IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 宮崎大学の特許一覧

特開2023-127801収穫量推定装置、方法及びプログラム
<>
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図1
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図2
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図3
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図4
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図5
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図6
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図7
  • 特開-収穫量推定装置、方法及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127801
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】収穫量推定装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230907BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20230907BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06T7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031709
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川末 紀功仁
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA09
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA02
5L096FA59
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各果実を草木から収穫する前に3次元画像情報を用いて収穫量を推定可能な収穫量推定システム、装置及び方法を提供する。
【解決手段】果実がなる草木を撮影する撮影装置と、撮影装置から画像情報DSを取得する収穫量推定装置とを具備する収穫量推定システムであって、画像情報は、3次元画像情報DSbを含む。穫量推定装置は、画像情報で表される各物体から果実を特定する果実特定部と、3次元画像情報を用いて、果実の体積を推定する体積推定部と、果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部と、複数個の果実の重量を合計した数値を算出する収穫量算出部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実がなる草木を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置から画像情報を取得する収穫量推定装置と
を具備する収穫量推定システムであって、
前記画像情報は、3次元画像情報を含み、
前記収穫量推定装置は、
前記画像情報で表される各物体から前記果実を特定する果実特定部と、
前記3次元画像情報を用いて、前記果実の体積を推定する体積推定部と、
前記果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部と、
複数個の前記果実の重量を合計した数値を算出する収穫量算出部と、を備える
収穫量推定システム。
【請求項2】
予め定められた位置に支持され、前記撮影装置が搬送される軌道部と、
前記草木が撮影可能な撮影位置へ、前記軌道部により前記撮影装置を搬送する搬送部と、を具備し、
前記撮影位置は、前記草木より上側である
請求項1に記載の収穫量推定システム。
【請求項3】
前記体積推定部は、
前記3次元画像情報が示す前記果実の上側部分の形状から、当該上側部分の体積である部分体積を推定し、
前記果実の種類に応じた果実別係数と前記部分体積とを用いて、当該果実全体の体積を推定する
請求項1または請求項2に記載の収穫量推定システム。
【請求項4】
果実がなる草木を撮影する撮影装置から画像情報を取得する収穫量推定装置であって、
前記画像情報は、3次元画像情報を含み、
前記画像情報が表す各物体から前記果実を特定する果実特定部と、
前記3次元画像情報を用いて、前記果実の体積を推定する体積推定部と、
前記果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部と、
複数個の前記果実の重量を合計した数値を算出する収穫量算出部と、を備える
収穫量推定装置。
【請求項5】
果実がなる草木を撮影する撮影装置と、前記撮影装置から画像情報を取得する収穫量推定装置とを用いた前記果実の収穫量の推定方法であって、
前記画像情報で表される各物体から前記果実を前記収穫量推定装置が特定し、
前記画像情報に含まれる3次元画像情報を用いて、前記果実の体積を前記収穫量推定装置が推定し、
前記果実の体積から当該果実の重量を前記収穫量推定装置が推定し、
複数個の前記果実の重量を合計した数値を前記収穫量推定装置が算出する
収穫量の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫量推定装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収穫前の果実に関する各種の情報を把握(推定)するための技術が提案されている。例えば、特許文献1の技術では、収穫前の果実の画像情報から当該果実の熟度を事前に推定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-175396公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、画像情報は2次元画像情報であり、3次元画像情報が含まれない。以上の従来技術では、収穫前の各果実の重量が正確には推定できない。したがって、果実の収穫量を収穫前に高精度に推定できないという事情があった。以上の事情を考慮して、本発明は、果実の収穫量を収穫前に高精度に推定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の収穫量推定システムは、果実がなる草木を撮影する撮影装置と、撮影装置から画像情報を取得する収穫量推定装置とを具備する収穫量推定システムであって、画像情報は、3次元画像情報を含み、収穫量推定装置は、画像情報で表される各物体から果実を特定する果実特定部と、3次元画像情報を用いて、果実の体積を推定する体積推定部と、果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部と、複数個の果実の重量を合計した数値を算出する収穫量算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各果実を草木から収穫する前に、3次元画像情報を用いて収穫量を推定可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】収穫量推定システムのハードウェア構成図である。
図2】収穫量推定システムの機能ブロック図である。
図3】果実の撮影方法の具体例を説明するための図である。
図4】果実の撮影位置の具体例を説明するための図である。
図5】果実画像の具体例を説明するための図である。
図6】部分体積を推定するための構成を説明するための図である。
図7】果実別係数の具体例を説明するための図である。
図8】収穫量推定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、収穫量推定システム1のハードウェア構成図である。図1に示す通り、収穫量推定システム1は、コンピュータ10、搬送装置20、カメラ30およびワイヤロープ40を含む。本実施形態の収穫量推定システム1によれば、各果実Fの収穫量を、各樹木Tから収穫する前に推定できる。図1には、果樹園における各樹木Tのうちの1本が抜粋して示される。
【0009】
図1の具体例は、果実Fのうちマンゴーの収穫量を推定する場合を示す。ただし、本実施形態は、マンゴー以外の果実Fの収穫量も推定可能に構成される。なお、本発明の「草木」は、「草」および「木」の双方を含む概念である。したがって、本発明の「果実」は「木本性植物の果実」および「草本性植物の果実」の双方を含む概念である。また、本発明の「果実」は、マンゴー等の「フルーツ」に加え、トマト等の「野菜」を含む概念である。
【0010】
ただし、本発明は、「木本性植物の果実」の収穫量および「草本性植物の果実」の収穫量の双方を推定する構成に加え、「木本性植物の果実」の収穫量のみを推定する構成、および、「草本性植物の果実」の収穫量のみを推定する構成を含む。同様に、本発明は、「フルーツ」の収穫量および「野菜」の収穫量の双方を推定する構成に加え、「フルーツ」の収穫量のみを推定する構成、および、「野菜」の収穫量のみを推定する構成を含む。
【0011】
コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)およびHDD(Hard Disk Drive)を含んで構成される。本実施形態のコンピュータ10は、持運び可能なコンピュータ(例えば、タブレット端末)が採用される。ただし、ディスクトップパソコンやノート型パソコンをコンピュータ10として採用してもよい。
【0012】
コンピュータ10のHDDは、収穫量推定プログラムPGを含む各種のデータを記憶する。コンピュータ10のCPUは、収穫量推定プログラムPGを実行することで、後述の各種の機能(収穫量算出部105など)を実現する。コンピュータ10のRAMは、例えばCPUがプログラムを実行する際に参照する各種の情報を一時的に記憶する。また、コンピュータ10のROMは、各種の情報を不揮発的に記憶する。なお、収穫量推定プログラムPGがHDD以外に記憶される構成としてもよい。
【0013】
搬送装置20は、図1に示す通り、下端側にカメラ30を取付可能である。また、搬送装置20は、ワイヤロープ40に吊下げ可能に構成される。搬送装置20にはモータで回転するローラが設けられ、ワイヤロープ40に搬送装置20が吊下げられると、ローラがワイヤロープ40に当接する。以上の構成では、ローラを回転させることで、搬送装置20がワイヤロープ40に沿って移動する。
【0014】
詳細には後述するが、搬送装置20により、カメラ30が撮影位置(図3のMの直下)まで搬送される。なお、搬送装置20は、カメラ30を撮影位置まで搬送可能であれば足り、以上の例に限定されない。また、搬送装置20とカメラ30とが一体的に構成される(搬送装置20がカメラ30の機能を具備する)構成としてもよい。
【0015】
カメラ30は、樹木T(果実Fを含む)を撮影し、画像情報DSを生成する。具体的には、カメラ30は、カラー(RGB)カメラ30aとデプス(深度)カメラ30bとを含んで構成される。カラーカメラ30aは、2次元のカラー画像を示す2次元画像情報DSaを生成する。一方、デプスカメラ30bは、被写体までの距離を示す深度情報を含む3次元画像(距離画像)情報DSbを生成する。例えば、3次元画像情報DSbとしては、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)技術により撮影された点群画像を示す情報が想定される。
【0016】
また、カメラ30には、傾きセンサが設けられる。以上の傾きセンサは、鉛直方向に対する撮影方向の傾き(後述のピッチ角θp、ロール角θr。図4(b)および図4(c)参照)の大きさを検出する。カメラ30は、撮影時に傾きセンサが検知した傾きの大きさを示す「傾き情報」を生成する。以上の傾き情報は、果実Fを示す果物画像(後述の図5(b)のGf)の傾きを調整(補正)する際に用いられる。
【0017】
本実施形態では、カラーカメラ30aおよびデプスカメラ30bの双方で、樹木Tが略同時に(同じ位置から)撮影される。樹木Tが撮影されると、当該樹木Tを示す2次元画像情報DSaと3次元画像情報DSbとを対応させて画像情報DSが生成される。また、画像情報DSには、撮影時に生成された傾き情報が含まれる。カメラ30は、画像情報DSを生成すると、当該画像情報DSをコンピュータ10へ送信する。具体的には、カメラ30は、複数の撮影位置から各樹木Tを撮影し、撮影する毎に画像情報DSを生成する。以上の構成では、相違する撮影位置で生成された複数個の画像情報DSがコンピュータ10へ送信される。
【0018】
詳細には後述するが、本実施形態では画像情報DSを用いて果実Fの収穫量が推定される。具体的には、画像情報DSを用いて、各果実Fの体積Vが推定される。また、コンピュータ10は、果実Fの密度Eを予め記憶し、推定した体積Vに密度Eを乗算して、当該果実Fの重量Wを算出する。各果実Fの各重量Wの合計が収穫量Yとして算出される。
【0019】
図1に示す通り、カメラ30は無線通信により画像情報DSをコンピュータ10へ送信する。ただし、画像情報DSが有線通信により送信される構成としてもよい。また、カメラ30に取外し可能なメモリを設け、当該メモリに画像情報DSが記憶される構成としてもよい。以上の構成では、当該メモリをコンピュータ10に取付けることで、コンピュータ10は画像情報DSを取込可能である。
【0020】
ワイヤロープ40は、図1に示す通り、地表から予め定められた高さの位置に張り渡される。具体的には、図1に示す通り、果樹園にはポールP1およびポールP2が設けられる。ワイヤロープ40は、一端がポールP1に取付けられ、他端がポールP2に取付けられ、地表に対して略平行に張り渡される。
【0021】
ただし、ワイヤロープ40の位置は、カメラ30により各樹木T(果実F)が撮影されれば足り、例えば樹木Tの位置に応じて、適宜に変更してもよい。また、本実施形態では、本発明の「軌道部」としてワイヤロープ40を採用したが、「軌道部」は以上の例に限定されない。例えば、「軌道部」としてレールを採用してもよい。以上のレールは、ワイヤロープ40と同様に、各樹木Tを撮影可能な位置へ撮影装置100を搬送可能な位置に支持される。以上の構成では、当該レール上を走行(移動)する搬送装置20を採用してもよい。
【0022】
図2は、収穫量推定装置100の機能ブロック図である。収穫量推定装置100は、画像情報取得部101、果実特定部102、体積推定部103、重量推定部104および収穫量算出部105を含む。例えば、上述のコンピュータ10が重量推定プログラムPGを実行することで収穫量推定装置100として機能する。収穫量推定システム1は、収穫量推定装置100に加え、搬送部200、撮影装置300および軌道部400を含む(後述の図3参照)。例えば、上述の搬送装置20が搬送部200として機能し、カメラ30が撮影装置300として機能し、ワイヤロープ40が軌道部400として機能する。
【0023】
収穫量推定装置100の画像情報取得部101は、撮影装置300から画像情報DS(DSa、DSb)を取得(受信)する。例えば、撮影装置300が画像を撮影すると、画像情報DSが収穫量推定装置100へ自動で送信される構成が考えられる。なお、収穫量推定装置100が要求信号を送信可能とし、当該要求信号を受信した契機で画像情報DSを撮影装置300が送信する構成としてもよい。
【0024】
果実特定部102は、画像情報DSが示す各オブジェクト(果実、枝、葉…)から果実Fを特定する。具体的には、画像情報DSが示す画像には、果実Fの他に、樹木Tの枝や葉が表示される。果実特定部102は、3次元画像情報DSbが示す3次元画像における各オブジェクトから果実Fを特定する。
【0025】
本実施形態では、収穫量Yを算出する果実Fの種類(例えば、マンゴー)が収穫量推定装置100に予め入力される。収穫量推定装置100(果実特定部102)は、3次元画像情報DSbが示す3次元画像における果実Fを特定するのに先行して、2次元画像情報DSaが示す2次元画像に含まれる各オブジェクトをセグメンテーション(区分け)する。以上のセグメンテーションにはAI(Artificial Intelligence)技術が採用され得る。
【0026】
例えば、学習済みのFCN(Fully Convolutional Networks:全層畳み込みネットワーク)を用いて、2次元画像における各オブジェクトがセグメンテーションされる(例えば、特開2022-29169号公報に記載の技術が採用され得る)。また、2次元画像情報DSaが示す2次元画像における各オブジェクト(果実、枝、葉…)が分類される。収穫量推定装置100は、分類された各オブジェクトから、収穫量Yを算出する果実Fを特定する。具体的には、2次元画像に複数個の果実Fが含まれる場合、全ての果実Fが特定される。なお、2次元画像情報が示す2次元画像から果実Fを特定する方法は以上の例に限定されない。
【0027】
収穫量推定装置100は、3次元画像情報DSbが示す3次元画像を、1個の物体を示すオブジェクト毎に区分けする。また、収穫量推定装置100は、2次元画像情報DSaが示す2次元画像における各オブジェクトの位置と、3次元画像情報DSbが示す3次元画像における各オブジェクトの位置とに基づいて、当該2次元画像における各オブジェクトと当該3次元画像における各オブジェクトとを対応させる。
【0028】
上述した通り、2次元画像情報DSaが示す2次元画像における各オブジェクトのうち果実Fを示すオブジェクトが特定される。収穫量推定装置100は、果実Fとして特定した2次元画像のオブジェクトに対応する3次元画像におけるオブジェクトを、果実Fとして特定する。以下、説明のため、3次元画像における果実F(オブジェクト)を「果実画像Gf」と記載する場合がある。
【0029】
体積推定部103は、3次元画像情報DSbを用いて、果実Fの体積Vを推定する。具体的には、3次元画像情報DSbが示す3次元画像のうち果実画像Gfを用いて果実Fの体積Vを推定する。以上の構成については、図6(a)~(d)を用いて詳細に後述する。
【0030】
重量推定部104は、果実Fの体積Vから当該果実Fの重量Wを推定する。具体的には、収穫量推定装置100は、上述した通り3次元画像情報DSbから果実Fの体積Vを推定する。また、収穫量推定装置100は、収穫量Yを推定可能な果実F毎に密度Eを予め記憶する。収穫量推定装置100が記憶する密度Eは、例えばサンプルの果実Fを用いて求められる。収穫量推定装置100は、推定した果実Fの体積Vに密度Eを乗算した結果を、当該果実Fの重量Wとして記憶する(W=V×E)。
【0031】
収穫量算出部105は、複数個の果実Fの重量Wを合計した数値を算出する。具体的には、収穫量推定装置100は、果樹園の各樹木Tを撮影し、当該樹木Tにおける全ての果実Fの重量Wを推定する。また、収穫量推定装置100は、推定した全ての重量Wを合計し、合計結果を収穫量Yとして記憶する。なお、収穫量推定装置100に画像表示装置を設け、収穫量Yを表示可能な構成としてもよい。また、撮影された全ての樹木Tにおける果実Fの収穫量Yに替えて(加えて)、樹木T(撮影位置)毎の収穫量Yが算出される構成としてもよい。
【0032】
図3は、果実Fの撮影方法の具体例を説明するための図である。図3は、果樹園を直上から見下ろした場合を想定する。図3には、果樹園における各樹木T(1~n)が示される。また、図3には、収穫量推定システム1の各構成のうち、搬送部200、撮影装置300およびワイヤロープ(軌道部)400が示される。
【0033】
図3に示す通り、各樹木Tは一列に配置される。また、ワイヤロープ400は、両端が各ポールP(1、2)取付けられ、各樹木Tに沿うように空中に張り渡される。具体的には、ワイヤロープ400は、各樹木Tからみて斜め上側に位置する(後述の図4(b)参照)。なお、ワイヤロープ400の位置は、各樹木Tの各果実Fが撮影可能であれば足り、適宜に変更できる。例えば、樹木Tの真上にワイヤロープ400が位置する構成としてもよい。
【0034】
以下、説明のため、重力方向逆向きを「Z軸方向」と記載する場合がある。また、Z軸方向に直行する方向を「X軸方向」と記載する場合がある。以上のX軸方向は、撮影装置300の撮影方向Sc(撮影装置300の正面方向)とも直行する。本実施形態では、説明を簡単にするため、X軸方向にワイヤロープ400が張り渡される場合を想定する。以上のX軸方向は、搬送部200(撮影装置300)が移動する方向(図3における、白色で示す矢印の方向)と略平行である。さらに、X軸方向およびZ軸方向の双方に直行する方向を「Y軸方向」と記載する場合がある。図3に示す通り、撮影装置300から見てY軸方向側に各樹木Tが位置する。なお、図3には、撮影装置300の撮影方向Scが示される。
【0035】
図3に示す通り、ワイヤロープ400には各マーク部M(1~n)が設けられる。各マーク部Mは、他のワイヤロープ400の部分と識別可能に構成される。具体的には、各マーク部Mは、他のワイヤロープ400の部分と色彩が相違する。また、図3に示す通り、各マーク部Mは各樹木Tに対応して設けられる。例えば、マーク部M1は樹木T1に対応し、マーク部M2は樹木T2に対応し、マーク部M3は樹木T3に対応し…マーク部Mnは樹木Tnに対応する。
【0036】
マーク部Mに搬送部200が位置した際に、当該マーク部Mに対応する樹木Tの各果実Fが撮影装置300により撮影可能な位置に各マーク部Mは設けられる。例えば、図3の具体例では、搬送部200がマーク部M1に位置する場合を想定する。以上の場合、撮影装置300により樹木T1の各果実Fが撮影可能になる(各果実Fが撮影範囲の内側に位置する)。なお、樹木Tによっては、全ての果実Fが一度に(一方向からは)撮影できない場合がある。以上の場合、1本の樹木Tに対応するマーク部Mを複数個設け、複数の撮影位置から当該樹木Tが撮影される構成としてもよい。また、複数の樹木Tの果実Fが一度に撮影できる場合、当該複数の樹木Tに対応するマーク部Mを1個設ける構成としてもよい。
【0037】
本実施形態の搬送部200は、リモコンRにより遠隔地から操作可能である。例えば、利用者がリモコンRを適宜に操作すると、ワイヤロープ400に沿って搬送部200を移動できる。利用者は、マーク部Mに搬送部200が位置する様に、リモコンRを操作する。例えば、マーク部M1、マーク部M2…マーク部Mnの順に搬送部200が停止する様に、リモコンRを順次に操作する。ただし、搬送部200が自動で停止と移動とを繰返す構成としてもよい。例えば、マーク部Mを検知するセンサを搬送部200に設ける構成が考えられる。以上の構成では、マーク部Mを検知すると撮影に要する時間だけ搬送部200が自動で停止し、その後、次のマーク部Mへ搬送部200が自動で移動を開始する。
【0038】
本実施形態の撮影装置300は、遠隔地から操作可能である。例えば、上述のリモコンRが適宜に操作されると、撮影装置300が画像(2次元画像、3次元画像)を撮影し、当該画像を示す画像情報DSが生成される。以上の構成では、搬送部200をマーク部Mに停止させた状態で、撮影装置300に樹木Tを撮影させる指示が遠隔地から可能になる。ただし、撮影装置300を遠隔操作する手段と、搬送部200を遠隔操作する手段とを別にしてもよい。
【0039】
以上の本実施形態では、先ず、搬送部200をマーク部M1に停止させ、1本目の樹木T1の画像を撮影する。その後、マーク部M2、マーク部M3…マーク部Mnの順に搬送部200を停止させることで、樹木T2から樹木Tnの画像を撮影できる。また、樹木T(1~n)が撮影される度に画像情報DS(DSa、DSb)が撮影装置300から収穫量推定装置100へ送信され、収穫量推定装置100により収穫量Yが算出(推定)される。以上の収穫量Yは、樹木T1から樹木Tnの複数の樹木Tから収穫される果実Fの収穫量である。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、撮影装置300を搬送することで、1個の撮影装置300により複数本の樹木Tを撮影できる。仮に、予め定められた位置に撮影装置300が固定される対比例を想定する。以上の対比例では、1本の樹木Tを撮影するために1個の撮影装置300が必要になる。したがって、複数本の樹木Tから収穫される果実Fの収穫量を推定する場合、複数個の撮影装置300が必要になる。以上の対比例では、樹木Tが多い場合、撮影装置300にかかる費用が過多になるという不都合がある。本実施形態では、1個の撮影装置300で複数本の樹木Tを撮影できるため、例えば上述の対比例と比較して、撮影装置300にかかる費用が抑制できるという利点がある。
【0041】
ところで、仮に、遠隔操作により飛行するドローンを搬送部200として採用する構成(以下「対比例」)を想定する。以上の対比例では、ドローンに撮影装置300が取付けられ、撮影装置300が撮影位置まで搬送される。しかし、ドローンの操縦者(特に初心者)によっては、適当な撮影位置に撮影装置300を搬送できない不都合が生じ得る。以上の不都合は、果実Fを収穫する前に繰返し(例えば、1日毎に)収穫量Yを算出する場合に顕在化し易いという事情がある。
【0042】
本実施形態では、予め定められた位置に支持される(張り渡される)ワイヤロープ400により撮影装置300を撮影位置へ搬送可能である。したがって、撮影装置300を適当な撮影位置へ繰返し搬送し易く、例えば上述の対比例と比較して、上述の不都合が抑制されるという利点がある。ただし、本発明は、上述の対比例を排除するものではない。
【0043】
図4(a)および図4(b)は、樹木Tの撮影位置の具体例を説明するための図である。なお、図4(a)および図4(b)では、マーク部Mに搬送部200が位置する場合を想定する。また、図4(a)および図4(b)では、搬送部200が位置するマーク部Mに対応する樹木Tを抜粋して示し、他の樹木Tは省略して示す。すなわち、被写体となる樹木Tのみが示される。
【0044】
図4(a)は、撮影装置300(搬送部200)を樹木T側(Y軸方向側)から見た図である。図4(a)に示す通り、搬送部200がマーク部Mに位置する場合、当該マーク部Mに対応する樹木TのX軸上の位置と、撮影装置300のX軸上の位置とが略一致する。すなわち、撮影される樹木TのX軸上の位置と、撮影装置300のX軸上の位置とが略一致する。ただし、樹木Tにおける果実Fが撮影されれば足り、撮影される樹木TのX軸上の位置と撮影装置300のX軸上の位置とが略一致しなくてもよい。
【0045】
図4(a)に示す通り、各樹木Tの撮影位置は、当該樹木Tより上側(Z軸方向側)になる。具体的には、地表からの樹木Tの高さ(樹高)を「高さHt」、地表から撮影位置(撮影装置300)までの高さを「高さHc」とした場合、「高さHc」は「高さHt」より高くなる(Hc>Ht)。本実施形態では、何れの樹木Tを撮影する場合であっても、撮影位置は当該樹木Tより上側になる。以上の構成では、各樹木Tの各果実Fは、当該果実Fより上側から撮影される。
【0046】
図4(b)は、撮影装置300をX軸方向へ見た図である。図4(b)の具体例は、上述の図4(a)の具体例と同様に、撮影装置300が撮影位置にある場合を想定する。また、図4(b)には、撮影方向Scが示される。なお、本実施形態の撮影装置300は搬送部200に固定され、搬送部200から見た撮影方向Scは変化しない。ただし、撮影装置300を搬送部200に対して回転可能な構成としてもよい。また、撮影装置300を搬送部200に対して遠隔操作により回転可能な構成としてもよい。以上の構成では、遠隔操作により撮影方向Scを変更できる。
【0047】
上述した通り、撮影装置300は傾きセンサを具備し、撮影方向Scの傾きが検知される。具体的には、重力方向(Z軸)に対する撮影方向Scのピッチ角θpとロー角θrとが傾きセンサにより検知される。図4(b)には、ピッチ角θpおよびロー角θrのうち、ピッチ角θpが示される。図4(b)から理解される通り、ピッチ角θpは、重力方向に対するX軸周りの撮影方向Scの傾きである。
【0048】
図4(c)は、撮影装置300をY軸方向から見た他の図である。図4(c)には、傾きセンサで検知されるピッチ角θpおよびロー角θrのうち、ロー角θrが示される。図4(c)から理解される通り、ロー角θrは、重力方向に対するY軸周りの撮影方向Scの傾きである。撮影装置300は、樹木Tを撮影した際に、ピッチ角θpおよびロー角θrを検知し、検知したピッチ角θpおよびロー角θrが特定される傾き情報を生成する。
【0049】
上述した通り、画像情報DSには、3次元画像を示す3次元画像情報DSbが含まれる。収穫量推定装置100は、当該画像情報DSに含まれる傾き情報(ピッチ角θp、ロー角θr)を用いて、当該3次元画像の傾き補正をする。以上の傾き補正によれば、当該3次元画像はZ軸方向から(真上から)撮影された3次元画像に補正される。
【0050】
具体的には、3次元画像の任意の点の座標を(xs、ys、zs)とした場合、当該点の座標は以下の数1により(xw、yw、zw)に補正される。なお、数1におけるRpは、X軸(ピッチ軸)回りの回転行列を意味する。また、数1におけるRrは、Y軸(ロー軸)回りの回転行列を意味する。なお、具体的な回転行列Rpおよび回転行列Rrについては、周知なものが適宜に採用できる。
【0051】
【数1】
【0052】
図5(a)から図5(c)は、撮影装置300(デプスカメラ30b)により撮影される果実画像Gfの具体例を説明するための図である。上述した通り、撮影装置300は、樹木T(果実Fを含む)の3次元画像を示す3次元画像情報DSbを生成する。また、収穫量推定装置100は、樹木Tの当該3次元画像から果実Fを示す果実画像Gfを特定する。以下、果実画像Gfの具体例(図5(b)参照)に先行して、当該果実画像Gfが示す果実F(被写体)の具体例を詳細に説明する。
【0053】
図5(a)は、3次元画像が撮影される果実Fの具体例(マンゴー)を説明するための図である。なお、以下説明のため、XY平面に平行に切断した断面積が最大となる果実Fの部分を「中央部Fm」と記載する場合がある。また、図5(a)に示す通り、中央部Fmを含む果実Fの上側(Z軸方向側)の部分を「上側部分F1」と記載する場合がある。同様に、中央部Fmより下側の果実Fを「下側部分F2」と記載する場合がある。図5(a)から把握される通り、本実施形態の果実Fは、上側部分F1の形状と下側部分F2の形状とは相違する。
【0054】
詳細には後述の図6(a)から図6(d)を用いて説明するが、収穫量推定装置100は、果実Fの重量Wを推定する際に、当該果実Fの上側部分F1の体積(以下「部分体積Vp」)を、果実画像Gfを用いて先ず推定する。また、収穫量推定装置100は、部分体積Vpと後述の果実別係数k(図7参照)とを用いて、上側部分F1と下側部分F2とを合わせた果実F全体の体積Vを求める。上述した通り、果実Fの重量Wは、体積Vに密度Eを乗算することで算出される。
【0055】
図5(a)には、撮影装置300の撮影方向Scが示される。上述した通り、本実施形態では、撮影装置300が樹木Tより上側に位置する。したがって、果実Fは、当該果実Fから見て上側方向(Z軸方向側)から撮影される。図5(a)の具体例では、果実Fが撮影装置300よりY軸方向側に位置し、当該果実Fが斜め上方向側から撮影された場合を想定する。
【0056】
ところで、撮影装置300で果実Fを撮影した場合、撮影装置300からみて当該果実Fの手前側(撮影装置300側)が撮影され、当該果実Fの奥側が撮影されないのが通常である。図5(a)には、果実Fのうち撮影される領域と撮影されない領域との境界Lが破線で示される。図5(a)の具体例では、果実Fにおける境界Lより撮影装置300側のみが撮影される。
【0057】
具体的には、果実Fは、当該果実Fから見て上側から撮影されるため、当該果実Fの上端部(図5(a)のFt)は略全体が撮影される。一方、例えば果実Fの中央部Fmは、境界Lから見てY軸方向逆側(手前側)が撮影され、Y軸方向側(奥側)は撮影されない。また、果実Fの下端部(図5(a)のFu)は、撮影装置300側であっても撮影されない。以上の説明から理解される通り、果実Fのうち上側部分F1は下側部分F2より広い範囲が撮影され易い。
【0058】
図5(b)は、果実画像Gfの具体例を示す図である。図5(b)の果実画像Gfは、撮影直後の3次元画像に上述の傾き補正が実行されたものを示す。果実画像Gfが表示される3次元空間におけるz軸は、実空間における重力方向に平行なZ軸に対応する。同様に、3次元空間におけるx軸は実空間におけるX軸に対応し、3次元空間におけるy軸は実空間におけるY軸に対応する。
【0059】
図5(b)の果実画像Gfは、上述の図5(a)の具体例で撮影された果実Fを示す。すなわち、図5(b)は、果実Fの一部分(図5(a)の境界Lより奥側)が撮影されない場合の果実画像Gfを想定する。以上の果実画像Gfは、果実Fの一部分を表す(果実Fの一部分が欠損した)3次元画像になる。なお、図5(b)には、果実Fのうち撮影されなかった一部分に対応する領域が破線により示される。
【0060】
上述した通り、果実Fの下端部Fuは撮影されない(図5(a)参照)。本実施形態では、果実画像Gfが配置される3次元空間のうち、果実Fの下端部Fuに対応する領域を「領域Rb」と記載する場合がある。以上の領域Rbは、果実Fを上側から撮影した場合、当該果実Fの中央部Fm(断面積が最大となる部分)を表す果実画像Gfの部分より下側に位置するのが通常である。
【0061】
図5(c)は、果実画像Gfの断面図を説明するための図である。なお、図5(c)は、果実画像Gfの各断面をZ軸方向から(上側から)見た場合を想定する。
【0062】
図5(c)には、上述の図5(b)におけるA-A断面およびB-B断面が示される。図5(c)の各断面のうちA-A断面は、果実画像Gfのうち上端部Ft(図5(a)参照)を表す部分の断面である(図5(b)参照)。上述した通り、果実Fの上端部Ftは略全体が撮影される。したがって、果実画像GfのA-A断面は、図5(c)に示す通り略環状になる。一方、図5(c)の各断面のうちB-B断面は、果実画像Gfのうち中央部Fm(図5(a)参照)を表す部分の断面である(図5(b)参照)。上述した通り、果実Fの中央部Fmは、撮影装置300側が撮影され反対側は撮影されない。したがって、果実画像GfのB-B断面は、図5(c)に示す通り、楕円の一部を切除した形状になる。
【0063】
上述した通り、果実Fの重量Wを推定する際に、当該果実Fにおける上側部分F1の部分体積Vpが用いられる。仮に、上側部分F1の全体を示す3次元画像が撮影された場合、当該3次元画像から部分体積Vpを算出できる。ただし、図5(b)を用いて説明した通り、上側部分F1の一部分が撮影されない場合、果実画像Gfには上側部分Fの一部分のみが表される(他の一部分は欠損する)。以上の事情を考慮して、本実施形態では、上側部分F1の一部分が欠損した果実画像Gfから、当該上側部分F1の部分体積Vpを推定可能な構成を採用した。
【0064】
図6(a)から図6(d)は、部分体積Vpを推定するための構成を説明するための図である。以下で詳細に説明するが、部分体積Vpを推定する際に、果実画像Gfをxy平面で切断した場合の断面の形状が用いられる。
【0065】
図6(a)は、果実画像Gfの各断面s(1、2、3…n、n+1…)を説明するための図である。なお、図6(a)には、上述の図5(b)と同様に、撮影されなかった果実Fの一部分に対応する領域が破線により示される。また、図6(a)には、果実Fの下端部Fuに対応する領域Rbが示される(図5(b)参照)。図6(a)の具体例では、上述の図5(b)と同様に、下端部Fuが撮影されない場合を想定する。
【0066】
図6(a)に示す各断面sは、z軸方向の位置をずらしながらxy平面に平行に果実画像Gfを切断したものである。具体的には、隣合う各断面sはz軸方向に「高さΔz」だけ離れている。高さΔzは、果実画像Gfの大きさに対して十分に小さい。本実施形態では、果実画像Gfの各断面sを用いて、果実画像Gfにおいて欠損する果実Fの部分の形状を推定する。
【0067】
なお、図6(a)に示す通り、果実Fの下端部Fuに対応する領域Rbにおいては、断面sが存在しない。したがって、下端部Fuの形状は推定困難(実質的に不可能な場合を含む)である。ただし、本実施形態では、比較的高精度に形状が推定できる上側部分F1(下端部Fuを含まない)を表す果実画像Gfの部分のみを体積V(部分体積Vp)の推定に使用する。したがって、下端部Fuの形状を高精度に推定する必要性は低い(詳細には後述する)。
【0068】
図6(b)は、果実画像Gfにおいて欠損する果実Fの形状を推定するための構成の具体例を説明するための図である。xy平面に平行な果実Fの断面は、外縁が略楕円形(円形)であるという事情がある。以上の事情を考慮して、本実施形態では、果実画像Gfの断面sは楕円形の一部であると仮定して、果実画像Gfにおいて欠損する果実Fの部分の形状を推定する。
【0069】
具体的には、断面s(果実画像Gf)は点群画像である。収穫量推定装置100は、図6(b)に示す通り、断面sの点群に対して二乗誤差で最小化した楕円を求める(楕円近似する)。以下、説明のため、断面sから生成された楕円形の画像を「補正断面p」と記載する場合がある。補正断面pは、xy平面に平行になる。以上の補正断面pは、果実Fの断面の形状を示すと推定される。したがって、各断面s(1、2、3…n…)から生成した各補正断面pをz軸方向に積重ねることで、果実画像Gfでは欠損した部分が補完された果実Fを表す3次元画像(図6(d)のGx参照)が形成できる。
【0070】
ただし、上述した通り果実Fは当該果実Fから見て上側から撮影される。したがって、当該果実Fの下端部Fu(図5(a)参照)に対応する領域Rb(図6(a参照))において果実画像Gf(断面s)は存在しない場合(例えば、図6(a)の具体例)が想定される。以上の場合、果実Fの下端部Fuを含む下側部分F2の形状は高精度に推定できないという事情がある。
【0071】
以上の事情を考慮して、本実施形態では、果実画像Gfのうち上側部分F1を表す部分の断面sを用いて体積Vを推定する構成を採用した。具体的には、上側部分F1を表す部分の断面sから当該上側部分F1の体積である部分体積Vpを算出する構成を採用した。なお、果実F全体の体積Vは、部分体積Vpに果実別係数kを乗算することで算出(推定)される(詳細には図7を用いて説明する)。
【0072】
図6(c)は、部分体積Vpを算出するための構成の具体例を説明するための図である。上述した通り、果実画像Gfの各断面sから各補正断面pが生成される。収穫量推定装置100は、部分体積Vpを算出する際に、各補正断面pの面積Aを算出する。図6(c)は、補正断面p毎の面積Aの具体例を示す。図6(c)の具体例は、断面s1から生成される補正断面p1の面積Aは「A1」の場合を想定する。同様に、補正断面p2の面積Aは「A2」、補正断面p3の面積Aは「A3」…の場合を想定する。
【0073】
収穫量推定装置100は、各補正断面pの各面積Aを算出すると、面積Aが最大の補正断面pを特定する。図6(c)の具体例では、上からn番目の補正断面pnの面積A(An)が最大の場合を想定する(nは自然数)。以上の場合、収穫量推定装置100により補正断面pnが特定される。以下、説明のため各補正断面pのうち面積Aが最大のものを「中央断面p」と記載する場合がある。例えば、図6(c)の具体例では、上からn番目の補正断面pnが中央断面pになる。
【0074】
中央断面pは、通常、果実Fの中央部Fm(断面積が最大となる部分。上述の図5(a)参照)の断面を表す。すなわち、中央断面pは、果実Fの上側部分F1を表す3次元画像の下端(底面)であるとも換言される。以上の通り、中央断面pおよび中央断面pより上側に位置する各補正断面p(以下「上側断面p」と記載する場合がある)を積重ねた3次元画像は上側部分F1を表す。
【0075】
以上の説明から理解される通り、各上側断面pを積重ねた3次元画像の体積は、果実Fのうち上側部分F1の部分体積Vpである。また、上述した通り、各断面sのz軸方向の間隔である高さΔzは十分に小さい。以上の場合、部分体積Vpは、以下の数2により算出(近似)される。なお、数2における「n」は、上側断面pの個数を意味する。
【0076】
【数2】
【0077】
ところで、樹木Tにおける各果実Fは、結実方向が略共通であるという事情がある。具体的には、樹木Tにおける各果実Fは、上側部分F1が上側を向く(上側部分F1が下側部分F2より上側に位置する)のが通常である。したがって、果実画像Gfの中央断面pより上側は、上側部分F1を表す3次元画像であるのが通常である。
【0078】
以上の事情を考慮して、本実施形態では、果実画像Gfの中央断面pより上側が上側部分F1の3次元画像であるものとして、部分体積Vpが算出される。具体的には、上側部分F1を表す部分を果実画像Gfから識別する特別な処理(例えば、パターンマッチング処理)を省略して、果実画像Gfの中央断面pより上側が上側部分F1の3次元画像であるものとして部分体積Vpが算出される。
【0079】
以上の構成では、例えば、上側部分F1を表す部分を果実画像Gfから識別する特別な処理が実行される構成と比較して、収穫量推定装置100の処理負担が軽減されるという効果が奏せられる。ただし、本発明は、上側部分F1を表す部分を果実画像Gfから識別する特別な処理が実行される構成を排除するものではない。
【0080】
また、本実施形態によれば、全ての果実Fを上側から撮影できるため、例えば果実Fが真横または下側から撮影される対比例と比較して、果実Fのうち上側部分F1の広範囲が撮影され易い。以上の構成は、果実Fの体積Vの推定に用いる上側部分F1の広範囲が撮影され易いとも換言される。したがって、果実Fの体積Vが高精度に推定し易いという利点がある。ただし、本発明は、果実Fが真横または下側から撮影される構成を排除するものではない。
【0081】
図7は、果実別係数kの具体例を説明するための図である。上述した通り、収穫量推定装置100は、果実Fの部分体積Vpに果実別係数kを乗算することで、当該果実F全体の体積Vを算出する(V=Vp×k)。本実施形態の収穫量推定装置100は、複数種類の果実別係数kを予め記憶する。また、収穫量Yを算出する果実Fの種類に応じて、果実別係数kを変更可能に構成される。例えば、収穫量推定装置100を利用者が適宜に操作することにより、果実別係数kを変更できる。ただし、果実別係数kが変更できない構成としてもよい。すなわち、収穫量Yを推定できる果実Fの種類数を1種類としてもよい。
【0082】
仮に、略球状の果実F(例えば、キンカン)を想定する。以上の果実Fは、上側部分F1の形状と下側部分F2の形状とが共通して略半球状である。したがって、上側部分F1の部分体積Vpを2倍することで、果実F全体の体積Vが算出できる(V=2Vp)。
【0083】
一方、果実F(例えば、マンゴー)によっては、上側部分F1の形状と下側部分F2の形状とが相違する場合がある。ただし、種類が同じ果実Fどうしであれば(マンゴーどうしであれば)、各果実Fの体積(大きさ)が相違する場合であっても、各果実Fの形状は略相似になる。したがって、果実F全体の体積Vのうち上側部分F1の部分体積Vpが占める割合(=Vp/V)は、種類が同じ果実Fどうしであれば各果実Fで共通である。なお、本実施形態では、部分体積Vpが体積Vに占める割合を、サンプルの果実Fを用いて予め求め、当該割合の逆数を果実別係数kとして記憶する。なお、果実別係数kを求める方法は以上の例に限定されない。
【0084】
収穫量推定装置100は、果実別係数kと密度Eとの組合せを果実F毎に記憶する。収穫量Yを推定する果実Fの種類が指定されると、収穫量推定装置100は、当該果実Fの果実別係数kと密度Eとを設定する。また、収穫量推定装置100は、設定した果実別係数kと密度Eとを果実Fの体積Vに乗算して、当該果実Fの重量Wを算出する。また、撮影された全ての果実Fの重量Wが算出され、全ての果実Fの重量Wの合計が収穫量Yとして記憶される。上述した通り、各果実の各重量Wは、3次元画像情報DSbを用いて算出される。以上の本実施形態によれば、例えば、3次元画像情報DSbを用いずに収穫量Yが算出される構成と比較して、収穫量Yが高精度に算出される。
【0085】
図8は、収穫量推定処理のフローチャートである。収穫量推定装置100は、適宜な契機で収穫量推定処理を実行する。例えば、撮影装置300が全ての樹木Tを撮影した後に、収穫量推定装置100が適宜に操作された契機で、収穫量推定処理が実行される。図8に示す通り、収穫量推定処理を開始すると、収穫量推定装置100は、対象画像を設定する(S101)。具体的には、本実施形態では、上述した通り、複数個の画像情報DSが生成される。上述のステップS101では、複数個の画像情報DSのうちの何れかを対象画像として設定する。
【0086】
対象画像を設定した後に、収穫量推定装置100は、果実特定処理(S102)を実行する。果実特定処理では、AI技術を用いて、対象画像として設定された画像情報DSの2次元画像情報DSaが示す各オブジェクトから果実Fが特定される。また、当該特定結果を用いて、画像情報DSの3次元画像情報DSbが示す各オブジェクトから果実Fが特定される。なお、3次元画像情報DSbが示す各オブジェクトに複数個の果実Fが含まれる場合、全ての果実Fが特定される。
【0087】
果実特定処理を実行した後に、収穫量推定装置100は、対象果実を決定する(S103)。具体的には、収穫量推定装置100は、直前の果実特定処理で特定した各果実Fのうちの何れか1個を対象果実として設定する。対象果実を設定した後に、収穫量推定装置100は、体積推定処理(S104)を実行する。体積推定処理では、直前のステップS103で設定された対象果実の体積Vが推定される。具体的には、上述の図6(a)から図6(d)で説明した通り、対象果実の部分体積Vpが算出される。また、図7で説明した通り、部分体積Vpに果実別係数kを乗算して対象果実の体積Vが算出される。
【0088】
体積推定処理を実行した後に、収穫量推定装置100は、重量推定処理(S105)を実行する。重量推定処理では、直前の体積推定処理で推定された対象果実の体積Vに密度Eが乗算され、当該対象果実の重量Wが算出される(W=V×E)。収穫量推定装置100は、算出した重量Wを記憶する。
【0089】
重量推定処理を実行した後に、直前の果実特定処理で特定された全ての果実Fが対象果実として設定されたか否かが判定される(S106)。仮に、画像情報DSに示される各果実Fに対象果実に設定されたことがものが含まれる場合(S106:No)、上述のステップS103で対象果実を変更しながらステップS103からステップS106が繰返し実行される。ステップS103では、対象果実に設定されたことがない果実Fが対象果実に設定される。
【0090】
画像情報DSに示される全ての果実Fが対象果実に設定済みの場合(S106:Yes)、収穫量推定装置100は、全ての画像情報DSが対象画像として設定されたか否かを判定する(S107)。仮に、撮影装置300から取得された画像情報DSに対象画像に設定されたことがないものが含まれる場合(S107:No)、上述のステップS101で対象画像を変更しながらステップS101からステップS107が繰返し実行される。ステップS101では、対象画像に設定されたことがない画像情報DSが対象画像に設定される。
【0091】
全ての画像情報DSが対象画像に設定済みの場合(S106:Yes)、収穫量推定装置100は、収穫量算出処理(S108)を実行する。収穫量算出処理では、ステップS105で算出された全ての果実Fの重量Wの合計が算出され、算出結果が収穫量Yとして記憶される。なお、収穫量算出処理が実行された際に収穫量Yが自動で表示される構成としてもよい。収穫量算出処理を実行した後に、収穫量推定装置100は、収穫量推定処理を終了する。
【0092】
<変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0093】
(1)各形態において、撮影装置300を複数個設けてもよい。例えば、果樹園に樹木Tが複数列設けられる場合、樹木Tの列毎に撮影装置300を設けてもよい。具体的には、樹木Tの列毎に、当該列に沿う様にワイヤロープ400を設ける。また、ワイヤロープ400毎に1個の撮影装置300を設ける。以上の変形例では、各撮影装置300から収穫量推定装置100へ画像情報DSが送信され果実Fの収穫量Yが推定される。
【0094】
(2)各形態において、収穫量Yを算出する果実Fの種類が自動で決定される構成としてもよい。具体的には、画像情報DS(2次元画像情報DSa)が示す画像に表示される果実Fの種類を、例えばAI技術により識別する。収穫量推定装置100は、画像情報DSの画像に表示される果実Fが識別されると、当該果実Fの収穫量Yを算出可能にする。例えば、当該果実Fの果実別係数kおよび密度Eを自動で設定する。
【0095】
(3)各形態において、画像情報DSから収穫量Yに加え他の情報を算出(推定)する構成としてもよい。例えば、上述した通り、画像情報DSで表される各物体から果実Fが特定される。以上の構成において、果実Fとして特定した物体の個数を、樹木Tにおける果実Fの個数として算出してもよい。また、上述の形態では、果実F毎に重量Wが算出される。以上の構成において、果実F毎の重量Wが収穫量Yとは別に記憶される構成としてもよい。また、以上の各情報に、撮影位置(マーク部M)を示す情報を付加する構成としてもよい。例えば、画像情報DSから特定された果実Fの個数と当該果実Fの重量Wと撮影位置(マーク部Mの種類)と撮影された日時との組合せが記憶される構成としてもよい。以上の各情報を別々に表示可能な構成としてもよい。
【0096】
(4)果実Fの種類によっては、果実Fがなる前に樹木Tから摘花される場合がある。以上の場合、樹木T毎に摘花の方法(摘花した個数など)を収穫量推定装置100に入力可能とし手もよい。また、樹木T毎の収穫量Yと当該樹木Tにおける摘花の方法との組合せを表示可能な構成としてもよい。また、全ての樹木Tの果実Fの収穫量Yと各樹木Tにおける摘花の方法との組合せを表示可能な構成としてもよい。以上の構成によれば、最適な摘花の方法(例えば、収穫量Yが最大になる摘花の方法)の研究が可能になるという利点がある。
【0097】
<本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ>
<第1態様>
本態様の収穫量推定システム(1)は、果実(F)がなる草木(T)を撮影する撮影装置(300)と、撮影装置から画像情報(DS)を取得する収穫量推定装置(100)とを具備する収穫量推定システムであって、画像情報は、3次元画像情報(DSb)を含み、収穫量推定装置は、画像情報で表される各物体から果実を特定する果実特定部(102)と、3次元画像情報を用いて、果実の体積を推定する体積推定部(103)と、果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部(104)と、複数個の果実の重量を合計した数値(収穫量Y)を算出する収穫量算出部(105)と、を備える。本態様では、例えば3次元画像情報を用いることなく収穫量Yを推定する構成と比較して、収穫量Yが高精度に算出できるという効果が奏せられる。
【0098】
<第2態様および第3態様>
本態様の収穫量推定システム(1)は、予め定められた位置に支持され、撮影装置が搬送される軌道部(ワイヤロープ400)と、草木が撮影可能な撮影位置へ、軌道部により撮影装置を搬送する搬送部(200)と、を具備し、撮影位置は、草木より上側である(図4(a)参照)。
【0099】
ところで、草木における各果実は、結実方向が略共通であり、上側部分F1が上側に位置するのが通常であるという事情がある。本態様によれば、全ての果実を上側から撮影できるため、例えば果実Fが真横側または下側から撮影される対比例と比較して、果実Fのうち上側部分F1の広範囲が撮影され易い。
【0100】
<第3態様>
本態様の収穫量推定システム(1)は、体積推定部は、3次元画像情報が示す果実の上側部分(上側部分F1)の形状から、当該上側部分の体積である部分体積(Vp)を推定し、果実の種類に応じた果実別係数(k)と部分体積とを用いて、当該果実全体の体積を推定する。本態様によれば、果実Fの上側部分F1(果実Fの体積の推定に用いる部分)の広範囲が撮影され易い構成(例えば、上述の第2態様)を採用することで、果実Fの体積Vが高精度に推定できるという利点がある。
【0101】
<第4態様>
本態様の収穫量推定装置(100)は、果実(F)がなる草木(T)を撮影する撮影装置(300)から画像情報(DS)を取得する収穫量推定装置であって、画像情報は、3次元画像情報(DSb)を含み、画像情報が表す各物体から果実を特定する果実特定部(102)と、3次元画像情報を用いて、果実の体積を推定する体積推定部(103)と、果実の体積から当該果実の重量を推定する重量推定部(104)と、複数個の果実の重量を合計した数値(収穫量Y)を算出する収穫量算出部(105)と、を備える。本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【0102】
<第5態様>
本態様の収穫量の推定方法は、果実(F)がなる草木(T)を撮影する撮影装置(300)と、撮影装置から画像情報(DS)を取得する収穫量推定装置(100)とを用いた果実の収穫量の推定方法であって、画像情報(DS)で表される各物体から果実を収穫量推定装置が特定(図8のS102)し、画像情報に含まれる3次元画像情報(DSb)を用いて、果実の体積を収穫量推定装置が推定し(図8のS104)、果実の体積から当該果実の重量を収穫量推定装置が推定し(図8のS105)、複数個の果実の重量を合計した数値を収穫量推定装置が算出する(図8のS108)。本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【符号の説明】
【0103】
100…収穫量推定装置、101…画像情報取得部、102…果実特定部、103…体積推定部、104…重量推定部、105…収穫量算出部、200…搬送部、300…撮影装置、400…軌道部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8