、長板部34Aの長手方向の両端部(
図2に示す縦板34の上下)で、一対の供回り防止翼本体30の羽根部30Cに連結されている。縦板34は、ボルトとナットなどの複数の取付具38によって羽根部30B又は羽根部30Cに連結されている。
【0033】
一例として、2枚の縦板34を一対の供回り防止翼本体30に連結した状態で、2枚の羽根部30B、30Cの半径方向外側の端部と縦板34の半径方向外側の縁部とが揃っている。また、縦板34の長板部34Aにおけるロッド12の軸方向(上下方向)の両端部と、ロッド12に取り付けられた一対の供回り防止翼本体30の上端部と下端部とが揃っている。
【0034】
図3(A)、(B)に示すように、供回り防止翼16の最大部分の外径をD2とする。第1実施形態では、供回り防止翼16の最大部分の外径D2は、供回り防止翼本体30の羽根部30Bの先端から羽根部30Cの先端までの長さ、及び一方の縦板34の縁部から他方の縦板34の縁部までの長さである。例えば、供回り防止翼16の最大部分の外径D2は、0.9m程度である。
【0035】
第1実施形態では、供回り防止翼16の最大部分の外径D2は、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径D1よりも小さい。このため、ロッド12からの供回り防止翼16の張出し幅W2(
図3(B)及び
図5参照)は、掘削翼14の張出し幅W2(
図3参照)よりも小さい。
【0036】
図3(B)及び
図4(C)に示すように、第1実施形態では、縦板34の長板部34Aにおけるロッド12の軸方向の長さ(上下方向の長さ)をL2とする。例えば、縦板34の長板部34Aにおけるロッド12の軸方向の長さL2は、0.5m程度である。一例として、縦板34の上下方向の長さL2は、供回り防止翼16のロッド12の軸方向の長さに等しい。
【0037】
縦板54の上下方向の長さL2は、掘削翼14の上下方向の長さL1よりも長い。
【0038】
また、
図2及び
図3(B)に示すように、ロッド12の軸方向における供回り防止翼16の両側には、ロッド12に対して回転自在に供回り防止翼16を支持する支持部40が設けられている。支持部40は、筒状の部材であり、取付具(図示省略)によりロッド12に固定されている。
【0039】
(撹拌翼)
図2に示すように、撹拌翼18は、ロッド12に装着される筒部18Aと、筒部18Aから半径方向外側に延びた2つの羽根部18B、18Cと、を備えている。筒部18Aは、略円筒状であり、ロッド12に溶接等により接合されている。2つの羽根部18B、18Cは、筒部18Aの中心に対して約180度の方向に延びている。2つの羽根部18B、18Cは、略矩形状の板であり、羽根部18B、18Cの面が水平方向(
図2に示すロッド12の軸方向と直交する方向)に対して異なる角度で傾斜している。すなわち、羽根部18B、18Cの面は、互いに交差する方向に配置されている。
【0040】
一例として、撹拌翼18の羽根部18B、18Cの外径は、供回り防止翼16の最大部分の外径D2よりも大きいが、これに限定されず、小さくてもよい。
【0041】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
掘削オーガー10は、回転可能なロッド12の先端部12A側に取り付けられた掘削翼14と、ロッド12に回転自在に取付けられた供回り防止翼16と、を備えている。掘削オーガー10では、地盤130を削孔するとき、ロッド12の回転により掘削翼14と、撹拌翼18が回転する。供回り防止翼16はロッド12に回転自在に取付けられているので、ロッド12が回転しても、供回り防止翼16は土壌に固定される構造になっている。
【0043】
掘削オーガー10では、ロッド12に回転自在に取付けられた供回り防止翼16の張出し幅W2が、ロッド12に取付けられた掘削翼14の張出し幅W1よりも小さい。
【0044】
このため、
図1に示すように、掘削オーガー10では、ロッド12の回転により地盤130を削孔するとき、供回り防止翼16が掘削孔132の孔壁132Aに当たらないので、供回り防止翼16が削孔作業の障害とならない。このため、掘削効率が向上する。
また、供回り防止翼16はロッド12に回転自在に取付けられているので、掘削翼14だけが旋回して、供回り防止翼16と掘削翼14との間にある土塊にせん断力を生じさせることができ、撹拌性能が向上する。
【0045】
また、掘削オーガー10が鉛直方向回転部114により鉛直面で回転する掘削撹拌装置100では、掘削オーガー10を鉛直面で回転させるときに(すなわち、掘削オーガー10を上に振り上げるときに)、供回り防止翼16が孔壁132Aに引っ掛かりにくい。このため、掘削オーガー10の撹拌性能が向上する。
【0046】
また、掘削オーガー10では、供回り防止翼16は、ロッド12の軸方向の上下に配置された一対の供回り防止翼本体30と、一対の供回り防止翼本体30に連結された縦板34と、を備えている。すなわち、縦板34は、ロッド12の上下方向の下側の供回り防止翼本体30の上方に張り出しており、ロッド12の上下方向の上側の供回り防止翼本体30の下方に張り出している。
【0047】
このため、掘削オーガー10では、縦板34で供回り防止翼16が掘削孔132内に確実に固定されて、供回り防止翼16がロッド12と供回りをしない。このため、掘削オーガー10の攪拌性能がより向上する。
【0048】
また、掘削オーガー10は、掘削翼14の上下方向の長さL1よりも縦板34の上下方向の長さL2が長い。このため、掘削オーガー10では、縦板34と掘削翼14との間の抵抗が大きくなり、供回り防止翼16が掘削孔132内により確実に固定される。このため、掘削オーガー10の攪拌性能がより向上する。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の掘削オーガーについて説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0050】
図6は、第2実施形態の掘削オーガー50を示す斜視図である。
図6に示すように、掘削オーガー50は、ロッド12に回転自在に取付けられた供回り防止翼52を備えている。供回り防止翼52は、ロッド12の軸方向の上下に取付けられた一対の供回り防止翼本体30と、一対の供回り防止翼本体30に連結される縦板54と、を備えている。一例として、縦板54は2枚である。第2実施形態の掘削オーガー50では、縦板54の構成が第1実施形態の掘削オーガー10の縦板34の構成と異なる。
【0051】
一方の縦板54は、一対の供回り防止翼本体30の羽根部30Bに連結されている。他方の縦板54は、一対の供回り防止翼本体30の羽根部30Cに連結されている。
【0052】
第2実施形態では、縦板54におけるロッド12の軸方向の長さ(上下方向の長さ)L2は、第1実施形態の縦板34の長板部34Aにおけるロッド12の軸方向の長さ(上下方向の長さ)L2よりも短い。例えば、縦板54におけるロッド12の軸方向の長さL2は、0.3m程度である。縦板54の上下方向の長さL2は、供回り防止翼52のロッド12の軸方向の長さに等しい。縦板54の上下方向の長さL2は、掘削翼14の上下方向の長さL1(例えば、0.25m程度)よりも長い。第2実施形態の掘削オーガー50の他の構成は、第1実施形態の掘削オーガー10と同様である。
【0053】
第2実施形態の掘削オーガー50では、第1実施形態の掘削オーガー10と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
<供回り防止翼の検証実験>
第1及び第2実施形態の掘削オーガー10、50の供回り防止翼16、52の効果を検証するための実験を行った。この実験では、掘削オーガー10、50の縮尺模型を用いている。また、この実験では、第1及び第2実施形態の掘削オーガー10、50と比較するため、
図7に示す第1比較例の掘削オーガー200と、
図8に示す第2比較例の掘削オーガー210を用意した。掘削オーガー200、210も縮尺模型を用いている。なお、第1比較例の掘削オーガー200及び第2比較例の掘削オーガー210では、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、第1比較例の掘削オーガー200は、ロッド12と、ロッド12の軸方向の先端部12A側に取付けられた掘削翼14と、ロッド12の軸方向の掘削翼14と反対側に取り付けられた撹拌翼18と、を備えている。第1比較例の掘削オーガー200には、第1及び第2実施形態のような供回り防止翼は設けられていない。
【0056】
図8に示すように、第2比較例の掘削オーガー210は、ロッド12と、ロッド12の軸方向の先端部12A側に取付けられた掘削翼14と、ロッド12の中間部に回転自在に取付けられた供回り防止翼212と、を備えている。さらに、掘削オーガー210は、ロッド12の軸方向の先端部12Aと反対側に取り付けられた撹拌翼18と、を備えている。
【0057】
供回り防止翼212は、筒状部212Aと、筒状部212Aから半径方向外側に延びた2つの羽根部212B、212Cと、を備えている。筒状部212Aの内径は、ロッド12の外径より大きく、筒状部212Aとロッド12との間に隙間があいている。これにより、供回り防止翼212がロッド12に回転自在に取り付けられている。2つの羽根部212B、212Cは、筒状部212Aの中心に対して約180度の方向に延びている。2つの羽根部212B、212Cは、略矩形状の板であり、212B、212Cの面がロッド12の軸方向に沿って配置されている。
【0058】
供回り防止翼212の16の羽根部212B、212Cの外径D3は、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径D1よりも大きい。このため、ロッド12からの供回り防止翼16の張出し幅は、ロッド12からの掘削翼14の張出し幅よりも大きい。一例として、掘削翼14の羽根部14B、14Cの外径D1は、120mmであり、供回り防止翼212の16の羽根部212B、212Cの外径D3は、130mmである。
【0059】
実験の地盤は粘性土である。実験では、第1及び第2実施形態の掘削オーガー10、50を用いて、地盤を所定の時間、撹拌及び混合した。また、同様に第1及び第2比較例の掘削オーガー200、210を用いて、地盤を所定の時間、撹拌及び混合した。
【0060】
図示を省略するが、第1比較例の掘削オーガー200は、地盤からの引き抜き時に、ロッド12の周囲が土塊状になっていることが確認された。また、第2比較例の掘削オーガー210も、地盤からの引き抜き時に、ロッド12の周囲が土塊状になっていることが確認された。
【0061】
これに対して、第1実施形態の掘削オーガー10は、地盤からの引き抜き完了時に、撹拌翼18に付着していた土は少なく、土塊は見られなかった。このことから、第1実施形態の掘削オーガー10では、粘性土地盤でも撹拌性能が低下しないことが確認された。
【0062】
また、第2実施形態の掘削オーガー50も、地盤からの引き抜き完了時に、撹拌翼18に付着していた土は少なく、土塊は見られなかった。
【0063】
図9は、第1実施形態の掘削オーガー10、第2実施形態の掘削オーガー50、及び第1比較例の掘削オーガー200の掘削時に計測したトルクと地盤の深度との関係を示すグラフである。
図9に示すように、第1比較例の掘削オーガー200に比べて、第1及び第2実施形態の掘削オーガー10、50は、掘削トルクが高い。また、縦板34の上下方向の長さL2が長い第1実施形態の掘削オーガー10は、縦板54の上下方向の長さL2が短い第2実施形態の掘削オーガー50よりも、掘削トルクが高い。第1実施形態の掘削オーガー10では、縦板34の上下方向の長さL2が長いことで、供回り防止翼16と掘削翼14との間の抵抗が大きくなり、撹拌性能が高くなると考えられる。
【0064】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0065】
第1及び第2実施形態では、本発明を逸脱しない範囲で掘削オーガー10、50の構成部材は変更可能である。例えば、掘削オーガー10、50では、ロッド12に撹拌翼18が1つ設けられていたが、本発明はこれに限定されず、複数の撹拌翼18を備える構成でもよい。
【0066】
また、第1及び第2実施形態では、ロッド12からの供回り防止翼16、52の張出し幅W2が掘削翼14の張出し幅W1よりも小さい構成であれば、張出し幅W2と張出し幅W1の寸法を変更してもよい。
【0067】
また、第1及び第2実施形態では、縦板34、54が一対の供回り防止翼本体30の羽根部30B,30Cの上下方向全体の領域に接触していたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、縦板34、54が一対の供回り防止翼本体30の羽根部30B,30Cの上下方向の一部に接触する構成でもよい。
【0068】
また、第1及び第2実施形態では、供回り防止翼16、52は、ロッド12の上下に取付けられた一対の供回り防止翼本体30に連結される縦板34、54を備えているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、供回り防止翼には、供回り防止翼本体の上方及び下方の少なくとも一方に張り出した縦板が取付けられている構成でもよい。例えば、ロッド12に1つの供回り防止翼本体30を設け、供回り防止翼本体30の上方に張り出した縦板、供回り防止翼本体30の下方に張り出した縦板、又は供回り防止翼本体30の上下の両側に張り出した縦板を設ける構成でもよい。
【0069】
第1及び第2実施形態では、供回り防止翼本体30の筒状部30Aの内部にベアリングを備えていたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、筒状部とロッド12との間に隙間を設け、供回り防止翼本体30の筒状部をロッド12に対して回転自在に取り付ける構成でよい。
【0070】
第1及び第2実施形態では、鉛直方向回転部114により掘削オーガー10、50が鉛直方向に回転する構成であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、掘削オーガー10、50が鉛直方向に回転しない構成でも、本発明を適用することができる。
【0071】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 掘削オーガー
12 ロッド
12A 先端部
14 掘削翼
16 供回り防止翼
30 供回り防止翼本体
34 縦板
50 掘削オーガー
52 供回り防止翼
54 縦板
W1 掘削翼の張出し幅
W2 供回り防止翼の張出し幅
L1 掘削翼の上下方向の長さ
L2 縦板の上下方向の長さ