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2023-127796固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127796
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20230907BHJP
   B02C 17/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C10L5/44
B02C17/02 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031702
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】508123102
【氏名又は名称】株式会社トロムソ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】上杉 正章
(72)【発明者】
【氏名】井場 和男
(72)【発明者】
【氏名】山中 康充
【テーマコード(参考)】
4D063
4H015
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063GA04
4D063GA10
4D063GB07
4D063GC05
4D063GC09
4D063GC23
4D063GD04
4H015AA12
4H015AB01
4H015AB05
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA08
4H015BA13
4H015BB06
4H015BB10
4H015CA08
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】バイオマス原料から着火性に優れた固形燃料を成形可能な固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】固形燃料Fの製造装置4は、籾殻を粉砕して粉砕材料にする各突条部13a及び各切刃14cと、両端が開口する直線状をなすとともに一端から他端に亘って延びる内部通路15eを有する円筒部15と、内部通路15eに円筒部5の入口開口15c側から少なくとも先端側領域が挿入配置され、回転動作により内部通路15eに粉砕材料を円筒部15の入口開口15cから出口開口15dに亘って順次押し込みながら通過させるスクリューコンベア部16と、を備える。スクリューコンベア部16の先端16bは、内部通路15eにおいて円筒部15の入口開口15cよりも出口開口15dに近接する位置に設定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料を粉砕して粉砕材料にする粉砕部と、前記粉砕材料を押出成形により固形燃料にする成形部と、を有する固形燃料の製造装置であって、
前記成形部は、両端が開口する直線状をなすとともに一端から他端に亘って延びる内部通路を有する円筒部と、前記内部通路に前記円筒部の一端開口側から少なくとも先端側領域が挿入配置され、回転動作により前記内部通路に前記粉砕材料を前記円筒部の一端開口から他端開口に亘って順次押し込みながら通過させるスクリューコンベア部と、を備え、
該スクリューコンベア部の先端は、前記円筒部の他端開口から飛び出す位置、前記円筒部の他端開口と一致する位置、及び、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置のいずれかに設定されていることを特徴とする固形燃料の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固形燃料の製造装置において、
前記スクリューコンベア部の先端は、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置に設定されており、
前記内部通路の断面積は、前記円筒部の他端側の部位が一端側の部位よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする固形燃料の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固形燃料の製造装置において、
前記スクリューコンベア部は、前記円筒部の円筒軸上に延びる軸部を備え、
該軸部は、外周面において螺旋状に延びるスクリュー羽根を有する羽根有り部が一端側に設けられる一方、外周面において前記スクリュー羽根を有しない羽根無し部が他端側に設けられ、
前記羽根有り部は、前記内部通路における前記円筒部の一端開口側に配設されており、
前記羽根無し部は、前記内部通路における前記円筒部の他端開口側に配設されていることを特徴とする固形燃料の製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の固形燃料の製造装置において、
前記粉砕部は、回転軸心の一端側にいくにつれて縮径する円錐状をなすとともに、外周面に螺旋状に延びる突条部が形成されたロータと、該ロータを収容する収容空間を有するとともに、内周面に前記突条部と反対向きの螺旋状に延びる切刃が形成されたハウジングと、を備え、
前記ハウジングには、前記バイオマス原料の供給口と排出口とが形成され、前記供給口から前記ハウジングの内部に供給された前記バイオマス原料を前記ロータの回転動作により前記各突条部及び各切刃で粉砕して得られる前記粉砕材料を前記排出口から排出して前記成形部に供給するように構成され、
前記円筒部は、前記ハウジングに着脱自在に取り付けられ、当該ハウジングに取り付けた状態で一端開口が前記排出口に接続されることを特徴とする固形燃料の製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の固形燃料の製造装置が車台に搭載されていることを特徴とする被牽引車。
【請求項6】
請求項5に記載の被牽引車において、
前記粉砕部は、牽引車の原動機の出力部に連結されたPTO軸と連結可能であることを特徴とする被牽引車。
【請求項7】
バイオマス原料を粉砕して粉砕材料にする粉砕工程と、前記粉砕材料を押出成形により固形燃料にする成形工程と、を有する固形燃料の製造方法であって、
前記成形工程は、両端が開口する直線状の円筒部の一端から他端に亘って延びる内部通路に前記円筒部の一端開口側から少なくとも先端側領域が挿入配置されるとともにその先端が前記円筒部の他端開口から飛び出す位置、前記円筒部の他端開口と一致する位置、及び、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置のいずれかに設定されたスクリューコンベア部の回転動作により前記粉砕材料を前記円筒部の一端開口から他端開口に亘って順次押し込みながら通過させて前記固形燃料を得ること特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の固形燃料の製造方法において、
前記バイオマス原料は、短粒種の籾殻であり、
前記スクリューコンベア部の先端は、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置に設定されていることを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の固形燃料の製造方法において、
前記バイオマス原料は、長粒種の籾殻であり、
前記スクリューコンベア部の先端は、前記円筒部の他端開口から飛び出す位置に設定されていることを特徴とする固形燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻等のバイオマス原料から螺旋状の固形燃料を成形可能な固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対応するために、薪等の代替燃料として、籾殻等のバイオマス原料から製造可能な固形燃料が注目されている。例えば、特許文献1に開示されている固形燃料の製造装置は、バイオマス原料を粉砕する粉砕部と、該粉砕部により粉砕されたバイオマス原料から棒状の固形燃料を押出成形する成形部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-133820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如き固形燃料は、例えば、キャンプ等の屋外での使用時において、着火性を高めて着火時における風の影響を受け難くすることで使用感を高めたいという要求がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バイオマス原料から着火性に優れた固形燃料を成形可能な固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、バイオマス原料を粉砕して粉砕材料を得た後、この粉砕材料の固め方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、バイオマス原料を粉砕して粉砕材料にする粉砕部と、前記粉砕材料を押出成形により固形燃料にする成形部と、を有する固形燃料の製造装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、前記成形部は、両端が開口する直線状をなすとともに一端から他端に亘って延びる内部通路を有する円筒部と、前記内部通路に前記円筒部の一端開口側から少なくとも先端側領域が挿入配置され、回転動作により前記内部通路に前記粉砕材料を前記円筒部の一端開口から他端開口に亘って順次押し込みながら通過させるスクリューコンベア部と、を備え、該スクリューコンベア部の先端は、前記円筒部の他端開口から飛び出す位置、前記円筒部の他端開口と一致する位置、及び、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置のいずれかに設定されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記スクリューコンベア部の先端は、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置に設定されており、前記内部通路の断面積は、前記円筒部の他端側の部位が一端側の部位よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、前記スクリューコンベア部は、前記円筒部の円筒軸上に延びる軸部を備え、該軸部は、外周面において螺旋状に延びるスクリュー羽根を有する羽根有り部が一端側に設けられる一方、外周面において前記スクリュー羽根を有しない羽根無し部が他端側に設けられ、前記羽根有り部は、前記内部通路における前記円筒部の一端開口側に配設されており、前記羽根無し部は、前記内部通路における前記円筒部の他端開口側に配設されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記粉砕部は、回転軸心の一端側にいくにつれて縮径する円錐状をなすとともに、外周面に螺旋状に延びる突条部が形成されたロータと、該ロータを収容する収容空間を有するとともに、内周面に前記突条部と反対向きの螺旋状に延びる切刃が形成されたハウジングと、を備え、前記ハウジングには、前記バイオマス原料の供給口と排出口とが形成され、前記供給口から前記ハウジングの内部に供給された前記バイオマス原料を前記ロータの回転動作により前記各突条部及び各切刃で粉砕して得られる前記粉砕材料を前記排出口から排出して前記成形部に供給するように構成され、前記円筒部は、前記ハウジングに着脱自在に取り付けられ、当該ハウジングに取り付けた状態で一端開口が前記排出口に接続されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、被牽引車をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0013】
すなわち、第5の発明では、第1から第4のいずれか1つに記載の固形燃料の製造装置が車台に搭載されていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第5の発明において、前記粉砕部は、牽引車の原動機の出力部に連結されたPTO軸と連結可能であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、バイオマス原料を粉砕して粉砕材料にする粉砕工程と、前記粉砕材料を押出成形により固形燃料にする成形工程とを有する固形燃料の製造方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0016】
すなわち、第7の発明では、前記成形工程は、両端が開口する直線状の円筒部の一端から他端に亘って延びる内部通路に前記円筒部の一端開口側から少なくとも先端側領域が挿入配置されるとともにその先端が前記円筒部の他端開口から飛び出す位置、前記円筒部の他端開口と一致する位置、及び、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置のいずれかに設定されたスクリューコンベア部の回転動作により前記粉砕材料を前記円筒部の一端開口から他端開口に亘って順次押し込みながら通過させて前記固形燃料を得ること特徴とする。
【0017】
第8の発明では、第7の発明において、前記バイオマス原料は、短粒種の籾殻であり、前記スクリューコンベア部の先端は、前記内部通路において前記円筒部の一端開口よりも他端開口に近接する位置に設定されていることを特徴とする。
【0018】
第9の発明では、第7の発明において、前記バイオマス原料は、長粒種の籾殻であり、前記スクリューコンベア部の先端は、前記円筒部の他端開口から飛び出す位置に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1及び第7の発明では、円筒部の内部通路における円筒軸方向においてスクリューコンベア部が配置された範囲を除く領域が比較的短く設定されるか、或いは、設定されないので、スクリューコンベア部を通過する際に順次螺旋状に押し出されながら成形される中間成形体がスクリューコンベア部を通過後に円筒部内においてその円筒軸方向に圧縮され難くなる。したがって、円筒部を通過した押出成形後の固形燃料が内部に空気を巻き込み易い螺旋体になるとともに、内部に細孔が多く形成された空気を取り込みやすい多孔体になるので、特許文献1の如き棒状の固形燃料よりも着火性に優れた固形燃料にすることができる。
【0020】
第2の発明では、内部通路における円筒部の他端側の部位の通路断面積が一端側の部位よりも大きくされているので、内部通路においてスクリューコンベア部の回転動作によって内部通路を通過する中間成形体に加わる抵抗が、円筒部の一端開口から他端開口に向かうにつれて次第に低減されるようになる。したがって、内部通路における円筒部の他端開口側の部位に中間成形体が留まり難くなり、当該部位において移動する中間成形体が円筒軸方向に必要以上に圧縮されなくなるので、所望の螺旋状である固形燃料を得ることができる。
【0021】
第3の発明では、内部通路において羽根有り部が対応する円筒部の一端側領域は通路断面積が比較的小さいので、中間成形体が円筒部の一端側の部位を円筒部の他端開口に向けて移動する際に中間成形体に対して所望の抵抗が生じる。これにより、円筒部の一端側領域において中間成形体が留まりやすくなるので、当該部位において中間成形体が円筒軸方向及び円筒径方向に適切に圧縮されながら進むようになる。すると、例えば、バイオマス原料に含まれるリグニンの接着効果を発現し得る適切な圧力が中間成形体に対して加わるようになるので、当該接着効果を利用して、羽根有り部のスクリュー羽根形状に対応した螺旋状をなす固形燃料を成形することができる。また、内部通路において羽根無し部が対応する円筒部の他端側領域は通路断面積が比較的大きいので、中間成形体が円筒部の他端側の部位を円筒部の他端開口に向けて移動する際に生じる抵抗が一端側の部位よりも小さくなる。これにより、内部通路における羽根無し部が対応する円筒部の他端側の部位において中間成形体が留まり難くなるので、当該部位において円筒軸方向に中間成形体が過度に圧縮されて成形後の固形燃料が特許文献1の如き棒状になってしまうのを防ぐことができる。
【0022】
第4の発明では、例えば、円筒部に摩耗や破損が発生した際に別の円筒部に容易に交換することができる。また、例えば、供給されるバイオマス原料の種類等に応じて、円筒軸方向の寸法等が異なる複数種の円筒部から一つを選択してハウジングに取り付けることが可能になり、バイオマス原料の種類等に応じた最適な円筒部を用いて所望の螺旋状をなす固形燃料を得ることができる。
【0023】
第5の発明では、固形燃料の製造装置を搭載した状態の被牽引車を牽引することで、バイオマス原料を貯蔵、或いは、生産している場所まで、上記製造装置を容易に移動させることができる。これにより、輸送のためにバイオマス原料を梱包する必要がなくなるので、バイオマス原料の輸送コストを低減することができる。
【0024】
第6の発明では、牽引車における原動機の動力を利用してバイオマス原料から粉砕材料を得ることが可能となるので、例えば、送電線が敷設されていない発展途上国の未電化地域において、送電線からの供給電力に頼ることなく、バイオマス原料から固形燃料を製造することができる。
【0025】
第8の発明では、スクリューコンベア部によって短粒種の籾殻の粉砕材料から得られる螺旋状の中間成形体が、円筒部の内部通路においてスクリューコンベア部の無い領域によって当該スクリューコンベア部によって直接的に押されずに所定の圧力及び温度条件下で円筒部の他端開口にまで移動するようになる。短粒種の籾殻は、粉砕工程においてその形状等に起因して長粒種の籾殻よりも細かく粉砕されるので、成形後に粉々になり易いなど成形後の形状を維持するのが困難であるが、スクリューコンベア部を通過後の中間成形体を円筒部内に留めるようにすることで、短粒種の籾殻に含まれるリグニン等が接着効果を発現し得る圧力及び温度に近い安定した条件下に中間成形体がおかれるようになる。これにより、短粒種の籾殻から得られる固形燃料が成形後においてその形状を維持し易くなり、短粒種の籾殻から螺旋状の固形燃料を安定して製造することが可能となる。
【0026】
第9の発明では、スクリューコンベア部によって長粒種の籾殻の粉砕材料から得られる螺旋状の成形体がスクリューコンベア部を通過直後に円筒部の他端開口から押し出されて固形燃料となる。長粒種の籾殻は、粉砕工程においてその形状等に起因して短粒種の籾殻よりも粗く粉砕されるので、成形後にちぎれ易いなど成形後の形状を維持するのが困難であるが、スクリューコンベア部を通過直後に中間成形体が円筒部の他端開口から押し出されるようにして中間成形体と円筒部の内周面とが擦れるのを抑えることにより、上述のちぎれ等を防ぐことができる。これにより、長粒種の籾殻から得られる固形燃料が成形後においてその形状を維持し易くなり、長粒種の籾殻から螺旋状の固形燃料を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る被牽引車を車両側方から視た概略図である。
図2】燃料製造部の概略断面図である。
図3】螺旋状の固形燃料を示す図である。
図4】変形例1に係る図2相当図である。
図5】変形例2に係る図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る被牽引車1を示す。該被牽引車1は、牽引車10により牽引されるようになっていて、車輪2と、水平方向に延びる板状の車台3とを備え、該車台3には固形燃料F(図3参照)を製造する製造装置4が搭載されている。なお、本発明では、図1図2図4及び図5において、牽引車10側を車両前側とする一方、牽引車10から離れる側を車両後側とする。
【0030】
製造装置4は、動力伝達部5と燃料製造部6とが車両前側から順に配設されており、該燃料製造部6が車台3の後端よりも車両後側に張り出すようになっている。
【0031】
動力伝達部5は、略箱状をなす前側ケース7a、中央ケース7b、及び、後側ケース7cが車両前側から順に設けられ、各ケースは車台3の上面に固定されている。車台3の前側上面には、車両前後方向に延びる台座部3aが設けられ、該台座部3a及び後側ケース7cには、3点リンク式の接続金具8が取り付けられている。
【0032】
該接続金具8は、牽引車10のリンク部材10aと連結可能になっていて、リンク部材10aに連結した状態において、牽引車10が走行を開始すると、リンク部材10aを介して牽引車10と連結された被牽引車1が牽引車10により牽引されるようになっている。
【0033】
また、前側ケース7a、中央ケース7b、及び、後側ケース7cの内部には、動力伝達軸部9が収容されている。
【0034】
動力伝達軸部9は、その延び方向が車両前後方向と略一致するように配設され、かつ、一端に設けられた入力部9aと他端に設けられた出力部9bとの間を連絡するように、第1カップリング9c、減速機構9d及び第2カップリング9eが車両前側から順に介設されている。
【0035】
入力部9aは、外周面に複数のスプライン突起が設けられており、PTOジョイント11の一端に設けられたスプライン溝とスプライン嵌合可能とされている。該PTOジョイント11の他端は、牽引車10の原動機の出力部に連結されたPTO軸10bとスプライン嵌合しており、該原動機を駆動することにより、動力伝達軸部9の入力部9aがPTO軸10b及びPTOジョイント11を介して回転駆動されるようになっている。
【0036】
第1カップリング9cは、入力部9aと減速機構9dとの間を連結しており、入力部9aに入力された回転トルクを減速機構9dに伝達している。
【0037】
減速機構9dは、該減速機構9dに入力された回転数を減速して、第2カップリング9e側に出力している。該減速機構9dは、例えば、遊星歯車機構で構成されており、該遊星歯車機構を用いて減速出力することにより、回転数及び回転トルクの調整が行われるようになっている。なお、本実施形態では、減速機構9dの出力回転数が約100~200rpmとなるように減速機構9dの減速比が設定されている。
【0038】
第2カップリング9eは、出力部9bと減速機構9dとの間を連結しており、減速機構9dから出力された回転トルクを出力部9bに伝達している。そして、フランジ状をなす出力部9bが燃料製造部6に連結されることで、該燃料製造部6に回転トルクが入力されるようになっている。
【0039】
次に、燃料製造部6について、図2を用いて説明する。
【0040】
燃料製造部6は、投入ホッパ12、ロータ13、ハウジング14、円筒部15、及び、スクリューコンベア部16により構成されており、図3に示すような螺旋状の固形燃料Fを短粒種のイネの籾殻(バイオマス原料)から製造するようになっている。
【0041】
投入ホッパ12は、上下に開口する漏斗型形状をなしており、上端開口から投入された籾殻が投入ホッパ12の内周面に沿って下方に落下するようになっている。
【0042】
ロータ13は、回転軸心の車両後側にいくにつれて縮径する円錐状をなし、車両前側端部が動力伝達軸部9の出力部9bと連結されている。また、該ロータ13の外周面には、図2に示すように、所定の捻じれ角で螺旋状に延びる突条部13aが回転軸心回りに複数形成されている。
【0043】
ハウジング14は、ロータ13を収容する収容空間Sを有し、かつ、車両前側に配設された第1筐体部14aと車両後側に配設された第2筐体部14bとにより構成され、両筐体部が複数の第1固定部材17により固定されて一体となっている。また、該ハウジング14の内周面には、所定の捻じれ角で突条部13aと反対向きの螺旋状に延びる切刃14cがロータ13の回転軸心回りに複数形成されている。
【0044】
第1筐体部14aは、該第1筐体部14aと後側ケース7cとの間に筒部材18を介設した状態で第2固定部材19により後側ケース7cに取り付けられている。
【0045】
第1筐体部14aの車両前側上部には、図2に示すように、円形状の供給口14dが上下方向に貫通成形され、該供給口14dを介して投入ホッパ12からハウジング14内部に籾殻が供給されるようになっている。
【0046】
第2筐体部14bの車両後側中央には、円形状の排出口14eが車両前後方向に貫通形成され、図2の矢印X1に示すように、供給口14dからハウジング14内部に供給された籾殻をロータ13の回転動作により各突条部13a及び各切刃14cで粉砕することで粉砕材料を得た後、該粉砕材料を排出口14eから排出するようになっている。なお、本実施形態では、籾殻が粉砕される際に生じる摩擦熱により、例えば、籾殻に含まれるリグニン等が接着効果を発現し得る温度まで昇温するように各突条部13aと各切刃14cとの間隙が設定されている。これにより、別途ヒーターやガスバーナーを用いて粉砕材料等を昇温させる必要が無くなるので、ヒーター等を設置することにより生じるコスト上昇を防ぐことが可能となる。
【0047】
円筒部15は、前側筒部15a及び後側筒部15bの2部品で構成されている。該前側筒部15aの車両前側半分は、フランジ形状をなす一方、車両後側半分は、車両後側に延びる円筒形状をなしている。
【0048】
一方、該後側筒部15bは、その内径が前側筒部15aの車両後側部分よりも大きくなっており、当該前側筒部15aの車両後側部分に外嵌合させた状態で両筒部が溶接により一体とされている。
【0049】
そして、円筒部15には、前側筒部15aにおける車両前端に入口開口15cが設けられる一方、後側筒部15bにおける車両後端に出口開口15dが設けられており、入口開口15cから出口開口15dに亘って直線状に延びる内部通路15eが形成されている。
【0050】
内部通路15eの断面積は、後側筒部15bに対応する部位が前側筒部15aに対応する部位よりも大きくなるように構成され、該後側筒部15bに対応する部分には、車両前後方向に延びる複数の凹状溝15fが筒中心線周りに等間隔に形成されている。
【0051】
円筒部15は、前側筒部15aのフランジ形状部分を第2筐体部14bの車両後端に当接させた状態で第3固定部材20により第2筐体部14bに対して着脱自在に取り付けられ、当該第2筐体部14bに取り付けられた状態で円筒部15の入口開口15cと第2筐体部14bの排出口14eとが接続されるようになっている。
【0052】
スクリューコンベア部16は、円筒部15の円筒軸上に延びる軸部16aが備えられ、該軸部16aにおいて車両後側に位置する先端側領域が円筒部15の入口開口15cから内部通路15eに挿入配置されている。本実施形態では、軸部16aにおいて車両後側に位置する先端16bが内部通路15eにおいて入口開口15cよりも出口開口15dに近接する位置に設定されている。
【0053】
また、軸部16aにおける前側筒部15aの内部通路15eに対応する部分には、外周面において螺旋状に延びるスクリュー羽根16cが設けられた羽根有り部16dが設けられる一方、軸部16aにおける後側筒部15bの内部通路15eに対応する部分にはスクリュー羽根16cを備えない羽根無し部16eが設けられている。なお、本実施形態では、スクリュー羽根16cの表面には、耐摩耗性向上やすべり性向上(低摩擦化)を目的として、硬貨クロムメッキ処理が施されている。
【0054】
スクリューコンベア部16は、その回転軸心がロータ13の回転軸心と同軸上にあり、該ロータ13に回転一体に取り付けられている。そして、スクリューコンベア部16は、ロータ13と一体回転することにより、ハウジング14において微粉砕することにより得た粉砕材料を排出口14eを介して内部通路15eの入口開口15cから出口開口15dに亘って順次押し込みながら該内部通路15eを通過させるようになっている。
【0055】
次に、製造装置4による固形燃料Fの製造方法について説明する。
【0056】
<投入工程>
投入工程では、準備した短粒種のイネの籾殻を投入ホッパ12に投入する。すると、籾殻は投入ホッパ12から供給口14dを介してハウジング14内部に供給される。
【0057】
<粉砕工程>
粉砕工程では、ハウジング14内部に供給された籾殻がロータ13の回転動作により、各突条部13a及び各切刃14cで微粉砕され、粉砕材料が得られる。該粉砕材料は、排出口14eから排出され、スクリューコンベア部16により円筒部15の内部通路15eに供給される。
【0058】
<成形工程>
成形工程では、粉砕材料をスクリューコンベア部16による押出成形により螺旋状の固形燃料Fを成形する。つまり、ハウジング14の排出口14eから内部通路15e内に供給された粉砕材料は、スクリューコンベア部16の回転動作により、入口開口15cから出口開口15dに向けて順次押し込まれる。そして、粉砕材料が前側筒部15aに対応する内部通路15eを通過する際、羽根有り部16dのスクリュー羽根16cによる押出成形により、螺旋状の中間成形体が得られるようになる。その後、該中間成形体は、スクリューコンベア部16の回転動作により順次押し込まれる粉砕材料によって、後側筒部15bに対応する内部通路15e内を車両後側に向けて順次押されて、出口開口15dから排出される。これにより、螺旋状の固形燃料Fが籾殻から製造できる。
【0059】
以上より、本実施形態によると、円筒部15の内部通路15eにおける円筒軸方向においてスクリューコンベア部16が配置された範囲を除く領域が比較的短く設定されるので、スクリューコンベア部16を通過する際に順次螺旋状に押し出されながら成形される中間成形体がスクリューコンベア部16を通過後に円筒部15内においてその円筒軸方向に圧縮され難くなる。したがって、図3に示すように、円筒部15を通過した押出成形後の固形燃料Fが内部に空気を巻き込み易い螺旋体になるとともに、内部に細孔が多く形成された空気を取り込みやすい多孔体になるので、特許文献1の如き棒状の固形燃料よりも着火性に優れた螺旋状の固形燃料Fにすることができる。
【0060】
また、内部通路15eにおける円筒部15の後側筒部15bの通路断面積が前側筒部15aよりも大きくされているので、内部通路15eにおいてスクリューコンベア部16の回転動作によって内部通路15eを通過する中間成形体に加わる抵抗が、円筒部15の入口開口15cから出口開口15dに向かうにつれて次第に低減されるようになる。したがって、内部通路15eにおける円筒部15の出口開口15d側の部位に中間成形体が留まり難くなり、当該部位において移動する中間成形体が円筒軸方向に必要以上に圧縮されなくなるので、所望の螺旋状である固形燃料Fを得ることができる。
【0061】
また、内部通路15eにおいて羽根有り部16dが対応する円筒部15の前側筒部15a、すなわち円筒部15の一端側領域は通路断面積が比較的小さいので、中間成形体が円筒部15の前側筒部15aを円筒部15の出口開口15dに向けて移動する際に中間成形体に対して所望の抵抗が生じる。これにより、円筒部15の前側筒部15aにおいて中間成形体が留まりやすくなるので、当該部位において中間成形体が円筒軸方向及び円筒径方向に適切に圧縮されながら進むようになる。すると、例えば、籾殻に含まれるリグニンの接着効果を発現し得る適切な圧力が中間成形体に対して加わるようになるので、当該接着効果を利用して、羽根有り部16dのスクリュー羽根形状に対応した螺旋状をなす固形燃料Fを成形することができる。また、内部通路15eにおいて羽根無し部16eが対応する円筒部15の後側筒部15b、すなわち円筒部15の他端側領域は通路断面積が比較的大きいので、中間成形体が円筒部15の後側筒部15b側の部位を円筒部15の出口開口15dに向けて移動する際に生じる抵抗が前側筒部15aよりも小さくなる。これにより、内部通路15eにおける羽根無し部16eが対応する円筒部15の後側筒部15bにおいて中間成形体が留まり難くなるので、当該部位において円筒軸方向に中間成形体が過度に圧縮されて成形後の固形燃料Fが特許文献1の如き棒状になってしまうのを防ぐことができる。
【0062】
また、円筒部15は、ハウジング14に着脱自在に取り付けられるので、例えば、円筒部15に摩耗や破損が発生した際に別の円筒部15に容易に交換することができる。また、例えば、供給される籾殻の種類等に応じて、円筒軸方向の寸法等が異なる複数種の円筒部15から一つを選択してハウジング14に取り付けることが可能になり、籾殻の種類等に応じた最適な円筒部15を用いて所望の螺旋状をなす固形燃料Fを得ることができる。
【0063】
また、固形燃料Fの製造装置4を搭載した状態の被牽引車1を牽引することで、籾殻を貯蔵、或いは、生産している場所まで、上記製造装置4を容易に移動させることができる。これにより、輸送のために籾殻を梱包する必要がなくなるので、籾殻の輸送コストを低減することができる。
【0064】
また、牽引車10における原動機の動力を利用して籾殻から粉砕材料を得ることが可能となるので、例えば、送電線が敷設されていない発展途上国の未電化地域において、送電線からの供給電力に頼ることなく、籾殻から固形燃料Fを製造することができる。
【0065】
また、スクリューコンベア部16によって短粒種の籾殻の粉砕材料から得られる螺旋状の中間成形体が、円筒部15の内部通路15eにおいてスクリューコンベア部16の無い領域によって当該スクリューコンベア部16によって直接的に押されずに所定の圧力及び温度条件下で円筒部15の出口開口15dにまで移動するようになる。短粒種の籾殻は、粉砕工程においてその形状等に起因して長粒種の籾殻よりも細かく粉砕されるので、成形後に粉々になり易いなど成形後の形状を維持するのが困難であるが、スクリューコンベア部16を通過後の中間成形体を円筒部15内に留めるようにすることで、短粒種の籾殻に含まれるリグニン等が接着効果を発現し得る圧力及び温度に近い安定した条件下に中間成形体がおかれるようになる。これにより、短粒種の籾殻から得られる固形燃料Fが成形後においてその形状を維持し易くなり、短粒種の籾殻から螺旋状の固形燃料Fを安定して製造することが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、軸部16aにおける車両後側の先端16bが内部通路15eにおいて入口開口15cよりも出口開口15dに近接する位置に設定されていたが、長粒種のイネの籾殻を用いる場合には、図4に示す変形例1のように、例えば、後側筒部15bをなくすことにより、軸部16aにおける車両後側の先端16bが円筒部15の出口開口15dから飛び出す位置に設定するようにしてもよい。このようにすることで、スクリューコンベア部16によって長粒種の籾殻の粉砕材料から得られる螺旋状の成形体がスクリューコンベア部16を通過直後に円筒部15の出口開口15dから押し出されて固形燃料Fとなる。長粒種の籾殻は、粉砕工程においてその形状等に起因して短粒種の籾殻よりも粗く粉砕されるので、成形後にちぎれ易いなど成形後の形状を維持するのが困難であるが、スクリューコンベア部16を通過直後に中間成形体が円筒部15の出口開口15dから押し出されるようにして中間成形体と円筒部15の内周面とが擦れるのを抑えることにより、上述のちぎれ等を防ぐことができる。これにより、長粒種の籾殻から得られる固形燃料Fが成形後においてその形状を維持し易くなり、長粒種の籾殻から螺旋状の固形燃料Fを安定して製造することが可能となる。
【0067】
さらに、例えば、中粒種のイネの籾殻を用いる場合には、図5に示す変形例2のように軸部16aにおける車両後側の先端16bを円筒部15の出口開口15dと一致する位置に設定してもよい。このようにすることで、長粒種と短粒種との間の特性を有する中粒種の籾殻に合わせて、先端16bの位置と円筒部15の出口開口15dの位置とが適切に設定されるようになり、中粒種の籾殻から螺旋状の固形燃料Fを安定して製造することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、製造装置4は、被牽引車1の車台3に搭載されている例について説明したが、製造装置4を地面に設置するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、製造装置4は、牽引車10の原動機により回転駆動される例を説明したが、電気モーターや油圧モーターにより回転駆動されるようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、製造装置4は、動力伝達部5を備えていたが、該動力伝達部5を備えなくてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、バイオマス原料としてイネの籾殻を用いた例について説明したが、ピーナッツ殻、藁、トウモロコシ等のバイオマス原料を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、籾殻等のバイオマス原料から螺旋状の固形燃料を成形可能な固形燃料の製造装置、その製造装置が車台に搭載された被牽引車及び固形燃料の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 被牽引車
3 車台
4 製造装置
10 牽引車
10b PTO軸
13 ロータ(粉砕部)
13a 突条部
14 ハウジング(粉砕部)
14c 切刃
14d 供給口
14e 排出口
15 円筒部(成形部)
15c 入口開口(一端開口)
15d 出口開口(他端開口)
15e 内部通路
16 スクリューコンベア部(成形部)
16a 軸部
16b 先端
16c スクリュー羽根
16d 羽根有り部
16e 羽根無し部
F 固形燃料
図1
図2
図3
図4
図5